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2007年6月28日 (木)

6月28日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年6月28日朝刊)

[慰安婦決議案]歴史認識への問い掛けだ

 米下院外交委員会が、第二次大戦中の従軍慰安婦問題で日本政府に責任を認め公式に謝罪するよう求める決議案を賛成多数で可決した。

 決議案は、「慰安婦制度は日本政府による強制的な売春」「日本政府は、日本軍が女性を性的奴隷にしていないとの主張の誤りをただすべきだ」などとし、元慰安婦に対する国際社会の声に配慮―するよう求めている。

 政府が最大の友好国とし、同盟国と考える米国議会が突きつけた、安倍晋三首相とその周辺の“歴史認識”への異議申し立てとみていい。

 法的拘束力はないが、今後の日米関係に影響を及ぼす可能性はある。その行方を注視していく必要があろう。

 従軍慰安婦問題は、一九九〇年代初めに日韓の問題として出てきた。

 従軍慰安婦については、沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」とともに旧日本軍の関与や「軍命」があったとするのが通説になっている。

 元慰安婦として悲惨な体験をした女性らの証言も数多くあり、その声に耳を閉ざしてはなるまい。

 九三年には、当時の河野洋平官房長官が「心身にわたり癒やしがたい傷を負われたすべての方々に対し心からおわびと反省の気持ち」を表明している。

 一部で「河野談話」を否定する動きはあったが、それでも村山富一、橋本龍太郎、小泉純一郎前首相らが「談話」を引き継ぎ、謝罪してきた。

 しかし、安倍首相の根底に「(旧日本軍の)強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実」とする考えがあるのは明らかだ。就任当初に「河野談話の見直し」を打ち出したのはそのためだ。

 中国や韓国をはじめアジア各国から反発が相次いだため、「談話の継承」に転じたが、そのあいまいさが自らの認識や政治信条の間でずれを生じさせたのではないか。

 とはいえ、「広義の強制性はある」が「狭義の強制性はない」とする論法が説得力を持ち得てないのは誰の目にも明らかであり、決議案はこの主張にも異を唱えたことになる。

 政府は「米議会の問題」とし静観を装っている。だが、米議会に誤解があるのならなぜ理を尽くして説明を試みないのか。日米関係が重要なのであれば、なぜきちんと対処しようとしないのか、理解に苦しむ。

 私たちには史実を真正面から受け止めることで、歴史から多くを学ぶ喜びがある。歴史の大切さはそこにこそあるはずだ。米下院の決議は、首相だけでなく私たち一人一人が歴史の事実にどう向き合おうとしているのかを厳しく問うているのだと受け止めたい。

[年金記録不備問題]「けじめ」より解決策示せ

 国民が怒るのは当たり前だろう。いわゆる「消えた」あるいは「宙に浮いた」年金をめぐり、次々に明らかにされる社会保険庁のずさんな仕事ぶりやその後の不誠実な対応は目に余る。

 長い間、コツコツ積み立ててきた国民の年金記録が転記ミスなどで分からなくなったり、記録そのものがなくなっている場合もあるというのだから、あまりのお粗末ぶりに開いた口がふさがらない。

 国民の心情に配慮してだろうか一連の年金記録不備問題で、安倍晋三首相や柳沢伯夫厚生労働相らは夏のボーナスの一部を返上。自民党の厚労相経験者らは年金の受け取り辞退のほか、党の役職辞任など、「けじめ」を表明している。

 政治は結果責任だ。年金記録の不備問題について、首相の責任は問われてしかるべきだが、この時期に果たしてボーナスの一部返上という「けじめ」が必要だろうか。

 首相は「年金記録の問題で、国民に心配をかけ不安を与えた。こういうことが起きたことのけじめが必要だ。行政の長として大きな責任がある」と説明するが、いかにも分かりにくい。

 国民が今、切実に求めているのは中途半端な「けじめ」や「責任論」より将来の年金不安の解消だ。

 多くの国民は、老後のために払ってきた年金がもらえなくなるのではないか、と不安に思っている。老後の安心を担うはずの年金制度そのものの根幹が揺らいでいるのである。

 国民の不安解消に向けて、しっかりした解決の道筋も示しきれていない状況で、いきなり「けじめ」が必要と言われても説得力に乏しい。実際、野党からは「参院選に向けたパフォーマンス」などの指摘が出ている。

 天下分け目と称される参院選まで約一カ月。国民は年金の記録不備問題をきっかけに、政治に対してかつてないほど厳しい目を向けている。

 安倍首相らが示した「けじめ」とそれに続く政策や政治姿勢も当然、判断材料になることを忘れてはなるまい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月28日 朝刊 1面)

 佐賀県の野口美佐子さん(63)は、二十年前に子育てに悩んでいた。小学生の息子は周りより大きく成長したが、忘れ物ばかり。学校から度々呼び出された。

 特に熱中するものもなく、どこか注意散漫だ。「どうしたらいいか」と考えるが、妙案はない。ところが、たまたま見掛けたサッカーに夢中になり態度が急変した。チームに入り、毎日練習。学校の呼び出しはぱったりなくなったという。

 美佐子さんはひたむきにボールを追う息子の姿が好きでグラウンドによく出掛けた。「厳しい指導でしたが、好きでやっていること。私はただ見守るしかなかった」。

 一度だけ怒ったことがある。「負けるかもしれんから応援はいらん」。対外試合前、息子の言葉に「相手も同じようにご飯を食べている。始まる前に負けると分かるなら試合に出るな」。

 息子は大学まで活躍したが、同世代は日本代表級がごろごろ。プロはあきらめるがサッカーとの縁は切れなかった。沖縄で工事現場近くの道にパラソルを立て、サザエのつぼ焼きを売り、クラブを設立させた。

 沖縄初のJリーグ入りを目指し奮闘中のFC琉球代表・野口必勝さん(30)だ。美佐子さんは、本土での試合はすべて出掛けるが負けが込む。「きついのは分かるが言うことはない。息子は沖縄の多くの人たちに支えられていることを分かっている」。スタンドから息子の「夢実現」を信じ、見守っている。(石川達也)


【琉球新報・社説】

国保算定ミス 未交付の全額補てん早急に

 厚生労働省が1993年度から2005年度までの13年間、国民健康保険(国保)の特別調整交付金の算定方式を誤り、05年度には全国605市町村で過不足が生じ、那覇市など県内32市町村を含め370市町村で本来の額より少なく交付していたことが分かった。
 厚労省は対応策として、07年度以降の特別調整交付金から過不足を調整するとしている。過大交付した市町村の交付金を減らし、その分を交付不足の市町村に充当する方針である。
 しかし、この問題は時間をかけて帳尻を合わせればいいというものではない。過大交付を受けた市町村に対しては緩やかに調整していくことが必要だ。そして、未交付分のあった市町村にはすぐに交付することを求めたい。
 多くの市町村にとって、国保財政の立て直しは緊急の課題になっている。厚労省のいう「07年度以降から」を待っていられる状況にはないのである。
 国・地方財政の三位一体改革の一環として、国保の国庫負担をこれまでの40%から34%に削減する改正国保法が05年に成立している。
 その影響もあって、全国の自治体の多くは国保制度の運営に苦しんでいる状況にある。基金を取り崩したり、一般会計からの繰り入れなどで、どうにか運営している状況にある。
 那覇市は本年度から一般被保険者1世帯当たり平均で保険税を4919円、4・27%引き上げた。14年ぶりの実質値上げは、積み重なった未交付金が影響していることは明らかである。
 同市の試算では96年度から05年度までの10年間で、本来交付されるべき約5億5160万円が未交付となっている。
 問題解決に向けた厚労省の姿勢は二転三転した。「過去の分を訂正するという形はない」と追加交付に消極姿勢を示したものの、その後「国のチェック漏れで生じたことなので補てんするのは当然」と方針転換。そして「起算点をどうするか検討しなければならない」と後退した。
 未交付問題の原因は厚労省にある。業者が作成した算定ソフトを導入した93年に、しっかりチェックしておれば、このような問題は発生しなかった。
 チェックの甘さだけではない。那覇市が県を通して特別調整交付金が増額になったことについて問い合わせたことで算定ミスがあったことが分かりながらも、この間、放置していた。これでは国民の信頼を得られない。
 厚労省は事の重大さを認識し、不足分をすべて補てんすることを基本とし、早急に対応してもらいたい。

(6/28 9:50)

慰安婦謝罪要求 真摯に受け止めるべきだ

 米下院外交委員会が第2次大戦中の従軍慰安婦問題をめぐり、日本政府に対して公式に謝罪するよう求めた決議案を賛成多数で可決した。
 決議自体には法的拘束力はなく、日本政府は「日本がその都度反応すれば、問題がさらに深刻化しかねない」と静観する構えである。
 安倍政権発足後、従軍慰安婦問題への日本軍の関与はなかったとする動きが加速し、韓国をはじめ、中国でも日本への批判は強まっている。
 米下院外交委員会での謝罪要求決議案可決もその表れである。日本政府はそれを静観するのではなく、真摯(しんし)に受け止めるべきである。
 謝罪要求が日米関係の悪化を招くと懸念する声もある。しかし、それ以前に、世界は従軍慰安婦問題で日本が責任を認め、謝罪しているとは認識していない現実を直視する必要がある。
 外務省幹部は「4月の日米首脳会談などで、1993年の河野洋平官房長官談話に沿って『謝罪』を表明した安倍晋三首相の言葉がすべてだ」としている。
 確かに安倍首相は2006年10月、政府が従軍慰安婦に「心からのおわびと反省の気持ち」を表明した河野談話を継承する考えを示してはいる。
 だが、安倍首相はその後「官憲が人さらいのように連れて行く強制性はなかった」と「狭義の強制性」を否定している。これで河野談話を継承していると言えるのだろうか。
 決議案は「慰安婦制度は日本政府による強制的な売春」とし「日本には問題軽視の教科書や世論がある」と指摘している。
 自民党内には河野談話見直し論が根強く、歴史教科書からは従軍慰安婦に関する記述が消えてきている。決議案はこのような動きをけん制する意味合いもある。
 日本が過去の歴史としっかり向き合い、被害者に明確に謝罪しない限り、今後も従軍慰安婦問題は尾を引くことになろう。
 河野談話の歴史的意義を再確認し、それに沿って対応していくことが日本には求められている。

(6/28 9:49)

【琉球新報・金口木舌】

 「遺言」講演会というタイトルにぎょっとさせられた。講演者は成田空港建設反対闘争や自衛隊を果敢に取材した報道写真家の福島菊次郎さん。今年86歳。満身創痍(そうい)で体重は37キロという。タイトルに引かれ会場の明治大学に足を運んだ
▼「ジャーナリズムの在り方をタブーなく論じる最後の機会」と主催者。写真集などで過去の活動に接したことはある。「健在だったんだ」というのが正直な感想だ
▼会場に現れた福島さんは足取りも軽やか。足腰の鍛錬のため散歩は欠かせないという。「年相応に数字と人名を忘れてしまう」と笑いを取りながら、国民への説明責任を果たさぬ政権を「ウソばっかりだ」とバッサリ
▼自衛隊内部に潜入し、写真を発表。反響を巻き起こした。「僕をだました軍隊への怨念(おんねん)がある。仕返しをしてやった」。ひょうひょうとした語り口だが、圧倒的な凄(すご)みがある
▼政府は24日の米海軍掃海艦の与那国寄港の目的を「友好および親善」と説明するが、裏には台湾有事をにらんだ情報収集という狙いがあった(本紙23日付朝刊)。ここにもウソが隠されている
▼「もう、だまされない」という気概と注意深さがウソを見抜く。政府を監視する目の鍛錬が必要だ。

(6/28 10:08)


【東京新聞・社説】

慰安婦決議案 日米間のトゲにするな

2007年6月28日

 対日非難決議案の細部や米政界の思惑などに反発しても建設的な効果は見込めまい。従軍慰安婦問題の歴史的な暗部を直視し、従来の反省と対応を繰り返し説明して、日本の信頼感を築きたい。

 第二次世界大戦中の従軍慰安婦問題をめぐり、日本政府を追及する決議案が米下院外交委員会で採択された。慰安婦制度は日本政府による強制売春だったと判定し、事実と歴史的責任を認めて謝罪するよう促している。

 賛成三九、反対二という投票結果は、超党派の厳しい空気の反映だ。下院本会議でも、採決されれば可決は確実とされる。

 一方、決議案には日米同盟の重要性を確認する項目も、付け加えられた。一九九三年に河野洋平官房長官が旧日本軍の関与を認めて「おわびと反省」を表明した談話にも触れ、談話の誠意について理解を広げるためにも謝罪すべきだと論じた。

 日本側も、責任逃れと受け取られるような反論に精力を費やすべきではない。多数の女性の名誉と尊厳を損なった責任を受け入れ、謝罪の気持ちと、これまでに示した誠意を、繰り返し説明するほかない。

 この問題は、日米両国間の対立の芽にしてはいけない。アジアの近隣国が必ずしも政治的に工作したわけでもあるまい。旧軍の加担などで心身に傷を負った女性らに機会ごとに謝罪し、現在の日本の人権感覚、倫理観について米国、国際社会の理解と信頼を得ることが正道だ。

 ただし、対日非難が何度も蒸し返される原因については、教訓を学んでおく必要がある。

 安倍晋三首相は、四月に訪米した際、ブッシュ大統領に「心から同情している。申し訳ない思いだ」などと心境を説明し、大統領は謝罪を受け入れた。首相は、米議会指導者らにも同様の心境を説明している。

 それで沈静化したはずの問題が再燃したのは、今月半ば、日本の一部の評論家らが米紙に意見広告を掲載し、慰安婦募集をめぐる「狭義の強制性」の否定といった事実認識を展開したためともいわれる。

 特定の有志の広告が対日政府決議案の引き金になったとすれば遺憾だが、その背景には、首相が当初、官憲による強制連行などを否定する見解を強調していた経緯もある。

 米政界では、来年の大統領選や議会選を控え、アジア系組織票に敏感になっている議員は少なくない。人権重視の姿勢を有権者に訴えたい議員も多いだろう。首相は現実の環境も考慮に入れ、さまざまな発言に繊細な注意を払わねばならない。

野球特待生 まず原点に立ち返れ

2007年6月28日

 高校野球の特待生制度見直しが動きだした。ただ、根本的なところの論議はこれからだ。さまざまな側面を持つこの問題では、何ごともまず原点に立ち返って考えてみるのが大事ではないか。

 プロ野球の裏金発覚に端を発し、アマ球界に波及して論議が沸騰した高校野球の特待生問題。日本高野連は学生野球憲章に抵触する特待制度を全面否定する動きに出て、多数の球児が違反と認定される混乱を招いた。これに対し、私学側からは制度の維持と、憲章見直しを求める声が続出。高野連は協議のうえ、とりあえず来年度は暫定的に特待制度を容認し、有識者会議を設けて本格的な検討を進めることとした。

 いずれにしろ、ここは高校球界の正念場だ。高校野球の根幹に直結する問題である。先送りではすまない。特待制度はどうあるべきかを早急かつ明確に示す時が来ている。そして、これを考えるには、あらためて「高校野球とは何か」という根本からスタートすべきだろう。

 高校野球は、成長途上の少年が教育の場で行う活動だ。そこにはおのずからそれなりの意味があり、枠組みがある。野球選手の活動の前に、まず高校生としての生活がなければならないし、野球技術を磨くだけでなく、人間として幅広く成長していくための活動でもあってほしい。

 だが、これまでは、その当然のことがほとんど忘れられていたように見える。「野球本位」の意識が疑問なく広がっていた。それに伴って野球を学校の広告塔とする傾向が目立ち、プロまがいの選手獲得合戦や不明朗な金銭授受、第三者の介入なども行われていた。「野球本位」が必然的にもたらす弊害だ。本来のあるべき姿をきちんと直視しなければ、ルールをつくったとしても、いずれはまた同じゆがみが現れる。

 制度維持を求める側は「他の競技もやっている」「学校経営の問題」などとしているが、そこには「高校野球は本来どうあるべきか」の視点が乏しい。ゆがんだ実態を正してこなかった高野連も同様だ。少年たちの才能をどう生かし、育てるかという論議は、まず関係者すべてがあらためて原点に思いを致すことから始めるべきである。

 そのうえで、野球だけでなく、すべての競技が知恵を絞り、特待制度の統一基準をつくってはどうか。どの競技であれ、問題は変わらない。大事なのは、高校生に本当にふさわしい形は何かということだけだ。誰もが納得できる統一基準ができれば、それは間違いなく日本の高校スポーツを変えるだろう。

【東京新聞・筆洗】2007年6月28日

 米下院外交委が従軍慰安婦問題で、日本政府の謝罪を求める決議を採択した。昨年九月に次いで二度目で、今回は本会議でも可決必至の形勢だ。在米日系人社会は一九八〇年代の自動車摩擦で起きた日系人排斥の再現を恐れる▼この問題は、安倍首相がことし三月「狭義の強制性はなかった」と国会答弁、米ワシントン・ポスト紙に社説で批判されたのが再燃の火種となった。翌月の訪米時に首相は釈明と反省をしていったん沈静化したはずだった▼それが今月十四日になって、自民、民主の超党派の国会議員と評論家らが同紙に「ザ・ファクツ(事実)」の大見出しで意見広告を掲載、これが米議会の憤激を買った。とりわけ「慰安婦は公娼(こうしょう)」「米占領軍も日本政府に慰安所の設置を求めた」の指摘が火に油を注いだ▼村山内閣の時にでき、この三月に解散した「アジア女性基金」の設立に尽力した大沼保昭東大大学院教授が『「慰安婦」問題とは何だったのか』(中公新書)を緊急出版している▼大沼教授は、歴代首相の「お詫(わ)びの手紙」で元慰安婦の女性たちの心をつかみながら、韓国では被害者救済の実も取れぬまま終了した基金の“失敗”を、右も左も「法的責任」にこだわるあまり「道義的責任」を軽視したこと、政府と国民が分かち合うべき公共性が欠けていたとみる▼加藤陽子東大准教授は近著『満州事変から日中戦争へ』(岩波新書)で、旧陸軍の国防思想普及運動の手口は「事実」で「推断」させることだったと紹介する。米紙への意見広告は先祖返りを思わせる。


【河北新報・社説】

東北ルネサンス計画/共生型の文明を提示したい

 東北芸術工科大(山形市)は本年度から山形、仙台両市を拠点に東北の埋もれた人や思想を掘り起こす「東北ルネサンス・プロジェクト」を始動させる。
 芸術的創造活動によって、豊かな日本を取り戻す「芸術立国」を目指すという。単なる「復興」にとどまらない、大胆で野心的な取り組みを期待したい。
 1992年、公設民営方式で開学した芸工大は、東北に根差した芸術とデザインの創造を追究してきた。

 とりわけ、99年に設立された東北文化研究センター(赤坂憲雄所長)は、大自然との共生を特徴とする縄文文化を東北の基層文化と位置付け、ユニークな研究活動を繰り広げてきた。

 今回、プロジェクトの名称を古典古代の文化復興を意味する「ルネサンス」としたのは復古主義からではない。危機にひんする現代文明を救う原理を縄文の知恵の中に求め、「原東北」にもう一度光を当てることで新たな世界観を構築する―との戦略が込められている。

 山形側では、東北ルネサンス会議やセミナーなどを開催。運動を理念面で支えるとともに、地域遺産を掘り起こす雑誌「東北遺産―あるく・みる・きく」の刊行などを予定している。

 仙台では同大仙台スクールを舞台にした「文芸復興」が主テーマ。東北ゆかりの思想家、文学者を紹介する公開講座や、作家の熊谷達也氏らを講師に迎え「小説家養成講座」「編集者養成講座」などを開く。雑誌「東北文学」の刊行や「東北文学賞」の創設などを通して、若い才能も発掘する。

 今年、開湯1200年を迎えた山形県大蔵村肘折温泉でのプロジェクトは、温泉街を丸ごと美術館にする。学生や卒業生、教官らの作品が至る所に展示され、作家向けに滞在型の制作環境も整えていく。いわば湯治場を舞台にした「芸術村構想」だ。

 わたしたちは県庁所在地同士が隣接する全国的にも珍しい地勢条件を生かし仙台、山形両市があらゆる回路で交流を拡大していくことが、東北全体の底上げにつながると主張してきた。

 東北ルネサンス・プロジェクトは文化・学術面での仙山圏交流といえるが、計画で仙台を「文化交流拠点」とした意味を真剣に考えてみる必要がある。
 現状では東北学を究めようとしても、人文系の情報や人材のネットワークは県ごとに寸断されてしまっている。

 仙台が山形を含めた東北全体を意識し、つなぐ役割を担っていくのでなければ、ルネサンスの試みは早晩、水泡に帰すことになるだろう。この点、プロジェクト推進委員会(座長・藤井黎・前仙台市長)のコーディネート力が問われる。

 大和による征服史観で描かれ、自らの言葉で歴史を語り継ぐことを許されてこなかった東北。だが、1万年のかなた、縄文文化の豊(ほう)穣(じょう)さの中に、東北発の新しい文明誕生につながるヒントが隠されている。
 目指すべき方向は「汝(なんじ)の足元を深く掘れ、そこに泉あり」とする赤坂所長の呼び掛けに、端的に表されている。
2007年06月28日木曜日

【河北新報・河北春秋】

 日本を含め100カ国以上が参加して、対人地雷全面禁止条約の調印式がオタワで開かれたのは、10年前の1997年12月だった▼この年、地雷廃絶運動に熱心だった英国のダイアナ元皇太子妃が事故死し、運動を推進した国際的非政府組織(NGO)がノーベル平和賞に選ばれたことが、消極的だった各国の姿勢を変えたと言われる

 ▼ 近年「第2の対人地雷」と呼ばれるのがクラスター(集束)弾。内蔵する数十―数百発の子爆弾をばらまき、広い範囲を攻撃できる兵器だが、不発率が高い。このため、戦闘が終わっても、不発弾で犠牲になる民間人が後を絶たない▼クラスター弾禁止に向けて世界をリードしているのは、NGOとノルウェーなどの有志国だ。日本政府は「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みで行うべきだ」として、有志国による国際会議に消極的

 ▼そのCCWの専門家会合は先週、禁止条約の制定交渉開始に合意できないまま閉会した。日本、米国などは交渉入りを支持したが、中国、ロシアなどが支持しなかったという▼10年前と似たような状況になってきたクラスター弾禁止運動。今度もぜひ実現に結びつけたい。もっとも、対人地雷全面禁止条約は発効したものの、条約に未加盟の中国やロシア、米国は大量に保有したままだ。

2007年06月28日木曜日


【京都新聞・社説】

借金1000兆円  財政再建を忘れないで

 国と地方を合わせた債務残高(借金)がついに一千兆円を超えたという。
 赤ちゃんからお年寄りまで国民一人あたりにすると、国だけで六百五十三万円、地方を合わせると七百八十三万円の借金を抱えている勘定だ。次代を担う子どもたちに大変な負担を残すことになる。財政再建の道筋をしっかりつけていかねばならない。
 財務省によると二〇〇六年度末の国債と借入金などを合わした国の借金は約八百三十四兆円で過去最高を更新した。国内総生産(GDP)に対する債務残高の割合は先進国の中で最悪だ。
 地方自治体全体の債務残高は約二百兆円の見通しで、国の重複分などを調整後の合計は約一千兆円に達するという。国も地方も借金まみれである。
 政府は一一年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化することを財政再建目標にしている。行政サービスなどの政策的経費をすべて税収で賄えるという健全な財政状態だ。成長戦略による税収の増加と厳しい歳出削減で達成可能との見通しを示した。
 確かに景気回復で国の税収は伸びている。〇三年度は約四十三兆円まで落ち込んだが、〇六年度は四十九兆円台になりそうだ。ただ五十兆円を見込んでいた予算額は下回り、伸び悩んでいる。
 今後の景気や企業業績の動向は慎重な見方も増えており、税収は不確かだ。金利の上昇はもっと深刻な影響を及ぼす。財務省は長期金利が1%上がれば国債の利払い費が年五兆四千億円程度増えると試算する。場合によっては税収増を食いつぶすことになってしまう。
 歳出削減も危うくなってきた。「聖域なき構造改革」の前政権に比べ、安倍晋三首相の歳出削減に向けた改革姿勢は政府予算と骨太方針をみても後退気味だ。むしろ参院選を前にばらまき的な政策が浮上してきた。国・地方ともに歳出削減の手綱をゆるめてはなるまい。
 全国の自治体で住民税騒動が起きている。国から地方への税源移譲に伴って六月から住民税が大幅に上がり、納税者の不満が高まっているのだ。
 政府と自治体は所得税と住民税の課税方法や時期の違いを説明、トータルの納税額は変わらないとPRに躍起だが、定率減税の全廃と重なって増税になったのは間違いない。これを機に税金の使途に関心をもてば国と地方の役割分担の議論や行政監視にも役立とう。
 年金保険料も値上げされ、〇七年度の税負担と社会保障負担を合わせた国民負担率は39・7%と四年連続で上昇、過去最高を更新する見通しになった。
 少子高齢化の進展で年金や国民健康保険など社会保障関係費の増加は避けられず、財源をどうするかは最大の政治課題だ。安定的財源として財政再建を進める上でも消費税の扱いが焦点になる。各党は明確な方針を示すべきだ。

[京都新聞 2007年06月28日掲載]

「慰安婦」決議  意を尽くし説明したか

 米下院外交委員会は、第二次大戦中の従軍慰安婦問題で日本政府が責任を認め、公式に謝罪するよう求める決議案を可決した。
 法的な拘束力はないとはいえ、今後、本会議でも可決されれば日米関係に深刻な影響を及ぼしかねない。
 北朝鮮による拉致問題で両国の連携のきしみも指摘されるだけに、日本政府は冷静に事態を見きわめ、無用な摩擦が生じないよう誠実に対応する必要がある。
 安倍晋三首相は四月下旬に初訪米した際、政府として「おわびと反省」を表明した一九九三年の河野洋平官房長官(当時)談話に沿って、ブッシュ大統領や米議会幹部らに元従軍慰安婦への「謝罪」を表明した。
 今後とも、日本政府のこうした基本姿勢を繰り返し丁寧に説明していくことが必要だ。
 今月十四日付の米紙に、日本のジャーナリストら有志が、旧日本軍が従軍慰安婦を強制的に動員した事実はなかったと主張する意見広告を出した。これに多数の国会議員が賛同人に名を連ねたことから、米側が態度を硬化させた。安倍首相の謝罪表明で期待された事態の沈静化もご破算になったといえよう。
 同様の決議案は、過去四回、下院に提出された。昨年九月には外交委員会で可決されたが、本会議採決は見送られている。
 だが、今回の決議の共同提案者は下院定数の三分の一を超えたうえ、圧倒的多数で可決された。決議案の背景に有権者を意識した議員の選挙対策や、共和・民主両党の駆け引きなどがあるにせよ、この結果を軽視してはなるまい。
 米議会の対日批判がこれまでになく高まったのは、もとはといえば安倍首相が国会答弁で「狭義の強制性」を否定する発言をしたからだ。
 親日・知日派の議員や有力メディアからも「安倍外交の二枚舌」といった批判が起こったことを真剣に受け止めるべきだろう。
 今回の決議の背景には、従軍慰安婦問題をめぐる発言で一貫性を欠く安倍首相への疑念があるのは間違いなかろう。
 安倍首相は四月の米ニューズウィーク誌のインタビューで従軍慰安婦問題について「彼女らが非常に苦しい思いをしたことに対し責任を感じている」と述べ、「われわれは常に自らの歴史に謙虚になり、わたしたち自身の責任に思いを致さなければならない」と強調した。
 この言葉の通り、安倍政権は従軍慰安婦問題に誠実に取り組むべきだ。そうしてこそ、国際的な信用の獲得につながろう。
 拉致問題の解決に向けて国際社会の理解と後押しを得るためにも、過去の歴史を直視し、問題の克服に真摯(しんし)に向き合う日本の姿を発信していくことが大切だ。

[京都新聞 2007年06月28日掲載]

【京都新聞・凡語】

飲酒運転の恐怖

 テレビ画面に流れた衝撃的な映像と、親子の仲むつまじい新聞写真が脳裏に焼き付いて離れない▼映像は、兵庫県尼崎市で飲酒運転のワゴン車がタクシーに激突する一瞬をとらえたシーンである。タクシーに搭載されていたドライブレコーダーのカメラが自動的に撮影したものだ。車線を越えワゴン車が突っ込んでくる映像はあまりにも生々しい▼亡くなったタクシー運転手と乗客の恐怖は想像を絶するものがあっただろう。命を奪った容疑者は、ろれつも回らなかったという。しかも、事故直前に死亡ひき逃げ事件を起こしていた疑いもある。事実なら、言語道断である▼この事故の二週間前には、福岡市で昨夏、幼児三人が犠牲となった飲酒運転追突事故の初公判が始まった。被告の元公務員は謝罪の言葉を述べたが、子どもを一度に失った両親の悲しみは深く、法廷にその姿はなかった▼もう一つは事故三日前に撮影されたという幼児三人と母親の笑顔の写真(本紙十二日付夕刊)である。被告は写真を見ただろうか。事故をきっかけに飲酒運転根絶への世論が高まり、刑の厳罰化が効果をあげてきたのは確かだろう。だが飲酒運転はいっこうになくならない▼飲酒運転は、反社会的で憎むべき犯罪行為である。映像と写真はそう教えてくれているのではないか。この訴えを心に刻み、しっかりとハンドルを握りたい。

[京都新聞 2007年06月28日掲載]


【朝日・社説】2007年06月28日(木曜日)付

慰安婦決議―首相は深刻さを認識せよ

 「日本政府は……歴史的な責任を公式に認め、謝罪し、受け入れるべきだ」

 米下院の外交委員会が、旧日本軍の慰安婦問題についての決議案を可決した。39対2の圧倒的多数だった。7月にも本会議で採択される見通しだ。

 日本が過去の過ちを反省していないと、米議会が国際社会の面前で糾弾している。その意味は重い。

 私たちは、首相の靖国神社参拝や慰安婦など歴史認識がからむ問題に、政治家が正面から取り組むべきだと主張してきた。戦前の行動や価値観を正当化するかのような言動は、日本の国際的な信用にもかかわることだからだ。

 それがこんな事態に立ち至ったことに、やりきれない思いである。日本がそんな国と見られているのかと思うと残念であり、恥ずかしい。

 決議案に疑問がないわけではない。歴代首相が元慰安婦におわびの手紙を出してきたことが触れられていないし、軍の関与を認めて政府として謝罪した河野談話の位置づけも不十分だ。

 しかし、決議案にあるように、河野談話を批判したり、教科書の記述を改めたりする動きがあったのは事実だ。慰安婦の残酷さを非難する決議案のメッセージは、真摯(しんし)に受け止める必要がある。

 今回、決議案が採択の方向となったことについて、戦術的な失敗が指摘されている。今月、ワシントン・ポスト紙に決議案に反論する意見広告が掲載された。それが、沈静化していた問題に再び火をつけたという批判だ。

 確かに、40人あまりの与野党の国会議員とともに、安倍首相のブレーンの外交評論家まで名を連ね、決議案を「現実の意図的な歪曲(わいきょく)」などと批判した全面広告は異様だった。4月の初訪米でおわびを述べた首相の言葉は台無しになったと言えるだろう。

 だが、問題の本質は、自らの歴史の過ちにきちんと向き合えない日本の政治自体にある。

 安倍首相は「米議会ではたくさんの決議がされている。そういう中の一つ」「コメントするつもりはない」と述べた。とんでもないことだ。日本に重大な疑念と非難が向けられているのである。河野談話やアジア女性基金などの取り組みを説明し、改めて認識を語るべきだ。

 首相は日米同盟の土台として「共通の価値観」を強調する。だが、決議案はその価値観にかかわる問題であることを、首相は分かっていないのではないか。

 日本は戦後、自由と人権を重んじる民主主義国として再生し、侵略と植民地支配などの過去を深く反省した。「過去の反省」が揺らいでいる印象を与えれば、価値観への疑念を招く。

 小泉前首相の靖国参拝以来、日本の歴史への取り組みに対する国際社会の目は厳しい。日本の民主主義は大丈夫なのか。今回の決議案はその警告として受け止めるべきである。

猪瀬副知事―知事にノーと言えますか

 年齢は一回り以上違うが、似た者同士と言えるかもしれない。ともに作家であり、あくの強さが売り物だ。

 猪瀬直樹氏が東京都の副知事に就任する。石原慎太郎知事に請われてのことだ。知事は「国に対し発言力がある」と期待し、猪瀬氏も「東京を地方分権のエンジンにしたい」と意欲を示す。

 個性の強い2人がうまくいくのか。迎え入れる都庁から不安の声もあがる。

 一方では、ワンマンになりがちな石原氏をチェックし、ゆがみを正せるのではないかという期待もかかる。ここはまず猪瀬氏の手腕を見守っていきたい。

 猪瀬氏には、幅広く資料を集め、データを積み上げた作品が目立つ。最近では特殊法人の無駄遣いを粘り強く追及してきた。その底にあるのは、権力を監視するという視点だろう。

 その一方で、政治との距離を縮めてきた。小泉首相時代に道路公団民営化推進委員を務め、今は政府税制調査会と地方分権改革推進委員会の委員を兼ねる。

 政治の観察者から助言者へ。そして、今度は都政の担い手になる。

 都政の課題は多い。待ったなしなのは新銀行東京の処理だ。巨額な赤字のうえに、ろくに貸出先がないような状態では、撤退するしかない。新銀行については当初から危ぶむ声があったが、だれも知事に直言できなかった。知事の首に鈴をつけるのが最初の仕事だろう。

 これまでの発言を聞くと、知事と相いれない政策もありそうだ。例えば、都心部を政府の直轄にし、そこの税収の一部を地方に回すという猪瀬氏の「DC特区構想」だ。知事に「洗脳する自信がある」と反論された。猪瀬氏はトーンダウンしたが、このまま引き下がるのか。

 石原都政の下では、学校での日の丸・君が代の強制が全国でも突出している。これについても考えを聞きたい。

 猪瀬氏にとっては、国よりも知事の方が手ごわい相手になるかもしれない。

 大きな力とぶつかった時、猪瀬氏はどう動くか。一つのヒントは道路公団民営化が大詰めを迎えた時の言動だろう。

 民営化案は猪瀬氏ら委員の思いとはかけ離れたものになり、大半の委員は辞めたりした。だが、猪瀬氏はとどまった。

 猪瀬氏はその時の真意をこう述べている。「踏みとどまったのは、獲得したものをゼロにしないため監視を続ける義務があるからだ」「辞任するのは瞬間の美学に過ぎない」

 今後も同じような難しい局面に立たされることがあるだろう。もちろん、「瞬間の美学」だけでは困るが、「永遠の妥協」に陥るのはもっといただけない。

 都政の問題は政策にとどまらない。石原氏はこれまで「三国人」や「テロ容認」など問題発言を繰り返してきた。身内の起用問題や豪華な出張もあった。

 そんな時に「ノー」と言えるのか。知事と対立したら、どう振る舞うのか。都民が見ているのはそこである。

【朝日・天声人語】2007年06月28日(木曜日)付

 しばらく前のことだが、NHKの「みんなのうた」で『ねっこ君』という愉快な曲が流れていた。地中で踏ん張って大木を支える根っこの歌だ。切ってしまえば、桃栗3年柿8年、木がまた育つには長い時間がかかります――。掛け合いの歌声を面白く聞いた。

 思い出したのは、仙台のケヤキ並木の「処遇」について先日書いたら、多くの便りをいただいたからだ。「切らずに残して」がほとんどだった。人が樹木に寄せる愛着のほどを、あらためて思った。

 その割には、ほうぼうで簡単に切られることが多い。開発ばかりではない。近ごろは、薄暗い、目が届かないといった防犯上の理由で、公園や校庭の木が切られている。

 『私たちは本当に自然が好きか』。問いかけをそのまま題名にした本を、塚本正司さんが著した(鹿島出版会)。住宅地の計画に長く携(たずさ)わった人で、冷遇される木々に心を痛めてきた。新緑、万緑と愛(め)でられる。その一方で、落ち葉が邪魔、虫が多い、など人の都合で厄介者にされてきたからだ。

 桜に生涯をささげ、岐阜の荘川(しょうかわ)桜の移植を手がけた故・笹部新太郎も、樹木の生命を軽んじる人間の身勝手を憤った。植物は動物と違い、死ぬのと殺されることに区別を付けにくい。「木を殺す意味の漢字を一字だけ作ってほしい」と、たぎるような言葉を残している。塚本さんの思いにも通じるものがあろう。

 『ねっこ君』の歌には、近ごろ森が少なくなったと嘆くモグラが登場する。一本の木に育まれる生命の多彩さにも思いをめぐらせたい。


【毎日・社説】

社説:「従軍慰安婦」決議 安倍外交にも問題がある

 米下院外交委員会はいわゆる従軍慰安婦問題に関する対日謝罪要求決議案を可決した。決議案は「日本政府は、帝国軍隊が若い女性に性的奴隷を強制したことに対して明確に公式な謝罪をすべきだ」という内容である。

 外交委での決議は昨年9月に続いて2度目だが、今回はぺロシ議長が採択を目指す意向を表明し、来月中にも本会議で初めて可決される可能性が高まっている。

 日本政府は93年の河野洋平官房長官(当時)の談話で、旧日本軍の関与を認め「心からおわびと反省の気持ちを申し上げる」と謝罪した。

 安倍晋三首相も河野談話を踏襲し、4月の訪米ではブッシュ大統領や議会関係者におわびの気持ちを表明している。米国内にも「残念なのは慰安婦問題をめぐる米国内の動きだ。日本の首相が謝罪しているにもかかわらず、こういうことが続くのか」(ダニエル・イノウエ上院議員)という日本を擁護する声もある。

 それにもかかわらず日本の立場が理解されず可決に至ったことは極めて残念なことだった。

 可決に対して塩崎恭久官房長官は「他国の議会の決定にコメントすべきではない」と語っている。

 しかし他国の議会ではあるが、米国民を代表する議員の意思表示は重く受け止めねばならない。日米関係に影響を与えかねない事態で、従軍慰安婦問題が将来にわたって両国関係を損なわないような対応をしなければならない。

 今回の事態を招いた要因としては、安倍首相の姿勢にも問題があった。首相は3月、国会答弁で決議案に関連して「軍や官憲による強制連行を示す記述は(資料に)見当たらなかった」と「狭義の強制性」を否定した。

 首相は就任前は河野談話に批判的な立場をとっており、首相発言は河野談話の見直し論にくみするものと受け止められてしまった。このため米メディアを中心に激しい批判にさらされた。首相は訪米でおわびの気持ちを表明したが、結果的には議会の対応に何らの影響も与えることはできなかった。

 さらに今月14日付の米紙に平沼赳夫元経済産業相ら国会議員や評論家らから、従軍慰安婦の強制性を否定する内容の全面広告が出された。これに対してはラントス外交委員長が「事実に対抗するばかげた主張だ」と反発するなど可決の呼び水になってしまった。

 平沼氏は27日「事実に基づかない決議は両国に重大な亀裂を生じさせる」との声明文を発表した。しかし強制性を否定する平沼氏らの言い分が、米議会では理解されていないことが明らかになったことも事実だ。

 3月末に解散したアジア女性基金では、償い金を届けたり歴代首相がおわびの手紙を送るなどの活動を行ってきた。しかし政府はそういう努力を世界に十分アピールしてこなかった。「他国のこと」と片づけるのではなく首相が先頭に立って、河野談話に基づいて誠心誠意、日本の立場を説明し続けることが必要だ。

毎日新聞 2007年6月28日 東京朝刊

社説:社保庁改革案 立ち止まって考え直そう

 社会保険庁改革法案が今国会で成立する運びという。無責任体質のまん延した社保庁を壊し、規律を持った新しい組織に生まれ変わること自体にはまったく異存がない。

 だが、政府提出の法案は年金記録漏れ問題が発覚する前に検討されたものだ。状況が一変した中で、職員を大量リストラし、業務を民間に任せて、果たして記録漏れの後始末までできるのか。心もとないと言わざるを得ない。

 法案の表向きの狙いは、社保庁の体質改善と保険料納付率の向上である。そのため社保庁を解体し、2010年に「日本年金機構」に衣替えする。職員は非公務員化され、保険料徴収などの業務はできる限り民間に委託する。その結果、約1万7000人の正規職員の大量解雇が焦点になる。職員の採否などは、改正法成立後、内閣官房に置かれる第三者機関が決めるという。

 地方採用の社保庁事務所で働く職員は、もともとは地方事務官だったという生い立ちから民主党支持の自治労に所属している人が多い。政党との関係を世に知らしめて「労組いじめ」をするには選挙前の成立が効果的なため、裏の狙いは参院選対策といわれてきた。

 しかし、そんな与党の思惑を吹き飛ばす社保庁の大失態が、法案提出後に明らかになった。社保庁の管理する年金記録が宙に浮いたり、消えたりしていたのだ。かつての個人記録のぞき見、信じられないような労働慣行、納付率アップのための不正操作に加え、大量の記録漏れで国民の年金不信は倍加した。1日に数十万件の相談が殺到、社保庁の電話はパンク状態となった。

 年金騒動を機に、内閣支持率が急降下した安倍晋三首相は大あわてで5000万件の不明記録を1年で本来の持ち主に統合させると言明した。この言葉にはトリックがひそむ。コンピューター内の不明データを氏名、生年月日などで束ねる作業はプログラムを開発したらおそらく1年で可能だろう。しかし、オンライン化されたデータ自体が誤って入力されていたら、人の目で原簿とデータを見比べるしかミスの見つけようがない。人数にもよるが、10年かかる作業という関係者もいる。

 3年後に社保庁が解体された後、この膨大な作業はどこが引き継ぐのか。後継組織がやっていくしかないだろう。職員がリストラされた少人数の新組織できちんと運営できるのだろうか。

 ぬるま湯につかっていた職員の意識変革を行い、二度とずさんな管理を繰り返さない仕組みを作らなければならないのは言うまでもない。でも、親方日の丸から非公務員型へ移行したら、処理を求められている懸案がすべて解決するわけでもなかろう。

 記録漏れ処理が新組織の使命に加わったのに、今の改革案はこうした疑問に答えていないし、国会でその問題を議論した形跡もない。立ち止まって、この法案が本当に年金の信頼回復に結びつくものなのか、考え直す必要がある。

毎日新聞 2007年6月28日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:さて、貧乏神にとりつかれぬようにするには…

 さて、貧乏神にとりつかれぬようにするにはどうすればいいか。「大みそかに酢の物を食べる」「食事中ひざをゆすらない」、さらに江戸時代の橘守部という国学者の本には、家中の部屋を日に一度は掃除して風を通し、使わない時は閉め切っておけと書いてある▲これは以前、本紙大阪、西部本社版に連載された「異界の杜(もり)」の受け売りだ。このコラムは国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベース(DB)のスタッフがDBを活用して書いていた。たとえばDBで貧乏神を検索すれば、おのずとその“防御策”も分かったのだ▲妖怪DBは民俗学の調査報告論文や、江戸時代の随筆などから怪異や妖怪の伝承を集めて構築され、5年前にネット公開された。開設後は80万件のアクセスを数える人気DBとなり、収録情報も当初の2万件から約3万5000件にまで増えている▲だが一般の妖怪ファンは民衆の豊かな想像力が描き出した妖怪たちの姿も知りたかろう。そんな期待に応え、妖怪DB作りを進めてきた日文研の小松和彦教授のチームが今度は昔の絵巻などに描かれた妖怪の画像をデータベース化する構想を発表した▲画像は日文研所蔵の資料などから集めた500種を予定し、3年以内にネット公開するという。ならば漫画ではよく見る貧乏神だが、昔の人が描いた貧乏神はあるのだろうか。とりつかれないようにするには、その姿も知っておくにこしたことはない▲かつては身近な夜の闇や家の暗がりに潜んでいた妖怪やもののけが、今や犯罪者か何かのようにコンピューターにデータ登録されるのはさみしくもある。だが妖怪の大半はここでデータを残しておかねば、永遠に闇へと去って戻らない。確実に残るのは貧乏神だけだ。

毎日新聞 2007年6月28日 東京朝刊


【読売・社説】

慰安婦決議 米議会の「誤解」の根元を絶て(6月28日付・読売社説)

 いわゆる従軍慰安婦をめぐる対日決議案が米下院外交委員会で採択された。全くの事実誤認に基づく決議である。

 日本政府は、将来に禍根を残さないよう、米側の誤解をときほぐし、当面、本会議での採択阻止に努めなければならない。

 決議案は日本政府に対し、「日本の軍隊が若い女性を強制的に性的奴隷化」したことへの歴史的責任を認め、謝罪せよと言う。「慰安婦制度は20世紀最大の人身売買事案の一つ」と表現している。

 事実をきちんと確かめることもせず、低水準のレトリックに終始した決議案だ。米議会人の見識を疑わせる。

 安倍首相は4月、米大統領や議会首脳らとの会談で、元慰安婦への「心からの同情」と「申し訳ない思い」を表明した。「20世紀は人権侵害の多い世紀で、日本も無関係でなかった」とも述べた。

 だが、こうした首相の発言も、決議案の採択見送りにつながらなかった。

 米議会で採択される数多くの決議の一つにすぎない。法的な拘束力もない。従って、重く受け止める必要はない、という指摘もある。

 これは間違っている。反論することを控えれば、この誤った「歴史」を独り歩きさせるだけだろう。

 戦前、親やブローカーの手で、自らの意思に反して、慰安婦にさせられた女性は多数いた。しかし、これと、日本軍による、いわゆる「強制連行」とは、明らかに意味が違う。

 「軍や官憲による強制連行」を直接示す資料は、これまでの調査で何も見つかっていない。政府は、今年3月の答弁書でも、この点を明確にしている。

 一体、対日決議案は、何を論拠にしているのか。大きな拠(よ)り所とされているのが、1993年に出された河野官房長官談話だ。そこには「官憲等が直接加担した」などと、「強制連行」があったと誤って受け止められる記述がある。

 当時、慰安婦問題での韓国側の圧力をかわすために考えられた政治的文言が、その後、誤解を広げた根元にある。

 安倍首相は、「河野談話」を継承すると言う。外交的配慮からだろうが、その立場をとる限り、「強制連行」という誤解は消えない。談話に誤りがあるなら、見直しを躊躇(ちゅうちょ)するべきではない。

 麻生外相は3月、決議案をめぐる動きについて、「日米を離間させる工作」と指摘した。背後で、中国・韓国系の反日団体などが影響力をふるっている。

 このままでは、謝罪要求が繰り返されることになりかねない。筋道を立てて歴史の事実を明らかにしていくべきだ。
(2007年6月28日1時46分  読売新聞)

特待生制度 高野連の体質・機構も改革せよ(6月28日付・読売社説)

 来年度の入学生については現行制度の延長適用を認め、再来年度以降に関しては第三者機関を設置して、そこでの議論をもとに決める――。日本高校野球連盟が、特待生制度に関する当面の方針を公表した。

 来年度については、早急に対応を決める必要があった。高校は生徒募集要項の作成時期を迎えている。中学3年の球児たちは、それを参考に進学先を絞るころだ。特待生制度の存続を求める私学の強い声に、高野連が譲歩した形だ。

 現在の状況は、統一基準もない曖昧(あいまい)なものになっている。一度は制度の「根絶」を決めた高野連だが、社会の批判を浴びると一転、「救済措置」を打ち出した。その際に、具体的な特待生の救済方法や救済対象などについては事実上、判断を各高校に“丸投げ”したためだ。

 生徒募集に当たって、高校と球児の双方に、特待生制度への誤解が生じないよう、高野連は丁寧な説明が必要だ。

 第三者機関として設立される「特待生問題有識者会議」には、教育、法曹、スポーツ界などから有識者十数人が集められる。10月までに意見をまとめる。

 自民党の高校野球特待生制度問題小委員会が先週公表した「提言」を受けて設置が決まった。この提言は、ブローカーなどの介入を排した公平・公正な特待生制度の容認を高野連に求め、その基準作りのためにも、第三者機関の設置が必要だ、としていた。

 独善的な体質に批判も多かった高野連が、外部の意見を聞きつつ改革に乗り出す姿勢を見せたことは一歩前進だ。ここは高野連の体質や機構改革にまで踏み込んだ議論を望みたい。メンバーにはプロ野球関係者を加える必要もあろう。

 この有識者会議では、野球部員の特待生制度を禁じた日本学生野球憲章の見直しも論議される予定だ。

 他の多くのスポーツで特待生制度が活用され、そこで育った才能ある選手たちがプロや世界レベルで活躍している。野球だけは特別という高野連の考え方は、今の時代、逆に選手の才能の芽を摘む結果をもたらしかねない。

 憲章の見直しと、あるべき特待生制度の基準作りは表裏一体の作業である。

 自民党小委の提言には、才能の発掘・育成のあり方を探るため、野球関係団体が一堂に会する場や、統括団体の設立が必要だ、という指摘もある。

 サッカーやフィギュアスケートなど、プロとアマが協力して選手を育て上げることに成功している競技もある。

 両者の健全な関係の構築こそ、日本の野球界にとって喫緊の課題だろう。
(2007年6月28日1時47分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月28日付 編集手帳

 速くて正確なのはどちらか、そろばんと電気式計算機の対抗試合が東京・日比谷で催されたのは1946年(昭和21年)の11月である。米軍の機関紙「星条旗」が主催した◆加減乗除に混合算の計5種目を競い、4種目を制したそろばんに軍配が上がっている。敗戦の翌年でもあり、「戦勝国を打ち負かした」「日本は死なず」と喜んだ人も多かったと伝えられる◆時は移り、電卓全盛の世を迎えたが、慣れるとこちらが速いからと、職場などでいまでもそろばんを愛用している方は多かろう。上級者になると、珠(たま)をはじく指の感覚で計算の間違いに気づくという◆学力向上の手段として教育の現場でも見直されつつあり、珠算能力検定の受験者数は昨年度、26年ぶりに増加した。対抗試合の熱気とまではいかずとも、伝統の計算術に復権の兆しが見えるのはうれしい◆牛肉を偽装した食肉加工会社、虚偽申請をした介護サービス会社、契約時の説明を偽った英会話学校…と、経営の誤算に気づく「指の感覚」を忘れ、目先の金勘定に電卓をたたきつづけた企業が世を騒がせている◆利益の珠をはじく指が「あなた、間違ってますよ」と告げてくれるかどうか、その声を聞き取れるかどうかに、要は尽きよう。まだじわりとはいえ、せっかくの珠算熱である。経営者も指と耳を磨くに限る。
(2007年6月28日8時44分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】慰安婦決議案 事実を示し誤解を解こう

 米下院外交委員会で、慰安婦問題で日本の首相に公式謝罪を求める対日非難決議案が賛成多数で可決された。残念な結果である。

 可決された決議案は「日米同盟がアジア太平洋地域に占める重要性」を盛り込むなどの修正が加えられ、民主党のマイク・ホンダ議員が提出した当初の決議案より表現がやや緩やかになっている。しかし、「慰安婦制度は日本政府による軍用の強制的な売春」と決めつけるなど、多くの誤りを含んでいる。

 慰安婦問題をめぐり、日本の官憲が奴隷狩りのように強制連行したという説が一部で流布されたこともあるが、日本政府が2年がかりで集めた約230点の資料の中には、そのような事実を示す証拠は1点もなかった。慰安婦は主として民間の業者によって集められ、軍は性病予防対策などで関与していたのである。

 決議案は来月にも下院本会議で採決される見通しだ。議会の決議に法的拘束力はないが、国際社会では、誤った事実に対して何も反論しないことは、それを認めたことになりかねない。日本の外務当局はこれまでに集めた公式文書などを有効に使って誤りを正すべきである。

 米下院外交委員会では、慰安婦問題をナチス・ドイツが行ったホロコースト(ユダヤ人大虐殺)と同列に論じる非難の声も上がったといわれる。南京事件などをめぐり、これまでも米国の州議会などでしばしば繰り返されてきた誤解である。

 米国でベストセラーになった中国系米国人、アイリス・チャン氏の著書『レイプ・オブ南京-第二次大戦の忘れられたホロコースト』の影響がいまだに残っているようだ。

 4月末の日米首脳会談で、安倍晋三首相は「慰安婦の方々が非常に困難な状況の中、辛酸をなめられたことに対し、人間として首相として心から同情している」と述べた。ブッシュ大統領もこれを評価した。最近、外務省が米国で実施した対日世論調査でも、日本を「信頼できる」と答えた一般人が74%と過去最高を記録した。

 日米同盟を一層揺るぎないものにするためにも、歴史問題で正しい事実を示し、誤解を解く粘り強い外交努力が必要である。

(2007/06/28 05:03)

【主張】野球特待制度 現場の声に柔軟な対応を

 とりあえず、高校野球の特待制度は来年度も容認されることになった。問題を抱えた私学関係者は胸をなで下ろしただろうが、これで事態が進展したわけではない。

 野球部員であることを理由に金品を受け取ることを禁じた日本学生野球憲章は厳然と存続し、今回は5月に在校生に限り認めた暫定措置を継続しただけだ。しかも、特待生選考についての明確な基準が示されたわけではなく、学校側に一任された。

 仮に今後の方向性を決める第三者機関「特待生問題有識者会議」が、この暫定措置と逆の結論を出したとしたら、混乱し批判にさらされるのは学校現場にほかならない。

 問題噴出から2カ月以上たつ。多くの声が特待制度は存在してしかるべきとするなかで、日本高等学校野球連盟(高野連)は今回、将来に向けた方向性だけでも示すべきだった。それすらできなかったところに、この組織の当事者能力の欠如を見た思いだ。

 高野連の脇村春夫会長は有識者会議について、「憲章見直しを前提としたものではない」と言い切る。内部には依然、憲章を順守し、特待制度は解釈によって可能たらしめればよいとの声もあると聞く。だが、考えてもみてほしい。その解釈の受け止め方にさまざまあったからこそ、問題がここまで紛糾したのではなかったのか。

 勉学はいうまでもなく、スポーツあるいは芸術の分野でも奨学制度、特待制度は十二分に機能している。

 ただ、高校野球は熱狂的な支持を集めるがゆえに、この制度を拡大解釈して使う向きが多かった。だからこそ、将来に禍根を残さないためにも、きちんと見直すところは見直し、制度として憲章に記し、明確な基準を設けることがいま必要なのである。もちろん、野球が学校教育の一環であることも十分、考慮されなければならない。

 有識者会議には、学校現場の声やアマチュア球界に加え、プロ野球界や世の中の声をひろい、しっかりと議論し前向きの提言を望みたい。そして高野連関係者はこれまでの硬直した思考を捨て、柔軟な対応をすべきだ。

 “延長戦”にまでもつれ込んだ試合が、凡戦のまま終わってしまうのか、球史に残る名勝負たりえるのか。11月に出されるという結論は重い。

(2007/06/28 05:02)

【産経抄】

 人の目を欺く手段には偽装とか迷彩がある。北朝鮮の工作員が、日本人を拉致したときに駆使した手口だから今は聞きなれた。あこぎな犯罪は国内にもごろごろしている。マンションの耐震偽装は1級建築士の仕業だったし、息子と偽ってカネをせしめる振り込め詐欺もそう。

 ▼最近では、牛のミンチにブタの内臓を混ぜ、上から牛の血液で色づけした食肉加工の社長が登場した。自ら「食肉の職人」を任じていたらしいが、実像は偽装の名人だった。口答えすれば即解雇だから、誰もトップの暴走を止められない。

 ▼“ミンチ社長”が「半額セールにだまされた方が悪い」などと、開き直ったのにはあきれた。気楽に厚かましくが、彼の処世訓らしい。「身過ぎ世過ぎは草の種」とかで、暮らしていくための手段はいろいろだ。しかし、他人さまを欺けばやがて天罰が下るのは人の世の道理だ。

 ▼偽装や迷彩には、あらぬ方向へ巧妙に導く手口もあるそうだ。北京で反日暴動が発生したときに、天安門広場を目指した群衆を途中の道で公安警官が流れを変えた。「あっちあっち」と日本大使館の方向に誘導していたことをテレビカメラがとらえていた。

 ▼実はこれと似たような現象が、米下院の慰安婦をめぐる対日非難決議にも感じられる。連邦議会には、中国が石油ほしさからスーダンに武器を輸出し、大量殺戮(さつりく)を見逃しているという非難の嵐がある。そこに湧(わ)いた慰安婦決議が対中非難を薄めた。

 ▼いまや、ワシントンのキーワードは「人権」であるらしい。人権問題は国境も過去現在も区別しないから、慰安婦問題も北の拉致事件も一緒くたにされてしまう。いまは、「こっちこっち」と拉致事件の解決の方に誘導する知恵がいる。

(2007/06/28 05:00)


【日経・社説】

社説1 中国化進む香港の10年 「民主」なお課題(6/28)

 「東洋の真珠」とうたわれた香港が7月1日、英国から中国に返還されて10周年を迎える。香港経済は低迷を経て最近は高成長を続け、国際金融センターとしての地位も上がった。半面、香港のトップを選ぶ行政長官選挙は間接選挙のままだ。香港がさらに輝き続けるには、普通選挙への移行など民主化への歯車をしっかりと回さなければならない。

 香港の資本主義制度を50年間維持する「一国二制度」の下、香港経済はこの10年間、揺れ動いた。返還翌年の1998年の域内総生産(GDP)はアジア通貨危機のあおりで初めてマイナス成長(前年比5.5%減)を記録。深刻な不況が続き、失業率は一時、8%を超えた。

 転機は新型肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)が香港を襲った2003年だった。この年、中国政府は香港との「経済緊密化協定」(CEPA)に調印したほか、一部本土住民の香港への個人旅行解禁など支援策を相次いで打ち出した。

 経済はV字型に回復、04年8.6%、05年7.5%、06年6.9%と3年連続で高成長を続けている。株式相場の指標であるハンセン指数も10年前の2倍を超え、6月に入っても最高値を更新している。

 香港は曲折を経て再生したが、中国への依存度が急速に高まっているのが実情だ。香港の株式市場時価総額は97年末の約4000億ドルから昨年末は約1兆7000億ドルに膨らんだが、うち50.3%を中国工商銀行など中国本土系企業の銘柄が占める。

 06年の香港への観光客は前年比8.1%増の2525万人。同年の訪日外国人旅行者(733万人)の3倍以上だが、中国本土から香港への観光客が1359万人と全体の半数を超えた。

 一国二制度の原則は守られたとはいえ「香港の中国化」が進んだ。この制度の象徴ともいえる香港ドルと中国の人民元の通貨価値が今年1月に逆転したことは記憶に新しい。

 一国二制度はそもそも中国が台湾に統一を呼び掛けるために考え出した。香港はそのショーウインドーでもある。香港基本法は行政長官選出の「最終目標は普通選挙」と明記しているが、まだ実現していない。

 それどころか中国の呉邦国・全国人民代表大会常務委員長は香港返還10周年を記念する今月6日の北京での座談会で「高度の自治権は香港固有のものではなく、党中央が与えた権利だ」と発言、波紋を広げた。

 総統を既に普通選挙で選んでいる台湾の人たちは香港の現状をどう見ているだろうか。

社説2 スーダンの悲劇放置するな(6/28)

 アフリカのスーダン西部、ダルフール地方の人道危機が放置されている。スーダン政府の支援を受けたアラブ系民兵組織が黒人系農民を中心にした反政府武装勢力と戦闘、これまでに20万人が死亡、200万人以上が家を追われた。

 国際社会は制裁強化も視野に入れスーダン政府、反政府勢力の双方に和平受け入れ圧力を強めるべきだ。スーダン政府に影響力を持ちながら紛争解決に無頓着だった中国は、とりわけ真剣な努力を問われる。

 パリで25日にフランス政府主催でダルフール紛争解決をめざし国際会議が開かれた。サルコジ仏大統領は「黙っていることは殺人行為と同じ」と強調した。その通りだ。

 ダルフール紛争が始まったのは2003年2月。それから4年以上もこの悲劇に終止符が打たれないできた。紛争当事者がいずれも好戦的な姿勢を続けたうえ、国際社会の努力も不十分だったからだ。国連安全保障理事会はスーダン政府に一定の制裁も科しているが、主要国が一致結束してダルフール紛争に対応してきたとは言えない。中国がスーダン政府への圧力強化に反対し、足並みをそろえられなかったのが実情だ。

 中国は日量約50万バレルの産油国スーダンへの最大の投資国であり、直近ではスーダン原油の6割を輸入し同国財政を支えている。中国は否定するが、政府側に禁輸対象の武器を供給しているとの指摘もある。

 このため欧米で08年北京五輪ボイコットを求める声もあがるほど、中国への批判が高まっている。中国は今春、ダルフール問題担当の特使を任命し、胡錦濤国家主席もバシル大統領に和平を働きかけるなど、ようやく対応を始めた。和平実現に向けた中国の影響力行使が必要だ。

 国連、アフリカ連合(AU)、スーダン政府の三者は今月、ダルフールの平和維持軍を増強することで合意した。だが、スーダン政府には、過去に国際的な合意を反故(ほご)にした経緯もある。国連、AUは増強部隊をできるだけ早く組織し、スーダンに受け入れを迫るべきだ。

 日本政府は26日、難民を対象にした約400万ドルの人道援助を決定した。日本も引き続き紛争解決、人道援助に貢献すべきである。

【日経・春秋】(6/28)

 ニッポンのヘソが、また東へ動いた。住民一人ひとりがみな同じ体重だと仮定して、ちょうどバランスが取れる「人口重心地」の話だ。2年前の国勢調査から総務省がはじき出した新しいヘソは、岐阜県関市の富之(とみの)保(ほ)という場所らしい。

▼重心はこの40年間に23キロも東側へ移動している。首都圏への人口集中のせいだ。明治時代は滋賀県にあったというから、当時の関西や西日本の「重さ」が知れる。畿内が大いに栄えた古代に遡(さかのぼ)れば、ヘソはさらに西にあったに違いない。高松塚古墳のある奈良県明日香村などはずいぶん重かったことだろう。

▼その高松塚の極彩色壁画を救うための石室解体が無事終わった。カビに覆われた飛鳥美人や白虎が残る壁石を1枚ずつ取り外し、修理施設に運ぶ作業は片時も気を抜けなかったようだ。しかし本当の問題はこれから。修復に何年かかるのかはっきりせず、いずれは古墳に戻すのか、外部で保存するのかも不透明だ。

▼そもそも、石室を解体する羽目になったのは文化庁のずさんな管理が大きな原因だった。損傷隠しも記憶に新しい。加えて、先のことは行き当たりばったりというのでは文化庁に文化財をゆだねるのが不安になる。お役人たちは飛鳥の地の重みなど顧みず、役所にこそ重心があると思い込んでいるのかもしれない。


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