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2007年6月29日 (金)

6月29日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

お勧めPDA・電子辞書

 (2007-07-01 01:01確認)雑談日記、予測よりやや速いペースでついに激戦政治ランキング花の1頁(1位~50位)突入。今までネットウヨ充満だったが、リベラル系が圧倒の勢い、確認したければ、バナークリック。(ランキング参加の意義)
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【沖縄タイムス・社説】(2007年6月29日朝刊)

[「集団自決」意見書]示された「県民の総意」

 高校歴史教科書の文部科学省の検定で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述が削除、修正された問題で、検定意見の撤回を求める意見書が県議会をはじめ、県内四十一市町村の全議会で可決された。

 五月十四日の豊見城市議会を皮切りに、読谷村議会が「賛成多数」、それ以外は「全会一致」で足並みをそろえた。

 全市町村での意見書可決は、二〇〇四年の沖国大への米軍ヘリ墜落事故で抗議決議・意見書を可決して以来だという。

 意見書は「沖縄戦における『集団自決』が『軍による強制・強要・命令・誘導等』なしには起こり得なかったことは否定することのできない事実」などと指摘している。

 全市町村議会が自主的に検定意見の撤回を求めたことは、地方自治と主権在民の立場から国への「異議申し立て」であることは言うまでもない。

 「史実を正しく伝え、二度と戦争を繰り返してはならない」という地域住民の思いがそのまま反映され「県民の総意」が強く打ち出されたといえる。

 県議会は当初、最大会派の自民党が党内で意見が折り合わなかったものの、最終的に「日本軍による関与があった」という点で一致した。全県民の声が集約され、一つのうねりとなって可決を後押ししたといえよう。

 政府・文科省は、この県民の総意を真摯に受け止め、検定の撤回と記述の回復を速やかに図ってもらいたい。

 文科省は、今なお「軍による直接的な命令があったかどうかは不明確。『強いられて』という表現は高校生には命令があったように誤解される」というが、それでは「集団自決」の事実がうやむやにされてしまいかねない。

 確かに、日本軍の直接の命令が渡嘉敷、座間味、慶留間の各島であったかどうかは定かでないし、大阪地裁で係争中の民事訴訟で当時の指揮官が命令の事実を否定するなどの動きもある。

 だが、言葉による命令があったかどうかということが、日本軍が「強いた」とみるかどうかを決定づけるものでは必ずしもないはずだ。

 当時の皇民化教育や軍国主義社会、さらに戦時下の極限状態の中で「いざという時は自決するように」と日本兵が手りゅう弾を配ったことには多くの住民の証言がある。

 少なくとも、広い意味での日本軍の関与、軍の圧力があったのは紛れもない事実といえる。

 歴史の事実は一つであり、変えられない。正しい歴史を示すことが未来への道標となる。

[ロッテキャンプ]石垣市への定着に期待

 プロ野球の千葉ロッテマリーンズが来年二月の春季キャンプを、石垣市内で行う。

 ロッテが加わると、県内でキャンプを張るのはセ・パ両リーグで計九球団となり、全十二球団のうち四分の三が沖縄に集結する。オープン戦や県出身選手らの活躍など話題も増え、いっそうにぎやかさを増すに違いない。

 石垣市がロッテ球団誘致に動いたのは昨年十一月からで、約半年のスピード決定となった。八重山商工で活躍した大嶺裕太投手の入団をきっかけに、石垣キャンプの話へと急展開した。

 地元の商工・観光関係者が「呼ぼう会」を結成し、これに市も呼応してプロジェクトチームを稼働させるなど、官民挙げた誘致活動が実を結んだ。

 球団側も、それまで二年続けたオーストラリア・キャンプより、移動の時間や適度な気温差、費用、安全管理、地元の熱意などを考慮して石垣キャンプに傾いた。

 バレンタイン監督が強く石垣を希望したのも大きな要因という。

 春季キャンプがもたらす経済効果については、りゅうぎん総合研究所が、今年は八球団で五十三億三千七百万円に上り、前年比5・8%(二億九千六百万円)増えたと試算した。

 テレビなどのメディアがキャンプ地を取り上げるPR効果も計り知れない。来季はロッテ球団が加わる。さらに那覇市は読売巨人軍の誘致に力を入れており、実現に期待したい。

 八重山はもともと野球熱が高い地域である。甲子園に送るために支援する民間人の活動をベースに、熱心な指導者が強いチームに育て、甲子園行きを実現したのが八重山商工だった。今では島外から「野球留学生」が入学するほどだ。

 キャンプは教育効果も高い。プロの選手の動きや練習方法を間近で見ることができ、野球少年らにとっても大いに刺激になるだろう。

 八重山の「地元球団」として声援を送り、盛り上げ、春季キャンプを定着させてほしい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月29日 朝刊 1面)

 那覇高校では、今年から本格的に「スカート丈検査」が始まった。床に高さ五センチの角材を置き、その前で女子生徒がひざ立ちをする。角材にスカートが触れなかったら、身なり違反。

 「五センチはきつい」「見ていないところでは、また短くする」と生徒の評判は芳しくない。規則や身だしなみの大切さを訴える教師たちも、検査自体は「気持ちのいいものではない」と悩む。

 制服指導の取り組みや反応、地域の声を同校放送部が「スカート丈狂騒曲」としてラジオドキュメントにまとめた。生徒自身が問題と向き合った作品は、今月開かれたNHK杯全国高校放送コンテスト県大会で最優秀賞を受賞した。

 短くする理由は「今しかできない」「自分の存在感をアピールする」…。作品は男生徒の本音に迫り、犯罪に巻き込まれる可能性にも触れ、「このままでいいのですか」と問い掛け、終わる。

 制服のスカートが短くなったのは九〇年代半ばからという。そのスタイルは「女子高生ブーム」にのり東京から全国へと広がった。今やひざ上十センチは当たり前、二十センチ以上も珍しくない。

 太ももあらわな姿を、みっともないと感じるのは感性の違いか。逆に何が何でも短くしたいのなら「校則を変えよう」くらいの元気さがほしい。自己を主張しながら「みんな短いから」と横並びに徹する矛盾。制服を着崩している高校生が、実は制服に縛られているように思えてならない。(森田美奈子)


【琉球新報・社説】

「撤回」要求決議 県民は軍命削除を許さない

 来年度から使用される高校歴史教科書検定で、沖縄戦の「集団自決」への日本軍の強制に関する記述が修正・削除された問題で28日、嘉手納町議会と国頭村議会が「検定意見の撤回」を求める意見書を全会一致で可決した。これで県内41全市町村で撤回決議が可決された。
 先の県議会の撤回決議も含め、「検定意見の撤回」要求が、名実ともに「県民総意」となった。
 意見書で嘉手納町議会は「集団自決が、日本軍の関与なしに起こり得なかったことは紛れもない周知の事実」と指摘し、国頭村議会は「体験者による数多くの証言や、歴史的事実を否定しようとするもの」と批判している。県、他市町村の意見書も同様の趣旨だ。
 広大な米軍嘉手納基地を抱える嘉手納町は、基地被害にも触れ、戦後世代が増え、戦争体験者の減少が進む中で沖縄戦の実相を伝えることの大切さを指摘している。民を苦しめる「軍隊」の問題は、日米の国の違いはあれ、沖縄ではいまも続く「歴史」である。
 沖縄戦を直接体験した歴史の証言者が沖縄にはまだまだ健在だ。一部の研究者や官僚たちが「軍命があったとの明確な証拠はない」と言い張っても、「集団自決」で肉親を失った体験者たちの口は封じられない。
 賛成多数の読谷村を除く40市町村議会が、全会一致での「撤回」要求の可決だ。全議会の決議を、国は重く受け止めるべきだ。
 文科省は県の仲村守和教育長の撤回要請に、「集団自決で日本軍が関与したと思う」(布村幸彦審議官)と認めている。だが、検定意見の撤回には「政治家は口出しすべきではない」(伊吹文明文科相)として、応じる気配がない。
 文科相には教科書検定意見に対する「正誤訂正の勧告権」があると研究者は指摘している。政治の介入で改ざんされた教科書は、「正確な史実」によって是正されるべきである。だが、史実を突きつけ、史実を認めさせても、なお是正を拒む政治がそこにある。
 いまなぜ歴史教科書から「軍命」を削除しなければならないのか。ここ数年、国民保護法などの有事法制が整備されている。防衛庁の省昇格、集団的自衛権の行使に関する有識者懇の発足、米軍と自衛隊の融合を進める米軍再編特措法、憲法改正を狙う国民投票法の成立と続く。
 一連の政府の動き、政治の流れに「新たな戦争準備」を警戒する声もある。その動き、流れの中に、教科書検定問題がないか。
 悲惨な戦争を二度と日本が繰り返さないためにも、議会決議を県民運動に広げ、政府が歴史の史実を正しく後世に伝えるよう、強く求め続けたい。

(6/29 9:32)

石垣キャンプ 12球団集結の夢実現も

 来春の楽しみが増えた。プロ野球の千葉ロッテマリーンズが、来年2月から石垣島で春季キャンプを張ることが28日、正式に決まった。石垣島では25年ぶりのプロ野球のキャンプ。ビッグニュースに島を挙げて喜びに沸いていることだろう。
 沖縄はすでに国内随一のプロ野球キャンプ地。すでに12球団中8球団が春季キャンプを張っている。ロッテを加え、来春からは9球団に増える。
 次は「奥武山新球場に巨人」との話も聞く。新垣渚投手が活躍するソフトバンク、人気の西武が加われば、12球団が沖縄にそろう。ぜいたくな夢だが、現実になるかもしれない。そんな期待を抱かせるロッテの石垣入りだ。
 そのロッテといえば、大嶺祐太投手。八重山商工高校のエースとして、甲子園で旋風を巻き起こし、沖縄にとどまらず全国、とりわけ島々の子どもたちに夢と元気を与えてくれた。
 今度は、入団先のロッテを、ふるさと石垣島にグッと引き寄せてくれた。もちろん、市民のバックアップがあってこそだ。
 大浜長照市長をはじめ石垣市民はプロ球団の誘致に向け、市営球場や多目的広場の土を入れ替え、芝を替えるなど、12項目もの要望に応える努力を重ねてきた。丁寧な対応で球団の信頼をつかんでいる。
 澄んだ空と海、温暖な気候、うまい食べ物、温かな人情が沖縄の魅力という。全国に広がる航空路線網、国内有数の観光地として優れた宿泊施設を備え、球場など関連施設も整ってきた。それが、キャンプ地としての沖縄の魅力を高め、プロ球団を引き寄せている。
 9球団がそろう沖縄は、球団にとってもファンにとっても練習試合やオープン戦の対戦メニューの豊富さ、一県で多球団を楽しめる「集結のメリット」も魅力だ。
 そして経済効果。琉球銀行の試算では約53億円(2007年)の経済波及効果と約23万人の集客効果を挙げている。
 「公式戦が実現すれば効果は倍増」との期待も膨らむ。来春が待ち遠しい。

(6/29 9:31)

【琉球新報・金口木舌】

 七色のさえずり、とでも言おうか。「ピックリン ピックリン」「キュッキョロ キュッキョロ」。人によっては「チョコレート クレクレ」と聞こえるらしい。シロガシラ(白頭)の声音は本当に軽やかで、楽しい気分にさせる
▼17年前にシロガシラによる農作物被害の取材をして以来、そのさえずりが気になって仕方がない。「害鳥」でなければ、声質といい、賢そうな雰囲気といい、無条件に好きな野鳥なのだが
▼県や国、市町村、JAなどはこのほど「沖縄地域野生鳥獣対策連絡会議」を設立した。本島北部ではカラスとイノシシ、南部ではシロガシラによる農作物被害が深刻になっている。2006年の県内の被害額は2億7400万円で、この5年では最悪だ
▼シロガシラが沖縄本島で確認されたのは1976年、糸満市。その後、生息域は北上、拡大している
▼だが本島のそれは、八重山に生息する在来の希少種ヤエヤマシロガシラに比べ、頭頂の白毛部分がやや広いといわれ、亜種のタイワンシロガシラと断定された。農家にとっては頭の痛い問題だが、オツムの面積で希少種、害鳥と分けられるのをシロガシラはどう思っているのか
▼「ヘンチクリン ヘンチクリン」。さえずりはそうも聞こえる。

(6/29 9:32)


【東京新聞・社説】

元長官逮捕 背後に何があったのか

2007年6月29日

 なんとも謎の多い事件である。元公安調査庁長官がかつての監視対象だった朝鮮総連中央本部の売却話にからんで詐欺の疑いで逮捕された。背後に何があったのか明らかにしてほしい。

 「中央本部の差し押さえを防ぐため三十五億円で売買契約を結んだ」

 公安庁の元長官だった緒方重威(しげたけ)容疑者は、朝鮮総連中央本部の土地・建物の購入が表ざたになったとき、こう説明した。

 ところが、東京地検特捜部による逮捕容疑は詐欺罪だった。朝鮮総連側に代金三十五億円を支払うつもりがないのに、自らが社長を務める「ハーベスト投資顧問」に土地・建物の所有権を移転させ、だまし取った疑いだという。

 こんな手口で法の網をくぐろうとしたのなら、お粗末としか言いようがない。緒方容疑者は公安庁長官だけでなく、最高検公安部長や高検検事長も歴任している人物だ。

 今回の事件は司法機関や情報機関の信用にも深くかかわる。複雑な売買契約までの経緯や背景。売買代金とは別に億単位の金が総連側と元長官との間で動いたともいわれる。不可解な部分が多い。闇の部分にも光を当ててほしい。

 もともと、この事件は謎が多い。

 まず元公安庁長官と朝鮮総連との取り合わせが奇妙だ。朝鮮総連は、破壊活動防止法に基づいて公安庁の調査対象になっている。

 この売却話は、在日朝鮮人系の朝銀信用組合の不良債権をめぐり、整理回収機構が二〇〇五年、朝鮮総連に六百二十七億円の返済を求めて提訴したことに発端がある。

 東京地裁は、さる十八日に全額の返済を命じた。個人・法人名義の六百億円余は実質的に総連への貸し付けと認定したからだ。

 この巨額な資金の返済のめどはたっていない。本国の北朝鮮への送金、総連直轄事業の失敗の穴埋めなどに使われたともいわれているが、真相は不明のままだ。

 緒方容疑者はこうした経過を最もよく知る立場にあった。「中央本部には北朝鮮の大使館的役割があり、在日朝鮮人の権利保護が必要」(緒方容疑者)というきれい事でないこともよく知っているはずだ。

 また、朝鮮総連の最高実力者といわれる許宗万責任副議長は、取引仲介者らに数億円を提供したといわれる。中央本部の差し押さえを回避するためだろうが、総連のかかわりも謎のままである。

 今回の売却話を解明することは、朝鮮総連にもまつわる不可解な部分を解くことにもつながる。

宮沢元首相死去 また一人消えた良識派

2007年6月29日

 二十八日死去した宮沢喜一元首相は、戦後自民党一党支配下の最後の内閣総理大臣であると同時に、ハト派政治家の代表格でもあった。故後藤田正晴氏に続いて良識派政治家がまた一人減った。

 宮沢氏を形容して「ハト派」「護憲」「戦後政治の証人」「良識派」「秀才」などの表現が使われた。

 同氏は旧大蔵省の官僚時代に故大平正芳氏(元首相)とともに池田勇人蔵相の秘書官となり、サンフランシスコ講和会議に吉田茂首相に随行するなど、戦後政治の枠組みづくりに深くかかわった。吉田首相の特使となった池田氏に随行し、日本の防衛力整備をめぐる池田・ロバートソン会談の通訳を務めた。当時の経緯を記録した宮沢氏の著書「東京-ワシントンの密談」は、戦後政治の裏面史を物語る名著である。

 学生時代に渡米したこともあり終始親米とみられたが、戦後の占領時代を回顧して宮沢氏は「あんなに悔しかった時代はない」とも語っていた。単なる親米ではなく、福沢諭吉の「独立の気概」を大事にするという点では、骨っぽさを持った「親米・ハト派」だった。

 「平和憲法」「議会制民主主義」「軽軍備」「自由主義経済」を柱とする吉田政治の保守本流路線を終生尊重した宮沢氏にとって、近年の小泉、安倍両内閣における改憲ムードの加速は、苦々しいものだったに違いない。宮沢内閣当時の一九九二年にPKO(国連平和維持活動)協力法の制定にかかわったのはハト派宰相としては歴史の皮肉だったが、「海外での武力行使は、いっさいしないというのが現憲法の原点だ」との姿勢を晩年まで貫いた。

 九一年、首相の座に就いたときは「生活大国」づくりを掲げたが、政策の具体化を手がける前に金丸信自民党副総裁への五億円献金事件など政治腐敗についての対応に追われ、内閣不信任決議案の可決-小沢一郎グループの離党-総選挙敗北で自民単独政権最後の首相となった。

 首相退陣後に自ら会長を務めていた宏池会を加藤紘一氏に譲ったが、結果的に派閥の分裂を招いた。「知の政治」においては大きな功績を残した半面、「力の政治」では十分な実績を残せなかったのが宮沢政治の実像だったろう。

 戦後六十二年にして政治に限らず、日本社会全体が保守化、右傾化している中で、いま本当に必要なことは、戦後民主主義の良さを継承し、悪い点を是正していくという冷静な論議である。そのような時に宮沢氏のような良識派政治家を失ったことは、損失といわざるを得ない。

【東京新聞・筆洗】2007年6月29日

 朝のNHK国際ニュースを見ていたら、十年務めた英国首相の座を明け渡したトニー・ブレア氏の官邸からの引っ越し風景を流していた。その後、番組は、BBCなど共同制作のドキュメンタリー『フセイン裁判』に変わる。なんとも皮肉な取り合わせ▼天才政治家と謳(うた)われたブレア氏にとって、命取りはイラク戦争だった。その後始末は、サダム・フセイン元大統領の極刑をもってしても、収拾にはほど遠い。各国政治指導者の行く末に思いをはせていたら、午後になって宮沢喜一元首相の訃報(ふほう)が飛び込んできた▼八十七歳なら、天寿を全うといえるのだろうが、改憲を宣明する安倍政権の強引な国会運営さなかに、自民護憲派リーダーの退場はこれも時代の流れか▼夕方になって、朝鮮総連本部ビルの差し押さえと競売逃れを仲介した元公安調査庁長官、緒方重威弁護士が詐欺容疑で逮捕のニュースも流れた。国の滅亡に立ち会った自らの引き揚げ体験まで語り、在日朝鮮人の拠(よ)り所を守ってやりたかったという会見での弁明は、カネもうけの隠れみのだったか▼ブレア氏の雄弁はクリントン米前大統領とともに天賦の才だろう。窮地に立たされても、リーダーの口舌一つで劣勢をはね返せるのは、さすがシェークスピア劇のお国柄だ。ブレア氏の最後の議場あいさつは「これでおしまい」と一言。死刑論告求刑を聞いたフセイン元大統領の「上出来だ」と好一対▼国会論戦を見ても、日本の政治リーダーのは聴くに堪えない。教育改革はまず政治家の国語力強化から始めてほしい。


【河北新報・社説】

緒方元長官を逮捕/経歴利用の詐欺行為だ

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の土地取引をめぐる事件で28日、詐欺の疑いで元公安調査庁長官の緒方重威容疑者が逮捕された。
 北朝鮮や朝鮮総連などの情報を収集する公安調査庁の元トップが、よりによって総連の土地を詐取しようとしたことになる。緒方容疑者は否認しているが、同時に逮捕された元不動産会社社長らとともに、最初からだますつもりで総連側に接近した疑いも浮上している。

 仙台高検などの検事長を務めた緒方容疑者にとって、犯罪行為と商行為の区別ができないわけはないだろう。公安調査庁や検察庁への信頼にもかかわる。なぜ、怪しげな土地取引にのめり込んでいったのか、東京地検特捜部は詳しく解明すべきだ。

 朝鮮総連本部の土地(東京都千代田区)をめぐる事件は、最初から不可解だった。
 35億円の売買代金が支払われないまま所有権が移転登記されたが、普通の取引では考えられないことだろう。買ったのは緒方容疑者が代表取締役の投資顧問会社で、もともと自己資金があったわけではない。投資を募って資金を調達しようとしたが、結局は集まらなかったという。

 朝鮮総連の土地が通常の商取引の対象になるのかどうかは、そもそも怪しかった。
 総連に対し整理回収機構は2005年、約630億円の支払いを求めて提訴した。破たんした在日朝鮮人系信用組合の不良債権の中には、実質的に総連への融資分があったとの理由だった。

 この訴訟で負ければ、土地などを強制執行される可能性があるのは以前から分かっていたことであり、そんな土地に大金を投資する人物が果たしているのだろうか。

 実際、今月18日の東京地裁の判決では、総連が支払いを命じられている。
 これまでの経過をたどれば、逮捕された元不動産会社社長が総連側代理人の土屋公献・元日弁連会長と緒方容疑者を引き合わせ、土地の売買交渉が始まったという。

 総連からは4億円以上が元不動産会社社長に提供されており、さらに元社長から緒方容疑者に1億円が渡ったことも分かっている。
 緒方容疑者らはその肩書なども利用して最初から総連の土地をだまし取ろうと計画し、所有権を移転させたとみなされても仕方はないだろう。
 事件が表面化してから登記は戻されたが、既に億単位の金も動いており、立件されるのは当然だ。

 緒方容疑者は当初、土地売買の理由について「朝鮮総連には大使館的な役割もある」「在日朝鮮人の権利保護のため」などと話していた。だが逮捕容疑では逆に、助けるはずの総連をだましたことになる。悪質な不動産ブローカーの手口だろう。
 元不動産会社社長らとの密接なつながりが事件の要因になったのかもしれないが、決して越えてはならない線を自ら越えていたのは確かだ。
2007年06月29日金曜日

【河北新報・河北春秋】

 開けたビニール袋から、あんパンをほお張る。その姿に似ていることから、シンナー吸引行為に付けられた俗称が「アンパン」。甘さなどない苦さだけが後に残る姿なのに▼それをもじった「ガスパン遊び」。法規制があるシンナーに代わり制汗スプレーやライター用ボンベなどのガスを袋にためて吸う。1990年前後から中高生の間に広がった

 ▼ 仙台市宮城野区のアパート爆発事故で重軽傷を負った中学3年の男女6人もガスを吸っていたらしい。たばこも吸い、その火がガスに引火した可能性があると警察はみている▼ガスの主な成分はブタン。空気より重いため肺にたまると酸素が欠乏する。脳を巡る血液の酸素不足から幻覚を見るほど意識が薄れ、窒息死する場合がある。燃えやすいのも特徴という

 ▼遊びではすまされない命にかかわる危険な行為。96年には全国で少年16人が死亡している。が、警察白書が警告したのはその報告である97年版だけ。「遊び」が潜行していた証しといえ、その怖さをあらためて訴える必要がある▼西洋では好奇心といえば猫を連想する。見るものすべてにちょっかいを出すからだが、災いも招くため「好奇心は猫をも殺す」と戒める。何にでも興味を抱く10代。好奇心は時に危険と隣り合わせであることを忘れないで。

2007年06月29日金曜日


【京都新聞・社説】

採決強行  何のための会期延長か

 延長国会が始まったのもつかの間。もう大詰めらしい。
 安倍晋三首相が重視する社会保険庁改革法案と年金時効撤廃特例法案、それに政治資金規正法改正案が、きのうの参院委員会で可決した。きょうの本会議で成立を図る。
 与党による採決の強行だ。今国会では国民投票法案や教育関連三法案など何度も見せつけられた「数の力」の繰り返しである。政治不信を助長する。
 会期延長の「大義」となった国家公務員法改正案は、民主党が委員長ポストを握る参院内閣委での採決を見送った。与党は委員会採決を省略し、本会議で議決する「中間報告」も辞さない構えだ。
 成立にこだわる首相の強い意向を反映しているようだが、与党の国会運営はあまりに強引過ぎはしまいか。
 審議はどうだったか。首相は「十分に議論してきた」と採決を促すが、法案の中身について「深い論戦」は伝わってこない。参院選に向けた政権の実績づくりや、与野党の損得勘定だけに目が向いているとすれば、国会軽視も甚だしい。
 とりわけ年金記録不備問題では、社保庁のずさんな管理の実態が次々に発覚、後を絶たない。政府の対応は後手に回るばかりだ。日本の行政史上、例のない不祥事である。国民の年金不信、社保庁に対する怒りは収まらない。
 社保庁改革法案は、こうした問題が明らかになる前に検討された。社保庁を廃止・解体して、二〇一〇年に新たに非公務員型の特殊法人「日本年金機構」を発足させる内容である。
 不明記録などの対応には、膨大な作業が待っている。それも侵害された受給権回復という重い任務だ。長い年月、大がかりな陣容、予算が不可欠であろう。現社保庁を六分割し、スリム化することで、どこまで問題解決に対応できるのか。疑問がつきまとうのは当然だ。
 年金給付の是非を判断する第三者委員会、問題の原因と責任の所在を解明する年金記録問題検証委員会の調査・検討は始まったばかりである。
 政府は提出した法案をいったん廃案にし、両委員会の一定の報告を待って出し直すのが筋であろう。何がなんでも通す。それも修正せず「無傷で」では、冷静で誠実な対応とは言えない。
 国会の会期は十二日間延長された。七月五日までだ。きょうが会期末でもあるまい。参院選の日程を一週間ずらし、投開票日を七月二十九日(十二日公示)に先送りした異例の延長である。
 国民の理解と信頼を得るためにも時間いっぱい審議を尽くすことが大事だ。はや「店じまい」では、首相から社保庁職員までの賞与返納の動きとも絡んで、問題の幕引きと映っても仕方あるまい。
 会期延長を主導したのは首相である。「強行突破」とか「参院選での批判を沈静化させる時間稼ぎ」と批判されないためにも、国民にていねいな説明がいる。

[京都新聞 2007年06月29日掲載]

JR西事故報告  企業体質の改善を急げ

 百七人が亡くなった尼崎JR脱線事故に関する国土交通省航空・鉄道事故調査委員会の最終報告書がまとまった。
 事故の原因は、手前の伊丹駅でオーバーランした運転士が「日勤教育」を受けさせられるのではないかと懸念し、運転から注意がそれた可能性が高い、とした。
 直接的には運転士のミスに違いないが懲罰的な日勤教育やブレーキの不備を放置するなど、JR西日本の企業体質が背景にあった、と強く批判した。
 二年二カ月を費やし、千人を超す口述や情報を集め、安全軽視ともみえるJR西の企業体質まで踏み込んだ点は評価したい。
 報告書では、日勤教育の改善、ブレーキの改良、さらには人命優先の事故対応マニュアル整備や車体構造の改良なども求めた。
 JR西はトップをはじめ社員一人一人が、これらの指摘を重く受け止め、悲惨な事故を二度と起こさぬよう社内体制の改善に努めなくてはならない。
 多くの人命を預かる公共交通機関として安全確保は当然の使命であり、犠牲者や遺族に応える道は他にあるまい。
 JR西の対応に対する遺族の不信感はなお根強い。意を尽くし、丁寧に説明することだ。
 報告書には不満も残る。「JRの責任がはっきりせず、再発防止効果も疑問」とする遺族の批判に加え、国の鉄道監督行政についての検証がいかにも甘い。
 国には、懲罰を前提としない事故報告制度の推奨と、走行中の運転士の交信制限などを提言したにすぎない。
 速度を監視する最新の列車自動停止装置「ATS-P」が設置してあれば事故は防げたとしながら、安全対策として、ATS設置を義務づけていなかった国の責任には触れていないのだ。
 事故調査委は「独立して職権を行う」と法律で定められているとはいえ、国土交通省の下に置かれている。独立性が十分ではないため、「身内」へ遠慮したと指摘されても仕方あるまい。
 これを機に、米国の国家運輸安全委員会(NTSB)のような独立機関にすることを検討するべきだ。
 併せて、事故犠牲者の遺族の支援の在り方も考えたい。
 米国には、遺族のための家族支援法がある。NTSBの活動も遺族のためにという理念で貫かれ、NTSBに遺族支援を専門に担当する「家族支援局」が設けられている。
 米国の例を参考に、遺族の要望もくみながら、支援のための法整備と担当部署設置を急いでほしい。
 今後は、兵庫県警による刑事責任の追及が焦点になる。「なぜ娘は死ななければならなかったのか、真実が知りたい。最終報告書は出発点」-と言う遺族の言葉をかみしめたい。

[京都新聞 2007年06月29日掲載]

【京都新聞・凡語】

電磁波予防策は必要

 「電化製品の使い過ぎに注意を!」。やがてこんな警告が登場するかもしれない▼世界保健機関(WHO)はこのほど、電化製品や高圧送電線から出る超低周波電磁波が人体に与える影響について、「小児白血病発症との関係が否定できない」として予防的な措置を取るよう各国に勧告し、初の環境保健基準を示した▼約十年にわたる調査結果で、電磁波と健康被害の間に直接の因果関係を認めなかったが、予防策は必要、と結論づけた。おおざっぱな対応のようだが、悪影響の疑いが否定しきれない以上は、用心に越したことはないだろう▼WHOの国際会議に出席した関係者も「交通事故や喫煙に比べ死にいたるリスクは非常に低く、過敏になる必要はない」としながらも、高圧送電線や電子機器から一定距離を取ることや、妊婦が電磁調理器を使うのは避けた方がいいとしている▼通常の使用で電磁波が強いものに、ドライヤー、電気かみそり、掃除機、電子レンジなどをあげるが、暮らしのなかでなじみのものばかりだ。使うたびに「健康に悪影響」と思っていては気がめいる▼使用の目安がほしいが、環境保健基準は対策を講じた国を紹介しただけで具体的規制値を示さなかった。自主的対応を重んじたに違いない。来年は携帯電話など高周波電磁波の影響も公表の予定だ。政府も腰の引けた対応では許されない。

[京都新聞 2007年06月29日掲載]


【朝日・社説】2007年06月29日(金曜日)付

社保庁改革―これでは見切り発車だ

 社会保険庁を解体して非公務員型の公法人にするための改革法案が、参院の委員会で可決された。野党側は反発しているが与党は押し切り、今日にも成立する方向だ。

 しかし、社保庁の長年にわたるずさんな管理のため宙に浮いたり消えたりした年金記録の問題は、いまだに全体像すら解明されていない。

 膨大な記録を正しい状態へ直す作業も、どうしてこんなことになったのかという原因と責任の追及も、これから始まろうという段階である。

 過ちの全体像とその原因をはっきりさせてから、二度と再発させない組織と運営方法を考えるべきだと私たちは主張してきた。法律の成立を優先させたのは、見切り発車といわざるを得ない。

 可決を強行した安倍首相は、年金記録の照合・修正と、原因の究明と、新しい組織の詳細設計という三つの作業に、同時並行で取り組まねばならない。

 年金記録を照合し、漏れていたものを救済するには、コンピューターで自動的に名寄せするだけでは済まない。最終的には市町村が持つ手書きの原簿との突き合わせも必要だ。

 組織を解体し人員を削減しながら、その作業をどのように進めるのか。安倍首相は「最後の一人まできちんと払う」と胸を張るからには、工程表をまず明らかにしてもらいたい。

 法律成立を受け政府は、内閣に第三者機関を設ける。新しい公法人が自ら行う業務と民間に委託する業務を振り分け、定員などを決める作業に入る。

 政府はもともと、新組織へ移す職員を減らすリストラを狙っていた。だが、法案提出後に記録の不正が発覚した。

 したがって、今後は再発防止を最重点に新組織を設計すべきだ。今回、年金の記録をきちんと管理することが極めて重要であることが分かった。百年単位の運用に耐えるにはどうしたらいいのか。知恵をしぼる責任がある。

 公的な年金である以上、何か不都合が生じれば、最後は国が全責任を負うことを明確にしておくべきだ。そうでなければとても安心できない。

 再発防止のために、加入者の払った保険料が一目で分かる通帳方式や、医療や介護保険と一体となった社会保障番号などが提案されている。これらは混乱の中で拙速に決めることは避け、中期的な課題として検討すべきだろう。

 それにしても、安倍首相は「宙に浮いた年金記録」の存在を、昨年末から今年の初めに知らされていたという。

 なのに、2月に民主党から追及され、「年金不安をあおる危険がある」と反論していた。握りつぶそうとしていたと思いたくなるほど後ろ向きだった。

 安倍首相は「私がいちばん大きな責任を背負っている」という。その言葉どおりに、7月末の参院選では政府・与党の対応のすべてが問われるに違いない。

総連本部売買―元公安長官が詐欺容疑とは

 「本部は北朝鮮の大使館としての機能を持っている」と在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)を守るようなことをいい、購入代金が集まらなかった時には「だまされたとは言いたくないが、乗せられた」と語っていた。

 その元公安調査庁長官の緒方重威弁護士が、朝鮮総連中央本部の土地と建物をだまし取ったという疑いで、東京地検に逮捕された。

 犯罪を摘発する検察官として、高検検事長まで上りつめた人物である。本人は否認しているが、詐欺容疑と聞いて、驚きとともに憤りを感じる。検察官の信頼を失墜させる事態だ。東京地検は捜査を尽くして、事件の全容を解明してもらいたい。

 一連の中央本部の売却問題は、発覚当初から驚きの連続だった。

 東京都千代田区にある中央本部の土地と建物の所有権が、投資顧問会社に移転登記されていた。その会社の代表取締役が、総連を調査対象としている公安庁のトップを務めた人物だった。

 さらに取引の内容にも疑惑が生じた。移転登記をしたにもかかわらず、購入代金は支払われていなかった。競売を逃れるための偽装売買の疑いが持たれた。

 元長官だけではない。売り手の朝鮮総連に加えて、総連の交渉窓口となった土屋公献・元日弁連会長にも疑惑の目が向けられた。

 ところが、検察の描いた事件の構図はまったく異なった。

 元長官と仲介役の不動産会社元社長らが「いい買い手が見つかった」と総連側にうその売買話を持ちかけて、土地と建物をだまし取ったというのだ。総連側は詐欺の被害者ということになる。

 朝鮮総連は在日朝鮮人系の朝銀信用組合から融資を受けた627億円の返済を求める訴訟を、整理回収機構から起こされていた。総連側は競売にかけられるのを避けるため、売却後も立ち退かずにすむことができる買い手を探していた。

 元長官らはそうした朝鮮総連の弱みにつけ込んだことなる。

 とはいえ、まだ謎がいくつも残る。

 もともと出資者がいなければ、総連に売買代金を払うことができず、だましたことはいずればれる。事件や法律に通じているはずの元長官がなぜ、そのようなことに手を染めたのか。

 総連側から元社長らに渡ったとされる約4億8000万円はどこに流れたのか。

 捜査の流れとは別に、朝鮮総連の苦境はいっそう深まっている。裁判の敗訴を受けて、整理回収機構から中央本部の土地と建物の競売を申し立てられた。

 朝鮮総連の象徴だった中央本部が立ち退かねばならない可能性が強まった。

 だが、もとはといえば、今回の事件も、朝鮮総連がなんとか居座ろうと無理を重ねたことが背景にある。

 ここは現実を認めて、新たな拠点を探し、出直した方がいい。

【朝日・天声人語】2007年06月29日(金曜日)付

 大正の流行作家、田村俊子の代表作に「木乃伊(みいら)の口紅」がある。一人の女性が夢で、唇に鮮やかな紅をさしたミイラを見る話だ。言われてみればミイラは、冷徹な「死」の中にも「生」を引きとめて離さない、不思議な表情を持っている。

 エジプトで確認されたハトシェプスト女王のそれも、幽明の境に漂うような、生の名残を宿している。紀元前15世紀に栄華を極めたという女帝である。「ツタンカーメン王以来の重要な発見」と考古学界は興奮気味らしい。

 ツタンカーメンの墓を1922年に発見した英国の考古学者カーターらが、それより前の03年に発見していた。だが誰だかわからず、1世紀余を身元不明で過ごしてきた。DNA鑑定の進歩によって素性が明らかになった。

 「この光景を前にしては、人間のはかない命を基準にした時間など展望を失ってしまう」。ツタンカーメンの棺を開けたカーターの回想である。古代エジプト人は霊魂の不滅を強く願った。その宿る所として、肉体にも永遠を与えようとした。

 カンヌ国際映画祭で受賞した河瀬直美監督の「殯(もがり)の森」を思い起こす。殯とは、死者の本葬前に霊の復活を願いつつ鎮める、古代日本の風習だった。河瀬さんは、殯という「死者と生者の間にある結び目のような時空」を、深い森に求めて、現代の物語を撮った。

 女王は3500年のあいだ霊魂を待ち続け、死者として存在してきた。それ自体が「結び目」のようなものだろう。荘厳さの漂う面ざしには口紅よりも、王冠の方が似合うようである。


【毎日・社説】

社説:緒方元長官逮捕 総連本部売買の真相解明を

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の土地・建物が登記上売買された事件は、元公安調査庁長官の緒方重威(しげたけ)容疑者(73)逮捕という衝撃的な事態に発展した。公安調査庁のトップを務め、検事長も歴任した大物検察OBが事件にどうかかわったのか、東京地検特捜部は早急に真相を解明することが求められる。

 特捜部に詐欺容疑で逮捕されたのは、緒方元長官と、売買取引を考案したとされる元不動産会社社長、資金調達役を務めたとされる元銀行員の計3人。3人は、東京都千代田区にある朝鮮総連中央本部の土地・建物について、売買代金を支払う意思も能力もないのに、緒方元長官が代表取締役を務める投資顧問会社に所有権移転の登記をすれば売買代金の35億円を支払うとうそをつき、今月1日に登記してだまし取った--というのが逮捕容疑である。

 特捜部は、朝鮮総連側を被害者と見立て、だまされた直接の当事者を朝鮮総連代理人を務める元日本弁護士連合会会長の土屋公献(こうけん)弁護士らと認定した。当時、整理回収機構から約627億円の返還請求訴訟を起こされていた朝鮮総連が、中央本部の土地・建物を差し押さえられるのを避けるために売却先を探していたことに、緒方元長官らが乗じた、というのが特捜部の描く構図だ。

 確かにこれまでの経緯を見ると、緒方元長官の言動には不自然な点も少なくない。元長官は記者会見で「中央本部は在日の権利擁護の拠点。存続し続けることは日本の国益になる」「大義のために引き受けた」と正当性を強調した。しかし、元長官が会見で「出資予定者」と説明した男性については「1度だけ会ったが、名刺はもらわなかった。姓は分かるが、名は分からない」などと、常識では通らない弁明を重ねた。

 さらに、この男性は実際には代金を払うめどが最初からなかったという。捜査が始まった後、緒方元長官は「男性が金を出す意思を見せ、それを信じたことにしよう」と、元不動産会社社長や元銀行員と口裏合わせをしていたとされる。だとすれば、悪質な証拠隠滅行為と言わざるを得ない。

 特捜部の捜査は、毎日新聞の報道で最初にこの問題が明らかになってから、わずか半月で緒方元長官の逮捕にこぎ着ける急ピッチの展開だ。朝鮮総連を調査対象とする公安調査庁の元トップの関与に政府内の批判が高まる中、法務・検察が早急に決着を図ろうとする「組織防衛」の側面も感じられる。特捜部には、政治的な捜査と疑われることのないよう、事件の徹底解明を望みたい。

 被害者とされる元日弁連会長も含め、法曹界の重鎮が不透明な売買取引にかかわったことに、国民の司法への信頼は大きく揺らいだ。緒方元長官が事件に関与した動機は何か、これによって不当な利益を得ているのかなど、まだ不明な点はたくさんある。特捜部はそうした数々の疑問点を解明し、事件の全容を国民の前に明らかにしてほしい。

毎日新聞 2007年6月29日 東京朝刊

社説:宮沢元首相死去 最後までハト派の象徴だった

 宮沢喜一元首相が28日、87年の生涯を閉じた。戦後保守政治の生き証人でありハト派の代表的な政治家だった。また堪能な英語をはじめ思想、哲学などに通じ、「政界の知性派」が宮沢さんの代名詞だった。

 折しも安倍晋三首相が登場し、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を訴えている。首相の手で教育基本法が改正され、国民投票法も成立した。集団的自衛権の見直し論議も進んでいる。

 首相が壊そうとしている、この戦後日本のレジーム作りに参画した人物こそ宮沢さんだった。

 宮沢さんは憲法9条改正に慎重で、自衛隊のイラク派遣にも強く反対した。小泉純一郎前首相の靖国神社参拝にも「おやめなさい」と苦言を呈していた。今後、国民が向かうべき目標を聞かれ、即座に「心がけることは軍事大国にならないことです」(聞き書 宮澤喜一回顧録)と答えている。

 安倍政治に対しては病床で気が気ではなかったのではないか。自民党のリベラル色が薄まる状況だからこそ、政権に対する直言が聞きたかった。

 宮沢さんの政治人生を振り返れば四つの時代に区分できよう。

 まず戦前に旧大蔵省に入省、敗戦を経て蔵相、首相を務めた池田勇人氏の側近として戦後の国造りにかかわった時代。

 51年にはサンフランシスコ講和会議に全権随員として出席。53年の「池田・ロバートソン会談」にも同行し、「軽武装・経済優先」という戦後政治の基礎作りに加わった。脇役ながら大いに輝いた時代でもあった。

 第2期は首相になるまで。池田氏の死後、同氏が作った自民党派閥「宏池会」のプリンスとしていつかは首相になると言われた。しかし常に政治家としてのひ弱さが指摘され、91年にトップの座に就いたがすでに72歳になっていた。

 第3期は首相時代だが、必ずしも国民の期待には沿えなかった。バブル崩壊後の景気の低迷や日米経済摩擦に悩まされた。後になって、この時になぜ不良債権処理に当たらなかったのかと責められることになった。

 国連平和維持活動(PKO)協力法を成立させ、自衛隊を海外派遣する道を開いた。海外派遣に慎重だった宮沢さんには皮肉なめぐり合わせだった。カンボジアPKOの選挙監視をしていた文民警察官の高田晴行さんが死亡したことには晩年まで責任を感じていた。

 時代の変化に対応できなかったことも事実だ。政治改革を実現するとの公約を果たせず、政権から転落。38年に及ぶ自民党一党支配を終えんさせる結果となった。

 第4期は首相退陣後だ。いったんは表舞台から消えたが小渕内閣で蔵相、森内閣では初代の財務相を務めた。

 病床では分裂した宏池会の合併問題を気にしていたという。体調のよい時を見計らって派閥の後輩である古賀誠氏や谷垣禎一氏の訪問を受け、「そうなさったら」などと相談に乗っていた。最後までハト派の象徴的な存在であった。

毎日新聞 2007年6月29日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:「日本政府は講和後の米軍の駐留を依頼してもいい」…

 「日本政府は講和後の米軍の駐留を依頼してもいい」。占領下日本の吉田茂首相の極秘メッセージが米国政府に伝えられたのは1950年5月3日だ。戦後の日本の運命を決めたこの出来事は、訪米した当時の池田勇人蔵相に随行した宮沢喜一さんの証言で世に知られた▲この訪米で2人は1日7ドルの安ホテルのツインルームで日本酒を酌み交わす。洗面器に湯をくんで燗(かん)をつけたが、米国は蛇口から湯が出る国と改めて感心したというのも宮沢さんの話だ。安ホテルは被占領国だからと米国側が選んだという▲この日から日米同盟と平和憲法の二つの軸をもつ戦後日本の歩みが始まった。宮沢さんはその後ずっとこの歩みの歩幅と方向を決める現場に立ち続ける。戦後保守本流と呼ばれる経済優先、日米基軸、専守防衛の政治路線は、日本の経済大国化と共にやがて宮沢さんによって代表された▲それが戦後55年体制下の自民党長期政権の幕引きをつとめる首相となり「自民党の徳川慶喜」という役回りを果たしたのは、歴史の女神の皮肉なのか。戦後保守政治の負の資産である政治とカネをめぐる国民の政治不信を引き受けての退場は、いかにも運命的なめぐり合わせであった▲良くも悪くも話題となったのはそのエリート主義である。英字紙を読む宮沢さんに「日本語を読め」と言って「国会議員だからあなたも英字紙を読みなさい」と言われたのは浜田幸一氏だ。一方で84年に暴漢と渡り合った後に「政治家をなめてはいけない」と語った度胸と気迫も忘れられない▲英語で名高い宮沢さんだが、政治の基本を示すのには「王道」という言葉を好んで使った。戦後というまっさらな時代に、自らの信ずる王道をつき固め、信ずるままに歩んだ生涯だった。

毎日新聞 2007年6月29日 東京朝刊


【読売・社説】

緒方元長官逮捕 総連事件の闇を徹底解明せよ(6月29日付・読売社説)

 「架空取引ではない」としきりに強弁してきたが、通るはずもなかった。

 公安調査庁の緒方重威・元長官が東京地検特捜部に逮捕された。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の東京・千代田区にある中央本部の土地と建物を、総連側からだまし取ったとする詐欺容疑である。

 法務省外局の情報機関である公安調査庁は、北朝鮮、朝鮮総連の動向も主要な調査対象としている。そのトップだった人物が、朝鮮総連がらみの事件で逮捕されるという異例の展開だ。

 特捜部によると、緒方容疑者は中央本部を35億円で購入するとみせかけ、緒方容疑者が代表の投資顧問会社に所有権だけ移転させたという。

 しかし、朝鮮総連は単なる被害者の立場なのか。この売買を仕組んだのは、もともと総連側で、総連側の誘いに乗ったのが緒方容疑者だとみられていた。

 実質的に総連の最高責任者とされる許宗萬・責任副議長が自ら関与していたという構図だった。

 許氏は北朝鮮の国会議員である最高人民会議の代議員も務めるなど、本国と密接なつながりを持つ人物だ。

 加害者と被害者の関係が、逮捕容疑のような単純なものなのか。総連側に違法性はないのか。特捜部には、全容を徹底的に解明してもらいたい。

 そもそもの発端は、破綻(はたん)した朝銀信用組合の債権を引き継いだ整理回収機構が朝鮮総連を相手取り、約627億円の返還を求めて起こした訴訟である。

 総連全面敗訴の判決が今月18日に東京地裁で出たが、この判決を前に、総連は中央本部が差し押さえられるのを逃れようと企て、緒方容疑者が買い取った形にして、5年後に買い戻す念書まで交わしていたとされる。

 朝銀信組の破綻処理では1兆円以上の公的資金が投入されている。整理回収機構が総連を訴えたのも、この国民負担を少しでも軽くするためだ。総連は返済義務を忠実に果たそうとせず、機構の作業を妨害しようとしたのではないか。

 35億円の仲介役とされる元不動産会社社長らも共犯の容疑で逮捕されたが、この仲介役には総連から4億8400万円の資金が支払われている。こうした資金の流れや許氏の動きなど、まだ不明な部分があまりに多い。

 東京地裁は、整理回収機構の申し立てを受け、中央本部について強制執行を認める決定を出した。もともと、総連の乱脈運営が招いたことである。整理回収機構も、中央本部を含め、総連からの債権回収を着実に進めてもらいたい。
(2007年6月29日2時15分  読売新聞)

宮沢元首相死去 戦後政治の「生き証人」だった(6月29日付・読売社説)

 華やかな政治経歴が、戦後政治史と重なり合う。「戦後政治の生き証人」だった。

 1991年11月から93年8月まで首相の座にあった宮沢喜一元首相が死去した。

 池田勇人蔵相(後に首相)の秘書官時代に全権団随員としてサンフランシスコ講和会議に出席し、その後、政界に転出した。首相就任まで、経済企画庁長官、通産相、外相、官房長官、蔵相などの要職を務め、日本の政治意思決定の中枢にかかわり続けた。

 宮沢氏は、日本の主権回復と国際社会への復帰、戦後復興から高度成長、経済大国への歩みを通じ、吉田茂元首相直系の保守本流にあって、「軽武装・経済主義」の立場を貫いた。生涯、変わることのなかった政治的な立脚点である。

 国際派、知性派、有数の政策通として「ニューライトの旗手」「ニューリーダーの一人」などと称された。政界のプリンスとして「いつかは総理に」は、衆目の一致するところだった。

 だが、実際に首相となって、政治家としての頂点を極めた時は、72歳だった。時代は、冷戦の終結、バブル経済の終焉(しゅうえん)で、内外とも激動期を迎えていた。既に、宮沢氏の時代ではなく、遅すぎた首相就任だったのだろう。

 自らの首相退陣が、自民党の長期政権からの転落、55年体制の崩壊と重なったのは、皮肉なことだった。

 宮沢氏は、よく「王道と覇道があるが、自分は覇道は取らない。首相にはなろうとしてなるものではない」と語った。何度も首相候補に挙げられながら、権力欲の薄さが災いし、機会を逸した。

 「自分で泥をかぶろうとしない」「冷静な合理主義者」と評された面が、指導者として、政治課題の解決への強いリーダーシップを欠くことにもなった。

 首相時代、バブル崩壊で銀行に巨額の不良債権が発生したことについて問題提起しながら、事態の解決へ、具体的な対策を講じようとしなかった。これが、平成不況を長期化させ、一層深刻なものとすることになった。

 未曽有の経済危機のさなか、98年に発足した小渕内閣で、宮沢氏は請われて蔵相に就任した。戦前、同様に首相を経験した後に蔵相となって金融恐慌を乗り切った高橋是清の先例から、「平成の高橋是清」とも言われた。だが、在任中に危機克服は、成らなかった。

 今、安倍首相は「戦後レジームからの脱却」を掲げている。戦後レジームを体現した政治家とも言える宮沢氏は、生涯の終わりに、この時代の政治の姿に、どんな思いを抱いていただろうか。
(2007年6月29日2時16分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月29日付 編集手帳

 宮沢喜一氏が次代の首相候補に数えられていたころ、ある財界人が別荘で静養中の氏を訪ねた。通された部屋のソファに雑誌が置いてあった。宮沢氏は腰をおろすとき、隠すようにそれを尻に敷いた◆ちらりと目をかすめた表紙は写真週刊誌のようであったという。政界きっての政策通、知性派で知られ、英字新聞を読む姿が誰よりも似合った人は、自身のイメージが傷つくのを嫌ったのかも知れない◆のちに首相となって金融危機の到来にいち早く気づき、公的資金を投入する必要を真っ先に訴えながら、官庁や経済界の反対に遭うと投入論を引っ込めた。飛び切り鋭い頭脳と、先を見通す眼光をもちつつ、図太(ずぶと)い神経とは無縁であった人の一面を、別荘のひとこまに重ねることもできる◆宮沢元首相が87歳で死去した。小渕内閣のもとで恐慌寸前の経済危機に際し、首相経験をもつ大物蔵相「平成の高橋是清」として登場したときの、重厚な風姿は忘れがたい◆そうして編成した型破りの積極予算を宮沢氏は、「大魔神(抑えのエース、佐々木主浩投手)をいきなり投入したような」と自評した。氏自身もまた、ベンチにデンと座る監督よりも、絶体絶命のピンチに登板する「大魔神」が似合う政治家であったのだろう◆その眼光を借りたくとも、繊細な神経の救援投手はもういない。
(2007年6月29日2時14分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】元長官逮捕 総連との関係も解明せよ

 朝鮮総連中央本部の土地・建物をめぐる仮装売買事件で、東京地検特捜部は元公安調査庁長官、緒方重威容疑者ら3人を詐欺容疑で逮捕した。予想されたこととはいえ、北朝鮮などを監視する日本の情報機関の元トップが逮捕されたことは衝撃である。

 緒方容疑者は資金調達の見込みがないのに可能であるかのように装い、総連中央本部の土地・建物をだまし取ったとされる。この詐欺容疑に関しては、総連は被害者である。しかし、売買そのものは、整理回収機構(RCC)から627億円の返還を求められていた総連の中枢が、強制執行を免れるために計画した疑いが強い。総連の関与も徹底解明されるべきである。

 緒方容疑者とともに逮捕された満井忠男容疑者は、住宅金融債権管理機構による差し押さえを免れるために財産を隠した強制執行妨害罪に問われ、有罪判決を受けている。緒方容疑者はその裁判で、満井容疑者の弁護士を務めた。今回の総連中央本部の仮装売買に通じるものがあり、この点からの2人の関係解明も必要だ。

 公安調査庁は破防法施行に伴い、法務省の外局として設置された行政機関である。北朝鮮や総連以外に、過激派やオウム真理教(アーレフに改称)の動向など国内外の公安情報を収集する重要な役割を担い、その情報は内閣にも上げられる。

 緒方容疑者はそのトップとして公安庁内の最高機密を把握できる立場にあった人物だ。検察庁では最高検公安部長、広島高検検事長などを歴任し、公安庁では北を重点的に監視する調査第2部長も務めた。

 その元公安庁長官が監視対象の朝鮮総連への強制執行を免れる行為に手を貸していたこと自体、公安庁の信頼を失墜させる行為である。

 緒方容疑者は公安庁長官時代の平成6年の衆院予算委員会で、朝鮮総連について「北朝鮮と一体関係にあると見ている」「非公然組織『学習組』約5000人が非公然活動に従事していると承知している」などと踏み込んだ答弁をしていた。

 検察エリートでもあった元長官がなぜ、朝鮮総連と深いかかわりを持つようになったのか。検察当局はこの深い闇を明らかにすべきだ。

(2007/06/29 05:07)

【主張】TBS株主総会 楽天は矛を収める潮時だ

 楽天はTBSとの戦いの矛を収めるべきときが来たのではないか。買収防衛策導入の是非などをめぐり、両社が委任状争奪戦を繰り広げた末に行われたTBSの株主総会はTBSの圧勝に終わった。

 TBSの全提案は可決され、防衛策導入は出席株主の議決権の77・1%の賛成を得た。楽天の保有比率は19・86%だ。他の株主の賛同はほとんど得られなかったのである。

 楽天の三木谷浩史会長兼社長は、結果をどう受け止めているのだろう。一昨年10月、楽天はTBS株の15%超を取得、経営統合を提案した。放送とインターネットを融合し、世界に通用するメディアグループをめざすというのが三木谷氏の説明だった。

 これに対し、TBSは「事前連絡もなく、短期間に大量の株式を取得され、唐突」と強く反発した。三木谷氏が楽天のオーナー経営者であることから、個人が間接的にテレビ局を支配する構図への危惧(きぐ)もあった。

 楽天は経営統合案を撤回、約1年半の提携協議も成果をあげることができず、今年4月、今度は出資比率20%超まで株式を買い増すと通告した。TBSは買収防衛策導入を株主総会に提案し、楽天はこれに対抗して防衛策発動要件の厳格化を提案したのだった。

 楽天は株の買い増しを断念していない。TBSの防衛策発動が決まれば、法廷闘争に持ち込むとみられる。

 しかし、これ以上TBSに固執するメリットが楽天にはあるのだろうか。放送業界とネット業界の提携は活発化している。だが、それは特定の放送局とネット企業が緊密な関係をつくるのではなく、内容次第でさまざまな企業、放送局が手を組んでいるのだ。

 楽天はTBSと提携して何をめざすのか、放送とネットの融合構想を示し得ていない。総会は三木谷氏自らが説明する格好の場と期待されたが、欠席した。これではTBSの株主、社員、視聴者らの理解は得られまい。

 TBSとの攻防の間に楽天の時価総額は約5000億円目減りし、ほぼ半分になった。これは楽天の株主も、TBSとの攻防の長期化を望んでいない証左ではないか。TBSと楽天の関係が今後急速に改善する可能性は低い。三木谷氏はTBSから離れ、戦略転換を図るべきである。

(2007/06/29 05:07)

【産経抄】

 さぞ、ドラえもんも仰天しているだろう。「押し入れに入れれば、ドラえもんが何とかしてくれると思った」。広島高裁で始まった山口県光市母子殺害事件の差し戻し審で、こんな証言が飛び出した。

 ▼ 本村弥生さんと生後11カ月の夕夏ちゃんが、当時18歳の少年に殺されたのは、平成11年4月のこと。殺人罪などに問われた被告が、2人の遺体を押し入れと天袋に入れた理由を語ったものだ。のび太のように、ドラえもんがポケットから取り出す秘密道具の力を借りるつもりだったのか。

 ▼そこはドラえもんが寝床にしていたのび太の部屋の押し入れではない。常軌を逸した発言はこれにとどまらない。弥生さんを乱暴するのが犯行目的と検察側は主張するが、被告は「弥生さんを通して(亡くなった)母を見ていた」「甘えるつもりだった」と否認した。

 ▼極めつきは、弥生さんの遺体に性的暴行を加えたことへの弁明だ。「生き返ってほしいという思いだった」。伝奇小説のなかにあった死んだ女性を復活させる儀式をまねたというのだ。

 ▼ そもそも2審の無期懲役判決に対して検察側が上告、最高裁が2審判決を破棄して審理を広島高裁に差し戻したのは異例のこと。社会の関心を集めた裁判で、死刑廃止に熱心な弁護士たちが張り切るのもわかるが、物事には限度がある。妻と娘の遺影を抱えて傍聴する本村洋さんが「怒りを通り越して失笑」するのも当然だ。

 ▼のび太は、いつもドラえもんに依存しすぎるとの批判の声がある。「ドラえもん学」を提唱する横山泰行さんによれば、短編作品にはそんな部分もあるが、長編作品は仲間と協力して難局を克服するストーリーが目立つ。被告の自立の道はただひとつ。真実を語ることだ。

(2007/06/29 05:43)


【日経・社説】

社説1 防衛策で株主意思を尊重した東京地裁(6/29)

 異例な買収防衛策の発動を、東京地裁が認めた。ブルドックソースが株主総会で決議した防衛策は違法であるとして、米投資ファンドのスティール・パートナーズが防衛策の差し止めを求めた仮処分申請で、地裁は申し立てを却下した。スティールは東京高裁に即時抗告した。

 圧倒的多数の株主の意思を尊重し、防衛策を認めたことは妥当な判断といえよう。ただ防衛策の是非は個々の事例ごとに判断される。経営者は今回の決定を自らに都合よく解釈して防衛策を乱用すべきでない。

 スティールに敵対的TOB(株式公開買い付け)をかけられているブルドックは、今月24日の株主総会で防衛策を提案した。内容は、全株主に新株予約権を割り当てるが、スティールには新株を渡さず、その予約権を総額23億円で買い取るというものだ。スティールの持ち株比率を10%強から3%弱に下げる狙いである。総会では、出席株主の議決権で3分の2以上の賛成が必要な特別決議が成立した。

 仮処分申請でスティール側は「特定の株主を差別するのは会社法の株主平等原則に違反する」などと主張。一方、ブルドック側は「スティールが当社の事業を理解しているか疑わしく、株主共同の利益を損ねる」などと反論していた。

 地裁は株主平等の原則が重要だと認めつつ、その原則には反していないと認定した。株主総会で特別決議をして、予約権の買い取りでスティールにも経済的補償があるとの理由だ。防衛策が必要かどうかの判断は「原則として株主総会に委ねられるべき」とし、その策が違法となるのは総会の判断が「明らかに合理性を欠く」場合に限ると述べた。

 スティールは経営権を得た場合の経営方針などを明確に示していない。こうした姿勢に、東京地裁は「ブルドックの株主が企業価値を損なうとの疑念を抱くのは無理もない」と指摘。ブルドックの総会の判断が合理性を欠くとはいえないとした。

 主張の多くを認められたブルドックだが、TOBへの対応には一考の余地があったのではないか。防衛策を用いなくても、スティールのTOBに応じるかどうか株主の判断に任せるという選択肢もあったためだ。

 決定をみて、他社の経営者は「特別決議と買収者への経済的補償さえあれば、敵対的買収を阻止できる」などと短絡的に理解すべきでない。今後、ケースによっては違った決定が出る可能性もあろう。経営者にとっては防衛策に依存せず、企業価値を高め続けるのが王道である。

社説2 元長官らの詐欺、全容解明を(6/29)

 前代未聞の事件である。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の土地・建物をめぐる売買疑惑は、緒方重威・元公安調査庁長官らが詐欺の疑いで東京地検特捜部に逮捕されるという異例の展開となった。

 緒方元長官は広島高検検事長なども歴任した法曹界の重鎮だ。そうした人物が、かつての調査対象でもあった総連の資産をだまし取ったとして逮捕されるとは、極めて衝撃的だ。元長官は容疑を否認しているが、法曹や検察組織への国民の信頼を著しく損なう事態であり、捜査当局には事件の徹底解明を望みたい。

 この疑惑は、総連中央本部の土地・建物の所有権が、元長官側に移っていることが表面化したのが発端だった。総連は整理回収機構(RCC)から627億円に上る債務返還請求訴訟を起こされて窮地に陥っていた。元長官は総連を救うために、あえてこのような行動を取ったと釈明していた。

 移転登記がされたにもかかわらず、代金は未払いだった。このため特捜部は総連の資産差し押さえ逃れを狙った虚偽登記の疑いで捜査に乗り出した。ところがその過程で浮かび上がったのは、元長官が売買仲介役の元会社社長らと共謀して、総連の資産を詐取したという構図だ。

 元長官は当初、「在日朝鮮人の権利を守りたかった」などと強調していた。しかしその実は、差し押さえが迫る総連の弱みにつけ込んだ不動産詐欺だったことになる。仮に、これまでの見立てのように、総連を助けるための仮装売買という図式であったとしても言語道断だが、今回の容疑事実は、これとはまた次元の異なる悪質さである。

 事件はなお謎に包まれている。元長官らがこれほどあからさまな詐欺に手を染めた真の動機や背景は何か。元長官らは将来、詐取した中央本部の土地・建物をどう扱おうとしていたのか。解明すべき点は多い。

 また、仲介役の元会社社長らは総連側から、今年4月に4億9000万円もの事前報酬を受け取っていたことが分かっている。今回の容疑事実に関しては総連は被害者の立場だが、事件の全容解明のためには、この資金の性格や流れなどについても徹底した捜査が必要となろう。

【日経・春秋】(6/29)

 皇居の「石橋(しゃっきょう)の間」には、前田青邨画伯の絵が飾られている。能舞台の「石橋」のシテのモデルを務めたのは、昭和を代表する名人、喜多六平太だ。2人と交流があった宮沢喜一元首相は、絵の制作現場に立ち会ったことがあるという。

▼小学生のころから能が好きだった宮沢氏は、喜多六平太のひざに抱かれて話を聞いた体験もある。「とても小さな方で、みんな喜多ちっぺい太と言ってましたね」。こんな思い出を語っていた。能にのめり込んだ少年時代から、少し斜に構えたところがあったのだろう。むき出しの権力闘争は不向きで、嫌っていた。

▼池田勇人蔵相の秘書官として注目を浴び、自民党の「ニューライト」の旗手と称された。しかし軌跡を振り返ると、通産相時代の日米繊維交渉、蔵相時代のバブル経済、首相時代の不良債権処理などの失敗例が目立つ。首相退任後に蔵相として再登板し「平成の是清」と呼ばれたが、ばらまき財政のツケを残した。

▼自衛隊を初めて海外に派遣したカンボジアPKO(国連平和維持活動)などが宮沢政権の成果と言えるだろう。政治家としての真骨頂は戦後民主主義を全面的に肯定し、自民党リベラル派の旗頭であり続けたことだ。「戦後レジーム」からの脱却を唱える安倍首相の時代に、戦後を見つめてきた老政治家が逝った。


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