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2007年6月 7日 (木)

6月7日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年6月7日朝刊)

[2閣僚の発言]これ以上詭弁を弄するな

 「例えば沖縄が隣国から爆撃された(場合)。どことは言わないが、沖縄の米軍基地から攻撃するというときにはあり得るのではないか」

 参院外交防衛委員会で、日米安全保障条約の合意事項である「事前協議制度」について質問した大田昌秀議員に対する麻生太郎外相の答弁だ。

 実に想像力に欠けた不謹慎極まりない発言と言うしかない。

 「沖縄が仮に侵略されたというのならばあり得るのではないか」という表現を、外相の口の軽さ、単なる言葉遊びと受け止めるわけにはいかない。

 なぜならば、言論の府と呼ばれる国会の答弁に立つべき人の資質にかかわる問題と思わざるを得ないからだ。

 そもそも、在沖米軍がイラク戦争に出撃したことを、なぜ「派遣された」と言うのだろう。これには、沖縄の基地から武器弾薬、兵士を送り込み死者も出している米軍自体が戸惑っているのではないか。「なぜ、日本政府は訳の分からぬことを言うのか」と。

 条約上、本来やらなければならない「事前協議」をやらないで済むようにしたのは日本政府ではないか。このことは、既に米国の公文書で明らかになっている。

 これ以上、詭弁を弄するのは止めてもらいたい。認めるべきものを認めないから、答弁もつじつまが合わなくなる。国民、県民を欺き通すことができないことを、なぜ政府は認識できないのだろうか。疑問と言うしかない。

 さらにあきれるのは、将来的に嘉手納基地への駐留が取りざたされ、より以上の騒音被害が予想される最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターを「確かにいい戦闘機だなというのは分かりました」と述べた久間章生防衛相である。

 自衛隊の主力戦闘機F15の代替機にする案があるからであろうが、これこそ想像力に欠ける答弁と言っていい。

 防衛相は、基地からの騒音、爆音被害に脅かされ、未明の離陸に安眠を妨げられている周辺住民の怒りが想像できないのだろうか。これでは、いくら基地被害を訴えても暖簾に腕押しだということがよく分かる。

 「言葉をあげつらう」のは、もちろんいいことではない。だが、今回の両大臣の発言は無視できるものでないのは明白だろう。

 政治の要諦は「言葉」にあるのに、その政治家の発言がただ軽いだけでなく、哲学も感じられず思いやりに欠けるのでは何をか言わんやだ。

 言葉の裏には本音が隠されているのであり、そのことは厳しく検証されてしかるべきだ。

(2007年6月7日朝刊)

[絶滅の恐れ]人間の責任は重大だ

 私たちが住む地球はいま、生物史上最も厳しい「大量絶滅」の時代にあるといわれている。

 しかも、その理由はほぼ百パーセント私たちの経済活動や開発行為に起因しているというから責任は重い。

 国際的な鳥類保護団体バードライフ・インターナショナル(本部・英国)が、世界各地に生息する鳥約一万種のうち、絶滅の恐れがある種が千二百二十一種に上ると発表したのは、そのことの裏付けになるのではないか。

 将来的に絶滅危惧種となり得る種(準絶滅種)とされた八百十二種を加えると、全体の22%が厳しい状況にあるという。地球上に生息する鳥のうち、五種に一種以上の数である。事態の深刻さは明らかだろう。

 日本の場合、沖縄本島北部にだけ生息するノグチゲラとヤンバルクイナをはじめ、北海道のシマフクロウなど八十三種が危惧種、または準危惧種に指定されている。

 県版レッドデータブック(一九九六年)には、動植物で絶滅した「絶滅種」が二十三種(動物六、植物十七種)、絶滅の危機に瀕している「絶滅危惧種」百三十一種(動物二十八、植物百三種)、絶滅の危機が増大している「危急種」四百二種(動物五十三、植物三百四十九種)などが記されている。

 地球上の鳥類が少なくなったのは、生物種の多くが生存し、地球の面積の約70%を占めるという熱帯雨林の消失が最大の要因だといわれている。

 地域の経済活動が大きな理由だが、本島を中心にした琉球列島も同じ傾向にあるとみていいのではないか。

 東洋のガラパゴスと称されるヤンバルの森は林道やダム建設が進められ、米軍のヘリポート建設計画でさらに自然が壊されようとしているからだ。

 環境破壊は鳥類だけでなく小動物や植物に影響を及ぼし、やがては人間の暮らしにも波及する。

 これ以上、自然を失ってはならない。自然とは謙虚に向き合うべきであり、むしろ守っていくことに全力を尽くしていきたい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月7日 朝刊 1面)

 名著と呼ばれる『日本百名山』を記した作家の深田久弥は、名山の第一条件として「品格」を挙げている。高さだけではなく、厳しさや強さ、美しさ、何か人に訴えるものがなければいけないと説いている。

 後記ではこうも説明している。選んだ基準はあくまで主観であると。山の印象は季節や見る者の時々の心情でも違う。百選から漏れた全国の愛好家の不満を想定したものだが、なるほど、受け手の評価は変わるだろう。

 一昨日の参院外交防衛委員会で政治家の「品」を考えさせられた。麻生外相が日米安全保障条約下の事前協議の例えに「沖縄が隣国から爆撃された(場合)」、久間防衛相は嘉手納基地に一時配備された最新鋭機を「いい戦闘機」と相次いで発言した。

 政治家の資質としてユーモアのセンスは重要である。両大臣は官僚作成の答弁書を読まず、自らの考えを述べることで存在感を示すが、先の発言はユーモアともリップサービスとも懸け離れている。

 二人が座る大臣のいすには、沖縄の基地負担軽減という重責がある。当然、県民感情に最も敏感でなければならないはずなのに、言動は逆に県民を挑発しているかのように映る。

 普天間飛行場の移設で防衛省の対応を「デリカシーに欠ける」と表現したのは仲井真知事。筆者は品の絶対条件に「他人や弱者を思いやる心」があると考える。よって両大臣に「品」はない。評価は間違っているだろうか。(石川達也)


【琉球新報・社説】

消費者団体訴訟 制度活用し悪質業者排除を

 被害者に代わって国の認定を受けた「適格消費者団体」が、悪質な業者による勧誘の差し止めなどを請求できる消費者団体訴訟制度が7日施行される。
 消費者の相談を受けた消費者団体が、これまで事業者に改善を申し入れても「何の資格があるのか」と、意に介さない事業者もいたという。
 国の認定を受けることで消費者団体の事業者に対する申し入れは重みを持つ。消費者被害が増加しており、消費者全体の利益を守る上で制度は大きな力になる。
 これまでは、消費者が契約取り消しなどで個別に救済されても、他の消費者は被害を受ける可能性は残っていた。
 新制度導入によって適格消費者団体は事業者の不当な行為が実際に行われた場合だけでなく、行われる恐れがある際にも差し止め請求権を行使できる。不当行為そのものを差し止めることで、消費者被害の拡大防止が期待できる。
 差し止め請求は(1)元本保証のない金融商品を「確実に値上がりする」と説明して販売する「断定的判断の提供」(2)いかなる理由があっても事業者は一切損害賠償責任を負わないとの契約条項を設ける―などが対象になる。
 国民生活センターの2005年度まとめでは、消費生活に関する苦情や相談は10年前の4・6倍、127万5180件に上っている。その45%は販売方法に問題のある相談だった。
 リスクがあるにもかかわらず「必ずもうかる」「値上がりは確実」と商品先物、未公開株、分譲マンションなどへの投資や出資を持ち掛ける利殖商法は5950件あった。被害者の平均支払額は575万円と高額である。
 「うまい話」はない、ということを消費者自身がしっかりと認識し、おかしいと思ったら毅然(きぜん)と契約を拒否することが被害防止の基本である。
 しかしながら、悪質な事業者は言葉巧みに勧誘してくる。被害に遭った際には新制度を活用して、悪質な事業者を排除する必要がある。それが消費者全体の利益にもつながる。
 不特定多数の消費者の利益擁護を図るための活動で、実績のある特定非営利活動法人(NPO)などが適格消費者団体の認定を受けるとみられている。
 消費者団体には差し止め請求権はあっても、損害賠償請求権はないなど、まだ課題は多い。行政側からの資金的、情報提供などの支援も必要だ。
 新制度を十分に機能させるには被害を受けた消費者がまず声を上げ、積極的に適格消費者団体に情報を寄せ、他の被害者とも力を合わせていくことが大切だ。

(6/7 9:50)

鳥類に危機 待ったなしの保護対策

 世界各地に生息する鳥約1万種のうち、絶滅の恐れがある種が1221種あり、将来的に絶滅危惧(きぐ)種となり得る準絶滅種812種を加えると、鳥全体の22%、実に5種に1種以上が危機にひんするとの調査結果が出た。国際的な鳥類保護団体バードライフ・インターナショナルがまとめた。
 原因として移入種の影響や開発による生息地の破壊が挙げられている。移入種対策の強化をはじめ保護活動の大幅な強化を図ることが必要だ。
 ヤンバルクイナのように生息地が一部の島に限られる鳥が特に深刻な状況に置かれている。約100年前に移入したマングースが生息地に侵入し、生息数が大きく減っている。
 山階(やましな)鳥類研究所の調査では、ヤンバルクイナの推定生息数は1985年に1500羽から2千羽だったが、2005年は717羽に激減した。
 東村高江区に予定されている米軍ヘリの着陸帯(ヘリパッド)の移設は、危機に拍車を掛ける恐れがある。
 今、保護の取り組みを強化しなければ、取り返しのつかない事態を招きかねない厳しい状況だ。
 環境省と県はやんばる地域から14年度までに根絶することを目指し、マングースの防除事業を実施しているほか、マングースの北上防止柵設置を進めている。ペースアップを望みたい。
 人工繁殖にも力を入れる時期にきているのではないか。
 ネコなどのペットを捨てることがあってはならない。輪禍死も防ぐ必要がある。県民の意識高揚も絶滅回避の大きな鍵となる。
 各国で取り組まれた保護活動によって16種の鳥が絶滅を免れたとの研究結果もある。
 1994年に22羽しかいなかった中国のトキは2004年には360羽に増えた。繁殖する巣の周辺で開発を規制したことなどが奏功したという。日本も参考にしたい。
 渡り鳥は各飛来地が一体的な保護策を講ずることが求められる。国際的な連携が必要だ。

(6/7 9:48)

【琉球新報・金口木舌】

 ノーベル平和賞受賞者でケニアの環境活動家ワンガリ・マータイさんが、提案する「もったいない運動」が広がりを見せている。毎日新聞社の招きでこのほど来日したマータイさん。各地の講演で熱っぽく「もったいない」の心を語り掛けた
▼通訳としてこの運動にかかわる県出身の国吉真理子さん。マータイさんのいるところ、国吉さんありの活躍ぶりだ。「運動によって『もったいない』がネガティブな言葉からポジティブな言葉に変わった」との実感を語る
▼昨年7月、大型公共工事を「もったいない」と凍結を訴えた嘉田由紀子さんが滋賀県知事に当選した。新たな生活を創造しようという地域の意気込みを取り込む力がこの言葉にある
▼「もったいない」に相当するウチナーグチは「物を大事に」「惜しい」の意味も含む「アタラサン」か。ウチナーンチュの暮らしの知恵が、言葉ににじむ
▼4日に発覚した嘉手納基地の燃料漏れ事故。流出したドラム缶100本分の燃料は「もったいない」どころか、土壌汚染、しかも、事故を1週間も隠した米軍の態度に「ワジワジー」だ
▼県民の憤りをマンガタミー(丸抱え)して、米軍にぶつけるような言葉をぜひひねり出したい。

(6/7 9:57)


【東京新聞・社説】

コムスン処分 介護を食い物にするな

2007年6月7日

 大手介護サービス事業者「コムスン」の不正は悪質だ。同社の事業所は順次、事業所指定が取り消されるが、現に介護サービスを受けている高齢者の受け皿の確保に自治体は全力をあげてほしい。

 コムスンの事業所については、介護サービス利用者や家族が電話しても応答がなく、スタッフが少ないのではないかとの苦情が以前から東京都などには多数寄せられていた。

 コムスンは五都県八事業所で不正に指定申請を行っていた。介護保険法では事業所、事業内容ごとに必要なヘルパーの数などが定められているが、退職したり別の事業所に勤務しているヘルパーの名前を登録するなどして水増ししていた。苦情通りである。

 八事業所のうち六事業所は、取り消し処分を受ける前に廃止届を出し処分を免れた。組織的に処分逃れを図ったとみられても仕方がない。

 昨年四月の介護保険法改正で、指定事業所が重大な不正を働いた場合、同一事業者の他の事業所も含め五年間、新規指定や六年ごとの指定更新が受けられなくなった。

 このため来年四月から二〇一一年にかけてコムスンの全事業所の八割に相当する千六百五十余りの事業所が順次、指定を取り消され、介護サービスを提供できなくなる。

 これで困るのは、現にサービスを利用している高齢者だ。コムスン全体で約六万五千人の利用者がいる。介護保険法は指定期間中のサービス提供を義務付けているが、コムスンがいつ介護事業から撤退しないとも限らない。各自治体は厚生労働省と連携し、他の事業者への紹介を行い高齢者へのサービス提供が途切れないよう万全を期してもらいたい。

 介護保険の利用者数、利用の際の一割負担を除く給付費はいずれもスタート時の二〇〇〇年に比べ、現在は二倍に膨れあがっている。これに伴い介護ビジネスに参入する事業者の数も増え、指定申請を受ける都道府県のチェックが追い付かないことが今回の不正の背景にあるだろう。

 この際、チェック体制をもっと厳しくする必要がある。現在は書類が整っているか、施設基準を満たしているかどうかで判断しているが、甘すぎる。介護が食い物にされないように不正の再発防止策を徹底的に検討すべきである。

 人口に占める六十五歳以上の高齢者の割合は現在約20%だが、二五年には30%近くまであがる。介護が必要な高齢者も増え、介護保険の果たす役割も大きくなる。国民みんなで支えていかねばならない。事業者もその一翼を担っているという高い職業的使命感を持ってもらいたい。

中国とG8 温暖化防止のリードを

2007年6月7日

 中国の胡錦濤国家主席が主要国(G8)首脳会議に出席、地球温暖化問題への立場を表明する。途上国として発展の「権利」を主張するにとどまらない温暖化防止をリードする論議を期待したい。

 中国は地球温暖化問題の隠れた主役だ。化石燃料を大量に消費する急速な経済発展を遂げながら、環境対策が遅れている。温室効果ガスの排出量が世界一の米国を追い越すのは時間の問題といわれている。

 中国自身も、これを意識しており、胡主席のサミット出席を前に、初めて気候変動に対する総合的な対応計画を発表した。「温暖化大国」の中国が問題に取り組む姿勢を、はっきりさせたことは歓迎したい。

 しかし、中身を見ると二〇一〇年に一定の国内総生産(GDP)を生み出すためのエネルギー消費量と二酸化炭素(CO2)の総排出量を〇五年に比べ20%削減する目標を掲げたにとどまった。既に決定した第十一次五カ年計画(〇六-一〇年)を大きく踏み出すものではない。

 しかも、中国は毎年、10%程度の経済成長を続けており、これで温室効果ガスが削減されるのかどうか、はっきりしない。会見で計画を発表した国家発展改革委員会の馬凱主任(閣僚級)は「排出削減の量的な目標は受け入れない」と明言した。

 馬主任によると、地球温暖化は先に経済発展を遂げた先進国が、まき散らした温室効果ガスに原因がある。途上国には発展を続ける権利があり温暖化には「共同だが区別のある」責任が認められるべきだという。

 また、最大の温室効果ガスを排出している米国が削減目標を受け入れていないことを指摘。「米国が減らさないなら、中国も減らさないと言えるはず」とも述べた。

 しかし、馬主任も認めたように責任をなすり合っているうちに温暖化は進む。中国自身の温暖化も深刻で「百年来、年平均気温は毎年〇・五-〇・八度の上昇を続け」「一九八六年から二十年連続で暖冬が続いた」(中国気候変動対策国家計画)。

 影響は周辺国に及んでおり日本でも黄砂や酸性雨、最近では中国発の光化学スモッグまで問題になった。

 中国は国際問題でしばしば米国の独善と専横をけん制してきた。地球環境問題で独自の温暖化対策を打ち出し世界をリードすればイメージは大きく改善する。

 日本政府も「美しい星」を目指し温暖化対策を政策の柱に据えることを表明した。この問題で両国が連携し協力を深めれば両国関係の新しい地平が切り開けるだろう。

【東京新聞・筆洗】2007年6月7日

 ドイツのハイリゲンダムで始まった主要国首脳会議(G8サミット)にはせ参じた安倍首相、参院選目前に急落した支持率をなんとか回復しようと懸命だ▼五千万件の“消えた年金”に加え、松岡前農相自殺のダブルショックを強行採決の連発でしのぎ、サミットでは地球温暖化対策の独自案を提出して、これを追い風に来年の北海道洞爺湖サミットまで生き延び、議長を務めたいのだろう▼だが、来月の参院選の苦戦が予想される安倍首相と同様、サミットに集まる各国首脳は、退陣が決まったブレア英首相や、任期あと一年半、支持率最低のブッシュ米大統領ら、旗色の悪い人が多い。安倍首相のドイツ現地での認知度は17%で七位、好感度も六番目とか▼サミットといえば、世界制覇をもくろむ“東インド貿易会社”の攻勢に対抗しようと、世界中から“伝説の海賊”九人が“世界の果て(ワールド・エンド)”に集まるのが、ハリウッド映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』完結編『ワールド・エンド』だ▼五月末から世界同時公開で、興行記録を塗り替える人気。安倍首相もあやかりたいところだ。映画ファンとして寂しいのは、この大航海時代に活躍する伝説の海賊たちの中に、日本人が含まれていないこと。アジアの国々といまだに歴史を共有できないこの国は、エンターテインメントの仲間には入れてもらえない▼十六世紀、ボリビアのポトシ銀山と並び、世界の銀産出量の三分の一をまかなった島根県の石見銀山がことし、世界遺産登録から漏れたのはそのせいかも。


【河北新報・社説】

公務員改革法案可決/首相はなぜ無理を通すのか

 天下り規制を強化する国家公務員法改正案が6日の衆院内閣委員会で与党の賛成多数で可決された。7日の衆院本会議でも与党主導で可決の見通しだ。

 しかし、衆院を通過しても23日の会期末までには時間的余裕がなく、成立できるかどうかは極めて不透明だ。直後に参院選を控えた国会のため、参院で審議未了なら廃案となる。

 安倍晋三首相は「自分の内閣の時に、官製談合や天下り問題に終止符を打ちたい」と法案成立に強い決意を示してきた。

 が、法案は公務員の再就職あっせんを官民人材交流センターに一元化し省庁の関与も認めているため、民主党はセンターを「天下り公認機関」として天下り根絶の対案を出していた。与党内にも「そう出来のいい法案ではない」との声があり、法案の中身を見ても万全ではない。

 ではなぜ、安倍首相はそんなに無理を通そうとするのか。誰もがそう思い始めている。

 急落した内閣支持率をV字回復させるには、何としても夏の参院選前に政局の主導権を握らなければならない。首相と周辺はその一心であろう。

 年金記録不備問題への対応に追われて会期末を迎えれば、野党のペースに押されたまま参院選に突入することになり不利だ。それを避けるには、首相が参院選の目玉としていた公務員改革の実績を残して今国会の幕を引きたい―。首相サイドの心中を察すると、こういうことか。

 政局の主導権を握るには当面の国会運営の主導権を手中にしたいとの思惑も見え隠れする。

 国家公務員法改正案を成立させるための会期延長論は、安倍首相自身は表向き否定しているものの、発信源は強気の国会対策を目指す首相周辺のため、流れになっていく可能性がある。

 延長がなく、改正案が民主党議員が委員長を務める参院内閣委員会に送られて審議未了となった場合でも、「民主党が改革をつぶした」との理屈で撤退すれば、敵に打撃を与えられるという打算が自民党内にはある。

 しかし、無理に無理を重ねる安倍政権のこうした政治手法は大きなリスクをはらむ。強行採決の連鎖は、いくら参院選前とはいえ、与野党の対立を深刻にして政治を硬直させるだけだし、世論の「安倍離れ」を加速していくことは間違いない。

 参院自民党は攻め一辺倒の首相官邸サイドにブレーキをかけてきたが、首相周辺がこのまま突っ走れば、官邸と与党の間にも深い亀裂を残すだろう。それでは参院選は戦えまい。

 世論は浮足立つ安倍政権に危うさを感じ始めている。政治の現状は、政権が浮足立ってはならない局面にあるからだ。

 年金記録不備問題は政権党に責任があることは言うまでもない。だが安倍内閣は、与野党の対立を超え、丁寧なプロセスを踏みつつ解決を目指さなければ、国民の年金不信は増幅するばかりではないか。公務員改革も一遍の法案に任せるのでなく、天下り監視の広範な国民世論をつくるのが大事だ。
 安倍首相にはこの際、しっかり腰を落ち着けてもらいたい。
2007年06月07日木曜日

【河北新報・河北春秋】

 クジラ研究者の大隅清治さんによれば、クジラ類が1年間に食べる魚は2.5億トンから4.4億トン。数字からはピンと来ないが、人間による漁獲量の3―5倍だ。食べ過ぎだ。クジラが増え過ぎた▼ただし、絶滅が心配されたシロナガスクジラは別で、あまり増えない。餌と生息域を同じくするクロミンククジラが先に増えてしまったせいだ。間引かない限り、シロナガスを増やすのは難しい

 ▼ 捕鯨の必要性が増している。伝統的な食文化の継承や多様な食料源を確保するためだけではない。海洋生態系を守るために必要だ。データを基に国際捕鯨委員会(IWC)で日本は粘り強く説いてきた▼米国で開かれた総会で、日本は脱退と新機関の創設を示唆した。国際会議からの離脱と聞けば、何やら穏やかでないように思える。しかしIWCに関してなら幾つも先例がある

 ▼ノルウェーやオランダは1度脱退して譲歩を引き出し、再加盟した。自主的な捕獲枠で商業捕鯨を続けるノルウェーは、さらに、アイスランドなどと独自に条約を結んで資源管理を行っている▼反捕鯨国のサロンと化し、異常な状態の続くIWC。機能不全は誰もが指摘するところだ。とどまって内部改革をなお続けるのも手だが、脱退を視野に入れることは決して非難される選択肢ではない。

2007年06月07日木曜日


【京都新聞・社説】

がん終末期医療  さらに充実した指針を

 厚生労働省研究班が、死期の迫ったがん患者の延命治療中止手続きについて、指針試案をまとめた。
 試案では「終末期」の定義をはじめ、患者や家族の意思確認の方法を初めて明確に示した。
 そのうえで、患者の直接、間接の意思を前提に、人工呼吸器など「すべての治療行為」が中止などの対象になると明記した。
 具体的な延命治療中止の手続きを示したという点で評価したい。人工呼吸器はつねに延命治療中止の妥当性が問われるケースが多いだけに、試案で明示した意義は大きい。
 終末期医療については今年四月、国の指針が大筋で決まった。しかし、具体的な延命治療中止の基準や内容については先送りされてきた。
 医療現場では延命治療をめぐり、日々揺れている。国の指針が通知されてからも、和歌山県の病院医師が家族の要請で人工呼吸器を外し、殺人罪で書類送検されていた事件が明るみに出た。
 現場では混乱が続いているだけにこの試案を踏まえ、命の切り捨てにつながらないような基準づくりをめざしたい。
 試案では、末期がん患者の終末期を、「余命三週間以内」と定義した。ただし「複数の医師が繰り返し診察し、判定されたとき」と慎重な対応を求めたのは当然だ。
 患者の意思確認の方法では患者本人による「二年以内に書かれた文書」あるいは「口頭での意思表示」を判定の基準とし、国の指針との整合性を図っている。
 それだけではなく、「家族による患者意思の推定と同意」も盛り込み、幅を広げたのが特徴といえる。
 医療の側には、家族の判断が患者の意思に基づくものなのかどうか、高度な判断を迫られる場面も予想される。
 医師ら医療従事者には病気治療だけではなく、患者や家族らとの日常的な接触などにより、包括的な医療のあり方が求められる。
 今後、研究班は詰めの作業を急ぐ。がん終末医療の大切な分岐点となるだけに医療現場、さらに患者や家族の声を大いに反映して、仕上げてもらいたい。
 指針ができても、まだ課題は残る。同研究班の調査では、現在、がん患者への病名告知率は平均65・7%だが、余命告知率は29・9%にとどまる。この現状といかに向き合うかも難題だ。
 試案では、終末期の患者が「尊厳ある死に至るプロセスを選択すること」を指針の目的としている。
 そのためにも終末期のがん患者の受け皿となる医療態勢の整備は欠かせない。地域における病院や在宅のホスピス医療の充実をはじめ、緩和ケアの推進なども求められる。
 患者が穏やかな余命を送ることのできる環境づくりも急がなければならない。

[京都新聞 2007年06月07日掲載]

参院選公約  「年金」個条書きですまぬ

 「年金問題」が、夏の参院選の最大の争点になることが確実な情勢となった。
 自民党が、急浮上した年金記録漏れ問題への対応を前面に掲げた参院選公約を決定したからだ。
 「宙に浮いた年金記録」として政府・与党に攻勢をかける民主党はすでに年金改革を公約原案に盛り込んでおり、選挙をにらんだ駆け引きが激化することは必至だろう。
 安倍晋三首相にとって、初めての国政選挙の公約である。首相のキャッチフレーズの「美しい国」を基本方針に、年金記録漏れ対策など百五十五項目の政策を打ち出した。
 首相は、年金問題に火が付くまでは、憲法改正など「安倍カラー」を強調する政策で、参院選を戦う構えだった。民主党内の考えの違いを突いて揺さぶるという「攻め」の戦略である。
 ところが、約五千万件もの不明年金と支給漏れが次々と明らかになった。さらには松岡利勝前農相の自殺が追い打ちをかけ内閣支持率が急落した。
 問題を長引かせると政権へのダメージは必至で、「これでは、参院選は戦えない」と判断したのだろう。党に指示し、急きょ公約に年金記録漏れ対策を盛り込んだというわけである。
 五千万件の不明記録については一年以内に照合を完了し、過去の未支給分も受けとれるよう五年の時効撤廃などを打ち出した。
 だが、これらの公約はすでに決定した政府案の対策を個条書きにしただけにすぎない。これでは国民の不信をぬぐい去ることなど、とてもできまい。
 わずか一年で、本当に照合が可能なのか。だれしも抱く疑問だろう。保険料の納入を証明するものがない人への救済策も政府の説明ではあいまいなままだ。弁護士ら「第三者委員会」が判断するというが、そもそも判断基準が示されていないではないか。
 政府・与党は「救済」が先決といい、民主は「記録漏れなどの徹底調査」を主張する。社会保険庁の解体では一致するが新組織のあり方でも意見が対立。参院選の当初の争点だった「憲法改正」、民主の「格差是正」はかすみ、年金が「政争の具」になった懸念すらある。
 年金問題は財政を伴う制度改革とパッケージで論じるべきものだ。
 自民は現行の社会保険方式の維持を、民主は全年金一元化と基礎年金の税方式を訴える。民主は基礎部分の財源に消費税を全額充当するとしているが、増税は見送り5%に据え置いた。自民も国庫負担引き上げの財源検討を参院選後に先送りした。痛みを伴う税制論議を避けていては有権者に不親切というものだ。
 国会で、国民が納得いくまで審議を尽くすとともに、各党は明らかになった主張を、公約に具体的に盛り込み参院選で競ってもらいたい。

[京都新聞 2007年06月07日掲載]

【京都新聞・凡語】

「環境の日」                                        

  「環境の日」にちなんだ行事が各地で開催されている。自治体や企業、NPOが主催し、自然とふれ合ったり、省エネやリサイクルを通じて環境への関心を高め る取り組みを展開している▼ただ少し気になることがある。何気なく使われている自然や環境を「保護する」との言葉だ。人間が保護しなくてだれがするか、と の声もあるが、何か違和感を覚えてしまう▼確かに自然環境に対する人間の影響力は極めて大きい。工業文明を手にして以来、欲望のままにエネルギーやモノの 流れを変えることができるようになった。当然、負の作用は働く。地球温暖化や環境破壊、資源の枯渇-▼危機感を募らす人々がストップをかけようとしてもそ の傾向はやみそうにない。爆発的な人口増と飽くなき所有欲が背景にあるにしても、人間の心のどこかに自然を征服して文明を築いてきた自負がある▼その裏返 しが「保護」の言葉につながっているとは言いすぎだろうか。三十八億年前に海で生まれた生命の遺伝子は、すべての生き物に受け継がれている。人間も地球の 大きな命の流れの中にある▼人間も自然の一部。基本的に人間は他の生き物と同様、自然に保護してもらう存在であるといえる。頭で理解できても実感するのは むずかしいが、命のつながりを自覚し人類最大の課題、環境問題に謙虚な気持ちで取り組めればと思う。

               

[京都新聞 2007年06月07日掲載]


【朝日・社説】

情報保全隊―自衛隊は国民を監視するのか

 自衛隊は国民を守るためにあるのか、それとも国民を監視するためにあるのか。そんな疑問すら抱きたくなるような文書の存在が明らかになった。

 「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」と「情報資料」というタイトルに、それぞれ「情報保全隊」「東北方面情報保全隊長」と印刷されている。文書は全部で166ページに及ぶ。共産党が「自衛隊関係者」から入手したとして発表した。

 久間防衛相は文書が本物であるか確認することを拒んだが、この隊がそうした調査をしたことは認めた。文書の形式やその詳細な内容から見て、自衛隊の内部文書である可能性は極めて高い。

■何のための調査か

 明らかになった文書の調査対象は03年から04年にかけてで、自衛隊のイラク派遣への反対活動ばかりでなく、医療費の負担増や年金改革をテーマとする団体も含まれている。対象は41都道府県の290以上の団体や個人に及んでいる。

 文書には映画監督の山田洋次氏ら著名人、国会議員、地方議員、仏教やキリスト教などの宗教団体も登場する。報道機関や高校生の反戦グループ、日本国内のイスラム教徒も対象となっていた。

 自衛隊のイラク派遣は国論を二分する大きな出来事だった。自衛隊が世論の動向に敏感なのは当然のことで、情報収集そのものを否定する理由はない。

 しかし、文書に記されているのは、個々の活動や集会の参加人数から、時刻、スピーチの内容まで克明だ。団体や集会ごとに政党色で分類し、「反自衛隊活動」という項目もある。

 これは単なる情報収集とはいえない。自衛隊のイラク派遣を批判する人を頭から危険な存在とみなし、活動を監視しているかのようである。

■「反自衛隊」のレッテル

 文書によると、調査をしたのは陸上自衛隊の情報保全隊だ。保全隊は03年にそれまでの「調査隊」を再編・強化してつくられた。陸海空の3自衛隊に置かれ、総員は約900人にのぼる。

 情報保全隊の任務は「自衛隊の機密情報の保護と漏洩(ろうえい)の防止」と説明されてきた。ところが、その組織が国民を幅広く調査の対象にしていたのだ。明らかに任務の逸脱である。

 防衛庁時代の02年、自衛隊について情報公開を請求した人々のリストをひそかに作り、内部で閲覧していたことが発覚した。官房長を更迭するなど関係者を処分したが、その教訓は無視された。

 調査の対象には共産党だけでなく、民主党や社民党も含まれている。野党全体を対象にしていたわけだ。

 04年1月に福島県郡山市で行われた自衛隊員OBの新年会で、来賓として招かれた民主党の増子輝彦衆院議員が「自衛隊のイラク派遣は憲法違反であり、派遣に反対」と述べた。保全隊はこれを取り上げ、「反自衛隊」としたうえで、「イラク派遣を誹謗(ひぼう)」と批判している。

 イラク派遣の是非は政治が判断すべき問題だ。どういう結果にせよ、自衛隊はそれに従うまでで、政治的に中立であるはずだ。自衛隊にまつわる政策に反対する議員らをそのように扱うことは、あってはならないことだ。

 イラク派遣については、自衛隊のことを思えばこそ反対した人たちも少なくなかった。イラク派遣に反対することが「反自衛隊」だとはあまりにも短絡的な考え方である。自衛隊がそんな態度をとっていけば、せっかく築いた国民の支持を失っていくだろう。

 報道機関を調査の対象にしていたことも見逃せない。

 たとえば、岩手県で開かれた報道各社幹部との懇親会での質問内容が、個人名を挙げて掲載されていた。自衛隊が厳しい報道管制を敷いていたイラクでの活動については、「東京新聞現地特派員」の記事や取材予定をチェックしていた。

 イラク派遣について自衛隊員や地元の人々の声を伝えた朝日新聞青森県版の取材と報道について、「反自衛隊」と記録していた。「県内も賛否様々」と題して両論を公平に伝えたこの記事が、なぜ反自衛隊なのか。

■文民統制が揺らぐ

 自衛隊は国を守る組織だが、それは自由な言論や報道ができる民主主義の国だからこそ真に守るに値する。そうした基本認識がうかがえないのは残念だ。

 防衛省はこうした情報収集について、イラク派遣への反対運動から自衛隊員と家族を守るためにしたことで、業務の範囲内という立場だ。しかし、それはとても通用する理屈ではない。

 忘れてはならないのは、武力を持つ実力組織は、国内に向かっては治安機関に転化しやすいという歴史的教訓である。戦前、軍隊内の警察だった憲兵隊がやがて国民を監視し、自由を抑圧する組織に変わっていった。

 よもや戦前と同じことがいま起きるとは思わないが、よくよく気を付けなければならないことだ。自衛隊を「軍」にするという憲法改正案を政権党の自民党が掲げている現状を考えれば、なおさらである。

 今回明らかになったのは全体の活動の一部にすぎまい。政府はこうした活動について、詳細を明らかにすべきだ。

 守屋武昌防衛事務次官は「手の内をさらすことになるので、コメントするのは適切ではない」という。開き直りとしかいえず、とても納得できるものではない。無責任の極みである。

 こうした事実を政府がうやむやにするようでは、文民統制を信じることはできない。国会も役割を問われている。

【朝日・天声人語】2007年06月07日(木曜日)付

 鏡に映った己(おの)が姿を見ると、人は自分の存在をより強く意識するという。電車に飛び込む自殺を防ごうと、ホームに鏡を設置した駅がある。鏡に映る姿を見ることで、思いとどまる効果を狙ったそうだ。

 地球を鏡に映すことはできない。長く実像を知らなかった人類は、68年に1枚の写真を手にする。月を回るアポロが写した地球は、漆黒の宇宙に、青く、はかなげに浮かんでいた。写真は人々の“愛球心”をかき立てる。70年代にかけて、アースデー(地球の日)制定など環境運動の波が世界に広がっていった。

 地球を「美しい星」と呼ぶ温暖化防止の構想を携えて、安倍首相がサミットに臨んだ。2050年までに、世界の温室効果ガス排出を半分に減らす考えだ。話し合いを日本が先導する意気込みだという。

 これまで冷淡だった米国も、サミットを前に新提案を発表した。「経済を損なう」と意固地だったブッシュ大統領は、「米国が主導する」と豹変(ひょうへん)した。削減を急ぐ欧州連合(EU)にハンドルを握られると厄介だ。そんな思惑が、チラチラのぞく。

 鯨にのまれたのに気づかず、安穏(あんのん)と泳ぐ小魚のたとえがある。温暖化は、地球がまるごと鯨にのまれたようなものだろう。待ったなしの危機である。ようやく気づいたけれど、各国の事情で対策の足並みは揃(そろ)いにくい。

 アポロの写した地球を「宇宙に漂う奇跡」と呼んだ人がいた。その奇跡の星に間借りして、私たちも、他の生き物も暮らしている。排出ガス削減という家賃の、これ以上の滞納は許されまい。


【毎日・社説】

社説:コムスン処分 介護制度を食いものにするな

 介護の現場に驚きと困惑が広がっている。訪問介護最大手の「コムスン」が全国の施設設置で不正申請していたことがわかった。厚生労働省は同社に対し今後4年半、施設開設や更新を認めない処分を下した。

 大手の「ニチイ学館」や「ジャパンケアサービス」もすでに水増し請求などで東京都から業務改善命令を受けている。今回の処分でコムスンは介護事業所が5分の1に減るため経営にも影響が出そうだ。強引に顧客を集め、行政の警告を無視してきた経営姿勢がしっぺ返しを受けたのは当然の結果といえる。

 2年前の介護保険制度改正で、全国展開する介護事業者のどこか1カ所の施設でも不正があれば、すべての施設について監査を受ける仕組みが導入された。全国監査で他の施設に不正が見つかれば連動して処分される。厚労省は今回、初めてこの条項を適用した。

 介護現場には、利益至上企業が席巻するとまじめに取り組んでいる業者がはじき出される、という危機感が広がっていた。介護関係者の中には「一時的に混乱するにせよ、長い目で見たら悪い部位が全身に転移する前に切り取る措置は、介護保険制度を維持する上でいい」という見方すら出ている。

 問題は、同社の介護サービスを受けていた6万人とも言われる要介護高齢者への支援体制だ。介護の空白が生じるのは厳に避けなければならない。代替の事業者がカバーしてサービスを受け持つなど、官民一体で万全の態勢を整える必要がある。

 一つ心配なのは、これまで担当していた介護ヘルパーが交代すると、お年寄りが慣れるまで時間がかかる点だ。行き届いた配慮を望みたい。

 高齢社会を迎え、2000年の介護保険制度導入とともに、介護ビジネスは急成長した。数兆円の市場は、医療のような専門性を必要としないためさまざまな企業が参入した。コムスンも人材派遣業「グッドウィル・グループ」が出資して設立された。

 現在、介護認定を受けた439万人のうち介護サービスを利用している人は354万人。介護の総費用は7・4兆円(07年度予算)に膨らんでいる。2025年の高齢者人口はピークの3500万人にのぼると推計されている。

 パイの広がる介護現場に民間活力を導入してはみたものの、サービスの質や専門性の向上をそっちのけにして需要の掘り起こしに専念する事業者は後を絶たない。全国展開する事業所の新規指定を受ける際、勤務実態のない職員数を水増しして申請したり、本来なら介護保険の対象にならないサービスにも介護報酬を過大請求する。そのツケは結局、税金や保険料に回ってくる。

 介護業界にはビジネスモデルが確立していない。金もうけ主義がなじまない介護ビジネス市場に、悪貨が良貨を駆逐するような事態が起きるなら、未然に不正の抜け道をふさぐ介護保険制度の見直しも必要になってくる。

毎日新聞 2007年6月7日 東京朝刊

社説:G8サミット 温暖化防止へ実質的前進を

 1年前には考えられなかった盛り上がりである。ドイツのハイリゲンダムで始まった主要国首脳会議(サミット)では、地球温暖化問題が最重要テーマとして注目を集めている。

 ひとつの背景には、国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が今春公表した第4次報告書がある。

 地球温暖化の影響はすでにあちこちに表れている。このまま手をこまねいていると、水不足や洪水、生態系の破壊など、地球全体に悪影響が及ぶ。人類が直面する危機を、報告書はこれまでになくはっきりと描き出した。

 こうした分析と予測を前に、世界の動向は変化してきている。

 世界一の排出国である米国のブッシュ大統領は5月末、「08年末までに地球規模の長期的な排出削減目標を定める」との提案を発表した。今秋、中国やインドも含む主要排出国15カ国を集めた会議を米国で開くという。先進国に温室効果ガスの削減を義務付けた京都議定書から離脱し、批判を浴びてきたことを思うと、それなりの方向転換だ。

 具体的な数値目標設定には慎重で、どのような削減目標を策定するのかははっきりしない。それでも、温暖化対策に米国の参加が不可欠であることは間違いない。

 世界第2位の排出国である中国も、温暖化対策を盛り込んだ初の国家計画をまとめるなど、京都議定書以降(ポスト京都)の枠組み作りに積極的に参加する意向を示している。ただ、先進国と同様の削減義務を負うことに反対する姿勢は崩していない。

 サミットに求められているのは、消極的態度を変化させてきている米中印など大量排出国の参加を確保しつつ、実効性のある温暖化対策に向け前進することだ。

 欧州連合(EU)は50年までに90年比で世界の排出量を半減させるという目標で一致している。サミットの議長国であるドイツのメルケル首相はサミットの共同宣言にも明確な数値目標を盛り込みたい意向を示していたが、米国の反発が予想される。

 その点、日本の安倍晋三首相が提案する「世界の排出量を50年までに現状より半減させる」という目標は、あいまいさが残るだけに、米中の参加を促す点では効果があるかもしれない。

 ただし、具体性に欠ける提案で理念を示すだけでは、削減の実効性に疑問が残る。他国の理解を得ることも、ポスト京都の主導権を握ることもできない。サミットでは、どういう道筋で実際に削減に結びつけるかを、適切な場面で具体的に語る必要がある。それが来年の北海道洞爺湖サミットに向けた前進につながるはずだ。

 削減のための具体的な道筋をつけることは、国内対策でも欠かせない。今週まとまった環境白書は省エネをはじめとする環境関連技術の重要性を説いているが、技術を広げていくためには具体的な政策がいる。ポスト京都の主導権を握るには、京都議定書の約束を守る意気込みも不可欠だ。

毎日新聞 2007年6月7日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:その昔、中国の呉の孟宗が…

 その昔、中国の呉の孟宗(もうそう)が病母の欲しがる筍(たけのこ)を雪の日に探し回った。その孝に動かされた天の助けか雪中から筍が生えてくる。これが「孟宗竹」の語源らしく、中国の親孝行訓話を集めた「二十四孝」で一番有名な話である▲同じく晋の王祥は魚を求める母のために凍った川の上に裸で伏し、氷をとかして魚を取った。ほかにも親を蚊から守るために自分が刺されるように裸で寝る男や、自分が老いるのを両親が悲しまぬよう70になっても子供の格好でいた人物の話もある▲だがこの孝子たち、江戸時代の日本人には落語のネタにされるなどさんざんだ。井原西鶴は雪中に筍が欲しければ八百屋で、鯉(こい)なら魚屋で手に入ると書いた。親孝行はごく普通に家業で稼いだお金で行うものだという。そういえば現代にはみんなで保険料を出し合って行う親孝行もある▲その介護保険制度にもとづく介護サービスの最大手「コムスン」の事業所職員配置の虚偽申請をめぐり、厚生労働省は同社の事業所の新設と更新を11年末まで認めぬよう都道府県に通知した。これにより全国に展開する2000以上の事業所の8割近くが順次事業を行えなくなるという▲今までの介護報酬不正請求でも処分逃れとみられる対応が目立った同社だ。最大手だろうと何であろうと介護保険への信頼を揺るがす不正には、この事業からの退場を促す厳しい行政の姿勢が示された。みんなで持ち寄った“孝行”の費用をむさぼるような業者は無用というわけだ▲だが、気心の知れた職員の介護を受けてきたお年寄りは今後が不安だろうし、介護経験を積んだ人々の雇用も心配だ。業者の不正の上に、処分のしわ寄せがお年寄りに及んでは、二重の“不孝”である。行政に万全の対応を求めたい。

毎日新聞 2007年6月7日 東京朝刊


【読売・社説】

コムスン不正 悪質事業者に“退場処分”は当然だ(6月7日付・読売社説)

 こんな不正がまかり通るようでは、介護保険制度の根幹が揺らぐ。当然の措置であろう。

 厚生労働省は、訪問介護事業大手の「コムスン」が全国に展開する約2000事業所のうち1600余りについて、介護事業所としての指定を更新しないことを決め、都道府県に通知した。

 コムスンの事業所は、指定の有効期間6年を過ぎた所から順次、介護保険業務ができなくなる。2011年末までは再指定も認められない。事実上の“退場処分”である。

 コムスンの不正は、まず東京都で発覚し、青森、群馬、岡山、兵庫の各県でも見つかった。訪問介護などの事業所を新設する際、勤務していない職員を常勤ヘルパーに登録するなど虚偽書類を提出し、各地で事業所指定を受けていた。

 それだけではない。各都県が問題事業所の指定を取り消そうとするや、先手を打って廃業届を出し、処分を逃れた。

 業界大手としての自覚はもちろん、順法精神すら欠く行為だ。これでは、ほかにもさまざまな手口で介護報酬の不正請求を行っているのでは、と疑われてもやむを得まい。

 06年に施行された改正介護保険法で、一つの事業所に重大な不正が見つかった場合、同じ法人が経営する他の事業所も指定更新しない、との連座規定が設けられた。厚労省はこれを初めて全国規模で適用した。法に則(のっと)った妥当な措置だ。

 コムスンの利用者は6万5000人もいる。その大半は、事業所の指定期間が切れる前に、代わりの事業者を探さなければならない状況に追い込まれる。

 だが、コムスンの親会社グッドウィル・グループはコムスンの全事業を別の連結子会社に譲渡する方針を発表した。

 顧客へのサービスの継続と従業員の雇用確保を最優先するため、と説明しているが、事業譲渡でビジネスの実質的存続を図ろうとする意図が透けて見える。

 介護という公共的な事業で、こうした法の裏を突くような手法を認めていいものか、厚労省は慎重に検討すべきだ。

 業界大手の不祥事を機に、行政の姿勢も根本から改める必要がある。

 介護保険は、サービスの担い手を確保するため、営利目的の事業者の参入も認める形でスタートした。行政は事業者の質より量を優先し、甘い指導を続けてきた。その結果、介護保険の総費用は7兆4000億円まで膨らみ、なお肥大化しつつある。

 悪質事業者につけ込まれぬためには、厳格な処分とともに、制度全体の不断の点検も必要だろう。
(2007年6月7日1時33分  読売新聞)

抵当証券判決 消費者保護を軽視した国の責任(6月7日付・読売社説)

 消費者保護に不可欠な権限の行使を怠った金融行政の「不作為」が厳しく問われた。

 破綻(はたん)した抵当証券会社「大和都市管財」(大阪市)グループによる巨額詐欺事件で、抵当証券を購入した被害者が、国に損害賠償を求めた訴訟での大阪地裁判決だ。

 判決は、近畿財務局が1997年末、同社の抵当証券業の登録を更新する際に「注意義務を尽くさず、漫然と更新を認めた」と過失を認め、被害額の一部、約6億7400万円の賠償を命じた。

 行政の不作為に対する国家賠償は、関西水俣病訴訟や筑豊じん肺訴訟など、生命や健康に直結する訴訟で例外的に認められてきた。しかし、被害者にも自己責任のある経済取引について、国家賠償を命じた判決は初めてだ。裁判所の消費者保護重視の表れだろう。

 この事件は、大和都市管財が償還する意図もなく抵当証券を販売したもので、金の現物まがい商法の豊田商事事件に次ぐ1万7000人の被害者を出した。

 判決は、登録更新に際して、財務局が判断を誤っても「ただちに職務上の注意義務違反に当たるわけではない」としながらも、判断が著しく合理性を欠く場合は国が賠償責任を負うとした。

 そのうえで、「100億円以上の債務超過を抱えた大和都市管財の破たんは容易に予想できた」「詐欺的商法の疑いもあったのに、基本的な検査を怠り、つじつま合わせの事業計画をうのみにしていた」などと厳しく指摘した。

 国の不作為の責任が問われた豊田商事事件の国家賠償訴訟では、大阪高裁が規制の必要性は認めながらも、賠償責任を否定し、最高裁で確定した。

 抵当証券業者の「登録」は、銀行などの「免許」に比べ緩い規制だ。しかし、悪質な業者の監視に明白な手抜かりがあれば、行政責任の生じる場合がある。今回の判決は、それを明確に認めた。

 今年9月には、抵当証券業規制法が廃止され、投資性の強い金融商品の購入者保護を定めた金融商品取引法に統合される。金融庁と財務局は、同法に基づき厳しく業者を監督する必要がある。

 きょう7日には、改正消費者契約法が施行され、消費者団体が業者の不当な勧誘や契約の差し止めを請求できる「消費者団体訴訟制度」が動き出す。消費者保護のための法制度も整ってきた。

 規制緩和によって、事前規制から事後規制への流れが進む中で、後を絶たない悪質商法にどう対処するのか。行政には被害を早急に見つけ出し、拡大を防ぐことが求められている。行政に規制運用の課題を突き付けた判決と言えよう。
(2007年6月7日1時33分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月7日付

 足の親指が小指のほうに曲がる外反母趾(がいはんぼし)は、合わない靴を履いたり、踵(かかと)の高い靴を長く履いたりすると、かかりやすいという。以前、月刊の歌誌「五行歌」で読み、書き留めた歌がある◆「外反母趾の老女の足を/丁寧に洗えば/『ダンスしてたの 若い頃(ころ)』/車椅子(いす)の上から/秘密がポツリ漏らされる」(清水ふみ)。作者は介護の仕事をしておられるのだろう◆気持ちをこめて洗えばこそ、秘密の漏れる扉もひらく。介護とは体のみならず、心をも休みなく働かせる仕事であると、しみじみ思う。経営陣にもその心があったならば、いまの事態は避けられただろう◆ヘルパーを水増しして登録し、介護報酬を不正に得ていた訪問介護事業の大手「コムスン」が厚生労働省から“退場処分”を受けた。2011年末まで、事業所の新規指定も指定更新も認められない◆約2000ある事業所は5年後に5分の1に減る可能性がある。代わりの業者を探しあぐねて途方に暮れる利用者もあろう。介護員も失業の危機に立つ。利益に目がくらんだ会社のなせる業(わざ)である◆人生の小さな秘密を語り、語られる心の交流は、コムスンの介護現場にも幾つとなくあることだろう。物は買い替えができても、心はできない。人と人とを結ぶ仕事であることを忘れた経営陣の罪は浅からぬものがある。
(2007年6月7日1時49分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】公務員改革法案 今国会成立に全力あげよ

 天下り規制の強化策などを柱とする公務員制度改革関連法案が衆院内閣委員会で自民、公明両党などの賛成多数で可決された。きょうにも衆院本会議を通過し、11日には参院送付の見通しである。

 しかし、法案の今国会成立については、依然微妙だという。23日の会期末を控え、参院では十分な審議時間がないことを理由に野党が審議未了による廃案を目指しているほか、公務員の根強い抵抗などを背景に与党の一部にも成立に消極姿勢が見られるためだ。

 天下りによる官の不正行為は、緑資源機構など相次ぐ談合事件でも国民の厳しい指弾を浴びている。安倍晋三首相も、天下り規制の強化は喫緊の課題だとし、法案の成立を最優先課題のひとつに掲げてきた経緯がある。

 首相には、重ねて強い指導力を発揮し、ぜひとも今国会での成立を期してもらいたい。必要ならば、会期の延長も躊躇(ちゅうちょ)すべきではない。なにより現内閣で公務員制度改革に明確な道筋をつける覚悟が必要である。

 法案では、平成20年中に国家公務員の再就職斡旋(あっせん)を一元化する「官民人材交流センター」(新人材バンク)が内閣府に設置され、その後3年以内に省庁ごとの斡旋は全面的に禁止されることになっている。

 現職職員の求職活動はもちろん、OBが出身官庁に契約や処分などで就職先に有利となるよう口利きする行為も禁止される。違反行為には内閣府に新設する「再就職監視委員会」が目を光らせ、違反者には最高3年の懲役刑を含む厳しい処罰が科せられる。

 自民党内には当初、参院に送付して廃案となるより、衆院段階で継続審議の手続きを取るべきだとする意見が根強かった。与党が法案成立を強行すれば、国会の混乱から野党を利する結果となり、参院選にも影響しかねないと恐れてのことのようである。

 しかし、今回の法案は、天下り規制をはじめとする公務員制度の抜本改革に向けた第一歩となるべきものだ。ここに来ての審議未了は、改革に対する国会そのものの意欲後退と国民の目には映らざるをえない。

 廃案は参院選に大きな影響をもたらすというのであれば、それは与党だけでなく、野党にとっても大きな痛手となるのではなかろうか。

(2007/06/07 05:08)

【主張】予算編成 債務圧縮へ財政の規律を

 財政制度等審議会の来年度予算編成に向けた建議(意見書)が、国の債務残高を国内総生産(GDP)比で圧縮する必要性を強く打ち出した。税の自然増収による歳出・歳入一体改革の緩みを戒めると同時に、財政再建本来のあり方を示したものといえる。

 日本の財政は国債残高がGDPを上回り、地方を合わせた債務残高もGDP比148%と先進国で突出して悪化している。高齢化の急進展による歳出圧力を考えると、財政は間違いなく破綻(はたん)に向かうとみてよいだろう。

 昨年の「骨太方針」は2011年度の基礎的財政収支黒字化を目指し、歳出面では相応の削減策を示したが、増税が伴う歳入面は具体論を避けた。債務残高GDP比の引き下げも2010年代半ばからとするにとどまった。

 先に示された今年の骨太方針の素案もその表現の域を出ず、焦点である税制抜本改革の議論も秋以降に先送りしたままだ。それどころか、公共事業の具体的削減幅の見送りや地方対策で参院選を意識して緩みが出ている。

 建議はこうした緩みに警鐘を鳴らし、それを防ぐ手法の一つとして長期財政推計の導入を求めている。これは高齢化など人口動態予測を基に50年以上先まで推計するもので、ほとんどの主要先進国が実施している。

 とりわけ、欧州連合(EU)は長期的財政安定のための収支改善幅と改革先送りコストを推計、英国ではこれに中期目標をからませて強い財政規律を働かせている。日本も早急にこうした手法の導入を検討すべきだろう。

 建議は各歳出分野についても昨年の骨太方針の実行を強く求めているが、注目したいのは地方の税収格差問題だ。格差是正は従来のように地方交付税で国に頼るのではなく、ドイツなどを参考にあくまで自治体間の水平的な財政調整で行うべきだとしている。

 すでに地方の基礎的財政収支は黒字化しているし、東京など大都市に大幅な財政余剰が生じていることを考えれば当然だ。これ以上、国の財政を棄損しては取り返しがつかなくなる。

 たとえ、基礎的財政収支で政府目標が達成されても、高齢化が財政を再悪化させるのは確実だ。近くまとまる骨太方針では、財政規律を回復し債務残高圧縮に筋道をつけてほしい。

(2007/06/07 05:06)

【産経抄】

 江戸時代に「わたり」といえば、仕える武家をあちこち渡り歩く中間 (ちゅうげん)、小者のことをいった。それが今は高額退職金を受け取って、中央官庁から公益法人を次々に渡り歩く元高級官僚を指すそうだ。江戸の小者はわ たりで給金が増えることはないが、渡り鳥官僚は太る一方だ。

 ▼驚いたことに、天下り先の公益法人を「とまり木」というそうだ。とまり木を替えるたびに退職金を受け取るから、生涯賃金はズンズン加算される。とまり木には、移った先で羽を休めるという意味もあるから、江戸のわたりが聞いたらうらやむだろう。

 ▼5000万件の“記録漏れ年金”でバッシングを受ける歴代の元社会保険庁長官もそうだ。当事者の一人、正木馨氏(76)の場合は、全国社会保険協会連合会など5法人を渡り歩いて、約3億円を懐にした。

 ▼政府も黙っていたわけではない。昭和52年に原則として渡り鳥をやめるよう閣議決定し、加えて臨時行政調査会も「役員定数の2割減」を勧告した。支給が少しばかり制限されはしたが、それをかいくぐって渡り鳥天国は微動だにしない。

 ▼ それなら、天下り規制の公務員法改正案を参院でも可決すればよさそうなものだ。だが与党の一部と野党はそう考えない。「審議をつくせ」は法案阻止の決まり 文句である。官僚OBの族議員と組合の利害が奇妙に一致した。そこに、記録漏れが暴露され、たちまち選挙がらみでそれが使われる。

 ▼安倍晋三首相は組織解体が売りの改革案を叫び、一方の野党は政府攻撃のチャンス到来と勢いづいた。社保庁内には、相談窓口の24時間対応を管理職がやれというものがいるらしい。そうでなくて有権者、納税者は「庁をあげてやれ」「天下り規制をしろ」といっている。

(2007/06/07 05:05)


【日経・社説】

社説1 消費者被害防止に団体訴訟の活用を(6/7)

 消費者団体訴訟制度が7日、スタートした。消費者被害の拡大を防ぐため、不当な契約や勧誘をやめるよう業者・企業に求める裁判を「適格消費者団体」が個人に代わって起こせるようになる。

 これに先立ち6日、消費者が受けた財産被害について初めて国の責任を認める判決が出た。大和都市管財グループによる抵当証券販売を通じた詐欺事件の被害者が起こした訴訟で大阪地裁が下した判決は国(近畿財務局)が責任を全うしていれば、被害の相当部分は防げたと判断した。国には「購入者保護の観点」が欠けていたと断じたのである。

 消費者被害は増えている。全国の消費生活センターに寄せられた苦情・相談は2005年度に128万件と10年前の5倍になった。

 新制度の主体となる適格消費者団体は首相が認定する。差し止め請求の対象となるのは元本保証のない金融商品を「確実に値上がりする」として売りつけたりする事例だ。

 これまでは被害者が事後に損害賠償を求めるしかなく、被害が広がりがちだった。業者の違法行為をやめさせるのは本来は行政の役割だが、すべてを監視するのは難しい。

 団体訴訟制度を大和都市管財のケースにあてはめるとどうなるか。抵当証券を販売したときに「国のお墨付きがあり安全・確実」など不当な勧誘をしている事実を適格消費者団体がつかめば、そういう販売方法をやめ、きちんとリスクを説明するように求める裁判を起こせる。しかし販売自体をやめさせる力はない。

 団体訴訟制度の次の段階として消費者関連の他の法律を改正し、違法な商品販売や過大な効用をうたう広告の差し止めなど広く使えるようにすることも必要だ。導入に際して損害賠償請求も認めるべきだとの主張もあったが見送られた。これをどうするかの議論も残っている。

 団体訴訟制度が定着している欧州などに比べ、日本の消費者団体は財政基盤が脆弱(ぜいじゃく)だ。認定を目指す新しい組織は会員を募り、支援者が基金を設立して寄付を呼びかけている。新制度導入で、限られた範囲のものであっても、手にした力を活用できる攻めの団体になれるか。真価が問われる。

 今回の大阪地裁の判決は被害者側にも過失があったとして「高利率の金融商品には高いリスクがつきものと認識すべきだった」旨、述べた。消費者も被害防止のために日ごろから情報を集め、被害にあった場合は適格消費者団体などに届け出て拡大防止に努めることが大切だ。

社説2 「コムスン」機に介護不正なくせ(6/7)

 訪問介護最大手のコムスンが介護事業所の指定を不正な手段で申請したとして、厚生労働省は都道府県に2011年12月まで新規の指定や更新をしないよう通知した。指定打ち切りとなるのは同社の介護事業所の8割に当たる約1600カ所だ。コムスンは不正な指定取得に加え、悪質な処分逃れととられる対応も重ねてきた。今回の処分に対し、親会社がコムスンをグループ会社に事業譲渡すると公表したことも、処分をかわすためとみてよいだろう。

 同社への監査の結果、常勤の管理者がいないのに勤務しているかのようにして虚偽申請するなどの不正が確認されたのは5都県8事業所。いずれも指定取り消し処分の手続き直前に廃業届を出しており、背後で本社が関与していたとみられる。業界トップの企業が組織ぐるみで高齢者を食い物にするような行為に走っていたとすれば、あきれるほかない。

 訪問介護業界では、これも大手のニチイ学館やジャパンケアサービスも、人員基準を満たしていない事業所があったなどとして、東京都から業務改善勧告を受けている。全国の訪問介護事業所は2万6000カ所に上るが、事業所の増設やヘルパー増員など、拡大路線を突っ走る大手企業間の競争激化が、こうした不正を引き起こしたともいえる。

 介護報酬の明らかな不正請求などに加え、一部の業者が間接的に介護保険財政の圧迫に手を貸している面も見逃せない。介護保険の総費用は07年度予算で7 兆4000億円と、制度開始以来7年で倍以上に膨らんだ。とりわけ軽度の要介護認定者が急増しており、政府は介護予防の重視に政策転換したばかりだ。

 軽度の高齢者の間では保険を利用して不要な車いすや介護用ベッドを借り受けるケースも横行している。そうした「無駄遣い」を高齢者に勧めて利益を得ているのが一部の訪問介護事業者との指摘もある。

 今回の処分を機に、まず求められるのは不正の再発防止策を早急に検討することだ。同時に介護保険制度と業者のゆがんだ関係をただすことも、制度を維持、向上するために必要だろう。その際、民間企業の介護事業への参入を阻害しない方向で見直すべきなのは言うまでもない。

【日経・春秋】(6/7)

 短歌は季語がないから、俳句の歳時記のようなものは作りづらい。その難しさをこえて、文芸評論家の樋口覚さんが著した『短歌博物誌』は蟻(あり)から象、鯨まで計およそ百種の鳥獣魚介、虫にまつわる560首をもとに編んだ新書本だ。

▼一例に「鮎(あゆ)」を見ると〈鮎の口焼けのこりつつ金網が赤し休暇は死ののちにこそ〉は前衛派の塚本邦雄だけに難解至極。「鮎を焼いて食べ充足感にひたったあとに反転してやってくる苦い感情」「昭和元禄とも飽食の時代ともなじむことのできない人の強烈なアピールがある」などの解説が鑑賞を手助けする、俳諧歳時記と同じ仕組みだ。

▼「アユ 需要鈍く相場低迷」の記事が昨日の本紙朝刊商品面にあった。食卓に上るアユの大部分を占める養殖ものの生産量は十数年で半減したのに、好んで食べる人が少なくなっていて、卸値は3年前に比べ1割以上も安い。養殖業者の廃業が相次ぐのは、もう何年も前からの現象という。

▼俳句よりずっと古い時代から作例を集められる短歌の“歳時記”は、事物に寄せる日本人の思いの移り変わりを、より長い目でたどるよすがになる。『短歌博物誌』の鮎の項には、鮎釣りの情景を詠んだ『万葉集』の歌と、現代短歌が並んでいる。〈養ひし鮎と思ふな山川をさかのぼり来し魚として食へ 大野誠夫〉


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松沢・神奈川県知事と東国原・宮崎県知事。ふるさと納税の賛否を分けた両者の主張。このテレビニュースを見た国民は、どう感じたのでしょうか。「地方自治体間の格差是正は、本来、地方交付税で調整すべき。地方間に格差があるから地方同志の税で調整せよとはいかがなものか」という松沢・神奈川県知事の主張に対して、地方圏に住む国民は、素直にその主張の正しさを理解しましたね。「"ふるさと"という心をふるわす言葉と"納税"という国民�... [続きを読む]

受信: 2007年6月30日 (土) 18時38分

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