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2007年6月 6日 (水)

6月6日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】

社説(2007年6月6日朝刊)

[米軍燃料流出]地元無視の通報遅れだ

 米軍嘉手納基地の北側滑走路そばの駐機場に、大量のジェット燃料が流出した。二百リットルドラム缶に換算すると、四十三本分に相当する約二千三百ガロン(約八・七キロリットル)という。

 生半可な量でないが、問題はそればかりでない。那覇防衛施設局を通じて地元へ連絡が入ったのは発生から一週間、米軍が覚知してからも数日たっている。地元をないがしろにするもので怒りを通り越してあきれてしまう。

 現場は嘉手納町役場の南八百メートルにあるKC135空中給油機、MC130特殊作戦機などの駐機場。施設局の当初の説明によると、五月二十五日午後八時半ごろ、航空機への燃料補給中に燃料タンクのシステムが正常に作動しなかったため計五千三百ガロンが漏れた。

 三千ガロンはピットと呼ばれる空洞部分にたまり米軍が回収。駐機場のコンクリート上に流れた二千三百ガロンも回収し排水溝から基地外への流出は確認されなかったという。

 県企業局北谷浄水場は、嘉手納基地内にある二十の井戸から地下水を一時間当たり計八百トンを取水して浄化。地元や那覇など七市町村に給水している。地下水への影響がないか心配だ。

 嘉手納基地周辺で復帰前、航空機燃料が地下に染み込み「燃える井戸」が出現したことは地域の記憶から消え去ることはない。米軍の言い分をそのまま受け取ることはできないのだ。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)の野国昌春会長(北谷町長)は「環境への悪影響が懸念される」として、基地内立ち入り調査を求めた。地元住民の生命と安全を守る立場にある首長としては当然の要求であり、米軍が基地外への流出がないというのであれば基地内の調査に応じてしかるべきだ。

 県環境保全課は独自に嘉手納基地周辺の三カ所で、河川や排水溝、わき水から取水し基地外への有害物質の流出がないか調査を始めた。

 米軍基地内で環境に悪影響を及ぼす恐れのある問題が起きた場合、米軍は大使館を通して外務省に通報し、外務省が施設局へ連絡する。

 米軍はその後、五月二十五―二十八日は航空機が飛ばず、流出に気付いたのは二十九日と事実関係を修正してきている。施設局の当初の説明と大幅に食い違い不可解だが、それでも二十五日から四日間流れっ放しだったわけで、施設管理のずさんさが問われる。

 外務省沖縄事務所、那覇防衛施設局は、米軍にもっと毅然とした態度で臨んでもらいたい。米軍の代弁者ではなく、県民の声を米軍に届けるのが本来の役割のはずだからだ。

社説(2007年6月6日朝刊)

[温暖化対策]日本の力量が問われる

 ドイツ北東部で六日(日本時間七日)から主要国(G8)首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)が開催される。

 今年で三十三回目の同サミットは、議長国ドイツのメルケル首相の意向もあり、地球温暖化対策が最重要課題となる。ゲストとして経済成長が著しい中国、インド、ブラジルなど五カ国首脳を招いて対話の場を設ける。環境やエネルギー問題に対処するためにはこれらの国との協調が不可欠だからだ。

 だが、二〇五〇年までに二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス排出量を半減させる長期の数値目標設定を主張する欧州各国に対し、米国は強く反対しており、長期の数値目標設定は議長総括に明記されない見通しだ。

 温暖化対策をめぐるG8の足並みの乱れを印象づけており、京都議定書に定めのない一三年以降の新たな枠組み交渉の行方にも影響しそうだ。

 サミット初参加の安倍晋三首相は、温暖化対策で対立する米欧の「橋渡し役」を担うものと、その手腕が期待されている。

 首相は、今回のサミットに向け「温室効果ガスの排出量を現状から五〇年までに半減する」などの目標を掲げた政府方針「美しい星50」を発表。省エネ技術を生かした環境保全と経済発展の両立を打ち出し、温室効果ガス削減の国民運動を提案している。

 五日に閣議決定された〇七年版の環境・循環型社会白書でも、温暖化について「人類社会が破局に突き進む時計の針を止めるため、対策の加速が喫緊の課題」と強い危機感を表明した。

 京都議定書で義務付けられている6%削減目標を達成するのが、当面の日本の課題だ。そうでなければ、国際社会で主導権を取るのは難しい、と言わざるを得ない。

 京都議定書後の温室効果ガス削減の枠組みづくりは、首相が議長を務める来年の北海道洞爺湖サミットが正念場となる。

 深刻化する温暖化対策で、日本の力量が問われているといえよう。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月6日 朝刊 1面)

 それは聞くというより体験するといったほうがよいコンサートだった。四月中旬、北谷のライブハウスでのこと。不思議な音を出す電子楽器の演奏に触れた。

 テルミンと呼ばれる装置とオンデ・マルトノという鍵盤楽器の二種。特に前者は演奏者を見るだけでも面白い。なにしろどこを弾いているのか分からないのだから。目の前にあるのは箱の両端から縦と横に伸びたアンテナだけなのである。

 演奏者は両手をそのアンテナに近づけたり遠ざけたりして音を出している。アンテナの周囲に発生する微弱な電磁場に変化を与えることで、音を紡いでいるらしい。宇宙空間の表現に使われるような音楽だ。

 何でも世界最古の電子楽器とか。一九二〇年、ロシアの物理学者でチェロ奏者でもあったレフ・セルゲイビッチ・テルミンが発明した。演奏には熟練が必要とされる。微妙な手の動きで音が変わるから同じ旋律を反復するのも難しそう。

 平均律への反発―。客席の片隅で耳を傾けながらそんな言葉が浮かぶ。ピアノに代表されるようなキッチリと分割された音階に飽き足らない感情によって生み出された音楽といえるのではないかと思ったのだ。

 日本の能に関心を持つ欧米人の多くはそうした西洋の近代音楽に疑問を持つ人だという。電子音楽は一見、最先端を行っているようで実は前近代の良さを求めているようにも思える。人類の音へのこだわりを見せられた夜だった。(真久田巧)


【琉球新報・社説】

航空燃料漏出 環境への悪影響が心配だ

 米空軍嘉手納基地内で環境汚染が懸念される大量の航空機燃料漏れ事故が起きた。北側格納庫で約2万リットル(ドラム缶100本分)の燃料が漏出、約1万1000リットルを回収したが約8700リットルは回収できなかった。
 基地外への燃料漏れはなかったというが、地中に浸透し周辺の環境に悪影響を及ぼす可能性も否定できない。
 1967年には嘉手納基地のジェット燃料がパイプ破損で地下水を汚染。周辺の井戸に浸出し、くんだ水が燃えるという深刻な事態を招いた。「燃える井戸」と呼ばれ大きな問題になった。
 基地の外に漏出しなかったからといって、決して安心はできない。
 事故が起きたのは5月25日だが、米軍は6日後の5月31日になるまで那覇防衛施設局に報告していない。施設局が県や地元自治体に連絡したのは発生から1週間後の6月1日のことである。
 基地の中でどんなに深刻な問題が起きても、県民は蚊帳の外だ。これでは基地周辺の住民は安心して生活できない。
 県の対応にも問題がある。1日に報告を受けていながら即座に公表しなかった。4日になって、報道機関の問い合わせに対し初めて事故発生の連絡があったことを認めている。
 県民の生命・財産を守るべき立場の県が、基地内の事故発生を知りながら公表を控えるというのでは、米軍のずさんな基地運用を助長しかねない。
 県は5日に初めて嘉手納基地のフェンス沿いで水質調査を実施しており、対応の遅れは否めない。
 嘉手納飛行場に関する3市町連絡協議会は米軍に抗議することを決定。北谷町長からは基地内立ち入り調査を求める声も出ている。
 県は、米軍に対し再発防止を強く申し入れると同時に、燃料漏出がどの程度環境を汚染したかを把握するため、県や周辺自治体による立ち入り調査の実施を要求すべきである。米軍の事故に対しては、及び腰になるのではなく、毅然(きぜん)とした態度で臨んでもらいたい。
 事故が起きても地元はそっちのけという状態がまかり通る背景には不平等な日米地位協定の存在がある。協定を見直し、米軍関係の事件、事故があれば速やかに関係自治体に通報することを盛り込むとともに、基地内への立ち入り調査についても明文化すべきだ。
 今回の事故に対し地元自治体の議会では抗議決議に向けた動きが出ている。再発防止のためには知事や県議会を含め、住民代表である首長や議会が怒りの声を上げることが重要である。
 米軍は本当に「よき隣人」を目指すのなら、県民の懸念に真剣に耳を傾け、事故が2度と起きないよう抜本的な対策を講じるべきだ。

(6/6 10:05)

環境・循環白書 いつも省エネ心掛けたい

 2007年版環境・循環型社会白書は、悪化する地球環境に強い危機感を表明し、省エネルギー技術の開発、普及による地球温暖化防止の重要性を強調した。省エネ型の家電製品に切り替えることで1世帯当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を最大4割以上削減できるとの試算を示している。
 地球温暖化の原因となるCO2などの温室効果ガスの排出量を抑制することは世界共通の課題だ。温暖化に歯止めをかけるため、あらゆる手だてを講じる必要がある。
 日本の優れた省エネ技術を世界に広め、環境保全と経済発展の両立を図るべきだろう。
 白書によると、テレビ、冷蔵庫などをすべて一斉に省エネ家電に交換すれば、夫婦と子ども2人の世帯で44%、夫婦だけの世帯でも42%のCO2削減になるという。
 ただ機器を更新すればよいというわけではなく、国民一人一人が日ごろから省エネを心掛けることが何よりも大切だ。
 05年に発効した京都議定書は08―12年(平均)の国別の温室効果ガス排出量の削減目標を定めており、日本は90年比で6%の削減が義務付けられた。ところが日本の排出量(05年度)は90年に比べ逆に8.1%も増えている。目標達成には単純計算で14%の削減が必要で、クリアするのは極めて厳しい状況だ。
 国連の「気候変動に関する政府間パネル」は、このまま地球温暖化が進めば21世紀後半までに北極海の海氷が晩夏にほぼ消滅する可能性があり、海洋の酸性化の進行で台風などもより強力になる―などと警鐘を鳴らしている。
 沖縄でも海面水位上昇が最大になった場合、2100年には県土の総面積の1.5%が水没するとの予測もある。
 政府は京都議定書の削減目標にちなんで「チーム・マイナス6%」と名付けた国民運動を展開しているが、浸透度はいまひとつだ。啓発にもっと力を入れたい。
 家電の買い替え以前に、自家用車の利用を極力控えるなど、国民、県民挙げて温室効果ガスの削減に取り組む必要がある。

(6/6 10:04)

【琉球新報・金口木舌】

 地質年代区分では約2億年から1億4000年前までの時代を「ジュラ紀」と呼んでいる。恐竜の時代としても知られる
▼道具学会というのがある。人間の作り出した道具のありようをつぶさに観察し、道具によって生きる人類、社会の未来を考えていくことを目的にしている。その学会の企画担当理事を務める村瀬春樹さんは沖縄戦からしばらくの期間を「沖縄のジュラ紀」と呼ぶ
▼当時、県民が沖縄戦で使われたジュラルミン製の戦闘機などの残骸(ざんがい)を溶かし、やかんや鍋などの生活代用品、転用品に仕立て上げた時代だからだ
▼戦争の廃品を何にでも転用する庶民の知恵が発揮された時代と言えば、聞こえはいい。だがここで言う「ジュラ紀」とは、どこかで戦争が起きなければ現れないものだ。沖縄の後にはベトナム、最近ではアフガニスタン、イラクでも出現している
▼7日から、沖縄市戦後文化資料展示室ヒストリートの分室「しーぶんかん」で、沖縄の「ジュラ紀」を含めた世界の代用品、転用品を展示する
▼展示される道具の一つ一つは、負の遺産を生活道具に変えてしまう人間の知恵やたくましさとともに、繰り返し「ジュラ紀」を生み出してしまう人間の愚かさを静かに訴え掛けてくる。

(6/6 9:59)


【東京新聞・社説】

年金政府案 不安解消にはほど遠い

2007年6月6日

 社会保険庁の不手際による“消えた年金”問題で政府が示した対策には不明な点が多すぎる。国民の年金不信は増大するばかりだ。参院選のための口先だけに終わらせては墓穴を掘ることになる。

 与党が先週強行採決した年金時効撤廃特例法案と、社保庁改革法案について参院厚生労働委員会の審議が五日から始まったが、政府側から十分な答弁がなく、国民の不安解消にはほど遠い。

 特例法案は、基礎年金番号が付いていない、対象者が不明の約五千万件の公的年金保険料の納付記録について、対象者が判明し差額分の年金を受け取る場合、五年を超えても遡(さかのぼ)って請求できるようにする。

 “消えた年金”問題解決のために必要な措置だが、衆院でわずか四時間で審議を打ち切ったために、法案の細かい内容はほとんど詰められなかった。急落した支持率に驚いた安倍晋三首相が急いだ結果だ。

 さすがに、これではまずいと思ったのだろう。柳沢伯夫厚生労働相は四日、政府の追加対策を示した。

 五千万件について、すでに基礎年金番号が付いている年金受給者・年金加入者の記録とのコンピューターを使った照合作業を、一年以内に終えることなどを明言した。

 だが、照合作業は、氏名、生年月日、性別を参考に同一の可能性のあるものを選び出すが、コンピューターに入力してあるデータが不完全なため、最後は手作業になる。年金に詳しい人手が多数必要で、一年で終了できるかどうか疑問だ。

 しかも、入力漏れで記録が全く存在しない場合は照合の対象にならない。この解決には、市町村が保有する被保険者名簿と社会保険庁のオンラインシステムやマイクロフィルムとの照合が欠かせないが、何年かかるのか見当さえ付かない。

 納付記録がない場合などに個別判断する「第三者委員会」についてもその設置数など具体的なことは全く明らかにされていない。

 これだけでも政府の対策の詰めが甘いことは明白だ。政府は「一年以内の照合」でこの問題がすべて解決するかのような誤解を国民に与えてはならない。

 政府・与党は、社会保険庁を解体し六機関に再編する考えだが、今回の年金問題解決への具体的な道筋を示さずに解体を決めれば、参院選の終了とともに、責任の所在があいまいになると、厚労委員会でも指摘された。参院選が終われば知らぬ顔といわれるのは不本意だろう。

 参院審議で政府は、本来の年金額を受給する権利の回復に向けたきめ細かい対策を示す必要がある。

経済財政方針 太い骨がなくなった

2007年6月6日

 安倍晋三政権になって初めての「骨太の方針」が固まった。地域力再生機構の創設を盛り込むなど、新味もあるが、総花的な印象が強い。各方面の抵抗を押し切って、改革を進める姿勢が必要だ。

 経済財政諮問会議に提出された「基本方針二〇〇七(骨太の方針)」の素案は、全部で五十七ページと分厚い。役所が「あれもこれも」と自分たちの政策を押し込んだ事情が見てとれる。

 方針は「成長力の強化」を最初に掲げた。労働生産性を高めるために、人材と中小企業がもつ潜在力の底上げを図る。製造業に比べ、生産性が劣るサービス産業の効率を高める。ここに異存はない。財政再建にしろ格差是正にしろ、着実な経済成長は問題解決の出発点だ。

 だが、各論になると「検討する」とか「早急に具体化する」といった言葉がちりばめられ、とたんに迫力が消えてしまう。これらは約束を避けて、課題を先送りする典型的な役所用語である。

 たとえば、航空自由化を進める「アジア・ゲートウェイ構想」について「工程表を策定し、着実に推進する」と書いた。まだ時間はある。本来なら、骨太の中で具体的な自由化工程表を示すべきではないか。

 成長加速や財政再建には、抜本的な税制改革も避けて通れない。ところが、骨太は「納税者の立場に立つ」「受益と負担の両面から総合的に検討する」などと、あたりさわりのない記述にとどまった。

 地方の中核都市では、シャッターが閉まった商店街が目立つ。疲弊した地方経済の立て直しは、もはや先送りできない。骨太は目玉の一つとして、新たに「地域力再生機構」の創設を盛り込んだが、これも中身は詰まっていない。

 同じ骨太の中で、中小企業庁が中心になる「中小企業再生ネットワーク」の創設も掲げている。調整が不十分なまま、それぞれの役所が政策の主導権を握ろうと、自分たちの構想を滑り込ませた結果だろう。

 商店街だけでなく、自治体が出資した多くの第三セクターも経営が危機に陥って、巨額の不良債権を抱えている。本格的に地方再生を目指すなら、そうした第三セクターやさまざまな再開発事業、学校、病院などの見直し、再建も必要だ。

 骨太方針は本来、役所が言い出せない大胆な改革プランを政治主導で進める道具立てだったはずだ。それが役所の縄張り争いに陥ってしまうのでは、情けない。霞が関を見る国民の目は厳しい。地方の側に立って、真に骨太な方策を詰めてほしい。

【東京新聞・筆洗】

2007年6月6日

 転職経験のある人は、以前勤めていた会社の人と連絡を取る方法を調べておいた方がいいかもしれない。五人から十人くらいと。自民党の中川昭一政調 会長の解釈では、年金の保険料を支払っていた証拠(人)になる▼社会保険庁が管理する年金記録に不備がある問題で、政府は領収書という証拠がなくても第三 者委員会が記録の訂正を判断するなど、総合的な対応策をまとめた。柳沢伯夫厚生労働相は「社保庁、厚労省の姿勢が転換したと受け止めてほしい」と力説して いるが、今は無理だ▼年金記録の不備を証明できる資料とは何なのかが、政府の説明ではよく分からない。中川案も一つの可能性にすぎない。受け取る権利のあ る年金額を確保するために、なぜ苦労しないといけないのか。怒りと不安は消えそうにない▼誰のものか分からない五千万件の年金記録の該当者を、すべて特定 できるのかも不安は拭(ぬぐ)えない。社保庁は当初の三億件から五千万件に減らした段階で、自民党に「これ以上は難しい」と説明していたと聞く。怠惰な仕 事ぶりを表す象徴的な例にしても、作業が簡単とは思えない▼対応策にかかる経費が税金で賄われることも釈然としない。歴代の社保庁長官が退官後、関係する 公益法人などを渡り歩き、高額の給与や退職金を得ている実態が明らかになっている。もはや人ごとなのだろうか▼年金制度が崩壊しかねないほど、政府に対す る国民の信頼が低下しているように見える。一から出直す姿勢が必要だろう。それでも信頼を一日で取り戻すことはできない。


【河北新報・社説】

都道府県別人口推計/東北は町村消滅の危機

 これからの30年間で、東北の町村は消滅するのではないか。国立社会保障・人口問題研究所が先月下旬、発表した2035年の都道府県別将来推計人口は、そんな危機感を抱かせる衝撃的な内容だった。

 東北各県の35年の推計人口は、05年時点の人口と比べ、すべて15%以上の減少となる。47都道府県で増加するのは東京、沖縄のみだが、この2都県も20―30年には減少基調となり、日本は一律ダウンサイズの道を歩むシナリオだ。

 東北各県の減少率は、秋田が47都道府県でトップの31.7%。以下、青森(26.9%)3位、岩手(24.9%)7位、山形(24.0%)9位、福島(21.2%)15位と続く。

 宮城だけは、地方中枢都市の仙台の吸引力に支えられ、減少幅の少ない方から15位の16.0%減にとどまるが、東北全体でみると、全国の中でも急激な人口減少地域となるのは避けられそうもない。

 35年の東北各県の推計人口の意味を考えたい。秋田、青森、岩手、山形4県の推計値は、その県内の05年の市部人口を下回る。宮城、福島両県も数万人上回る程度。極端な表現をすれば、東北のすべての町村が消滅するに等しい水準だ。

 秋田に至っては、人口の多い順に秋田、横手などの6都市分、青森は青森、八戸など8都市分に収まってしまう。限界集落が広がり限界町村へ。こうした人口空白地を抱え、地域の経済循環は成り立つのか、農林水産業の担い手はどうなるのか、自然環境は誰が維持するのか―などの問題に直面するだろう。

 少子高齢化も急速に進む。若年層の都市部への流失も歯止めがかからず、15歳から64歳までの生産年齢人口の割合も極端に下がる。秋田の30年後は、65歳以上の高齢化率が05年比で14.1ポイントアップの41.0%で全国最高、逆に生産年齢人口比は10.3ポイント低下し、最下位の50.3%。全国で最もいびつな人口ピラミッドの中で、年金など社会保障制度や行政サービスの在りようも抜本的に見直さなければ成り立たなくなる。

 秋田県では将来人口を独自に推計しており、今回の研究所の推計については「想定内」ととらえている。雇用の創出と子育て支援を柱とした少子化対策に力を入れれば、ある程度歯止めがかかると見込んでいるが、人、モノ、カネを吸い込む大都市圏にどこまで対抗できるのか、不安は尽きない。

 だが、地方に打開策は本当にないだろうか。この際、開き直る発想もある。戸建ての住宅を十分供給できる、交通渋滞がまったくない、すぐそばに豊かな自然がある―などを売りに、大都市にはない「魅力」に磨きを掛けるのも手だ。

 通勤地獄に耐え、日本の高度成長を支えた団塊世代の大量退職が始まっている。都会の生活では味わえない刺激的なライフスタイルを提唱できれば、新しい人口移動の流れもできると信じたい。国や自治体もさまざまな社会実験を誘導し、支援していくときだ。
2007年06月06日水曜日

【河北新報・河北春秋】

 このままでは大変なことになると、誰もが不安を強めている。思い切った手だてが必要なことも分かっている。それでも意見は一向にまとまらない。地球温暖 化対策のことだ▼さまざまな警告が出されている。世界の研究者らで組織する「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、今世紀末には地球の平均気温 が1990年に比べ、最大で6.4度上昇する可能性があると予測する

 ▼ 「異常気象」はいまや珍しいものではない。先日のテレビ番組では、南極で雨にぬれたペンギンのひなが凍死する姿が映し出された。南極に雨は降らないはず だった。ひなの羽毛は、雪は防げるが水には耐えられないという▼ドイツのハイリゲンダムで6日夜(日本時間7日未明)から主要国首脳会議(サミット)が開 かれる。最大のテーマは2013年以降のポスト京都議定書の温暖化対策。数値目標の設定などをめぐって、欧州各国と米国の対立が目立つ

 ▼ 安倍晋三首相は「だからこそ日本がイニシアチブを」と意欲を見せる。年金記録不備問題などで逆風にさらされている首相としては、初のサミットで大きくポイ ントを挙げたいところ▼もっとも、議定書で義務付けられた日本の削減目標達成の見通しをつけることが不可欠だ。日本のリーダーシップもそこからだろう。

2007年06月06日水曜日


【京都新聞・社説】

独サミット  真価問われる安倍外交

 ドイツ北部のリゾート地、ハイリゲンダムで六日(日本時間七日)から主要国首脳会議(サミット)が開かれる。安倍晋三首相にとってはサミットデビューの晴れ舞台だ。
 だが、主要議題となる地球温暖化対策をめぐって欧州連合(EU)と米国の主張が鋭く対立している。安倍首相は両者の橋渡し役を果たしたいと意欲を燃やすが、利害調整は容易ではない。
 どこまでイニシアチブを発揮し、各国の結束に寄与できるか、安倍外交の真価が問われよう。
 全体会議の多くの時間が地球温暖化問題に充てられる。それだけ、どの国にも危機感が強いということだろう。
 温暖化をもたらす温室効果ガスの排出量について、二〇一三年以降の削減規定がない京都議定書の後継の国際的枠組み(ポスト京都議定書)づくりに向け、どこまで各国が歩調を合わせ具体的に踏み込めるかが、最大の焦点だ。
 ドイツなどEU側が厳しい排出削減の数値目標を掲げているのに対し、米国は産業界の反発を背に、長期にわたる数値目標設定に反対する姿勢をあらわにしている。温室効果ガスを大量に排出する十五カ国程度による新たな枠組み設置も提唱している。
 日本は、二〇五〇年までに世界全体の温室効果ガス排出量を現状から半減させるとの独自案を提出する予定だ。EU案と米国案の折衷案ともいえるが、難航必至の交渉をどうまとめるか。「外交の安倍」の手腕が試されよう。
 だが、米国の主張通り、数値目標設定を議長総括文書に明記しない可能性が強いとの観測がはや流れている。日本としては、一方的に米国に肩入れすることなく、新たな国際的枠組みの構築に向けてひたすら汗を流すことだ。
 米国だけでなく、一二年までの排出削減目標を定めた京都議定書では削減義務を負っていない中国やインドなどの新興国が新たな枠組みに参加するよう促すことも、日本の責務といってもよい。省エネ技術や資金面で途上国を支援していく積極姿勢を示すことも必要だろう。
 六カ国協議で行き詰まっている北朝鮮問題も、サミットでは重要なテーマだ。とりわけ日本にとっては、拉致問題の解決に向けて各国首脳の協力を取り付け、議長総括文書に、これまでよりも強い表現を盛り込ませることが肝要だ。
 招待国として参加する中国の胡錦濤国家主席との首脳会談が実現すれば、ぜひとも打開策を見いだしたい。
 安倍首相はサミット外交を通じて存在感をアピールし、夏の参院選への弾みにしたい思惑もあろうが、邪念は捨て去るべきだ。地球温暖化問題の解決に向けた強い決意と真摯(しんし)な姿勢を示すことが、国際社会での日本への信頼感を高め、来年の北海道・洞爺湖サミットの成功にもつながるはずだ。

[京都新聞 2007年06月06日掲載]

枚方市談合  旧弊を完全に一掃せよ

 談合事件を摘発する警官が自治体への橋渡し役となり、議員も不正な金にたかっていた。あきれはてる。
 大阪府枚方市の清掃工場建設をめぐる官製談合事件が大きなヤマ場を迎えた。
 市長がかかわっていた疑いが強まったとして大阪地検特捜部が近く談合容疑で強制捜査する方針を固めたからだ。
 すでに建設担当の副市長や、大阪府警警部補、大阪府議(元枚方市議)、大手ゼネコン大林組関係者ら十人が逮捕されている。
 これまでの調べで、大林組側から下請け会社を通じて警部補、府議にわたったとされる四千万円は裏金の疑いが強く、一部は市側への謝礼との供述もある。
 官製談合どころか贈収賄事件へと広がる可能性があるのだ。事件を徹底解明して、談合の完全一掃を急ぎたい。
 大林組と浅沼組の共同企業体(JV)は二年前、清掃工場の建物建設入札を予定価格(約五十五億円)の98%超という高率で落札した。
 特捜部は、警部補らが大林組側の意向を市長に伝え、了承した市長が副市長に対応を指示したとみているようだが、市長は「官製談合はなかったと断言できる」と強く反発している。
 しかし入札には不可解な点が少なくない。まず談合防止の相談役だったと市長がいう警部補の進言で清掃工場のプラント設備と建物を分離発注したことだ。
 さらに建物建設は初回は応札がなく、三カ月後の再入札では約十七億円分も工事が追加され、大林組側が落札した。
 一般的にプラント設備入札は専門技術をもつプラントメーカーが有利とされ、一括発注なら大林組は不利だった。
 分離発注でその心配はなくなり、追加工事費が異常に増えたことをあわせて考えると、疑惑は深まるばかりだ。
 入札の前、警部補、市長、大林組顧問が会食しているが、市長の対応は軽率さを通り越している。
 副市長に接近した警部補、枚方市議を長く務めて建設関係に強かった府議、ともに市長の古くからの知人というが、三人の関係の解明も必要だろう。
 大林組は事件で同社顧問らが逮捕された責任をとり最高責任者(CEO)の会長、社長が辞任する。創業家の影響力低下はさけられないが、当然の対応だ。
 大林組を含むゼネコン大手社長会は二年前、独占禁止法強化を受け談合決別宣言をしたが、和歌山県、名古屋市、今回の枚方市と談合事件は続いてきた。
 いずれも大林組関係者が仕切っていたことは重大だ。談合体質の根絶、企業倫理見直しは喫緊の課題だろう。
 改正独禁法によって課徴金が多額となり、経営者の罰則も強化された。ゼネコン各社は今回事件を契機にそのことを肝に銘じることだ。そして大阪府警は足元を厳しく見直す必要がある。

[京都新聞 2007年06月06日掲載]

【京都新聞・凡語】

野菜離れ

 野菜離れが進んでいる。日本人一人当たりの年間消費量は、この二十年で二十キロ減ったという。輸入が増え、産地間競争も激しさを増すばかりだ▼最盛期を迎えた賀茂なすなど、ブランド指定の京野菜だって例外ではない。それどころか、似たようなデザインの出荷袋を使った他府県産の「京野菜」も出回っているというから、うかうかできない▼そこで登場したのが「京野菜マイスター」だ。京野菜に精通した匠(たくみ)に「本物の魅力」を伝えてもらい消費を増やそう、と府市町村、JAなどでつくる京のふるさと産品協会が創設。書類審査と面接で初年度は五人認定した▼マイスターの一人で京野菜を使った創作和風料理店のオーナーシェフ平田宗子さんは「めざしてきたのは、おばんざいと京料理の中間。オリジナルで子どもたちも喜ぶレシピを考えたい」と意気込む▼料理教室や講習会に出かけ、伝統と京の気候風土がつくりあげた京野菜について語る「お話の出前」も行っているが、気になるのは「最近、若いお母さんが野菜を煮たり炊いたりしなくなったこと」▼ブランドと栄養価の高い京野菜も食べてもらってこその話だ。「難しく考えないで。少し手間をかけるだけで、おいしくなるのに」と寂しがる。京野菜のファンが増えお母さんの誰もが「マイスター」だったころのようになれば-。熱い思いはかなうのか。

[京都新聞 2007年06月06日掲載]


【朝日・社説】2007年06月06日(水曜日)付

環境G8―「京都」の枠組みを広げよ

 12年前のベルリンを思い出す。

 地球温暖化を防ぐため、気候変動枠組み条約の第1回締約国会議が開かれた。議長はドイツのメルケル環境相。連日連夜、水面下の調整に走り回っていたが、具体策をまとめきれなかった。

 そのメルケル氏が首相となり、独ハイリゲンダムG8サミットが6日から始まる。主テーマは温暖化。議長として成功させたいとの思いは格別だろう。

 温室効果ガス排出削減を先進国へ義務づけた京都議定書の第1期が来年始まり、12年に終わる。では、13年以降をどうするか。その枠組みづくりに一歩を踏み出せるか、G8に問われている。

 今年は、科学者が背中を押した。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の部会報告だ。地球全域への悪影響を阻むには、今世紀半ばまでに、代表的な温室効果ガスである二酸化炭素の排出をざっと半分にすべきだという。

 「脱炭素」が、地球の安全保障の緊急課題となった。サミットを前に、日米欧から13年以降の温室効果ガス削減構想が示されたのは当然だろう。

 欧州連合(EU)は、20年までに90年より20%以上減らすという。ほかの主要国が同調すればという条件で、より高い「30%削減」の目標も掲げる。

 これに対し、議定書から離脱した米国のブッシュ大統領は、来年末までに世界規模の長期削減目標を定めるという。中国やインドを含む主要排出国の会議を米国主導で重ねていくと強調した。

 安倍首相の構想は「50年までに世界の排出量を現状の半分に」とし、「各国の事情に配慮した枠組み」を提唱した。

 日米は、中印などを仲間に引き込むため、ゆるやかな枠組みをさぐっているように見える。その中国は4日、応分の責任を認めつつ、削減目標値は拒否する姿勢をみせて牽制(けんせい)した。

 13年以降の枠組みには、数十年先をにらんで産業や生活を省エネルギー型・脱炭素型に変えていく仕掛けがほしい。

 ひとつが「排出量取引」だ。企業などに削減目標を課し、達成したら未達成のところに排出量の枠を売れる。脱炭素を進めれば儲(もう)かる、という誘導策だ。

 この制度は欧州ですでに本格化し、米国でも州レベルが導入を決めている。最近は東京都も導入の方針を発表した。

 各国に削減義務を課し、排出量取引を促す方式は、これまでの国際合意の果実である。揺るがしてはならない。

 中印などには、工業化を脱炭素型で進めるよう促すことだ。省エネによる炭素減らしはコスト節減につながり、経済の競争力を高めるメリットがある。

 世界市場を相手にする未来の経済大国として、一定の義務を受け入れ、排出量取引にも参加してもらうべきだろう。負担が重すぎれば技術協力や経済支援の手をさしのべればよい。

 その方向性が定まれば、来年の洞爺湖サミットにつなげることができる。

会計士法改正―企業とのなれ合いを断て

 公認会計士法の改正案の審議が国会で始まった。決算のチェックを強め、大企業で相次いでいる粉飾会計や不明朗な経理処理を防ぐのが改正の狙いだ。

 40年ぶりの大がかりな見直しだが、いくつか注文がある。

 改正案では、会計士の責任が重くなった。粉飾を見逃せば、最高で監査報酬の1.5倍の課徴金が課される。金融庁が業務の改善などを命じる制度も整えた。上場企業を担当する大手監査法人の会計士は5年交代制とし、監査先や関連企業への再就職も禁止した。

 しかし、これでは足りない。企業と会計士のなれ合いを断つためには、もっと突っ込んだ対策が必要だ。

 何よりもまず、経営者が会計士を選んで監査報酬を出すという現状を改めるべきだ。これでは、会社側に嫌われる厳しい結論を出しにくいからだ。

 法案の検討過程では、選任や報酬の決定権を監査役へ移す意見も出ていたが、法制化は見送られた。監査役が経営陣から独立しているかには論議の余地があるものの、監査役へ移せば現状よりはよくなるだろう。再検討してもらいたい。

 理想をいえば、上場企業の監査報酬は企業が直接払うのではなく、取引所など第三者が取りまとめたうえで会計士らに配分するぐらいの荒療治がいる。

 もう一つ、法案に盛り込まれなかった「セカンドオピニオン(二次意見)」の取り扱いについても、国会で議論してもらいたい。担当の会計士とは別の会計士に意見を求めるもので、医療の世界では定着しつつある仕組みだ。

 会計士協会は「倫理規則」を改正し、会計士が二次意見を求められた場合の手続きを整えたという。だが、引き受ける前に、まず担当会計士と協議することを原則とするなど、及び腰だ。これでは会計士仲間のかばい合いや遠慮が先に立ってしまう。

 日興コーディアルグループの不正会計を調べた特別調査委員会の報告書によると、社外取締役らが二次意見を得ようとしたが困難だったためチェックが不十分に終わっていた。そんな失敗を繰り返してはならない。

 経営を監視する社外取締役や監査役からの照会に対しては、担当会計士の了承がなくても回答できる制度を整えるべきだ。当座は協会規則の見直しで対応するにしても、最終的には法律に加えるのが望ましい。国会の審議のなかで、そうした方向性を確認してはどうか。

 カネボウや日興を担当していたみすず(旧中央青山)監査法人は、7月に解体される。3月末にはライブドアを担当していた会計士に実刑判決が言い渡された。会計不信をぬぐい去るには、厳正で実効性のある法制度が不可欠だ。

 国会の会期末が近づいている。もし十分な審議時間が取れないなら、次の国会へ審議を継続したうえ、内容をじっくりと練り直してもいいだろう。

【朝日・天声人語】2007年06月06日(水曜日)付

 作家の藤沢周平さんは若いころ、郷里の山形で中学教師をした。戦後間もなくのこと、教師は地域で「無条件に尊敬されるか敬遠されるか」の存在だったと回想している。外部から雑言が聞こえることは、まずなかったそうだ。

 いまは、理不尽な要求をする一部の親が、先生を追いつめていると聞く。気兼ねなく学校に物を言うのは大切なことだ。だが「ある子の学校での様子を、毎晩1時間半も電話で説明させられた」といった多くの実例からは、先生の悲鳴が聞こえてくる。

 「モンスター親」と、教育の現場ではひそかに呼ぶ。そんな親たちいわく、能力不足の担任を替えろ/部活動のユニホームは学校で洗って/うちの子を正選手にしろ……。これを執拗(しつよう)にやられては、先生は参ってしまう。

 教委も対応に乗り出した。岩手県は、注文の多い親を「溺愛(できあい)型」「(プライドの高い)自己愛型」「愉快犯型」など10に分類して処する手引書を作った。刺激せず、ていねいに。お客様相手さながらの慎重なマニュアルから、ことの深刻さが浮かび上がってくる。

 「学校は自分が40分の1だと初めて学ぶ場所」と、作家の高村薫さんが他紙で語っていた。みんなで成長するための大事な公共空間である。そのことを親も一緒に学ぶ必要があろう。

 藤沢さんは、当時の学校を「バリアーに包まれた閉鎖社会」だったと書いている。風通し良く外部から聞こえる雑音は、学校にとって貴重な羅針盤だろう。だがそれも「騒音」となれば、耳をふさぎたくなるだけである。


【毎日・社説】

社説:不明年金対策 これでも不信不安は消えない

 年金不信は高まる一方である。本来もらえる年金が記録不備で額を減らされていたら、だれもそんな制度など信用しない。あわてた政府は急きょ、だれのものかわからない5000万件の不明記録対策をまとめた。

 対策の骨子は(1)来年5月までに5000万件の不明記録について名寄せ作業を完了(2)不明記録の該当者である可能性が高い人への通知は、60歳以上の受給者が同年8月まで、59歳以下の被保険者は再来年3月までに終了(3)総務省に原因究明や責任を追及する検証委員会の設置--などだ。

 安倍晋三首相の指示を受け、自民党は党内議論もほとんどなく参院選公約にこうした対策を盛り込んだ。わずか4時間の審議で衆院での強行採決に至ったのと同じように、安倍内閣の焦りが表れている泥縄方式である。拙速による急場しのぎが透けて見える。年金公約が単なる選挙向けのリップサービスであってはならない。

 対策は、当初の照合スケジュールを前倒しした。だが、この日程でスムーズに作業が運ぶのか、疑問視する向きが多い。

 開発する照合用プログラムといっても、氏名、生年月日、性別の3要件を頼りにコンピューター内で照合し、不明記録を同一名義に絞り込む手段にすぎない。やっかいなのは、社会保険庁の職員が手書き台帳から電子データ化した際の入力ミスだ。保存データが間違っているのだから、誤入力の見つけ出しは人力に頼るしかない。

 市町村に残る原簿記録や社保庁保管のマイクロフィルムと突き合わせるのは膨大な作業となる。昨年8月から今年3月、社保庁が記録訂正に応じた24万件の12%は入力ミスによるものだった。

 記録の訂正は、最終的に本人の確認が必要で、社保庁が勝手にやるわけにいかない。郵便で「年金記録に漏れの可能性があるので確認してください」と通知するにしても、あて先不明で戻ってきたり、同姓同名の別人へ送られる可能性もある。5000万件すべての不明記録が解消される保証はまったくないのである。

 保険料の納入を証明するものがない人への救済策も、政府の説明はあいまいなままだ。弁護士らによる第三者委員会が「合理的」に判断するというが、何をもって「合理」とするのか、基準が示されていない。地域によって判断にばらつきがあると、かえって混乱することになりかねない。

 10年間も不明記録を放置してきた行政の怠慢と無責任ぶりは怒りを通り越してあきれ果てる。その原因究明と社保庁幹部の責任追及を検証委員会にゆだねたが、国民が納得する結論を出さなければ不信は増幅する。民間ならとっくに引責辞任するケースである。

 「1年で名寄せ完了」と政府・自民党がスローガン風に宣伝しても、実施する上での不明部分はまだ多い。参院の審議では、問題点を洗い出し、丁寧に議論を尽くしたうえ、国民が納得できるような対策に仕上げなければならない。それこそ国会の責務である。

毎日新聞 2007年6月6日 東京朝刊

社説:MD東欧配備 「新たな冷戦」招かぬ努力を

 東欧へのミサイル防衛(MD)配備をめぐりロシアと米国が険しく対立している。米国が配備を強行した場合、ロシア側は種々の報復措置も辞さぬ構えだ。折からドイツでは主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)が開かれる。米露はもとより各国首脳は「新たな冷戦」を招かぬよう知恵を絞ってほしい。

 この配備構想は04年暮れごろ明るみに出た。米国の計画では、2012年までにポーランドに迎撃ミサイル10基を配備し、チェコに高性能レーダー基地を置くという。イランの脅威への対抗措置とされるが、イランから欧米へのミサイル攻撃は考えにくく、にわかには理解しがたい構想だ。

 だが、「テロとの戦争」とMD開発・配備は、その是非はともかくブッシュ政権の「金看板」ともいえる。昨秋辞任したラムズフェルド前国防長官はMDの推進者であり、イラク戦争に反対したフランスやドイツを「古い欧州」、協力的だったポーランドなどを「新しい欧州」と呼んだ。MDの東欧配備は、欧州の親米国を取り込んで影響力強化をめざした前長官の「遺産」ともいえそうだ。

 配備を望むポーランドとチェコの意向は尊重されるべきだが、一方でロシアと米国は長年にわたる軍縮・軍備管理交渉のパートナーだ。北大西洋条約機構(NATO)が旧ソ連圏を包み込んで東方に拡大した時も、MD開発・配備の障害になるとしてブッシュ政権が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約から脱退した時も、プーチン政権は我慢を強いられた。

 このうえ近隣国へのMD配備を受け入れろと言うのか、とロシアが怒るのも分からないではない。米議会も軍事的な悪影響を懸念して、東欧配備に慎重だ。プーチン大統領は配備の対抗措置として、今は外してある欧州向け核ミサイルの照準を元に戻し、欧州通常戦力(CFE)条約の修正を通じてロシアの兵器保有枠を拡大する可能性もある。80年代に米ソが結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約を見直すこともにおわせる。

 なんとも物騒な話だが、ロシアが再び中距離核ミサイルを配備すれば、その影響は欧州だけにとどまらない。世界に先駆けてMDを導入した日本に対する北朝鮮や中国の出方もからんで、東アジア情勢の険悪化も予想される。クリントン政権時、米国のノーベル賞受賞者50人がMD配備に反対する書簡を大統領に出したのは、MDの技術的可能性への疑問とは別に、配備によって逆に戦略環境が悪化する事態を恐れたためだ。

 プーチン政権下のロシアは、豊富な石油資源を背景に、米国と張り合う大国の地位を固めつつある。その半面、言論弾圧などへの批判として「ソ連に逆戻りしたようだ」との声も聞かれる。米国の一極支配とナチスの侵略主義を対比したプーチン演説も米国の神経を逆なでしてきたが、大量の核兵器を持つ米露が感情的な対立に陥ってはなるまい。時間は十分ある。賢明かつ穏便な解決を求めて、とことん話し合うべきである。

毎日新聞 2007年6月6日 東京朝刊

【毎日・余禄】

ハイリゲンダム・サミット

 中世にバルト海貿易の拠点として建設され、その後ドイツ北部の都市連合「ハンザ同盟」の盟主となったリューベックの史跡ホルステン門にはラテン語で「内には結束を、外には平和を」と書かれている。海上交易で繁栄したハンザの精神を今に伝える言葉という▲一時200の加盟都市があったハンザ同盟は、リューベックとビスマル、ロストックのバルト沿岸3都市の条約が起源とされる。ずっと後の18世紀末、ビスマルとロストックの間の白砂の海岸にハイリゲンダムというドイツ初の海水浴場が開かれた▲その保養地ハイリゲンダムにあす主要8カ国首脳が集まってのサミットが開幕する。今回は地球温暖化対策が主要テーマにすえられ、「京都議定書」後の温室効果ガス削減策をにらんだ論議が交わされる。また日本の安倍晋三首相とフランスのサルコジ大統領には初参加のサミットだ▲温室効果ガス削減には米国がようやく前向き姿勢を見せているものの、「気温上昇を2度に抑えるための協力」などの数値目標設定には依然として消極的である。中国やインドも取り込める、公平で実効ある削減策に向けた合意作りは容易でない▲そのうえ今年は初参加から10年になるロシアと米欧の関係が、にわかに険しい様相を見せるなかでのサミットである。東欧へのミサイル防衛配備計画にロシアが多弾頭型ミサイルの実験でこたえるという冷戦時代を思わせる物騒な応酬がサミット会場に影を落とすことは避けられない▲ここは議長国ドイツのメルケル首相の手腕に「内には結束を、外には平和を」への期待がかかる。とともに「世界の環境外交を先導する役割を果たしたい」という安倍首相には、その言葉を実現してみせる絶好のチャンスである。

毎日新聞 2007年6月6日 0時09分


【読売・社説】

環境白書 省エネ社会実現に制度の工夫を(6月6日付・読売社説)

 深刻化する地球温暖化を防ぐために、自分には何ができるのか、家庭や職場の中を見渡してみたらどうだろう。

 環境省が「進行する地球温暖化と対策技術」をテーマにした今年の環境白書をまとめた。

 6日からドイツで開かれる主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)の主要議題は、温暖化対策だ。読売新聞の最新の世論調査では、温暖化に不安を感じている人が71%に上っている。

 温暖化を食い止めるために、何か手を打たなくてはならないと、多くの人が思っているだろう。

 世界トップレベルの省エネ技術により、日本の製造業など産業部門の二酸化炭素(CO2)排出量は減っている。

 一方で、家庭やオフィスビルからの排出量が大幅に増加している。白書は、こうした「民生部門」での省エネへの積極的な取り組みが、排出量削減に大きな効果をもたらすと指摘している。

 身近な例が紹介されている。家庭の白熱電球を、電球型蛍光ランプに交換すると、電力消費量が約5分の1に減る。電気代は年間で1900円ほど節約できるという。

 家電製品の省エネ技術は、かなり進んでいる。一戸建ての家で、10年前のエアコン、冷蔵庫、照明器具などを最新の機種に買い替え、窓を断熱性の高い複層ガラスにすると、CO2排出量を44%削減できるとの試算も示された。

 産業、運輸部門で省エネをさらに進めるとともに、家庭でも一人一人ができることを実践していくことが大切だ。

 省エネ技術の一層の開発、省エネ型のライフスタイルに転換する国民運動、省エネ技術を社会の隅々に行き渡らせる制度面の改革――。白書は、これらが三位一体となってこそ、「低炭素社会」を作り上げられるとしている。

 だが、制度改革の具体策には触れていない。環境省は、「今後の検討課題」としている。

 白熱電球は1個100円で買えるものもあるが、電球型蛍光ランプの価格は1000円前後だ。家電製品の買い替えには、多額の費用が必要になる。

 安倍首相夫妻が電球型蛍光ランプへの取り換えを呼びかける全面広告が、主要紙の朝刊に掲載された。こうしたPRで温暖化防止への国民の関心を高めていくことは、もちろん必要だ。

 それに加え、省エネ製品を購入する国民の費用負担を、少しでも軽くする制度を検討してはどうか。需要が増えれば、大量生産で価格が下がり、省エネ製品の普及も加速するだろう。
(2007年6月6日1時34分  読売新聞)

運転致死傷罪 悲劇をなくすための「厳罰化」だ(6月6日付・読売社説)

 重大な事故を起こして、「うっかりしていた」では済まされない。相応の刑事責任を負うのは当然だろう。

 自動車運転過失致死傷罪を新たに設ける改正刑法が成立、今月12日に施行される。

 厳罰化やシートベルト着用の効果などもあって、交通事故の死者は年間6000人台まで減ってきた。だが、歩行者と自転車の死者が全体の45%を占める。

 こうした交通弱者の犠牲を減らす基本は、ハンドルを握る人のモラルと注意力にある。法改正を機に、一人一人が安全運転への自覚を新たにすべきだ。

 交通人身事故を起こした人には、普通は鉄道事故や労働災害、医療事故の場合と同様に、刑法の業務上過失致死傷罪が適用されてきた。最高懲役は5年だった。今後は自動車運転過失致死傷罪に問われ、最高懲役も7年と重くなる。

 2001年には、刑法に危険運転致死傷罪が設けられた。これに続く交通事故に対する厳罰化だ。

 故意に危険な運転をした者に対する危険運転致死傷罪と違い、前方不注意などが原因で、年間約90万件も起きている人身事故のほとんどに適用される。

 改正のきっかけは、埼玉県川口市で昨年9月、保育園児の列に車が突っ込み、園児4人が死亡、17人が重軽傷を負った事故だ。カセットプレーヤーのテープを替えようとしての脇見運転だった。

 これほど痛ましい事故だったにもかかわらず、地裁判決は業務上過失致死傷罪の上限の懲役5年にとどまった。

 遺族らは最高で懲役20年の危険運転致死傷罪の適用を求めた。しかし、この罪の適用要件は、正常運転が困難なほど飲酒していたとか殊更に赤信号を無視したなど、極めて限定されている。その壁を超えることができなかった。

 裁判長も「危険性や悪質性は際立っているが、法定刑の上限に張り付くほかはない」として、業務上過失致死傷罪の刑が軽すぎることに言及していた。

 遺族などには、懲役を2年引き上げる程度の改正では不十分だとする意見がある。危険運転ではなく不注意運転が原因だとしても、失ったものの大きさを考えれば当然の思いでもあるだろう。

 政府は今国会に道路交通法の改正案も提出している。成立すれば酒酔い運転の懲役は最高3年から5年に、酒気帯び運転も1年から3年になる。改正刑法と併せ、酒気帯び人身事故では懲役が最高6年から10年へ格段に厳しくなる。

 道交法は2002年改正に続く厳罰化だ。今度こそ飲酒運転による悲劇を絶つ契機としなければならない。
(2007年6月6日1時34分  読売新聞)

【読売・編集手帳】

6月6日付 編集手帳

 民俗学者の柳田国男は12歳のとき、兵庫県明石の海辺で初めて海水浴というものを見た。「女が裸になって、サルマタのようなものをつけて海に入っていく…」◆回想録「故郷七十年」によれば、1887年(明治20年)の夏という。軍医総監も務めた医師、松本順が欧米の風習を取り入れて奨励し、海水浴が広まった。柳田少年が目にしたのは初期の光景だろう◆20年ほど後に書かれた夏目漱石の「吾輩(わがはい)は猫である」では、主人公の猫が健康上の効能を力説し、「猫といえども…鎌倉あたりへ出掛るつもりでいる」と語っている。海水浴はその間に定着したらしい◆清らかな水と、空気と、光と、海水浴は天地の賜物(たまもの)でもある。猫の説いた健康上の利点に加えて、壊してはならないもの、守らねばならないものを人間に教えてくれることも、得がたい効能に違いない◆バルト海に臨むドイツ北部のハイリゲンダムで主要国首脳会議が始まる。国内では最古、欧州でも草分けとなった海水浴場の町として知られ、記念館もあるという。主要テーマの地球環境問題を話し合うのにふさわしい場所だろう◆三好達治は「郷愁」という詩に書いている。「――海よ、僕らの使ふ文字では、お前の中に母がゐる」と。生命を産み、育てた母である海のほとりで、実のある議論が交わされることを。
(2007年6月6日1時34分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】G8サミット 地球環境で合意の道筋を

 ドイツのハイリゲンダムで主要国首脳会議(G8サミット)が6日から始まる。最重要テーマが地球温暖化問題だ。サミット史上、温暖化対策がこれほどの関心を集めるのは初めてのことである。

 来年からは日本や欧州などの先進国で、京都議定書に基づく二酸化炭素の排出削減を定めた第1約束期間(2012年までの5年間)が始まる。今回のサミットでは、13年以降の「ポスト京都」の枠組み作りで、首脳間の交渉が展開される。環境の悪化を食い止めながら経済成長を可能にする賢明な道筋を見つけ出してもらいたい。

 干魃(かんばつ)で農地が荒廃する一方で、豪雨が洪水を引き起こす。熱波が都市を襲い、熱帯低気圧が猛威を振るう。山岳氷河は後退し、北極の氷も減少傾向を見せている。こうした異常気象の顕在化と、国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の報告書で、地球温暖化は人間の社会活動に起因することが確実になった。

 世界一の二酸化炭素排出国で、京都議定書を離脱している米国が対策に前向きの姿勢を取り始めたのもその結果である。温暖化防止への努力を実効あるものとするためには、米国と排出量第2位の中国の参加が不可欠だ。

 中国やインドは、途上国という位置づけによって京都議定書による削減義務を免れている。米国とこれらの新興途上国は互いに相手方を不参加の根拠として背を向けてきた。

 米国の変化に加え、中国も「気候変化対応国家プラン」で省エネ計画を示すなどの動きをみせ始めている。うまく進めば、二酸化炭素の本格的削減への第一歩につながるだろう。

 しかし、サミットでの議論の行方は平坦(へいたん)でない。議長国のドイツは、宣言に明確な数値目標を盛り込みたい意向で、米国の強い反発が予想される。

 そこで、初参加ながら安倍晋三首相の手腕に期待したい。首相は先に「世界全体の排出量を現状に比して2050年までに半減する」という独自の長期構想を発表した。京都議定書の基本精神を発展させながら、米中印参加体制の構築を目指してもらいたい。仕上げは来年の北海道洞爺湖サミットで行われることになるだろう。

 人類の存続にかかわる環境外交の果たす役割は限りなく大きい。

(2007/06/06 05:19)

【主張】脱北者と覚醒剤 法治国家の姿勢を示そう

 青森県に漂着した北朝鮮からの脱北者家族の所持品から少量の覚醒(かくせい)剤が見つかり、警察当局は覚せい剤取締法違反(所持)容疑で書類送検する方針だ。脱北のケースでない通常の入管難民法違反(不法入国)事件なら、強制捜査の対象になる重大事犯である。任意でも法治国家として厳正な捜査が必要である。

 覚醒剤所持を認めた家族の一人である20代後半の二男は「北朝鮮で覚醒剤は簡単に入手できる。長旅なので、眠らないようにするため持っていた」と話している。密売目的ではないにしても、捜査当局はどこでどのようにして入手したかを詳しく聞くべきだ。

 北朝鮮では、国家機関が外貨獲得のために覚醒剤を製造・密売している。北朝鮮ルートの覚醒剤密輸は平成9年ごろから急増し、海上で大量に取引されている現場などが摘発された。日本の警察当局は、今回の脱北者4人が出航した清津付近など3カ所に覚醒剤製造工場があるとみている。

 最近は、国際的な取り締まりが強化されたこともあって、大量に余った覚醒剤が北朝鮮の国内に出回っているといわれる。こうした北の内情も、今回の脱北者は知っているだろう。

 6年前の平成13年5月、金正日総書記の長男、金正男氏とその家族とみられる4人が偽造旅券で不法入国し、東京入国管理局に身柄を拘束された。しかし、当時の日本政府は4人を事情聴取しただけで、北京に強制退去させる処分にとどめた。

 日朝関係に悪影響を与えたくないとする当時の外務省などの判断が働いたといわれる。厄介払いするかのような対応は、「主権国家としての任務を放棄した」「北朝鮮との外交カードを失った」などと批判された。このような愚を繰り返してはいけない。

 今回の脱北者4人は、昨年成立した北朝鮮人権法に基づき、希望する韓国への亡命が実現するよう、外交努力が行われている。麻生太郎外相は5日の閣議後会見で、4人の韓国移送について「武装難民でなかったことははっきりしているが、偽装難民でないという保証はない。きちんと捜査当局が調べたうえでの話だ」と述べた。

 覚醒剤に限らず、脱北の動機やその準備、費用などについても、十分に時間をかけて事情聴取すべきである。

(2007/06/06 05:17)

【産経抄】

 またぞろ夏の時計を1時間早めるサマータイムを導入せよ、という大合唱が政府や国会、それに経済界から聞こえてきた。安倍内閣では初となる経済財政運営の基本方針でも「早期実施を検討」の文言が盛り込まれるという。

 ▼朝寝坊派にとってはこのうえなく迷惑な話だ。「早起きは三文の徳」というのはわかるが、時計の針を1時間早くしたからといって温室効果ガスを減らすことができるのだろうか。

 ▼推進派の能書きでは、深夜の経済活動が減少するため電力消費量も減る、というが疑わしい。午後6時でも外は明るいとなると、「もうちょっと仕事をしようか」とサラリーマンの残業が増え、子供が通う塾も授業時間を延ばしかねない。

 ▼ 参院選の応援で久々に表舞台に立った小泉純一郎前首相も朝寝坊派のようだ。「サマータイムをやりたい企業があるのなら勝手にやってもらいたいね。午前7時 出勤にすればラッシュアワーも改善される」とバッサリやってくれた。そもそも日本では占領下の昭和23年に導入したが、不評で4年しかもたなかった過去が ある。

 ▼地球環境対策ではやらねばならぬことはいくらでもある。新聞広告で首相夫妻が「電球をとりかえよう」と呼びかけたのはご愛嬌(あいきょう)にしても、東京など大都市部への車の乗り入れ制限やクリーンエネルギーの開発促進は政治の決断でできる。

 ▼ もっと急務なのは、温室効果ガスの2大排出国である米国と中国に本気で環境対策に取り組ませることだ。中国もようやく国家プランを発表したが、「“中国環 境脅威論”は客観的でない」と公害垂れ流しを反省している風はない。米中両国首脳をどこまで説得できるか、あすから始まるハイリゲンダム・サミットの意味 は近年になく重い。

(2007/06/06 05:15)


【日経・社説】

社説1 温暖化防止へ日本がまず削減進めよう(6/6)

 地球温暖化防止が主要議題となるドイツ・ハイリゲンダムでの主要国首脳会議(G8サミット)を前に、政府が2007年版の環境・循環型社会白書をまとめた。京都議定書の次の国際的な枠組みづくりが始まるなかで、白書は足元固めが重要と指摘し、国民1人ひとりに省エネなど日ごろの努力を訴えている。日本が国際交渉で主導権を握るうえでも京都議定書の目標達成は重要だ。日本は国民的な運動を通じて削減の模範を世界に示すべきである。

 京都議定書は2008―12年の平均で日本の温暖化ガス排出量を1990年に比べ6%減らすよう義務づけている。だが、排出量は05年時点で逆に約8%増えており、今後、大幅な削減が必要だ。白書はすべての分野で排出削減が必要と説き、特に排出増が目立つ運輸・民生部門では新たな技術の開発や導入によって排出を減らすよう訴えた。

 安倍晋三首相は2050年に世界の排出量半減の目標を掲げた日本提案のなかで、二酸化炭素(CO2)の排出を「1人1日1キログラム」減らそうと国民に呼びかけた。省エネ家電への買い替え、ハイブリッド車や太陽電池の導入など、様々な手段を合わせると、かなりの削減効果につながる。白書も一戸建て住宅の 4人家族がエアコンやテレビなど家電10製品を省エネ型に替えれば排出量が約4割減るとの試算を示し、省エネ技術活用の重要性を強調している。

 排出削減は産業界だけが取り組めばすむ問題ではない。温暖化は国民すべてがかかわっており、誰もが身近なところで一歩を踏み出す必要がある。政府はあらゆる機会をとらえて、国民全体の排出削減への取り組みを働きかける必要があろう。

 政府は先週、「21世紀環境立国戦略」を決め、経済成長と環境保全を両立させる日本モデルの構築を目標に掲げた。50年に世界の排出量半減という長期目標へ向け、自然との共生や循環型社会の構築、途上国支援などを進めようとする総合戦略だ。省エネ先進国の日本は温暖化防止で世界に範を示すべき立場にある。産業戦略としても省エネ技術を世界に広めることは重要だろう。

 世界に対して説得力を持つ日本モデルをつくるには、国際的な取り組みの第1段階である京都議定書の目標達成でつまずくわけにはいかない。実際には排出が増えているのだから、排出削減策を強める必要がある。排出権取引などの制度づくりも急がなければならない。「低炭素社会」に向け、国民も産業界も政治も、強い意志を問われている。

社説2 年金に力点を置いた自民公約(6/6)

 自民党が7月の参院選のマニフェスト(政権公約)を決めた。年金記録漏れ問題への批判が強まっていることから、公的年金保険料のうち持ち主が分からない 5000万件については、1年以内にすべての記録の照合を完了する方針を盛り込んだ。参院選の争点に浮上した年金問題への対応に力点を置いたのが特徴だ。

 昨年9月に就任した安倍晋三首相にとって、初めての国政選挙の公約となる。安倍政治のキーワードの「美しい国」を生かして「美しい国の礎を築く」など4章(155項目)からなる構成にした。

 最初の項目で2010年の国会で憲法改正案の発議を目指すことを明記した。拉致問題の進展がなければ、北朝鮮に経済支援をしない方針を明確にするため、北朝鮮人権侵害問題対処法の改正を打ち出すなど随所に「安倍色」をにじませた。

 ただ早くても3年後の課題の憲法改正は、有権者の関心が高いとはいえない。年金記録漏れ問題と、松岡利勝前農相の自殺の衝撃が残る「政治とカネ」の問題が政権に打撃を与え、内閣支持率が低下するなか、自民党は年金問題などで明確な方針を打ち出す必要に迫られていた。

 首相は自民党の中川昭一政調会長らに「年金問題や公務員制度改革は国民の関心が高いのできちんとやってほしい」と指示。公約では「社会保険庁の責任は極めて重大であり、政府・与党一体となって再発防止のための調査・検証を早急に行う」と強調する一方で、社保庁を非公務員型の新法人(日本年金機構)に移行する必要性を訴えている。

 地方の医師不足問題では「緊急臨時的に医師を派遣する国レベルのシステムの構築」などの対策を列挙し、身近な問題に目配りを示した。温暖化ガス削減などの環境対策では、首相が表明した「世界全体の排出量を現状から2050年までに半減する」との目標を掲げ、来年の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)に向け「環境外交」を戦略的に展開するとしている。

 主要政党の中で、自民党が最初に政権公約を発表した。年金問題などで非難合戦をするのではなく、民主党なども公約策定を急いで、骨太な政策論争を展開してもらいたい。

【日経・春秋】

春秋(6/6)

 「そうして、2週間目のある朝。漂うだけだったわたしの心が目覚め、働きはじめる。海辺での覚醒(かくせい)、海がもたらす智恵とでも言ったらいいだろうか」。アン・モロウ・リンドバーグ『海からの贈りもの』の一節である(落合恵子訳)。

▼有名な飛行家の夫と離れ、ある島で休暇を過ごした彼女は心を解き放たれ、思索を深める。豊かな命をはぐくむ海の力なのだろう。地球温暖化対策を最大のテーマにサミットが始まるハイリゲンダムも、ドイツで最初に海水浴場が開かれたバルト海の保養地だ。まさに「海がもたらす智恵」に世界が注目している。

▼温暖化が進めば、そんな豊穣(ほうじょう)な海も表情を変えて地球を激変させる。サンゴの死滅が広がり、南極やグリーンランドの氷が解けて海面が最大 59センチも上昇する。沿岸湿地の3割が失われる恐れがあるという。日本も無縁ではない。茨城大の試算では、3大都市圏で最悪1000万人が居住地水没の危険にさらされる。

▼首脳たちは危機感を共有し、地球を守るための新しい枠組みづくりに踏み出せるのか。安倍晋三首相も、2050年までの世界の温暖化ガス排出量半減を唱えるだけでは会議をリードできまい。私たちも生活を変える工夫がいる。アンはこう書き残した。「どれだけ多くではなく、どれだけ少ないもので暮らすか」


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貢だけ貢がされて、デフォルトですか。。。。それとも、これでも、日本は発展途上国などから搾取している立場なのでしょうか? 人気blogランキング 「近代経済システム」で成立するけったいな倒錯事象 投稿者 あっしら 日時 2004 年 3 月 24 日 >貢だけ貢がされて、デフォルトですか。。。。それとも、これでも、日本は発展途上国などから搾取している立場なのでしょうか? 貨幣が(経済)活動の基準であり人々の生活を規制している「近代経済システム」では、異様でけったいな倒錯状況が成り立ちます... [続きを読む]

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