« amazonの本のライブリンクをはった覚えはないのだが、。(笑)メモリーとデジカメとICレコーダーと電子辞書は確かにはった。 | トップページ | 脅威のバナー『美しい国⇒美しい星、「美し」連呼で年金問題 臭い物に蓋・護美箱内閣、それニャら、ゴミは護美箱へ、美しく』(笑) »

2007年6月 3日 (日)

6月3日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

お勧めPDA・電子辞書

政治ランキングをリベラル派で占拠しよう!(バナークリックで政治ランキングに飛べます。「検索窓でお目当てのブログ⇒サイト情報⇒カテゴリ : 政治」でリアルタイムの順位ページです。)
人気blogランキングバナー

天木直人さんを応援しています、SOBA個人用バナーです。草原の壁紙を使っていて同じく天木さん支持している人は使ってもいいですよ。(笑)
完全プライベートバナー「僕は青空と平和が好きだから天木さんを応援します」


【沖縄タイムス・社説】

社説(2007年6月3日朝刊)

[年金特例法案]審議尽くし不安解消を

 社会保険庁の記録管理不備で本来の年金が受け取れなかった人を救済する年金時効撤廃特例法案と、社保庁を廃止・解体する社会保険庁改革関連法案が衆議院本会議で自民、公明の与党の賛成多数で可決された。

 七月の参院選を視野に、与野党の攻防が一段と激しくなってきた。野党は法案内容、審議とも不十分と反対したのに対し、与党は約五時間の審議で委員会採決の強行に踏み切った。

 数の力を背景にした与党の強硬姿勢は目に余る。一方の野党にも参院選を有利に運ぼうという思惑も垣間見える。与野党とも目先の党利を捨て、時間をかけて問題点について議論し、審議を尽くすべきではないか。

 公的年金では従来、転職や結婚のたびに別の年金を付与していたため、一人で複数の番号を保有していたが、一九九七年に加入者一人に一つの基礎年金番号制度が導入された。

 だが記録が一本化されず、誰のものか特定できない「宙に浮いた」ケースが約五千万件残っていることが明らかになった。仮に保険料の納付記録が訂正されたとしても、「時効」で五年間分しかさかのぼって支給されない。

 特例法案は、記録ミスによる年金支給漏れが判明した場合、不足分を全額受け取れるようにするための五年間の時効の撤廃が柱になっている。

 政府は、約五千万件の年金記録の受給者との照合作業を一年程度で終えるとの方針を示した。だがそもそも一年で照合が可能なのかどうか。事務量を考えても疑問視する声が多い。

 安倍晋三首相は、第三者委員会を設置し、支払っていたと確証が得られれば給付できる仕組みを作りたいと述べた。しかし、どのような基準で判断し誰が責任を負うのか、議論はまだ生煮えだ。なぜ法案成立を急ぐのか。

 特例法案について政府、与党は秋にも予定される臨時国会へ提出する予定だったが、急きょ繰り上げ今国会に提出した。しかも議員立法の形である。

 年金問題が参院選の大きな争点となることに危機感を募らせ、この問題の早期収拾、火消しに躍起になっているように見られても仕方あるまい。

 今回あらためて浮き彫りにされたのは社会保険庁のずさんな年金記録の在り方だ。記録がないから支払わないでは済まない。どのような手法、手続きで救済していくのか、党派を超えて知恵を絞っていくべきだ。

 最近の調査によると、老後の生活に不安を感じている人が増えている。年金問題も原因の一つだ。こうした国民の不安を解消していくことが政治が最優先すべき課題ではないのか。


社説(2007年6月3日朝刊)

[脱北者漂着]人道的な配慮優先で

 北朝鮮当局の厳しい警戒をくぐり抜けて来たのか。青森県の深浦町沖に脱北者とみられる男女四人が乗った木造船が漂着した。

 男女四人は「生活が苦しかった」「韓国へ行きたい」と話している。新潟が目的地だったのか。漁業関係者に「新潟はどこだ」とも聞いている。

 船は、全長七―八メートルの老朽化した木造船である。中朝国境の町から出港し六日ほど航行して深浦町沖に着いたようだ。海で隔てられているとはいえ、北朝鮮との近さが実感させられる。

 脱北者は、中国やロシア、東南アジア経由で韓国、米国へ亡命するケースが多い。日本沿岸に現れた例は極めて珍しい。

 青森県警は、入管難民法違反(不法入国)の容疑で、日本に来た経緯など事情を聴いている。これまでのルートに加え、この漂着が新たな脱北ルートを示すものなのかどうか。詳しく聴取する必要があるだろう。

 今回の北朝鮮船の漂着は二例目である。一九八七年一月に小型船「ズ・ダン号」が十一人を乗せ、福井県沖に現れた事件が初めてのケースといわれる。むろん、北朝鮮による拉致事件は明らかになっていない時期である。

 北朝鮮は送還を要求したが、当時の日本政府は国際法や国際慣習にのっとり、人道的配慮と本人たちの自由意思を尊重して第三国に渡航させている。十一人は、海上保安庁のYS11機で台湾に移送され、直後に韓国に亡命した。

 当時と比べ、日朝関係は厳しさを増している。今年四月には、日本独自の経済制裁の半年間延長が決められた。昨年十月の核実験実施の発表を受けた制裁である。北朝鮮産品の全面的輸入禁止のほかに、北朝鮮の国籍保有者すべての新規入国を禁止したものだ。

 今回のこの四人に対して安倍晋三首相は、「入国管理局等が適切に対処する」と話している。亡命希望であれ、なんであれ、人道的な配慮をまず優先してもらいたい。苦しんでいるのは、普通の国民のはずだからである。

【沖縄タイムス・大弦小弦】

大弦小弦 (2007年6月3日 朝刊 1面)

 千葉県で七月から素晴らしい条例が施行される。「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」。条例づくりの主役が県民というのが画期的だ。

 当事者の声を反映させるため、案づくりをする「障害者差別をなくすための研究会」の委員は公募した。まず「理不尽な理由でつらい思いをしている人はいないか」という問いに、八百件の差別事例が集まる。研究会には障害者、その親だけでなく、企業、医療関係者らが参加した。そこで「障害者は甘えるな」といった厳しい意見も出て真摯な議論を展開する。

 県民を巻き込んだタウンミーティングも開き、一年かけて案をまとめる。差別をした人を罰するのではなく、理解を深め、味方になってもらうというのが考え方だ。だが、県議会では多数を占める自民党が反対し、成立は暗礁に乗り上げる。

 「条例の灯を消さないで」という研究会のメンバーらの訴えに堂本暁子知事はいったん取り下げて、再提案。研究会の強い思いは自民党議員にも届き、昨年十月、成立した。

 この過程は『条例のある街』(ぶどう社)に詳しい。著者は研究会座長の野沢和弘さん。知的障害のある息子の父親で毎日新聞記者でもある。さまざまな困難に直面したが、「たくさんの人々の力で小さな奇跡が起きた」という。。

 また、こうも強調する。「この条例は障害者だけでなく、成熟した社会に生きるすべての人のためになる」。(銘苅達夫)


【琉球新報・社説】

「再生会議」提言 目線は父母や国民にこそ

 安倍晋三首相の肝いりで発足した政府の教育再生会議が第2次報告をまとめた。
 土曜日授業の実施を可能にするほか、徳育(道徳教育)の「新たな教科」への格上げや、教員評価を踏まえた教員給与体系の導入などを柱に盛り込んだ。だが提言内容には疑問符の付く項目が少なくない。
 教育が抱えるさまざまな問題についてどのように分析し、現場に即した解決方法や効果的な処方せんをどう探り当てていくのか。問題の核心に踏み込んで議論を十分に尽くしたのだろうか。説得力に欠ける。
 メニューを多く並べ、盛り付けを豪華に飾り立てた割にエッセンスに乏しい。味にコクがなく総じて薄味すぎるのだ。料理に例えればこうなる。
 生煮えの議論に終わっていないか、最も気になるのは、土曜日の授業を認めたことだ。再生会議は1次報告で授業時間数の10%増を提言しており、土曜授業の復活はそれを具体化させたものだ。
 学力低下への対応策として打ち出された提言だが、時間さえ増やせば、学力の問題は解消されるのだろうか。そもそも授業時間数と学力向上との間に相関関係がないことは、文部科学省も認めているのではなかったか。
 授業時間を確保するため、土曜日の休みを返上してまで実施する必要があるのか。再生会議は明らかに説明不足だ。
 学校の週5日制は、学校教育への過度の依存を解消し、学校や家庭や地域総がかりの教育を目指して議論、試行を重ねた末にたどりついた国民の合意だ。背景にあったのは、学力偏重や詰め込み教育の弊害の反省に立った「ゆとり教育」の視点だ。
 定着している制度を改める必然性があるというのなら、きちんとした総括が欠かせないはずだ。問題があれば、その点を明確にするのが筋である。
 徳育の教科化や、学校の実績に応じた予算配分も気になる。なぜ教科に格上げするのか、現在の道徳との違いはどこにあるのか。学校の実績の基準は何か。これらの説明がないのは腑に落ちない。
 議論の過程で見られたのは、熱意や決意の希薄さだ。目玉に狙った「親学」の勧めが子育て世代から反発されるや軌道修正、トーンダウンさせたのは象徴的だった。
 教育には学校や教科書だけでは学べないものが多々ある。他人への同情や気遣いといった領域は、漢字や算数の公式を教え込むようにはいかない。社会規範も口で説いて身に付くほど簡単ではない。
 こうした教育分野の多様な問題の解決こそ再生会議に求められている課題だ。目線は、首相ではなく父母や国民に向けてほしい。

(6/3 10:50)

低周波音被害 元凶はほかにもあった

 那覇地裁沖縄支部が実施した普天間爆音訴訟の現場検証で測定された低周波音は、環境省の参照値を超える数値が測定されていたことが明らかになった。
 低周波音については、原告らをはじめ普天間飛行場の付近住民らが以前から指摘し、訴えてきた基地被害だ。住民を苦しめている爆音被害は、航空機騒音の環境基準であるWECPNL(うるささ指数)に加え、低周波音も恒常的に影響していることが科学的に裏付けられたことになる。
 現場検証は、年度末に予定されている訴訟の判決に向け5月に実施された。測定ポイントは、宜野湾市大謝名、佐真下、野嵩、喜友名の4カ所。いずれも普天間飛行場にほど近い。
 検証では原告と被告である国の双方が同じ種類の測定機器を用いて騒音や低周波音を計測。その結果、低周波音は4カ所のうち3カ所で92デシベルを超えていた。最大で97.5デシベルに達した。
 低周波音は、人間の耳には聞こえにくいが、音は感じなくても頭痛や吐き気のほか、耳鳴りやイライラ、不眠など人体に影響を与えるとされる。環境省の「低周波音への苦情のための参照値」によると、心身に苦痛をもたらす低周波音のレベルは92デシベルである。この数値のほかにも周波数ごとに設定された参照値があり、4カ所すべてで参照値を上回っていた。
 普天間飛行場の周辺地域のほとんどの人々は、日常的に深刻な被害にさらされているのである。
 実際に一度でも体験すればすぐに分かることだが、ヘリ部隊が普天間基地周辺にまき散らす騒音は尋常ではない。
 体を震わせるほどの重く低い音が屋内に響き、時に激しい騒音を発しながら離着陸や旋回が繰り返される。この異常さには何十年住んでも慣れることがない。
 窓を閉めても屋内にこもるヘリの低周波音に襲われる。理不尽この上ない。住民を苦しめる元凶の排除は政治の責任だ。また司法はどう判断するのか、判決の行方も注視したい。

(6/3 10:49)

【琉球新報・金口木舌】

金口木舌

 合計特殊出生率が3.14と全国一高い市町村はどこでしょう。答えは多良間村(厚生労働省「1998―2002年人口動態 保健所・市区町村別統計の概況」)。沖縄総合事務局の広報誌「群星」の連載『数字の小道』はそう紹介していた
▼元気のない地域で子供が増えるわけはない。沖縄の一離島が全国一元気のいい地域となったわけで、痛快な話だ
▼連載は「15歳未満の年少人口の割合は伊平屋村が全国で2番目、3番目が与那国町」「転入人口の割合が全国一高いのは竹富町」とも紹介していた
▼05年の国勢調査による失業率をみても、離島の活力が分かる。県平均は11.9%だが、北大東村の2.1%を筆頭に、県内ベスト10の実に9位までを離島市町村が占めているのだ
▼ただ、離島は携帯電話などの通信事情で不利な面が少なくない。情報化が地域活性化の鍵を握る現実を考えると、過疎化の懸念は消えない
▼地上デジタル全面移行で民放テレビが見られなくなる不安は、先島では解消の見通しが立ったが、南北大東島では未解決だ。全国民に最低限のサービスを行き渡らせる「ナショナル・ミニマム」達成に行政の一層の努力を求めたい。島々の輝きを失わないためにも。

(6/3 9:46)


【東京新聞・社説】

週のはじめに考える 50年前の憲法論争

2007年6月3日

 「戦後レジーム」は戦前の体験に学んで築かれました。教訓を忘れないよう、歩んできた道を振り返りながら未来を見つめ、憲法と向き合いたいものです。

 一九九〇年、天皇は即位を国内外に披露する「即位礼正殿の儀」のお言葉で、「日本国憲法を順守し、日本国及び日本国民統合の象徴としての務めを果たす」と誓われました。憲法第九九条で公務員に憲法の擁護尊重義務が課されていることに配慮されたのでしょう。

 「米軍基地の中の村」と言われた沖縄県読谷村の村長を二十三年も務めた山内徳信さんは、この条文を大きな掛け軸にして村長室に飾っていました。
自分の権力基盤を否定

 今年の憲法記念日、安倍晋三首相の談話は「戦後レジーム(体制)を原点にさかのぼって大胆に見直し、憲法について議論を深めることは新時代を切り開く精神につながる」と改憲へ強い意欲を示しました。

 首相の権力は憲法によって与えられています。自分の権力基盤を否定するのは矛盾のようですが、よく似たことが五十年前にもありました。安倍首相が敬愛する祖父の故岸信介らが、新憲法制定を目指して内閣に憲法調査会を設置した時です。

 岸は当時の自民党幹事長、後の首相です。戦前は中国大陸で植民地経営に重要な役割を演じ、東条内閣の商工相として開戦の詔勅に署名し、起訴は免れましたがA級戦犯の容疑に問われました。

 現憲法施行から十年もたっていない五六年三月です。自民党は今と同じ押しつけ憲法論を軸に戦後体制脱却を主張しました。憲法調査会設置法を審議する衆院内閣委で、公述人の故戒能通孝・東京都立大教授(当時)がこれを批判しました。

 「内閣は憲法の忠実な実行者でなければならない」「憲法擁護の義務を負っている者が憲法を非難、批判することは論理的に矛盾する」
国民と政治家を冒涜

 これに対抗し「戦前に戻そう」と言わんばかりの論陣を張ったのは、旧内務官僚、元海軍少将、元陸軍参謀といった顔ぶれの自民党議員たちでした。安倍首相とその取り巻きの人たちの「自前憲法制定論」「戦後レジームからの脱却論」や、日本人としての誇りを声高に主張する一部の雰囲気は、この時の議論にオーバーラップします。

 自前憲法制定の欲求が「現憲法はマッカーサーの言うなりに作ったものだから」というのなら、事実に反し、当時の国民と政治家に対する冒涜(ぼうとく)です。あの時代の日本人の気持ちを反映していることは多くの研究で明らかになっています。

 原案を審議した衆院小委員会の芦田均委員長(後の首相)は、四六年八月二十四日の衆院本会議で次のような趣旨の報告をしました。

 「過去の過ちを切実に反省し、新しい日本を建設する基盤として新憲法を制定する」

 「大胆率直な戦争放棄の宣言は、数千万の犠牲を出した大戦争の体験から人々の望むところであり、世界平和への大道である。理想の旗を掲げて世界に呼びかけよう」

 「憲法がいかに完全な内容でも、国民がその目指す方向を理解し、その精神を体得しなければ、日本の再生はできない」-六十年後のいまも輝きを失わない格調の高さです。

 戦後レジームは戦前、戦中の体験を教訓として生まれたのです。その教訓を投げ捨て、旧体制に戻すわけにはいきません。

 日の丸、君が代の強制、愛国心教育や教育の国家統制強化など、戦前回帰のような最近の政治の流れをみると、これを杞憂とは思えません。

 国民投票法が成立し、安倍首相は改憲を今度の参院選の争点にすると言います。必要期間だけみれば、新議員の任期中に改憲発議が可能になりますから選挙結果は重大です。

 投票という主権行使を前に、私たちは「無知は罪」と自覚しなければなりません。後になって「知らなかったから」ではすまないのです。

 「日本人の出演俳優は一度も硫黄島のことを聞かされたことがなかった」-大ヒットした映画、硫黄島二部作の監督、クリント・イーストウッドのこの発言が本当なら、私たちは戦後の反省をきちんと継承できていなかったことになります。

 改憲の核心である第九条を考えるには、日本とアジアの民衆があの戦争で味わった苦しみ、近隣国の日本を見る目を学ばねばなりません。

 いまの憲法がなければ日本がどうなっていたか、世界各地における米国の軍事力行使がどんな結果になっているかも大事な視点です。
正面から向き合って

 施行から六十年もたった憲法ですから手当てしたい部分はあるでしょう。しかし、一時の気分や目先の利害得失だけで論じられてはなりません。政権の都合で規定や解釈を変えるのは立憲主義に反します。

 どのような国、社会を築き、国際社会とどう付き合うか、歴史を振り返りながらそれを考え、憲法と正面から向き合いたいと思います。

【東京新聞・筆洗】

筆洗

2007年6月3日

 国や言語が違っていても、音楽は人の心に響いていく。「鶴の恩返し」の民話を素材にした木下順二さんの戯曲『夕鶴』は、団伊玖磨さんの作曲でオペラとなり、二〇〇五年秋にメキシコの芸術祭で上演されると、観客の圧倒的な支持を受けた▼特筆すべきは、メキシコ人歌手が日本語で演じたことだ。「日本のオペラは日本語で歌って」。当たり前のようだが、誰も口にしなかったことを初めて実現させたのは、国際的なバイオリニストでメキシコに住む黒沼ユリ子さんだ▼メキシコ人歌手にとって、日本語はなじみがないので難しい。黒沼さんは、マヤ語を日本人が学ぶようだという。でもスペイン語に翻訳してはリズムが異なり、違う曲のようになってしまう。黒沼さんは歌とせりふの意味を出演者に教えて、日本語の先生役になった▼国際結婚をしてメキシコに暮らすようになって四十年以上になる。弦楽器専門の音楽院も二十五年以上運営し、多くの演奏家を世界にも羽ばたかせている。その黒沼さんの願いだから、メキシコ人歌手も無理とは言わないのだろう▼日本とメキシコの文化交流を深めることは、黒沼さんのライフワーク。次は来年夏に日本国内で、メキシコ人歌手による『夕鶴』を上演する準備を進めている。日本とメキシコの国交樹立百二十周年を記念し、市民交響楽団や児童合唱団との共演も計画している▼黒沼さんは「お金より大事なものがあることを『夕鶴』で知ってほしい」と願う。日本とメキシコだけでなく、世界中の人に伝えたいメッセージになる。


【河北新報・社説】

人民元改革/懸念残る米の「逆コース」

 米国と中国が、人民元改革をめぐり対立を強めている。2330億ドルに上る大規模な対中貿易赤字を抱える米国では、議会内部や産業界に、捨て去ったはずの保護主義的政策を求める声も浮上。日本などを巻き込んだグローバル化が逆コースをたどる心配も出てきた。

 5月22、23日、ワシントンで行われた米中戦略経済対話では人民元改革をめぐり激しい応酬があったと報じられた。米産業界は、人民元は“実力”より40%も過少評価されており、中国側の輸出競争力を高める一方で、米国側輸出産業には不利に働いていると主張する。

  対話では、将来の変動相場制移行の確約を求める米に対し、中国側は緩やかな改革を主張。中国が外国人投資枠を現行の100億ドルから300億ドルに広げる ことに合意するなど一定の成果を挙げたが、最大の焦点で進展がなく、米メディアなどの評価は成果より課題を重視している。

 4月、米通商代表部は知的財産権保護の早期実施などを求め、世界貿易機関(WTO)に中国を提訴。商務省は中国製コート紙の関税率を引き上げた。戦略対話直前には、米議会の超党派議員が「中国は人民元安の市場操作を行っている」とブッシュ大統領に調査を申し入れた。

  知的財産権保護の立ち後れは中国のアキレス腱で負い目もある。が、コート紙関税は国内産業保護に直結する。グローバル化の旗印の下、日欧などの自国産業保 護措置の排除を求め続けた米国だが、商務省は「他産業にも同様の措置を講ずる」としており、市場開放戦略の時計の針が逆戻りしかねない勢いだ。

 中国にとって急激な人民元改革は、米の意向に従って重要な国策の変更を招いたことを意味し、内政的な判断から受け入れ難いという側面を持っている。
  中国側代表の呉儀副首相は戦略対話の冒頭、「いかなる国も自らの見解を相手国に押し付けるべきではない」と米をけん制。米紙への寄稿で、保護主義的政策を 求める政治家らを「無責任」と批判した。同様の主張は、変動相場に踏み切った際にも論説などの形で公表され、中国側は基本的態度を変えていない。

  米国がグローバル化の主張を一時減速し保護主義的政策を打ち出すなら、米市場はそれをリスクと見なし、金融面でマイナスに作用することもあり得る。米が二 重基準的な政策をとるなら、政府は明確に反意を示す責任があるだろう。グローバル化は国民に痛みを強いてきた経緯を忘れるわけにはいかない。

 人民元は実力に見合った水準に位置付けられなければならない。中国が自発的な改革をしやすい環境づくりやレートの見極めなど、力の門戸開放では手の届かない支援の形が、日本の役割として浮かび上がるだろう。
2007年06月03日日曜日

公務員の採用年齢/制限撤廃で組織の活性化を

 山形県は本年度実施する県職員採用試験(大学卒程度)の受験資格を見直し、採用時点(2008年4月1日)の年齢要件を「30歳未満」から「40歳未満」に10歳引き上げた。

 社会人特別枠などを除くと、都道府県では長野県の「36歳未満」を上回り、全国で最も高い水準となる。

 硬直化しがちな公務員の人事体系に風穴を開ける意味でも、採用要件のハードルは可能な限り低くしていきたい。

 年齢引き上げの対象となるのは行政職のほか建築、電気などの専門職も含み、採用枠は計50人前後となる見込み。

 「民間企業経験者やNPOなどで地域活動に携わってきた人、子育てが終わった女性ら、幅広い層から優秀な人材を確保したい」と同県人事委員会事務局は説明する。

 総務省のまとめによると、地方公務員数は1994年から連続して減り、2006年には299万8000人と、300万人台を割り込んだ。昨年7月の「骨太の方針」では、給与削減とともに5年間で5%超の定員純減も明記された。

 休まず、遅れず、働かずと揶揄(やゆ)された公務員だが、もはや特権的待遇への安住が許される時代ではない。

 公務員減少下でも住民サービスを維持、充実させていくには、人材の「質」に着目した採用と人事を徹底していくしかない。終身雇用と年功序列を2本柱とする手厚い身分保障が見直しの対象となるのは必然だ。

 都道府県レベルでは山形県が先行した形の年齢要件の緩和だが、市町村では千葉県市川市が04年4月採用分から、年齢に加えて学歴、専門分野の制限も撤廃する大改革に打って出た。

 毎年、40歳以上の採用実績があり、これまでの最高齢は50歳。土木、建築など専門職系が多いのが特徴だ。

 「民間企業経験者は、われわれと違った視点を持っている。特に、高いコスト意識は勉強になる」と同市人事課。05年度時点で、全国43の市区町村が市川方式を導入しており、今後、採用要件の撤廃は主流になる可能性がある。

 外部からの人材登用は、「事なかれ主義」に陥りやすい役所文化を変える可能性を秘めているが、課題もある。

 わが国の職場には終身雇用を是とする立場から、差別的慣習が色濃く残っている。「中途組」などと呼ぶのは、もはやナンセンス。受け入れ側が、ポストや給与面で公平な処遇を保証するのでなければ、せっかくの人材を生かせなくなる。

 秋田県も青年海外協力隊や、ボランティア活動での経験者などを想定した「行政B」(大卒程度)の試験区分を来年度採用分から設定した。教養と論文による選考で行政学、憲法などの専門試験は課さないという。

 地方分権の時代、欲しい人材はその選考方法を含めて、それぞれの自治体が自由に選択すればよい。重要なことは公務員も「何年勤めたか」ではなく、「何をしたか」で評価されるべきだということだ。
2007年06月03日日曜日

【河北新報・河北春秋】

 平安時代の歌人、小野小町は現在の湯沢市雄勝で生まれたとされる。地方長官だった父とともに13歳で都に上り、宮廷に仕える▼教養豊かでしとやかな美人という小町のイメージを、脚本家の内館牧子さんががらりと変えた。健康的でしんが強い女性。仙北市のわらび座で上演中のミュージカル「小野小町」の主人公は野山を駆け回り、都人のいじめにも屈しない

 ▼ 新提案のきっかけは、晩年の激しい歌との出会いだった。「我(われ)死なば/焼くな埋(うず)むな/野にさらせ/やせたる犬の/腹こやせ」(遺体は野ざらしにして野良犬に食べさせてほしい)▼小町は権勢をふるう藤原一族をおそれない歌も詠み、疎んじられ、失意のうちに都を後にしたともされる。だが、内館さんは晩年の歌を、「思い残すことなく人生を生き切った」女性の一首と解釈した(JR東日本「トランヴェール」)

 ▼「佐竹本三十六歌仙絵巻」には、小町が後ろ向きで描かれている。十二単(ひとえ)の背に黒髪が流れ、想像をかき立てる。絵巻は秋田藩主佐竹氏が長い間、門外不出の秘宝としていた▼その佐竹氏一門の末裔(まつえい)、佐竹敬久秋田市長が1日、全国市長会長に選ばれた。大都市と地方との格差がどんどん広がる時代に、地方代表としてどんな反骨心を示すか。彼岸から、小町も応援している。

2007年06月03日日曜日


【京都新聞・社説】

東京大気訴訟  和解へ大きく近づいた

 東京大気汚染訴訟が和解に大きく近づいた。
 安倍晋三首相が、東京都の示したぜんそく患者の医療費助成制度に約六十億円を拠出することを決めたからだ。
 環境省は大気汚染とぜんそくの因果関係を認めず、「謝罪、賠償はしない」として医療費助成にも難色を示していた。
 それが一転するのだ。原告患者らは歓迎している。首相の決断を評価したい。
 しかし首相の胸の内は複雑だろう。決断には、内閣支持率の急落、農相の自殺、迫る参院選への思惑が渦巻いていたに違いないからだ。
 都内のぜんそく患者らが、自動車の排ガスで健康を害されたとして、国、都、自動車メーカー七社などを訴えた訴訟は一審の提訴から十一年になる。
 決着した各地の大気汚染訴訟が問わなかった、道路の「面的汚染」や、自動車メーカーの責任を追及してきたからだ。
 一審判決は、一部原告に被害を認めて国、都などに賠償を命じたが、自動車メーカーへの請求は棄却した。
 走行で出る排ガスの被害は、メーカーではコントロールできないというのが理由だった。
 控訴審の東京高裁は、昨秋の結審にともなって「判決では解決できない問題を含んでいる」として事実上の和解勧告をした。
 その交渉で最大のネックとなったのが医療費助成に対する国のかたくなな姿勢だった。
 年間約四十億円、五年分の医療費助成資金は、国、都が各三分の一、残りを自動車メーカーなどが持つとした。
 メーカー側は理解を示したのに、環境省は、応じれば国の責任を認めることになるとして首を縦に振らなかったのだ。
 首相の一声で対応は一変したが、「謝罪、賠償はしない」との一線は、独立法人「環境再生保全機構」が運営する公害健康被害予防基金から拠出とすることで守りきった。
 国からの直接支出でなく、予防に使うとの制約も「金には色がつかない。都が医療助成に充てようが分からない」(官邸側)からだ。
 いわば苦肉の策だ。でもぜんそく発作におびえ、働くこともままならず、医療代にも苦しんできた原告患者の救済になるだけに喜びたい。
 自動車メーカーの解決金もすでに柔軟姿勢を示しているところもある。原告側は一部を基金として広く患者の医療・介護などに充てるとしており、メーカー側の手厚い協力を得たい。
 公害対策についても、国は法規制を含めて環境対策強化に乗り出す。原告側の要望が実現する和解まであと一歩だ。
 東京大気汚染訴訟の成果は全国に広げてもらいたいし、過去のものとして打ち切った公害健康被害補償法による大気汚染公害の新規認定見直しも求めたい。

[京都新聞 2007年06月03日掲載]

中国産品  「食の安全」へ知恵絞れ

 有害物質を含む中国産の食品や医薬品、ペットフードなどによる健康被害が国際的な問題となっている。
 日本も、中国からの食料品輸入が年々増えているだけにひとごとでは済まされない。検疫体制の強化など、あらためて安全確保に努めてほしい。
 今年三月、米国内で中国産原料を使用したペットフードを食べたネコやイヌが大量に死んだのが発端だった。
 米食品医薬品局の調査で、原料に人体に有害な化学物質「メラミン」が含まれていたことが判明。家畜用飼料にも化学物質が混入していたほか、アラバマ州などでは、中国産ナマズから使用が禁止されている抗生物質も検出された。
 さらに深刻なのは中米のパナマだ。
 先月初め、中国製せき止めシロップを服用し、少なくとも百人以上が死亡したと米紙が伝えた。甘味料として、有毒で安価な産業用のジエチレングリコールが使われていたというから怖い話だ。
 パナマやニカラグアなどでは中国製練り歯磨きからも、ジエチレングリコールが検出された。オーストラリアなどでも見つかっており、米政府は、すべての中国製練り歯磨きを使わないよう国内の消費者に警告する騒ぎとなった。
 日本国内では今のところ、米国や中米のような騒ぎ、被害はないが、数年前、中国製ダイエット食品による健康被害や中国産の冷凍ホウレンソウから残留農薬が検出されたことは記憶に新しい。
 今回も二月に、輸入された中国産「かんぴょう」から基準値以上の二酸化硫黄が、先月には中国製土鍋から鉛も検出されている。いずれも直ちに健康に影響はないようだが、安全性を考え、輸入元や販売業者が回収に努めた。
 中国産、製品の安全性については、これまでから業者の意識の低さと中国政府の対応の甘さを指摘する声が強かった。
 先日の米中戦略経済対話で、米側の要望を受けた中国当局は、輸出許可を得ていない「違法な食料品」が大量に海外に出回っている実態を認め、安全・衛生検査体制を強化する考えを示した。
 新薬承認をめぐる汚職事件では、わいろを受け取ったとされる国家食品薬品監督管理局の元局長に、地裁が死刑判決を言い渡すなど、強い姿勢をみせた。
 手をこまねいているわけではなさそうだが、食品生産企業四十五万社のうち、35%に当たる十六万社が無許可営業と聞けば、効果的な対策は期待しにくい。
 そうなれば、日本国内でどう対応するかが大事になる。政府が昨春導入した残留農薬の規制を強化した「ポジティブリスト制度」も効果を発揮しよう。
 輸入業者に中国企業や産品などを念入りにチェックするよう指導を強めるとともに、検疫体制を拡充させ、水際で危険を防ぐ両面作戦も考えられる。
 消費者も交え、「食の安全」確保へ知恵を絞りたい。

[京都新聞 2007年06月03日掲載]

【京都新聞・凡語】

国会 議長が苦言

 「国民の目から見ていかがなものか。責任が持てない」。こういって河野洋平衆院議長は天下り規制を強化する国家公務員法改正案の強行採決に「待った」をかけた▼社保庁改革、「年金支給漏れ」関連法案に続く連日の緊急上程となれば国会の混乱は避けられない。議長が苦言を呈したのも当然であろう。まして安倍晋三首相の意向をたてに、官邸が国会を動かそうとすれば、与党も顔をしかめる▼首相は「ぶれない安倍」を強く押し出すことで低下していた支持率を反転させた。参院選を前に「年金」と松岡利勝前農相の自殺で窮地に陥るいま、さらなる強硬路線で「安倍らしさ」を発信、失地回復につなげたいとの思いもあるのか▼ だが、政策論争もそこそこに、巨大与党の数を頼りに法案成立へひた走る。廃案となれば「野党の責任に」では、あまりに高姿勢すぎないか。まして内閣を監視する国会の運営まで口をはさめば、民主政治のルール無視と映ってもおかしくない▼「安保」で政権を追われた首相の祖父岸信介氏は「高姿勢」と批判された。次いで政権を担った池田勇人氏は低姿勢が看板。その池田政治を演出した後の首相大平正芳氏は、こう述懐している▼「低姿勢といわれることには抵抗を感じる」が、「元来、政治の姿勢は正姿勢であるべきで、勝手に高くしたり、低くしたりしてよいものでない」。

[京都新聞 2007年06月03日掲載]


【朝日・社説】

2007年06月03日(日曜日)付

新銀行東京―都は撤退を決断すべきだ

 「期待にそえなくて残念です」。東京都が1000億円出資してつくった新銀行東京の仁司泰正代表執行役は、547億円という巨額赤字を生んだ06年度決算を発表するとともに、退任を表明した。

 創業からわずか2年間で、累積損失が849億円にもなった。都民は出資金の大半を失ったことになる。仁司氏はトヨタ自動車出身で民間の経営感覚が備わっているというふれ込みだったが、退任の弁では、出資者である都民への責任を自覚しているようには思われなかった。

 新銀行は、石原慎太郎都知事が再選を目指した選挙で公約したものだ。だが、発足当初から経営としては成り立っていなかった。それでも石原氏は「発案は私の責任だが、経営者に責任がある」と、直接の責任はないかのような口ぶりだ。

 銀行の貸し渋りや貸しはがしから中小企業を守る。石原氏のこんな意気込みが間違っていたとはいえないが、融資のノウハウもないのに無担保融資を売り物にした新銀行を設立したのは、明らかに政策判断の失敗だった。

 期待していた中小企業からの資金需要が少なかったため融資が伸びず、通常の銀行業務による利益は、経費の半分にも及ばなかった。また、既存の金融機関から手に余った貸出先を紹介されたうえに、書類審査を中心にした融資判断も甘く、焦げ付きが続出した。

 今回の決算では、融資先が健全かどうか厳しい評価を監査機関が求めたこともあって、不良債権がふえた。不良債権比率は05年度末の0.9%から6.4%へと急増した。

 1年間でこの様変わりだ。融資の実態はもっと悪いのではないかという疑念がぬぐえない。金融庁は早急に検査に入り、この銀行の健全性を調べる必要がある。その際、設立者が自治体だということで妙な配慮があってはならない。

 東京都は新銀行を立て直すために、前副知事や民間銀行出身者を経営陣に送り込んだ。業務の規模を縮小して、09年度の黒字化をめざすという。

 しかし、新銀行の存在意義はもはやなくなっている。不良債権問題から立ち直った民間銀行は、将来性のある中小企業には積極的な融資をはじめている。

 運転資金などに困っている企業を助けるためなら、信用金庫などの融資に公的な信用保証を与えればすむことだ。優良なところに貸出先をしぼるなら、民間金融機関の仕事を奪うことになる。新銀行は必要ない。

 これ以上無理な営業を続けても、損失が膨らむばかりだ。都民が出資金すべてを失うことになってしまう。

 石原知事が決断すべきは、貸出先の企業に迷惑をかけないよう配慮しつつ、この事業から一刻も早く撤退することだ。

 こんな無謀なビジネスをはじめた知事の責任は重いが、ここに至ってさらに存続させる責任はもっと重い。石原氏は、そのことを肝に銘じるべきだ。

枚方市談合―警官がブローカーとは

 談合を摘発するはずの警官が、その犯罪に手を染めていた。前代未聞の出来事にあきれてしまう。

 大阪府枚方市の発注工事をめぐり、談合や汚職を担当する大阪府警捜査2課の警部補が大阪地検特捜部に逮捕された。

 舞台は、枚方市が05年に発注した清掃工場の建設工事だ。焼却炉と工場本体に分けて発注され、工場は大手ゼネコンの大林組などの共同企業体が落札した。大林組顧問らと共謀して共同事業体が落札できるよう談合した、というのが警部補の逮捕容疑だ。

 警部補の果たした役割はなにか。

 ひとつは、焼却炉と工場を分けて発注するよう市側に働きかけたことだ。

 清掃工場のようなプラント工事では、焼却炉のメーカーが主導権を握るといわれる。まとめて発注されれば、ゼネコンは焼却炉メーカーの下請け的な存在となって、うまみが少ない。警部補が分離発注を市側に持ちかけた背景には、こうした事情があった。

 もうひとつは、工場建設の予定価格の引き上げにかかわる疑惑だ。参加企業がなく、最初の入札が不調に終わった後、警部補は工事規模の拡大を市側に働きかけ、17億円以上も高い予定価格でもう一度入札することになった。その結果、大林組などが55億6000万円の高値で落札することができた。

 問題は、警部補がなぜ市側に要求を受け入れさせる力を持ち、ブローカーとして暗躍することができたかだ。

 警部補は事件のきっかけをつかむ能力に優れ、捜査2課では「エース格の捜査員」といわれていた。だが、それだけでは枚方市とゼネコンの間を取り持つことはできない。

 そのカギはやはり、中司宏市長との関係にあるのではないか。

 市側の窓口となった副市長も共犯で逮捕されたが、副市長が警部補と知り合ったのは市長の紹介だ。市長は大阪府議だった20年前から警部補と面識があり、「談合防止のプロ」と紹介していた。

 市長は事件について「関与したという認識は持っていない」と話す。しかし、入札前には警部補の紹介で大林組顧問と会食しており、不透明な関係を批判されても仕方あるまい。

 大林組顧問らは、受注の謝礼として市側に渡す4000万円を共犯で逮捕された建設業者2人に支払った、と供述している。市側で談合に関与したのは副市長だけなのか。謝礼はどこに流れたのか。特捜部には徹底的に解明してもらいたい。

 警部補は事件の捜査を通して、共犯の建設業者の1人と知り合い、頻繁にゴルフ接待を受けていた。「癒着ぶりが目に余る」との情報も府警に寄せられていたが、解明できないでいた。

 警部補が担当した捜査に不正はなかったか。大阪府警は独自に調べなければいけない。信頼を取り戻すためにも、自らの手でウミを出し切るべきだ。

【朝日・天声人語】

2007年06月03日(日曜日)付

 週末の朝、都心の日比谷公園を歩いた。散策の人よりベンチのほうが多い。背もたれ中央に「私達(たち)の路(みち)、ここで決めました」「地上の花園もきれいですよ。たまには座りに来て下さい」などの文字がある。東京都が03年から募る「思い出ベンチ」だ。

 ベンチを都に贈ると、40字までのメッセージと寄付者の名を刻んだプレートがつく。すでに532基が都下の公園や霊園に置かれ、おととい、5年目の募集(100基)が始まった。

 ベンチは形により15万円か20万円。都の財政を助けて、寄付者は名刺2枚分ほどの伝言板を手に入れる。ベンチという公共財が朽ちるまで、私的な言葉は残る。

 ベンチの役割は、いつもそこにあることだ。公園では、そうした動かぬものたちが取り込んだ天地の恵みが、来訪者を癒やす。ベンチはぬくもりで、木立は葉ずれの音、花壇は色彩、池はさざ波で迎えてくれる。

 新刊書『植物の生存戦略』(朝日選書)は「動かぬ生き方」に注目する。「ヒトは動 くことができるという能力を過剰に発揮し、疾風怒濤(どとう)のごとく人生を終えていきます……その対極にある生きものとして、地球は植物を進化させてき ました」(福田裕穂氏)。じっと動かぬことで太陽エネルギーを無駄なく使う知恵は、樹齢1000年を超す巨木を生んだ。

 思い出ベンチになる多摩産材のヒノキは、じっと動かない何十年かに続き、いつも公園にあるという仕事を与えられる。「疾風の人生」を駆ける勤め人、老夫婦、恋人たちを休ませ、語らせ、思い出の続きを紡がせる。


【毎日・社説】

社説:骨太の方針 参院選向けのアメなのか?

 08年度の予算編成と経済政策運営の骨格を示す「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2007」(骨太の方針07)の策定作業が最終段階に入った。

 これまで、主要国首脳会議(サミット)に先立って決定されることが多かった。構造改革を進め、内需主導型経済への努力を、国際的にアピールしていく意図からであった。今年はハイリゲンダム・サミットが早いこともあり、サミット後になる。

 今年の場合、7月の参院選を強く意識していることも指摘しなければならない。これまでの議論や素案からもそのことはうかがうことができる。与党の票集めのアメという性格が濃厚といってもいいだろう。

 小泉純一郎前首相時代にも、政権の構造改革にかける決意を国民に印象付ける政治的道具として使われたことは事実だ。同時に、「改革には痛みが伴う」と言った手前、歳出削減や社会保障給付の見直しにも言及せざるを得なかった。

 安倍晋三政権はどうだろうか。骨太の方針に盛り込まれそうなのは、地域活性化や地方への財源移譲などである。地域経済や地域社会を元気にすることは正しい。そのために適切な施策を講じていくこともその通りだ。

 ところが、いま、議論されているのは、とても骨太と言えるものではない。総務省が研究会で実現に向けて動き出したふるさと納税も都市から地方に財源を移転するひとつの方法ではあるが、本筋にはなり得ない。現状においては、国にしろ地方にしろ、基幹税は所得税、法人税、消費税、住民税、各種資産税である。

 地方分権と税源移譲を一体で考えるのならば、国に偏している税目を地方に移譲する、あるいは、地方6団体が提案しているような地方共通税を創設し、水平調整を進めるのが筋だ。

 ところが、そうした議論は進んでいない。財務省は税源移譲に強く抵抗している。

 骨太の方針には税制改革の基本哲学も盛り込むことになっている。税源移譲のあり方や消費税の位置付けなど根本に立ち入らずして、税制改正の方向の提示はできない。なぜ消費税率上げには触れないのか。「地域活性化に資する税制にします」というだけでは、本当の地方分権は実現しない。

 実現への検討が始まった地域力再生機構は、産業再生機構の成果を教訓とし、地域企業の再生に必要な人材の派遣や紹介を主要業務とするという。しかし、いまさら、官主導でやることなのか。地域企業や地域経済再生のノウハウの積極的提供は必要であるにしろ、それは自治体や地域金融機関、そして住民の手でやるべきだ。

 また、安倍首相は歳出・歳入一体改革では歳出の最大限の削減を指示している。しかし、自民党内には公共事業費の削減に終止符を打とうという動きがある。選挙対策だ。財政改革が本物であるというのであれば、こうした動きを封じなければならない。さもなければ、骨太の方針はいらない。

毎日新聞 2007年6月3日 東京朝刊

社説:外国人研修 人権侵害なくす制度に改めよ

 朝から深夜まで1日13時間もミシンやアイロン台に向かう。時給は300円程度。逃走を防ぐためにパスポートや預金通帳が強制的に保管されるケースもある。外国人研修・技能実習制度で中国、ベトナムなどから来日した外国人が低賃金で過酷な労働を強いられる例が後を絶たない。

 開発途上国の若者らが日本で技能を習得し、帰国後にその技能を発揮することで国際貢献につながる。これが制度の「建前」である。ところが、日本の受け入れ側の「本音」は中小企業などの人手不足を補う安価な労働力としての期待だ。そこで人権侵害や不当な扱いがあっては、国際貢献とは正反対のマイナス効果をもたらす。制度を抜本的に見直すことが急務だ。

 来日から1年目は企業などで研修を受け、一定の技能レベルを身につけた者はさらに2年間の技能実習を積む。93年の制度スタートから研修・実習生の数は年々増え、06年に入国した研修生は約9万3000人、実習生に移行したのは約4万1000人に上る。

 受け入れには、大手企業が現地法人の従業員らを直接招く方法と、中小企業でつくる事業協同組合などの団体が受け入れ、傘下企業で研修・実習を行う方法の2種類がある。中小企業のニーズの高まりから団体受け入れが急増し、全体の9割を超えている。

 この団体受け入れ方式で問題が顕在化している。法務省の調査で不正行為が認定された団体・企業は06年に過去最多の218を数えた。それに加え、研修・実習生を日本に送り出す窓口機関が多額の保証金を出国前に徴収し、その借金返済で無理に稼ごうとする研修・実習生も多い。昨年8月には、保証金約100万円を納めた中国人研修生が千葉県の研修先で残業を増やすよう求め、日本人を殺害する事件も起きた。送り出し機関と受け入れ団体の間でうごめくブローカーの存在も指摘される。

 日本の技術を自国の産業に役立てている成功例もあるが、団体受け入れ方式の多くで制度本来の趣旨は破たんしていると言わざるを得ない。廃止も含め、政府は制度のあり方を真剣に検討すべきだ。

 関係の省が相次いで見直し案をまとめた。厚生労働省の研究会は研修をやめて実習に一本化する提言をした。現行は労働者と扱われない研修生も労働法規で守られる利点はあるが、問題の根本解決となるかは不透明だ。経済産業省の研究会は現行制度を維持し、受け入れ先の規制強化に力点を置く案だ。さらに経済界の要望に応え、一時帰国後の再入国でさらに2年の実習を認めるというが、それでは問題を一層拡大しかねない。

 一方、長勢甚遠法相は制度を改め、人口減少社会での労働力確保のために3年間の外国人就労を認める私案を公表した。これまで政府が認めてこなかった外国人の単純労働に道を開くことになるが、外国人の定住化にもつながる問題だ。将来の「国のかたち」にかかわり、国民のコンセンサスが大前提となる。この問題提起も併せて、論議を深める必要がある。

毎日新聞 2007年6月3日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:正岡子規が野球好きだったことは有名だ…

 正岡子規が野球好きだったことは有名だ。「打者」「四球」「遊撃手」などの訳語を生み出したことでも知られている。幼名は「升(のぼる)」といい、「の・ボール」から「野球」を雅号に使ったこともあって「野球の名付け親」として紹介されることも少なくない▲だが、この説には有力な反論がある。旧制第一高校で子規の1年後輩にあたる中馬庚(かのえ)が名付け親という説だ。今ではそれが定説となっているが、その「中馬説」に生涯をささげた人がいる。教育者だった中馬が最後の教壇に立った徳島県の旧制脇町中学の教え子、幸田昌三氏である▲幸田氏が中馬説の根拠としたのは1894(明治27)年に中馬が書いた一高の野球部史の序文だった。現代表記に直すと「いまだ我部の評決を経ずといえども、余はローンテニス部を庭球とし我部を野球とせば大いに義に適せりと信じて表題を野球部史とした」との記述が残っている▲幸田氏は1900(明治33)年生まれ。早大を卒業後、電通や共同通信の前身である日本電報通信社に勤務し、戦後は郷里の徳島に戻り、川田町(現・吉野川市)の初代公選町長も務めた。旧制中学時代の恩師の功績を伝えようと、全国の資料や関係者を訪ね「中馬説」の確信を深め、新聞や雑誌に投稿して訴え続けた▲21年前に幸田氏は86歳で亡くなったが、今年になって4人の子どもたちが遺稿や残されたメモを整理し、その名もずばり「野球の名付け親は中馬庚」(自費出版図書館編集室製作)を出版した。師弟愛に加え、親子の情愛が生み出した一冊でもある▲野球好きの子規と中馬のことだ。野球の名付け親がどちらであろうが、大リーグから早慶戦まで、天国で後輩たちのプレーに仲良く目を細めているに違いない。

毎日新聞 2007年6月3日 東京朝刊


【読売・社説】

「脱北者」 日本を目指すことになるのか(6月3日付・読売社説)

 脱北者が日本を目指すようになるのか。事実関係を詳しく調査した上で、政府としても的確に対応する必要がある。

 青森県・深浦港沖合で、不審な船が航行しているのを釣り人が見つけたのが発端だった。青森県警が乗船していた男性3人と女性1人を保護したが、「生活が苦しくて北朝鮮を脱出してきた」と話しているという。

 北朝鮮当局から指示を受けた工作員などではなく、北朝鮮を脱出し、日本に入国を図った可能性が高いようだ。船は全長わずか7メートルほどの木造船で、毒薬とみられる薬品を持っていた。切羽詰まった行動に見受けられる。

 政府は当面、4人を保護する。まずは人物の特定や脱北した理由、脱出のルート、目的地などを慎重に調べなければ最終的な判断は難しい。

 直接には入管難民法違反に当たり、強制送還するのが一般的だ。経済的困窮を理由に脱北した「経済難民」であれば、日本政府に保護義務はない。

 だが、脱北者たちの証言によると、北朝鮮へ強制送還されると、多くは強制収容所に送られ、命を失うこともある。

 日本が昨年制定した北朝鮮人権法には「脱北者の保護、支援に関し、施策を講ずるよう努める」という一項がある。法の趣旨を踏まえ、本人の意思を聞くなどして対処するのは当然のことだ。

 脱北者は近年、急増し、韓国に今年2月までに入国した総数は推定で1万人を突破した。中国では脱北者が日本人学校や日本の総領事館に逃げ込み、外交上の問題に発展したケースもあった。

 しかし、日本海ルートで日本に来た例は、ズ・ダン号の事件があるだけだ。男性らは「新潟はどこか」と釣り人に尋ねたという。日本に受け入れ先があったのか。今後も多発する可能性はあるのか。こうした点の調査も必要だ。

 背景には、深刻な経済危機を招いた失政を棚に上げて、専制恐怖政治を続けている金正日支配体制がある。

 脱北者の問題は拉致事件と同様、北朝鮮による重大な人権侵害問題だ。

 中国や韓国のほかに、タイなども脱北者問題に直面し、米国も北朝鮮人権法を制定し、これまでに30人の脱北者を受け入れている。日本はこうした国々や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などと連携し、問題の解決を図っていく必要がある。

 今回の事件では、北朝鮮が身柄の引き渡しを求めたり、日本の対応を非難したりするなど、筋違いの脅しをかけてくることも予想される。そんな圧力に屈せず、毅然(きぜん)と対応していくことも大事だ。
(2007年6月3日1時23分  読売新聞)

防災白書 天災の怖さ忘れずに備えを(6月3日付・読売社説)

 災害に備える意識は時間とともに薄れる――。内閣府がまとめた今年度版の防災白書が、そう警鐘を鳴らしている。

 日本は「災害列島」だ。しかも、大災害が起きる可能性は増している。だが、対策は、実際の災害から月日が過ぎると、進まなくなる。

 行政に加え、企業、地域、個人も、日ごろの備えにもっと取り組まないと、大きな被害は避けられない。

 例えば、集中豪雨の脅威が増大している。過去30年間で見ると、ここ10年間は1時間に100ミリ以上の雨が降る回数が倍増した。「恐怖を感じる」と言われる雨量だ。昨年は竜巻も多かった。北海道佐呂間町の竜巻では、死者数が国内最多の9人、負傷者も31人にのぼった。

 いずれも、地球温暖化の影響という指摘がある。とすれば、今後、この傾向はますます強まるかもしれない。

 甚大な被害が予想される東南海・南海地震や首都直下地震は、いつ発生してもおかしくないと言われる。今年3月の能登半島沖地震のように、警戒されていなかった地域でも地震は起き得る。

 水害時は、どう避難したらいいか。家具類は地震で倒れて下敷きにならないよう固定してあるか。家族とすぐに連絡できるか。地域で助け合う体制はできているか。平時から準備しておけば、被害を軽減できる対策は沢山(たくさん)ある。

 だが、内閣府の調査では、家具類を固定している人は2割程度だ。備えが足りず、危機感も薄い。津波警報が出ても避難しない。昨年の千島列島地震では、北海道沿岸で避難を勧告された住民のうち避難したのは1割程度だった。

 最悪の場合、どんな被害が出るか。政府は、それを周知して、国民の防災意識を高める必要がある。

 「文明が進むほど天災による損害の程度も累進する」(寺田寅彦)と言われる通り、新たな弱点も表面化している。

 一例が建物だ。白書によると、東京都内では、地階を持つ建物が、過去20年間で倍増した。100メートル以上の超高層ビルも、都心3区では、過去15年間で4倍に増えている。前者は豪雨などによる浸水被害、後者は地震時のエレベーター停止などが問題化している。

 家族全員が一緒に過ごす時間が減少し、高齢者の一人暮らしが増え、地方の過疎化が進むなど、緊急時に助け合う人のつながりも揺らいでいる。

 ただ、携帯電話、インターネットのように防災に役立つ文明の利器もある。海外では、携帯電話のメールに政府が災害情報を配信する例もあるという。技術の活用も、もっと模索していい。
(2007年6月3日1時24分  読売新聞)

【読売・編集手帳】

6月3日付 編集手帳

 女子卓球界は中国が圧倒的な強さを誇っている。先週までクロアチアのザグレブで行われた世界選手権の女子シングルスは、ベスト4に進んだ全員が中国人選手だった◆メダルの獲得が期待された福原愛選手や平野早矢香選手ら日本勢は3回戦で姿を消した。世界ランク11位の福原選手は63位のルーマニアの選手に1ゲームも取れずに屈した。まるで忍者のようだった俊敏な動きが見られなかった◆史上最年少の14歳6か月で世界選手権の代表に選ばれるなど天才少女と呼ばれた福原選手だが、このところスランプなのだろうか。今年1月の全日本選手権ではベスト8に入れず、「成長曲線に陰りが見える」とも指摘された◆ ザグレブ大会で優勝したのは福原選手と同じ18歳の郭躍選手だった。福原選手は、2005年に入団した中国の遼寧省チームで一緒だったこともある。今年2月にカタールのドーハで行われた大会などで、この郭躍選手に勝ったこともある◆やはりザグレブ大会に出場した14歳の石川佳純選手が新しい天才少女として注目され始めているが、福原選手も再び成長曲線を描くことを決してあきらめてはいないだろう。互いに刺激し合って世界の上位を目指してほしい◆長い雌伏の時を経て華やかに復活する。そんな劇的な人間ドラマこそスポーツを観戦する醍醐(だいご)味だ。
(2007年6月3日1時43分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】技術流出 企業の感度が鈍くないか

 企業の技術流出が深刻だ。政府の「ものづくり白書」最新版は、技術流出防止が日本の製造業の国際競争力維持・強化にとって重要課題であると訴えている。

 白書は、経済産業省が昨年12月にまとめた製造業に対する調査結果を紹介している。それによると、「技術流出があった」とした企業は35・8%に達した。流出先と考えられるのはトップが中国63・5%、次いで韓国だ。

 外国企業による合併・買収で重要技術が流出するとの危機感は強い。三角合併解禁のさい、外資規制を求める声が経済界で高まった。安全保障の観点から、外資が投資する場合に法律で事前届け出が義務付けられる業種、技術が拡大されることにもなっている。

 留意すべきは、合併・買収などによる流出より、元社員や外国人社員による技術持ち出しが多いことだ。

 企業機密漏洩(ろうえい)では不正競争防止法の罰則が強化され、最高刑は懲役10年と米国並みになった。政府内には、機密情報を第三者に示したことが確認されなくても、入手しただけで処罰できるよう同法を再改正する動きもある。

 法律面の整備もさることながら、企業の情報保持に対する意識を向上させることも重要だ。

 機密情報は通常の情報と区別され、アクセス制限や厳格な手続きが求められるべきだ。にもかかわらず、両者の区別があいまいな例が多い。先の調査では、社員に秘密保持契約を課している企業は7割を超えるが、「保持すべき秘密」を特定しているのは約4割である。これでは実効性が問われる。

 企業の感度の鈍さは、後を絶たぬ軍事転用可能な技術・製品の中国、北朝鮮への不正輸出にあらわれている。

 今春、自動車部品大手デンソーの中国人技術者が、機密情報を含む大量の製品データを持ち出したとして横領容疑で逮捕された。中国への技術流出は確認できず、起訴は見送られたが、同社のデータ管理の甘さは責められよう。日本企業の技術者が週末、中国や韓国に出かけてアルバイトしているうちに技術が流出したケースも多い。

 まずもって、企業や従業員自らが、技術流出防止への感度を上げることである。それなくしては、せっかくの法整備も生かされまい。

(2007/06/03 05:48)

【主張】がん対策 禁煙こそ重要な予防手段

 4月に施行したがん対策基本法に基づき、国の具体的施策を定めた「がん対策推進基本計画」がまとまった。6月中に閣議決定される。

 年間30万人以上の日本人が、がんで亡くなっている。がんが死因のトップになって久しい。がん撲滅を目指す初の国家戦略が動き出したことを評価したい。

 基本計画は、75歳未満のがん死亡率の2割削減と、患者や家族の苦痛軽減を目標とし、その達成に向けて、(1)放射線治療と化学療法の推進(2)痛みに対する緩和ケアの充実(3)患者の状況を把握するがん登録の推進-を取り組むべき課題としてあげている。

 しかし、がん予防に効果が大きく、厚生労働省のがん対策推進協議会の会合でも一度は合意されていた「喫煙率半減」という数値目標の設定は、今回の基本計画では見送られた。

 日本たばこ産業(JT)から「個人の嗜好(しこう)への国家権力の介入だ」と強い反発があったことや、たばこ販売で年間約2兆2000億円の税収を得ている財務省への配慮もあったようだ。

 国民の健康維持を考えると、非常に残念である。

 禁煙を推し進める厚労省に対し、財務省は消極的であるなど政府部内でも立場は異なっている。ここに国の政策の大きな矛盾が存在する。

 がん撲滅を国家戦略とする以上、強い因果関係があるとされる喫煙の問題については、より真剣に議論される必要がある。

 国立がんセンターによれば、男性44%、女性12%の喫煙率がそれぞれ半減すれば、10年後のがん死亡率は男女合わせて1・6%減少するという。

 喫煙率の低減は、がんの死亡率を引き下げるために欠かせないひとつの要素であろう。

 厚労省は、5月31日の「世界禁煙デー」にあわせ、6月6日までの1週間を「禁煙週間」と定めている。

 一昨年2月には「たばこ規制枠組み条約」が発効し、受動喫煙の防止やたばこのパッケージへの警告が義務づけられ、昨年4月からは禁煙治療に健康保険が適用された。路上喫煙禁止条例の制定、タクシーを全面禁煙とする動きも全国に広がっている。

 禁煙環境が整ってきた。たばこと縁を切るには絶好のチャンスだろう。

(2007/06/03 05:23)

【産経抄】

 「半ドン」というなつかしい言葉がある。週休2日制の浸透で今は死語に近くなったが、学校や役所、それに会社が土曜日の午後だけ休むことだった。ドンとはオランダ語がなまったドンタク(休日)からきているそうだ。半分のドンタクの意味である。

 ▼仕事の効率という面からは中途半端な日だったと言える。だがサラリーマンにとっては案外、使い勝手の良い日でもあった。休日に出てくるのは面倒に思いがちな映画館、美術館回りには格好の時間だった。仕事からの解放感にもひたることもできた。

 ▼その半ドンが公立の学校で復活するかもしれない。政府の教育再生会議の第2次報告で学力向上のため授業時間の10%増を打ち出した。その具体的方策として夏休みの活用などとともに、土曜授業を提示しているからだ。むろん一部の人たちがお嫌いな強制ではない。

 ▼5年前に学校の週5日制を始めた目的は、子供たちに社会体験などをさせる時間をつくるということだった。だが大半の親が感じているのは、テレビゲームやマンガの時間が増えたということだけだ。不安に思った親の希望で、すでに土曜授業を実施している学校もある。

 ▼社会体験や自然体験といっても、ある程度教師が指導しなければ、できるわけがない。そうせずに時間だけ与えては、子供たちがゲームに走るのも仕方ない。それに、土曜日の午前中までが学校、という明治以来の子供たちのリズムが狂ってしまったような気がする。

 ▼半ドン時代には子供たちも、土曜の午後の過ごし方を自分で考え、工夫していた。学力向上ばかりでなく、真のゆとり教育のためにも土曜を半ドンに戻すことを考えてもいい。一部の先生たちは「労働強化だ」と猛反対するだろうが。

(2007/06/03 07:01)


【日経・社説】

社説1 条例制定権の拡充は地方分権の柱だ(6/3)

 政府の地方分権改革推進委員会が今後の改革の方向性をまとめた。行財政面だけでなく、立法面でも分権を進めて、条例制定権を拡充する方針という。国による様々な関与を減らし、住民に身近な自治体の創意工夫を促す姿勢は評価できる。

 2000年に地方分権一括法が施行され、法的には国と自治体は対等な関係になった。しかし、国が様々な仕事を自治体に義務づけているうえ、法律や政省令で施設などの基準や執行方法を事細かに定めており、対等などと呼べる状況ではない。

 全国知事会が国の過剰と思われる規制や関与を3年前に調査したところ、約570件に上った。「幼稚園の空き教室を保育園に転用したかったが、調理室の設置などが義務づけられているのでできなかった」「堤防では国土交通省、水産庁、林野庁それぞれに基準があり、一体的な整備の障害になっている」など、様々な事例が挙げられた。

 同委員会ではこれを是正する方法として、条例による法令の「上書き権」を提案している。国が政省令などで基準を示している場合でも、自治体が条例を定めればその適用を除外する、という考え方である。国の規制でがんじがらめになっている現状を解きほぐすひとつの手法であろう。自治体の条例制定権を強めれば、地方議会の活性化にもつながり、議会の責任も増すだろう。

 国と地方の二重行政を解消するために、国の出先機関の見直しも進めるべきだ。この問題についてはすでに、経済財政諮問会議で民間議員が試案を提示し、分権改革委員会に具体案の検討を求めている。

 仕事の重複を省けば、出先機関に約20万人いる国家公務員のうち、最大で10万人削減できるという試算もある。国と地方の役割分担を抜本的に見直すきっかけにもなるだろう。ただし、自治体への仕事や職員の単なる押しつけにならないように、地方に移す場合には権限そのものを自治体に移譲し、財源面でも国がある程度手当てする必要がある。

 同委員会は今回まとめた「基本的な考え方」で、国民・住民のための地方自治を担う地方政府を確立すると述べている。同委員会によると、政府の公式文書で「地方政府」という文言を使うのは初めてという。

 同委員会は今後2年以内に改革案を順次まとめ、政府に勧告する。国から地方へさらに税源を移譲し、住民の受益と負担の関係をわかりやすくする。条例制定権を拡充して自治体に自由を与え、その責任も求める。そんな改革をぜひ実現したい。

社説2 スー・チーさんを解放せよ(6/3)

 なんとも困った軍事政権があったものだ。ミャンマー当局が先月、アウン・サン・スー・チーさんの自宅軟禁をさらに1年延長することを決めた。スー・チーさんは民主化指導者というだけで過去17年のうち11年も拘束されている。実に遺憾な決定だ。

 スー・チーさんの今回の拘束は4年前から続いていたが、先月27日に期限切れを迎える予定だった。その直前にはクリントン前米大統領、小泉純一郎前首相ら世界の元指導者59人がミャンマーの最高指導者タン・シュエ将軍に書簡を送り解放を求めたが、将軍は聞く耳を持たなかった。

 国連事務総長をはじめ米欧諸国は軟禁延長を非難した。当然である。麻生太郎外相は28日にハンブルクでミャンマーのニャン・ウィン外相と会談し、「なんらかの対応」を求めたが、もっと明確にスー・チーさんの解放を求めるべきだった。

 問題は国際社会が一致結束してミャンマーの人権抑圧に対処できていないことにある。

 国連安全保障理事会は今年1月、米英が中心になってミャンマーの人権状況に懸念を示しその改善を求める決議案を提出したが、中国とロシアが拒否権を発動、葬り去った。

 中国は軍事政権と極めて親密で、制裁どころか同国を経由した石油やガスのパイプラインの建設まで計画、支援している。

 ロシアも原発協力を検討しているという。国際原子力機関(IAEA)の監視を受け入れるから問題ないというが、人権抑圧の状況を踏まえない政策である。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)の対応も優柔不断に過ぎる。1997年にミャンマーを仲間に迎えた。加盟を受け入れることで民主化を促し、中国への過度な傾斜を止めるという「建設的関与」政策を取ったわけだが、その後の展開はまったく期待を裏切っている。

 ASEANが動けば少しは状況が変わるかもしれないのに、内政不干渉を口実にミャンマーの問題に関与すべきではないとの国がある。ASEANは共同体めざし域内の連携を深めると言うが、こんな事態を許しておいていいのだろうか。

【日経・春秋】

春秋(6/3)

 JR五能線といえば鉄道ファンの間ではよく知られたローカル線だ。日本海の波しぶきを受けながら、青森県の西海岸をゆっくりと走る。艫(へ)作(なし)、風合瀬(かそせ)、鰺ケ沢(あじがさわ)。駅名にも風情が漂う。深浦はそんな沿線の、江戸時代から栄えた港町だ。

▼戦争末期、故郷を巡った太宰治の紀行「津軽」にも、「一とおり海岸の名勝がそろっている」と深浦が登場する。食糧難の時代にもかかわらず、酒も出るし食べ物はふんだんにあった。「お膳の上には鯛(たい)と鮑(あわび)の2種類の材料でいろいろに料理されたものが豊富に載せられてある」と、太宰は満足そうに書いている。

▼昨日この漁港に、北朝鮮を脱出した男女4人乗りの船がたどり着いた。豊富な鯛や鮑を求めてきたわけではなかろうが、海を渡り直接日本を目指したとは驚く。毒薬らしきものを持っていたというから、よほどの覚悟があったに違いない。6カ国協議での約束も守らぬ将軍様の下で、民衆は生活苦にあえいでいる。

▼日本政府が4人の身柄をどう扱うのかが大いに気になるところ。もうひとつ心配になるのは、屋根もない小さな木造船でさえ、北朝鮮からあっけなく日本の港まで入り込んできたことだ。これが高性能の工作船ならどうなるのだろうか。深浦沖にはかつて異国船がたびたび現れ、津軽藩は番所を設けていたという。


|

« amazonの本のライブリンクをはった覚えはないのだが、。(笑)メモリーとデジカメとICレコーダーと電子辞書は確かにはった。 | トップページ | 脅威のバナー『美しい国⇒美しい星、「美し」連呼で年金問題 臭い物に蓋・護美箱内閣、それニャら、ゴミは護美箱へ、美しく』(笑) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 6月3日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。:

» トヨタ 自動車 健康 保険 組合 [自動車査定無料 ・愛車 中古車簡易見積 自動車保険お宝探偵団]
6月3日の地方紙:沖縄タイムス創業からわずか2年間で、累積損失が849億円にもなった。都民は出資金の大半を失ったことになる。仁司氏はトヨタ自動車出身で民間の経営感覚が備わっているというふれ込みだったが、退任の弁では、出資者である都民への責任を自覚(続きを読む) 6/4..... [続きを読む]

受信: 2007年6月15日 (金) 18時09分

» 介護保険のQ [介護保険制度を味方に]
介護保険のQ [続きを読む]

受信: 2007年9月19日 (水) 18時45分

« amazonの本のライブリンクをはった覚えはないのだが、。(笑)メモリーとデジカメとICレコーダーと電子辞書は確かにはった。 | トップページ | 脅威のバナー『美しい国⇒美しい星、「美し」連呼で年金問題 臭い物に蓋・護美箱内閣、それニャら、ゴミは護美箱へ、美しく』(笑) »