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2007年1月18日 (木)

安倍晋三政権下で進む、忍び寄る警察国家の影。

安倍政権下で進む警察国家の恐怖バナー 安倍政権下で進む警察国家の恐怖バナー

 また、最近おまわりの姿が街で目に付くようになりましたね。あちらこちらで我が物顔に職務質問をしている感じがします。

 「何の理由、どんな条文に基づいてやるのですか?」と聞いてもまともに答えられない。そりゃそうです、あくまでも任意なんですから「協力してくださいよ」がせいぜいです。
※そもそも、ただの通行人を呼び止めて職務質問する権限など警察官にはない。それにもまして、ただの通行人のバッグの中身を強引に見る権限なんて、なお更のことない。警察官職務執行法(以下、警職法)の、第2条で言っているのは

第1項  警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行な われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問をすることができる。

 であり、それ以上でも以下でもない。街を行きかう通行人がこの範疇に入らないのは言うまでもない。あまり横柄な態度を警察官が取るようなら回りの野次馬に聞こえるようにこの条文の解説、あるいは演説をするのも面白いかもしれない。(笑)詳しい逐条解釈は「★職務質問の要件」を読んでください。とても分かりやすいです。

 でも、無知な若者には任意を装った職質、これはかなり強力です。普通、おまわりは二人以上で左右を取り囲む、あるいは行く手に立ちはだかるのですから法律に無知な若者なら警察官の言うがままでしょう。

 ときどき街で見る警察官の「強制的な」職務質問の光景は、もしかすると彼らの個人的な点数稼ぎだけでなく上からの組織的な指示による国民の従順度の定点観測かもしれないですね。

 以下、以前ご紹介した"元国家公安委員長"、白川勝彦さんが経験した理不尽な職務質問の記事です。前回はリンクだけでしたが、参考になるエントリーなので情報として採取しておきます。

 白川さんはご自身弁護士でもあり、また創価学会の政治介入に批判的なリベラルな考えの方です。"元国家公安委員長"の肩書きからも分かるように、元自民党でしたが、その後自民党に愛想をつかして新党・自由と希望を設立、現在は無所属です。

 下記、白川さんの記事中では最後のほうの「★職務質問の要件」で、警察官職務執行法について分かりやすい解説をしてくれています。このエントリーを何度か再読し、さらに印刷して持ち歩くのも良いでしょう。「★職務質問の要件」の警職法逐条解釈のところを通りすがりの人にも聞こえるような大きな声で読み上げたりするとなおさら効果的かもネ。(笑)

 また、前にも書いたように、警察官については必ず役職名と氏名とID番号の確認をすべきです(所属署などはID番号で確認できます。左胸の徽章のところと、警察手帳にもID番号が書いてあります。ID番号だけでなく氏名も必ず控えます。ID番号だけだとメモ誤りすればそれでおしまいです。録音の場合なら雑音で聞きづらかったり、「イチとシチ」のようにあとで聞き間違えるケースがあります。アマチュア無線の和文通話表に従い「ヒト、ナナ」等言い分けた場合は大丈夫でしょうが、)。警察手帳の提示を求め「役職(漢字と英語の両方で書いてあります)、氏名(漢字の確認)、ID番号」を必ず確認してメモするなり、ICレコーダーを持っているなら録音してしまいましょう。無視して去ろうとするとついてくる場合があります。余計なことはしゃべる必要はないです。その時警察官が暴言・妄言をはく例が多いのでICレコーダーは録音状態のままにしておきましょう。カセットレコと違って、最近のICレコーダーは単4電池1個で5、6時間は平気で連続録音できます。普段は音楽を聴いても良いですしね。

救援ノート  最強の冤罪自己防衛は
1、権力への幻想を捨て、信用しないこと。
2、黙秘権を行使すること。
3、録取調書には絶対に署名をしないこと。
詳しくは救援ノートを読もう。

密告奨励法の共謀罪は廃案!バナー 共謀罪クイズ、共謀罪は密告奨励でっち上げやり放題現代版治安維持法バナー


忍び寄る警察国家の影

※この小論は、「白昼堂々、4人組が!」と題して3回にわたり永田町徒然草に連載した職務質問を受けた体験と法的問題点をまとめたものです。小さな 一事ですが、このことに潜んでいる問題は極めて大きなものです。自由な社会を作ることを使命とする自由主義者にとって、絶対に等閑にできない問題です。永 田町徒然草で一度お読みいただいた方も、ぜひもう一度お読みいただければ幸いです。

★ちょっとむさい格好で渋谷に

 私が新潟県 中越地震の視察から東京に帰ったのは11月8日の午後でした。風邪気味だったので、東京に帰ることにしたのです。帰る途中から容態は悪くなるばかりでし た。これは仕方ない、いい子になって寝るしかないと覚悟しました。風邪薬を飲んで、厚着をしてベッドで寝たのですが、だんだんひどくなるばかりです。1日 も休めば治るだろうと思ったのですが、なかなか治らず丸4日寝込んでしまいました。

 11月11日、午前6時過ぎに私は目覚めました。体 調は昨日よりはいくぶん良いものの、依然として本調子とはいえない状態でした。昨日の夕食にお粥を食べただけですから、お腹が空いていました。食べるもの は食べないと風邪も治らないので、家内が用意してくれたお粥を食べました。食欲はありましたし、美味しくいただけました。昨日もほとんど寝ていたのです が、ベッドで横になるとまた眠れるのです。これが病気ということなんですね。

 4時間くらいぐっすり眠りました。10時ころ目が覚めまし た。下着がまたびっしょりと濡れていました。これを脱ぎ捨て、新しい下着を身に付け、外出着に着替えて、私は渋谷に向かいました。3日間も風呂に入ってい ないので髪は乱れていまし、髭ものびていました。ですから、普段は地下鉄なんですが、むさ苦しい格好なのでタクシーで行きました。どうしてもその日に振込 まなけければならない用件があったからです。

★4人組がグルリと取り囲む!

 タクシーを降り、2箇所の金融機関に寄り、振 込みを済ませました。熱のためでしょうか、すごく喉が渇いていました。バニラシェイクを飲みたくてなって、馴染みのモスバーガーに行こうと歩いているその 時でした。何処となくきた厳つい格好をした4人組に、私はいきなりグルリと囲まれました。私は、反射的に両手を入れていたベストのポケットから手を出し、 身構えました。タバコとライターが左手に、右手にはライターがありました。4人組はズボンのポケットを中のものを見せてくれというやいなや、私のズボンの ポケットの上を強く触ってくるのです。一瞬何が起きたのか、状況を把握するのに時間がかかりました。私が4人組の襲撃を受けたのは、ハチ公前交差点から 100メータ―ほど道玄坂を登った広い歩道で、通行人も多いところでした。
4人組に取り囲まれた図

 白昼堂々、突然4人組にグルリと囲まれ、いきなりズボンのポケットの中にあるものを見せろといわれて、身体検査よろしく体に強く触られたのです。私は腕に自 信にあるわけではありませんが、「お前たち一体何なんだ、冗談じゃない」といって突き飛ばすなり、ぶん殴りたくなりました。でも、幸いにも私は冷静さを少 し残していました。それをやったら、彼らの思う壺だと判断する思考能力が、働いていたのです。

 そうなのです。私を白昼堂々襲ってきた4 人組は、警察官だったのです。少しむさ苦しい格好だということは自覚していました。だからといって警察官の職務質問を受けなければならない状況ではないと いうことは明らかでした。それも質問などというものではなく、いきなり4人にグルリと取り囲まれ、ズボンの左右のポケットと財布の入っている後のポケット を、4人の屈強な男に交々強く触られたのです。彼らが制服を着ていなければ、反射的にこれを突き飛ばすなり、殴り飛ばすなりして、私は自分自身を守ったで しょう。しかし、この自然な行動を私がとれば、彼らが待ってましたとばかり公務執行妨害で私を逮捕することは、火を見るよりも明らかです。私は、弁護士で ある自分に戻っていたのです。

★執拗に身体検査をしようとする

 私は、私のズボンのポケットを上から強く触ろうとする彼らの手を払いながら、大きな声でこういいました。

 「君たちは何で私のポケットの触るのだ。何で君たちにポケットのものや財布を見せなければならないのだ」

 彼らの中でいちばん歳をくった男がいいました。
当日と同じ場所と服装

 「あなたは、いま手を入れていたチョッキのものは、見せてくれたじゃないですか。怪しいものをもっていないのならば、ズボンのポケットの中のものも見せなさい。なぜ、見せられないのですか。見せなさい。財布を出しなさい」

 そういいながら、執拗に私のズボンのポケットに触ってくるのです。私はだいぶ冷静になってきました。この手を払いのけることは正当防衛的な行動ですから、公務執行妨害にはなるまいと思いながら、強く払いながら大きな声でこういいました。

 「私は、見せる気がない。何で財布まで見せなければならないんだ」

 そ れでも、この4人の警察官は、ズボンのポケットの中を見せなさい、財布を見せなさいといって私を取り囲み、そこを動こうという私の自由を完全に奪っている のです。そして、こりもせずに何度も何度もズボンのポケットの上を強く触り、中のものを確かめようとするのです。「何で触るんだ」と詰問すると、「触るの は職務質問として許されているんだ」と開き直るのです。正確な時間はこういう状況ですから分りませんが、おそらく3~4分くらい激しく揉み合い、いい合い ました。

★「怪しいものがないのなら、見せなさい」

 私はこういうことをしながらも、次第に極めて冷静になってきました。 そして、本当に空恐ろしいものに遭遇した自分に気付きました。私は弁護士ですし、また国家公安委員長をしましたので、職務質問の有用性も問題性もよく知っ ています。しかし、いま私が受けていることがこの職務質問であるとしたならば空恐ろしいことであり、曖昧に済ますことはできないと思ったのです。怖いとい うのは、警察官が怖いということでは、もちろんありません。こんなことが職務質問として行なわれていることが、空恐ろしく思えたのです。こんなことは許さ れてはならない、ここはじっくり勝負しようと、私は考えはじめたのです。今度は「こっちの方が執拗に食い下ってやろう」と覚悟を決めました。

 私 は、なぜ私のポケットの中を見せなければならないのか、何度も何度も聴きました。彼らの答えは、「怪しいものがないのなら見せてください。見せられない の、怪しいものをもっているからじゃないですか」というのです。「なんで私の体に触るんだ」と聴くと、触るのは許されているというのです。いく見せなさい と言われても、見せるつもりは私にはもうまったくありません。身体検査的に私の体に強く触ることは、職務質問として許されないことので、これも絶対に許す つもりはありませんでした。

 「ポケットの中の物を見せなさい、財布を見せなさい。なぜ見せられないのですか。ますます見なければなりま せん。体に触るのは、許されているのです。弁護士さんに相談するという人もいますが、弁護士さんに警察官にいわれるとおりにしなさいといわれて、皆さん協 力してくれるんですよ」

 こんなことをいいながら、彼らは少しも態度を変えないのです。囲みを解こうともしません。正直いって私の我慢も 限界に近づきつつあったのですが、無理してこの囲みを解こうとすれば、彼らが公務執行妨害として私を逮捕することは明白でした。人通りのある中、こんなこ とを10分以上繰り返しておりましたが、埒があかないことは明らかでした。彼らの言葉や行動は、棒を飲んだようにまったく変わらないのです。

 私 は、別にズボンの中に何も怪しいものなど持っていませんでした。家の鍵と小銭が入っていただけです。なぜ財布を見せろといったのか理解に苦しみますが、財 布には4万ちょっとの現金と免許証と病院の診察券、それにパスネット(地下鉄のプリペイドカード)があるだけです。先ほどの振込みの控もありましたが、見 られたからといって別に困るほどのものでもありません。ですから、私が素直に見せればそれで終ったかも知れません。また、それで終らせるのが賢明なやり方 かも知れません。しかし、私にとって、これはもうそういう問題ではなくなっていたのです。こんなことがまかり通っていたのでは、自由も人権もあったもの じゃないと私は考えていたのです。彼らも、よりによって変な人物に関わってしまったものです。

★警察署か交番か

当日と同じような人ごみ
 人通りの多い渋谷の歩道で、「見せろ、見せない」「触るな、触るのは許されているんだ」ということを15分くらい繰り返していました。遠巻きに時には人垣も できましたが、それは近くの信号待ちの時間だけでした。皆、関わり合いたくないのでしょう。本当は、誰のために鐘が鳴るなんですがね。

 どうやって局面を変えようかと考えました。彼らの言動は何度もいうようにまったく変わらないのです。局面を変えることは、極めて難しい状況でした。ですから、私は、ひとつのカードを切ることにしました。

 「私 は弁護士だ。いま君たちがやっていることは、警職法では許されることではない。君たちのやったことを私は署長に訴えなけれならない。だから、まず君たちの 認識番号を押さえておかなければならない。君たちの認識番号を書く。私はいまボールペンを持っていないから、貸してくれ」

 私はタバコの包み紙に4人の胸にある認識番号を控えました。彼らは素直にボールペンを貸してくれ、番号も見せました。

 「それでは、渋谷署に行こう。しかし、私はいま風邪をひいていて、いままでほんとに寝ていたんだ。歩いていくのはちょっとシンドイので、タクシーで行く。君たちも乗っていいから、一緒に行こう」

 こ ういって、タクシーを拾うために反対側の車線に行くために近くの信号に渡ろうとしたのですが、4人組はこれを体を張って妨げるのです。そして「ここじゃな んですから、交番に行きましょう」とさかんにいうのです。私は彼らと話すつもりもありませんでしたし、彼らと話しても何にもならないことですから、まった くとり合いませんでした。ですから、状況は先程とまったく変わらないのです。

 今度は「渋谷署に行く。署長と話をする」と私がいい、「交 番に行きましょう。交番で話を聞きましょう」と警察官が答えるといういう押し問答を同じ場所でまた10分くらいしました。そうこうしている時、私は顔見知 りの人を見かけましたので、ちょっと呼びました。彼は来てくれてました。私は事の次第を話して、「私が警察署へ行こうというのに、彼らが納得しないんだ。 どう思う」とあえて周りの人にも聞こえるように大きな声でいいました。そして、数人が見ていることを確認して、私はタクシーを拾うために囲みを振り切って 道路を渡りました。タクシーを拾って警察署に行くために多少強引に4人組の囲みを破っても、公務執行妨害で逮捕することはできないという状況と証人を作っ ての行動でした。

★タクシーかパトカーか

 とにかく20分くらい同じ場所で4人にグルリと囲まれていた状態から、私は道路 の反対側に移ることがようやくできました。しかし、4人の警察官が私をグルリと取り囲んでいるという状況はまったく変わりません。私には逃げるつもりなど まったくありませんでしたが、タクシーを止めてこれに乗り、渋谷署に行くことは4人に完全に阻止されていました。こんな状態ですから、第一タクシーが止 まってくれません。1、2台は止まってくれたのですが、私が乗り込むことができないので、そのまま先に行ってしまいます。私の行動の自由は、事実上奪われ ているといってもいいのでしょう。私が彼らの職務質問から解放され、自由にどこかに行くことができなかったことはいうまでもありません。

 こ んなことを10分くらいしているうちに、彼らも私を交番に連れて行くのはさすがに諦めたようです。後はどうやって渋谷警察署に行くかという問題です。渋谷 署は、いま私たちがいるところから1キロメートルくらい離れたところにあります。私は警察署長に会って、彼らがやったことを包み隠さず話し、反省してもら いたいから警察署に行くつもりですし、本気なのです。逃げる気など毛頭ありませんし、いまさら解放されても私は渋谷署に行くつもりでした。いくら彼らがそ れは勘弁してほしいといったって、今度は私の方に譲る気がないのです。

 渋谷署に行こうというのですが、今度はその方法が問題になっているのです。

 「私は、いま風邪をひいているので、渋谷署まで歩いていくのは正直にいってシンドい。だから、タクシーで行く。君たちも乗ってもいい。もちろん、お金は私が払う。なんでこれがいけないのか?」

 「それはできないのです。私たちはタクシーには乗れないのです。パトカーを呼びますから、それで行きましょう」

 こう繰り返すだけなのです。パトカーならタクシー代は確かにかかりません。「理不尽な職務質問をさんざん受けた上、パトカーに乗せて下さる!? 冗談じゃない!よくも平気でそういうことがいえるものだ」とさすがに腹が立ってきました。

 「冗 談じゃない。パトカーなんかにのれるか! 私はタクシーで行く」というと、「私たちはタクシーには乗るわけにはいかないのです。それでは、歩いて行きましょう」というのです。私は、風邪がひどく やっとベッドから這い出てきたのですから、1キロちかくある渋谷署まで歩いていくのは本当にシンドいのです。このことを何度話しても、彼らの答えはまった く同じなのです。

 タクシーかパトカーか、車でいくか歩いていくかの押し問答です。こんな押し問答を5~6分、車がひっきりなしに通る交 差点の路上で行ないました。交差点ですから、信号が変わるたびに多くの人が通ります。私だって、こんなことをしているのは嫌になってしました。だからと いって、パトカーを差し向けて下さるというご好意を受ける訳にもいきません。また歩いていくのは、シンドいのでOKという訳にもいきません。どうして、こ んな石頭を相手にしなければならないんだろうと苛立ってきました。

★警察官に付き添われて渋谷署へ

 彼らもさすがに参った のでしょう 。4人組の一人が無線で上司と相談しれいるようでした。間もなくして許可が下りたらしく、私がタクシーに乗っいくことを了承しました。手をあげてタクシー を止めました。一人が前に乗り、もう一人が私の側に乗らせてもらいますというのです。そんなこと、最初から私は当然のこととしていましたので、許可するも しないもないのですが、逆に私はこういいました。

 「後に二人乗らなくていいのか? 君たちは私がタクシーに乗って、怪しいものをタクシーの中に置いていく危険があるから、タクシーはダメだといったんのだろう。私の左右に二人乗ればいい じゃないか。お金は私が払うから」と同乗を勧めたのですが、「いえ、それはいいんです。逮捕ではないんですから」といって、一人だけが私の左側に乗りまし た。

 彼らも状況が少し変だなと気付きはじめたようです。いままでに比べると態度がだいぶ丁寧になってきました。言葉使いも丁重になってきました。車がけっこう混んでいましたので、1キロ足らずの距離でしたが10分以上はかかったのではないでしょうか。車中で、

 「君たちはいつもあんな風な職務質問をするのか? 日本という国も恐ろしい国になったもんだなぁー。困ったことだ」

といいますと、

 「私たちは、この渋谷の治安を守らなければならないのです。拳銃を持っている者もいれば、薬物を持っている者もいるのです。ですから、職務質問をして未然に犯罪を防止しなければならないのです」

というような趣旨の話をさかんにするのです。

 彼 らをこれ以上責めても、悪いことをしているという認識がないのですから仕方がないと思い、私は取り合わないことにしました。彼らと30分ちかく押し問答す る中で、彼らが今日私にしたことを正当な職務行為だと信じ切っていることはよく分りました。私がいくら彼らにいって聞かせても、彼らが私のいうことを聴か ないことは明らかです。私は、このような職務質問をさせている警察署長に現状を話し、これを改めさせるために渋谷署に向かっているのですから。途中で私 は、警察署にタバコ販売機があるかどうか聞きました。もしなかったらタバコを買っていこうと思ったからです。丁度、タバコがなくなっていたのです。けっこ う長引くだろうから、タバコはいるなぁと思ったのです。

★何とか課長さんの登場

 車は、渋谷署に着きました。代金を払い、 署内に入りました。私は、入り口の近くの部屋に案内されました。取調室ではないようですが、応接室としては味気ない小さな固いソファが一つだけ置いてある 広い部屋でした。まずはタバコを確保しようと思い、自動販売機はどこかと聞いたところ、買ってきてくれました。灰皿がなかったので「ここは禁煙か」と聞く と、床に置いてある大きな吸殻捨てをもってきてくれました。ドアを閉めないので、出入りする人が見えます。

 タバコを吸って待っている と、何とか代理という人が出てきました。私は、署長としか話すつもりはなかったので、応対する人には興味ありませんでした。ですから、あえて肩書きには関 心がなかったので、その警察官にも失礼ですが、申し訳ありませんが「何とか代理さん」としかいえないのです。

 私は、その何とか代理さん に「今日私が職務質問を受けたことで、署長にいいたいことがあるのできました。署長にお会いしたい。私は国家公安委員長をしたことがある白川勝彦です」と 告げました。何とか代理さんは、私を知らないようでした。また、国家公安委員長というのもよく知らないらしく、都の公安委員ですかとか、国家公安委員です かとかいって、何度も書きかえていました。「私が平成8年9月から翌9年9月まで、国家公安委員長をしていた白川勝彦だということ。その白川が署長に会っ て話をしたいので、取り次いでもらいたい」旨を丁寧に説明しました。

 よく分ったのか分らないのかしれませんが、その何とか代理さんは退 席していきました。その代わり、今度は何とか課長さんという人が出てきました。張り切って出てきたその人には失礼ですが、私は署長と話すつもりしかありま せんでしたから、その課長さんの肩書きにはまったく関心がなかったので、この人もまた「何とか課長さん」としかいえないのです。その何とか課長さんは、何 とか代理さんから変な風体をした公安委員長と称する者が来て、署長に会わせろといっているといわれて、こんな者は追い払わなければならないと思って張り 切ってでてきたのだと思います。最初からいやに肩に力が入っていました。

 しかし、私が会いたいのは署長だけですから、誰が出てきても同 じです。私は先の何とか代理さんにいったと同じように、国家公安委員長をした白川勝彦であること、今日職務質問を受けたことで署長に話をしたいので取り次 いでもらいたいといいました。そしたら、その何とか課長さんの返答がふるっているのです。

 「国家公安委員長は、どうやって任命されるの ですか。どういう仕事をするんですか」というのです。そんなことをどうして聞くのかと思ったのですが、要は私がかつて国家公安委員長をした白川勝彦だとい うことを信じられないのでしょう。住所はどこですかとか、そのときの総理大臣は誰ですかなどと執拗に聞くのです。しかし、何とか課長さんがどう思おうと、 私がかつて公安委員長をした白川勝彦であることは間違いない事実ですから、仕方ありません。

 彼が私をどういう素性の人物だということを 知らなかったのか、あるいは知っていてもこういう問題で署長に会わせることはできないと思ったのか不明ですが、一向に署長に取り次ごうとしません。そして 「もし、あなたが国家公安委員長をした人ならば、警察官を苦しめるようなこんなことはしないはずだだ」とか何とかいうのです。今度は、私が国家公安委員長 をした白川勝彦であるかどうかが、押し問答の中心的なテーマとなりました。15分くらいこんな押し問答をしたでしょうか。彼の言わんとすることを要すれ ば、署長に会わせる訳にはいかないということです。だったら、もうこの何とか課長さんと話をする必要はありません。

★副署長さん現る!

 「分 かった、もう、あなたに取次ぎは頼まない。直接私が面会を申し込む」といって、私はその部屋を出ました。別に制止はありませんでした。もし、私がそのまま 警察署を出ようとした場合、彼らは制止したかどうか? それは分りません。制止はしなかったのではないかと私は思います。その証拠に、私についてきませんでしたから。何とか課長さんにしてみれば、なんとも得体 の知れない人物には、早々に立ち去ってもらいたいというのが本音だったのではないでしょうか。しかし、今度はこっちがこのまま引き下がる訳にはいきませ ん。何としても今日私が受けたことを署長に知らせ、このようなことが行なわれないようにすることが私に与えられた任務であると確信し切っているのですか ら。

 その部屋を出たところに、渋谷署のカウンターがあり、そこに「総合受付」というところがありました。そこで、署長への面会を申し込もう と思い、話はじめようとすると、件の何とか課長さんはあたかも大事件のように「受付はあっちです、あっちです」といって、入り口のカウンターを示すので す。それなら、「総合受付」というのは一体何なんだといいたくなります。しかしいまはくだらないことでクレームを付けられることではなく、署長に面会する ことが先決ですから、入り口のカウンターで求められた申込書に必要事項を書いていました。すると遠くのほうから大きな声で「白川先生!白川先生ではありま せんか」といいながら、誰かが駈け寄ってきます。一体、何処のどなただろうかと思いました。

 「私は、昔、警察庁の政府委員室にいた○○ です。いまここで副署長をしています」といって、私を先程の部屋に引き戻しました。正直にいって、私は彼を知りませんでした。彼が政府委員室にいたのは、 平成7年までだそうですから、私が知らなくても不思議ではないのです。私が国家公安委員長を務めたのは、平成8年から9年ですから。

 事 情は、すでに部下から聞いていたのでしょう。彼は警視庁の警察官ですが警察庁に出向し、政府委員室という国会対策をするところに勤務していた関係で、私を 知っていたのでしょう。人定ができた以上は、それなりの対応をしなければならないので、出てきたのだと思います。その証拠は、「一体何があって、いま私が ここにいるのか」ということについて、まったく質問がでなかったことです。そして、今日起こったことには多少問題もある、ということも承知していたのだと 思います。

 この人柄のよさそうな副署長は、政府委員室に勤務していた時や、私の国家公安委員長時代の話をし、私を誉めてくれるのです。 だからといって、私はそれに気をよくしてそのまま帰る訳にはいかないのです。私はまずお茶を所望しました。バカバカしい押し問答を相当長いことやっており ましたので、喉が乾いていたのです。お茶を飲みながら、私は改めて事の顛末を詳しく副署長に話しました。そして、これはよくないことなので、ぜひ是正しな ければならないといいました。さらに、このことを署長にもちゃんと伝えるようにいいました。彼から特に反論はありませんでした。

★罰としての長説教

 最 後に、私は副署長に「現場にいた4人でいちばん階級の高いものを呼びなさい」といいました。勘違いしたのか、警邏(けいら)の現場の上司と思われる警察官 がきました。私は実際に職務質問した警察官に話したかったので、彼らの中で一番階級の高い者を呼びなさいと,、再びいいました。4人組の中の一人がきまし た。君がいちばんの上司なのかと聞いたところ、階級は同じだが年齢が一番上だということでした。彼の上司には後ろで聞いてもらうことにして、彼と副署長に 対して、私はこういいました。

 「今日の職務質問で一番問題だったことは、ズボンのポケットの中のものを見せなさいといって、ズボンの上 から強く触ったことである。見せる見せないは、あくまで私の意思でやることであって、これを強制する権限は君たちにない。『怪しいものがないのなら、見せ てもいいじゃないですか』と君たちは執拗にいったが、それは根本が違うのだ。自由主義社会というのは、国家からの自由も、できるだけ保障する社会なんだ。 私は自由主義者として、そういう社会を作ろうとして努力してきたのだ。怪しいものを持っていないのなら見せなさい。見せないからといって、怪しいものを 持っているからだろうと疑うことは、とんでもないはき違いなのだ。ここのところを、よく分ってもらいたい」

 「君たちの中では、一体、誰 が一番の大将なんだ。誰が現場において臨機応変な措置をすることになっているんだ。犯罪の現場だろうが、今日のような警邏であろうが、一つひとつの現場は 決してマニュアル通りにはいかないのだ。そこで、経験と臨機応変さが必要になるのだ。私は国家公安委員長時代、これからは“はぐれ刑事純情派"の藤田まこ と(正式には、安浦刑事)のような刑事を大切にしていかなければならないといい、そのよう制度を作らせた。それは、そういうことをいいたかったのだ。それ なのに、今日の君たちの対応は一体なんだ。石頭すぎる。副署長、これは、このような編成で警邏させる方に問題があるんじゃないかな」…などなど。

 例によって、私の長演説に付き合ってもらうことになりました。しかし、長い間私の自由を奪い、また私の名誉をいささか傷つける行為をしたのですから、このくらいは我慢してもらっても罰は当たらないでしょう。最後に私はこう付け加えました。

 「今日、私が体験したことは、私のWebサイトに書くつもりだ。君たちもインターネットを見るんだろう。どう書くか、ぜひ見てもらいたい」

 副 署長は「今日のことはこれ限りにしてほしい」と頭を下げました。人のいい彼には申し訳ないことですが、私はこれには応ずることはできませんでした。私の体 験は貴重であり、また空恐ろしいことであり、こんなことを野放図にしてはならないと思ったからです。これは、もう私の不動の信念となっておりましたから。

★自慢話ではないのです

 「白昼堂々、4人組が!」などと大仰な見出しにもかかわらず、こんなことに過ぎないのか、大騒ぎする 程のことじゃないではないか、という人もおられるかもしれません。しかし、私が経験したような状況の中で、私と同じ行動を取れる人が、果たしてそんなに多 くいるでしょうか。私は弁護士です。私は政治家です。私は国家公安委員長をしました。また私は熱烈な自由主義者です。そんな私だから、ここで詳しく書いた ような行動を取れたのだと思います。

 私は自慢話をしているのではないのです。自慢話なら、もっと別の行動でなければなりません。非礼か つ無法な4人組をちぎっては投げ、ぶっ飛ばしたというような話でなければなりません。実際のところ、あまりにもしつこいものでしたから、突き飛ばして4人 組の囲みから脱出しようと何度も思いました。しかし、そんなことをすれば彼らの思う壺だと思ったから、やらなかっただけです。私は狡猾だっただけなんで す。考えてみれば、こんな意地悪な人物に目を付けてしまった4人組こそ、災難だったのかもしれません。

 警察官に取り囲まれ、見せろ見せ ないなどといって揉み合う姿は、決して格好いいものではありません。東京の繁華街ですから、顔見知りの人はあまりいませんが、それでも私を知った人がいた かもしれません。名誉な光景では決してありません。だったら、素直に彼らのいうことを聞いていればいいじゃないかという人がきっと多いでしょう。確かに、 そうしても私は困るようなものを持っていた訳ではありませんから、直ぐに無罪放免になっていたかもしれません。しかし、自由主義者の一人として、それだけ は絶対に認めることはできません。

 いずれにしても、私と同じような行動を取れる人の方が少ないと思うのです。それが彼らの狙いで、職務 質問ということで、本来は許されないことを平気でドンドンやっているのでしょう。テロとの戦争また治安の維持ということで、こうしたことが平気で罷りとお る社会的風潮だと思います。アメリカでは、9 ・11以降、アラブ系の人々などに対して、憲法で保障された人権をまったく無視する違法なことが行なわれていると聞いています。でもアメリカ追随の日本で すから、こうなっても不思議ではないでしょう。しかし、そんなことは、絶対に許してはならないのです。

 私としては、できるだけ忠実に私 が体験したことを永田町徒然草に書いたつもりです。別に誇張をしなくても、十分に問題のある(私にいわせれば、違法な)職務質問でした。しかし、私は一方 の当事者です。しかも、かなり緊迫した状況の連続でしたから、客観性を欠く惧れはあるでしょう。ですから、私は、もう一方の当事者である4人の警察官に、 釈明なり、反論の機会を保障しました。若い警察官ですから、インターネットくらいは見れるでしょう。また、私は今回のことをウェブサイトで書くからとちゃ んといっておいたのですから、見ているでしょうし、見ていないようじゃ困ります。

 私が書いた事実に釈明なり、弁明や反論があったら、E メールで私宛てに送ってくれれば、そのまま掲載することを約束しまました。もちろん、それに対する私の再反論の権利は当然のこととして留保しましたが。ま た彼らの上司であり、直接の責任者である渋谷警察署長の釈明や反論も同じです。さらには、今回の私のクレームをどう受け止め、どのような措置をとったの か、これはぜひお伺いしたいところでもありました。しかし、2004年12月1日現在、メールは届いていません。

★Due Process Of Law の精神

 警 察官というのは、名刺を出さないんですね。私が会った全部で8人の警察官の中で、私に名刺をくれたのは副署長さんだけでした。彼が私にくれた名刺にある標 語が「好きだから 正義で守る この街を」でした。警視庁全体のものか、渋谷署だけの標語かは知りませんが、おおいに結構なことです。

 し かし、正義とは何か。ここで問題になるのは、Due Process Of Law という考え方なのです。法の適正手続きなどと訳されますが、本来の意味はちょっと違うような気がします。国民の生命・身体・財産などに対する強制力の行使 は、法が定める正当な手続きと方法に基づいて行なわれなければならないという、かなりポヂィティブな意味をもっている概念で、アメリカ法のもっとも基本的 な理念のひとつです。

 勝てば官軍とか、結果良ければすべて良しとか、長いものには巻かれろなどという言葉がある日本では、これはなかな か理解されない理念です。しかし、わが国が自由主義の国であるならば、絶対にないがしろにしてはならない理念なのです。今回私が遭遇した警察官には、この 理念に対する理解がまったくないと断ぜざるを得ません。だからこそ、私は空恐ろしいと思ったのです。

 Due Process Of Law は、正義です。特に警察権力の行使は、絶対的にDue Prcess Of Law の精神に基づいて行なわれなければなりません。わが国の警察権力や国家権力には、彼らが思っている程の信用はないのです。ですから、殊のほか Due Process Of Law が求められるのです。しかし、その自覚がもっともないのが警察官であり、検察官であり、官僚です。ですから、ちょっと油断するとわが国は、警察国家にな り、官僚王国になってしまうのです。「権利のための闘争」…ドイツの法哲学者イェーリングの有名な言葉です。この“権利のための闘争"というビヘイビィア こそ、自由主義者としての私の発想と行動の原点です。

 全体的国家では、人権など保障されません。国家は神聖かつ絶対な存在であり、国家の犯 罪などという概念は、最初からありません。こういう社会では、国家の人権に対する犯罪は一般的であり、日常的に行なわれます。しかし、最低限の生存すら保 障しえない北朝鮮は国民から見放されて、“脱北者"を多数生み出しています。こうした北朝鮮の現状を私たちは、不幸な他国のことといえるのか? といいたいのが、今回私が受けた職務質問なのです。

 私が受けたような職務質問が公然と許されるようになれば、わが国は早晩警察国家とな るでしょう。犯罪は現在よりも摘発が楽になるでしょう。治安も多少は良くなるでしょう。だが、私たちの人権は確実に侵され、私たちは国家に対して従順に生 きていかなければなりません。テロとの戦争ということで、イラク国民を十数万人も殺したアメリカを公然と支持する小泉首相が率いる国家に、私たちはどうし て従順に従わなければならないのでしょうか。私に対してあのような石頭的対応しかできなかった警察官のやることを、私たちはどうして素直に受け入れなけれ ばならないのでしょうか。少なくとも私はそういう社会には住みたくありません。日本をそんな国にはしたくないのです。

★職務質問の要件

 警察官職務執行法(以下、警職法といいます)は、第2条において次のように定めています。

 「第1項  警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行な われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問をすることができる。 第2項 その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問をするために、その者に付近の警察署、派 出所又は駐在所に同行することを求めることができる。 第3項 前2項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しく は答弁を強要されることはない。 第4項 警察官は、刑事訴訟に関する法律により逮捕されている者については、その身体について凶器を所持しているかどうかを調べることができる。」

 以 上が、職務質問といわれることに関する規定です。それほど、難しい条文ではありませんから、普通の人でも理解できると思います。職務質問に何かと問題があ ることを知っている方は多いと思います。この規定を読めば、4人の警察官が私に行なった職務質問は明らかにおかしいということを分っていただけると思いま す。私は弁護士ですから、若干説明を付け加えましょう。

 まず、どういう者に対して職務質問が許されるのかということですが、次のような者に対してできるのであって、誰に対してもできるというものではないのです。
異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して、何らかの犯罪を犯し、または犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者
異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して、既に行なわれた犯罪について、または犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者

 A は、犯罪を犯し、または犯そうとしている者です。しかし、ただ警察官がそう思っただけではいけないのであって、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に 判断して、そう疑うに足りる相当な理由」が必要なのです。「現に罪を行い、または現に罪を行い終わった者」は、現行犯人として逮捕することができます(刑 事訴訟法第212、213条)。現行犯逮捕は犯罪を行なったことが明らかである場合にだけ許されます。

 4人の警察官からみて、私の挙動 のどこが異常だったのか、そして私がどのような犯罪を犯しまたは犯そうとしている者と疑ったのか、これはぜひ聞いてみたいところです。警察署に行くタク シーの中で、ひとりの警察官が、「私が彼らを見てこれを避けようと通路を変更したから」といっていました。私は彼らをまったく認識していません。ですか ら、これを避けようとして進路を変更したこともありません。一体、私のどこの所作を指しているのかも分りません。百歩譲って、仮にそういうことがあったと しても、それだけで「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して、そう疑うに足りる相当な理由」があったとすることはできないでしょう。

 B は、既に行なわれた犯罪について、または犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者に対して行う職務質問です。この場合にも、「異 常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して」という条件が必要だと記されています。すなわち、問題にされている犯罪との現場性が必要とされるというこ とです。ですから、一般の捜査の聴き込みのことではないのです。このようなことが許されるのは、犯罪の現場における捜査上の必要性と現に行なわれる惧れの ある犯罪の予防という観点から認められたものと思われます。

 一体、私に対する職務質問が行なわれた現場の近くで、どのような犯罪があっ たのか、または行なわれようとしていたのか、私にはまったく分りません。そのようなことについて4人の警察官や渋谷警察署であった警察官から明らかにされ てもおりません。ですから、私の場合は、このケースではないのでしょう。

★職務質問で許されること

 さて、次は、「警察官は、停止させて質問することができる」ということです。これは、二つのことを警察官に許しています。「停止させることができる」ということと、「質問することができる」ということです。

 これに基づいて、4人の警察官はグルリと取り囲んで、私を「停止させた」のでしょう。しかし、正しくは停止させることができるのではなく、停止することを求めることができるということです。それは、次の第3項の規定から導き出されます。

 職 務質問を受けた者は、「身体を拘束され、又はその意に反して警察署などに連行され、若しくは答弁を強要されることはない」と明記されているからです。屈強 な4人で私を取り囲み、行動の自由を奪ったことは、事実上身体を拘束したと同じことです。もちろん手錠をかけるなどされた訳ではありませんが、この不当な 拘束を解こうとして、私が彼らを強引に振り切ろうとした場合には、彼らは私を公務執行妨害として逮捕することは十分に予想されます。いや、待ってましたと ばかりに逮捕したでしょう。ですから、私はこの不当な拘束に抵抗することも許されなかったのです。

 「質問することができる」ということ ですが、これは文字通り質問「することができる」のであって、それ以上でも以下でもありません。改めて考えてみると、彼らは、一体、私に何を質問しようと したのでしょうか。「ズボンのポケットの物を見せなさい。財布を見せなさい」というのは、果たして質問でしょうか。これは、そもそも質問ではありません。 あえて質問といえば、「ベストのポケットの物は見せたのに、ズボンの中の物を見せないのはどうしてか?」ということでしょう。

 私は、彼らにベストのポケットの物を見せたのではありません。私は、突然の襲撃に反射的に身構えるために、ベストのポケットから手を出しただけです。その時、ベストのポケットの中で手にしていたタバコとライターが一緒に出てきただけです。勘違いされては困ります。

 そ して、この質問には私はハッキリと答えました。「どうして、私が君たちにポケットの中を見せなければならないのだ」と。それは、「私は、見せるつもりはな い。君たちは、私のポケットの中のものを見る権限はないはずだ」ということです。それに対する彼らの答えは、「怪しいものをもっていないんならば、素直に 見せなさい。見せられないというのは、何か怪しいものでももっているのか?」ということを何十回も繰り返し、ポケットの上から中のもの確かめようとして何 度も何度も強く触ったのです。4人のグルリとした囲みは、20分も続いたのです。これが「答弁の強要」でなくて一体何だというのでしょうか。

★身体検査は許されない

 第4 項に、「警察官は、刑事訴訟に関する法律により逮捕されている者については、その身体について凶器を所持しているかどうか調べることができる」と明記され ています。このような条件にかなわなければ、職務質問において、どのようなものを所持しているか調べるために、身体検査的なことをすることはできないので す。私は、職務質問で身体検査など許される筈はないと思っていましたので、「何で私の体に触るんだ」と抗議しました。すると、彼らは鬼の首でも取ったよう に、「体を触ることは許されているんだ」というのです。私は、現場の警察官に一体誰がこのように教えているのか、興味があります。いずれ調べてみたいと 思っています。

 以上が職務質問についての逐条的な解釈です。この職務質問については、制定当時から強い反対がありました。私はまだ小さ かったので詳しく知りませんが、昭和20年代に数次にわたる警職法闘争といわれる出来事があったと、歴史で学びました。戦前の「オイコラ警察」に対する恐 怖からだったのでしょう。そのせいでしょうか、警職法第1条第2項は、次のような規定をわざわざおいています。

 「この法律に規定する手段は、前項の目的のために必要な最小の限度において用いるものであって、いやしくもその濫用にわたるようなことがあってはならない」

 警職法が定めた最大の手段こそ、職務質問なのです。したがって、「必要な最小の限度において用いるものであって、いやしくもその濫用にわたるようなことがあってはならない」のです。少なくとも私に対して行なわれた職務質問は、濫用以外の何ものでもありません。

★偶然は2度続けて起きない

 さ いとうたかをの『ゴルゴ13』は、私が学生時代から好きな劇画です。もう30年以上も続いている連載漫画です。その中の名作のひとつに、「偶然は、2度続 けて起きない」といって、正体不明なターゲットを暴き出す作品があります。私が体験した職務質問を単なる偶然とみるか、考えてみました。そして、たまたま 私が粗暴かつ無礼(私にいわせれば違法)な職務質問に引っ掛かったのではなく、このような職務質問が一般的かつ日常的に行なわれていることの証拠だという 結論に至りました。

 私は、このことによって、何の被害もありませんでした。むしろ途中からしたたかな観察者としての目をもちながら、彼 らと対峙し行動しました。これは、私が弁護士であったために、職務質問というものの限界をおおむね知っていたからです。しかし、一般の人々が同じような知 識をもち、冷静に行動できるかどうか問うた時、そのような人がいたとしても、非常に少ないのではないかと考えざるを得ませんでした。Due Process Of Law の精神は、まだまだわが国ではそんなによく理解されていません。

 わが国では、テロへの恐怖は、まだそれ ほど切迫感がありません。しかし、犯罪の多発化や凶悪化には、多くの人が恐怖を感じています。かつてのような日本の治安に対する神話は、もはやありませ ん。当然のこととして、警察には、その責任が問われています。日本の治安を守るためまた犯罪を検挙するために、警察官がその職務を遂行する上で多少の強権 をふるうのは仕方ないのではないかという風潮が強くなっていることは、容易に想像できます。

 そういう中で、今回のような職務質問がなさ れたのでしょう。しかし、このようなことが許されるようになれば、日本という国はあっという間に警察国家となることは明らかです。警察国家になった時、そ の国の国民がどういうことになるか、これもまた明らかです。残念ながら、日本の警察にも、日本という国家に対して、私はそれほど楽観的になれないのです。 そのような考え方は、決して危険思想でもなんでもありません。そもそも、自由主義というのは、権力への不信から出発した思想なのです。

★強い警察の条件

 私 は、国家公安委員長の時に、「国民に信頼される警察になれ」と口酸っぱく訓示しました。強い警察というのは、国民に信頼されてこそはじめて作られるものだ という私の信念からです。それは、長いこと政治をやってきた私の経験に基づくものです。選挙をいつも戦っている政治家は、有権者の信頼があってこそ選挙も できるし、政治も行なうことができると、私はいつも思ってきました。威光や権限で選挙をやろうなどと思ったら、とんでもないことになります。

 自 民党というと政権党であるために、いろんな権限や人脈や利権があり、それ故に強いと思っている人が多いのですが、実はまったく違うのです。自民党の中にも そう思っている人が多いですが、それは間違っています。政党にとっていちばん大事なのは、選挙です。その選挙にそんな考えで臨んだら、まず負けます。自民 党がいちばん選挙に強いのは、自民党に対する国民の信頼が強くある時です。それがないのに、政権党ということを嵩にきて、組織を締め付けたり、脅しをかけ たりしても、選挙に勝つことはできません。私は党の総務局長をしながら、このことを嫌というほど味わいました。

 警察だって同じです。警 察が権限をもっていることは、当然です。それでは、権限があれば犯罪の捜査ができ、検挙率を上げることができるかといえば、そうはいきません。国民に信頼 されない警察には、情報も集まらなければ協力も得られないからです。国民の情報提供や協力がなければ、犯罪の捜査といえどもその実をあげることはできない のです。それは、他の警察活動でも同じです。しかし、権限の塊ともいうべき警察組織の中で育った警察官は、意外にこうしたことを知らないのです。国民に恐 れられる警察が強い警察だ、と勘違いしている人も結構いるのです。だから、私は「国民に信頼される警察になれ」ということを強調したのです。

 あ なたは、あなたに対して私が受けたような、粗暴かつ無礼な職務質問を平気でする警察官に好感を持てるでしょうか。好感をもてない警察に、国民は果たして協 力するでしょうか。日本の警察は、彼らが考えるほど国民に好感をもたれていませんし、信頼もされていないのです。しかし、彼らはこのことに気がついていま せん。不幸なことに、そんなものは必要ないとすら思っている警察官が多いのです。強い警察を作るための根本が分っていないのです。残念なことです。このこ とを指摘し監理するのが国家公安委員会の仕事なのですが、この公安委員会がまたこのことを分っていないのです。悲しい現実です。 (了)

イェー リング Rudolf Von Jhering 1818-1892 歴史法学の立場からローマ法を研究、さらに法を社会における目的や利益の観点から分析・研究する必要性を説いたドイツの法学者。主著“ローマ法の精神" “権利のための闘争"“法における目的"等。法は究極的に個人の権利を保障するものであり、権利とは利益であると考えて、その基本的な部分の考え方を「権 利のための闘争」という言葉によって表わした。「法の目的は平和であり、それに達する手段は闘争である」 (ダス・ツィール・デス・レヒト・イスト・デア・フリーデ,ダス・ミッテル・ ダーツー・デア・カンプ)


またまた職務質問に!

No.284

 昨 日、また渋谷で職務質問に出合った。一昨年に続いて2度目だ。いい加減にしろといいたくなる。今回の状況を詳しく述べる。昨日午前10時ころ、年賀状の印 刷を依頼するために渋谷の印刷屋に行った。午後2時ころには出来上がるので校正をしてもらいたいというので、また来るのも時間の無駄になるので午前11時 ちょっと過ぎに友人とハチ公前交差点に面した有名なうなぎ屋に入り、昼食をとった。美味しいうなぎを食べた後、ランチタイムは禁煙だというので近くの喫茶 店に行こうとしたところで、二人の警察官に呼び止められた。

 時間は11時40分ころであった。場所はうなぎ屋を出 て、10メートルか20メートルくらい道玄坂の方に向かって歩いたところである。昼食時間なので、歩道は沢山の人がごったがいしているという風情である。 大通りに面した広い歩道である。二人の警察官が私たちの前に立ち「ちょっと職務質問をします」とセールスマンよろしくいい寄ってきた。「私はお断りしま す」と断固としていった。友人は「あなた、この前私に職務質問をしましたね。あなたは憶えていないかもしれないが、私は憶えていますよ」と一人の警察官に 向かっていった。二人の警察官はどうしても職務質問をさせてくれと執拗にいいかけてきた。

 2対2だから、今回はさ すがに私のポケットには触らなかったし、友人の体やポケットに触るようなこともしなかった。しかし、そのような雰囲気が感じられたので、機先を制して私は 次のようにいった。「私は公安委員長をやったものだが、また渋谷署は恥をかきたいんですか。前回のことは知っているでしょう」と少し語気荒くいった。友人 は「この人は偉い人なんだから、職務質問するなんて失礼だよ」といい添えた。語気荒くかつ気迫をもっていったものだから、一人は何か察したようである。し かし、もう一人は全然反応を示さなかった。やるならおやりなさい、お手並み拝見といこうじゃないかと思い、これを無視して先に行こうとした。反応を示した 警察官はもう諦めたようだが、片方の警察官はまだ未練があるようであった。

当日の私の服装と同じジーンズ姿

 そ の警察官に向かって私は「どうしてあなた方はこんなにしつっこく職務質問をするの」と訊いたところ、「これでけっこう犯罪が見つかるんですよ」と自信たっ ぷりといった。あまりにもお粗末な答弁なので、馬鹿らしくなって「認識番号を見せて」といって胸の記章をマジマジと見る振りをして二人を無視して喫茶店に 向かった。二人の警察官は追いかけてこなかった。それで今回は終った。今回の服装はというと、私はジーンズのジャケットとズボン。友人は40歳ちょっと前 にしては若い感じのする洋服であった。それだけのことである。私の髪はでかけるときブラッシングしてヘアースプレーもしている。髭は剃ってはいなかった が、昨夜風呂に入ったとき剃っていたのでほとんど伸びてはいなかった。友人の髪は近ごろの若い者がしているハイカラのものだが、ただそれだけのことであ る。髭も別段伸びてもいなかった。

 60歳を過ぎたらジーンズを着て街を歩いていけないのかといいたい。40歳近くの男が少し若作りのヘアースタイルをしてはいけないのかといいたい。それ以外に私たち二人が職務質問を受けなければならない理由は考えられない。一人の警察官が私の「忍び寄る警察国家の影」を本当に知っていたのかどうかは定かでないが、私が語気荒く抗議しなければ私たちはポケットとカバンの中を見せなければきっと解放されなかったであろう。その証拠に私たちがコヒーを飲んでいた2階の喫茶店から、二人警察官が道玄坂を下ってくる若者に対して職務質問をするのを目撃したからである。私たちがコ ヒーを飲んでいた喫茶店の向かいが109ビルである。若者が職務質問を受けたのは109ビルの真ん前である。

職務質問する警察官

 若 者は、最初のうちは強く抗議・抵抗していたように見えた。手で立ちはだかる警察官を撥ね退けようとしていた。しかし、最後はポケットから財布を出し見せて いた。そして解放された。弁護士的にいわせてもらえば、手で警察官を撥ね退けようとしたことは危険である。公務執行妨害罪に問われることになるからであ る。たまたま私はデジカメをもっていたので、私たちがいた喫茶店の窓から撮影した。それが、この写真である。時間は2006年12月21日11:55とあ る。ちょっと不鮮明だが、重要な証拠写真である。白い上着をきた若者の前に立っているのが、二人の警察官である。この後若者は財布などを取り出して警察官 に見せていた。

 大雑把だが以上が今回の事実関係である。「やましいことがなければ素直に警察官の求めに応じればい いじゃないか」という人が多い。しかし、そういう問題ではないのだ。ここはしっかりと考えて欲しい。自由主義社会においては、個人は尊重されなければなら ず、また国家から不当な制限や干渉を受けることはないのだ。個人の自由を制限したり個人に干渉しようとする国家権力の方が、その理由を具体的に示さなけれ ば制限したり干渉することは許されないというのが憲法の大原則だ。何をもって具体的な理由とするかということは、永田町徒然草No.282を読んでもらい たい。

 さいとうたかをの「ゴルゴ13」は、私の大好きな劇画だ。最近はちょっと懲り過ぎている嫌いがある。初期の作品に「偶然は2度はない」 と正体不明のターゲットを探りあて、この名文句付きで狙撃するという名作があった。国家公安委員長の経験者が2度も、また友人が同じ警察官に2度も渋谷で 職務質問を受ける。また自らが職務質問を受けた直ぐ後に他人に対して故なく強引な職務質問をしているのを目撃するということは、偶然が2度重なったとはい えないだろう。執拗な路上セールスマンのように、職務質問するのが警察官の仕事になっているようだ。ある人から1日に何件の職務質問するようにマニュアル 化されていると聞いた。警察官職務執行法で許されている職務質問とはそういうものではない。

 ご同輩、服装に気を付けて外出しなければならない国になりますよ。あぁ、そういえばこの国の首相は「美しい国、日本」を作るといっていましたね。こういうことなんですか? だからなんですか。こういう美しい国は願い下げたいものである。

 それでは、また。

  • 06年12月22日 04時34分AM 掲載

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コメント

実は、昨年末に生まれて初めて職務質問を受けました。昨日退職した会社に社会保険料や税金の支払いに行くために最寄り駅から徒歩で向かい、その途中でパトカーに出会いました。支払いを済ませて戻る途中で同じパトカーと出会い、職務質問を受けました。理由を説明し、免許証を見せると「有難うございました」と礼を言われ立ち去りましたが。
神奈川県警なのでこの程度で済んだのかもしれません。住居侵入・窃盗・強盗の容疑者と疑われてしまいました。

投稿: ゴルゴ十三 | 2007年1月19日 (金) 08時17分

おはようございます。安倍晋三政権下で進む、忍び寄る警察国家の影を興味深くよませていただきました。私もその警察国家化の陰が2000年から激しくなってきた感じがします。実は私も職質をうけた経験があって、知人がたまたま京都ナンバーの車を所有していて私が乗り合わせていたところを、警察官が追っかけてきて職質されたことがありました。私はその理由を問いただすと「京都が学生運動が強い地域だから」なとどいってくるではありませんか。当時、認識番号などを問う手もあったことを知っていれば、相手の警察官の名前もわかっただろうにと思ってしまいました。確かに、「有難うございました」と礼を言う警察官もいるのですが。あと、sovaさんのバーナーをとても大事に使わせていただいています。

投稿: 日本国憲法擁護連合 | 2007年1月20日 (土) 06時59分

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光の天使たちよ 心の外側から聞こえてくる思い・考えは説き伏せて 心の中心部からひびいてくる思い・考えをこの地上に実現させよう 光の天使たちよ 危機迫る地球と人類を救っていこう 力を合わせて この地球を築いていこう... [続きを読む]

受信: 2007年1月23日 (火) 20時17分

« 残業代不払い法、おのおの方、追撃の手をゆるめるな。溺れる犬は棒でたたけ。参院選終わればやるに決まってるジャン。(笑) | トップページ | とりあえずのluxemburgさん、こんばんは。以前植草さんの発言に注目されて先生が執筆したのを集めてましたよね。 »