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2007年6月30日 (土)

6月30日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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 (2007-07-01 01:01確認)雑談日記、予測よりやや速いペースでついに激戦政治ランキング花の1頁(1位~50位)突入。今までネットウヨ充満だったが、リベラル系が圧倒の勢い、確認したければ、バナークリック。(ランキング参加の意義)
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【沖縄タイムス・社説】(2007年6月30日朝刊)

[尼崎JR脱線]背景に懲罰的企業体質

 百七人が死亡した二〇〇五年四月の尼崎JR脱線事故で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は、運転士に懲罰的な「日勤教育」を課すなどJR西日本の管理方法に問題があった、とする最終報告書をまとめた。

 事故の背景には、懲罰的な企業体質があり、ただ厳しく管理しただけでは事故を防げないと戒めている。

 事故原因は、日勤教育を恐れた運転士が車掌と輸送指令員との交信に気を取られてブレーキ操作が遅れ、時速七十キロを大幅に超える約百十六キロでカーブに進入、脱線したと考えられる、としている。

 日勤教育は、草むしりや就業規則の書き写し、反省文を延々と書かせるなど、一部の運転士は運転技術向上に効果のないペナルティーだと受け取っていたという。

 これまでの調査で、運転士は事故直前の駅で約七十二メートルオーバーランしていた。車掌が走行中にこれを無線で輸送指令員に報告。その交信を聞くことに気を取られ、ブレーキ操作が遅れたのではないか、とみられている。

 オーバーラン後、運転士は車内電話で車掌に「まけてくれへんか」と虚偽報告を依頼している。車掌は「だいぶと行ってるよ」と答え、乗客から「何でおわびの放送をしないのか」と言われて運転士との会話を打ち切った。

 このため虚偽報告に車掌は否定的だと感じた運転士が、車掌と輸送指令員の交信に「特段の注意を払っていた可能性が考えられる」と報告書は結論づけている。

 運転士はオーバーランなどで過去に三回、日勤教育を計十八日間受け、賃金の一部をカットされていた。友人に「次は乗務を外されるかも」と話していた。また日勤教育をやらされるかもしれない、という恐れが車掌に虚偽報告を求め、無線交信に気を取られた心理的要因であり、今回の事故原因の核心といえる。

 一方で、乗務員に厳しく統制を求める半面、安全整備ではずさんな面も明らかになっている。ブレーキのハンドルが特定の位置に入ると利かなくなる車両が報告されたが、対策が講じられなかった。実際の速度を表示しない速度計も直さないまま使用していた。

 事故調査委は、新型の列車自動停止装置(ATS)が設置してあれば事故は防げたとしている。事故後、国はカーブでのATSの設置を義務付け、同社も安全設備を改善している。

 遺族の悲しみや怒りは今でも消えない。身近な公共交通・鉄道の安全を保つためにも、報告書の指摘を真摯に受け止めてもらいたい。

[クイナ繁殖計画]これこそ私たちの責任だ

 ヤンバルクイナを飼育によって繁殖させる試験実施計画を環境省那覇自然環境事務所が発表した。

 マングースや野犬、猫によって絶滅の危機にさらされている状況を考えれば、妙案といっていい。

 ヤンバルクイナは、“東洋のガラパゴス”と称される沖縄本島の北部地域だけに生息する貴重な動物だ。個体数を増やすことは、私たちに課せられた重大なテーマである。二〇〇八年度からの計画が危機的状況の打開につながるよう期待したい。

 環境省の計画は、来年の繁殖期(四―六月)までに繁殖の基礎となるヤンバルクイナのつがいを十組確保。慎重に飼育して、一七年度末には二百羽程度に増やしていく考えだ。

 国指定天然記念物を人工的に飼育する手法を疑問視する声もあるが、手だてを尽くさず絶滅の日を待つよりはずっといいのではないか。

 ここは人間の英知と繁殖技術の粋を集めて、トキの二の舞いだけは絶対に避けるようにしてもらいたい。

 ヤンバルクイナの発見はわずか二十数年前のことだ。当時、東村、大宜味村などで確認された固体はマングースの北上とともに北に追いやられてきた。

 山階鳥類研究所などの調査によると、〇四年に約八百十羽、〇五年には七百十七羽にまで減っている。この数字は、「個体数が千を切れば種の保存が難しくなる」という分岐点を超え、既に絶滅寸前にある証しといっていい。

 個体数減に、マングースなどの捕食が影響しているのは確かだ。

 だが、それにも増して私たち人間による輪禍、そして森林開発やダムや林道建設などの公共事業、畑地の開墾がその生息域を狭めてきたことも忘れてはなるまい。

 人工飼育による繁殖計画は、事態が一刻も猶予ならぬ時期を迎えていることを意味する。言うまでもないが、ヤンバルクイナは沖縄だけでなく世界的にも貴重な動物だ。絶滅を食い止めるだけでなく、今以上に数を増やしていくことを目指していきたい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月30日 朝刊 1面)

 教員免許の十年更新制が二〇〇九年から導入され、更新時には講習が課される。「授業力」が先生に問われている。

 那覇市役所勤めから県内初の民間人校長となった横山芳春さん(宇栄原小)が四年目に到達したのは「授業中心の学校づくり」。子どもを高めるには上質の授業が不可欠であり、教員は教材研究を深める必要がある。

 職人は技を磨くべし、という当たり前の話だが、学校現場では「雑多な資料作成や諸行事に忙殺される」と職員が嘆き、一部の指導力不足の先生に管理職が頭を抱えるのが典型という。

 「教育改革論議の中で授業の大切さが死角に入っている」との懸念を校長経験者から聞く。教員の技量アップがおざなりでは?との疑問に民間人校長が立ち向かおうとしている。宇栄原小は全国に学校を公開する。

 教員が授業を自他校の教員に公開し、教授法を研さんする試み。他県にも参加を呼び掛ける。来年二月の予定で、教員は今夏から準備に着手。宮城教育大の横須賀薫前学長ほか本土の研究者らも入り、同校で教材研究に参画する。教えるプロに導かれる児童の輝きに注目したい。

 横山校長がうれしく思った言葉がある。教員免許更新制を決めた中央教育審議会の主要メンバーから「宇栄原小学校のようにやれば免許更新制度は必要ない」と評価された。自由に教材研究できる学校経営が不可欠だ。民間人校長が新風を吹かせるか期待したい。(屋良朝博)


【琉球新報・社説】

公安庁元長官逮捕 捜査を尽くし全容解明を

 事件は発覚当初から異例ずくめだった。
 表面化してわずか2週間余、意外な方向へ急展開した。容疑事実も報じられた当初とは大きく変わるなど、事件内容は一段と衝撃的だ。
 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の売買をめぐる不正登記事件で、緒方重威・元公安調査庁長官が東京地検特捜部に詐欺容疑で逮捕された。
 緒方元長官は35億円の購入代金を支払う意思がないにもかかわらず売買契約を結び、東京都千代田区にある朝鮮総連中央本部の土地と建物をだまし取った、という容疑だ。元長官のほか、仲介役とされた元不動産会社社長、資金調達役とされた元銀行員の2人が逮捕された。
 売り手の総連側には売却の意思があったと判断し、総連は詐欺事件の被害者との見方だ。
 緒方元長官は容疑を否認しているが、もし事実だとすればとんでもない話だ。法務・検察の信頼にもかかわる。
 公安調査庁のトップを務め、高検検事長を歴任した人物がなぜ詐欺に手を染めたのか。東京地検には事件の全容を早急に解明してもらいたい。
 事件は、中央本部の土地・建物の所有権が投資顧問会社に移転登記されていたことが発覚したのが発端だった。投資顧問会社の代表取締役が元長官である。
 朝鮮総連は、在日朝鮮人系信用組合の不良債権問題で整理回収機構から627億円の返還請求訴訟を起こされていた。長官らによる取引が代金を決済しないまま所有権が移っていたため、本部の差し押さえを逃れるための偽装売買の疑いが持たれていた。
 ところが事件の構図は一転した。元長官らが「投資する金主が確実にいる」などと偽って売買契約を交わし、土地と建物を詐取したというのだ。
 取引のすぐ後に訴訟を控えていた。機構側の請求が認められれば、中央本部は差し押さえられ、競売にかけられる可能性が強かった。特捜部が描く構図の通りであれば、総連側の弱みにつけこんだ悪質な詐欺ということになる。
 しかし詐欺はだまされた被害者がいる。いつかはばれる。大物検察OBがそんな単純な詐欺に走るだろうか。常識的に考えにくい。
 事件にはほかにも分からないことが多い。総連から元社長らに渡ったとされる約5億円にはどんな目的があったのか。
 総連が和解によって差し押さえを防ぐため、債務弁済の条件などをめぐり総連と首相官邸が協議していたとみられる、総連側代理人の元日弁連会長のメモも明らかになっている。検察の実態解明が待たれる。

(6/30 10:04)

飼育下繁殖計画 追い詰められたクイナ

 環境省の鳥類レッドリストで最も絶滅の恐れが高い「絶滅危惧(きぐ)種IA」に分類されているヤンバルクイナを保護するための環境省の対策が、次のステップに進むことになった。本来なら改善に向かっていることを期待したいところだが、現実は深刻だ。これを機に、より一層クイナ保護に力を注がなくてはならない。
 環境省は28日、ヤンバルクイナの保護策として飼育下繁殖を目指す「基本方針」を発表した。具体的には飼育下でクイナのつがいを10組つくって繁殖させ、10年後の2017年度末までに200羽程度まで増やす計画である。既に繁殖試験は始まっており、来年3月までに10組のつがいを確保する方針だ。
 飼育下繁殖はトキ、ツシマヤマネコに次ぎ3例目となるが、軌道に乗せるのは容易ではない。
 しかし、繁殖が可能になれば、最悪の事態を回避できるだろう。環境省の計画では飼育下で繁殖させたクイナを野生に返す方法についても検討することになっている。生育環境を整えたうえで、クイナの生息域を広げることが可能になろう。最も望ましいのは、クイナを自然のまま保護することである。この努力を続けなければならない。専門家や地元の人々だけの問題ではない。県民一人一人が、自分の問題として取り組む必要がある。
 いよいよ飼育下繁殖が唯一の保護策となった場合、純粋の野生のヤンバルクイナの命は風前のともしびとなる。
 環境省には最悪の事態を回避する研究を進めてもらいつつ、わたしたちは、今できることを実践したい。
 クイナの輪禍を防ぐため車を徐行運転することもその1つ。犬、猫をやんばるの森などに捨てないことは当然のことだ。
 沖縄で誇れるものを問うた場合、多くの県民は「豊かな自然」と答えるだろう。ならば貴重な生物が絶滅すること、それはすなわち「誇り」を失うに等しいといえよう。現実の深刻さをしっかり受け止めたい。

(6/30 10:03)

【琉球新報・金口木舌】

 「宵越しの銭は持たぬ」は、江戸っ子の気性の1つだといわれる。江戸は2、30年ごとに大火があり、そのため人命や財産への保証がなく、蓄財意識が低くなったためともされる
▼その中で火災は運命共同体として連帯感を築き、定火消(じょうびけし)制度をつくった。火は一瞬にして住民の生命、財産を奪うだけに、何よりも迅速な消火対策が重要だ
▼豊見城市消防本部で慢性的な人員不足が深刻だという。そのため超過勤務が増えるなど災害への体制不備が浮き彫りとなった。消防職員1人当たりの人口は約1000人が理想とされる
▼5万3千人の同市では消防職員約50人が適正というが、現状は42人。平均年齢は46・8歳と県内消防で2番目に高い。休暇も思うように取れず、さらに市民への予防喚起のための防災訓練指導や講習会に対応するため休日出勤も増えているという
▼結果、職員の資格取得にも影響があり、水難事故の救命船を現場近くまで牽引(けんいん)するための免許を全職員が取得していないことも分かった。同市も改善に向け対策に動くが、自治体の財政難も深く影を落とす
▼となれば問題は、豊見城市消防だけではなさそうだ。「宵越しの銭―」と逃げず、防火体制に知恵を絞りたい。

(6/30 10:02)


【東京新聞・社説】

安倍政権 禍根を残す強行一辺倒

2007年6月30日

 社会保険庁改革関連法など重要法案の成立をもって、今国会は事実上、幕を閉じる。安倍晋三首相と与党の強行一辺倒の運営が目立った。議会の秩序を壊したのは禍根を残したのではないか。

 首相はメールマガジンで「国民のためにやるべきことを、ただひたすらに、愚直にやっていく。どのような批判を浴びようとも、この三法案は必ずこの国会で成立させる」と述べている。

 社保庁改革法と年金時効撤廃特例法に続き、天下り規制を柱とした改正国家公務員法も動きだす。言行一致して参院選で審判を仰ぐということなのだろう。

 与党が週内成立にこだわったのは、会期末ギリギリの来週まで持ち越せば、野党の出方次第で審議未了-廃案になりかねないためだ。強行採決の悪い印象を一日だけで済ませたい思惑も見え隠れした。

 野党が激しく抵抗し追い込んだ側面もあるが、強行採決を「国民のため」というひと言で片づけていいはずはない。

 終盤国会の最大の焦点は年金問題だった。国民が求めたのはもう記録の不備はないのか、なぜ問題は起こったのかを明らかにすることだ。政府は真相解明を有識者の検証委員会に丸投げし、説明責任は残された。

 与党は最終盤の衆院厚生労働委員会の審議を見送っている。野党は火付け役である民主党の長妻昭氏の質問を封じたと批判した。法案成立で区切りをつけ、参院選での逆風を鎮めたい与党の本音がちらついた。

 そもそも国会が荒れた発端は、首相が公務員法改正案の今国会成立にこだわり、会期を延長したことだ。これには与党内からも異論が出ていた。首相はメルマガ通り批判を浴びても押し通した。

 しかし、改正案は公務員の再就職を一元的に斡旋(あっせん)する「新人材バンク」の具体像など、肝心なところがはっきりしないままだ。野党は「あんこの入っていないあんパン」と批判し、与党からも「野党の言う方が正しい。もう少し内容を詰めた方がいい」との声が上がった。

 審議する参院内閣委員会は野党議員が委員長とはいえ、最後は委員会採決を省いて本会議採決に踏み切る「荒業」まで用意した。

 今国会では改正案も含め審議時間が衆院の七割程度になれば、そのまま通すことが相次いだ。慣例化したら二院制の意味がない。

 わずかだが、会期はまだ残っている。首相が出席して年金問題などを審議すべきだ。それくらいしないと、参院選でしっぺ返しを受ける。

日本年金機構 監視の目が届くのか

2007年6月30日

 社会保険庁が解体され、非公務員型の日本年金機構ができても国民の年金不安は解消できない。国税庁と一体化した「歳入庁」など従来とは根本的に違う組織のあり方を検討する時期ではないか。

 機構は社保庁の年金業務を引き継ぎ、二〇一〇年にスタートする。業務効率やコスト意識を高める点においては多少ましになるだろう。

 だが、社保庁改革法案の国会提出は年金記録不備問題が表面化する前で、記録管理の徹底という視点に欠けている。総務省の検証委員会で記録不備の発生原因を解明し、再発防止策を盛り込むべきだったが、それがされていない。

 オンラインシステムに入力され該当者が不明の五千万件の納付記録、入力されずに放置されていた千四百万件の記録などについて、最後の一件まで年金受給に結びつける作業が今後始まるが、社保庁解体で職員を大幅に減らして遂行できるのか。機構に移行する前にすべての作業を終えるよう全力を尽くし、責任が曖昧(あいまい)にならないようにすべきだ。

 三年前、社保庁職員が年金保険料を娯楽施設の建設など目的外流用していたことが明るみに出たが、その防止策が機構では不徹底だ。保険料を「年金教育・広報」などに充てることが従来通り認められており、抜け道になりかねない。社保庁に群がっている多数の天下り法人の廃止に一切手をつけておらず、流用継続の受け皿になる恐れがある。

 しかも機構の職員は「民間人」なのに給料は税金で賄われ、国家公務員よりも高水準になる可能性があると野党は指摘している。国家公務員法も適用されず天下りはし放題になる。これでは改革とはいえない。

 こんな看板の掛け替えのような組織が年金業務を引き継いでも国民の納得は得られない。特に国民年金の未納・未加入者の増加に歯止めをかけることは極めて難しく、無理に徴収しても反発を招き、徴収コストが膨れあがるだけではないか。

 現行制度の信頼がここまで失われた以上、制度を抜本的に変える必要がある。英米と同じように社保庁と国税庁を統合した「歳入庁」を設け保険料と税を一緒に徴収する方式を検討すべきだろう。組織をスリム化できるうえ、規律が保て、天下りも規制できる。保険料の徴収率アップも期待できる。

 保険料を徴収する社会保険方式自体に限界があるなら、国民年金(基礎年金)の保険料を全額税で賄うことも視野に入れるべきではないか。国民の賛同が必要だが、未納・未加入問題は一掃され、国民すべてに年金が保障される利点があるからだ。

【東京新聞・筆洗】2007年6月30日

 逆転の決め手は「環境との共生」だった。今年は見送りと思われた島根県大田(おおだ)市の石見(いわみ)銀山遺跡が、ユネスコの世界文化遺産に登録されることが決まった。地元紙は号外を発行、溝口善兵衛県知事も「県民の願いが通じた」と大喜びだ▼五月のユネスコ諮問機関の現地調査では「普遍性の証明が不足している」と登録延期の勧告が出て、地元は落胆した。だが、その直後からユネスコ日本代表部や文化庁、県の関係者が、登録委員会の各国メンバーに、説得の反転攻勢に出た▼大航海時代の海外文献や銀精錬の工程の詳細を補足資料で提出した。とりわけ江戸時代、廃鉱跡に植林した先人の環境への配慮が、アジアや中南米代表から「未来につながる」と絶賛され、流れが変わった▼新緑の季節に、この銀山遺跡を訪ねたことがある。川沿いに延びる緑のトンネルをくぐりながら、坑道跡の一つ「龍源寺間歩(まぶ)」に潜ってみた。全長六百メートルの入り口から百五十メートルほどを歩いて見学できる。手を伸ばせば届く両側に、ノミ跡が確認できた▼石見銀山は十六世紀に開発が始まり、「灰吹(はいふき)法」の導入で生産が拡大、最盛期には世界の銀産出量の三分の一を占めた。戦国大名の尼子氏、毛利氏が争奪戦を演じ、豊臣氏を経て江戸幕府の天領となる▼十六世紀のポルトガルの世界地図には「イワミ」の名が記される。ジパングへの憧(あこが)れ、鉄砲やキリスト教伝来の裏に、スペイン、ポルトガルによるこの石見銀をめぐる覇権争いがうかがえる。世界史読み替えへの関心もそそられる今回の登録決定だ。


【河北新報・社説】

参院選まで1ヵ月/政治の気流はどこに向かう

 年金記録不備問題などを背景に安倍晋三政権への逆風がやまない。7月29日投票の参院選まで1カ月。世論の政権批判は続くのか、それとも政局の転換で潮目が変わるのか。それがこの期間の最大の焦点である。

 共同通信の世論調査(23、24両日)で、安倍内閣の支持率は33.5%と昨年9月の発足以来の最低を更新した。

 底流に年金不信はあるが、安倍内閣が国家公務員法改正案を与党攻勢に転じるための踏み台として仕掛けた国会会期延長が内閣支持率低落の歯止め策にはならなかったことを裏付けた。

 自民党の中川秀直幹事長は「今が(支持率の)底値で、流れは変わる」として、支持率回復は可能との考えを示す。

 それなら与党はこの先、局面打開に向けてどんなカードを持っているというのだろうか。

 参院選への実績にしたいのは改正国公法のほか社会保険庁改革法、年金時効撤廃特例法、改正政治資金規正法…。しかし、いずれも野党から構造欠陥を指摘されている法案で、これらが切り札となるか疑問符が付く。

 最強のカードは「時間」との言い方もある。与党内には、1カ月の時間をかければ年金問題批判を沈静化できないかとの思惑があるが、それは姑息(こそく)だ。

 「参院選で与党が負ければ、上向き始めた景気に影響する」という揺さぶりもカードになり得るが、今の景気の二極分化が地域格差を際立たせている現状では効果は小さい。6月からの住民税増税も景気に水を差す。

 自民党内では参院選に負けた場合の責任論が浮上し始めた。「大敗なら内閣総辞職も含めて考えざるを得ない」(舛添要一参院政審会長)といった声が出るのも、与党の議席過半数割れが現実味を帯びてきたからだ。

 しかし、首相が言うように政治は結果責任だ。責任論は党内の引き締め狙いでも、党外には敗北主義をさらけ出すもので、無責任としか言いようがない。

 自民党が選挙の責任を論じる前になすべきことは、世論が大きな関心と不安を抱く年金問題で、納得の行く具体的な対応策を誠実に積み重ねることだ。

 小泉前政権から負の遺産として引き継いだ格差問題で明確な是正策を示すことも重要。憲法問題もいいが、世論が求めるのは、生活に直結する分野で安倍色を鮮明にすることだ。

 自民党の森喜朗元首相は「参院選は中間選挙みたいなもの。政権を賭けるものではない」と言う。しかし共同通信の世論調査では、多くの人が与党敗北の場合に衆院解散を求めており、森発言はそうした感情を逆なでする。与党は参院選を政権を賭けた選挙と覚悟するべきだ。

 一方、民主党などの野党は年金問題を中心に据え、投票日まで与党を攻め続ける戦術に没頭するだけでいいとは思えない。

 小沢一郎民主党代表は「野党が参院で過半数を取れば、政権の枠組みの問題が生じる」と政界再編の可能性に触れている。

 それなら、再編後や政権交代後の政権の形を国民に戦略的に明示しておく必要があろう。
2007年06月30日土曜日

【河北新報・河北春秋】

 尼崎JR脱線事故の遠因の1つに1991年の信楽高原鉄道事故を指摘する見方がある。民事裁判の一審で同鉄道とJR西日本の過失が認定され、JRが控訴。二審も敗訴で確定したのは2003年▼事故から10年以上だ。「損害賠償の裁判に勝とうとしている間に安全対策の改善という本質的な部分で負けてしまったのではないか」。失敗学で知られる畑村洋太郎東大名誉教授が書いている

 ▼ 法廷闘争の間、安全に対して上の空だったのかもしれない。少なくとも悲惨な事故から教訓を引き出し、安全の基本に据え直す姿勢には欠けていただろう。事故を防ぐのは事故に学ぶ謙虚さだ▼国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会が尼崎脱線事故の最終報告書をまとめた。懲罰的な運転士教育に対する問題提起や安全軽視の企業体質など、さまざまな課題をあぶり出した

 ▼「女性が宙を飛んだ」「ねじりつぶされたアルミ缶のようなすき間を男性が吹き飛んだ」「車内は洗濯機の中のようだった」。報告書が描き出す事故の瞬間にあらためて衝撃を覚える▼JR東日本は研修施設に事故の歴史展示館を設け、リアルな訓練を行っている。信楽事故も展示施設がある。無論、JR西でも事故の芽を摘む地道な努力は続けていよう。風化させてはならない悲劇の記憶である。

2007年06月30日土曜日


【京都新聞・社説】

緒方元長官逮捕  徹底捜査し真相解明を

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部をめぐる売買事件で、元公安調査庁長官の緒方重威容疑者らが詐欺容疑で東京地検に逮捕された。
 公安機関の元トップで、高検検事長まで務めた大物検察OBが刑事責任に問われるのは極めて異例の事態だ。地検には、厳正公平な捜査で事件の徹底解明をあらためて望みたい。
 緒方元長官らは、三十五億円の購入代金を支払う意思もないのに、朝鮮総連代理人の土屋公献・元日弁連会長らに「確実な金主がいる」とうそをつき、所有権を移転登記させ、中央本部の土地・建物をだまし取った疑いだ。元長官は容疑を否認しているという。
 今回の事件の不可解さは、購入代金が支払われていないのに所有権の移転登記が行われていたことだ。
 朝鮮総連は、経営破たんした朝銀信用組合の不良債権を引き継いだ整理回収機構から約六百二十七億円の返還を求められる訴訟を抱えていた。
 地検は当初、元長官や総連側が中央本部に対する強制執行を逃れるための仮装売買とみて捜査を進めてきた。だが、総連側には売却する意思が実際にあったと認め、元長官らが最初から詐欺目的で仕組んだものと判断した。
 総連の敗訴を見越した元長官らが売却先を探していた総連の弱みにつけ込んだというわけだ。「北朝鮮の大使館的施設を守りたい」と売買目的の大義を主張していたが、結局はかつての監視対象をだましたということだ。
 元長官が逮捕されたとはいえ、疑惑は深まるばかりだ。
 弁護士でもあり、法律知識に詳しい元長官がなぜ、出資者がいなければ詐欺行為が発覚するような犯罪に手を染めたのか。ふに落ちない。
 売買交渉の過程で、共犯で仲介役の元不動産会社社長側に、総連側から約四憶八千万円が渡されている。そのうち一億円が元長官に流れたともされている。提供された資金は報酬金だったのか。その目的などがいまだ不透明だ。元長官と元社長との金銭をめぐるつながりも解明する必要がある。
 元長官との所有権移転登記は白紙撤回され、訴訟の判決を受け、中央本部の土地と建物は整理回収機構が事実上、差し押さえている。
 中央本部の差し押さえについて、総連側と首相官邸が昨年末、和解条件を協議していた、とする土屋氏のメモがあることが分かった。水面下で政治的交渉があったことをうかがわせる。もし事実なら今回の事件の真相を解明する上でも、政府は事実を国民に説明すべきだ。
 元長官逮捕は検察側にとって「身内」の不祥事といえよう。迅速な逮捕は法務・検察当局の信頼回復への意欲と理解したい。中途半端な幕引きは断じて許されない。

[京都新聞 2007年06月30日掲載]

大詰め国会  法案審議尽くさぬまま

 「年金の逆風」が強まる中で、重要法案可決・成立へ正面突破を図る与党。問責決議案などを連発しても押し切られる野党-。
 参院選を前に与野党の激しい攻防で未明まで及んだ国会は、衆院で圧倒的に多い議席を持つ「数の力」を背景に、次々と法案を成立させてきた安倍晋三政権の今国会運営を象徴するものといえよう。
 年金記録不備問題にからんで注目された社会保険庁改革関連法案と年金時効撤廃特例法案は、先の教育改革関連三法案や、イラク特別措置法改正案などと同じく、参院委員会での採決強行を経て、土壇場の関門をくぐり抜けさせた。
 天下り規制の強化を図る国家公務員法改正案に至っては、与党が委員会審議を省略して、本会議で一気に成立を図る「中間報告」の奇策を用意した。
 安倍政権や与党側の強引な姿勢が国民の目にどう映ったろうか。
 参院選の日程を先送りしてまで会期延長したにもかかわらず、法案審議が尽くされたとは言いがたい。国民の納得はとうてい得られまい。
 安倍首相の強気の国会運営は、後半国会でとりわけ目立った。上昇しかけた内閣支持率が、「消えた年金」問題や松岡利勝前農相の自殺で急落したことによるあせりもあったのだろう。
 委員会審議で与党側が質疑を打ち切って採決を強行、野党議員が委員長席に詰め寄って騒然となる…。そんな場面がどれだけ繰り返されたことか。
 政府・与党と野党が論議を通じて法案の問題点を洗い直し、よりよい法律に仕上げていくのが本来の国会審議の姿だろう。だが今国会で、与党が野党の修正に応じることはほとんどなかった。
 憲法改正手続きを定める国民投票法案をめぐって、衆院憲法調査特別委員会の理事会レベルで自民、公明、民主の三党が修正合意に近づいたことがあった。
 だが「改憲を参院選の争点にする」との安倍首相の発言に民主党の小沢一郎代表が反発、頓挫した。
 事務所費問題で浮上した政治資金規正法改正案でも、民主党が領収書添付を義務づける金額などで与党案に歩み寄りをみせたが、与党側が応じなかった。
 重要法案が軒並み成立した一方で、日の目を見なかった法案も多い。安倍内閣の新たな目玉をめざした日本版国家安全保障会議創設のための法案や、首相が就任前から唱えてきた再チャレンジ支援政策の一つだった最低賃金法改正案など労働三法案は継続審議となった。
 格差是正問題が今国会の大きな柱とまでいわれただけに、国民の期待に応える論議を深められなかった与野党双方に責任があろう。
 来月十二日に公示される参院選では、年金問題に限らず、今国会であまり焦点が当たらなかった政策にも目を向け、考え抜いて審判を下したい。

[京都新聞 2007年06月30日掲載]

【京都新聞・凡語】

宮沢喜一元首相、死去

 戦後政治の大きな曲がり角には、いつもこの人の姿があったように思える。元首相の宮沢喜一氏は、まさに政治史の生き証人だった▼自民党内ではハト派を代表し、中国古典に造詣の深い教養人でもあった。が、案外、素顔は語られてこなかった。温厚な知識人のイメージは強いが、衆院議員の谷垣禎一氏は「いやすごい闘争心をお持ちでした」と恩師の一面を紹介する▼そういえば、かつて暴漢に襲われたとき灰皿一つで長時間立ち回りを演じたという語り草が残る。物腰柔らかだが、「敏しょう性と、たぐいまれな体力の持ち主だった」(谷垣氏)▼その強靱(きょうじん)さは、自らの内閣が退陣に追い込まれた五年後に、なおも小渕内閣で蔵相を務める決断力に表れた。平和主義の見識を愚直なまでに貫いたのも、秘めたる闘志と反骨精神があればこそだろう▼もう一つ、宮沢氏が素顔をのぞかせる場面があった。京都の大徳寺にしばしば足を運んだ。庭を愛(め)で、比較文明学者の梅棹忠夫氏らと、文化論に花を咲かせた。「禅の精神が日本を引っ張ってきたが、これからは…」と精神文化の百年の計を案じていたという。二年前が最後の訪問になった▼昨夏、足を骨折し、自宅で療養していた。「ゆっくり寝るわ」。二十八日午後、八十七歳で逝った。折しも国会が大荒れの最中(さなか)だった。強行採決の連発にどんな思いでいたことか。

[京都新聞 2007年06月30日掲載]


【朝日・社説】2007年06月30日(土曜日)付

国会、閉幕へ―「数の力」振り回す政治

 「政治とカネ」に絡んでの現職閣僚の自殺、噴き出した年金問題と不信、そして数の力でブルドーザーのように法案を通していく与党の強引さ。この三つの点で、今年の通常国会は歴史に記憶されるだろう。

 とりわけ、強引な国会運営は常軌を逸していた。5カ月あまりの会期の中で、審議の続行を求める野党の反対を押し切り、自民、公明の与党だけで採決を強行したのは20回近くにものぼる。前代未聞のことではないか。

 ■相次いだ禁じ手

 押し切った法案の中身もすごい。補正予算を皮切りに、今年度予算、憲法改正の手続きを定める国民投票法、教員免許の更新制などを盛り込んだ教育3法。国の基本にかかわるような重要問題ばかりである。

 とどめにとばかり最後は、政治資金規正法の改正、社会保険庁を分割する法律、「宙に浮いた年金」の時効をなくす特例法、国家公務員の再就職をあっせんする新人材バンクをつくる法律が、次々に採決にかけられた。

 新人材バンク法は、民主党が委員長のポストを押さえていたため、委員会での採決はすっ飛ばし、いきなり本会議で可決させる非常手段に訴えた。

 先日は衆院の懲罰委員会で、民主党が出す委員長を投票ではずしてまで同党議員を懲罰した。これも数の力にものを言わせて突き進む与党の姿勢を象徴するものだった。

 野党側にも、参院選に向けて対決ムードをあおり、わざと与党の強引さを誘った面がうかがえた。選挙まぢかの国会は、与野党とも頭に血が上りがちだ。

 だが、そこを割り引いたとしても、禁じ手に近い手法まで繰り出した与党は「横暴」との批判をまぬかれない。野党が安倍内閣に対する不信任案を出して抵抗したのは当然のことだ。

 なぜ、こんなむちゃな国会運営になってしまったのか。

 ■「強い宰相」への焦り

 安倍首相の、参院選にかける思いがあまりに強いことが原因のひとつだろう。首相が選挙のことを考えるのは当たり前だが、9カ月前、もっぱら有権者受けの良さを買われて自民党総裁の座についた安倍氏には、自らの存在理由にかかわる格別の意味がある。

 小沢民主党との決戦となる参院選に、何が何でも勝たねばならない。この一念から政策を組み立てたのであり、この国会でそれを形にしてみせなければならない。そんな強い焦りが、首相を突き動かしているかのようだ。

 2年前、強引な解散・総選挙で大勝した小泉前首相と比べ、若い安倍氏には「ひ弱」「リーダーシップに欠ける」といった評がつきまといがちだ。「強い宰相」を演じなければという、別の焦りも加わったのだろう。

 「政治とカネ」の問題では、自殺した松岡農水相らの疑惑をかばい続け、年金問題が噴き出すと「1年ですべて照合」と大見えを切る。強気一本やりの国会運営と根は同じだ。

 思い返せば、頼みとする「数の力」をもたらしたのは、小泉時代に勝ちとった衆院の巨大議席数である。だが、考えてみればあの総選挙で自民党が有権者に問うたのは、もっぱら「郵政民営化」だけだった。

 だからと言って、他の政策課題に手をつけるべきでないとは思わないが、これだけ多くの重要法案で野党をなぎ倒すとなると話は別だ。そこまで信任を与えたつもりはない、というのが多くの国民の率直な思いではないか。

 1週間前の朝日新聞の世論調査では、与党の国会運営について「多数決のルールに従っているから問題ない」と見るのはわずか17%で、70%もの人が「数の力で押し切るのはよくない」と答えた。

 いまの「数」は前任者に対する信任である。それも郵政民営化という、ほぼ一点についての信任だ。なのに首相は、あの総選挙で追い出した郵政造反組の議員を続々と復党させ、信任の中身を変質させてしまった。

 それも考え合わせれば、首相があまりに「数」を身勝手に扱いすぎていることが浮き上がる。有権者の信任というものに、もっと謙虚であるべきだ。

 ■品格に欠ける政治

 一定の審議時間が過ぎれば採決し、政府・与党案を可決する。そんな機械的な審議がこの国会では目立った。最後は多数決で結論を導くのは民主主義の基本とはいえ、少数派もまた、有権者の信任を背景としている。それをわきまえることも与党の責任だ。

 選挙で得た多数はあくまで基本であり、国会の役割は具体的な政策や法律のために、さらに大きな多数をつくるべく努力することにある。実のある修正を模索してこそ有権者の期待に応えられるのに、この国会ではまったく顧みられなかった。

 河野洋平、扇千景の衆参両院議長の責任も指摘したい。それぞれ与党にブレーキをかけようとした場面もあるにはあったが、最後は禁じ手のような手法も許してしまった。

 扇氏は、土壇場の会期延長を「落ち着いて審議ができない」と批判しつつ、重要法案をばたばたと採決していった。衆院の判断を改めてチェックするという、「再考の府」としての参院の役割を投げ出したと言われても仕方あるまい。

 「数の力」を振り回す政治は、品格にも欠ける。大きな数を持てば持つほど、謙虚に合意づくりを目指すのが王道であるはずだ。

【朝日・天声人語】2007年06月30日(土曜日)付

 亡くなった宮沢喜一さんが、日米学生会議の一員として初めて渡米したのは昭和14年だった。日中戦争のさなか、日米の空気は険悪の一途である。往路の船中、日本の立場を弁護しようと、仲間と盛んに意思統一をはかった。

 会議に臨むと、向こうの学生は思い思いに意見を述べた。日本を悪く言う者もいるが、自国を批判する者も随分いる。「言論の自由というのはこれか」。知米派で聞こえた元首相の、原風景になった。

 そうした体験をへて身についた「冷静な合理主義」が、政治家としての持ち味になり、弱みにもなる。期待株と目されながら、初入閣から首相就任までに29年かかった。田中角栄氏ら親分肌のボスに疎まれたためである。「泥田をはいずり回れない」といった陰口もついてまわった。

 首相時代、指導力に疑問符がついたこともある。だがハト派の象徴としての存在感は、最後まで揺るがなかった。自衛隊のイラク派遣に反対し、憲法9条の改正には慎重であり続けた。

 〈どの論理も〈戦後〉を生きて肉厚き故しずかなる党をあなどる 岡井隆〉。ふと胸をよぎるのは、この歌だ。宮沢さんのような「しずかなる民主主義者」をあなどる、粗っぽい空気が、いまの政界を覆ってはいないだろうか。

 「総理大臣が刀を抜いて、『進め、進め!』なんていうのは戦国ドラマの見過ぎ」と、宮沢さんは言っていた。民主主義は、ときに遅々としてじれったいものだ。初入閣から1年で首相の座に就いた現職には、その辺の理解がないのかもしれない。


【毎日・社説】

社説:大詰め国会 あまりに浅はかな採決ラッシュ

 社会保険庁改革関連法と年金時効停止特別措置法が30日未明、参院本会議で可決・成立した。公務員制度改革関連法案も成立する見通しで、積み残されていた法案は一気に処理されることになった。しかも公務員法案は委員会採決を省いて本会議で採決するという。異例の性急さだ。

 野党は安倍内閣に対する不信任決議案を衆院に提出するなどして抵抗したが、この動きを食い止めるには至らなかった。むなしささえ感じる徹夜国会である。

 せっかく7月5日まで国会の会期を延長したというのに、なぜ与党はそんなに急いだのか。

 来週まで審議がもつれ込むと、野党の抵抗次第では会期切れを迎えて、法案の採決ができないまま廃案になる恐れがあるというのが表向きの理由である。実はもう一つ理由があるのだろう。

 社保庁改革法は28日の参院厚生労働委員会で、野党が「年金記録漏れ問題の検証がまったくできていない」と反発する中、与党が採決を強行した。公務員法案も野党は反対している。

 「数の横暴」と批判されるのは免れない。だから一挙に採決することで批判を浴びるのは一回だけにしたい。与党はそう考えているのではなかろうか。加えて、これら採決が終われば、国会は来週、事実上閉会状態になる。この間に強引な採決に対する世論の反発も和らぐとの期待もあろう。

 年金問題で安倍内閣の支持率は急落し、自民党は参院選で苦戦が予想されている。国会の会期を延長し、参院選投票日を当初想定していた7月22日から同29日に先送りしたのも「年金批判が少しでも収まれば」との思惑があった。

 今回の採決ラッシュも参院選を意識したものであるのは間違いなかろう。しかし、浅はかな「選挙対策」はかえって有権者の不信を増幅させるだけではなかろうか。

 既に指摘したように社保庁改革法は年金記録漏れ問題が発覚する前に検討したものだ。状況ががらりと変わったのだから、やはり一から考え直すのが筋だった。

 安倍晋三首相が今国会成立にこだわった公務員法案は、各省庁による天下りあっせんを禁止し、内閣府に置く「官民人材交流センター」に一元化するのが柱だ。だが、肝心のセンターの具体的な制度設計は今後検討するという。省庁の関与をどこまで排除できるか、あいまいさを残したままだ。

 しかも、同法案を審議してきた参院内閣委員会は民主党議員が委員長を務め、委員会採決ができなかったことから、いきなり本会議で採決するという。確かに過去に例はあるが、これは委員会審議の否定につながりかねない手法だ。

 29日午後成立した改正政治資金規正法は資金管理団体に限って5万円以上の経常経費支出(人件費を除く)に領収書添付を義務付ける内容だが、これも抜け道だらけだ。どさくさにまぎれて成立させたとしか思えない。

 こうした姿勢も有権者には参院選の判断材料となるはずだ。与党はそれを忘れない方がいい。

毎日新聞 2007年6月30日 東京朝刊

社説:JR事故報告 企業体質を一から見直せ

 国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会が、05年4月に起きたJR福知山線事故の最終調査報告書を発表した。運転ミスに対する懲罰的な「日勤教育」の重圧が事故を招いた可能性があると推論し、安全を軽視したJR西日本の企業体質を指弾する厳しい内容である。

 運転士は途中駅でオーバーランを起こし、ミスを少なめに報告するよう車掌に依頼した。だが、返事があいまいだったため、運転指令室への無線報告に聴き入り、言い訳を考えるなど注意散漫になってブレーキが遅れた--。それが事故調の描いた事故の構図だ。

 運転士は過去3回、日勤教育を受け、長時間の反省文作成や叱責(しっせき)で追い込まれていた。日勤教育は精神論に偏り、運転技術の再教育という目的から外れて、多くの現場職員は懲罰と受け取っていた、と事故調は判断している。

 JR西日本は事故後、日勤教育を実践的な形に改めた。教育効果が上がるよう、より検討するという。当然のことだ。事故の教訓を生かして、安全意識を高め、技量の徹底向上を図る内容でなければ意味がない。

 安全管理体制にも数々の不備が指摘された。営業強化のためダイヤの余裕時分が削られ、職場間の連携不足で新型ATS(自動列車停止装置)の運用開始が遅れた。同型電車のブレーキ不具合や速度計の誤差が報告されていたのに、まったく改良されなかった。組織全体の緩みようは目に余る。

 事故調は、当時の鉄道本部長が安全管理に直接タッチしていないと釈明した点にも触れ、経営トップに近い者が積極的に関与すべきだった、と強調している。緊張の欠如、責任逃れの体質は今も残っていないか。もう一度、真剣に自らを省みることが不可欠だ。

 事故後にJR西日本が作った安全性向上計画は上下の意思疎通強化や縦割り組織の改善を掲げた。しかし、JR西労組が今春行ったアンケートでは、職場の約3分の1が現場長との信頼関係がない、不十分と答えた。現状は「風通しのいい職場」とはほど遠い。

 JR西日本の山崎正夫社長は事故調の報告書に関して、内容を厳粛に受け止め、安全性向上計画に代わる新しい安全対策を定める、と説明している。

 組織の基本から、改めて徹底的に見直した方がいい。なにより、すべての社員が安全最優先を共通の誓いとして心に刻み、経営陣と現場、職場間の不信の連鎖を断ち切る努力を重ねることが求められる。でなければ、企業風土の改革など進むはずがない。

 報告書はさらに、被害軽減のため車両構造を強化し、手すりの形などを工夫することや、運転士が仕事に集中できるよう無線交信を制限し、運転指示を文字で見られる装置を導入することなど、ハード、ソフト両面で具体的な改善を提言している。

 経営効率から後回しになりがちな項目が多い。鉄道業界全体で今回の提言を十分に検討し、有効に活用すべきである。

毎日新聞 2007年6月30日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:「スパイマスター」とは諜報員の元締めといった…

 「スパイマスター」とは諜報(ちょうほう)員の元締めといった感じの言葉だが、CIA(米中央情報局)長官だったアレン・ダレスといえば、冷戦の代表的スパイマスターの一人である。そのダレスは著書「諜報の技術」で釣り上手な人はスパイに向いていると書いている▲釣り上げたときの興奮は誰にも分かる。だが大事なのは素人に分からない準備段階で、道具や場所、時間の選択、思慮や忍耐のすべてが釣りの技術を構成しているという。諜報も同じく見えないところでの仕掛けこそが重要だといいたいのだろう▲公安調査庁長官も情報機関のトップだから、わが国のスパイマスターということになろう。では元スパイマスターは釣ったのか、それとも釣られたのか、どっちだろう。朝鮮総連の土地・建物の売却疑惑は、詐欺事件という意外な様相を見せてきた▲この売却にかかわった緒方重威元公安調査庁長官ら3人が逮捕されたのは、はなから代金を支払うつもりがないのに土地などを総連から移転登記させた容疑だった。当初、東京地検は総連としめしあわせた仮装売買とみていたのが、実は総連が不動産をだまし取られていたというのだ▲元スパイマスターなら、ダレスがスパイの動機に「イデオロギー」「ワナにかかったため」「金目当て」「陰謀好き」をあげているのはご存じだろう。自らの売買疑惑にまず「大義」を掲げて弁明し、最近は「だまされた」とも語っていたのだが、結局は何のことはない「金目当て」か▲つまりは差し押さえを逃れたい総連を35億円の疑似餌で釣ったというのが容疑の構図だが、釣果がこの有り様では、とても元スパイマスターの手際とは思えない。ここにいたる裏の仕掛けを洗いざらい白日の下に引き出す捜査を望む。

毎日新聞 2007年6月30日 東京朝刊


【読売・社説】

楽天対TBS 反発招いた大株主の「力の論理」(6月30日付・読売社説)

 魅力的な事業計画を最後まで提示できなかった楽天が、TBSの安定株主対策に屈した、ということだろう。

 TBSの株主総会で、会社提案の買収防衛策が77%の圧倒的支持を得た。保有株比率20%弱の筆頭株主として、三木谷浩史社長の取締役選任などを求めた楽天の提案は否決された。通信と放送の融合を掲げ、事業統合を迫った楽天の戦略は大きくつまずいた。

 投資ファンドなど「モノ言う株主」の増配などの提案を巡って、激しい委任状争奪戦が繰り広げられたのが、今年の株主総会の大きな特徴だ。

 その中で、ファンドに株式公開買い付け(TOB)を仕掛けられたブルドックソースは会社提案の防衛策が89%の支持を集め、中部電力、電源開発などではファンドの増配要求が大差で退けられた。ファンドの提案は全敗に終わった。

 株主が、長期的利益を重視し、良識を発揮した結果と言えよう。

 さらに、米系ファンドがブルドックの防衛策の発動差し止めを求めた裁判で、東京地裁は、多数の株主が防衛策に賛成したことを重要な理由に、発動を認める決定を下した。

 TBSの防衛策は、企業価値を損なう恐れのある買収者が、20%以上の株式取得を目指した場合、既存株主に新株予約権を無償で割り当て、買収者の保有比率を引き下げるというものだ。

 TBSは、総会での圧勝を背景に、防衛策発動の手続きを進める構えだ。楽天は、裁判で対抗すると見られるが、地裁の決定で苦しい立場に立たされた。

 楽天は一昨年、TBS株の15%を取得し、それをテコに事業統合を求めた。TBSは反発したものの、いったんは業務提携を検討することで合意し、TBSの番組と楽天のインターネット販売を結び付ける事業の展開などを協議した。

 だが、実現には至らなかった。逆に、リクルートなど楽天以外と次々に新事業を始めている。楽天に対し経営権奪取への不信感がぬぐえないからだろう。

 楽天との関係強化には、TBSの従業員や系列局も反対した。会社は株主だけのものではない。楽天には、ステークホルダー(利害関係者)の理解を得る努力も欠けていたのではないか。

 TBSをはじめ多くの企業が、株式の持ち合いを復活させている。敵対的買収を防ぐ最も強力な手段だ。

 ファンドの跳梁(ちょうりょう)など、やむを得ない状況もあるが、行き過ぎれば経営権を守るためだけに資金を寝かすことにもなりかねない。少なくとも、持ち合いを経営者の“精神安定剤”にすべきではない。
(2007年6月30日1時21分  読売新聞)

尼崎脱線事故 鉄道の安全向上に報告を生かせ(6月30日付・読売社説)

 あの大惨事は、なぜ起きたのか。背景に何があったのか。

 107人が死亡した一昨年4月の兵庫県尼崎市・JR福知山線脱線事故で、国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会が、冬柴国交相に最終報告書を提出した。鉄道の安全向上に生かさねばならない。

 報告書によると、死亡した運転士のブレーキ操作が約16秒遅れ、快速電車が制限速度を40キロ以上超えて現場のカーブに突っ込んだのが、事故の原因だ。

 ブレーキ操作の遅れは、直前駅でのオーバーランを車掌が報告する無線交信に気を取られたか、ミスの言い訳を思案していたことなどによると考えられる。

 その背景にある問題として、報告書は、JR西日本の「日勤教育」が、死亡した運転士を心理的に追いつめた、と指摘した。社内連携の悪さや無理なダイヤも挙げている。

 日勤教育は、ミスをした運転士を乗務から外して実施された。運転技術などではなく、精神論が主だ。反省文を書かせ、繰り返し、あいさつをやり直させる。賃金もダウンする。報告書は、一部の運転士は“懲罰”と受け止めていたと指摘し、見直すべきだとしている。

 事故防止策として報告書は、懲罰的でない報告制度の整備や緊急性の低い無線交信の制限など3項目を求めた。一昨年秋に提言した自動列車停止装置(ATS)の機能向上などに続くものだ。全鉄道事業者は、早急に実施すべきである。

 事故当時、国は、カーブのATS整備を義務づけていなかった。設置していれば、事故は防げたはずだ。国の安全管理上の規制が十分でなかったことが事故につながったとすれば、そうした分析も報告書にあってよかった。

 万一に備えた被害軽減策も必要だ。

 事故の直接の衝撃だけでなく、車両が変形して空間が小さくなったことで窒息死などの犠牲者が多く出たことも指摘された。スピードアップなど効率化のため軽量化が進む車両構造の問題がある。材質や形状を見直す契機にすべきだ。

 最終報告書まで2年2か月かかった。事故調は昨春、鉄道事故調査官を倍増して14人にしたが、初動段階で鉄道総合技術研究所や大学の専門家の応援を求めるなどして、調査の迅速化を図りたい。

 JR西は、遺族らに事故原因の説明を求められても口を閉ざしてきた。最終報告書を機に本格化する警察の捜査で、JR西が不利になるような言質を取られたくないとの意識からではないか。

 関係者の刑事責任の有無が、今後の焦点になる。捜査を尽くし、JR西の安全管理の実態に迫ってもらいたい。
(2007年6月30日1時22分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月30日付 編集手帳

 沈黙は金、という。西洋伝来の格言は、「雄弁は銀」とつづく。はっきり自分を主張することを美徳とする西洋人が雄弁を低く評価したのはなぜだろう ◆「岩波ことわざ辞典」によれば、格言の起こりは19世紀中ごろのドイツで、当時の西欧諸国は銀を基準にした貨幣制度、いわゆる銀本位制が大勢であったという。古人はどうやら現在の意味とは逆、「雄弁の銀」を上位に置いたつもりで格言をこしらえたらしい◆交易に、暮らしに、世界の国々にとってなくてはならぬ銀の供給役を務めたのが日本である。17世紀の初めには世界に流通する銀の3分の1を日本産が占め、なかでも石見(いわみ)銀山(島根県)から採掘された銀の量は飛び抜けていた◆16世紀半ばにポルトガル人がインドで製作した日本地図には、石見のあたりにポルトガル語で「銀鉱山王国」と記されている。 “王国”の夢の跡、「石見銀山遺跡」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録された◆ユネスコの諮問機関が「普遍的な価値の証明が十分でない」と登録延期を勧告していただけに、地元の喜びもひとしおである。自然と調和した「文化的景観」の魅力を日本政府が、腕ずくならぬ口ずくで各国に説いて回ったのが功を奏しての逆転登録という◆格言本来の意味を思い出させる「雄弁の銀」だろう。
(2007年6月30日1時34分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】社保庁改革 必死の努力で不信なくせ

 問題の社会保険庁を解体し、3年後に非公務員型公法人の「日本年金機構」に年金業務を引き継ぐための社保庁改革関連法案が30日未明可決、成立した。今後は迅速かつ着実に改革を推し進めることが求められる。

 まず、何よりも年金不信を払拭(ふっしょく)し、国民から信頼される組織に生まれ変わることが大切である。国民の信用が得られなければ、保険料は徴収できず、年金制度そのものが成り立たなくなるからだ。高齢化はますます進む。真に国民の老後を支える組織でなければ、それにも対応できなくなる。

 改革は(1)監督権者は厚労相(2)業務は可能な限り民間に委託する(3)社保庁職員は全員が退職した後に再雇用される-が主な柱である。

 なかでも肝心なのが、非常勤職員を含む2万9000人の職員の再雇用である。内閣官房に新設される有識者による第三者機関が、採用の人数など基本方針を決める。その後、厚労省の採用審査会が具体的に職員をふるいにかけて選別していく。

 国民のために労を惜しまず、まじめに働く職員かどうかを見極めたうえで再雇用しなければならない。仕事を制限する組合の覚書にしがみつくような職員はもういらない。人事面での妥協は許されない。大胆な人事刷新で、社保庁の不祥事を繰り返す体質を変えなければならない。

 次に民間委託である。保険料の徴収、記録、相談、給付といった一連の年金業務の一定部分が民間へ委託される。できるだけ身軽にして効率的な運営を目指すためだ。

 どこまで委託するかは、内閣官房の第三者機関が検討する。第三者機関はその責任の重さを十分自覚し、任務を遂行してほしい。

 一方、5000万件をはじめとする年金記録の紛失問題は総務省に事務局を置く「検証委員会」が原因を究明し、責任の所在を明らかにする作業を進めている。領収書などの保険料支払いの証拠がないときに年金給付の是非を判断する審査基準については、「確認委員会」が検討している。

 組織が改まるからといって年金問題がすぐに解決するわけではない。引き続き、政府が解決の努力を続けなければならないのは言うまでもない。

(2007/06/30 05:18)

【主張】JR事故報告 企業体質が問われている

 平成17年4月に死者107人を出した兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(事故調)は、事故原因などを盛り込んだ最終報告書をまとめた。

 直接の原因は死亡した23歳の運転士のミスとしたが、規則に反した運転士らに課す日勤教育が事故の背景にあったと指摘した。

 最終報告書によると、脱線した列車は直前の停車駅でオーバーランし、発車が約1分20秒遅れた。運転士は車掌がミスを輸送指令に報告している交信内容に気をとられ、制限速度が時速70キロの現場カーブに約116キロで進入し、脱線した。

 この異常な運転について、事故調は運転士が「日勤教育を懸念」したためとした。日勤教育は乗務中にミスなどを犯した運転士を対象にした再教育制度である。だが、実際は上司が厳しく叱責(しっせき)するなど懲罰的な側面が強く、過去に3度の日勤教育を受けた運転士にとっては大きな心理的な負担となったとみられる。

 日勤教育については、事故直後から問題となり、運用も見直されたとされる。そのうえでJR西日本の幹部は今年2月の事故調による意見聴取会で、「必要かつ有益」と反論した。

 しかし、日勤教育が事故につながった可能性があるとの指摘が持つ意味は大きい。懲罰的な日勤教育が行われていなかったら、事故も起こらず、多数の犠牲者も出なかった可能性があるからである。

 事故調はさらに、新型の列車自動停止装置の設置の導入先送りや、ブレーキの欠陥など、安全性を軽視し続けた企業体質も厳しく批判した。再発防止のために、企業体質まで踏み込んで批判するのは極めて異例だ。

 過度の懲罰は教育ではない。JR西は報告を真摯(しんし)に受け止め、日勤教育が本当に必要かどうかも含め、徹底的な見直しを図る必要がある。同時に、批判された企業体質を根本的に改善する努力を続けるべきである。

 兵庫県警は最終報告を受け、運行関係者を業務上過失致死傷容疑などで立件する方針だ。すでに事故から2年以上もたった。真相解明を求める遺族感情は強く、刑事上の責任追及も厳正に行われなければならない。

(2007/06/30 05:17)

【産経抄】

 政界入りが遅かった分だけ後輩扱いされていたが、宮沢喜一氏は田中角栄、中曽根康弘の両元首相より1歳年下なだけだった。日本の運命を左右する現場にいたということではむしろ「先輩」だったかもしれない。それは昭和20年代にさかのぼる。

 ▼25年4月、当時の池田勇人蔵相は秘書官の宮沢氏らを従え渡米する。講和に関する米政府の対応を瀬踏みする、という吉田茂首相からの密命を帯びていた。だが表向きは、戦後日本にデフレ路線を敷いたジョセフ・ドッジ国務省顧問に成果を報告するというものだった。

 ▼日本にいるマッカーサーの介入を避けるためである。一行はしばらく時間を費やした後、休日にひそかにドッジと会い、吉田の講和への意向を伝えた。異論はあるものの、宮沢氏は後に著書などで「講和条約はこれによって結ばれることになる」と述べている。

 ▼その池田蔵相は日米安保条約改定直後の昭和35年首相となる。それまで「タカ派」的イメージが強かったが、経済優先政策や低姿勢路線を打ち出し、国民を驚かせた。これもまた黒子役の宮沢氏や大平正芳氏ら旧秘書官グループによる「演出」だったといわれる。

 ▼だが失礼を承知で言えば、宮沢氏の「華」はこの黒子時代にあったようだ。鈴木内閣時代、教科書検定に関する「宮沢談話」は中国などへの屈服に過ぎなかった。遅咲きで首相になっても、政治改革という時代の波に乗ることはできず「55年体制」の幕引き役となった。

 ▼戦後日本の枠組み作りに一役買ったという強烈な自負があったのだろう。強烈すぎて、そこから抜け出せなかったのかもしれない。あたかも憲法改正や教育改革など「戦後レジームからの脱却」が議論される中、ひっそりと去っていった。

(2007/06/30 05:00)


【日経・社説】

社説1 「モノ言う株主」が苦戦した今年の総会(6/30)

 上場企業の株主総会がほぼ終了した。今年の最大の注目点は大幅増配などを求める株主提案の行方だったが、終わってみれば株主提案はことごとく否決され、一安心した経営者も多いだろう。しかし、総会は一里塚にすぎない。業績好調の日本企業だが、現状に満足することなく、経営改革の加速が求められる。

 今年の総会に出された株主提案は30社を超えたとみられ、過去最多を記録した。だが、結果は連戦連敗。TBSに取締役の派遣などを求めた楽天の提案は大差で否決され、Jパワーなどに大幅増配を求めた英投資ファンドの提案も退けられた。

 理由の1つはモノ言う株主の性急な提案に、他の株主がついていけなかったことだろう。ブルドックソースの経営権取得を目指しながら、経営方針を明示しなかった米スティール・パートナーズについて「真の狙いが不明」という疑念が出ていた。TBS株の買い増しを表明した楽天にしても、わずかばかりの株買い増しが両社の将来にどんな意味を持つのか、外部からは判然としない。

 経営者は株主に説明責任を負うが、株主の側も他の株主に同意を求める場面では説明責任が生じる。それを十分果たさなかったのが、連戦連敗の一因ではないか。

 もう一つの背景は、日本企業の株主構成の問題だ。株式の持ち合いは大幅に崩れたとはいえ、今も金融機関(信託銀行除く)と事業法人を合わせた持ち株比率は上場企業全体の34%に上る。その大部分は当該企業の取引先とみられ、経営陣に心情的に近かったり、経営体制の急変に不安を抱いたりすることが多い。

 だが、株主の監視が厳しくなければ、経営の規律が緩む恐れがある。最近は敵対的買収に備えて、持ち合い復活の機運もあるが、以前の株式持ち合いが企業統治の空洞化を招いた教訓を忘れてはならない。

 経営者も株主提案を敵視するだけが能ではない。小野薬品工業では、同社株を過去10年持ち続ける米ファンドが大幅増配を提案した。取締役会はそれに反対したが、一種の対案として向こう3年間の配当政策を示し、その間のフリーキャッシュフロー(現金収支)をすべて配当などの形で株主還元すると公約した。

 今年の総会シーズンは幕を閉じたが、ファンドを中心とした株主サイドの攻勢は今後も続くだろう。経営者は緊張感をもって株主と向き合いながら、利益分配を含めて説得力あるビジョンを打ち出す必要がある。株主提案を退け、「勝った、勝った」と余韻に浸る暇はない。

社説2 規律高い年金機構へ再生を(6/30)

 社会保険庁改革関連法案の成立で同庁は解体され、公的年金に関する業務は2010年1月に発足する「日本年金機構」が引き継ぐ。一連の年金記録騒動に対して責任を負うべき社保庁を解体するのは当然だ。ここ何年間も同庁に不祥事が続いたことを考えると、遅すぎたくらいだ。

 社保庁は年金運営組織として不適格だと国民の多くは感じている。新しい組織に衣替えするだけでは、失墜した信頼を取り戻すことはおぼつかない。規律高い組織として再生させるために、日本年金機構に魂を入れる作業に政府は全力を挙げるべきだ。また社保庁職員は無条件で機構に移れるわけではないことを肝に銘じてほしい。保険料や納付記録は払った国民のものという、あたり前のことさえ理解しない職員はリストラされることを覚悟すべきである。

 機構発足までの間に、厚生労働省や社保庁をはじめ年金行政に携わる人がやるべきことは多い。まず、宙に浮いた5000万件の年金記録の持ち主を愚直に突き止める作業だ。すでに年金を受け取っている高齢者の分を優先して取り組むとともに、現役世代に対しても把握している加入歴を役所側からわかりやすく伝え、本人の確認を求めることが必要だ。

 給付漏れの時効が撤廃されることで年金給付の事務量も増える。今後も大勢の年金生活者が各地の社会保険事務所に押し寄せるだろう。できるものは民間委託し、効率よく「接客」にあたってほしい。厳格な守秘義務を課すのは当然だし、窓口対応は親切丁寧を第一とすべきだ。

 もともと社保庁解体の第一の目的は改善が遅れている年金保険料の納付率を高めることだった。記録漏れへの国民の憤りがこれだけ高じていることは、徴収業務に強い逆風だ。だからといって手は緩められない。債権回収に実績を持つ民間企業に委託するなど、手を尽くすべきだ。

 社保庁から年金機構に移る職員は真にやる気のある人だけを選ばなければ国民は納得しない。組織を挙げての怠慢が今回の問題の原因であることが明らかだからだ。29日、国家公務員にボーナスが支給された。多くの社保庁職員は一部を国庫に返納するとみられるが、それが免罪符にならないのは当然である。

【日経・春秋】(6/30)

 今年ももう半分が過ぎる。カレンダーを見ながら半年の間にあった悪いこと反省すべきことを思う人も多かろう。そういう人のために6月末日には古来「夏越(なごし)の祓(はらえ)」がある。大みそかの大祓(おおはらえ)から半年の間にたまった罪穢(つみけが)れを消す行事だ。

▼江戸後期の本『東都歳時記』には「諸人群集」してにぎわう隅田川べりの真先(まっさき)神明宮の絵が載っている。そのお宮の現在の姿である東京・南千住の石浜神社には、チガヤを束ねて作った直径2メートルほどの「茅(ち)の輪(わ)」を設けてある。これを3度くぐって、自分の罪穢れを移した紙の人形(ひとがた)を神社に納め祓い清めてもらう。

▼7月5日まで会期が延びた国会で与野党のせめぎ合いが続いている。参院選を目前に内閣支持率が急落する危機に陥った与党は選挙戦で有権者に訴える政策づくりの成果がほしいし、野党は与党が横暴な国会運営をした印象を国民に与える好機と考えるから、双方とも踏ん張りどころなのだ。

▼1月の自民党大会で安倍首相はこう言った。選挙は「正攻法で臨めば勝ち抜ける」。それが半年の間に年金問題やら松岡・前農相の自殺やらが積み重なり防戦一方だ。『東都歳時記』の神明宮の絵に添えたこの歌のような心境は、首相や自民党幹部には、さぞ、うらやましいだろう。〈おのずから心の底もすみだ川 罪も祟(たた)りも夏祓いして〉


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