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2007年6月12日 (火)

6月12日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年6月12日朝刊)

[カエルツボカビ]徹底した防御策が必要

 沖縄や千葉、茨城、埼玉の各県で捕獲され、業者が一時的に飼育していた野生のカエルとイモリ計三十八匹から両生類を90%以上の高率で死なせるカエルツボカビが確認された。

 麻布大学の宇根有美准教授によると、県内では、今年一月から二月にかけて複数のペットショップで購入したカエル四種類十四匹のうち、二種類四匹が「陽性」、一匹に「擬陽性」の反応が出たという。

 同大学の調査では、実験用のカエルで約98%、魚などの餌になるカエルで約55%の高率でカエルツボカビを検出。ペット用では九種類四十五匹で発症を確認している。

 また、ネットで購入した南アフリカ原産でカエルツボカビへの耐性があるアフリカツメガエルを検査したところ、五十二匹中五十一匹が陽性だった。

 昨年十二月に国内で初めてカエルツボカビが確認されてから半年。今回の調査で判明した発症固体数は、感染が拡大していることを示している。

 飼育中に感染した確立が高いが、もし野生で感染したのであれば、ツボカビ発生地域の生態系には既に異変が起きている可能性も否めない。

 事態は深刻であり、感染拡大を防ぐためにも徹底的に調査する必要がある。それにはまた、ペットショップや愛好家の理解と協力も必要だ。

 飼っているカエルやイモリなどに飽きたからといって、池や川に放流すべきでないのは言うまでもない。

 ペットショップや飼育者の場合、両生類が死んだら捨てたり埋めたりせず、焼却することだ。飼育ケースの水もそのまま流すのではなく、一度沸騰させてから捨てることが重要となる。

 それがツボカビを“外”に出さず、封じ込める手だてになるからだ。

 県の天然記念物であるイシカワガエルやホルストガエルをはじめ国内で絶滅が危ぶまれている九種類のうち、八種類は南西諸島に生息している。

 この地域にはまた、イボイモリなどカエル以外の貴重な両生類も多い。

 カエルツボカビは人間に直接害を及ぼさず、鳥類や魚類にも影響しない。

 だが、野外で拡大した場合、まずカエルなどに害を及ぼし、両生類が絶滅したり減少すると、それを捕食するサギなど鳥類が減るのである。

 食物連鎖であり、さまざまな生き物が深いところでつながる生態系と言っていい。

 いずれにせよ、カエルツボカビが野外で繁殖してからでは遅い。生態系を守るのは私たちの責任なのであり、官民が協力して徹底した調査を基に防御策を講じていきたい。

[最低賃金]安全網として引き上げを

 政府が「成長力底上げ戦略」の一つとして打ち出した最低賃金の引き上げをめぐる論議が難航している。最低賃金法改正など労働関連三法案の今国会での成立も不透明な情勢だ。

 地域別の最低賃金の全国平均は時給六百七十三円。沖縄、青森、岩手、秋田の四県は六百十円で最も低い。

 例えば最低賃金の時給六百十円で一日八時間働いたとしても、生活保護給付の水準を下回る場合もある。

 まじめに働いても、生活保護水準の暮らしさえ確保できないのはおかしい。少なくとも生活保護給付と最低賃金との整合性を検討していくべきだ。

 最低賃金が低いことがワーキングプア(働く貧困層)を生み出す原因になっているという指摘もある。最賃引き上げは避けては通れない課題だ。

 政府の成長力底上げ戦略推進円卓会議では、労働者側が最賃引き上げを求め、使用者側は反対している。しかしこれ以上、ワーキングプアの問題などを放置することはできない。

 最低賃金制度の見直しを検討してきた厚生労働相の諮問機関、労働政策審議会部会が昨年末、生活保護費とのバランスを考慮して地域別最低賃金額の水準を底上げすることを求めた報告書をまとめている。この中で、就業形態の多様化などを踏まえ、地域別最低賃金を「安全網」として十分に機能させる必要があるとしている。

 その一方、政府の規制改革会議は、不用意に最低賃金を引き上げることはその賃金引き上げに見合う生産性を発揮できない労働者の失業をもたらす、などと指摘している。

 しかし、労働法制の規制緩和を受けて登場してきた偽装請負の違法事例などを見ると、労働者使い捨てという印象はぬぐえない。経済効率を重視するだけでは格差拡大の問題を是正していくことはできないのではないか。

 今後は最低賃金制度のセーフティーネット(安全網)としての機能をより重視し、地域の経済力や中小企業の経営環境などを踏まえ、政策として最賃引き上げを実現していくべきだ。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月12日 朝刊 1面)

 那覇市山下町の第一洞穴遺跡で一九六八年に発見された三万七千年前の山下町洞人は、われわれと同じホモ・サピエンス(新人)という。

 山下町洞人は、年代の分かっている人骨では日本最古の位置付けだったので、そのまま最も古い新人となる。骨の見つかった層よりも上の層の木炭片の放射性炭素年代で三万二千年前とされてきたのを暦年代に補正。五千年も遡った。

 日本で見つかった人骨はすべて新人とされていたが、論拠の薄い人骨も多かった。今回その一つであった山下町洞人の骨を詳しく調べて縄文人と比較。科学的に立証した点は評価されよう。

 沖縄の島々の石灰石は、骨を守るので古い人骨や動物の骨が残りやすいと研究者に注目されてきた。日本最古の完全な人骨である一万八千年前の港川人も出土している。山下町洞人は港川人と県民の“先祖”だ。

 ただし、狩猟採集だけで沖縄本島に長く住めたのかは分からない。港川人の子孫が滅びず県民につながったとの考えを疑問視する研究者もいる。山下町洞人と港川人の関係もしかり。今後の研究課題の一つである。

 山下町洞人は日本列島にそのころ現れる旧石器の担い手として注目される。だが、沖縄ではまだ旧石器は確認されていない。山下町洞人や港川人の使っていた 道具は何か、海を渡ってきたのか、陸続きに来たのかも謎だ。しかし、日本人のルーツや人類の拡散を語り、歴史ロマンを醸し出す。(福島輝一)


【琉球新報・社説】

国連環境計画 相次ぐ警告、対策のばねに

 地球温暖化に伴う危機的な状況報告が相次いでいる。国連の内部機関として1972年に設立された国連環境計画(UNEP)は、「氷河や山岳地帯に降る雪からの水に飲み水、農業用水を依存している15億もの人が、地球温暖化の影響で、水不足や水害の恐れがある」との研究報告をまとめた。
 ドイツで開催された主要国(G8)首脳会議(サミット)での主議題は、地球温暖化の問題だった。環境の問題は世界政治の主課題だ。先進国だけではなく、開発途上国も含め、世界各国が協力して取り組まなければならない課題であることも確認された。
 国連環境計画の報告では、雪や氷が解けることで、水不足や水害など水に直結する問題だけでなく、雪や氷が反射するエネルギーの量が減ったり、凍土の下に閉じ込められていた炭素が、メタンや二酸化炭素などの温室効果ガスとして大気中に放出され、温暖化がさらに進む悪循環の可能性が指摘されている。
 また、氷河や雪と縁の遠い国でも海面上昇の影響による被害の恐れもある。経済への影響も大きく、欧州のスキーリゾート地では、観光業が危うくなるという。
 人間だけではなく、寒冷地を好むトナカイ、カリブーなどの動物が減少するなど、生態系への影響も懸念される。
 ドイツのサミットでは、「2050年までに温室効果ガスを少なくても半減させることを真剣に検討する」ことで合意した。来年のサミットは北海道の洞爺湖が会場だ。具体的にどう検討し、温暖化をストップさせるかが問われる。議長国となる日本の責任は重い。
 地球の温暖化は進み、既に影響は世界各地で表れている。残された時間はそう長くはない。今後20―30年の取り組みが地球の運命を決めてしまうともいわれる。
 国連環境計画は、インド南部で灯油ランプなどに依存している約10万人の貧しい人々に、銀行の資金を活用して小型の太陽光発電装置を提供、温室効果ガスの削減に成果を挙げているという。
 日本の環境白書では、温暖化対策として、省エネ技術の開発、国民運動の必要性を強調している。工場から出る煙から硫黄分を取り除く装置、排ガス規制をクリアし、燃費でも優れた日本の自動車技術などをさらに進化させることは、温暖化対策への大きな力になる。
 問題は日本自身の取り組みも遅れていることだ。京都議定書で、1990年比で温室効果ガス排出量を6%減らす義務を負っているが、昨年秋の速報値では減らすどころか逆に増えている。来年から始まる5年間の約束期間に義務を果たさなければならない。日本の取り組みが問われている。

(6/12 9:55)

年金トラブル 不安解消は加入者の立場で

 誰のものか分からない公的年金記録が5000万件以上もあり、揺れている社会保険庁で、今度はシステムに障害が発生、社保庁への信頼がさらに低下している。
 沖縄を含む全国23県の130カ所の社会保険事務所で、公的年金の記録を管理する社保庁のオンラインシステムに接続できず、約2時間半にわたって相談に来た加入者らの記録照会ができなくなるトラブルがあった。
 相談に来た人にとっては、自分の年金記録は大丈夫だろうかとの不安から、しかも日曜日に確認しに来たのに、このトラブルでは不信感をさらに募らせたことだろう。
 年金は老後の生活を支える大切な資金。支払ったはずの年金保険料がちゃんと記録されずに宙に浮き、もらえるべき年金がもらえない可能性があるのでは大問題だ。
 それだけに安倍内閣の支持率は急落。今月の1、2日に共同通信社が実施した全国緊急電話世論調査では5月の前回調査より11.8ポイントも落ち、内閣発足以来最低の35.8%となった。不支持率は10.5ポイント上昇、48.7%と最高。
 内閣支持率の低下は、年金問題だけではなく、松岡利勝前農相の自殺に対する任命責任、「政治とカネ」にまつわる問題も絡んでいるが、年金の占める割合は大きい。
 年金記録に不備があったとしても、領収書などの資料で証明する必要がある。加入記録を証明するのが大変な人たちもいる。領収書がなく、思い出せる限りの職歴をたどっても、既に倒産していて確認できなかったり、在職した証言を得るのが難しいこともある。
 政府は、領収書など証拠がないケースの記録訂正の是非を判断する第三者委員会を総務省に設置する。社保庁と離れた中立的な立場で判断できるようにするのが狙い。国民、加入者の立場で、不安を一掃、信頼できる年金を確立してほしい。記録不備の原因や責任の所在を調査する検証委員会も総務省に設置される。責任の所在を明らかにして、このようなことが二度と起きないような仕組みを構築してほしい。

(6/12 9:53)

【琉球新報・金口木舌】

 「老いること」に対する考えは人それぞれだろうが、一般的に人はそれをマイナスイメージでとらえてしまうのではないか
▼古代ローマの哲学者キケロは「老年について」(岩波書店)の中で、老年には肉体の力はないが、思慮や見識があるとし「肉体が老いても、心は老いることはない」と訴えている
▼1976年に結成された中部地区老人クラブ大正琴・歌声サークル。会員たちは沖縄における大正琴発祥のサークルと自負している。メンバーの中心は沖縄市在住の60代から80代の女性たちだが、70代まではまだまだ“ひよっこ”扱いだ
▼90代はいるし、かつては104歳まで現役を貫いた会員もいた。90歳を超えた内間史会長は数年前までピアノ伴奏をしていたという。県内外、国外へも演奏に出掛ける
▼サークルのモットーは「美しく楽しく老いる」。月2回の練習日には大正琴を弾きながら歌謡曲、民謡を口ずさむ。新曲にも挑戦する。その元気な姿は老いることを楽しんでいるかのようだ
▼誰も老いることを避けて通ることはできない。だが、「美しく楽しく老いる」ことは、自らの努力でできるはずだ。心の老いることのない女性たちがそれを教えてくれる。

(6/13 9:52)


【東京新聞・社説】

学校の建物 耐震化をもっと急ごう

2007年6月12日

 公立学校の耐震化がなかなか進まない。学校は子どもが一日の大半を過ごす場所であり、大災害の際は避難所にもなる重要な施設だ。耐震診断と補強工事を行い「危険な学校」をなくそう。

 耐震化とは、建物の耐震診断を行い、問題があれば、壁を補強したり窓に筋交いを取り付けるなどの応急工事にとりかかり、震度6強の地震に耐えられるようにすることだ。

 文部科学省が行った公立学校の建物状況調査では、ことし四月一日時点で小中学校の耐震化率は58・6%だった。前年が54・7%だから、それほどの伸びとは言えない。

 耐震設計については一九八一年、形状などの特徴に合わせて確認する現行基準が施行された。そこで、診断は現行基準が適用されていない八一年以前の建物が対象となる。

 八一年以前の校舎や体育館約八万棟のうち、約二万棟が精度の高い方法で耐震診断を受けたという。その結果、大規模地震の際、倒壊や大破する危険性が高いとされる建物が四千三百二十八棟にのぼった。八一年以前の建物では二十棟に一棟という割合であり、深刻な数字だ。

 大地震で校舎が倒壊し、子どもが犠牲になったり、被災場所が避難所だったというのでは、最悪の事態になってしまう。耐震化を急がなくてはならないが、工事は進まない。最大の問題は費用がかかるからだ。

 神奈川、三重、静岡、愛知、東京などは耐震化率が高い。首都直下地震や東海地震への防災意識が強く、財政力のある自治体が多いからだろう。その一方で、北海道では三十三市町村が、主に財政事情から耐震診断を行う予定すらないという。

 学校の統廃合や、市町村の合併問題があるために耐震化計画が一時停止している地域もある。建て替える場合、一部の自治体庁舎にみられるような華美なものは必要ない。耐震性はしっかり確保してほしい。

 耐震診断だけでも早急に行うべきだが、診断結果を公表していない自治体が多い。二千近い設置者のうち「公表している」は二割にとどまる。これは地域住民が知っておくべき情報だ。診断や公表には大きな費用はかからない。速やかに結果を公表すべきだ。

 九五年一月の阪神大震災では四十五棟の学校施設が倒壊・大破し、〇四年十月の新潟県中部地震では十四棟が大破した。このままでは、同じ規模の地震であっても被害に地域差が生じてしまう。学校の耐震化は自治体の最優先課題であるべきだ。行政の不作為で地震の被害が大きくなったということだけは防ぎたい。

警官の不祥事 信頼が根底からゆらぐ

2007年6月12日

 官製談合への介入、捜査情報漏えいなど大阪府警、愛知県警で現職警察官の不祥事が相次ぐ。住民の警察への信頼は危うくなる。厳正な内部監察と捜査情報管理の強化を急ぐべきである。

 内部捜査資料が事件関係者に漏れ捜査が失敗したとして、愛知県警の現職巡査長とOBの元巡査部長が、地方公務員法違反の疑いで同県警に逮捕された。同県警の捜査員による情報漏えいの前例はあるが、今回は巡査長自身が事件捜査の一人に加わっていた。事件はさらに広がる可能性もある。

 一方、大阪府枚方市発注の清掃工場をめぐる官製談合で、大阪府警捜査二課の現職警部補が大阪地検に逮捕された。警察官の不祥事でも、談合にかかわって身柄を拘束されたのは前代未聞である。

 この事件で、副市長なども逮捕されている。しかし警部補は、ゼネコンが参入しやすいようプラントと建物の分離発注を市に提案したほか、市幹部と受注ゼネコンを仲介するなど重要な役割を果たし、多額の謝礼を受け取った疑いも強い。前例のない悪質さである。

 住民は、毎日の生活の安心・安全を守ってくれる担い手として、警察に素朴な信頼を寄せている。凶悪事件多発や犯人検挙率の低下で、警察への批判が高まることはあるが、それは同時に期待の裏返しでもある。

 しかし、警察組織に属するメンバーが、自分自身で不正行為の中心となる役割を担ったり、事件の捜査に加わる地位を利用し、容疑者側に法の追及をかわす情報を提供したりしていては、住民の警察への信頼は根底から崩れる恐れがある。

 愛知県警はとにかく、身内の手で情報漏れを摘発した。だが、大阪府警の警部補を逮捕したのは地検だ。府警内部では「優秀な刑事」で通る一方、悪い風評もつきまとい、投書が届いたこともある。監察官は何をしていたのか。

 警察の監察制度は、厳正な内部調査と情実を排した処分がなければ、住民の信頼は得られない。強力な権力には強力な自浄装置が必要だ。

 愛知の情報漏えいは不法就労摘発の関連だが、最近は宮崎、福井両県警のように、刑法の談合罪適用による警察の談合摘発も増えた。警官が談合自体に首を突っ込むほか、談合に関する捜査情報の流出にも、目を配る必要が出てくる。

 警察は、捜査に影響を与えるような情報は一層管理を厳しくしなければならない。万一、流出しても、漏えいの経路を追跡できるようにするのは当然であろう。

【東京新聞・筆洗】2007年6月12日

 「たかが野球されど野球」。プロ野球の往年の名選手、故大下弘さんの言葉だ。戦後再開したプロ野球のスターで、使っていた「青バット」は川上哲治 さんの「赤バット」とともに流行語になった。プロ野球選手には時代の空気を変える力もあったのだろう▼今も同じような力があるとは思えないが、プロ野球選 手の一挙手一投足に多くのファンが声援を送っている。三十九歳になる桑田真澄投手には、中年を目前にしての大リーグ挑戦になるだけに、自分の人生と重ね合 わせて応援している人もいるようだ▼桑田選手本人にもファンにも忘れられない日がやってきた。パイレーツの一員としてヤンキース戦のマウンドに立ったの だ。2回で2失点は満足できる数字ではないが、約二十年かけて夢を実現したのだから、最高の喜びであるに違いない▼事実上の戦力外で巨人を退団しており、 ただでさえ難しい大リーグ挑戦だった。そこに球審と激突して右足首を捻挫(ねんざ)する不運が加わった。いつ夢をあきらめてもおかしくない日々だったと想 像できる▼桑田投手は「野球の神様」に感謝の言葉を口にしたが、自己分析によると「目標を持って、それに向かって努力する」タイプであることが、夢を実現 できた原動力に見える▼<ときには、二十歳の青年よりも六十歳の人に青春がある>。サムエル・ウルマンの詩「青春」の一節だが、桑田投手は三十九歳の青春 真っただ中なのかもしれない。閉塞(へいそく)感が漂う時代に、夢を追いかけるのに遅すぎることはないと教えてくれる。「されど」野球である。


【河北新報・社説】

経済同友会の提案/政党交付金アップに反対だ

 まっとうな政治活動には相応のカネがかかるのだから、国民1人当たり250円負担している政党への助成交付金を300円に引き上げてはどうか―。

 経済同友会(桜井正光代表幹事)が先に取りまとめた政治改革提言はこう提案している。

 税金で賄う政党交付金制度は、問題の多い企業・団体献金の縮小を狙いに、1994年の政党助成法成立を受けスタート。

 交付総額は国勢調査人口に250円をかけた額で、昨年は国会議員数などに応じて自民党など七党に約317億円が配分された。制度に反対する共産党だけが交付を受けていない。

 提言は交付金引き上げの理由に「個人の寄付文化が希薄な日本の現状」を挙げている。キリスト教文化を背景とした欧米の政党活動を想定しているようで、確かにそういう視点もある。

 しかし、私たちは300円への引き上げに強く反対する。

 その理由の1つは、政党交付金制度が企業・団体献金の是正という目的を十分に果たしていない現状にある。各党は交付金と献金の二重取り状態を制度発足後も続けてきたではないか。

 政党と政治資金団体への年間寄付は、個人なら2000万円以下、企業・労組・団体は750万円から1億円。政治家個人の資金管理団体への企業・団体献金はできないが、個人献金なら1件150万円以内。政治資金規正法はそこまで認めている。

 政党と外資系企業の関係では、外国の法人や個人が50%以上の株式を持つ企業は献金できなかったが、昨年の同法改正で献金できるように緩和された。

 制限の緩い政党支部で献金を受け、支部長を務める政治家個人の資金管理団体に環流させる迂回(うかい)献金の急増は法網の粗さを物語っている。

 このように二重取り状態は法の不備や献金の窓口の拡大によって、解消とは逆の方向に向かっていると言っていい。

 反対理由の2つ目は、交付金制度の大前提とも言える「政治とカネ」をめぐる世論の信頼感が醸成されていないことだ。

 与党が今国会に提出した政治資金規正法改正案は、資金管理団体の5万円以上の光熱水費などに領収書の添付を義務づける内容だ。しかしこれだと、領収書を5万円以下に小分けして不要にしたり、他の政治団体に支出を付け替えたりできるため、どう見ても抜け穴だらけだ。

 政治資金の透明化に向け実績をつくらないと夏の参院選を戦えないとの判断から、改正案成立を急ぐ自民党。しかし、この問題の渦中にあった松岡利勝前農相の自殺が逆風となった。

 共同通信の世論調査によると、「政治とカネ」問題への安倍晋三首相の取り組みは「評価できない」が7割を超え、不信の深さを示した。

 このように、政治資金の「出口」の規制が不調なのに、政党交付金引き上げで「入り口」だけを広げようとするのは、やはり不自然なことではないのか。

 経済同友会なりの理想論は分かる。しかし、「政治とカネ」をめぐる政党活動の現実をよりシビアに見つめてほしい。
2007年06月12日火曜日

【河北新報・河北春秋】

 江戸時代、コメの先物相場で巨万の富を成す商人がいた。酒田の豪農本間家の出身で、江戸・蔵前市場で成功を収めた本間宗久がよく知られる。宗久がもうけられたのは、コメの価格が乱高下していたからだ▼鎖国市場で主産地の不作は即、米価高騰につながった。値上がりを見込んで買い占めに走る商人もいて、都市住民の不興を買った

 ▼ 現代社会では今、バイオ燃料の需要が伸びた影響でトウモロコシが急騰する。そのあおりで飼料が高騰し養鶏農家などを直撃するが、消費者の実感は薄い。市場のグローバル化が食料価格の急激な変動を防いでいるからだ▼国内の野菜産地が台風被害を受けると価格が急騰したのは一昔前。最近は相場を見たアジア各国が大量の野菜を輸出し、値上がりを押さえ込む。物価安定には寄与するが、一方で国内農家の経営存続さえ危うくしている

 ▼人口爆発、耕地の砂漠化などで、21世紀は食糧不足が深刻化する―。一部エコノミストが警鐘を鳴らしてきた食料危機が現実になりつつあるが、体感できている消費者はまずいないだろう▼食料が日々輸入されてくるのは日本が金持ちだから。アフリカなどの貧しい国々では飢餓が進行する。飽食の国で暮らすわれわれが食料一揆の標的にならぬよう、世界の食料事情を学びたい。

2007年06月12日火曜日


【京都新聞・社説】

自殺対策大綱  まったなし、すぐ実践を

 昨年の自殺者数(警察庁調べ)が九年連続して三万人を超えたことが分かった。
 長時間労働の過労自殺に加え、いじめが原因と見られる学生・生徒自殺も目立った。
 景気が回復しても自殺者の減らない、“自殺大国ニッポン”は重症だ。
 政府はこのほど「自殺総合対策大綱」を決定した。昨秋施行の自殺対策基本法に基づいた初の総合対策指針だ。
 自殺死亡率を今後十年で20%以上減少させるとの数値目標を盛り込んだ。
 実現すれば二〇〇五年に十万人当たり二四・二人だった自殺率が、一六年には一九・四人に下がる計算だ。
 都道府県、政令指定都市は今後、大綱に基づいて自殺者減少の具体的な手だてづくりを急ぐことになる。
 だが自殺対策はまったなしだ。従来の取り組みを充実し、実践できるものから順次踏み切ることが肝要だろう。国も財政面などで支える義務を負う。
 日本の自殺率の高さはサミット参加のG8(主要国)ではロシアに次ぐが、国は総合的な対策を怠っていた。
 大綱では自殺を「個人の自由な意思や選択の結果でなく、さまざまな悩みに心理的に追い込まれた末の死」と定義、予防は社会的要因と心の健康問題などから総合的に取り組むことが必要とした。
 また世代別対策として、青少年には児童生徒や教員への自殺予防教育、中高年には失業や長時間労働など社会的要因の解消、高齢者には生きがいづくりや在宅介護者支援充実などを指摘した。
 重点施策では、自殺の実態解明調査、うつ病など精神疾患診断・治療技術の開発、職場のメンタルヘルス対策推進、遺族・自殺未遂者支援、民間団体との連携強化などをかかげた。
 大綱の具体化は自治体に委ねられるが、自殺が絶えない現状では、走りながら施策を考えねばならないだろう。
 それだけに各地で成果をあげている実践例を紹介するなど情報提供を含めて、国によるきめの細かい支援が必要だ。
 同時に政府に考え直してもらいたい面もある。一つは自殺者数だ。警察庁は事件との関係を入念に調べるが、厚生労働省は深く追及せず、双方の集計差は年間二、三千人になる。対策の根幹となる数字だけに厳密な方に一本化すべきだ。
 もう一つは自殺率減少の数値目標だ。大綱づくり過程で「30%減少」の声もあったが、原案は「20%減少」となった。政府内で「目標を達成できないと政治責任が問われかねない」との空気があったからだという。
 最終的に意見公募で批判を受け、「20%以上減少」と修正し、「早期達成の場合、目標見直し」を加えた。
 修正の背景には自殺者問題より、数字合わせに目が向く体質が潜んではいまいか。それでは悩む人の心からは遠い。反省すべきだ。

[京都新聞 2007年06月12日掲載]

消費者団体訴訟  うまく活用し、被害防げ

 消費者団体が悪徳商法の被害者に代わって不正行為の差し止めを請求できる「消費者団体訴訟制度」がスタートした。
 高齢者を狙った悪質リフォーム商法のように、不正な勧誘をしたり、契約に不当な内容を盛り込むといった業者が後を絶たない。
 だが被害を受けても個人が意を決して裁判に持ち込むことは簡単ではない。いきおい、泣き寝入りするケースが多かっただけに、消費者にとっては心強い制度だ。悪徳商法を一掃するためにも、この制度をうまく活用したい。
 ただ、差し止め請求に限られるなど、積み残した課題も多い。運用の実態を見きわめながら、より充実した制度に高めていくことを望みたい。
 被害者本人に代わって訴訟を起こすには、内閣府から「適格」団体として認定を受ける必要がある。活動実績や人員体制などが審査される。
 すでに関西の特定非営利活動法人(NPO法人)や生活協同組合連合会などで構成する「消費者支援機構関西」(事務局・大阪市)など二団体が申請した。このほかに、NPO法人「京都消費者契約ネットワーク」など十前後の団体が申請をめざして活動を行っている。
 団体要件の厳正な審査はもちろん必要だが、制度の実効性を高める上からは、より多くの団体が認定されることが望ましい。
 適格認定団体は、裁判外でまず業者側と話し合って改善を促し、決裂すれば訴訟を起こす。ただ訴訟にいたるまでに業者側が非を認め、対応を改めることが最善だ。制度の狙いもそこにある。業者側は同団体の指摘を真摯(しんし)に受け止め、勧誘方法や契約書面を改善するなど、制度化を機会に、消費者に誠実に向き合う姿勢を持ってもらいたい。
 課題もいくつかある。適格認定団体は不当な勧誘や契約条項などについて差し止め請求しかできない。損害賠償は従来通り、被害者本人が提訴しなければならない。ドイツやフランスなどでは消費者団体による損害賠償請求も認めているだけに、先進事例も研究し、前向きに検討すべきだ。
 適格認定団体がさまざまなトラブルに迅速に対応するには、被害情報を十分に把握する必要もある。制度の導入によって、国民生活センターなどからデータが提供されるが、これだけでは不十分だ。自治体や消費者からのきめ細かな情報提供が欠かせない。
 運営資金をどう確保するかも難題だ。訴訟費用やスタッフの人件費が不足すれば、活動自体に支障が出よう。
 課題を抱えての出発だが、消費者にとって歓迎すべき制度であることに違いはない。行政はもちろん、わたしたち自身も消費者団体と協力し、被害防止に努める姿勢を持ちたい。

[京都新聞 2007年06月12日掲載]

【京都新聞・凡語】

タクシーの規制緩和

 タクシーに乗ると、いつも運転手さんと景気の話になる。先日、四条通を走りながら聞いたのは足元の深刻な実態だった。「景気? 私は、今月の手取りが十五万円あるかないかですよ」▼五年前の規制緩和で、タクシー業界は新規参入や増車が容易になった。客は増えずに車が増え、値下げ競争も起きた。しわ寄せは運転手給与に表れる。昨年の全国一人当たり平均年収は約三百三十万円。全産業平均より二百万円以上少なかった▼競争にたまりかねた業界から、運賃値上げ申請が相次いでいる。長野と大分で認められ、東京の番になったところで待ったがかかった。政府の物価安定政策会議は先月、都内など二百六十一社の申請に結論を先送りした▼政府は業界の構造改革が不十分で、経営努力しない業者の淘汰(とうた)が遅れているのを問題視する。参院選前の値上げは不利とみる与党の判断もあろう。他地域も東京に準じ、値上げはかなり遅れそうだ▼タクシーは規制緩和がうまく働かなかった代表的業種だ。政府は競争を促せば淘汰が進むとみた。実際は、客は通りかかる車を拾うので、業者選別が効きにくい。売り上げ減を、給与減に直結させる業界の一部慣行も改まらない▼規制のあり方を見直す。値上げを確実に給与に反映させる。そんな仕組みが要る。車内の会話で「やっと景気が戻ったよ」の声を早く聞きたい。

[京都新聞 2007年06月12日掲載]


【朝日・社説】2007年06月12日(火曜日)付

がん対策―たばこ規制がないなんて

 75歳未満のがんの死亡率を10年以内に20%減らす。患者やその家族の苦痛を和らげる――

 こうした今後のがん治療のあり方を示す初の基本計画案がまとまった。がん対策基本法が4月に施行されたのを受け、患者や家族、医師らでつくるがん対策推進協議会が論議していた。

 政府はこの案に沿って基本計画を閣議決定し、都道府県も地域版のがん対策推進計画をつくる。

 がんは81年から死因のトップで、最近は年に30万人が亡くなる。男性の2人に1人、女性の3人に1人はがんにかかる可能性があり、国民病といってよい。

 政府も3次にわたって対策を進めてきた。しかし、抗がん剤や放射線を使う治療は、全国どこでも受けられるわけではない。病院を求めてさまよう「がん難民」という言葉すら生まれている。

 計画案は、患者の側に立って総合的な対策を計画的に進めるべきだと提案している。そのうえで、医師の育成、病院の整備、予防の推進などについて数値目標を示した。

 例えば、5年以内に全国の拠点病院で抗がん剤や放射線の治療ができるようにする。10年以内に、がん治療にあたる医師全員が痛みを和らげる緩和ケアを学ぶ。5年以内に乳がんや大腸がんの検診の受診率を50%以上に引き上げる。

 こうした数値目標が盛り込まれたのは、協議会に参加した患者や家族らが強く働きかけたからだ。患者ら当事者が政策決定に加わる意味はやはり大きい。

 問題は、医療費が抑えられ、医師不足が目立つ中で、本当に目標を実現できるかどうかだ。病院の整備にしても医師の教育にしても、先立つものは資金だ。

 がん対策には今年度、約210億円の予算が投じられる。政府はこれを大幅に増やさなければならない。そうでなければ、基本計画は「絵に描いた餅」になってしまう。

 もうひとつ、見逃せない問題がある。たばこを吸う人の比率を減らす数値目標が計画案に入らなかったことだ。そもそも、たばこに手をつけないで、がん死亡率を20%減らせるのだろうか。

 たばこががんの有力な原因であることは世界の常識だ。協議会も、いったんは「喫煙率半減」を盛り込むことでまとまった。ところが、日本たばこ産業(JT)が柳沢厚生労働相に抗議文を突きつけ、流れが変わった。

 加えて、自民党の族議員のほか、たばこの税収が減るのを恐れた財務省の働きかけもあったのだろう。喫煙率の削減目標を書き込めば閣議決定が難しくなるとの判断から、最終的には見送られた。

 しかし、こんなたばこ業界の横暴に屈していては、がん予防はできない。

 厚労省は生活習慣病の予防を通じて医療費削減を叫ぶなら、まず喫煙率を減らすことだ。いつまでも自民党や財務省に遠慮していては、やる気を疑われる。

多重債務―「人助け」の輪を広げよう

 「命を救ってくれてありがとう」

 鹿児島県の奄美大島。奄美市市民相談係の禧久(きく)孝一さんがこの正月に受け取った年賀状には、躍るような文字でそう大書してあった。

 禧久さんは89年に市民相談の係に配属されて以来、一貫して多重債務者の問題に取り組んできた。何カ所からも借金をかさねて行き詰まった人々だ。

 債務整理のため相談者に同伴して裁判所の調停へ通ったり、地元が弁護士不足なので鹿児島市の弁護士に相談を持ち込んだり、生活保護の担当者へ話をつないだり。何でも1人でこなしてきた。

 税金や社会保険料の滞納情報を、市が一括管理するシステムを作った。滞納の背後には多重債務が隠れていることが多い。これを掘り起こし債務を圧縮できた結果、税収につながった例もある。

 日弁連が過疎地に置く「ひまわり基金法律事務所」の誘致にも奔走した。そして、事務所が開設されて2年余りの間に900件近く、6億2000万円を超える過払い金が取り返された。

 消費者金融などのグレーゾーン金利を撤廃し、金利を段階的に引き下げていく貸金業法の改正を受けて、政府の多重債務者対策本部が行動計画(改善プログラム)を打ち出した。

 全国で200万人を超すといわれる多重債務者に対して、債務圧縮や生活資金の確保について相談にのったり、新たな多重債務者を生み出さないようにしたりする取り組みだ。

 その柱は(1)全市区町村に相談窓口を設ける(2)低所得者向け低利融資制度を広げる(3)ヤミ金融の摘発を強化する(4)多重債務問題を学校で学ばせる、などだ。

 どれも必要なものばかりだ。なかでも大切なのは、奄美で禧久さんが実践したように、1カ所へ相談に行くだけでその相談者に必要なさまざまな対策の助言が受けられるようにすることだ。

 たとえば、相談に来た人には、弁護士や司法書士との相談日をその場で決めるなど、解決へのレールに早くのせてあげると安心する。弁護士の着手金は分割払いや後払いにして、ハードルを低くする工夫も欠かせない。

 だが、相談にのる市区町村には「専門知識をもった人材がいない」「経費が重荷になる」といった不安が多い。

 禧久さんも、最初は相談にのるのが苦痛だったそうだ。しかし、問題が解決したときに「こんなにまで」と思うほど感謝され、一念発起した。

 たとえ職員1人でも、さまざまな部署や弁護士など行政の外の専門家の力を結集すれば、それが大きな「人助け」になる。市区町村は各地の先進的な試みに学びつつ、地域の実情にあった態勢を早く整備しなければいけない。

 困っている人がいる。それを助けることで、行政にも魂が吹き込まれる。そんな善意と感謝の輪を、多重債務者対策で広げていくことが大切だ。

【朝日・天声人語】2007年06月12日(火曜日)付

 学校の先生に理不尽な文句をならべる「モンスター親」について先週書いたら、いくつか便りをいただいた。学校ばかりでなく、いたる所に同類の横行があるらしい。

 ある薬局の薬剤師は客に処方する際、話し方が気に食わないと怒鳴られた。心ならず わびつつ、口まで出かかる「何様ですか」をのみ込むことが、最近は増えているそうだ。「会社万葉集」(光文社)にあった切ない歌を思い出した。〈わたくし の正しき事は主張せず客の激しき言葉に耐へゐる 山口英子〉。

 「感情労働」という言葉を、最近、耳にすることがある。自分の感情をひたすら押し殺して、相手に合わせた態度と言葉で対応する。きびしい自制心を求められる仕事のことだ。「肉体労働」「頭脳労働」に並ぶ言葉らしい。

 かつては旅客機の客室乗務員が典型とされていた。だがここにきて、看護や介護を含むサービス業全般に、その要素が広まってきた。身勝手がはびこり、多くの人が「堪忍袋」の酷使を強いられている。

 スーパーのレジに1日立てば「いま」が見えますよ。そんな便りも届いた。しかし、 客として理不尽を言う人が、仕事では客に理不尽を言われる立場にいることもあろう。そしてまた、その客も……。弱い立場の者をストレスのはけ口にする、や るせない「堂々巡り」が透けて見える。

 いまを称して「いちゃもん化社会」と呼ぶ学者もいる。堪忍袋の緒には限度がある。感情労働者の「燃え尽き」も心配されている。お互いに「モンスター」にはなりたくないものだ。


【毎日・社説】

社説:政治資金規正法 首相と与党のやる気を疑う

 今ごろになって何をどたばたやっているのか--。冷ややかに見ている人は多いかもしれない。自殺した松岡利勝前農相の巨額事務所費問題などをきっかけとした政治資金規正法改正案の国会審議のことである。

 自民、公明両党は14日にも与党案を衆院通過させる方針という。だが、再三指摘してきた通り、与党案は抜け道だらけの案だ。一段と厳しい規制をかける修正案を出していた民主党は11日、さらなる妥協案を自民党に示したが、それさえも自民党は受け入れる姿勢を見せなかったという。これでは、安倍晋三首相と自民党の政治とカネの問題に対するやる気を疑われても仕方がない。

 与党案は、対象を政治家1人に1団体認められる資金管理団体だけに限定し、5万円以上の経常経費支出(事務所費、光熱水費、備品消耗品費)は領収書のコピーを添付し提出することを義務付けるというものだ。しかし、政治家の多くは資金管理団体だけでなく、他の政治団体も持っている。このため、他の団体に支出を付け替えたり、支出を5万円未満に細分化すれば、従来通り、領収書を提出せずに済むことになる。

 これに対し、民主党はすべての政治団体の1万円超の経常経費に領収書添付を義務づける修正案を提出。11日には「1万円超」にこだわらない考えを与党に伝え、規制対象についても国会議員やその候補者らが関係する政治団体に絞るという妥協案を示した。

 与野党協議が決裂し、与党案が未修正のまま成立するより、多少なりともましな内容にしたいというのが民主党の考えなのだろう。だが、政党に巨額の税金が交付されている今、1円から領収書を提出すべきだと考えるのが素朴な国民感情だ。しかも、本来、歩み寄らなくてはならないのは与党の側なのである。

 そもそも自民党は領収書の添付に乗り気ではなく、公明党が再三要請して腰を上げたのが実情だ。一方、与党案に資金管理団体による不動産取得の禁止も盛り込まれた背景には、事務所費問題から、小沢一郎・民主党代表の資金管理団体が巨額の不動産を取得している問題に焦点を移そうという狙いがあったのは明らかだろう。

 確かに、小沢氏は2月に記者会見し、不動産を個人資産として扱わないとの「確認書」を公表したものの、説明が十分だとは言いがたい状況だ。民主党が、政党以外のすべての政治団体が不動産取得だけでなく、株など有価証券の所有も禁止することを修正案に盛り込んだのは、批判の矛先が小沢代表の問題に向かうのを恐れたためとみられる。

 だが、国民からすれば、参院選を控えた、そうした政治的思惑より何より、政治資金の「出」と「入り」の透明性が確保されさえすれば、それでよいのだ。会期末まで、まだ時間はある。国民が今何を求めているかを冷静に考えるなら、こんな時こそ、首相は民主党との修正協議を進めるよう自らリードしたらどうか。

毎日新聞 2007年6月12日 東京朝刊

社説:日豪関係 戦略的な意図を知りたい

 日本とオーストラリアの外務・防衛閣僚会議が開催され、両国の関係は新たな一歩を踏み出した。3月に署名された安全保障協力に関する日豪共同宣言に基づくもので、日本にとり米国以外で初めての「2プラス2」の創設だ。

 両国は民主主義など共通の価値観を持ち軍事面ではともに米国との同盟関係にある。とりわけ経済面では関係が深く豪州にとって日本は最大の貿易相手国だ。日本は自動車を中心に輸出し石炭、鉄鉱石は総輸入額の5割以上を豪州に依存している。経済連携協定(EPA)交渉も4月末に始まった。

 この基礎の上に安全保障面での連携も深め、それを日米豪の枠組みの強化につなげることによって、アジア太平洋地域の安定に寄与する--。この基本的な考え方を基に、共同宣言は国際平和協力活動、大量破壊兵器の拡散防止構想(PSI)、テロ対策、大規模災害への対応など広範な分野で協力をうたった。

 「2プラス2」ではさらに米豪軍事演習への自衛隊のオブザーバー参加や、秋に長野県内で実施される日本の国際緊急援助隊総合訓練に豪州チームが加わることが決まった。

 すでに自衛隊と豪州軍との協力関係には実績がある。カンボジアや東ティモールでの国連平和維持活動やスマトラ沖大地震の援助活動では連携してきた。イラク・サマワに派遣された自衛隊の安全確保にあたった国の一つが豪州だ。

 北朝鮮の核・ミサイル問題は予断を許さず、中東情勢は混迷が続く。大災害はいつでも起きる可能性がある。国際平和協力活動やPSIなどで先輩格の豪州との関係を深めることは、日本にとって役立つ場面もあるだろう。

 もちろん日本の自衛隊は、海外で活動する場合に憲法上の制約がある。一方、豪州はイラクやアフガンで積極的な軍事的貢献を行っている。この違いをきちんと認識した上での関係であるべきだ。

 ただ日本の中長期のアジア太平洋戦略がどのようなもので、日豪関係はその中でどう位置付けられるのかはっきりしない点もある。

 例えばミサイル防衛(MD)について日米豪で研究を進めようという動きがある。豪州はまだ導入を決めていないが、日米間の情報共有システムなどを豪州にまで広げようということなのか。

 さらに日豪関係に続きインドとも新たな関係を構築し、日米豪印という枠組みを作ろうとしていくのか。安倍晋三首相は今夏、訪印する予定だが、今後の注目点だ。

 一昨年の東アジアサミットでは将来の「東アジア共同体構想」の基盤を東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日中韓)にするのか、さらにインド、豪州、ニュージーランドまで広げるのか、参加国の考え方の違いが生じた。

 日本は後者の立場だが、日本の意図が不鮮明だと中国をはじめアジア諸国に余計な不安をもたらすことになりかねない。戦略的な意図を国際的にも国内的にも説明し理解を求めることが大切だ。

毎日新聞 2007年6月12日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:きのうは暦の上での「入梅」だったが…

 きのうは暦の上での「入梅」だったが、九州北部から北の地域の梅雨入りは今しばらく先となりそうだ。ちなみに関東甲信地方の平年の梅雨入りは6月8日で、昨年は9日、暦の入梅を過ぎるのは17日だった1999年以来となる▲もっとも花暦の進み具合はまたちょっと別で、東京都葛飾区の堀切菖蒲園では、平年より1週間ほど早くハナショウブの見ごろを迎えた。江戸時代からのハナショウブの名所である同園には約200種、6000株もがその色や形を競っている▲すでに室町時代から栽培されたといわれるハナショウブだが、今日のような何千種というバラエティー豊かな園芸種となったのは江戸時代に熱心に進められた品種改良のおかげだ。それを梅雨時の菖蒲園を訪れて楽しむのも季節と花の結びつきに敏感な江戸庶民の文化遺産である▲「豊かな自然は、この風土の自然人に永遠の暦を与えた。自然は四季を象徴する植物を与え、月々を暗示する花々や果実を決めてくれた。日本人はそこから花暦を作り出した」と書くのはシーボルトだ。著書「日本」は当時の花暦の紹介に一章を割いた▲だがもともと花暦は清代の中国で書かれたものが日本に伝わったのだという。広めたのはエレキテルなどで有名な平賀源内といわれ、すぐ日本の季節感に合わせて改変され、庶民にもてはやされた。起源はともかく日本人にいかにもぴったりのアイデアだったのはシーボルトの観察通りだ▲梅雨入りに先立ち見ごろとなった東京のハナショウブは、ここ一両日は初夏の日差しの中で楽しめそうだ。雨の風情にこだわる向きは梅雨入りを待つしかないが、花暦と天気の微妙なズレにすら異常気象や地球温暖化を思い浮かべるのが現代人のつらいところだ。

毎日新聞 2007年6月12日 東京朝刊


【読売・社説】

自殺3万人超 原因の究明が防止策の基本だ(6月12日付・読売社説)

 自殺をめぐる深刻な状況が依然、変わらない。警察庁のまとめで、昨年1年間に3万2155人が自殺した。前年より397人減ったが、9年連続で3万人を超えた。

 なぜ、自殺者がこれほど多いのか。適切な防止策を講じるためには、何よりも、原因や動機、その背景を広く、深く究明することが重要だ。

 政府は、昨年10月の自殺対策基本法施行を受けて、自殺総合対策大綱をまとめた。2016年までに自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)を20%以上減らすという数値目標を掲げている。自治体や学校、企業、医療機関、民間団体などが連携する態勢作りを急ぐべきだ。

 昨年の自殺を動機別にみると、事業不振や生活苦などの「経済生活問題」は6969人で、前年より10%減った。戦後最長の景気拡大が続いていることが、改善した要因の一つだろう。

 その一方、「勤務問題」は1919人で、統計を取り始めた1978年以降、最も多くなった。仕事上の失敗や上司・同僚との不和などである。

 厚生労働省の調査によると、仕事上のストレスから精神障害になり労災認定された人は、昨年度205人で過去最多だった。企業業績は総じて好調でも、仕事や職場のことで悩みを持つ人が増えているのではないか。従業員の心の健康問題は企業社会の見過ごせない課題だ。

 自殺は高齢になるほど多く、病気など「健康問題」を苦にした自殺が最も多いという傾向は変わっていない。中年世代の自殺者数も高止まりしたままだ。

 深刻なのは、「学生・生徒」の自殺が、過去最悪の886人となっていることだ。小学生は前年の7人から14人に、中学生も66人から81人にと急増した。学業不振や入試、学友との不和を苦にした自殺が増加した。まだ小中学生なのに死に急ぐ背景には何があるのだろうか。

 総合対策大綱は、自殺を「社会的要因を含む様々な要因が複雑に関係し、心理的に追い込まれた末の死」と位置づけ、青少年、中高年、高齢者の世代ごとの自殺対策の方向を打ち出している。

 近年、いじめや介護・看護疲れ、多重債務に追われての保険金目的などによる自殺も目立つ。学校や家庭のあり方も含めて、背景は様々だ。

 自殺対策基本法は「情報の収集・分析と提供」を基本施策に掲げている。警察庁も複合的背景を探るため、自殺に至った事情や動機を詳しく調べるという。

 心の問題は無論、社会、経済など、多様な要因の的確な把握が、きめの細かい効果的な防止策につながる。
(2007年6月12日2時18分  読売新聞)

欧州MD計画 ロシアも冷静に対応しては(6月12日付・読売社説)

 新しい冷戦時代の到来か、と危惧(きぐ)する声もある。大げさにとらえる愚は避けるべきだが、米露というミサイル大国間の緊張である。日本としても大きな関心を払わざるを得ない。

 緊張の主因は、米国がポーランドとチェコにミサイル防衛(MD)システム配備を計画していることだ。米国は、2012年までにチェコにレーダー1基を、ポーランドに迎撃ミサイル10基を配備する、としている。

 MDについて米国は、イランが開発中の長距離弾道ミサイルから米欧を守るため、と説明している。だが、ロシアは、欧州の勢力バランスを崩すもの、と猛反発してきた。

 イランが、米国にも到達可能な長距離弾道ミサイルを実戦配備するのは、早くても2015年とされる。そのことも、MD配備がロシアを念頭に置いたもの、との疑心暗鬼につながっている。

 ロシアの懸念を払拭(ふっしょく)するためブッシュ米政権は、米国内のMD関連施設への視察受け入れや技術情報の公開などを提案し、説得に努めてきた。だが、ロシアの姿勢に変化はなく、プーチン大統領は、「欧州を再びミサイルの標的にせざるを得ない」とまで言い切っていた。

 そうした経緯を考えれば、プーチン大統領が先の米露首脳会談で持ち出した、アゼルバイジャンにおけるレーダーの米露共同利用の提案は注目される。

 「興味深い」と評価して見せたブッシュ米政権だが、すんなりとロシア側の提案に乗る可能性は低い。実際、ブッシュ政権は依然、ポーランドとチェコでのMD計画を推進する構えだ。

 しかし、プーチン大統領の提案は初めて、ロシアに譲歩の余地があることを示した。双方の隔たりは大きいが、まず、冷静な協議の場を積み重ねることだ。言葉をエスカレートさせるばかりでは、建設的な解決策など見つかるまい。

 来月、両大統領は、米国で再び首脳会談に臨む。両指導者には、対テロ戦争や核不拡散、地球温暖化など重要問題でも論議を尽くすことが期待される。

 ロシアは、日本海を挟んで向き合う日本の隣国だ。その動向から目を離すわけにはいかないのは、当然だ。

 主要国(G8)首脳会議の直前、外相を北方領土に派遣するなど、ロシアの対日姿勢には懸念すべき点が多い。

 上海協力機構を通じた中露関係の強化には、東アジアにおける米国の動きを牽制(けんせい)する狙いもあろう。米国との同盟関係を軸に、地域の安全を追求する日本にとっても無視できない動きだ。戦略的な視点からロシアを注視する必要がある。
(2007年6月12日2時18分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月12日付

 つらいとき、しおれた花に水をやるように、心に如雨露(じょうろ)でかける幾つかの言葉がある◆たとえば、何年か前の本紙で読んだ「交かん」と題する詩。作者は小学3年生の男の子である。「人間ってね/イヤなことが/いっぱいたまると/幸運と交かんできるんだよ」。交換してもらえる日がふと待ち遠しくなる◆北野武監督の映画「キッズ・リターン」で挫折した青年ふたりの交わす言葉もいい。「おれたち、もう終わっちゃったのかなあ」「バカヤロー、まだ始まっちゃいねえよ」。まだまだ、これからと思う◆この人は心の花にどんな水をくれてきたのだろう。日本人選手としては史上最年長、39歳2か月のパイレーツ桑田真澄投手が対ヤンキース戦で大リーグのマウンドに立った◆甲子園の星、巨人のエースと、過去に生きようと思えば何不自由なく生きられる人である。限界も遠くない年齢でマイナー契約からメジャーに挑むという険しい山坂を選び、開幕を目前にして足首ねんざの重傷を負った。天を恨みたい夜のなかったはずがない◆打たれはしたものの、試合を終えた桑田投手は穏やかな表情で感謝の言葉のみを繰り返した。「涙が出るほどうれしかった」「心のなかで野球の神様に、ありがとうございます、と言いました」と。一語一語を、わが胸の水の保管庫にしまう。
(2007年6月12日2時18分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】ヒトES細胞 日本発の基盤技術育てよ

 人体のあらゆる臓器になる可能性があり、失った機能をよみがえらせる再生医療の基本的な材料として期待されているヒト胚(はい)性幹(ES)細胞について、米下院が研究の規制を緩和する法案を可決した。これに対し、ブッシュ大統領は「生命を故意に壊す研究」とし、拒否権の行使を表明した。

 ヒトの受精卵から取り出すES細胞の利用は、難病治療など夢の医療として基礎・応用研究で激しい国際競争が展開されている。それだけに今後、米国内での論議は高まり、倫理面をクリアするような研究の進展に沿った形で展開するだろう。

 ES細胞を分化させ、培養して使う再生医療は、脳神経細胞の移植によるパーキンソン病の治療や臓器移植医療での臓器不足の解決策として期待されるなど、さまざまな目的で研究が行われている。

 しかし、今回の米国の論議のように、「ヒトの生命の萌芽(ほうが)である胚を壊して作成する」という倫理面の問題から、各国とも研究には独自のルールを設けている。

 日本でもヒトES細胞の作成は京都大学のみで行われ、研究機関に配布されたES細胞株の使用は基礎研究に限定されているほか、研究機関と国が二重に事前の審査を行うなど、とりわけ厳しい指針を定めている。それが日本では動物細胞を使った研究発表の数では国際的に互角だが、より実用的なデータが得られるヒト細胞を材料とした研究発表が少ない理由ともされる。

 こうした状況の中で、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターのチームがヒトES細胞の大量培養技術の開発に成功したことは朗報である。この技術を使えば、配布された細胞の培養効率は100倍以上高まり、研究材料を有効に活用できることになる。

 また、京大再生医科学研究所も、マウスの受精卵ではなく体細胞からES細胞に近い細胞をつくることに成功している。その技術をヒトで活用できるなら、倫理的問題もクリアできる。

 再生医療は産業市場としては未成熟だ。それだけに、優れた成果は日本発の基盤技術として育成していく研究環境の整備がなにより必要となる。日本の技術が医療の発展をリードする道もそこに生まれる。

(2007/06/12 05:08)

【主張】介護保険不正 第2のコムスンを許すな

 介護保険事業をめぐる「コムスン」の一連の問題で、親会社グッドウィル・グループ(GWG)の折口雅博会長が謝罪会見後も次々とテレビに出演し、釈明を繰り返している。しかし、公費である介護報酬を不正に得ていた行為は許されるものではない。

 昨年の介護保険法改正で、事業所が1つでも指定取り消し処分を受けると、母体の介護事業法人は「連座制」の適用で、全国すべての事業所で指定を受けられなくなった。

 そこでコムスンは、処分を受けそうになると、即座にその事業所の廃止届を出し、連座制の適用逃れを次々と行っていた。しかも、厚生労働省がそうした手法を悪質と判断して新規指定や更新をしないよう都道府県に通知すると、今度はGWG傘下の別法人へ事業を譲渡する奇策で逃げ切ろうとした。「悪意はなかった」という折口会長の弁明は空々しいだけだ。

 結局、事業譲渡は「露骨な処分逃れ」と世論の批判を受け、グループとして介護事業そのものから撤退することになったが、こうした脱法行為を許す現行制度には、やはり問題があると言わざるを得ない。

 不正があった場合、別会社であれ同一グループ内では事業譲渡ができないよう改める必要がある。介護事業者に対する規制も、親会社を含めて連帯責任を問うシステムに変えることも考えるべきだろう。

 事業所の指定更新が6年ごとというのも長すぎないか。更新のサイクルを短くし、チェック体制を強化することも重要な再発防止策だ。

 介護保険制度からの報酬でホームヘルパーを派遣する訪問介護サービス事業では、全国2万カ所以上ある事業所の半数が営利企業により営まれている。コムスンはその最大手だった。

 今回の不正行為事件を機に介護事業の民間委託についても見直し論が出ている。しかし、民間事業者が競い合うことが利用者に対するサービスの質向上につながるという本来の狙い自体に間違いがあったとはいえまい。

 第2のコムスンが現れないよう、現行制度に問題があれば速やかに改善すべきだ。官とは違う民間企業の利点を生かすには、行政もまた制度設計に責任を持つことが重要だ。

(2007/06/12 05:07)

【産経抄】

 東京・築地市場で、特大のマイワシが1匹換算で1200円の高値がついたと、報じられたのは、昨年5月のこと。もはやわが家の食卓に大好物が並ぶことはあるまいと悲嘆にくれたものだ。

 ▼きのうの朝は気分がよかった。TBS系の「はなまるマーケット」で、「今年は安い」と旬のイワシの特集をしていたからだ。イワシの旬は夏から秋にかけて、特に梅雨に入るころにとれる入梅鰯(にゅうばいわし)は脂がのってうまい。

 ▼銚子漁協に電話で聞いてみると、今のところイワシ漁は順調で、体長16センチから18センチのものが浜値で1キロ100円ほどで取引されている。あと1カ月ほどで、本来の入梅鰯である20センチを超えた大羽イワシの水揚げが始まるという。

 ▼ もっとも喜んでばかりはいられない。マイワシが減り続けているのは確からしい。農林水産省によると、昨年の漁獲量は約4万6000トン、ピークだった昭和63年の約448万トンに比べれば、100分の1程度にすぎない。数十年ごとに増減を繰り返すという周期説のほか、地球環境の変化や乱獲説もあり、減少の本当の原因はわからない。

 ▼「浜は祭りの ようだけど 海のなかでは 何万の 鰮(いわし)のとむらい するだろう」。いずれにしても詩人の金子みすゞが『大漁』で描いた風景を見ることは、この先難しい。もっとも最近はイワシより、マグロやカニ、ウナギが口に入らなくなることを心配する声の方が大きいようだ。

 ▼国際捕鯨会議で長年反対派と渡り合ってきた小松正之さんは、日本人がそんな外国産の魚ばかり食べているうちに、国内の漁業が衰えてしまったことの方が深刻だという(『これから食えなくなる魚』幻冬舎)。旬のマイワシを刺し身や塩焼きで味わいつつ、資源の回復を祈りたい。

(2007/06/12 05:04)


【日経・社説】

社説1 コムスン利用者に介護を絶やすな(6/12)

 訪問介護最大手、コムスンの不正を巡る問題で、同社の親会社グッドウィル・グループは、事業を系列企業に「丸投げ」する考えを引っ込め、他社への事業売却を目指すという。介護保険制度への信頼を傷つけた罪は重い。大至急、信頼できる受け皿を確保し、利用者の不安を取り去ることが、同社の責務だ。

 事業者指定の不正取得、処分直前の廃業、系列企業への全事業の譲渡――。一連の処分逃れは目に余る。2006年の改正介護保険法で導入された事業所指定の更新制度の適用も、巧みにすり抜けた。

 厚生労働省が世論の批判で譲渡の容認から凍結指導へと方針を変え、同社はこれに従う意向を示した。その後も同社の責任逃れは続いているようだ。相次いでテレビ番組で謝罪したグッドウィルの折口雅博会長は、介護保険法改正に伴う介護報酬の引き下げなどが人件費を圧迫し、訪問介護サービスが滞ったといった趣旨の発言を繰り返した。不正は法律のせいだというのだろうか。

 確かに介護の人材確保は容易ではない。05年の訪問介護事業所は全国で約2万1000カ所、利用者は約110万人と、01年の倍近くに急増した。待遇改善の進まない介護人材は離職率が高く、景気回復による他の業界への流出も相まって、年に2―3割が辞める事業所はざらだ。

 ただ、能力や貢献度に応じた人事制度で良質な人材確保を目指す事業者もある。ビジネスと高い倫理観は決して矛盾しない。企業による介護市場への参入を疑問視する政治家も出始めたが、見当違いだろう。

 企業努力と同時に、労働市場の開放を急ぐことも必要だ。昨年フィリピンとの経済連携協定(EPA)でフィリピン人看護師・介護福祉士の受け入れが決まった。だが今春からの受け入れ予定は来年にずれ込みそうなうえ、介護士の枠はわずか600人。受け入れ拡大も急務である。

 厚労省は12日にも都道府県の介護問題の担当者らと、今回の不正への対応を協議する。早急に対応策を打ち出し、受け皿となる事業者の質にも十二分に目を光らせてほしい。量の確保を優先した結果が、今回の不祥事を招いたといえるからだ。

 併せて不必要なサービスまで介護保険の利用を勧める業者に対しては、厳しく対処してほしい。利用者にいりもしない介護用品のレンタルや家の改造を勧める業者や、それを促しかねない介護保険の仕組みが、保険財政を圧迫している。貴重な税金や介護保険料の無駄遣いは、いずれ利用者に跳ね返ってくるだろう。

社説2 粘りをみせるGDP成長率(6/12)

 日本の景気が粘りをみせている。11日に発表された1―3月期の国内総生産(GDP)の改定値は、物価変動を除いた実質で前期比年率3.3%に上方修正された。設備投資が速報値に比べ上向いたためだ。個人消費や輸出を背景に景気が拡大する流れはしばらく続くとみられる。

 設備投資の主役は製造業から非製造業に移っている。機械受注が1―3月期にもたつくなど、製造業の投資は一服気味だ。機械受注は4―6月期もかんばしくない。GDPの押し上げ役が設備投資だったといわれても実感がわきにくいが、その分サービスなど非製造業に投資のすそ野は着実に広がっている。派手さはないものの堅調な今回の景気の特徴が表れているというべきだろう。

 雇用環境が好転し所得が増えるにつれて、家計に安心感が出ており、消費は着実に上向いている。米景気の減速を欧州、アジア向けが補う形で、輸出も拡大している。貿易加重平均でみた円相場が1985年9月のプラザ合意前の水準まで下げたのも、輸出採算の向上を促している。

 新年度入りした4月以降も、こうした傾向は変わっていないとみられる。最大のリスク要因とされてきた米経済だが、製造業の活動が4―6月期に入って底入れしつつある。米製造業の底入れが本物なら、日本の製造業も1・四半期遅れて7―9月期には足踏みを脱するとみられる。比較的慎重な収益見通しを立てている企業も、海外の不透明感が薄らげば経営陣は強気に転じるだろう。

 好事魔多し。新たなリスク要因は世界的な長期金利の上昇かもしれない。景気が底堅いのは良いことだが、一方で米連邦準備理事会(FRB)による利下げを期待していた金融市場参加者の当てが外れ、次々と金利見通しの修正を迫られた。債券が売られ、長期金利の上昇が米国株などにも重しとなっている。

 日本の長期金利も上昇している。この程度なら企業活動や住宅投資に水を差すことはあるまいが、日銀が追加利上げを視野に入れ始めたとの観測も手伝って、円安に歯止めをかける要因になることは考えられる。政府や日銀は、景気の変化を市場がどう織り込んでいくのかにも目を凝らしておくべきだ。

【日経・春秋】(6/12)

 水に落ちた犬を打つようで気がひけつつ、社会保険庁の重なる不始末にはつい荒い言葉を向けてしまう。今度は「納めた保険料が宙に浮いている」不安を抱えた人が相談窓口で、コンピューターの調子が悪いと待ちぼうけを食わされた。

▼日曜の朝にわざわざ出かけてトラブルに遭った年金加入者の怒りは察するにあまりある。月曜日から始めた24時間相談電話の名前「ねんきんあんしんダイヤル」も、いかがなものか。不安のタネを散々まきちらした当事者が「電話一本で安心」はないだろう。本当に前非を悔いたか疑問を覚えるネーミングだ。

▼梅雨前線が北に上がって来るのが遅く、今年はまだ九州南部までしか梅雨入りしていないが、暦の上では昨日が入梅だ。『日本大歳時記』で飯田龍太は入梅の解説に「入梅の気配はあきらかでない場合が多い」と書いている。年金不安という梅雨もいつ知れず、シトシト降りから前線が居座る大雨になったようだ。

▼5000万件の保険料納付記録が誰のものだか分からないだけでも大ごとなのに、社保庁の仕事の不備はほかにも次々発覚している。“年金不安梅雨”の累積雨量がどれだけになりどんな被害が心配されるか、早く全体像を明らかにしてほしい。いつまでも〈胸裡にも梅雨前線横たはる〉(相生垣瓜人)ではたまらない。


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