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2007年6月20日 (水)

6月20日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年6月20日朝刊)

[「集団自決」意見書]党派超えた対応が大切

 県議会がやっと高校歴史教科書の「集団自決(強制集団死)」の記述から旧日本軍が関与したとする文言の削除を求めた文部科学省の教科書検定意見について、撤回を求める意見書案をまとめた。

 沖縄全戦没者追悼式の前日、二十二日の本会議で採択する予定だ。

 「集団自決」に「軍命」や「軍の関与」があったことは、多くの戦争体験者の証言から明らかになっている。

 それが太平洋戦争末期の沖縄における実相であり、歴史的事実として忘れてならない沖縄戦の真実なのである。

 問題に危機感を抱き素早く反応したのは市町村だ。その多くが「「日本軍による命令、強制、誘導などなしに『集団自決』は起こり得なかった」とする意見書を採択している。

 だが、与党内部に意見の相違があったとはいえ、県議会は文科省の検定意見を撤回させることに逡巡し、きちんとした対応が取れなかった。

 少なくとも「この問題が政治的な主義主張の問題ではなく、実際に沖縄で起こった歴史的事実の問題」であることは誰の目にも明らかではないか。

 であれば、県議会が率先して動くべきであったのであり、その意味で対応の遅れには疑問を覚える。

 言うまでもないが、この問題を政治化させたのは、教科書を審査する「教科用図書検定調査審議会」に軍命がなかったかのような記述を調査意見書で求めた文科省側にある。

 軍命や軍による誘導、強制があったのに、それをなかったかのようにあいまいな表現にするのは恥ずべき行為であり、歴史に学ぶ謙虚な姿勢とは言えまい。

 それが安倍晋三首相の思想信条と軌を一にする流れであるなら、なおさらのことだ。史実をねじ曲げる動きを諌め、真実に目を向けるよう求めていくのは私たちの責務と受け止めたい。

 沖縄戦では、避難先の壕から兵士に追い出された住民は多い。方言しか話せなかったためにスパイの嫌疑をかけられた住民もいた。

 これは厳然としてある沖縄戦の実相と言っていい。そのことを文科省はきちんと把握すべきなのであり、「知らない」では済まされないということを認識する必要があろう。

 与野党が合意した意見書案は「沖縄戦における『集団自決』が、日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実」と記している。

 当然であり、歴史の歪曲は絶対に許してはならない。沖縄戦の史実を書き換える動きには、党派を超えて当たることが県議会の責務である。

[流出燃料調査拒否]なぜ「安全」と言えるのか

 またしてもと言うべきか。米空軍嘉手納基地内で約二千三百ガロン(約八・七キロリットル)ものジェット燃料が流出した問題で、空軍当局は県が求めている土壌などのサンプル調査を拒否した。

 理由は「周辺地域への被害および長期にわたる環境への悪影響はないと判断した」からだという。

 どのような調査をしたから、環境への影響がないと断言するのか疑問と言うしかない。安全と言い張るのなら、それだけの調査資料を提示すべきではないのか。

 これまでにも触れたが、嘉手納基地内と周辺には地下水源があり、県企業局北谷浄水場が基地内外にある二十三の「嘉手納井戸群」から一日約二万トンの水をくみ上げている。浄化した水は嘉手納町、北谷町、沖縄市、那覇市を含む七市町村に給水されている。

 つまり、水は県民の飲み水などに使用されているのである。もちろん嘉手納基地にも同じ水が供給されているのは言うまでもない。

 その「命の水」をきちんとした調査に基づく科学的データを示さず、ただ「大丈夫だ」と言われても県民が納得できないのは当然だろう。

 裏を返せば、県民には知られてはならない「環境への悪影響」があるために調査を許可しないのではないか。さらに言えば、調査する考えは全くない。米軍当局の態度を見ると、そう考えたくなる。

 私たちが「安全」にこだわるのは、かつて基地内から漏れ出た航空機燃料がそのまま地下に染み込み屋良区などの井戸を汚染した歴史があるからだ。

 油の匂いがする井戸水を汲んで火を近づけると、真っ赤な炎を出して燃え上がったという恐怖はまだ地域の人たちの脳裏から消え去ってはいない。

 県民に迷惑を掛けておいて、いざと言うときには日米安保条約における地位協定を盾に逃げる。これが「良き隣人」のすることなのであれば何をかいわんやだ。県もそのまま引き下がってはならず、県民の健康のためにも土壌調査を実施してもらいたい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月20日 朝刊 1面)

 ユッカヌヒーは航海安全と豊漁祈願の祭りだが、子どもの健やかな成長を願う意味もある。かつては張り子の人形が売り出された。今では伝統工芸品である。

 出店でおもちゃが売られる光景はその名残だろう。貧しい時代でもこの日ばかりは少しぜいたくをさせてもらった。幼いころ、兄に連れられて映画館へ行ったら、買ってもらったばかりの水鉄砲をなくし、泣きべそをかいた思い出がある。

 二年ぶりに糸満ハーレーを見た。梅雨の最中のハーレーはあまり記憶にない。競漕に合わせて打ち上げられる花火の音と雷鳴を聞き間違えるような悪コンディションのなか、シンカたちは懸命に舟を漕いだ。

 最後を飾るアガイスーブ終了と同時にどしゃぶりに。ほどなくして小降りになったのを見計らって祝女殿内へ。祭りの無事完了を神へ感謝する重要な儀礼の場だ。ところが今年はノロがいない。厳かな祈りの空間が見られないのは残念だ。

 村ごとに殿内を訪れたハーレーシンカの若者らは戸惑いながらも先輩の指示に従って線香を上げ、手を合わせ杯を受けていた。エークを手に堂内や庭で円陣を描きながら歌うハーレー歌も妙に寂しげだった。

 漁協の会場はイベントでにぎわっていた。さっきまでいた祝女殿内の寂しい状況とは好対照に。時代や社会の変化に伴って地域の伝統行事の正しい継承も難しくなる。しかし、祭りの根幹にある沖縄の精神文化は大事にしたい。(真久田巧)


【琉球新報・社説】

米軍調査拒否 立ちふさがる地位協定の壁

 米軍の対応は県民軽視も甚だしい。嘉手納基地内で起きたジェット燃料漏れ事故で、県が求めていた基地内の土壌採取調査を拒否したからだ。
 嘉手納基地内で約2万リットルの燃料が漏出、約8700リットルが回収できないという事故が5月25日に発生した後、県文化環境部環境保全課、県企業局は6月7日に基地内で現場を確認したが、土壌採取や写真撮影は許可されなかった。
 その後も土壌採取を求めていた県環境保全課に対し、米空軍第18航空団は18日「基地幹部が技術官や環境保全官、上級司令部と協議し、周辺地域への被害、長期にわたる環境への悪影響はないと判断した。地元関係者による、さらなる検査や調査は必要ない」などと、ファクスで回答した。
 米軍が「悪影響はない」といくら繰り返しても額面通り受け取る人が果たして何人いるだろうか。
 「周辺地域への被害はないと判断した」というのは米軍の一方的な見解にすぎず、客観性が欠如している。
 県や地元自治体が詳細な調査を実施した上で「問題ない」という結論が出ない限り安心できない。
 米側は回答文の中で「県内の政府機関、地元自治体関係者に現場への立ち入りを許可し浄化作業や環境保全の手順の情報を提供した」と述べているが、土壌採取による調査を認めない理由などは一切示されていない。
 しかも県に対し一方的にファクスで回答文を送りつけただけで、電話連絡なども一切なかったという。「問答無用」の姿勢が顕著だ。
 これでは県民の不信感は増すばかりである。
 ジェット燃料が時間をかけて地中に浸透し地下水を汚染する恐れはないのか。この間の豪雨で汚染が拡大してはいないか。地元には懸念の声が強い。
 パイプ破損で地下水を汚染した嘉手納基地のジェット燃料が、周辺の井戸に浸出し、くんだ水が燃えるという事態が1967年に起きている。今回の事故で、当時の「燃える井戸」を思い起こした地元住民も少なくない。
 燃料漏れ事故に対しては、北谷町議会、嘉手納町議会、沖縄市議会が抗議決議を全会一致で可決し、自治体による立ち入り調査を認めるよう要求している。
 米軍が、県や地元自治体の基地内調査を拒否できるのは日米地位協定第三条(施設・区域内の合衆国の管理権)によるものだ。理不尽で不平等な地位協定を改正する以外にない。立ち入り調査は、危険な基地と隣り合わせに暮らす住民にとって当然の要求だ。
 米軍は、基地内での土壌採取などの調査を直ちに認めるべきである。「よき隣人」を目指すのなら、まず態度で示してもらいたい。

(6/20 10:00)

表示違反 原産地の明示が信頼生む

 ベトナム産が含まれているにもかかわらず、すべてが県内産のように誤解させる紛らわしい表示を商品カタログやホームページに掲載したとして、公正取引委員会が琉球ガラス工芸協業組合など3事業者に対し、景品表示法違反(原産国の不当表示)で排除命令を出した。
 観光客が沖縄産と思って買い求めた土産品が実際は海外で製造されていたというのでは県産品全体のイメージダウンを招きかねない。
 海外の工場で製造したのなら、その旨をきちんと明示し、了解の上で購入してもらうことが何よりも大切だ。それによって、純県産品の差別化が図られ、信頼性を高めることになるだろう。
 今回、排除命令を受けたケースでは、通信販売用カタログに掲載されている商品の約7割がベトナムの現地法人で製造されていたにもかかわらず、すべてが県内産であるかのように表示していた。
 直営店の商品については既にシールを張り替えて訂正したほか、カタログやホームページも6月末までに変更するという。
 業者は「決して故意ではなく、勉強不足と認識の甘さによるものだった。速やかに改善する」と説明している。
 原材料費や人件費が安い海外では、少ないコストで労働力を確保できるメリットがあるため、その分、低価格で商品を提供できる。
 観光客の需要に応え、より安い経費で品質の高い土産品を製造しようと、海外に工場を建設する県内企業も出始めている。
 中には、純粋な沖縄産と比べても、ほとんど遜色(そんしょく)のないような製品もあるようだ。
 公取委も指摘しているように、海外に生産拠点を設置し生産拡大を図る企業努力自体を否定することはあってはならない。
 重要なのは原産地、原材料、製造方法などの情報を正確に表示することだ。その上で、どちらを選ぶかは消費者に判断してもらえばいい。
 昨年、沖縄には過去最多の560万人余の観光客が来県した。土産品の不当表示が横行するようでは観光産業にも影響しかねない。

(6/20 9:59)

【琉球新報・金口木舌】

 東京・青山のライブハウスで「まるで六文銭のように」と題するコンサートを見た。出演者は1970年代初めに活躍したフォークグループ・六文銭の元メンバーの小室等、及川恒平、四角佳子の3人
▼ステージの後半、「戦争」をキーワードに大岡信、谷川俊太郎らの詩に曲を付けた作品が並んだ。「幾時代かがありまして 茶色い戦争ありました」で始まる中原中也の「サーカス」も取り上げられた
▼いずれも反戦詩というわけではないが、「サーカス」を歌い終えた後、「こういう詩が教科書からなくなるかもしれない」とメンバーの一人が不安げに語ったのが印象に残った
▼言葉にこだわり、現代詩の楽曲化に挑んできたフォーク歌手は“放送禁止”という壁と闘ってきた。為政者に都合の悪い言葉を消し去ろうという動きには敏感だ
▼今回の教科書検定で沖縄戦の「集団自決」に関する記述から「日本軍の軍命・強制」の文字が消えた。犠牲者がなぜ自ら命を絶たざるを得なかったのか、検定後の記述から読み取ることはできない
▼集団自決の生存者は、今も癒えぬ心の傷を抱えたまま23日の慰霊の日を迎える。事実の重さを直視せず、言葉のみを消そうとする人たちの鈍感さに怒りを覚える。

(6/21 9:42)


【東京新聞・社説】

消えた年金 まだ全容が見えない

2007年6月20日

 “消えた年金”問題で、納付の証拠がない場合の給付の妥当性を判断する第三者委員会の発足が正式に決まった。同時に進めなければならないのは、手書きの紙台帳など関係する情報の全面開示だ。

 第三者委員会の当面の任務は、保険料納付の際の領収書に代わるものとして、預貯金通帳、家計簿、関係者の証言などをどこまで認めるか、その具体的な指針づくりだが、一人でも多く給付に結びつく内容にしてもらいたい。

 もっとも第三者委員会の設置で問題が解決するわけではない。年金記録管理の実態が依然不透明なのだ。

 政府は先月、社会保険庁のオンラインシステムに入力されていて該当者不明の約五千万件の納付記録について一年以内に照合作業を終えることを明言した。対象者が判明して年金の差額分を請求する場合に五年の時効をなくす法案を、社保庁改革法案とともに衆院で強行採決した。

 その後、五千万件とは別にオンラインに未入力の厚生年金の納付記録が千四百万件、船員保険の記録が三十六万件あり、一部が該当者不明になっていることなどが分かった。いずれも野党に追及されてボロボロ出てきたものだ。この分だと、隠された記録不備がさらに明らかになる可能性がある。これでは保険料を納付した国民の不安は高まるばかりだ。

 その払拭(ふっしょく)には、関係する全資料の開示が必要である。まず、年金の納付記録をすべての加入者に送付することだ。社保庁は三月から三十五歳になった加入者に納付記録を伝える「ねんきん定期便」を始めたが、いま必要なのは「臨時便」だ。正しい納付記録を確認しないと加入者は安心できないだろう。

 国民年金の納付記録の原本である手書きの紙台帳を全国の自治体の約一割が廃棄したが、その自治体名を公表することも必要だ。オンラインから漏れていても、自分が保険料を納付した自治体が台帳を廃棄していないことが分かるだけでも、いまの混乱状態は多少でも和らぐだろう。

 さらにどこにどんな紙台帳やマイクロフィルムが残っているか、データベースをつくることも必要だ。そのうえで全加入者について、台帳、マイクロフィルムとオンラインを照合し、オンラインの入力ミスをただすべきである。

 総務省には先に今回の問題の「検証委員会」が設けられた。必要な作業だが、歴代の社保庁長官や労働組合の責任追及だけでは行方不明の年金記録の回復にはつながらない。

 政府がいま全力で取り組むべきは“消えた年金”記録を一件でも多く元に戻すことである。

イラク特措法 説明不足は不信を招く

2007年6月20日

 イラク復興支援特別措置法の期限延長が、成立する見通しになった。航空自衛隊の輸送協力の実態などをめぐる政府の説明は不透明だった。出口戦略も含め、説明責任を果たし続けねばならない。

 イラク特措法の二年間延長が参院外交防衛委員会で可決された。近く本会議で成立する見込みだ。

 特措法は、戦争の大義や現地情勢など前提条件が制定時から大きく変化した以上、詳細な再点検が求められた。それが、参院の委員会で約十五時間審議した段階で、与党が野党の反対を押し切って採決に至ったのは残念だ。

 審議で解消されなかった疑問のひとつは、イラク戦争で米国を支持した政府の判断をめぐる問題だ。

 米英両国は、イラクの大量破壊兵器保有に関する情報が誤っていた事情は認めたものの、武力行使の決定については謝罪していない。審議では、政府は米英両国のこうした態度を引き合いに出し、自らの判断の失敗を認めなかったが、空輸協力の継続にあたっては、政府の道義的な責任の清算が先決ではないか。

 空自の輸送協力は、イラクから陸自部隊が撤収した後、内容や目的が大きく変質したとみられる。陸自のため物資を輸送する任務がなくなれば、米軍を中心とする外国や国連の要員、機材を輸送する任務に重点が移ったに違いないからだ。

 今後の空輸協力の意義を判定するには、実態に憲法上の問題がないことを確認せねばならないのに、情報開示はきわめて限定的だった。

 政府は、情報を明かすと、輸送する要員らの安全にもかかわると説明する。しかし、審議の中で、情報不開示の要請がいつ、どこで、だれから伝えられたのかという質問に対してさえ答弁を控えた政府の姿勢は、理解できない。

 米軍に対する協力の比重が大きくなっているとすれば、背景には、安全保障分野における日米間の信頼関係があるはずだ。しかし、北朝鮮問題などに対する日米両国の協力への影響といった“本音”の議論は深まらず、もどかしさが残った。

 空輸協力の意義の確認は、支援終了の条件の整理につながる。政府側はイラクの政治や治安の状況、多国籍軍の活動の変化など、さまざまな要素を総合的に判断して空自撤収時期を考えるとしているが、さらに具体的な基準を検討すべきだ。

 特措法延長後、空輸協力の妥当性をめぐる説明がおろそかになれば、政府の信頼が損なわれる。特措法延長を成立させた国会も、監視する責任を忘れてはいけない。

【東京新聞・筆洗】2007年6月20日

 憲政の神様といわれる尾崎行雄は九十三歳で『わが遺言』と題した本を著している。無形の財産である知識や経験は年とともに増し、死ぬ前がもっとも豊富になる。故に最後まで利用の道を考えねばならぬ。これが尾崎の考え方だった。<越し方は今より後のしるべぞと/知れば貴し悔いも悩みも>という一首も残している▼国会はいかにあるべきか。「遺言」に耳を傾けると、「打ちとけて国家全体のために懇談熟議すべき場所」と論じている。熟議とは「おのおの己の主張はあるけれども、それはごく穏やかに述べてお互いに譲る」ことを意味する▼現在の国会を尾崎はどう論評するのだろう。会期末が迫る中、年金記録の不備に対応する特例法案や社会保険庁改革関連法案など、まさに重要法案をめぐり与野党が全面的に対立している。熟議の世界とはほど遠い▼政府と与党の論理では、法案を成立させることが責任を果たすことになる。参議院における「数の力」で野党の抵抗を封じていくのだろう。安倍晋三首相には、下降した内閣支持率を反転させるには強い指導力を発揮することが必要、との判断があるのかもしれない▼もちろん無制限で審議を続けるわけにはいかない。審議を尽くしたら採決を行うのは当然だ。しかし政府と与党は、衆院の七割から八割の審議時間を参院で確保することを採決の判断基準にしているという。それで審議を尽くしたとは言えない▼参議院選挙も迫っている。国会で熟議できないことは、国民に直接判断を仰げばいい。小泉政権に例がある。


【河北新報・社説】

「骨太の方針」/中身の薄さが気になる

 自民党はこれで夏の参院選を戦えるのだろうか。また国民に何を問うというのか。きのうの閣議で決定された安倍晋三政権初の「骨太の方針」のことだ。

 政権政党が政府のこの重要政策方針を参院選公約の下敷きとするのはいいとしても、中身は「生煮え」「先送り」「ばらまき」のオンパレード―と言われても仕方がない。

 「生煮え」の代表と言えば、地域格差是正策として、個人住民税の一部を故郷や世話になった自治体などに納められるとする「ふるさと納税」である。

 「骨太」は税の実現に向け「検討する」と言うが、総務省の研究会は6月に検討作業を始めたばかりで、税をどんな仕組みにするか全く詰まっていない。

 第一、大都市部と地方の税収格差を縮めるのに、国税ではなく個人住民税という地方税を原資にするとすれば、それは説得力がないのではないか。地方の側から「まずは地方交付税の財政調整機能を生かせ」などという声が出るのも当然だろう。

 参院選の勝敗を左右するのは改選定数1人の地方選挙区と言われるだけに、地方受け戦術を重視したいのは分かる。しかし、イメージ先行の公約では住民が戸惑うばかりではないか。

 「先送り」とは、昨年の「骨太」が「2007年度をめどに改革を」と明記したはずの消費税の議論を完全に封印し、参院選後のテーマにしたことだ。

 「骨太」をつくった政府の経済財政諮問会議の消費税論議は、自民党税制調査会の津島雄二会長が4月に「税制は参院選の焦点にすべきでない」と発言したことなどを受け事実上のタブーになったいきさつがある。

 もっとも、前回の参院選で、年金一元化の財源に消費税率3%引き上げを公約した民主党も今回の公約では撤回している。つまり有権者は消費税論議に目隠しをされたまま、参院選を迎えなければならないわけだ。

 選挙対策で「痛み」を先送りするのはいつものことだ。が、税制という国民生活に直結する重大なテーマの信を選挙時に問わずしていつ問うというのか。

 小泉純一郎前政権時代の「骨太」は構造改革の「誓文」のようなものだった。それもそのはずで、当時の経財諮問会議は実質的に政府の各種審議会や諮問機関などの最上位に君臨し、改革推進のために各省庁の省益や自民党の族議員の動きを強く押さえつけていたからだ。

 しかし今回は、同会議の民間議員が提案した「公共事業費3%削減」が、地方重視を求める国土交通省側の反対で消えた。

 大田弘子経済財政相も「歳出削減計画を守るのは想像以上に難しい」と与党や省庁の歳出増圧力が強かったことを認める。

 公共事業削減の善しあしは別にして、「ばらまき」や族議員が息を吹き返す兆しである。

 今回の「骨太」は責任感に欠ける公約が散見される点で「骨細」の印象があるし、重要なテーマで信を問うことをしていない点で空虚な印象が残る。

 経財諮問会議が霞が関や永田町との調整機関に後退したのなら、その役目は終わった。

2007年06月20日水曜日

【河北新報・河北春秋】

 歴史遺産は身近な所にもある。明治から昭和初期にかけて築かれた建造物を「ヘリテージ(遺産)」と呼び、価値を見直そうという動きが、全国的に広がってきた▼観光スポットに加え、工場や倉庫から一般住宅まで、対象は幅広い。探訪記をホームページに載せたり町おこしに活用したり。レトロな雰囲気に癒やしを求める現代人の心をつかんでいる

 ▼ いわき市では1月、「ヘリテージツーリズム協議会」が発足した。かつてまちを支えた炭坑の跡や関連施設などを観光資源として売り出すのが狙い。「産業遺産を地域の宝としてアピールしたい」と関係者は意気込む▼一方で、老朽化する建造物の維持・保存が共通の課題として浮上してきた。所有者の財政的負担は大きい。登録有形文化財でも補修費などへの支援制度は不十分。取り壊しを望む所有者は多いという

 ▼問題解決に向け先月発足したのが、米国人建築家ヴォーリズの作品保存を目指す全国ネットワーク。近代建築史に独自の足跡を残したヴォーリズの功績紹介に乗り出した▼作品は東北にも残る。福島市の福島教会はヴォーリズが日本で最初に手掛けた教会だ。建造したのは宮城県の大工。ヘリテージには誕生をめぐるさまざまな物語がある。物語が広く語られるようになれば、保存への道も開ける。

2007年06月20日水曜日


【京都新聞・社説】

昇降機点検  安全性認識のずれ怖い

 六本木ヒルズ・森タワー(東京)の今年四月のぼやの原因となったエレベーターロープのストランド(金属線の束)破断が各地で同様に見つかっている。
 国土交通省はその都度、緊急点検を指示しているが、事態を重く見て業界大手五社に過去一年間のエレベーター点検記録調査を命じた。
 その結果、国内エレベーターの約八割にあたる約五十万基のうち四十二基でストランド破断があったことが判明した。
 いずれもが、年一回の定期点検や日常の保守点検で「問題なし」とされた後、発覚していたことは重大だ。
 点検不十分の可能性が高いが、業界が「まれではあるが破断もあり得る」として、危機意識が薄いのが気になる。
 エレベーターはかごをつる複数のロープがすべて切れても安全装置が働いて落下しないように設計されている。
 だがそれに安心して点検をおろそかにしていると重大事態を招きかねない。破断を甘く見てはならない。
 ストランド破断の推定原因では、経年劣化が十五基、異物が金属線を傷めたのが七基と多かった。さびによる劣化、異常摩耗といった深刻な原因と考えられるものや、新設一年以内の破断もあった。
 ストランドは金属素線約二十本を寄り合わしたもので、ストランド六-八本で一本のロープができる。
 エレベーターは建築基準法で年一回、法定検査が義務づけられ、JISの検査標準では素線が五本以上切れていればロープごと交換するとしている。
 日ごろしっかり点検し、適正にロープ交換していれば、ストランド破断はまず考えにくい。
 国交省も今回の破断を「率直にいって多い」と憂慮し、「あってはならないこと」と厳しく受け止める。
 だが日本エレベーター協会は「メーカーごとの差は別として、一万基に一基弱という数字」で、この程度の破断はあり得るとして重大視するふうがない。
 かごをつるロープの金属素線がプツプツ切れていると思うと恐怖感が募るが、国交省と業界でこれだけ安全性への認識がずれるのは驚きだ。業界の認識は甘いと言わざるを得ない。
 避難騒ぎとなった森タワーのぼやは切れた金属線がこすれて発火した。他のエレベーターのストランド破断で異常音に気づいた人が連絡したケースもあった。
 不十分な点検となるのは、対応能力に欠ける一部業者があったり、設置ビル側の都合で十分な時間が取れないケースや経費問題で適正なロープ交換ができない場合も考えられるだろう。
 だが最大の問題は、現行制度ではエレベータートラブルは人身事故でない限り直ちに行政報告する義務がないことだ。業界の安全意識を高めるためにも、事故報告の義務化など点検のあり方を総合的に検討し直すべきではないか。

[京都新聞 2007年06月20日掲載]

年金第三者委  判断基準を早急に示せ

 年金保険料を確かに支払ったが、証明する領収書が手元にない。そのような場合でも年金を支給するのが可能かどうかを審査する政府の「第三者委員会」が設置される。きのう閣議決定された。
 年金の記録漏れなどの問題は、社会保険庁のずさんな管理によって引き起こされたものだ。国には一人でも多くの国民の不利益を償う責任がある。第三者委を実効性のある仕組みとして十分に機能させなければならない。
 第三者委は、総務省に中央第三者委、全国五十カ所の同省出先機関(行政評価事務所など)に地方第三者委を置く。弁護士や社会保険労務士、税理士などに委員を委嘱し、合議で審査する。
 中央第三者委は二十五日に初会合を開き、地方で個別審査する際のガイドラインづくりに着手する。地方第三者委は来月半ばの発足が予定されている。
 運用などについては課題も多い。地方第三者委は、社会保険事務所で年金記録を確認できなかった人たちを対象に審査するが、どの程度の証拠があれば支払ったと判断されるのかが明確でない。一番知りたいのはそこだ。
 給与明細書や、年金保険料を引き落とした金融機関の通帳があれば有力な証拠になろう。では家計簿ならどうか。直接間接に証明できる文書類がない場合、口頭での説明ではだめなのか。雇用主の証言なども要るのか。
 そうした疑問に答えるためにも、中央第三者委は早急に判断基準を示してもらいたい。
 これまで社会保険事務所の窓口に照会があり、支払った記憶があるのに「記録がない」と却下された事例は約二万件に上る。これらの人たち以外に記録漏れにまったく気づいていないケースも相当数あるだろう。審査にあたっては、申し立てをした人の思いを十分にくみ取り、可能な限り年金の支給を認めるべきだ。
 地方第三者委は十人以内の委員で構成し、必要に応じて臨時委員や専門委員を置くことになっている。申請状況をみて万全の審査態勢をとってもらいたい。
 総務省は、行政評価事務所から遠い地域の住民負担を軽減するために、各市町村に配置されている総務相委嘱の行政相談員(全国で約五千人)が必要書類などについて事前相談にあたることを検討している。だが住民にはなじみが薄い。利用方法など十分な広報が必要だろう。
 同時に、社会保険事務所での親身な対応を求めたい。第三者委を通じた措置について丁寧に説明し、アドバイスを惜しんではなるまい。
 「宙に浮いた」年金に、「消えた」年金。さらに未入力や重複、廃棄…と底なしの様相だ。対象者全員に、個々の全納付記録を送り、チェックしてもらうことが先決だ。心配だったら申し出なさい、とでもいわんばかりの姿勢では、国民の年金への不満や不信はぬぐえない。

[京都新聞 2007年06月20日掲載]

【京都新聞・凡語】

奥只見ダム湖                                        

  四国の水がめ早明浦ダムが、またピンチだという。貯水率が30%を切るのも目前で、第三次の取水制限が始まっている▼干上がるダム湖の一方で満々と水をた たえるダム湖もある。六億百万トン、日本一の貯水量を誇る奥只見湖(新潟、福島県)を先日訪れ、雄大さに目を奪われた。新潟県側の最深部から奥只見ダム堤 まで、観光船で渡ると四十分の小旅行になった▼水量の豊かさは「一年の半分が雪」という立地条件からだろう。越後駒ケ岳はじめ周囲の山々は、六月でも稜線 (りょうせん)のあちこちに雪を抱く。湖が干上がった年はないのか。電源開発会社の奥只見電力館でただすと「聞きませんねえ」▼奥只見ダムは、戦後不足し た電力をまかなうため建設された。二〇一一年に五十歳を迎える。出力五十六万キロワットは、水力発電では国内最大。その取水口は水深二十五メートルの浅い 場所にある。水量に自信があるからできる構造だ▼故人で作家の開高健さんは、奥只見の自然をこよなく愛した。開高さんらの活動が実り、湖に注ぐ北の又川は イワナなどの魚が通年禁漁とされている。川の魚は湖に至り、より大きく育つようになった▼ダム開発は功罪を伴う。時に自然に手ひどい傷を与える。奥只見湖 でも豊かな水を得る代わりに、多くが失われていよう。どこまで取り戻せるか、自然の回復力を後押しする人間の活動を止めないことだ。

               

[京都新聞 2007年06月20日掲載]


【朝日・社説】2007年06月20日(水曜日)付

骨太の方針―「構造改革」の旗が消えた

 「美しい国」へは、痛みを伴わずに行けるものだろうか。

 安倍内閣最初の骨太の方針が19日決まった。じつに盛りだくさんの政策が掲げられている。しかし、「痛み」については、ほとんど語られていない。

 たとえば、高齢化社会を支えるためには避けられない負担増への道筋は提示していない。経済のグローバル化に立ち向かうため欧米と経済連携協定(EPA)を結ぶには、農業などの国内改革が不可欠となるが、そこにも踏み込んだ記述が見当たらない。

 その一方では、近づく参院選を意識してなのか、「ふるさと納税」や「地域力再生機構」の検討といった、地方の票田への目配りが目立つ。

 こんどの方針を象徴しているのが、その正式名称だ。昨年までの「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」を、今回は「経済財政改革の基本方針」に変えた。「構造改革」の文字を消したところに、安倍首相の本音が垣間見える。

 そもそも構造改革は、小泉政権の旗印だった。「改革なくして成長なし」と唱え、痛みに耐えるよう訴えた。

 その総設計士だった竹中平蔵氏は、こう位置づけた。「失われた10年」といわれた長期不況の泥沼から再生するには、たとえ当面は痛みがあっても、長期的視点に立ち、病んでいる経済社会の基礎体力を徹底して強化する、と。

 不良債権の抜本処理や規制緩和、民営化を大胆に進め、政官業による既得権を排除する、という路線である。

 安倍政権はこれを引き継いだはずだった。だが、じっさいには構造改革との距離をだんだんと広げてきた。

 昨秋には、小泉改革の本丸だった郵政民営化に反対した国会議員の復党を許し、暮れの道路特定財源の改革は早めの妥協で頓挫した。その後はさしたる改革策を打ち出さず、来年度予算の公共事業費削減でも数値目標を出していない。政策の立案も、各省庁の官僚組織に委ねる手法に回帰してきた。

 今回の骨太の方針は、前政権の構造改革路線から抜け出したい、との意思表示と受け止めるべきだろう。

 たしかに一方では、改革がもたらした副作用が問題になっている。賃金が低く昇給の見込みがない非正社員が急増したことに対して、安倍政権は「再チャレンジ支援策」に乗り出した。

 しかし、支援策が中心にしているはずの25~35歳の世代では、安倍内閣の支持率が他世代にくらべ目立って低い。支援策が不十分なせいだけではない。改革姿勢の後退に対して批判が強いのだ。

 05年秋の郵政総選挙で、この世代が小泉改革の支持に回り、自民大勝の原動力になったのとは正反対だ。

 骨太の方針は、参院選に向けて、安倍政権の経済政策面での公約である。こうした路線に対して、有権者はどんな審判を下すだろうか。

パレスチナ―分裂より和解への努力を

 パレスチナ自治が分裂の危機に陥っている。イスラム過激派のハマスと解放闘争組織ファタハの武力抗争が激化したためだ。非常事態宣言の下で首相が解任されるなど、事態は深刻さを増している。

 自治区のうち、エジプト国境に面したガザをハマスが制圧した。これに対して、ヨルダン川西岸にいるファタハ出身のアッバス自治政府議長は、ハマス系閣僚を排除した非常事態内閣を指名した。

 だが、ハマスはこれを拒否した。ガザと西岸の二つに分かれて両者がにらみ合う構図になっている。

 発端は06年の自治評議会選挙で、ハマスが多数派を握ったことだ。94年の自治実施以来、自治政府を独占してきたファタハが政権を失い、ハマスによる新政権との対立が深まっていった。

 米国や欧州連合(EU)は、自治政府への支援を停止して圧力をかけた。サウジアラビアの仲介で今年3月、ハマスとファタハの連立政権が誕生したが、米欧の冷たい態度は変わらなかった。

 今回の危機で、米欧はアッバス議長支持を打ち出し、制裁を解除して支援再開を表明した。ハマス排除を歓迎してのことだ。しかし、それでは分裂が固定化され、危機を深めることにならないか。

 第一に、欧米の支援を受けたファタハが、西岸でハマス排除を強めると予想される。しかし、ハマスは西岸でも支持基盤を持っており、抗争がますます激しくなる危険がある。

 第二に、ハマスが支配するガザが封鎖されて孤立化すれば、飢餓などの人道的な危機が進む。イスラム社会全体に反米欧の機運を生みかねない。

 ハマスは、イスラエルとの和平を目指したオスロ合意を受け入れず、イスラエルの存在も認めようとしない。それが政権を握ってしまったことへの、米欧などのいら立ちは理解できる。

 だが、彼らが民主的な選挙で勝利したことも忘れてはならない。ファタハが敗れたのは、援助の私物化といった腐敗が目に余り、人々の信頼を失ったからだ。

 5月に退任した国連中東和平担当特別調整官のデソト氏は「国連は対話を通じてハマス政権の変化を促すべきだった」「ハマスはうまくすれば、イスラエルとの共存をめざす現実路線をとる可能性があった」と内部報告書で書いている。

 ハマスの背後にある民衆の支持に目を向けなければ、本当の安定は得られないとの見立てである。私たちはこの見方に賛成だ。

 パレスチナは中東の紛争の根っこである。その混乱は中東全域、さらにはイスラム社会全体に影響する。危機が進めば、アルカイダなどの過激派に格好の宣伝材料を与え、世界に新たな危機の種をまき散らす恐れがある。

 いま一度、サウジやエジプトなどアラブ有力国が、パレスチナ両派の和解に動き出すよう求めたい。日本も、和解を促す立場から外交努力を強めるべきだ。

【朝日・天声人語】2007年06月20日(水曜日)付

 大手時計メーカーの調査によれば、仕事の電話を保留にされて、気持ちよく待てるのは「30秒以内」らしい。それを過ぎるとイライラする。保留どころか一向につながらない社会保険庁の電話は、どれほどの不満を国民にもたらしただろう。

 それも一因かどうか。本社の世論調査で安倍首相には厳しい結果が出た。「最後の一人に至るまでチェックし、年金はすべてお支払いする」。首相のこの発言を「信用できない」という人は67%を占め、「信用できる」の25%を大きく引き離した。

 「言葉は翼を持つが、思うところには飛ばない」。英国の作家ジョージ・エリオットの至言は、首相の身にしみるだろう。不安を一掃すべく繰り出した決意表明だが、国民の胸には届いていなかったようだ。

 内閣の不支持率も51%と、初めて5割を超えた。参院選への暗雲と見てとれる数字である。憲法や教育など、理念の高みを仰ぎ見るうちに足をすくわれた形だ。一転して年金対決となった土俵から、「記録照合は1年」「責任を徹底的に調べる」……と首相の大声が飛ぶ。

 待たされればいら立つが、時の流れは早いものだ。時のもたらす忘却を、荷物をまとめて去っていくサーカスに例えた人がいる。責任をめぐって、自民党内には早くも「選挙が終われば『何のこと?』になる」とタカをくくる声があると聞く。

 選挙が済めば、サーカスの人波が引くように幕、とは問屋が卸すまい。国民に約束した言葉である。あらぬ翼が生えてどこかに消えることなど、ないとは思うが。


【毎日・社説】

社説:じん肺訴訟 国は過ちをはばからず改めよ

 国側が5回連続で敗訴した「トンネルじん肺訴訟」で、国がようやく和解に応じ、じん肺対策の強化を約束する合意文書を原告側と交わした。20日の東京高裁を皮切りに、全国14の地・高裁で係争中の訴訟で正式に和解が成立する見通しだ。

 最初の提訴から約4年7カ月。国が早期解決に方針を転じたのは好ましいことではあるが、遅きに失した面は否めない。和解条件として合意書に盛り込まれた新たなじん肺対策は、工事現場での粉じん濃度測定や高性能防じんマスク使用、換気の義務づけなどで、ほとんどがこれまでの判決で不備を指摘された項目だ。国は速やかに実行に移さなければならない。

 司法の場では勝訴の流れが定まったかと思われたのに、原告側は和解に当たって賠償請求をあっさりと放棄し、合意文書にもこだわりを捨てて、国側が謝罪の文言を書き加えぬことを容認した。裁判の勝ち負けや金銭よりも、国に積極的な取り組みを促し、じん肺を根絶させたいとの一心からだ。

 そうした原告側の思いをくみ取ることなく、国側は判決で繰り返し違法行為を断罪されても、「従来、必要な対策を講じてきた」と言い張ってきた。裁判での勝ち目がなくなり、損害賠償のための予算措置が不要となったことを確かめるようにして、渋々和解に応じた国側の姿勢を潔しとしない。安倍晋三首相も原告団と首相官邸で面会した際、お見舞いと哀悼の意を表したものの、謝罪の言葉は口にしなかった。この時期に対決姿勢を改めた以上、参院選対策を念頭に置いているのだろうが、その割には踏ん切りがよくない印象を残した。

 じん肺は、多量の粉じんを長期間吸入すると発症する職業病だ。決め手となる治療法がなく、症状が悪化した患者は酸素吸入に頼って一生を終えるしかない。被害は悲惨極まる。昔から危険性が指摘されてきたが、トンネル内の工事現場での対策は、炭鉱や金属鉱山に比べて後手に回ってきた。しかも、トンネル工事に携わる作業員の多くは「渡り工夫」と呼ばれる出稼ぎ労働者で、元請け、下請け、孫請けという建設業界の重層構造の中で、極めて弱い立場に置かれてきた。

 国は厳しい職場環境や就労条件を承知していたはずなのに、じん肺を防止するための規制権限を行使しなかった。対策を強化すれば工期が長引き、コストアップにつながることを勘案すれば、行政はゼネコンなど受注企業の利益を優先し、労働者の命や健康を軽んじていたと言わざるを得ない。国側の関係者は深刻な被害を直視し、不作為の過ちと責任の重大さを明確に認めてしかるべきだ。

 司法に繰り返し指弾されるまで強弁を続け、施策を見直そうとしない国の対応は、国民の信頼を裏切る背信行為にほかならない。非があれば率直に認め、法廷でいたずらに争うようなまねは慎むべきだ。敗訴が続く肝炎訴訟、原爆症訴訟などへの取り組みも、抜本的に見直す必要がある。

毎日新聞 2007年6月20日 東京朝刊

社説:基本方針07 「美しい国」は経済政策か

 08年度政府予算編成の基本的考え方と向こう数年の経済運営の方向を提示する「経済財政改革に関する基本方針2007」(「骨太の方針07」)が、19日閣議決定された。

 行財政改革や経済活性化対策から環境立国戦略、教育再生、さらには社会保険庁問題まで網羅されている。また、「美しい国」へのシナリオという副題を付けたように、安倍晋三政権の経済政策は小泉純一郎前政権時代の構造改革路線とはひと味違うことをアピールしている。

 しかし、経済財政運営や構造改革にまで、美しい国を持ち出す意味は、どこにあるのだろうか。美しいなどという抽象的概念を経済政策に持ち込むことは混乱をもたらしかねない。無益といっていいだろう。また、戦後レジームからの脱却を経済政策にあえて持ち込むのならば、自民党政治の総括が必要だろう。

 骨太の方針に求められているのは、時の政権が翌年度の予算編成にどう臨むのか、向こう数年の経済運営の重点をどこに置くのか、明快に提示することである。

 今回はどうか。予算編成への基本的考え方はたった2ページを割いているに過ぎない。その他に、予算制度改革や歳出歳入一体改革も盛り込まれているが、参院選後にも決定される概算要求基準に向けて、十分なものとはいえない。

 経済政策運営でも、総花的であるがゆえに焦点が定まらない。さらに、成長力加速プログラムをこなしていけば、格差問題に代表されるこれまでの政策のツケは解決されるという楽観論が全体を貫いている。

 しかも、議論のあるテーマについては、所管官庁や与党などへの配慮から妥協的な表現にとどめられた。経済財政諮問会議の民間議員が提案していた、新自由主義的色彩の強い労働市場改革や航空自由化は内容が大幅に弱められた。

 内閣が代われば骨太の方針の性格や位置付けが変わることは、何ら不思議ではない。ただ、経済政策の根幹部分が妥協的、調整的な方向に向かっていることは見過ごすことができない。

 折から、06年度の一般会計税収は補正後の見込み額である50兆4000億円を下回る恐れが出てきた。法人税、所得税ともに税収の伸びが鈍化してきたからだ。国民に安全、安心を約束するのであれば、適正な給付とそれを支える負担の問題に踏み込むことは避けて通ることができない。

 今回の骨太の方針が与党の参院選対策色を帯びていることを割り引いても、明るい展望だけでは政治としての責任を果たしているとはいえない。

 財政再建にせよ、経済活性化にせよ、それを達成していく上では、国民にとって厳しい政策も講じていかなければならない。経済財政、国民生活の安定はそうした苦しい過程を経て得られる。

 最近、政府は骨太の方針という言葉をあまり使わない。それも無理はない。今年の基本方針は骨太ではない。

毎日新聞 2007年6月20日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:「100%効果ありのゴキブリ駆除器」を注文して…

 「100%効果ありのゴキブリ駆除器」を注文して送られてきたのは1、2と番号のついた木片だった。説明書には「1の上にゴキブリを置いて2で叩(たた)く」。趣味の悪い冗談グッズではなく、かつて米国で実際あった詐欺という(「詐欺とペテンの大百科」青土社)▲では詐欺ではないが、次の問いを考えていただきたい。客に75セントのケーキだといって、今日だけ特別にとクッキーのおまけをつけて売ってみる。はなからケーキとクッキーのセットを75セントで売った時より売り上げはどのくらい多かったろう▲心理学者のR・レヴィーン著「あなたもこうしてダマされる」(草思社)が紹介する実験によると倍近い差が出た。こちらは、ケーキよりも得した気分を味わいたくてつい手を出した人もいよう。買い手の欲望を掘り起こす訪問販売や通信販売にもみられる販売促進のテクニックだ▲詐欺的な商法をもくろむ悪意や、抜け目ない販売促進の術策に消費者が操られるトラブルも少なくない訪問販売や通信販売、電話勧誘販売である。一定期間内なら違約金なしの解約をできるクーリングオフ制度は消費者保護の決め手だが、現在は一部の商品・サービスしか対象でない▲経済産業省はこのクーリングオフをほとんどの商品・サービスについて適用する法改正を来年の通常国会にも提出する。現状では次々に新手の悪徳商法が登場するようでは、当然の対応だろう。とくに高齢者を狙う詐欺的商法は成り立つ余地をなくしたい▲とはいえ消費者も自らのふところは自分で守る知恵が必要な時代である。先の心理学者は「自分だけはだまされない」と人は思いがちで、また自分の弱さを認めない人ほどだまされやすいと述べている。消費者に自信過剰は禁物か。

毎日新聞 2007年6月20日 東京朝刊


【読売・社説】

骨太の方針 まだまだ詰めるべき点が多い(6月20日付・読売社説)

 名称を簡略化しただけでは、政府がどんな改革を、どのように実現していこうとしているのか、国民に伝わらない。肝心なのは中身だ。

 「骨太の方針2007」が閣議決定された。正式名称は、これまでの「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」から「経済財政改革の基本方針」へと短くなった。国民がわかりやすく、覚えやすいようにとの狙いだ。

 だが、盛り込まれた施策は、素案段階から指摘されたように総花的だ。人口減でも活力を維持できるよう、日本経済の構造を変えていく。そのために、どの政策に優先順位を置き、どう実現していくのか。それがなかなか見えてこない。

 「骨太の方針」に盛り込まれた施策には、詰めるべき点が多い。

 歳出・歳入一体改革が筆頭だ。昨年の「骨太の方針」で示した5年間の歳出削減を実現するとしているが、それには公共事業、社会保障など分野別に、制度改革の内容を定める必要がある。

 財政健全化は、秋から本格的な議論を始める税制改革はもちろん、新たな財政再建目標の設定も含め、全体的な青写真の作成を急ぐべきだ。

 景気の回復や税収増を受けて、与党からの歳出増圧力が強まっている。首相の指導力が問われよう。

 経済のグローバル化の恩恵を受けられるよう、経済連携協定(EPA)への取り組みを強化することが明記された。だが日本との貿易量が多く、戦略的に重要な米国、欧州連合(EU)との交渉は「将来の課題として検討していく」とされるにとどまった。

 農産物の市場開放が農業に及ぼす影響を懸念する声が強いためだ。日本農業の体質強化をどう進めるかの検討を、急がねばならない。世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)などもにらみながら、EPA戦略を練り上げることが大事だ。

 ふるさと納税の導入や地域力再生機構の創設など、実現に向けた制度設計が難しいテーマもある。

 安倍首相は、アジア・ゲートウエー戦略会議や教育再生会議など、自らが発足させた様々な有識者会議の報告を「骨太の方針」に取り込んだ。国民の批判が強まっている年金記録問題への対応策も、詳細に盛り込んだ。

 だが、歳出削減などへの踏み込み不足も目立つのは、参院選を目前にしているからだろう。首相にとって初めての「骨太の方針」である。首相は、目指す改革の姿と手順を、より明確に示していかねばならない。
(2007年6月20日1時28分  読売新聞)

エレベーター こんなずさん点検では不安だ(6月20日付・読売社説)

 これではエレベーターに対する不安感が募るばかりだ。

 過去1年間に、計42基のエレベーターでワイヤロープの破断事故が起きていた。

 保守管理大手の5社が担当する全国の約50万9000基について、国土交通省が日本エレベータ協会を通じて調査した結果である。

 1万基に1基弱の割合だが、命綱ともいえるロープの点検漏れである。建築基準法で義務付けられている定期検査制度を早急に見直すべきだ。

 エレベーターは数本のワイヤロープでつるされている。さらに1本のロープは鉄線をより合わせた数本の束で構成されている。この束の一部がそっくり破断した状態で見逃されていた。

 非常止め装置が義務化されており、仮にすべてのロープが切れても最下階までは落下しないという。しかし、どんな不測の事態が起きないとも限らない。

 42基のうち15基は、時間の経過に伴う経年劣化が原因だった。国交省は「鉄線の何本かが切れるのは、想定の範囲内だが、鉄線をより合わせた束自体が破断することは、通常ではあり得ない。ずさんな検査・点検で劣化が見過ごされた可能性がある」としている。

 東京・六本木ヒルズのエレベーター機械室で4月に起きた火災も、鉄線の束1本が破断し、それが別の部品と接触して火花が飛び、粉じんに引火したのが原因だった。フロアに煙が充満して、850人が避難する騒ぎになった。

 事故機のロープには、赤さびや油がこびりつき、縄目も見えない状態になっていた。定期検査の際もロープの太さを調べただけで済ましていたという。

 その後、破断事故が各地で相次いで明るみに出ていた。一部の保守管理会社の問題ではない。国交省の調査も、こうした事態を深刻に受け止めたためだ。

 東京・港区の高層住宅のエレベーターで昨年6月、男子高校生が死亡した事故は、ドアが開いた状態のまま突然上昇し始めたために起きた。警視庁が業務上過失致死容疑で捜査しているが、やはり定期検査の不備が指摘されている。

 保守管理会社2社の社員など計67人が実務経験を偽ってエレベーターの法定検査の資格を得ていた問題も発覚した。国交省は「会社ぐるみの不正行為」と断じたが、法人に対する罰則や行政処分がないのも問題である。

 エレベーターのドアが開かず、閉じこめられるトラブルも頻発している。乗るのもこわごわ、というのでは困ったものだ。業界としても、安全性の向上に取り組むべきである。
(2007年6月20日1時28分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月20日付

 東京市長などを務めた後藤新平には、腹が立ってたまらぬ時につぶやく呪文(じゅもん)があったという。内務官僚当時の部下で、戦前の拓務相などを務めた永田秀次郎に「教えてやろう」と言った◆永田の耳もとに口を寄せ、極秘事項を明かすように声を低めていわく、「相手に聞こえないように、馬鹿(ばか)、馬鹿、馬鹿と、三度言うのだよ」。後藤の没後、永田が追悼のラジオ放送で語った回想にある◆旧幕府側、陸奥水沢藩士の家に生まれ、薩長閥が幅をきかす明治新政府で頭角を現した人である。若い日には歯を食いしばり、「馬鹿、馬鹿、馬鹿」と胸につぶやくことが幾度となくあったに違いない◆関東大震災後の首都建設など、「大風呂敷」と呼ばれるほどに規模の大きな国家戦略を構想した人の、今年は生誕150年にあたる。参院選に向かう政治の季節、折に触れて思い出される指導者だろう◆大きな風呂敷で包まねばならない「憲法」や「外交・安保」もある。同じ正方形の布でも袱紗(ふくさ)で茶器を慈しみつつ拭(ぬぐ)うように、国民の不安を丹念に拭わねばならない「年金」もある。風呂敷か、袱紗か。「風呂敷も袱紗も」だろう◆会期の延長問題が大詰めを迎えている。選挙を目前にした終盤国会はときに、感情と感情が衝突しがちである。立腹時の呪文はくれぐれも相手に聞こえぬように。
(2007年6月20日1時54分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】骨太の方針 改革の指針たり得るのか

 経済財政諮問会議が経済財政運営と構造改革の指針となる「骨太の方針2007」をまとめた。安倍晋三政権最初の骨太方針ということで注目されたが、教育再生から環境問題まで網羅するなど、構造改革の処方箋(せん)という本来の性格は大きく変質したようだ。

 今年の骨太方針の基本認識は人口減の中でどう新しい成長を目指すかで、成長力底上げ戦略や労働市場改革、地域活性化などを柱としている。アジア経済との連携を強化するため、「開かれた市場」を強調したのも特徴だ。

 方向性としてはその通りだろうが、残念ながら具体性と実効性は乏しい。成長力底上げの目玉はフリーター対策の「ジョブ・カード制度」だし、アジアとの連携では空の自由化程度で、ネックとなる農業では農地法改正など根本問題に踏み込んでいない。

 逆に守備範囲はどんどん広がり、教育再生や環境立国戦略にまで及んでいる。財政と関係があるとの理由かららしいが、その関連性についての言及は極めて少ない。各省庁からの要望を網羅的に盛り込んだからだろう。

 この結果、究極の構造改革である財政再建に対する姿勢があいまいとなった。消費税を含む税制改革の論議は今秋以降に先送りしたままで、歳出削減については昨年の骨太方針が示した「歳出・歳入一体改革」の実行を繰り返すにとどまった。

 とりわけ、公共事業では参院選に配慮したためか、具体的削減幅も示していない。年内に結論を出さねばならない基礎年金国庫負担率引き上げに向けた新たな安定財源の確保や、道路特定財源の一般財源化にからむ道路整備中期計画への言及も避けている。

 来年度予算ではこの骨太方針にも盛り込んだ少子化対策など新たな歳出圧力が高まる。これを歳出のメリハリで吸収できるのか。できない場合はどうするのか。明確な方針を示さないと、財政規律は緩む一方となろう。

 小泉純一郎前政権は骨太方針を構造改革の指針として金融再生や郵政民営化を実行した。最大の課題として残された財政構造改革は緒に就いたばかりで、その一里塚である基礎的財政収支の黒字化でさえまだ先だ。

 骨太方針は原点に返らないと、改革の指針たり得ないのではないか。

(2007/06/20 05:07)

【主張】宇宙基本法 実効性ある利用の論議を

 宇宙技術を国の安全保障や危機管理に効果的に活用できるようにするための内容を盛り込んだ「宇宙基本法案」が自民、公明両党によって今国会に提出される。

 日本には宇宙開発について定めた法律がないので、これから重要度を増していく宇宙の利用に備えようという考えだ。

 国会審議を通じて将来に資する基本法を目指してもらいたい。

 これまでの日本の宇宙開発は、国連で採択された「宇宙条約」と昭和44年の「国会決議」をよりどころにして進められてきた。宇宙条約は、月などの天体や宇宙空間の探査、利用に関する国家活動について定めた内容である。国会決議は、日本の宇宙開発を平和目的に限定した決定だ。

 じつは、この国会決議によって、過去の一時期には自衛隊の通信衛星利用さえ問題視されたこともある。さらには、この決議が現在も踏襲されているために、北朝鮮のミサイルからわが国を守るための情報収集衛星の打ち上げにも、さまざまな制約が課せられているのが現実だ。

 宇宙の純平和利用は理想だが、国会決議がなされた38年前とは国際情勢が大きく変化している。現実的に機能する法律を制定しなければ自縄自縛となってしまい、かえって国民の平和と安全を損なう危険を招きかねない。

 自民党を中心にまとめられたこの法案では、防衛省・自衛隊が識別能力の高い偵察衛星の開発にかかわり、運用することも可能になるだろう。内閣に首相を本部長とする「宇宙戦略本部」を設置して、総合的な宇宙基本計画を策定することになる。

 日本の宇宙開発は、これまでの研究開発中心から、安全保障や外交政策をはじめ、宇宙関連の産業振興にまで間口を広げようとしている。現在では不可能な自衛隊員の宇宙飛行士にも道が開けていくだろう。

 宇宙基本法によって日本の宇宙開発は現実に即したものに近づくが、安全保障の名目で、非公開項目が拡大されるようなことがあってはならない。失敗を含めて国民に正しい情報を伝える努力を続けることが肝要だ。

 科学研究の予算と自由度を圧迫しない施策も求められる。研究の夢が薄らぐと次代の宇宙科学者が育たない。

(2007/06/20 05:07)

【産経抄】

 夏目漱石の『三四郎』に三四郎があこがれの美禰子から名刺をもらう場面がある。それまで2回会ったが言葉も交わさず、三四郎にとって「謎の女」だった。それが美禰子が差し出した名刺で謎は解け、2人の距離も一気に縮まったのだ。

 ▼ ここでは名刺が恋愛の小道具になっている。ビジネスにとっても重要な役割を担うことは間違いない。ところが元公安調査庁長官の緒方重威氏は、出資予定者の投資顧問業者から名刺一枚もらっていなかった。それで朝鮮総連の土地・建物を35億円で「購入」するつもりだったという。

 ▼緒方氏は業者の「海外に60億円の資金がある」という言葉を信じたらしい。しかし1回会っただけで、詳しい素性もわからない「謎の出資者」だった。結局、所有権登記が移転した後、一銭も払いこまれなかった。奇妙としか言いようのない話だ。

 ▼ しかも緒方氏は高検検事長まで務めた元検事で弁護士である。魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界には通じているはずだ。それが名刺も出さない人間に簡単に乗せられるものだろうか。となると朝鮮総連中央本部の差し押さえを阻止するため、みんなで仕組んだ仮装売買だと言われても仕方あるまい。

 ▼事件のもう一人の主役である総連側の代理人、土屋公献氏は「人権派」と言われる元日弁連会長である。事件を弁明する記者会見で「(北朝鮮と)早く国交を回復すれば疑惑も脅威もない」との「持論」を展開していた。「国交回復を妨げるのが拉致問題」とも述べた。

 ▼だがそんな「持論」と、なりふり構わぬ方法で朝鮮総連の財産を守ろうとしたことと、どう結びつくというのだろう。どうやら「正体見たり」である。とても、外交や拉致問題について語る資格などないように思えてならない。

(2007/06/20 05:04)


【日経・社説】

社説1 安倍改革、課題列挙より実行を問う(6/20)

 安倍晋三首相が初めて手掛けた「経済財政改革の基本方針2007」(骨太の方針)が経済財政諮問会議の答申を受けて19日に閣議決定した。成長力を高め日本経済を開放するという方向は間違っていないが、総花的な課題の列挙では不十分だ。与党内の圧力に屈せず、改革を実行する安倍首相の意志が問われる。

 7年目となる今年の骨太方針は「新しい日本の国づくり」を掲げ、小泉前政権の「改革なくして成長なし」と一線を画した。低迷を脱した日本経済は引き続きグローバル化の試練に直面する。成長力強化を基本に財政健全化に取り組むのは当然だ。少子化で人口が減る将来世代に、現役世代が過度に頼らないという「世代自立」の考え方も盛り込んだ。

 毎年の労働生産性の伸び率を5年間で今の1.6%から2.4%へ5割高める目標を掲げ、アジアとの人材交流や航空自由化、アジア勢に追い上げられた東京金融市場の強化を目指す。公務員制度改革を盛り込み、サマータイムの早期実施検討など地球温暖化への対処について触れたのも新たな路線といえる。

 だが、あれもこれもと項目を詰め込んだ結果、骨太方針の中で優先順位が見えなくなった。各省審議会や教育再生会議など官邸直属機関の結論をホチキスで留めた印象もある。

 参院選を控えて骨太方針の改革色は後退した。典型が歳出削減だ。08年度の公共事業費は景気動向やコスト削減を考えれば民間議員が主張した「3%削減」が当然だが、与党の反発で数字を明記せず「最大限の削減」という意気込みにとどめた。

 バラマキ色が残る地域活性化策が明記され、尾身幸次財務相も少子化対策で多額の支出増に言及した。経済復調で税収が伸びたのに乗じて歳出圧力が強まっており、きちんと規律を保てるかどうか疑問を残す。一方で抜本的な税制改革など、重要だが選挙に影響する課題には踏み込まず、結論を秋以降に先送りした。

 開かれた日本経済を象徴する経済連携協定(EPA)では、交渉開始や合意済みで未発効の12カ国を挙げて締結する意志を明示したが、最重要となる米国や欧州連合(EU)との交渉は「将来の課題」で検討していく姿勢にとどめた。農家保護を主張する与党内勢力に配慮した。改革を主導する諮問会議が政治配慮を重ねたのでは将来に禍根を残す。

 必要なのは、強力でスピード感のある改革の実行だ。01年秋に諮問会議が出した「改革工程表」のように、首相は分かりやすい実施計画を示すべきではないか。

社説2 アフガニスタン安定に向け(6/20)

 日本政府は21日に東京でアフガニスタンの「非合法武装集団」解体のための国際会議を開く。非合法武装集団とは要するに軍閥のことである。日本は旧国軍兵士6万人の武装解除、社会復帰を支援した実績を持つ。軍閥解体支援も治安を改善するうえで意義がある。

 軍閥は四半世紀におよぶ内戦の過程で生まれた。タリバンや国際テロ組織アルカイダとは一応別の武装集団で、その数は3000とも4000グループともいわれる。全体の人数は約13万5000人いるというから1グループ平均数十人だ。

 カルザイ政権は2年前から軍閥解体に取り組み始め、武装解除に応じれば地元に用水路を造ったり、小型の水力発電所を建設したりするなど生活基盤を整備してきた。その資金を日本などが援助する。

 軍閥解体は容易ではない。武装解除した場合に誰が守ってくれるのかという不安が強いからだ。したがって警察力を充実し、自ら武装しなくても安全であるとの環境をつくらなければならない。

 だが、最も重要なことはタリバンやアルカイダの武装勢力の活動を抑えることである。

 残念ながら今、状況は全く楽観を許さない方向へ動いている。17日に首都カブールで起きたタリバンによる自爆テロでの死者は35人、負傷者は50人を超えた。これは2001年にタリバン政権が倒れて以来最悪のテロである。南部では先週末から武装勢力との激戦が続き、市民も巻き添えとなり100人以上が死亡したとの情報もある。

 アフガニスタンには北大西洋条約機構(NATO)軍と米軍合わせ約5万人が展開、ほぼ同じ数の政府軍と協力しているが、強い抵抗にあっている。

 最近特に問題となっているのは、市民の犠牲者が増え、アフガニスタン国民の間にNATO軍、米軍に対する反感が強まっていることだ。誤爆を防ぐ努力、政府軍との綿密な協力体制の強化が緊急の課題だ。

 アフガニスタン復興への道のりはまだまだ長い。国際社会は同国をイラクのような混乱に陥れないためにも一致協力し、テロとの戦いに勝たなければならない。

【日経・春秋】(6/20)

 「含羞(がんしゅう)」のひとだった。表面は「飄々(ひょうひょう)」としていた。生き方は「凛(りん)と」していた。広辞苑を引いて解説すれば「はにかみ」屋で「超然としてつかみどころのない」ように見えて実は「ひきしまって威厳のある」、そんな奥深さがあった。

▼3月下旬、サンフランシスコに日米の安全保障関係者が集まっていた。朝の会議の冒頭で、米側の元政府高官が加藤良三駐米大使からの電話を紹介し、訃報(ふほう)を伝えた。亡くなったのは、それより1週間前だった。家族による密葬が終わるまで公表するな、と遺言したらしい。さすがにあのひとだ、とみんな思った。

▼知らせを聞いた会議参加者たちは、1995年3月の第一回会議を思い出していた――。そのひとは政治家だったが、秘書も連れず、議員バッジも無論つけず、小さな鞄(かばん)ひとつでやってきた。サンフランシスコ周辺の有力者も招いた昼食会で、日米関係を考える深い基調講演をした。中身も、英語も、見事だった。

▼衆院議員を4期、参院議員を2期務めた椎名素夫さんは「ばかなことやってますよねぇ」が口癖だった。自身は2世議員だったが、身内に選挙区を譲るようなことはしなかった。きょう都内のホテルで「偲(しの)ぶ会」が開かれる。発起人にはアーミテージ元国務副長官ら多くの米国人の名が並ぶ。本物の知米派だった。


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