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2007年6月19日 (火)

6月19日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年6月19日朝刊)

[ヘリパッド]オスプレイ配備も視野に

 米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設問題で、東村の伊集盛久村長が選挙公約を翻し、移設容認の意向を示した。

 金武町の米軍ギンバル訓練場の全面返還に伴う儀武剛町長のブルービーチへのヘリパッド受け入れに続く移設容認である。

 いずれも、一九九六年十二月の日米特別行動委員会(SACO)で返還合意されたが、北部訓練場の場合は既存のヘリパッド六つを移すことが条件となった。ここでも同じ自治体内への「タライ回し」が基地の整理・縮小の大きな足かせとなっている。

 新たな六つのヘリパッドは、人口百五十人余の東村高江区を取り囲むように造られようとしている。一番近い住宅までの距離は約四百メートルだ。

 周辺には福地ダムや新川ダムなど県民の「水がめ」があり、ヘリの騒音や事故の危険性のほかに、訓練などに伴う飲料水汚染も懸念されている。

 福地ダムでは今年一月、米軍のペイント弾が相次いで発見され、照明弾や手りゅう弾まで見つかったのは記憶に新しい。

 そもそも、政府が水がめを米軍演習場として提供していること自体、県民にとっては許しがたい屈辱である。ヘリパッド問題は、その意味で決して地域だけの問題ではないはずだ。

 村議会で、移設受け入れを表明した伊集村長は「住宅、学校上空や早朝、夜間飛行はさせない。その都度、那覇防衛施設局に要請する」と、生活環境への配慮を示したが、当然である。

 しかし、訓練優先の現場の米兵がそれを守れるのか、大いに疑問と言わざるを得ない。

 十七日、「やんばるへのヘリパッド建設やめよう!集会」で、あらためて移設阻止を確認した住民自身がそのことを身に染みて知っているといえよう。

 やんばるの森は、国立公園や世界自然遺産の候補地であり「自然度」が極めて高い。特別天然記念物のヤンバルクイナやノグチゲラなど希少生物を守るためにも、ヘリパッド建設の在り方が問われてきた。

 移設後は、海兵隊や特殊部隊のサバイバル訓練などの増加も懸念され、貴重な自然環境を破壊し、その価値をますます失わせるだけである。

 米軍普天間飛行場のCH46、CH53輸送ヘリは、近い将来、垂直離着陸の機能を備えたMV22オスプレイに更新される計画だ。

 北部訓練場とブルービーチのヘリパッドは、米軍がいずれ「オスプレイ・パッド」として使う予定であることも視野に入れる必要がある。

[財政健全化法]住民の監視の目が必要だ

 北海道夕張市のような地方自治体の財政破たんを未然に防ぐため、新しい再建法となる「自治体財政健全化法」が参院本会議で可決、成立した。

 同法は、自治体の財政悪化の度合いに応じ「健全化」段階、「再生」段階の二段階で財政の立て直しを図ることを柱にしており、二〇〇九年度から全面施行される。現行の地方財政再建促進特別措置法は廃止される。

 新法を契機に、県内でも住民自治や財政健全化について意識を高め、行財政改革に取り組む必要がある。税源移譲の問題についても議論を深めたい。

 財政健全化法では、自治体の財政状況を(1)実質赤字比率(2)連結実質赤字比率(3)実質公債費比率(4)将来負担比率―の四つの指標(健全化判断比率)でチェックする仕組みになっている。

 数値が一定水準を超えれば要注意段階の「財政健全化団体」として早期是正を促す。さらに悪化した場合は破たんとみなされ、災害復旧などを除いて地方債の発行が制限される「財政再生団体」に移行することになる。

 健全化団体、再生団体になると、財政健全化計画、財政再生計画の策定を義務付けられる。財政運営が計画通りに進んでいない場合には、総務相らが予算の変更などの措置を勧告できる規定なども設けられている。

 県は今年三月、〇五年度の県内市町村の普通会計、特別会計を含む全会計の「連結実質赤字比率」を試算した。

 「10%以上は要注意」(市町村課)とされる中で、宮古島市は32・7%、本部町が14・9%などと続いた。宮古では市長が国の管理下に置かれる可能性を指摘し、職員に注意を促した。

 地方の財政破たんが自治体住民に何をもたらすのか、北海道夕張市の事例で徐々に明確にされつつある。

 従来のごとく自治体任せでは済まない。最終責任を負わされるのは住民だからである。無関心の代償は大きい。

 それぞれの住民は分権・自治について意識を高め、財政運営に対する監視の目を強める必要がある。財政破たんは決して対岸の火事ではないのである。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月19日 朝刊 1面)

 日本で飼料用に、欧州や米国などでは食品用に流通している遺伝子組み換えトウモロコシの一つを、フランスの研究チームが、毒性の可能性があると指摘した。

 問題のトウモロコシが欧州や米国では食用だというのは気になる。旅行先で口にすることもあるだろう。加えて、その飼料で育った牛の肉は安全なのかも心配だ。食の安全や日本の食糧戦略の問題点もあらためて提起していると思う。

 二十世紀に生み出された遺伝子組み換え作物は、除草剤耐性や病・害虫への抵抗性を高めているのが多い。問題のトウモロコシも土壌中の害虫を殺す毒素をつくる遺伝子を組み込んでいる。

 遺伝子組み換え作物にはこれまでも人体や環境への影響、安全性を疑問視する不安の声が付きまとい、日本のみならず世界中でその是非が今なお問われている。今回の指摘は、まさにその安全性を問うたのだ。

 一方、トウモロコシはアメリカ大陸原産だが、種子はデンプンに富むことから十五世紀以降、世界中に広まり、小麦や米とともに世界の三大穀物となった。菓子の原料でもあり、姿を変え日本の食卓も支えている。

 トウモロコシの最大の輸出国は米国で、多収量の一代雑種を生み出し戦略化している。一代雑種に実った種を植えると収量が減るので毎年、種を買わせる仕組みだ。さらに日本では在来種が栽培されなくなり消えるという遺伝子資源の枯渇が起きている。心配のタネだ。(福島輝一)


【琉球新報・社説】

米軍調査拒否 立ちふさがる地位協定の壁

 米軍の対応は県民軽視も甚だしい。嘉手納基地内で起きたジェット燃料漏れ事故で、県が求めていた基地内の土壌採取調査を拒否したからだ。
 嘉手納基地内で約2万リットルの燃料が漏出、約8700リットルが回収できないという事故が5月25日に発生した後、県文化環境部環境保全課、県企業局は6月7日に基地内で現場を確認したが、土壌採取や写真撮影は許可されなかった。
 その後も土壌採取を求めていた県環境保全課に対し、米空軍第18航空団は18日「基地幹部が技術官や環境保全官、上級司令部と協議し、周辺地域への被害、長期にわたる環境への悪影響はないと判断した。地元関係者による、さらなる検査や調査は必要ない」などと、ファクスで回答した。
 米軍が「悪影響はない」といくら繰り返しても額面通り受け取る人が果たして何人いるだろうか。
 「周辺地域への被害はないと判断した」というのは米軍の一方的な見解にすぎず、客観性が欠如している。
 県や地元自治体が詳細な調査を実施した上で「問題ない」という結論が出ない限り安心できない。
 米側は回答文の中で「県内の政府機関、地元自治体関係者に現場への立ち入りを許可し浄化作業や環境保全の手順の情報を提供した」と述べているが、土壌採取による調査を認めない理由などは一切示されていない。
 しかも県に対し一方的にファクスで回答文を送りつけただけで、電話連絡なども一切なかったという。「問答無用」の姿勢が顕著だ。
 これでは県民の不信感は増すばかりである。
 ジェット燃料が時間をかけて地中に浸透し地下水を汚染する恐れはないのか。この間の豪雨で汚染が拡大してはいないか。地元には懸念の声が強い。
 パイプ破損で地下水を汚染した嘉手納基地のジェット燃料が、周辺の井戸に浸出し、くんだ水が燃えるという事態が1967年に起きている。今回の事故で、当時の「燃える井戸」を思い起こした地元住民も少なくない。
 燃料漏れ事故に対しては、北谷町議会、嘉手納町議会、沖縄市議会が抗議決議を全会一致で可決し、自治体による立ち入り調査を認めるよう要求している。
 米軍が、県や地元自治体の基地内調査を拒否できるのは日米地位協定第三条(施設・区域内の合衆国の管理権)によるものだ。理不尽で不平等な地位協定を改正する以外にない。立ち入り調査は、危険な基地と隣り合わせに暮らす住民にとって当然の要求だ。
 米軍は、基地内での土壌採取などの調査を直ちに認めるべきである。「よき隣人」を目指すのなら、まず態度で示してもらいたい。

(6/20 10:00)

電磁波で勧告 健康への影響、因果関係は

 電磁波は健康被害と、どの程度関係があるのだろうか。携帯電話の電磁波は、高圧送電線からの電磁波はどうなのだろうか、など私たちの普段の会話の中でも、電磁波の話題が交わされるなど、生活に直結しているだけに関心は高い。
 世界保健機関(WHO)が、電子レンジなどの電化製品や高圧送電線が出す超低周波電磁波の人体影響について、「直接の因果関係は認められないが、小児白血病発症との関連が否定できない」として、各国に対策法の整備など予防的な措置を取ることを求める勧告を盛り込んだ「環境保健基準」をまとめた。
 電磁波の長期的な健康影響についての初の国際指針も公開するという。
 超低周波電磁波は、高圧電線やパソコン、ドライヤー、電気かみそり、電磁調理器などの電化製品から出る周波数が300ヘルツ以下、1000キロ以上の電磁波。高圧電線から数メートル以内、テレビから70センチ以内だと、白血病と関連が指摘される強さの電磁波を浴びるとされる。
 国内でも高圧送電線や一部の家電製品から出る超低周波電磁波のレベルが高い環境(日常生活平均の4倍以上)で暮らす子どもは、白血病発症率が2倍以上という疫学調査の報告もある。
 電磁波の発生源近くに行くと体調が崩れたりするという電磁波過敏状態を訴える人もこの数年、出てきているが、因果関係の証明は難しいという。
 「日常生活では体への影響を心配する必要もない」との報告もある。
 アメリカがポーランドとチェコに計画するミサイル防衛施設で、建設予定地に近いチェコの小さな村で住民投票が行われ、「レーダーからの電磁波による健康被害と、施設が攻撃対象となる不安」から、投票が半数を超えた段階で、配備反対が確実になったというニュースもあった。
 経済産業省は、今月、作業班を設置して送電線周辺の超低周波電磁界規制の検討を始めたばかり。
 まだよく分からないことも多い分野だが、神経過敏にはならず、関心は持っていたい。

(6/19 9:44)

【琉球新報・金口木舌】

 復帰前のAサイン時代、センター通り、ゲート通りからロックバンドの紫やコンディショングリーンなどが誕生し、彼らの活躍でコザは「ロックの街」として全国に知れ渡った
▼バンド誕生時、観客は米兵だっただけに、歌詞はほとんどが英語。「英語の歌詞にいかに魂を込めるかが勝負だった」と紫のメンバー、宮永英一さんは言う
▼そもそもロック音楽自体が欧米から入って来たもの。だから「日本語は合わない」は当時のバンドマンの常識だった
▼現在はどうか。ほとんどの若手ミュージシャンは日本語で歌う。一曲丸ごと英語で歌うのは少数派で、日本語の歌詞にいかに自分たちのメッセージを込めるかで勝負する。ジャンルの幅も広がった
▼ベテランのバンドマンたちは、時代の流れを傍観しているだけではない。自らの常識を変えようと、若手のライブを見て回る者も多い。一方、ベテランの円熟したステージパフォーマンスや演奏技術を盗もうと、積極的に競演に挑む若手もいる
▼来月27日にはコザミュージックタウンがオープンする。コザにはベテランと若手が共に刺激し合い、進化しようという土壌がある。それが「音楽の街」を目指す最大の武器となるに違いない。

(6/20 9:47)


【東京新聞・社説】

総連敗訴 自らが危機を招いた

2007年6月19日

 朝鮮総連本部が差し押さえられる可能性が出てきた。焦げ付いた巨額融資の返済命令に伴ってのことだ。在日朝鮮人の人権・権益を守るという本来の役割から逸脱した活動が招いた危機である。

 東京地裁の判決は、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の全面敗訴という厳しいものだった。

 この訴訟では、在日朝鮮人系の朝銀信組から不良債権を譲り受けた整理回収機構(RCC)が、朝鮮総連に対して約六百二十七億円の支払いを求めていた。

 結果は、請求通りの支払いを命じて、判決確定前に財産を差し押さえもできる「仮執行」を認めた。

 東京・千代田区にある中央本部は在日朝鮮人の一大拠点である。差し押さえともなれば初めてだ。総連は早急に債務返済の手だてを講じ、厳しく反省する必要がある。

 それにしても、これに先立つ中央本部の売却騒ぎは不明朗だった。

 総連を調査する立場だった元公安調査庁長官の投資ファンドが、三十五億円で中央本部購入の契約を結び所有権を移転した。

 料金は未払いのため、東京地検特捜部は差し押さえ妨害の目的もあったとみて、元長官と総連側の代理人である元日弁連会長の自宅捜索など強制捜査に踏み切った。

 結局、資金が集まらず、所有権は元に戻されるが、司法界の重鎮の関与は疑惑を生む。総連もこうした手法は通じないと認識すべきだ。

 総連は、今回の訴訟自体を「総連を解散に追い込む政治目的がある」と強く反発してきた。

 しかし、朝銀信組の不良債権の中には、他人名義を使った総連への不正融資、本国への送金の疑いがあるものや、ゴルフ場開発につぎ込み失敗した例もあるという。

 このため全国に三十八あった朝銀信組は破綻(はたん)して整理縮小を余儀なくされた。差し押さえられた地方本部もある。敗訴は自らに原因がある。

 総連は一九五五年、民族差別と闘う、在日朝鮮人の生活を守るなどを目的に結成された。しかし、本国の北朝鮮の方針に忠実に従って活動し、無理な経済活動をしたこともあり、在日朝鮮人の汗と涙の結晶である各種施設や権益を著しく損なう結果を招いた。

 さらには、本国である北朝鮮の金正日総書記が日本人拉致を認め、謝罪したことも重なって、総連構成員は減り続けている。

 かねて内部からも、本国に距離を置いて、在日朝鮮人の人権、権益を守る組織として出直すべきだ、という声が出ている。総連は存亡の機と受け止めるべきだろう。

じん肺和解 急いで防止策を講じよ

2007年6月19日

 政府の決断がもっと速ければ、じん肺被害者の苦しみは短くて済んだはずだ。なぜ、この時期に和解なのか。参院選対策と言われないためにも、せめて再発防止策は速やかに取りかかるべきだ。

 じん肺はトンネル工事や炭鉱で作業していた人が大量の粉じんを吸い込むことで発症する。肺組織が石のように硬くなっていくのだが、完治させる治療法はない。このため、じん肺患者は生きている間、呼吸困難や激しいせきと闘うことになる。

 高度経済成長期の一九五〇年以降、国が発注したトンネル工事の現場で働いた労働者が次々とじん肺にかかり、二〇〇二年十一月に国を相手に、最初の訴訟が起こされた。

 現在、四高裁と十地裁で係争中だが、国と原告側が和解合意文書を交わしたことで訴訟は順次、和解が成立していく。最初の提訴から四年七カ月が経過しており、原告側はこれまでに相当な時間を費やした。

 国が和解に踏み切った理由の一つには、このまま訴訟を続けても「勝てない」という判断があったからだ。昨年七月の東京地裁判決は初めて国の賠償責任を認めた。その後の熊本、仙台、徳島、松山の四地裁も原告勝訴の判決だった。

 トンネル工事ではないが、じん肺訴訟では最高裁が〇四年に筑豊炭鉱での被害について、規制権限を行使せず労働者の健康を守る義務を果たさなかったという国の「不作為」を違法と認定した。各地裁の判決はこの最高裁判決を踏襲している。国が、敗訴の見えている司法判断に突き進まず、和解での解決に方向転換したことは理解できる。

 しかし、なぜこのタイミングなのか。国はじん肺被害の発生責任を一貫して認めてこなかった。安倍晋三首相は「大変な苦労があったと思う。早期に解決しなければならないと判断した」と語ったが、原告が味わっている苦難とこれまでの裁判の流れをしっかり検討すれば、もっと速く決断することができたはずだ。

 首相は先月末、東京大気汚染訴訟で国から東京都への資金拠出を表明し、国と原告の間では和解に道筋をつけた。参院選が迫るなか、安倍政権は年金記録の不備問題で苦しい状況にある。被害者が多く国が不利な訴訟で和解を打ち出し、政権のイメージ改善につなげようとの思惑があるとすれば、選挙目当てとの批判は免れないだろう。

 この和解は「賠償放棄」という犠牲の上に成り立つ。国は早々にじん肺防止策を講じなければ、金銭的補償に固執せず和解を受け入れる原告の苦労が報われない。

【東京新聞・筆洗】2007年6月19日

 詩人の新川和江さんは子どものことを「歌」という詩の中で<いたいけな無防備なもの>と表現している。赤ちゃんは最たるものだろう。自分の意思ではなくてもこの世に生をうければ、いいことも悪いこともすべて降りかかってくる▼親がどうしても守れないとき、どうするのか。子捨ての助長につながってはいけないが、命を救うための最終手段は必要と悩んだ末の結果が、熊本市の慈恵病院による「赤ちゃんポスト」(こうのとりのゆりかご)の設置だ。匿名で受け入れるが、新たに赤ちゃん二人が預けられていたことが分かった▼開設初日には三歳程度の男児が預けられている。運用開始一カ月余で三人という数字は、関係者の予想を上回っている。運用の見直しを求める声もあるが、命が救われているという重みはある▼子育てをする環境が予想以上に悪化しているとの解釈も成立する。赤ちゃんポスト設置と時期を合わせて熊本市が設置した相談電話には、一カ月間で昨年一年間分に当たる約百件の相談があった。慈恵病院の相談窓口には「虐待しそう」という叫び声も届いている▼熊本市内では子育てが大変という話ではない。赤ちゃんポストの設置と同時に展開された「まず相談を」というキャンペーンが功を奏し、県外からの深刻な相談が少なくない。慈恵病院の蓮田太二副院長は「県外の自治体の相談窓口がうまく機能していない」「ゆりかごは県外でも必要」と問題提起している▼動きだした「ゆりかご」は、何を警告しようとしているのか。社会全体で共有したい。


【河北新報・社説】

北朝鮮核問題/約束の履行を見極めたい

 凍結されていた資金の移管問題が決着し、北朝鮮が国際原子力機関(IAEA)に実務代表団の招請を伝えたことで、2月の6カ国協議で合意した初期段階措置がようやく履行に向けて動きだす見通しになった。

 ただ、これまでの北朝鮮の対応ぶりを考えれば、先行きを楽観視することはできない。

 寧辺にある核施設の活動停止と封印、IAEAによる査察という初期段階措置が厳格に実行されるかどうか、見極めることが必要だろう。見返りとなる韓国からの重油5万トンの提供やコメ40万トンの支援も、慎重に実施することが求められる。

 早急に6カ国協議を開催し、日米中をはじめ関係5カ国は結束して北朝鮮に対し、初期段階措置の早期完全実施を強く迫るべきだ。

 初期段階措置が履行期限から2カ月以上遅れ、迷走した大きな原因は、北朝鮮のしたたかさもさることながら、米政府の姿勢に一貫性がなく見通しが甘かったことが大きい。

 米政府は、北朝鮮の違法行為に関与した疑いがあるとして、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)を「マネーロンダリング(資金洗浄)の主要懸念先」に指定。これを受けてマカオ当局はBDAを管理下に置き、北朝鮮関連口座の資金を凍結した。

 北朝鮮は資金凍結問題と初期段階措置を絡めて凍結解除や資金移管を要求し、米政府が譲歩した。しかし米政府は凍結を解除する一方、BDAと米金融機関との取引は禁止したことからこじれることになった。

 ドルの国際送金には金融システム上、米金融機関を経由する必要がある。いかに今回だけの例外措置といっても、米政府が問題視する資金の移管を引き受ける金融機関はない。結局、米政府とロシア政府が中央銀行を介在させる「超法規的措置」で移管することになった。

 北朝鮮は米の金融制裁を一時的にせよ解除させることに成功した形だ。今後も金融制裁解除を核問題と絡めて要求してくる可能性は否定できない。

 外交交渉である限り、譲歩も時には必要だろう。それでも、要求を拡大するのが常の北朝鮮に関しては、譲歩は最大限慎重でなければなるまい。

 初期段階措置も重要だが、もっと重大なのは次の段階だ。

 2月の6カ国協議の合意では次の段階として、北朝鮮のすべての核計画の完全申告、すべての既存の核施設の無能力化と、その見返りとして95万トンの重油に相当するエネルギー支援を盛り込んでいる。

 次の段階に移行して、はじめて非核化の取り組みが始まることになる。ところが北朝鮮は核施設の無能力化に応じる条件に、核兵器保有国として認めるよう主張しているのだ。

 北朝鮮の核問題解決が前進することになっても、それが拉致問題解決にすぐに結びつくわけではない。

 しかし日本は、核問題が先行することに焦ることはない。6カ国協議の枠内で、粘り強く主張していくことが必要だ。
2007年06月19日火曜日

【河北新報・河北春秋】

 有識者を集めて役所がつくる諮問機関なるものには信頼性に疑問符が付く組織が少なくない。1993年の国の医師需給検討会がいい例。「いいかげんだ」と非難されそうな推計をしている▼医師数の将来推計だ。2000年には中位推計で1万4000人、05年には1万6000人が過剰になると言っている。全く外している。100年先の予想ならいざ知らず、たった7年先、12年先の予測でこの失態

 ▼ 誤った推計を基に検討委は新規参入医師を1割削減することを提言した。結果、国公立と私学を含む医学部の総定員が減らされた。最も多い時で一学年8360人。それが今は7700人▼全国で問題になっている医師不足とは以上のようなことだ。水道の蛇口を閉めながら、水不足を嘆き、水争いをしている図。少し蛇口を緩めて供給量を増やさない限り、問題解決には程遠い

 ▼まして、これから来るのは渇水期のようなものだ。団塊世代が高齢化し医療需要が急増する。今は小児科や産科などで医師不足が顕在化しているが、いずれ高齢者医療にしわ寄せが来る▼本社のアンケートでも、与党は医療費抑制を至上命令に医学部の定員増には腰が引けている。このままでは、がんの手術に「0年待ちです」と言われる事態になりかねない。怒れ、団塊の諸姉諸兄よ。

2007年06月19日火曜日


【京都新聞・社説】

総連本部売却  白紙撤回でも疑念募る

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の土地・建物の売買をめぐり、元公安調査庁長官が代表取締役の投資顧問会社と結んでいた売却契約が一転、白紙撤回されることになった。
 元長官側による約三十五億円の資金繰りがつかず、所有権が解除されたためである。
 一方、整理回収機構が約六百二十七億円の返済を朝鮮総連に求めた訴訟の判決で請求通りの支払いと、財産を差し押さえて競売できる仮執行が認められた。朝鮮総連のシンボルともいえる中央本部が差し押さえられる可能性も出てきた。
 投資顧問会社との売買で国民が驚かされたのは、購入者側が緒方重威・元公安調査庁長官、売買依頼者が朝鮮総連代理人の土屋公献・元日弁連会長という大物二人の取り合わせだっただろう。
 しかも不思議なことに、投資顧問会社から購入代金が支払われていないのにもかかわらず、所有権の移転登記がされていたことである。
 東京地検は「売買を装った架空取引」の疑いがあるとみて、問題発覚後、緒方氏宅などを家宅捜索した。極めて異例の強制捜査といえよう。
 緒方、土屋両氏はこれまで「取引には実態があり、仮装売買でない」と繰り返し違法性を否定してきた。
 問題の発端となったのが、経営破たんした在日朝鮮人系の朝銀信用組合の不良債権を引き継いだ整理回収機構の今回の返済請求訴訟だ。
 両氏は、訴訟で敗訴すれば、中央本部の土地・建物を差し押さえられる恐れがあり、明け渡しを避ける目的の売買だったと説明してきた。白紙撤回になったとはいえ、問題は今回の売買契約が本当に成立していたかどうかであろう。
 売買契約が解除されたことについて緒方氏は資金調達に失敗したと繰り返し、だれが出資者で、どういう理由で取引が不成立となったかは不明である。
 ただ、取引の仲介役の不動産会社元社長に「朝鮮総連側から約四億円が支払われていた」と明らかにした。その支払いの目的は何なのか。不可解である。
 今回の売買をめぐり緒方、土屋氏以外にも周辺人物が浮かび上がってきた。とはいえ、売買の経緯や事件の背景などまだまだ分からないことが多すぎる。
 そもそも、緒方元長官が、かつて調査対象だった朝鮮総連を利するような行為に、なぜ手を貸したのか。憶測を呼びそうな元長官に、土屋氏が、なぜわざわざ売買を依頼したのか。その疑問すら闇のなかである。地検には厳正公平な捜査で国民が納得いく真相解明を望みたい。
 朝鮮総連は仮執行で中央本部だけでなく多数の活動拠点を失う可能性もある。一兆円を超える公的資金が投入された信組から実質的に多額の融資を受けているだけに、社会的責任も大きい。当事者の朝鮮総連の詳細な説明も求めたい。

[京都新聞 2007年06月19日掲載]

最終盤国会  何のための会期延長か

 国会は二十三日に会期末を迎えるが、ここに来て政府、与党が会期延長の姿勢を固めている。日数しだいでは七月の参院選の当初日程がずれ込む異例の事態となる。
 安倍晋三首相の強い意向を受けてのことだが、重要法案の徹底審議より参院選向けのアピールが目的なら承服できない。
 安倍政権初の通常国会を振り返ると、当初は格差問題への対応が与野党から問われた。松岡利勝農相の事務所費問題への追及に苦しい答弁を重ねながらも、提出法案は順調にこなした。
 二〇〇七年度予算案も年度内成立にこぎつけた。統一地方選、補選を経て、五月中旬には国民投票法案や教育改革関連法案といった重要法案も衆院通過させ、安倍カラーを国民にアピールした。
 その国民投票法が成立し、教育改革関連法案も順調に参院に送付できたことで本来なら当初日程通り、七月二十二日投票の参院選に時間的余裕を持って臨めるはずだった。
 それが、五月下旬になって、「消えた年金」問題に火がつき、松岡農相の自殺が重なったことから、安倍政権を激震が襲った。内閣支持率の急落に見舞われた首相の新たな成果をあせる気持ちが、重要法案を次々と前倒しで成立させる指示につながっているのではないか。
 参院には現在、教育改革関連法案のほか、社会保険庁改革関連法案、年金時効撤廃特例法案、イラク復興支援特別措置法改正案、政治資金規正法改正案、国家公務員法改正案などの重要法案がめじろ押しの状況だ。
 しかも、これらの法案のどれもが、衆院で与野党が激しく対立した問題含みの法案といえる。中でも年金時効撤廃法案にいたっては、急ごしらえの議員立法をたった五時間の委員会審議で衆院を強行通過させた法案だ。参院で十分な審議時間をとり、国民の納得のいく審議をするのは、当然だろう。
 首相が強くこだわる国家公務員法改正案にしても、首相の言う「押しつけ的な天下りを防止する」ために、なぜ官僚専門の再就職あっせん組織をつくらねばならないのか、疑問だらけだ。
 イラク特措法改正案も、イラクの内戦が治まらぬ状況下で、どれだけ航空自衛隊の安全が議論がなされたのか。
 政府、与党のめざす会期延長が、徹底審議のため、というなら大義名分も立とうが、とてもそうは思えない。選挙を控えた参院議員たちの心は、国会審議どころか既に選挙区へ飛んでいよう。
 京都新聞加盟の日本世論調査会による今月二、三日の全国世論調査では、参院選の争点として、年金や医療など社会保障問題をあげた人が七割を超し、景気・雇用・格差問題が四割近くで続く。
 国民は、働き、暮らしていく上での確かな安心を求めている。会期延長が、それとどう関係するのか、説明が要る。

[京都新聞 2007年06月19日掲載]

【京都新聞・凡語】

 かつて福知山市の長田野工業団地に小型の電気パトカーが走っていた。今から三十年も前になる。速度は自転車並み。パトカーとしての性能はともかく、排ガスを出さない仕組みが「無公害の工業団地」に似合っていた▼地元企業の開発力と意欲に大いに感じ入ったものだ。その電気パトカーを手がけた京の企業が大手自動車メーカーなどと、自動車向けのリチウムイオン電池の会社を立ち上げた▼自動車業界は低燃費車の開発にしのぎを削る。ガソリンとニッケル水素電池を併用したハイブリッド車の伸長は目覚ましい。植物を使ったバイオ燃料も注目される。何が次世代の車の燃料になるのかは最大の関心事だ▼リチウムイオン電池はそこに割って入った。環境対策では一歩リードする。充電電池だから、二酸化炭素は排出しない。バイオ燃料のように食糧生産への影響もない▼鉛電池などに比べて軽く、家庭での高速充電も効く。乗り心地は快適という。ただ製造コストがかかり、量産化しないと価格競争で太刀打ちできないのが大きな難点だ ▼電気自動車が最初に耳目を集めたのは大阪万博だった。第二次オイルショック時にも実用化が試みられた。その歩みは時代ごとに浮いては消え、消えては浮かぶ、繰り返し。今回は過去二回と異なり、地球温暖化防止への期待がかかる。さて、三度目の正直となるかどうか。

[京都新聞 2007年06月19日掲載]


【朝日・社説】2007年06月19日(火曜日)付

朝鮮総連―過去を清算するしかない

 「在日同胞の団結の象徴であり、愛族愛国運動の拠点である」

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)は中央本部をそう位置づけている。

 その「象徴」が立ち退きを迫られる可能性が出てきた。

 朝鮮総連は、かかわりの深かった朝銀信用組合の不良債権を引き継いだ整理回収機構による訴訟の判決で、627億円の全額返済を命じられた。仮執行宣言がつけられたため、本部が競売にかけられる恐れがあるのだ。

 各地で朝銀信組が破綻(はたん)したのに伴い、総連の関連施設に対する競売が相次いでいる。その中にあって、本部は最後に残った大きな資産だった。

 総連は裁判で、本部の重要性を強調するとともに、「整理回収機構は本部を奪い、総連を解散に追い込むという政治的な意図を有している」と主張した。しかし、その主張は認められなかった。

 総連が在日朝鮮人の権利を守る運動をし、本部が北朝鮮の大使館的な役割を果たしている面があるのは間違いない。

 しかし、だからといって、借りたものを返さなくてもいいというわけにはいかない。結果として「象徴」を手放すことになるとしても、仕方があるまい。

 もとはといえば、各地で朝銀信組の焦げ付きが増えたのは、総連が財布代わりに資金を引き出したことが大きい。あまりにも野放図で、その使途の全容がはっきりしない。ここは過去をきれいに清算して出直すしかないだろう。

 朝銀信組の処理には1兆3000億円の公的資金が投入された。今回返済を求められたのも、公的資金の回収の一環であることを忘れてはいけない。

 一方、謎の多かった中央本部の売却話は輪郭が見えてきた。

 総連の代理人を務める土屋公献・元日弁連会長と買い手側の緒方重威・元公安調査庁長官の交渉には、元不動産会社社長の仲介者がいた。緒方氏が旧知の仲介者といっしょに出資者を探していたが、結局資金が集まらなかったという。

 土屋氏は判決に先だって、買い手側に所有権を移していた登記を元に戻したうえで「(緒方氏を)今でも信頼しているが、結果として失敗だった」と述べた。

 緒方氏は「だまされたとは言いたくないが、乗せられた」と述べた。仲介者が強制執行妨害容疑で逮捕された際、弁護をしたことから親交があったという。

 捜査当局は、売買の実態がないのに、差し押さえ逃れのため虚偽登記をしていた疑いがあるとして捜査している。捜査がどう決着するかは定かではないが、そうした嫌疑をかけられるだけでも、2人とも軽率とのそしりは免れまい。

 それにしても、一連の売却話に朝鮮総連はどうかかわったのか。緒方氏は会見で「総連幹部から、仲介者に4億円余を渡したと聞いた」と明かした。きちんとした説明がなければ、朝鮮総連への目はますます厳しくなるだろう。

アフガニスタン―治安の悪化が心配だ

 アフガニスタンの首都カブールで、大規模な自爆テロがあった。警察学校のバスが爆破されて35人が死亡し、日本のNPO関係者3人を含め、多くの人が巻き添えで負傷した。

 旧支配勢力のタリバーンが犯行を認め、テロの続行を宣言した。自爆テロは各地で頻発している。イラクの惨状の陰にかすみがちだが、アフガンも深刻な状況にあることを思い知らされた。

 国連事務総長の報告書によると、昨年9月以降、アフガンでは77件の自爆テロがあった。実行犯には国外出身者も含まれ、チェチェン人や中央アジアのウズベキスタン人が自爆志願者を訓練しているとの情報もある。

 9・11テロの後、すぐに米国はアフガンを攻撃し、タリバーン政権を倒してテロ組織アルカイダも追い出したはずだった。だが、いつの間にかタリバーンが勢いを盛り返し、イスラム過激派がうごめく国に逆戻りしてしまった。

 国際社会が手をこまぬいていたわけではない。欧州諸国を中心に治安支援部隊を派遣する一方、国家を再建するために巨額の資金が注ぎ込まれた。日本の援助だけで10億ドルを上回る。復興はそれなりに進んでいる。

 にもかかわらず、タリバーンが勢力を回復したのはなぜか。一つには、国民の多くが暮らす農村の復興が思うように進んでいないことが挙げられよう。

 雨が少ないこの国では、灌漑(かんがい)施設が農民の命綱だ。それが20年を超える戦乱でずたずたになった。修復が急務なのに、資金が十分に回っていない。

 追いつめられた農民は、実入りのいいケシ栽培に回帰しつつある。昨年、アフガンのケシ栽培は前年の6割増になり、世界のアヘンの9割を供給すると言われるまでになってしまった。麻薬取引からの収益とイスラム圏からの資金が、タリバーンを潤している。

 イラク戦争の影響も大きい。タリバーンの残存勢力の掃討はずっと、米軍が主体になってきた。だが、イラク情勢の悪化で米国は兵力をイラクに回した。

 その穴を埋める形で、昨夏から国際治安支援部隊がパキスタン国境沿いの地域に展開し、タリバーンと戦い始めた。英国軍がイラクでの戦死者を上回る犠牲を出すなど苦戦を強いられている。

 それでも、治安の確保はアフガン再建の大前提である。アフガン国軍の増強を急ぎつつ、タリバーンを封じ込める努力を重ねなければならない。

 今回、関係者がテロの巻き添えで負傷した日本の「ライク・ウオーター・プレス」は、4年前につくられた新しいNPOである。「子どもたちに夢見る機会を与えたい」と、創作映画の上映や靴を贈る運動を続けてきた。

 次代を担う子どもたちの育成は、アフガンの国づくりの大きな柱である。安全にいっそう気を配りつつ、事件を乗り越えて活動を続けてほしい。

【朝日・天声人語】2007年06月19日(火曜日)付

 わが家から駅への途中、歩道に沿ってケヤキの大木が9本並んでいる。目測だが背丈は20メートルを超す。いまの季節、緑の枝を存分に広げて、威風堂々たるものだ。木々があるとないとでは、毎朝の趣は随分違うだろう。

 そう思ったのは、杜(もり)の都・仙台市が、ケヤキの処遇をめぐって紛糾していると聞いたからだ。青葉通のケヤキ並木といえば街のシンボルである。223本あるうち50本が、地下鉄駅の新設のために撤去される。これを伐採するか、よそに移植するかで市民の意見が割れている。

 伐採なら1本60万円だが、移植だと320万円かかる。親しみ深い樹木でも、5倍以上となれば考え込む人は多いのだろう。先日、市民1万人にアンケートをしたら、回答者の半数強が伐採を支持した。「非常に悩ましい」と移植派の市長は困惑しているそうだ。

 岐阜県の「荘川桜(しょうかわざくら)」を思い起こす。60年代初め、御母衣(みぼろ)ダムの建設で水没する村に、2本の桜の巨樹があった。それを40日がかりの移植で救った。いま、村の記念樹のようにダムのほとりで毎春花を咲かせる。

 難事を決行したのは、電源開発の初代総裁だった高碕達之助である。そのときの心情を「この巨樹が……青い湖底に、さみしく揺らいでいる姿がはっきり見えた」と述べている。

 地方の財政はどこも厳しい。「感傷」に予算を割く余裕などないのかもしれない。だが50本のケヤキを救う物語は、杜の都なればこそ、語り継がれる市民の財産になるようにも思う。仙台市は、秋までには結論を出すそうだ。


【毎日・社説】

社説:朝鮮総連本部 返済の義務を誠実に果たせ

 整理回収機構が在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)に約627億円の返済を求めた訴訟で、東京地裁が全額の支払いを命じる判決を言い渡した。

 回収機構は経営破たんした在日朝鮮人系信組の不良債権を引き継いだが、焦げ付きの大部分が朝鮮総連への貸付金だった事実が明確になったとも言える。判決には仮執行宣言が付いており、回収機構側が取り立てに必要な朝鮮総連の財産を競売にかけることができる。朝鮮総連の全面的な敗訴だ。控訴して仮執行の停止を求める公算が大きいが、朝鮮総連が実質的に中央本部の土地と建物を所有していると判断されれば、明け渡しを求められる可能性も出てきた。

 中央本部の不動産は、朝鮮総連の代理人を務める元日本弁護士連合会会長が間に入って売却話が具体化し、元公安調査庁長官を代表取締役とする投資顧問会社に登記簿上の所有権が移転されていたが、元日弁連会長は判決直前、登記を売買前の状態に戻した。出資予定者から出資が得られなかったためだそうだが、東京地検が仮装取引による虚偽登記の疑いで強制捜査に乗り出したことへの対策とも指摘されている。

 売買は不可解なことだらけだが、この期に及んで謎はますます深まっている。朝鮮総連を調査対象とする公安調査庁の元トップが、在日朝鮮人の権利を守るために買収に応じたこと自体が唐突であり、「大義のため」という説明では不透明だ。元日弁連会長から依頼されたというが、法曹界の重鎮と呼ぶべき2人がなぜ、住専問題でトラブルを起こした不動産会社の元社長の仲介を信用して話を進めたのか、また、入金前に所有権を移転させたのはなぜか、疑問は尽きない。元長官は差し押さえの回避が目的と認めたが、仮装取引と疑われることを想定していなかった、とも考えにくい。

 2人は記者会見を繰り返してはいるものの、深奥部分を十分に説明したとは言い難い。多くの人々が納得できるまで、背後事情や「大義」の内容について真相を語ってほしい。2人が担ってきた公的な職責の重さや日朝関係を考慮すれば、私人間の取引では済まず、説明する義務があるだろう。

 現時点で確かなのは、朝鮮総連に巨額債務を返済する義務があることだ。問題のそもそもの発端は、朝銀東京などの信組が朝鮮総連の強い影響下で、乱脈融資をした末に経営を破たんさせたところにある。損失補てんと預金の保護のため1兆円を超す公的資金が投入された経緯も、忘れられない。朝鮮総連側は誠意を尽くし、債務の返済に努めるべきである。

 回収機構側も債権の引き継ぎには税金が使われている以上、回収に全力を挙げるのは当然だ。だが、朝鮮総連の中央本部は在日朝鮮人らのシンボル的な存在であり、日朝国交正常化後は公館として利用されるとの見方もあるようだ。債権回収に際しては方策を十分に検討し、将来にわたる日朝間の友好関係にも配慮する姿勢が、関係者には求められている。

毎日新聞 2007年6月19日 東京朝刊

社説:視点 ミサイル防衛 「次は矛を出す」と思われぬ外交努力を=論説委員・布施広

 ミサイル防衛(MD)の東欧配備をめぐる米露の対立を見て、ある中国人研究者の言葉を思い出した。「盾を出した者は、次に矛を出すかもしれない」。これはまだ穏便な部類のMD批判と言うべきだろう。「盾」もまた戦力である。一方が防御能力を高めれば他方の攻撃力は相対的に弱まる。戦力のバランスが崩れれば、相手が軍拡に走っても不思議ではない。

 東欧配備に関してブッシュ米大統領は、完全に防御的な手段だと強調した。日本政府関係者が、既に配備したMDについて「専守防衛」と説明するのと同じ論法だが、それだけでMDへの批判や対抗措置を封じるのは無理だろう。周辺国を納得させるには、日ごろの外交努力と信頼醸成が必要だ。

 70年代に米ソが結んだ弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約は、互いに迎撃装置の配備を厳しく制限した。敵ミサイル迎撃が容易になると先制攻撃への誘惑にかられるという発想からで、この条約を「冷戦期の遺物」と見たブッシュ政権は、01年に脱退を宣言してMD開発に突き進んだ。

 それが誤りだったとは言えないが、冷戦期の発想を否定することから始まったMDの本格開発がロシアや中国の反発を呼び、「新たな冷戦」ともいわれる米露の対立を増幅したことも間違いない。

 ブッシュ政権の「多層防衛」構想は、MDで同盟国を守る一方、それらの防衛圏を「出城」として「本丸」の米国を守るという側面を持つ。敵ミサイルの発射直後や飛行段階でも迎撃しようというわけだ。クリントン政権時のNMD(米本土ミサイル防衛)も、日本が関係するTMD(戦域ミサイル防衛)もMDという呼称に統一され、日米を含む世界の空域防衛がリンクする構図が生まれた。

 こうなると「米国へ向かうミサイルを日本で撃墜してほしい」という要望が出ても不思議ではないし、「迎撃する兵器がない」という便利な釈明もしにくくなりそうだ。集団的自衛権の解釈とは別に、防衛省は最近、航空機搭載レーザー(ABL)などの研究、開発も検討する意向を固めたとされる。レーザー兵器なら発射直後のミサイル攻撃にも対応できる。

 だが、MD関連で米国の言い値の巨費を払い続ける一方、中国などから「日本は矛を出した」などと言われては立つ瀬がない。しかも今の迎撃システムでは、仮に日本の上空で10個の弾頭がばらまかれた場合、何個の弾頭を破壊できるか見当もつかない。核兵器の弾頭なら、1個でも着弾すれば壊滅的な打撃を受けるだろう。

 それでも迎撃しないよりましだという見方もある。東欧のように、MD配備を米国との同盟の証しとみなす「政治的配備」もあるだろう。だが、迎撃システムの限界を棚上げしたMD論ほど恐ろしいものはない。自分たちの安全について幻想を抱く恐れがあるからだ。

毎日新聞 2007年6月19日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:「杓子定規(しゃくしじょうぎ)」とは…

 「杓子定規(しゃくしじょうぎ)」とは杓子の柄を定規に使うことだが、何がいけないかというと昔の杓子の柄は曲がっていたのだ。今はお役所仕事などの融通のきかないさまを表す言葉となったが、定規の狂いのせいで、払った保険料を払ってないといわれては国民はたまらない▲行政学者らにいわせると、役人の杓子定規とは「訓練された無能力」のことだという。いったん身につけた原則にこだわり続け、新たな状況の変化に対応できない役人にありがちな行動パターンを、米国の社会学者マートンがそう言い表したのだ▲この間の社会保険庁の仕事ぶりに驚かされて、そういえばと思い出したのがこの言葉だ。ただこちらは現実の変化に対応しそこなったというだけではない。パソコンのキータッチ数の制限をめぐる労使協定などを聞けば、文字通り人間を無能にする訓練が行われていたとしか思えない▲役人をめぐるマートンの指摘には「目標の転移」というのもある。こちらは規則通り仕事をすることが自己目的化し、公衆への奉仕という本来の目標が見失われることを指す。だが国民への年金支払いという目標を、保険料無駄遣いという新目標へと転移させたのは社保庁の新機軸だ▲政府は、わが国行政史上空前の失態となった年金記録混乱をめぐる検証委員会を発足させ、その原因と責任の調査分析を始めた。ことは単なる役人の杓子定規や事なかれ主義の糾弾では片づけられまい。それらをグロテスクなまでに増幅した制度の病根にまで切り込めるかどうかだ▲年金制度にはそもそも曲がった杓子が定規として組み込まれてはいなかったか。いまの社保庁改革案で、信頼できる年金機構が生まれるか。その国民的論議の定規となるような報告を期待する。

毎日新聞 2007年6月19日 東京朝刊


【読売・社説】

朝鮮総連判決 乱脈が招いた全額返還命令(6月19日付・読売社説)

 北朝鮮の指導下にある在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が長年続けてきた乱脈運営を厳しく問う判決である。

 整理回収機構が朝鮮総連を相手取り、約627億円の返還を求めた訴訟で、東京地裁は同機構の訴えを全面的に認める判決を言い渡した。1審判決の段階で財産の差し押さえができる仮執行宣言も付けられた。

 朝鮮総連に弁済能力はないとみられている。東京の中央本部など総連の関連資産が差し押さえられ、競売の手続きが取られる可能性が出てきた。

 在日朝鮮人系の朝銀信用組合の破綻(はたん)処理では、総額で1兆1440億円の公的資金が投入された。整理回収機構としては、通常の債権回収と同様に、粛々と作業を進めるべきである。それが国民負担の軽減にもなる。

 破綻した16の朝銀信組から朝鮮総連に流れた資金が不良債権化していた。

 総連は戦後長く、各朝銀信組に負担金を割り振るなどして、資金を半ば強制的に徴収してきた。このことが、朝銀信組が破綻する主因となった。総連側に渡った巨額資金は何に使われたのか。その一部が北朝鮮に不正送金されたとの疑惑が、国会で追及されたこともある。

 今回の判決を控えて、中央本部の土地と建物の登記上の名義が、元公安調査庁長官が代表を務める投資顧問会社に移された事実が発覚した。総連側の代理人は元日本弁護士連合会会長である。

 金銭の授受なしに名義を変更した。5年後に総連側が優先的に買い戻す約束もあった。元長官の会社も、まったく実体のないペーパー会社だった。

 35億円の取引資金が集まらなかったとして、あわてて登記を抹消する手続きを取ったが、仮装取引をした疑惑は消えない。当事者が差し押さえ逃れを認めているのも、あきれるばかりだ。

 東京地検特捜部が電磁的公正証書原本不実記録の疑いで捜査を始めている。だれがこんなシナリオを描いたのか、徹底的に解明してほしい。

 脱会者も多く、賛助金や会費の収入も減少するなど、朝鮮総連の求心力が弱まっているという。

 総連関連施設への固定資産税などの減免措置を見直し、課税する自治体が増えている。債務や税を払えず、差し押さえられた関連施設も少なくない。

 北朝鮮は、日本人拉致を認め、ミサイル発射や核実験を強行した。朝鮮総連関係者は、北朝鮮の様々な国家犯罪にかかわってきた。今回の判決によって、朝鮮総連に向けられる目は、さらに厳しいものとなるだろう。
(2007年6月19日1時46分  読売新聞)

トンネルじん肺 和解内容を速やかに実行せよ(6月19日付・読売社説)

 国の対応は、余りに遅すぎたと言わざるを得ない。

 「トンネルじん肺訴訟」で、国と原告が和解した。原告の代表と面会した安倍首相は、「心からのお見舞いと哀悼の意」を表明し、じん肺対策の強化を約束した。

 厚生労働省は、トンネル工事現場で換気や粉じん濃度測定などを事業者に義務付けるため、省令改正を検討する、というのが和解内容の柱だ。原告は国への計32億円の賠償請求を放棄する。

 和解の成立で、訴訟の長期化が避けられた。じん肺対策の前進にもつながる。厚労省は、速やかに和解内容を実行に移すべきだ。企業も、工事現場での労働者の健康管理に万全を期してほしい。

 じん肺は、炭鉱やトンネル工事の作業員に多い職業病だ。大量の粉じんを吸い込むことで心肺機能が低下し、息切れや呼吸困難、ぜんそくなどを引き起こす。根本的な治療法はない。

 原告たちは、高度経済成長期から1990年代にかけて、新幹線や高速道路、ダム建設などの公共工事でトンネル掘削に携わった。ゼネコンの下請け、孫請け企業に雇われ、各地の現場を渡り歩いた人が多い。

 ゼネコンに対する訴訟では、既に大半が和解し、最高2200万円の和解金が患者に支払われている。

 国を相手取った訴訟は、2002年から全国11の地裁で起こされ、原告は約970人に上る。東京地裁が昨年7月、被害防止の適切な措置を怠ったとして、国に賠償を命じ、その後、4地裁が同様に国敗訴の判決を出した。これ以上、争っても、流れを変えるのは難しい状況に、国は追い込まれていた。

 和解合意書で、国は「これまでも必要な対策を講じ、務めを果たしてきた」として、自らの責任を認めていない。

 だが、トンネル工事現場の労働環境に関しては、厚労省が2000年に出した業界向けのガイドライン(指針)があるだけだ。被害の深刻さを考えれば、換気や濃度測定をもっと早く義務付けるべきだった。91年に濃度測定が義務付けられた炭鉱と比べ、対策の遅れは明白だ。

 04年の筑豊じん肺訴訟の最高裁判決以降、適切な措置を講じなかった国の「不作為」を認めて、被害者を救済する司法判断が定着しつつある。今回の和解も、その延長線上にあるといえる。

 じん肺は、粉じんを吸い込んでから、約30年後に発症するケースもある。今後、発症する患者を救済するために、企業が出資する補償基金の創設も、検討に値するのではないか。
(2007年6月19日1時46分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月19日付

 内田百けん(ひゃっけん)の小説や随筆には「甘木(あまぎ)君」という人物がしばしば登場する。甘木氏、甘木さんのときもある。姓ではなくて、「某」の字を上下に分解したものという◆「某氏」の背後には、そこはかとなく暗い闇が浮かぶ。「あまぎ」という柔らかい音の響きもあってだろう、「甘木氏」は市井の好人物といった風情を身にまとっている。文字とは不思議なものである◆あの奇妙な取引にも、どこの誰とも分からない人物が登場する。公安調査庁の元長官、緒方重威(しげたけ)氏が在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の土地・建物を購入するにあたり、資金の出し手となるはずだった人物である。お世辞にも甘木氏とは呼べない某氏である◆変な人らしい。「自分の名前は出すな」と緒方氏を表に立て、「代金授受の前に移転登記を済ませろ」と虫のいい条件を付けた末に「金は出せぬ」。きのう、取引は白紙に戻った。「某」よりは「謀」の字が似合う人かも知れない◆それにしても、緒方氏は最高検察庁の元幹部でもある。売る側、朝鮮総連の代理人を務める土屋公献(こうけん)弁護士は日本弁護士連合会の元会長である◆某氏がそもそも実在しなければ架空取引で論外だが、実在したならばしたで、法曹界の重鎮2人が怪しい人物に踊らされたことになる。甘木氏ならぬ、うかつな「大甘」氏であったろう。(内田百けんの「けん」は門がまえに「月」)
(2007年6月19日11時13分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】朝鮮総連敗訴 仮装売買の捜査は厳正に

 破綻(はたん)した朝銀信用組合の不良債権を引き継いだ整理回収機構(RCC)が朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)に債務の返済を求めた訴訟で、東京地裁は朝鮮総連に627億円の返済を命じ、確定前に判決の効力を生じさせる仮執行も認める判決を言い渡した。

 総連中央本部(東京都千代田区)はRCCに差し押さえられ、競売を経て、明け渡される可能性が強まった。当然の成り行きである。

 この訴訟で総連側は、「本部施設を奪って解散に追い込む政治目的がある」などと主張していたが、東京地裁はそうした総連の主張を全面的に退けた。妥当な判断だ。

 朝銀破綻の主因は、北朝鮮への上納金などを捻出(ねんしゅつ)するための朝鮮総連への巨額融資が回収困難になったためだ。全国の朝銀信組から集められた金は、いったん総連中央本部の金庫に納められ、新潟を経由して万景峰号などで北朝鮮に不正送金されていた。総連元幹部は著書でそう告白している。朝鮮総連は朝銀破綻の重大な責任を負っているといえる。

 この訴訟をめぐり、中央本部の差し押さえを免れるための仮装売買事件が発覚し、元公安調査庁長官で検察OBの緒方重威弁護士の関与が明らかになった。購入代金が払われないまま、所有権が元長官の会社に移転登記され、東京地検が元長官と総連の代理人で元日弁連会長の土屋公献弁護士の自宅などを捜索するという異例の事態に発展している。

 判決の直前、土屋弁護士は総連中央本部の移転登記を元に戻す手続きを取ったことを明らかにした。緒方氏側の金策がつかなかったためだ。これにより、差し押さえが妨げられる事態は回避されたが、仮装売買の事実が消えたわけではない。東京地検は仮装売買について、徹底した捜査を継続すべきである。

 土屋氏は護憲活動や平和運動に積極的な弁護士として知られる。これに対し、緒方氏は検察庁で最高検公安部長などを経て公安調査庁長官に就任した検察エリートだ。

 仮装売買の経緯によっては、その職務にもかかわってくる重大な事件である。検察OBに対する検察当局の厳正な捜査を期待する。

(2007/06/19 05:47)

【主張】問題親 非常識に寛容すぎないか

 自分の子が悪いのに、しかった教師のところに怒鳴り込む。なんでも学校のせいにして損害賠償まで請求する。そんな理不尽な親の問題が深刻になっている。

 親からの無理難題の事例は枚挙にいとまがない。

 大阪大の小野田正利教授らがつくる「学校保護者関係研究会」の聞き取り調査からも、その一端がうかがえる。「なぜうちの子が集合写真の真ん中ではないのか」「子供がけがをして学校を休む間、けがをさせた子も休ませろ」「子供から取り上げた携帯電話代を日割りで払え」など、要求内容はあきれるばかりだ。

 東京都港区教育委員会は、弁護士と契約して校長らの相談窓口をつくった。親とのトラブルで訴えられるケースを想定し、保険に入る教職員も増えている。こじれる前の対応が重要なのはいうまでもないが、やむにやまれない措置をとる教委が目立つ。

 学校関係者を中心に、「モンスターペアレント」(怪物親)という造語が広がっている。絶え間ない苦情攻勢で学校教育にも支障を来す親の存在は、教師を萎縮(いしゅく)させている。学校が壊されてしまうという恐れも抱くという。そんな関係は危機的だ。

 学校給食費を払わないばかりか、子供が通う保育園の保育料を払わない親も増え、自治体が法的措置を講じて督促するなど対応に苦慮している。支払い能力があるのに払わない親が増えているのだという。ここでも、自己中心的で規範意識のない親、学校を軽くみる親の姿が浮かび上がる。

 問題親が増えている背景に、子育てに対する学校、家庭、地域の役割分担意識の希薄化を指摘する見方もある。教育はすべて学校の責任とする風潮である。教育委員会も親からのクレームに過敏となる傾向がある。その結果、親の非常識が放置され、理不尽な要求に振り回されている。

 今年元日付の「年頭の主張」でも紹介したが、かつて欧米人は礼節を備えた日本の子供たちに目を瞠(みは)り、その子供たちを一体となって育(はぐく)む日本の社会や家庭の姿に感銘を受けたという(渡辺京二著『逝きし世の面影』から)。そうした社会を取り戻す必要がある。それにはまず、親の非常識を正すところから始めなければなるまい。

(2007/06/19 05:17)

【産経抄】

 「大学に入学してすぐプロ野球選手になるってきめていました。それも、プロに入って、どういう選手になって、どういうプレイをして、日本の野球ファンを変えていくかってことまで考えていました」。

 ▼ 「当時、プロ野球の、それもジャイアンツの選手を見てましてね、僕と勝負できるのは、ひとりかふたりくらいしか。もうね、ナメきってました」。こんな放言ができるのは、数多い野球人のなかでも長嶋茂雄さんぐらいだろう。井上ひさしさんとの対談で、立教大学時代のことを振り返ったものだ。

 ▼テリー伊藤さんは早稲田大学の斎藤佑樹投手を、その長嶋さん以来の球界の救世主だと断言した。早大進学を決めただけで、50年ぶりにメディアの目を一斉に六大学野球に向けさせた快挙に、今年1月の毎日新聞のコラムで喝采(かっさい)を送っていた。

 ▼斎藤投手が真価を発揮したのは、むしろそれから。六大学野球春季リーグで早大優勝に貢献し、ベストナインに選ばれるぐらいでは満足しない。全日本大学選手権では、日本一とMVPまで手中にしてしまった。

 ▼ たいしたものだ。もう「ハンカチ王子」なんてやわなニックネームは似合わない。コラムニストの中野翠さんは、「人びとの視線や喝采に〈自分〉を吸い取られるのではなくて、逆に吸い取って」しまう長嶋さんの資質を、斎藤投手の中にも見ている(『斎藤佑樹くんと日本人』文春新書)。

 ▼ 現役時代の活躍を知らない長嶋さんのことを、斎藤投手が意識しているのかわからない。ただ優勝インタビューでこう語った。「運は使い切らないもの。何か持っている。こういう人生なのかなと思います」。スーパースターとして野球人生を歩んでいく覚悟を述べた、ととれないだろうか。

(2007/06/19 06:53)


【日経・社説】

社説1 交付金改革を機に大学助成の再設計を(6/19)

 国立大学への運営費交付金をめぐる議論が活発になっている。第三者評価に基づく成果配分への転換を求める経済財政諮問会議などの意見に対し、文部科学省などには、基盤的経費である運営費交付金の支給が不安定になれば多くの大学の経営が危うくなるとの警戒感が強い。

 運営費交付金は今年度予算額で約1兆2000億円に上り、国立大の規模や教職員数などに応じて文科省が配分している。人件費や物件費、教育や研究の区分のない「渡しきり方式」だ。学内での使い道は各大学の自主性に委ねられている。

 経財諮問会議や財政制度等審議会は、これを成果や努力を反映したものに改めるよう求めてきた。きょう閣議決定する「骨太の方針」も、具体的な見直しの方向性を今年度内に打ち出すことを盛り込んでいる。

 たしかに現在の配分ルールは硬直的すぎ、大学の意欲や実績を十分にくみ取れる仕組みにはなっていない。しかも東大の約900億円をトップに旧帝国大学系が上位を占め、数十億円が交付される地方大学や小規模校へと序列がほぼ固定した形だ。

 成果配分部分を増やし、この状況を変えていく必要はある。現在でも運営費交付金のうち約800億円は競争的資金として別枠になっている。これを大幅に拡充し、そのうえで、本当に必要な額の基盤的経費を安定的に交付すべきではないか。

 もっとも、成果配分といっても評価主体のあり方や基準が問題となる。財務省が科学研究費補助金の配分比率で運営費交付金の配分を試算したところ、増額になるのは旧帝大など13校のみだった。これでは旧帝大優遇が加速するだけだ。具体策をもっと考えなければならない。

 より根本的には、運営費交付金に限らず大学への公的助成全体の再設計を進める必要がある。3000億円を超す私大への助成や、国公私大共通の科研費補助金(約1900億円)などを含め、大きな枠組みのなかで配分ルールを見直すべきだろう。

 規制改革会議は、こうした助成を教育と研究に切り離し、研究部分は組織ではなく個人やグループ単位で評価して配分すべきだとする。大学財政の安定性と競争性のバランスをとりつつ旧帝大優遇からの転換も狙った案といえ、一考に値しよう。

 制度の再設計とともに、大学自身の改革努力も不可欠だ。経営感覚を磨いて外部資金獲得を進め、補助金頼みの体質を変えてもらいたい。横並びの国立大授業料も見直しを迫られよう。大胆な再編統合が避けて通れないのは言うまでもない。

社説2 責任消えない元長官らの行動(6/19)

 疑惑を持たれた売買契約は白紙に戻したと、売り手と買い手が言っても、一件落着にはできない。

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の売買契約を巡る疑惑の根源は在日朝鮮人系信用組合の破綻だ。その処理に1兆3000億円以上の公的資金を投じた際に、北朝鮮への資金流出が破綻の一因と疑う強い反対を押し切った経緯がある。緒方重威元公安調査庁長官、土屋公献元日弁連会長、朝鮮総連などの関係者は契約にからむ行動の詳細と意図を明らかにする責任を負っている。

 在日朝鮮人系信組から不良債権を買い取った整理回収機構(RCC)が、実質的な融資先であった朝鮮総連を訴えた裁判で、東京地裁は総連に約627億円の返還を命じた。確定前に判決を執行できる仮執行宣言も出たのでRCC側は、総連が事実上所有する中央本部施設の差し押さえを求める手続きを取れる。

 強制執行(差し押さえ)の妨害にならないように朝鮮総連代理人の土屋氏は、緒方氏側と交わした売買契約を白紙にし、判決直前に登記を朝鮮総連側所有に戻した。「(買い手の緒方氏側の)金策が絶望的となった」と土屋氏は説明した。

 土屋、緒方両氏は、在日朝鮮人の活動の拠点である中央本部が人手に渡る事態を防ぐために考えた取引で「真剣なもので架空ではない」と主張する。しかし登記替えの理由とした売買予約にはじめから実体がなかった疑いはぬぐえない。

 ウソの登記をした容疑で東京地検が捜査しているのは当然だ。「強制執行を免れる目的で、仮装譲渡した」となれば強制執行妨害容疑も浮上する。この容疑は強制執行を実際に妨害しなくても適用できる。

 東京地裁判決は「(RCCの訴えは)本部施設を奪って解散に追い込む政治的なものではない」旨、述べた。「在日朝鮮人の拠点」だからといって、債務返済の原資から除外する理由にはならない。まして差し押さえ逃れに不透明な手段を用いたのでは、法曹として廉直さを欠く。

 とりわけ緒方氏は、長官まで務めた公安庁の調査・監視対象を手助けするために世間が首をかしげる行いをしたのであり、問題は大きい。詳細な経過説明を、重ねて求めたい。

【日経・春秋】(6/19)

 「人の噂(うわさ)も75日」ということわざは小学生でも知っている。しかし、なぜ75日なのか。一説では、立春に始まり雨水、啓蟄(けいちつ)、春分と15日ごとに巡り来る節気が5度も訪れれば季節はすっかり移ろい、人心も変わるのだという。

▼年金問題をきっかけに内閣支持率が急落し、農相の自殺と重なって政局がにわかに慌ただしくなったのは3週間ほど前。まだ「75日」には遠いから記憶が薄れる気配はない。それどころか、大学時代に入っていた国民年金の記録が宙に浮いてしまったサラリーマンが多数いることが分かるなど騒ぎは拡大中だ。

▼国会の会期延長幅が焦点になっている。天下り規制法案を通すために12日間延ばせば、参院選の投票日は当初の想定より1週間遅い7月29日。その時期になれば世の中は夏休みムードになり、そろそろ年金の逆風もやむのでは、と期待する声も一部にはあるらしい。夏至、小暑、大暑とたしかに節気は巡る。

▼もっとも、そんな思惑も年金制度への不信感が募る国民には通じまい。ここは与野党とも正々堂々と改革策を論じ合ってほしい。「年月は、人間の救いである。忘却は、人間の救いである」。きょう桜桃忌を迎える太宰治の言葉だ。忘れ去ることも時には必要ではあるが、政治家が忘却を救いとするようでは困る。


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