立花隆さんの講演会に行ってきました。そして、その感想を元に憲法を取巻く情勢マッピング・マトリクスを修正してみました。
今日、東京駅前丸善3Fのセミナールームで立花隆さんの講演会を聞いてきました。2時から4時10分までの講演会でした。
とにかく内容も盛りだくさんで、ICレコーダーで録音してきたので何回か聞いて反芻しようと思っています。
戦後日本の骨格作りを言論の言葉の力でリードした、南原繁先生の話し、そして去年8月15日東大での講演会の紹介から話しは始まりました。
入江俊郎著「憲法成立の経緯と憲法上の諸問題」、佐藤達夫著「日本国憲法成立史」、が紹介されました。
次に、宮沢俊義氏の逐条解釈(コメンタール)が紹介され、現憲法のスタートはポツダム宣言を受け入れたことから始まっていると話しが進んで行きました。
※宮沢俊義氏著作:宮沢俊義著、「憲法義解」、宮沢俊義著「憲法講話」、宮沢俊義著「憲法 (単行本) 」
※SOBA個人的なメモ:立花さんが紹介したポツダム宣言10項、11項、12項(日本の最終の政治形態は、日本国民の自由に表明された意思によって決定される。)←あとで調べる。「自由に表明された」のためにも公選法の民主的な改正が重要だと思う。
中でも印象に残ったのは、(なお、・『 』内の文章は立花さんが言ったそのままの言葉ではなくて、僕が聞いたことをあくまでも要約したものです。)
・『流れとしては大日本帝国憲法を改正するという形で現在の憲法がある。大日本帝国憲法には何があって何がなかったかを考えれば現在の憲法もよく分かる。大日本帝国憲法では主権者は天皇であり、それに関連することしか書かれていない。国民については納税義務とか徴兵義務とか義務ばかりであり権利についてはほとんど書かれていない。逆に「現在の憲法は国民の権利しか書かれていない」と文句を言う人がいるが、現憲法と対比させて大日本帝国憲法を読めばそういう人たちの背景もよく分かる。』
※SOBAメモ:その後、大日本帝国憲法を調べてみた。なるほど立花さんが言う通りだった。第1条から第17条までは天皇主権に関することだけ、第2章に臣民権利義務とあり20条と21条で真っ先に兵役義務と納税義務がくる。その後、21条から29条に権利らしきことが書かれているけれども、たとえば言論・集会結社なら「法律の範囲内において」とか、それ以外でもすべて「法律の定めたるところを除く外」とかまくら言葉が必ずついていて国家が堂々と踏みにじることができるようになっている。
・『現憲法は実に良くできた憲法である。啓蒙の時代⇒フランス革命と人類が歴史の中で獲得して来た人権思想その他、近代法に必要な要素をすべて備えている。』
・『法とは何か、憲法とはなにかと言うことで言えば、特に英米法に見られるように判例の積み重ねで時代に合わせていくべきものである。特に憲法はやたらにいじくるべきものではなく、判例などで解釈改憲すべきものである。マグナカルタの英国では成文の憲法さえない。』
※SOBA感想:いままで「解釈改憲」と言うと、自民党のやり方を批判する文脈で言われることが専らだった。護憲の立場から「解釈改憲」の言葉が使われたので最初はビックリしたが目から鱗、新鮮であった。
・『最近では「環境権を入れるために」という口実でからめ手から改憲を主張する人がいるが、そんなことは憲法をいじらなくても普通の立法でできることである。』
・『イラクへの自衛隊派遣は現在の憲法があったからあの程度ですんでいた。現在の憲法とは別の内容の憲法ならあの程度ではすまずもっと大変なことになっていただろう。』
・『もし、改憲するなら近隣諸国との関係が悪くなるだろう。ここで言う近隣諸国、つまり日本にとって一番大事な近隣諸国とは米国のことで、確実に悪くなるはずだ。日本のマスコミはほとんど報じていないが、News Weekの米国版では日本語版とは違って安倍を危険な国家主義者として記事にしている。』
※会場が丸善3Fだったので帰りにNews Weekの米国版(2007年4月30日号)を買っちゃいました:
1、表紙
2、32頁
3、33頁
4、34頁
5、35頁
関連
これが阿修羅でもなかった立花隆さんのメディア ソシオ-ポリティクス「第104回 米メディアが警戒する安倍首相初訪米の中身」
・『大日本帝国憲法のもとでは優秀な人材の人的リソース、また経済的リソースのほとんどが軍事にあてられた。戦後の繁栄は、現憲法のもとだから享受できた。優秀な人材の人的リソース、また経済的リソースを経済に当てたからである。』
等々でした。最後に、佐柄木俊郎著「改憲幻想論―壊れていない車は修理するな」、中村明著「戦後政治にゆれた憲法九条―内閣法制局の自信と強さ」、中村明著「戦後政治にゆれた憲法九条―内閣法制局の自信と強さ/「武力行使と一体化論」の総仕上げ (単行本)」などが紹介されて講演が終わりました。
最後に、サイン会が行われ、購入したばかりの立花隆編集「南原繁の言葉―8月15日・憲法・学問の自由」 、南原繁著「文化と国家 新装版 (単行本) 」に立花さんのサインをいただいてきました。
※なお、アンケートがあったので、(ネット言論では、一連の改憲の動きは自衛隊を米軍の傭兵として戦えるようにするためである。つまり、米国の意図ともシンクロしていると言う考えがあります。小生自身もそう考えるものですが、その点についてはどのように先生自身はお考えになっておられるのか「メディア ソシオ-ポリティクス」あたりで書いていただけるとうれしいです。)と書いておきました。
※下記が講演会から帰宅後、感想を元に修正した、「実は既に手にしていた理想の憲法」と言うことで、憲法を取巻く情勢マッピング・マトリクス図です。
(クリックすると拡大します)
下記が修正前のマトリクス図です。
おまけ:アニメGIFを組み込んだタイプです。クリックすると拡大し、左上に組み込んだアニメGIFも表示されます。サイドエリア設置用に幅は150ピクセルです。タグは「「実は既に手にしていた理想的な憲法」図解にアニメGIFバナーを組み込みました。かなり強烈なアピールになったかも、。(笑)」を参照願います。
小泉の2005・9・11小選挙区制インチキ選挙のアニメGIF組込み版
コマ追加、低投票率・諦めさせる・変化しないと思わせるアニメGIF版
カルトに祝電男が改憲で戦後レジームの脱却?作り上げたい日本がある、米国の代わりに戦争する国づくりアニメ組込み版
関連投稿
「ビックリなのだが、自民党HPで、「改憲草案」でも「憲法改正草案」でも見つからない。「選挙争点は郵政民営化だ」の時と同じで中身隠しジャン。(笑)」
「「地獄への道は善意で敷きつめられている」になるのか?護憲勢力の課題設定の拙劣さと見えてきた安倍が圧勝しなくても多分負けない悪夢の道筋。」
「憲法「表現の自由」や「異議あり」への安倍自民党の本音、「自由と生存のメーデー07――プレカリアートの反攻」デモ警備を見ればよく分かる。」
「YouTubeがやたら止まったり、いきなり端折って切れたりする時の視聴法。例として「クローズアップ現代 9条を語れ 憲法は今」。」
「立花隆さんの講演会で紹介された「再建日本の出発-1947年5月 日本国憲法の施行」(国立公文書館)は5月22日までです。」
「ヘンリー・オーツさんのマトリクス図はお粗末過ぎる。本来ならこう描くべきだ、「憲法を取り巻く現状と目指すべき方向」。」
「kojitakenさんのマトリクス図を分かりやすく書き直し、軸の取り方を僕の価値観を入れて逆にしてみました。」
「世論調査って、もちろん世論誘導の意味もあって、調査者の願いがそれとなく出ていて面白いよね。(笑)」
「「実は既に手にしていた理想的な憲法」図解にアニメGIFバナーを組み込みました。かなり強烈なアピールになったかも、。(笑)」
「護憲・憲法九条Tシャツ作成のすすめ。夏、Tシャツの似合う季節、参院選に向け各自オリジナルTシャツを作ろう。」
「憲法九条Tシャツ作ってみました。プレカリアートTシャツも格好良かったけれど、これもけっこういけます。」
以下、三省堂「解説条約集」より。
●ポツダム宣言
PROCLAMATION DEFINING TERMS FOR JAPANESE SURRENDER
署名 1945年7月26日(ポツダム)
一 [戦争終結の機会] 吾等合衆国大統領、中華民国政府主席及グレート・ブリテン国総理大臣は、吾等の数億の国民を代表し協議の上、日本国に対し、今次の戦争を終結するの機会を与ふることに意見一致せり。
二 [戦争遂行の決意] 合衆国、英帝国及中華民国の巨大なる陸、海、空軍は、西方より自国の陸軍及空軍に依る数倍の増強を受け、日本国に対し最後的打撃を加ふるの態勢を整へたり。右軍事力は、日本国が抵抗を終止するに至る迄、同国に対し戦争を遂行するの一切の聯合国の決意に依り支持せられ且鼓舞せられ居るものなり。
三 [戦争継続の結果に対する警告] 蹶起せる世界の自由なる人民の力に対するドイツ国の無益且無意義なる抵抗の結果は、日本国国民に対する先例を極めて明白に示すものなり。現在日本国に対し集結しつつある力は、抵抗するナチスに対し適用せられたる場合に於て全ドイツ国人民の土地、産業及生活様式を必然的に荒廃に帰せしめたる力に比し測り知れざる程更に強大なるものなり。吾等の決意に支持せらるる吾等の軍事力の最高度の使用は、日本国軍隊の不可避且完全なる壊滅を意味すべく、又同様必然的に日本国本土の完全なる破壊を意味すべし。
四 [日本国の選択肢] 無分別なる打算に依り日本帝国を滅亡の淵に陥れたる我儘なる軍国主義的助言者に依り日本国が引続き統御せらるべきか又は理性の経路を日本国が履むべきかを日本国が決定すべき時期は、到来せり。
五 [戦争終結の条件] 吾等の条件は左の如し。
吾等は、右条件より離脱することなかるべし。右に代る条件存在せず。吾等は、遅延を認むるを得ず。
六 [軍国主義勢力の除去] 吾等は、無責任なる軍国主義が世界より駆逐せらるるに至る迄は、平和、安全及正義の新秩序が生じ得ざることを主張するものなるを以て、日本国国民を欺瞞し之をして世界征服の挙に出づるの過誤を犯さしめたる者の権力及勢力は、永久に除去せられざるべからず。
七 [占領の目的] 右の如き新秩序が建設せられ且日本国の戦争遂行能力が破砕せられたることの確証あるに至る迄は、聯合國の指定すべき日本国領域内の諸地点は、吾等の茲に指示する基本的目的の達成を確保する為占領せらるべし。
八 [領土の極限] カイロ宣言の条項は、履行せらるべく、又日本国の主権は、本州、北海道、九州及四国並に吾等の決定する諸小島に局限せらるべし。
九 [軍隊の解体] 日本国軍隊は、完全に武装を解除せられたる後各自の家庭に復帰し、平和的且生産的の生活を営むの機会を得しめらるべし。
十 [戦争犯罪人の処罰・民主主義傾向の強化] 吾等は、日本人を民族として奴隷化せんとし又は国民として滅亡せしめんとするの意図を有するものに非ざるも、吾等の俘虜を虐待せる者を含む一切の戦争犯罪人に対しては厳重なる処罰を加へらるべし。日本国政府は、日本国国民の間に於ける民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障礙を除去すべし。言論、宗教及思想の自由並に基本的人権の尊重は、確立せらるべし。
十一 [賠償及び産業の制限] 日本国は、其の経済を支持し、且公正なる実物賠償の取立を可能ならしむるが如き産業を維持することを許さるべし。但し、日本国をして戦争の為再軍備を為すことを得しむるが如き産業は、此の限に在らず。右目的の為、原料の入手(其の支配とは之を区別す)を許さるべし。日本国は、将来世界貿易関係への参加を許さるべし。
十二 [占領軍撤収の条件] 前記諸目的が達成せられ且日本国国民の自由に表明せる意思に従ひ平和的傾向を有し且責任ある政府が樹立せらるるに於ては、聯合国の占領軍は、直に日本国より撤収せらるべし。
十三 [日本国政府への要求] 吾等は、日本国政府が直に全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し、且右行動に於ける同政府の誠意に付適当且充分なる保障を提供せんことを同政府に対し要求す。右以外の日本国の選択は、迅速且完全なる壊滅あるのみとす。
※昔、パソコン通信をやっていた頃、「南京虐殺」関連でネットウヨと丁々発止やりあいました。その時資料として購入していたのが役立ちました。でも、それほど読み込んでないので汚れておらず新品状態。(笑)あとで気が向けば解説部分をアップします。ただ完全手入力となるので気が重いです。
上記は、Wikipediaの「ポツダム宣言」をコピペし、エディタの全置換機能を利用してカタカナ部分を三省堂「解説条約集」 のひらがなにしたものです。Wikipediaの「ポツダム宣言」になかった句読点も入れました。また各項目の[ ]内の要約は三省堂「解説条約集」 からです。
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コメント
TB深謝。
熱心なお勉強。いつも感心して見ています。
昭和憲法は私にとってからだの一部分です。
あんな単純な発想で、グレードの低い憲法に変えるなど、許せることではありませんね。
投稿: ましま | 2007年5月 8日 (火) 21時12分