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2007年6月 9日 (土)

6月9日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年6月9日朝刊)

[救急ヘリ]「医療過疎」解消へ一歩

 ヘリコプターによる急患搬送事業が恩納村以北の本島北部地区と北部周辺離島で十六日から始まる。

 北部地区医師会病院が地元消防や県立病院と連携、事故などの現場救急に対応するために「空の救急車」二機を新たに導入する。

 広大な面積に集落が点在する北部地区は、救急車の搬送に一時間以上を要する地域もあるなど、医療の過疎地域だ。北部周辺離島になると事態はさらに厳しい。それがヘリコプターだと飛行時間は近隣地域で約四分、遠隔地域で約十六分という。

 民間病院のヘリ急患移送は二〇〇五年に始まった浦添総合病院に続き県内二例目となり、救急ヘリの果たす医療過疎の解消に期待が膨らむ。

 搬送対象は自動車事故や転落事故、疾病などに伴う重症患者や産科救急など。ヘリの発着地は約四十カ所設置されるというから、北部地区住民にとっては万が一の際の、不安解消の一助になるのは間違いあるまい。

 ただし、対応は操縦士に極端な負担のかからない午前九時から午後五時までの日中に限られ、夜間は通常通り、救急車による対応になるという。事故や病人は昼夜の別なく発生するのを考えるといささかの不安は残るが、陸上自衛隊の救急搬送ヘリが夜間、徳之島で墜落した不幸な事故を想起すると致し方ない。

 同事業では、短時間に移動が可能なヘリの機動力を生かし、地区内離島の巡回診療も実施する。県が検討している国の補助事業「ドクターヘリ事業」の導入研究の一環でもある。

 だが、北部地区では県立安田診療所が休止するなど医師不在の事態は深刻だ。

 地域住民にとっては常駐の医師がいてこその地域医療。「空から来ようが陸から来ようが根本的解決にはならない」という声には同情の余地がある。

 県は、地域住民の医療に対する不安を解消するための抜本的対策を、地域住民との対話を深めながら構築しなければならない。

[米軍燃料流出]「同じ水」を飲みながら

 米空軍嘉手納基地で大量のジェット燃料が流出した問題で、県は同基地内に立ち入り、流出現場の土や水の採取などを求めたが、米軍にあえなく拒否された。

 県は、燃料が流出したタンク周辺の土壌や側溝などの水をサンプリングし、揮発性有機化合物などの有無、量などを調べる予定だった。

 土や水の採取は、住民が不安を抱いている環境汚染を調べる上で、最低限必要だ。

 だが、写真撮影すら拒まれ、目視調査のみに終わっている。これでは、基地外の環境に影響があるのかどうか、結論を出すのは到底困難だ。

 米軍は何のために基地内への立ち入りを許可したのか。地元の調査を「一応、受け入れた」というアリバイづくりと疑われても仕方あるまい。

 またしても、日米地位協定の「壁」が背景に立ちはだかっている。

 同協定三条は、米軍の管理権を認める一方、「立ち入りが軍の運用を妨げることなく行われる限りにおいて、立ち入り申請に対してすべての妥当な考慮を払う」と定めている。

 今回、立ち入りは認められたものの、基地内での実質的な調査は拒否された。基地内調査が「米軍の裁量」に委ねられているからにほかならない。

 同三条は、その三項で「施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行わなければならない」とも定めている。

 だが、「公共の安全」よりも「基地管理権」や「米軍の裁量」が優先されているのが日米同盟、そして沖縄の現実といえよう。

 本土復帰後も過重な基地負担の中で、県民はこの不公平、不平等な地位協定によって苦悩を強いられてきた。

 苦悩解消には、政府も本気で取り組んでこなかったし、今後も取り組む気配さえなく、対米従属の姿勢を見せている。

 嘉手納基地には、周辺を含め計二十三の「嘉手納井戸群」と呼ばれる地下水源がある。県企業局北谷浄水場が一日約二万トンを取水し、地元など七市町村に給水している。

 県内の米軍基地の水道は、そのほとんどが近隣市町村を通じて給水を受けている。広大な嘉手納基地も、主な供給源は北谷浄水場である。

 「同じ水」を飲みながら、なぜ、ジェット燃料の流出事故を県民と米軍が共通の問題として対処できないのか。

 憲法で保障された「平和的生存権」がいかに米軍基地によって脅かされているか、地位協定の理不尽さをあらためて考えざるを得ない。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月9日 朝刊 1面)

 私服の男と警官が二人の娘を引きずるように連行した。両親は立ちすくむだけだった。

 韓国人の口調は穏やかだが、言い知れない悔しさが伝わる。ハワイ東西センターで開かれた日韓米の東アジアジャーナリスト会議に参加した。共通課題を持ち寄る中で歴史問題は避けられない。

 日本側は広島・長崎原爆を肯定する米国の認識を問う。原爆投下を正当化する根拠として米国は日本上陸作戦を遂行した場合の米兵犠牲者数を推定するが、当初二十万人から四十万へ、最終的に百万人に膨れ上がった。

 イラク報道で米テレビ局はニュースキャスターの背景に星条旗を映し出した。「国家主義がメディアを支配した。対処に戸惑う大衆から意味付けを求められた。毎日が葛藤だった」。米記者が悔恨を口にした。

 中国での過激な反日デモに「日本では、いつまで謝ればいいのかと冷淡だった」。北朝鮮の拉致問題に穏健な発言をする解説者は番組に起用しない風潮さえあったと証言した日本記者は「マスメディアに内なる国家主義がある」。

 慰安婦問題で安倍首相の『強制性の根拠はない』の発言は「自分の銃で自身の足を撃った」と米記者が表現。日本に謝罪を求める決議案が米下院で支持を広 め、今月中に審議入りする可能性も。日米関係をギクシャクさせる火種がくすぶる。「政治が再び墓穴を掘った」(米)ということだが、「癒やす努力がない」 (韓)の指摘が胸を突く。(屋良朝博)


【琉球新報・社説】

ホテル雇用調査 待遇改善しプロの養成を(6/9 10:10)

 沖縄観光は好調で入域客数は右肩上がりが続いている。2006年は、目標の565万人は達成できなかったものの、5年連続で過去最多を更新する563万人を記録した。県は1000万人を目標として掲げているが、壁は高い。そのマイナス要因となる1つがNPO法人沖縄観光連盟のホテル従業員雇用実態調査で分かった。ホテルを支える人材の問題である。勤務年数4年以下が半数以上を占め、ホテルサービスのプロが育ちにくい現状が浮き彫りになった。
 調査結果には気になる数字がいくつかある。まず仕事に就いた理由だ。「他に仕事がない」という答えが約6割に上った。やりがいを感じて就いた職業ではないということだ。サービス提供を専門とする業種だけに、その仕事に対して魅力を感じていなければ、宿泊客に対して、もてなしの心は伝わりにくいのではないだろうか。
 もう1つは、月額給与手取り額が11万―14万円という人が5割以上いるということだ。しかもボーナス「無し」という答えは約4割だった。
 その結果、表れているのが、勤務が長続きしないという問題であろう。
 沖縄観光連盟の山入端好盛理事長は、ホテルの正社員は6カ月で10―15%、2―3年で40―70%が退職する、と指摘している。
 これでは、プロのホテル従業員が育つ環境にない。
 沖縄の観光はこれまで、恵まれた自然、PR度の高いイベントなどを誘客材料としてきた。しかし、今後、国内有力観光地、海外リゾート地と対抗し、それらを上回る地位を確立するためには人材が必要である。沖縄を訪れ、まず最初に接するだろうホテル従業員は、何より魅力的でなければならないはずだ。
 名護市のザ・ブセナテラスはJTB協定旅館ホテル連盟の05年度のサービス最優秀ホテルに選ばれた。同調査は宿泊客へのアンケートに基づいて行われるものだから、ブセナテラスの、もてなしの心が宿泊客に届いたといえよう。誇っていい結果だ。
 世界を相手にする観光地を目指すなら、後に続くホテルが数多く現れることが必要だ。
 リピーターを長くつなぎとめ、さらに新規客を生み出すプロのホテル従業員の養成は急務である。自然も、もてなしの心も魅力的であれば、沖縄観光の可能性は広がる。
 現状のような雇用実態が続けば、有数の観光地として安定的な地位を確立するのは難しいのではないか。調査結果は、ホテル業界に課題を提示したといえよう。観光飛躍のために改善努力が求められている。

防災マップ 予期せぬ災害に危機意識を(6/9 10:04)

 梅雨の大雨で浸水、土砂流出があったばかりだが、普通に生活していると天変地異のことなど、われわれの頭から、すっぽり抜け落ちてしまう。しかし、油断は禁物だ。災害は忘れたころにやって来る、という。用心するに越したことはない。家庭、地域、行政それぞれの分野で、いざという場合に備えての対策が必要だ。
 だが、現状をみると、自然災害に対する危機意識はまだまだ低い。行政の場での取り組みも弱く、対策が遅れているのが懸念される。
 例えば、地滑りやがけ崩れなどの土砂災害が発生する恐れのある急傾斜地を抱える33市町村のうち、土砂崩れの危険個所を示した防災マップを作成しているのは19市町村にとどまっている
 昨年6月、県内各地で長雨が続き、地滑りや土砂崩れ、道路崩壊が相次いだ。今も、中城村北上原の住民7世帯19人が仮設住宅での避難生活を余儀なくされている。
 また、那覇市首里鳥堀町では地盤沈下が発生し、マンション駐車場が陥没。建物の柱はゆがんだままで、当時のまま残されている。
 いずれの場合も人身への被害はなかったが、いつもそうとは限らない。たまたま運が良かっただけと考えた方がいい。さらに重要なのは、この経験を今後どう生かすのか。そのことが問われている。
 県が「土砂災害危険個所」として位置付けているのは、33市町村で1032カ所に上る。平均して1つの自治体に31個所もの危険地帯があることになり、これは放ってはおけない数字ではないか。
 さらに、地震の防災マップを作成したのが4市町村だけというのも気になる。専門家も指摘しているが、沖縄は決して地震と無縁の地ではない。住民の立場に立った対策が求められる。
 同時に私たち1人1人も、周辺の危険情報には常に関心を持ってチェック、いざという時に備えたい。地球温暖化の影響で、世界の各地で異変が起こっているだけになおさらだ。備えあれば憂いなし。無駄に見えても、そうした心構えが、いつかはきっと実を結ぶ。

【琉球新報・金口木舌】(6/9 9:55)

 「遠くの親類より近くの他人」という。いざ何かに困ったとき、遠くにいる血のつながった親族より、隣近所の他人が支えになってくれることもある
▼福祉サービスの向上を支援するため八重瀬町社会福祉協議会は町内33行政区を6地域に分けて、それぞれ担当職員を配置する「地区ワーカー制」を始めた(8日付夕刊)。地域に合った福祉計画を作り、きめ細かなサービスが展開できるという
▼昨年、2町村が合併して誕生した八重瀬町。社協も合併し、福祉サービスを受ける対象者が増え、職員の担当地域も広がった。結果、広域化した“新町”でサービスが行き届かないことに社協職員も気付き、今回の取り組みに
▼町域は広がったが、それぞれの地域には昔からの付き合いが深い顔見知りが多く、互いに支え合う「ユイマール」が息づく
▼「他人任せではなく自分の親だったら、という視点も大事」と地区ワーカー制導入で、八重瀬町の関係者は、福祉を自分に引き寄せて考える。地域全体を家族のようにとらえ、いまも根付く“ユイマールの心”で住民主体の質の高い福祉サービスを実現してほしい
▼その“地域福祉の輪”を人間関係が希薄とされる都市にも広げる知恵を絞りたい。


【東京新聞・社説】

“環境”サミット 米国は戻って来るが

2007年6月9日

 主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)は、温室効果ガス削減の次期枠組みづくりにそろって取り組むことで合意した。米欧の決裂は回避されたが、実効確保はこれからが正念場だ。

 焦点の地球温暖化問題で、G8首脳は「真の脅威」である気候変動に「国際社会が温室効果ガス削減に断固たる措置を取ることが必要」として、「すべての主要国による削減の枠組みで、二〇五〇年までに地球規模の温室効果ガスの排出を少なくとも半減させるよう真剣に検討する」ことで合意した。

 京都議定書の約束期間が終わる一三年以降の新たな枠組みづくりについては、〇九年までの国際合意を目指すと期限を切った。

 序盤では、議長国のメルケル独首相が「一九九〇年比で五〇年までに50%以上削減」という従来の主張を堅持し、産業界に配慮して具体的な期限や数値目標の設定をなるべく避けたい米国と激しく対立した。

 しかし、「対立点より共通点を見いだすべきだ」とする日本の橋渡しが奏功し、削減の基準年を定めない、あいまいな日本提案に沿った形で米欧が歩み寄った。

 京都議定書の枠組みを離脱していた最大排出国の米国が、次期枠組みには参加する。米国の参加がなければ、ポスト京都の交渉自体がほとんど意味を失うだけに、日本の仲介努力を評価したい。

 しかし、現時点では、米国の復帰という最低限の舞台装置が整っただけである。「半減を検討」という抽象的な目標を具体化していくための手だてはまだ決まっておらず、首脳合意の実効性を危ぶむ声が早くも上がっている。

 削減の数値目標なしには、欧州が先行し、重視する排出量取引制度も成り立たない。

 年末にはインドネシアのバリで気候変動枠組み条約第十三回締約国会議(COP13)、来年には日本で開かれる洞爺湖サミットのほか、米国や国連が提唱する新しい国際会議も予定されている。日本政府にはこれまで以上に、首脳合意の具体化に向けた米欧の調整役への責任と期待がかかる。

 米国の復帰で、中国の参加にも一筋の光が差した。だが、中国も独自の“削減目標”を発表はしたものの、自国を含む“途上国”に削減義務を課すことには、断固反対する姿勢を崩していない。

 日米欧の枠組みで、削減参加の見返りとしての金融や技術支援のメニューを詰めるなど、中国やそのほかの途上国に同調を促す仕掛けを、早急につくらねばならない。

ネット申告漏れ 税制は簡素な方がよい

2007年6月9日

 ネットを使ったサイドビジネスの税務申告を怠り、当局から指摘を受ける例が増えている。主婦の副業でうっかりした例もありそうだ。ネットに特化した簡素な税制も検討課題ではないか。

 申告の基準は収入の種類や額などで異なるが、確定申告の必要がないサラリーマンでもネット取引の利益が年間二十万円を超えると必要になる。

 名古屋国税局が昨年六月までの三年間に管内の取引例を調べたら計三百七十四件、約三十五億円、平均では一件約千百万円の申告漏れが見つかった。

 人気のネットオークション(競売)だけでも全国で年間一兆円規模のビジネスに拡大。二〇〇九年には二兆円規模に成長するとみられる。申告漏れも今後増えそうだ。

 ネットでは主婦の手作りケーキから乗用車まで盛んに売買が行われている。今や税務当局自身も差し押さえ品をネットで公売する時代だ。東京都を皮切りに、各自治体に広まり、今月から国税庁が全国規模で実施するまでになった。

 申告漏れが出る背景の一つに、ネット取引がサラリーマンや主婦の少額取引から始まった例の多いことが挙げられる。初めは申告も不要だったのが、利益が増えてもうっかりしたり、手続きが面倒で先延ばしにしたりする例が目立つ。

 だが、悪質な例もある。福岡県内の無職男性は、海外の成人用サイトを紹介するホームページを運営し、米国の会社から得た紹介料が二年間で約一億六千万円に上っていたのに申告していなかった。

 申告を意図的に逃れようと正確な運営者名などを隠し、通信用コンピューターを海外に置いて日本から接続させるサイトを開くなど実態がつかみにくいケースも少なくない。

 ネット取引は税務当局からすれば、実態把握が難しく、個人から見れば取引が細かく申告が煩わしいというのが特徴だ。適切な申告と納税を促進するためにネット取引に適した簡素で効率的な税制を検討すべきではないだろうか。

 株取引の場合、顧客の選択で申告から納税まですべてを証券会社が代行する特定口座制度が実施されている。ネット取引でも専門のサイトが参加者の売り上げを集計し、割安な税率を適用して納税を代行するような仕組みが整えられてもよい。

 政府が発表した骨太の方針案でも金融一体課税の検討が盛り込まれている。ネット取引でも、納税者を煩わしい申告手続きから解放する方策を検討してほしい。

【東京新聞・筆洗】2007年6月9日

 五千万件の“消えた年金”問題では、厚生年金や国民年金ばかりで、公務員の共済組合年金が“消えた”という話が伝わってこないのが不思議だったが、何のことはない。そちらは管理が万全だからだ▼民間はといえば、各地の社会保険事務所は問い合わせで長蛇の列。社保庁長官が、都心でおわびと案内のビラ配りパフォーマンスまでする騒ぎなのに▼試しに三十年前に寿退職した元公務員が、昔の職場の共済組合事務局に電話照会すると。一発でつながり、即座に疑問が解けたという。おそらく社保庁の退職者や現役は、自分たちの年金給付には先の心配もなく、問い合わせの必要もないのだろう▼それどころか、年金記録台帳が破棄された一九八五年以降の歴代七長官は、退職後に関連団体への天下り再就職を繰り返す“渡り”で、平均一億三千二百万円の高額報酬や退職金をもらっていた▼今国会で年金問題や農相自殺のどさくさに紛れて衆院を通過したのが、官僚の天下り規制を強化する国家公務員法改正案だ。六日の衆院内閣委で民主党の長妻昭氏が「公務員だけ特別に再就職先をあっせんする仕組みをつくるのは“官尊民卑”だ。ハローワークではだめなのか」と追及した。長妻氏によると、事前説明に訪れた所管の厚労省の役人が「ハローワークでは仕事が見つからないんですよ」と言ったとか▼年金は消える、定年後の再就職先もままならぬ民間はどうすればいいのか。先の年金一元化論議に、官僚が反対したのは、完璧(かんぺき)給付の共済年金の既得権益が脅かされるからだったか。


【河北新報・社説】

サミット閉幕/温暖化対策は前進するのか

 ドイツのハイリゲンダムで開かれた主要国首脳会議(サミット)が8日閉幕した。
 最大のテーマだった京都議定書後の温暖化対策では、温室効果ガスの削減目標設定を主張する欧州連合(EU)と、数値目標の明記に反対する米国との間で妥協が図られ、あいまいな表現での合意となった。来年夏の北海道洞爺湖サミットに決着を先送りした形だ。

 焦点の数値目標について、2050年までの半減を「真剣に検討する」として盛り込んだことは評価できるだろう。
 だが、これで温暖化対策が前進するかとなると、大きな疑問符が付く。
 世界全体の排出量の20%を超す米国のブッシュ政権は、数値目標に依然反対している。新たな枠組みに前向きの姿勢を示したといっても、京都議定書から離脱していることを考えれば、元に戻ることでしかない。

 排出量が米国を抜くのは時間の問題とされる中国、国別排出量で第5位のインドも、途上国の削減義務化に反対の姿勢を変えていない。
 安倍晋三首相が「日本の主張が認められた」と胸を張るような状況とはとても言えない。

 温暖化の見通しについては厳しい報告が相次いでいる。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、今世紀末には地球の平均気温が1990年比で最大6.4度上昇する可能性があると予測する。
 温暖化による大きな被害を防ぐためには、排出量を半減する必要があると、多くの専門家が一致して指摘している。

 厳しい数値目標を盛り込んだ強固な国際枠組みができなければ、世界の排出量削減が進まないことは明らかだ。
 サミットに期待されたのは温暖化対策で強力なメッセージを発することだった。それができないようでは、温暖化の進行を防ぐことは到底できまい。

 ただ、米国や中国の姿勢にも変化が生じている。温暖化対策に背を向けていては、政権を安定させることが困難になっていると言えるだろう。国際世論の圧力をさらに高め、米中両国を数値目標の枠組みに引き込まなければならない。
 来年のサミットで議長国を務める日本の責任は一段と重くなった。世界の議論をリードするためには、足元の日本の削減目標達成にめどを付けることが絶対に必要だ。

 議定書で義務付けられた90年比で6%の削減目標に対し、05年度の実績は7.8%増だ。政府は、企業による排出量取引制度や環境税導入などに慎重な姿勢だが、思い切った政策転換が求められる。
 サミットではこのほか、北朝鮮の核・拉致問題やイランの核問題などで結束をうたったが、具体的な成果は乏しい。

 サミットの出席者は今回、日本とフランスが新しくなり、来年は英国とロシアも変わる。中国など新興国の影響力拡大で地盤沈下も指摘されるサミットだが、存在意義を示せるかどうかは、今後の温暖化対策にかかっているとも言えるだろう。
2007年06月09日土曜日

【河北新報・河北春秋】

 強烈な雷が発生しているのは奥羽山脈を越えた仙台市でもはっきり分かった。西の空が一瞬、異様なほど明るくなり、しばらくして雷鳴が響いた▼遠くだとい うのは明らかだったが、すさまじい光と音だった。7日午前零時すぎ。そのころ山形市は激しい雷に見舞われている。落雷によるとみられる火災で、家族3人が 亡くなる痛ましい事故が起きた

 ▼ 雷は夏だけの自然現象だと思われがちだが、日本海沿いでは冬にも起きる。冬の方がむしろ規模は大きい。雷に詳しい東北学院大工学部の後藤幸弘・特別教授は 「今回のは冬に多いタイプ」と言う▼大陸からの寒気団と南からの暖かい風が上空でぶつかり、広い範囲で雷雲を発生させた。送電ラインを守るために東北電力 は落雷を即座に検知するシステムを持っているが、そのデータには驚かされる

 ▼6日の1日間だけで、東北から北関東にかけて2万から3万 もの落雷があった。場所は日本海が多いものの、うち約1万は陸地。ほとんどは人里離れた山間部に落ちたのだろうが、たった1日でこれほどの数が落ちるとい うのは恐ろしい▼雷はめったに落ちないのでなく、いつどこに落ちても不思議はないと思うのが正しいようだ。建物の中はもちろん外にいるより安全だが、それ でも万全とまでは言い切れない。

2007年06月09日土曜日


【京都新聞・社説】

政治資金規正法  成立は全政党の責務だ

 最終盤の国会は年金記録漏れ問題で与野党の攻防が激しさを増しているが、忘れてはならないのが「政治とカネ」の問題である。
 松岡利勝前農相の自殺に発展した事務所費問題の透明化を図る政治資金規正法改正案の成立は全政党が負う責務であり、より実効性の高いものにすべきだ。
 改正案の審議がようやく衆院委員会で始まったが、政治資金問題に対する世論は極めて厳しいものがある。
 年金問題もあって共同通信社による世論調査で安倍内閣の支持率は35・8%と発足以来最低に落ち込んだ。
 松岡氏を擁護してきた安倍晋三首相の任命責任や「政治とカネ」に対する取り組みについて約七割が「責任を果たしていない」「評価できない」と批判した。自民党など与党支持者の中でも高い比率をみせ、すべての有権者が政治不信を募らせていることを示す。
 事務所費問題は佐田玄一郎前行革担当相が政治資金収支報告書に架空の事務所費を計上していたことが発覚、辞任したのがきっかけだった。松岡氏ら閣僚の疑惑に加え角田義一前参院副議長の記載漏れ、小沢一郎代表の不動産取得など民主党にも波及、与野党を問わず事務所費の処理厳正化が課題となった。
 事務所費や光熱水費など経常経費は収支報告書に総額を記載するだけで領収書の添付や明細の記載義務がないことが背景にある。政治活動費は五万円以上の場合、明細と領収書が必要だ。
 松岡氏らは光熱水費が無料の議員会館においた事務所の経費を巨額に計上、政治活動費のごまかしや裏金づくりに悪用しているとの疑惑を招いた。
 改正案は経常経費にも領収書を義務づけることが主眼で当然の措置だ。自民党は当初反対してきたが、資金管理団体の五万円以上の支出を対象とし、さらに不動産の取得・保有を禁止、現況の報告義務を加えた与党改正案をまとめた。民主党をけん制するねらいもある。
 これに対して民主党はすべての政治団体を対象に一万円超の支出に領収書を義務づける対案を提出、さらに不動産と有価証券の取得・保有を禁止する修正案をまとめた。与党案より厳しい。
 かねて資金管理団体から政治団体に資金を移動したり、政治活動費を五万円以下に細分化して政治資金の中身を分からなくする手法が横行、規正法はザル法との指摘が再三されてきた。
 政治倫理は政治家一人一人が律するべきものだが、政治資金をめぐる不祥事が後を絶たない限り法規制の強化は不可欠だ。今回の改正案でも十分とはいえないが、一歩前進とはなる。
 この際、二度と悲劇を繰り返さず国民の不信を招かないためによりきめ細かい網をかぶせるのは当然だろう。与党は収支報告書の厳格な適用を図る方向で野党とも協議し成立を急ぐべきだ。

[京都新聞 2007年06月09日掲載]

温室ガス合意  形だけに終わらせるな

 主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)は、地球温暖化防止に新たな国際的枠組みを構築することや、北朝鮮への核放棄要求などを明記した議長総括をまとめ、閉幕した。
 会議の成否がかかった温室効果ガス対策では、八カ国(G8)の合意が成立。二〇五〇年までに、排出量を少なくとも半減させるとの日本、欧州連合(EU)、カナダの決定を「真剣に検討する」ことで一致した。
 京都議定書に定めがない二〇一三年以降の対策として、中国やインドなど主要排出国が参加する新たな国際協力の枠組みを目指すことも決まった。二年後の、国連気候変動枠組条約締約国会議で基本合意する方針だ。
 G8の「半減検討」には、各国ごとの数値目標は入っていない。半減の基準年をいつにするかも不明確だ。とはいえ、国連の枠内で行う温暖化防止協議に、京都議定書から離脱した米国が帰ってくる意義は大きい。
 新たな枠組みに米国を組み込み、二度と離さない工夫が必要になろう。合意に一定の拘束力を持たせることが重要だ。半減を単なる努力目標とせず、産業と家庭の両分野で各国が取り組む具体的削減策を申し合わせておきたい。
 前向きな姿勢に転じた米国だが、国内企業の根強い反対があるだけに、削減目標設定に消極的な姿勢は、今後も大きくは変わるまい。今回は、目標設定にこだわる議長国ドイツとの間で合意直前まで激しい応酬があった。
 来年の北海道洞爺湖サミットでも、米欧の対立は続くに違いない。ホスト国の日本は難しい調整を迫られよう。米欧を結びつける努力が欠かせない。
 メルケル首相の議長総括には地球温暖化対策以外に、北朝鮮の核放棄とイランのウラン濃縮停止、イラク安定化、アフガニスタン復興支援、貿易自由化促進などが入った。
 北朝鮮による拉致問題は、五年連続で議長総括に入ったものの、懸念と解決の必要性にふれただけで、踏み込んだ内容にはならなかった。
 日本だけが突出せず、拉致問題を各国共通の重要課題とするには何が必要か、再検討しなければなるまい。
 首脳同士の協議を通じ、現行サミットの限界も垣間見えた。貿易不均衡問題では、世界最大の貿易黒字国、中国を抜きにしては語れないことがあらためてわかった。
 温室効果ガスの問題を協議するうえでも、二カ国合わせて世界の排出量の22%を排出する中国とインドを外しては、新たな枠組みも効果を持たない。
 ブラジル、メキシコなども含め今後、新興国の枠組み参加を促すには、G8メンバー並みの扱いを考えなければなるまい。サミットの性格を基本から考え直す時に来ているといえよう。

[京都新聞 2007年06月09日掲載]

【京都新聞・凡語】

社会保険庁の怠慢

 堪忍袋の緒が切れそうだ。社会保険庁職員の怠慢はもう許せない。年金保険料の不正使用に年金記録ののぞき見。そして、今回の不明年金と支給漏れだ▼職員だけではない。歴代の社保庁長官は、天下り先を華麗にわたり歩き高額な給料と退職金を手に入れ、在任中のことなどどこ吹く風だ。長官の「上司」として責任を感じて名乗り出る厚生労働相の姿もなし▼政府は不明年金の照合を一年で終了するというが、その費用は国庫財源から出すという。社保庁が引き起こした問題に、血税を使うとはもってのほか。歴代の厚労相や社保庁長官、職員らが自ら弁済すべし▼厚労省に提案がある。「同居」しているビルから社保庁を引っ越しさせることだ。甘えやなれ合いは互いにプラスとはならない。「ひさしを貸して母屋を取られる」事態にもなりかねない。かわいいわが子と思うのなら、他人と生活させ反省を促すべきであろう▼社保庁の引っ越し先に、陸上自衛隊情報保全隊の建物はどうだろうか。陸自の「市民活動監視」には批判の声がある。だが、腐敗しきった、ぬるま湯体質の社保庁組織のお目付け役を任すのもひとつの手である▼陸自を「反面教師」に、個人情報がいかに大切であるか、身をもって学ぶこともできる。緊張を保ち、法令順守を互いに切磋啄磨(せっさたくま)させたらいかが。柳沢伯夫厚労相殿、答弁願いたい。

[京都新聞 2007年06月09日掲載]


【朝日・社説】2007年06月09日(土曜日)付

G8環境合意―「京都後」へ土台ができた

 世界の政治が、地球の安全保障に一歩踏み出した。

 独ハイリゲンダムのG8サミットで最大のテーマは、通貨でも紛争でもなかった。温暖化という人類共通の脅威にどう立ち向かうかが、一番の関心事だった。

 主要国の首脳が、これまでとは質の異なる安全保障の重要性を認め、緊急に協調行動をとることで一致した。今後の地球規模の取り組みの土台となる合意であり、高く評価したい。

 温室効果ガスの削減を先進国に義務づける京都議定書は、第1期が来年始まり、12年に終わる。13年以降をにらんで二つの方向性が合意された。

 一つは「地球規模の排出を50年までに半減」という長期目標を真剣に検討するとしたことだ。これは「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の専門家らが、被害を地球全域に広げないために必要だとした削減率に重なる。

 京都議定書から離脱して今回も数値目標に消極的だった米国を引き戻し、とりあえず合意に書き込んだ意味は大きい。

 この目標値は、サミット前に安倍首相が提唱した数字だ。米欧間の主張に隔たりが大きかっただけに、着地点を先取りした形の日本案は全体の流れをつくることに貢献したといえるだろう。

 もう一つの方向性は、国連の役割を強調したことだ。

 京都議定書を生み出した気候変動枠組み条約は、92年に国連総会で採択された。IPCCも国連のもとにある。先進国が義務を負ってでも化石燃料依存型の社会から脱しようという取り組みは、「国連の枠」の中で進められてきた。

 一方、ブッシュ米大統領はサミット直前になって、米国主導で主要排出国の会議を開く構想を打ち出した。これまでとは違う土俵をつくる思惑も感じられたが、宣言では将来の交渉の場として国連の枠組みを明確に位置づけた。

 米国でも、議会や州レベルには温暖化対策に前向きな動きが目立つ。「ブッシュ後」を見通せば、今回、米国を国連の枠につなぎとめた意義は小さくない。

 日本にとっては、来年の洞爺湖サミットで「ポスト京都」の枠組みをより具体的に描かねばならなくなった。

 そのためには、中国やインドなどにも排出抑制の責任を果たしてもらう仕組みが欠かせない。米国を引き入れたことで、中印にも歩み寄りの可能性が出てきた。二酸化炭素の排出量トップの米国と2位の中国には、互いに牽制(けんせい)しあう姿勢がみてとれるからだ。

 途上国は、これから始まる工業化を省エネルギー型で進めれば、排出量を大幅に抑制することも可能だ。そのための資金や技術で支援する仕組みを先進国の間でまとめ、提示することが話し合いを進展させるカギとなるだろう。

 クールな地球をめざして、ホットな1年が始まった。日本の環境外交の真価が問われることになる。

学校の耐震化―急がねば子どもが危ない

 あっ、地震だ。大きな揺れがいったんおさまったので、近くの小学校に避難しようとしたら、体育館がつぶれ、教室でも子どもたちが下敷きになっていた。

 こんな悪夢のようなことが、現実になるかもしれない。そう思わせる調査結果が、文部科学省から公表された。

 全国の公立小中学校にある約13万棟の校舎や体育館のうち、大規模な地震で倒れたり崩れたりする危険性の高いものが約4300棟にのぼる。いずれも古い耐震基準で建てられたもので、改築や補強をしていなかった。

 これは本格的な耐震診断で明らかになった。古い耐震基準の建物のうち、本格的な診断はまだ半分ぐらいしか進んでいない。危険な建物はさらに増えるだろう。本格的な診断に先立つ簡単な診断さえしていない建物も残っている。

 耐震偽装事件で、建て替えのために取り壊されたマンションを思い出す。それと同じぐらいもろい建物がある可能性が十分ある。そんな危ない建物の中で、子どもたちが日々過ごしているのだ。

 これは極めて深刻なことである。補強するなどして耐震化を急がなければならない。まだ終わっていない耐震診断を早めることは言うまでもない。

 全国津々浦々にある小中学校は、いざという時に地域の人たちが逃げ込む防災拠点でもある。地震に強いことが当然なのに、真っ先につぶれてしまうのでは、話にならない。

 耐震化が進まないのはなぜか。

 本格的な耐震診断は、1棟当たり数百万円かかる。補修するとなれば相当の負担となる。このため、簡単な耐震診断の予定さえない市町村が、財政再建中の夕張市など46ある。

 しかし、ことは命にかかわる問題だ。市町村は財源を重点的に振り向けなければならない。財政難の市町村には、都道府県や政府も支援を考えるべきだ。

 もう一つ、見逃せないことがある。診断結果を公表している自治体はわずか2割にすぎない。

 子どもが通っている学校は大丈夫なのか。学校は地震の時に頼れるのか。それは、保護者や住民にとって欠かせない情報だ。危機意識を共有するためにも、公表した方がいい。

 岩手県では、市がある中学の体育館の耐震性が極めて低いことを公表、学校が使用禁止にした。体育の授業などに不便だろうが、素早い判断を評価したい。

 阪神大震災で被災した学校のうち約700の建物について、日本建築学会が調べたところ、15棟が倒壊していた。地震が早朝でなく、子どもたちが学校にいる時間だったらと思うと、ぞっとする。

 阪神の後、新潟県中越、福岡沖、能登半島などと、各地で大きな地震が相次いでいる。東海、東南海、南海地震は、いつ来てもおかしくない。

 地震に襲われた後で悔やまないよう、いま手を打ってもらいたい。

【朝日・天声人語】2007年06月09日(土曜日)付

 平仮名のことを「女手」とも呼ぶ。そのせいでもないだろうが、平仮名でつづる言葉は角がとれて感じられる。先月の朝日歌壇に、こんな作品が載った。

 〈ひらがなで なやみぜーんぶ かきだして みればたいした ことはなかった〉。作者の有田里絵さん(30)は去年の朝日歌壇賞を受けた。いま子育て中だ。日々、色々な気疲れがある。それを書き出すことで気持ちを整理するという。少々深刻なことは平仮名で書いてみる。心の角がとれて、軽くなってくる。

 心の荷を下ろせずに自殺した人が、警察庁のまとめで昨年、9年続けて3万人を超えた。なかでも学生・生徒は、統計を始めた78年以降で最も多い。遺書の多くは学校での問題に悩み、格闘した心の様をとどめていた。

 東京のある私大で新入生に聞いたら、半数が「自分は傷つきやすい」と答えたという。柔らかい心はすぐ傷つく。若者の特権だろうが、克服する力が弱いらしい。小さなつまずきが絶望に結びつきかねない。

 有田さんは中学生時代、誰彼なく順ぐりに標的にするいじめに遭った。死を思った日もあるが、悩みをノートに書くと、不思議に気分は落ち着いた。

 初子を産んだ一昨年からは、小さな命をいとおしむ歌が増えた。〈ふええんと一声泣いてまた眠る夢の中まで行けなくてごめん〉。赤ちゃんへのメッセージを込めた歌もある。〈人生を始めたいから生まれ出るI was bornとは言いながら〉。悩まぬ人生はないけれど、重いものもなるべく軽く。平仮名でつづる人生もいい。


【毎日・社説】

社説:温暖化対策 G8合意を足がかりに前進を

 「妥協」の産物とはいえ、一歩前進ではある。ドイツのハイリゲンダムで開催した主要国首脳会議(サミット)で、主要8カ国(G8)が温暖化対策で合意した。

 先進国に温室効果ガスの削減を義務付けた京都議定書は12年で失効する。その先の「ポスト京都」をにらみ、宣言には「2050年までに温室効果ガスの排出量を少なくとも半減させることを真剣に検討する」との合意が盛り込まれた。主要排出国を含めたポスト京都の枠組みについて、09年までの合意を目指すことも確認された。

 京都議定書が抱える問題は、世界一の排出国である米国が議定書から離脱していることだ。近い将来に米国を抜いて最大の排出国となる中国や、世界第5位の排出国であるインドなども、「途上国」との位置づけで削減義務を負っていない。これでは、地球規模の削減はおぼつかない。

 今回、米国を含めた合意ができたことで、ポスト京都への足がかりがなんとかできたことになる。ポスト京都の合意作りが、米国を含め国連の気候変動会議の枠組みで進められることも示された。

 米国が参加しなければ、中国やインドなどの参加も望めない。G8の合意を基に、主要排出国のポスト京都への実質的な参加を説得していかなくてはならない。

 ただ、この合意が、あくまで漠然とした長期目標の大枠を示しているにすぎないことも確かだ。具体的な削減目標も、削減を実行する道筋も、不透明なままだ。

 今回のサミットに際し、欧州連合(EU)は、「50年までに90年に比べて世界の温室効果ガスを半減させる」「今後の温度上昇を2度以内に抑える」という明確な数値目標を盛り込むことをめざしていた。

 その背景には、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が今春に公表した報告書がある。報告によると地球の平均気温が90年に比べて2~3度上昇すると地球全体に深刻な悪影響が及ぶ。気温上昇を2度程度に抑えるには、50年までに排出量を約50%削減しなければならない。

 しかし、米国はこうした数値目標を拒否しており、合意にはあいまいな要素が残っている。

 今後の課題は、G8合意を基に、実効性のある削減への具体的な道筋をつけることだ。

 ポスト京都では、京都議定書のように国別に削減義務を課すのかどうか。排出権取引をどう位置づけるか。先進国と途上国の削減責任を、どのようなバランスで考えるか。

 この秋には米国が提案する主要排出国の会合が予定されている。12月にはインドネシアで国連の気候変動会議が開かれる。来年、日本で開かれるサミットでも温暖化が主要テーマとなる。

 難しい国際交渉が予想されるが、ポスト京都の合意作りには限られた時間しか残されていない。それぞれの会議でサミットの合意を一歩ずつ先に進めるために、日本も覚悟を新たにすべきだ。

毎日新聞 2007年6月9日 東京朝刊

社説:コムスン 介護の使命をはき違えるな

 訪問介護最大手「コムスン」の親会社「グッドウィル・グループ」の折口雅博会長が記者会見し、事業譲渡を当面凍結するが、介護事業については続ける意向を明らかにした。コムスン社長は不正行為の責任をとって辞任表明した。

 企業風土をそのままにしてのグループ内別企業への事業譲渡は単なる社名変更にすぎない。「処分のがれ」「脱法行為」の批判が高まる中で、責任を系列会社の社長にだけ取らせ、自らの責任の所在に触れなかったのはトカゲのしっぽ切りに等しい。

 折口氏は事業譲渡問題で、厚生労働省の凍結要求をひとまず受け入れるが、今後の譲渡「断念」は明言しなかった。反省よりお年寄りの救済を盾にして企業存続を優先させる姿勢がのぞく。介護の使命をはき違えていないか。

 同グループは、厚労省の処分を受けてコムスンの全事業を同一グループの「日本シルバーサービス」に譲渡する奇策に出た。シルバーサービス社は先月末までコムスンの子会社で、役員までダブっていた。ところが突然、コムスンの役員を退任させたうえ、系列関係も切り離した。厚労省の処分を予想し、事業譲渡の準備をしていた疑いすらある。

 介護保険法は「性善説」に立つ。コムスンの役員と別人であれば、シルバーサービス社の指定申請は違法とはならない。しかし、譲渡されれば同一グループ内の事業たらい回しであり、企業体質は何も変わったわけでない。中身も経営陣も同じ会社が、引き続き介護サービス事業を行うのは法的にはともかく、社会的、倫理的に大いに問題がある。

 現行制度では、行政処分は事業所ごとに都道府県知事が行い、経営母体に対する国の処分権限はない。想定外の事態が起こったのだから、全国展開している介護事業者に国の権限が直接及ぶよう法改正も必要になってこよう。

 肝心なのは、コムスンのサービスを利用している高齢者への対応だ。不安を与えることがあってはならない。仮に今後サービスが他の事業所に移行するにしても、スムーズな引き継ぎが欠かせない。

 コムスンは指定打ち切りが始まるまでの間、利用者に適切なサービスを続ける法的義務がある。その後事業所の廃止届を出す際も、利用者の受け皿を確保し、要介護者の状態や介護プランを次の事業所に伝えなければならない。

 介護事業所の配置は地域によってばらつきがある。コムスンが「解体」されると、サービスをまったく利用できない高齢者が出たり、夜間介護が不十分になる地域も出てきそうだ。要介護者は、気心の知れたこれまでのヘルパーに続けてもらいたいとの希望も強い。官と民が協力し、お年寄りが困ることのないよう万全の態勢で臨む必要がある。

 グッドウィル・グループの社訓の最後は「正しくないことをするな、常に正しい方を選べ」という。折口氏はもう一度この言葉をかみしめるべきだ。

毎日新聞 2007年6月9日 東京朝刊

【毎日・余禄】

“功利派”から“正義派”にあっさりと
余録:刑法の条文は「勧告」にすぎないという考え方がある…

 刑法の条文は「勧告」にすぎないという考え方がある。「○○をした者は、××の刑に処する」は、「××がいやなら、○○はしない方が得だよ」と読める。この手の考え方を功利主義の法思想というそうだ(長尾龍一著「法哲学入門」講談社学術文庫)▲そのような法思想は、タクシー運転手に「つかまったらオレが罰金を払うから飛ばせ」と求める客の考え方につながる。この客にとっては罰金は単なるスピード超過料にすぎず、スピードの出し過ぎが他人の生命財産に及ぼす危険など眼中にない▲人によっては実にけしからぬ行為を呼び起こす法思想だが、ただ道徳と法を峻別(しゅんべつ)する考え方が近代国家の信教や良心の自由などを生んだという一面もある。現実の法律的判断は、その正反対の「法は正義だ」という考え方との綱引きの中で行われる▲不正発覚のたびにその事業所を廃止して処分逃れをしていた介護サービスの経営者が、例のタクシー乗客と同じ法思想だったことは間違いない。その会社が事業継続困難な処分を受けると、全事業を同じグループ内企業に譲渡するという。むろん皮肉だが、法思想は終始一貫している▲これに対し、事実上処分逃れになるこの事業譲渡を一時は「法的に問題ない」としていた厚生労働省である。それが一転して「凍結すべきだ」と会社側に指導した。こちらは世論の風当たりを察知して“功利派”から “正義派”にあっさり乗り換えた▲当の企業グループ総帥はようやく姿を現し、事業譲渡の当面凍結を明らかにしたが、その法思想は変わったのだろうか。すべてはこの手の事業者出現の想定を怠った介護保険制度の楽天的な法思想のせいだから、介護現場の混乱には国と自治体が責任をもって対処することだ。

毎日新聞 2007年6月9日 0時24分


【読売・社説】

温暖化対策 G8合意をどう具体化するか(6月9日付・読売社説)

 世界が一体となった地球温暖化対策の実現に向け、何とかスタートラインに立った。

 ドイツで開かれた主要国首脳会議(G8=ハイリゲンダム・サミット)で、各国首脳は、最大の焦点だった温暖化対策の基本目標について合意した。二酸化炭素(CO2)など、温室効果ガスの排出量を、「2050年までに全世界で半減させることを真剣に検討する」と宣言している。

 08年~12年を対象とする京都議定書が温暖化抑止に不十分なのは明らかだ。世界最大の排出国の米国が、議定書を離脱したことが響いている。その米国が、同じテーブルで「ポスト京都」を検討することに合意した意義は大きい。

 すべての主要排出国が、09年までに排出量削減の新たな枠組みを作る。大量排出国ながら、開発途上国ということで削減義務を負っていない中国、インドにも参加を促す。

 ただ、いつの時点を基準に、排出量を「2050年までに半減」させるかは、明示されなかった。

 欧州連合(EU)は、1990年比での半減を主張していた。世界全体で現在よりも排出量が少なかった90年を基準にすると、目標達成のためのハードルは高くなる。

 一方、米国は、サミットでの数値目標の設定を拒否していた。

 日本は、中間的な立場だった。「現状よりも半減」という提案は、サミット直前に行われた安倍首相とEU首脳の協議で好意的に受け止められた。

 サミットでは、日本案を軸に議論が進んだ。安倍外交の一つの成果だろう。

 主張の異なる部分には深入りせず、協調できることだけを合意したのが、今回のサミットといえる。米国や中国を引き込むため、基準年を明示しない曖昧(あいまい)な内容にしたのも、やむを得まい。

 「ポスト京都」の枠組み作りは、12月にインドネシア・バリ島で開かれる国連の気候変動枠組み条約締約国会議などで議論される。

 温暖化対策には、主要排出国が、それぞれに独自の施策を進めるのではなく、各国の連携が欠かせない。その意味で、国連の枠内で協議することが、最も適切だとの認識で各国首脳が合意したことも、大きな意義を持つはずだ。

 京都議定書のような国別の削減目標を設けるのか。中国、インドの扱いをどうするのか。難問は多いが、実効性のある枠組みにしなければならない。

 来年の北海道・洞爺湖サミットでも温暖化問題が主要議題になるのは確実だ。議長国の日本は重い責任を担った。
(2007年6月9日1時22分  読売新聞)

サミット閉幕 「洞爺湖」へ首相が負った重い課題(6月9日付・読売社説)

 地球温暖化対策が長期にわたる課題なら、北朝鮮やイランの核開発は、直ちに対処しなければならない問題だ。

 サミットは、議長総括を発表して閉幕した。

 安倍首相は、「北朝鮮の核開発は容認できない」とし、北朝鮮に対してG8としての明確な意思を示すべきだと強調した。拉致問題についても、「国際的な広がりのある人道問題」として、連携の必要性を訴えた。

 G8は、北朝鮮の核放棄に向け6か国協議で合意した「初期段階の措置」の速やかな実施と、拉致問題の早急な解決を北朝鮮に迫ることで一致した。

 これは、北朝鮮への強いメッセージだ。国際社会の圧力を6か国協議の場に確実につなげていかねばなるまい。

 巨額の資金を投機的に動かすヘッジファンド問題では、「警戒の必要性」を示すにとどまった。ヘッジファンドが世界市場を混乱させないよう、G8として監視を続けていくことが肝要だ。

 すでに33回を数えたサミットは、新たな局面を迎えている。

 近く退任する予定のブレア英首相や、来春任期切れを迎えるプーチン露大統領は、今回限りで退場する。安倍首相やサルコジ仏大統領は初登場だった。G8の各国指導者は交代期にある。

 焦点になった地球温暖化をはじめ、テロ、核不拡散、ヘッジファンドなど、世界が直面する課題は、G8の枠組みだけでは対処できない。

 中国、インド、ブラジルなど新興5か国との間で、開発とエネルギーなどをテーマとする、定期的な経済対話の開始で合意したのも、G8の枠組みでは、世界経済の政策協調に限界があると判断したからだろう。

 サミットの運営も、国際社会の新たな動向に即した変革が必要になる。

 一方で、サミット参加国間の結束の乱れも表面化してきた。ロシアは、ミサイル防衛(MD)システムの東欧配備で、アメリカと対立している。エネルギー政策、「民主化」の後退などをめぐり、欧州とも摩擦が絶えない。

 ロシアはG8のメンバー国としてふさわしいのか、という議論は今後もくすぶり続けるだろう。

 温室効果ガスと気候変動の問題は、国際政治上、一層重要なテーマになる。

 安倍首相は8月に予定されるインド訪問でもインドの協調を促す必要がある。中国などの大排出国の「枠組み」への参加や、欧州連合(EU)が求める数値目標の調整についても、首相は、積極的な役割を果たさなければならない。
(2007年6月9日1時22分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月9日付

 灸(きゅう)が熱いのをがまんして、江戸っ子が強がりを言う。「俺(おれ)なんざな、背中でもって堅炭(かたずみ)を熾(おこ)して、なんか煮られたって驚かねえんだよ」。落語「強情灸」である◆威勢のいい啖呵(たんか)に理屈をこねるのは無粋ながら、もしも本当に背中で煮炊きして、熱いとも、痛いとも感じない体をしていたら一大事だろう。火傷(やけど)や切り傷に気づくのが遅れ、ときに命にもかかわる◆皮膚でも頭でも歯でも、痛みほど厄介なものはないが、身体の危機を脳に伝えてくれる「信号」である。不始末を起こした企業が記者会見で厳しい質問を受け、経営者が感じる痛みにもあてはまろう◆「世間の批判なんざ驚かねえんだよ」という心であったかどうかは知らない。介護報酬の不正請求が発覚して半年、介護大手の「コムスン」とその親会社による釈明や謝罪の記者会見は一度も開かれなかった。きのうが初めてである◆処分逃れの工作と批判を浴びた介護事業のグループ内譲渡は凍結し、コムスンの社長は引責辞任するという。痛いのは嫌だと「信号」のスイッチを切りつづけ、一大事に気づくのが遅れた印象は否めない◆会社の信用が負った火ぶくれは重傷である。留任する親会社の会長は「私が続けないとグループとして社会的使命を果たせない」と述べた。社会的使命という言葉を太字で記憶しておく。
(2007年6月9日1時54分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】消費者団体訴訟 事後監視の強化に活用を

 消費者団体訴訟制度が始まった。不当な契約・勧誘で被害を受けた個人が、政府が認定した適格消費者団体を通じて、企業や業者にそうした販売方法の差し止め請求訴訟を起こせるというものだ。

 「確実に値上がりする」といって元本保証のない金融商品を売りつけるなど不当勧誘・契約は後を絶たない。

 悪徳商法では、被害を受けてはじめて契約取り消しや救済を求めることができる。新たな被害者を生まぬようにするには、行政やメディアなどの注意喚起か、司直の強制捜査を待つしかない。それだけに、被害の拡大防止をめざした制度新設の意味は大きい。

 しかも、同制度は、規制改革がはらむ問題への有効な対処法でもある。

 規制改革は「事前審査型」から「事後チェック型」への転換だ。これまでは行政機関が新商品や新規参入企業などを事前審査し、「お墨付き」を与えていた。だが、こうした許認可行政は行き詰まり、経済の停滞を招いた。そこで規制緩和・撤廃で新商品開発や新規参入を促そうとした。

 ところが、規制改革が進むと、事後チェックの甘さが顕在化してきた。

 折しも、抵当証券販売を通じて個人から資金を集め、平成13年に破綻(はたん)した「大和都市管財」グループの詐欺事件で、大阪地裁が国の責任を一部認める判決を下した。大蔵省(現財務省)近畿財務局が同社の破綻の危機を見過ごし、9年に漫然と抵当証券業の登録更新を認めたのは違法とした。

 抵当証券業は免許制でなく登録制だ。甘い事後チェックが被害を広げたという裁判所の判断は重い。

 規制改革は進めねばならない。消費者の自己責任が問われる機会が増える中、規制改革と消費者保護の両立のカギは、厳格な事後チェックである。

 行政の怠慢は論外だが、案件が急増し、万全の態勢がとれない場合もあろう。かといって、監視強化名目に行政が肥大しては本末転倒だ。

 消費者団体訴訟制度は、実際に被害を受けた人が監視役になる制度といえる。うまく活用すれば、行政の限界を補える。訴訟乱発懸念も、損害賠償請求を除外し、適格消費者団体の審査を厳しくしたことで歯止めをかけられよう。制度を事後チェック体制に組み込むことこそが重要である。

(2007/06/09 05:04)

【主張】サミット閉幕 戦いはこれからが本番だ

 ドイツのハイリゲンダムで開かれていた主要8カ国による首脳会議(G8サミット)が閉幕した。最大の議題となった地球温暖化対策で、今後の道筋について合意したことを、まずは歓迎したい。

 しかし、具体化には難問が山積である。安倍晋三首相が言うように、今回の合意は「通過点」に過ぎない。来年の北海道洞爺湖サミットへ向け、戦いはこれからが本番となる。

 安倍首相が今回の合意に向けて示した戦略的努力は、正当に評価されるべきだろう。地球規模の問題で、日本がこれほどイニシアチブを発揮し、成功した例は多くない。

 問題は今後だ。今回の合意には温室効果ガス削減目標を作る際の基準年をいつにするか、先進国と途上国をはじめとする各国の公平性をどう実現するか-などの具体策が一切ない。

 新しい枠組みは京都議定書を基礎にするのか、全く別なものにするのかも大問題だ。少なくとも議定書に基づいて行った努力と実績が無視されるようなことがあってはならない。

 総論賛成、各論反対が世の常である。来年の洞爺湖サミットの合意は今年以上に困難と覚悟し、官民挙げた総力結集が必要となろう。

 一方、今回のサミットの隠れた主要議題はロシア問題だった。米国の中欧へのミサイル防衛(MD)システムの配備、ロシアの資源ナショナリズム、力を背景にした強圧的外交などをめぐり、米欧と露の対立が激化した。

 プーチン露大統領は、サミットの直前、「米国によるMD計画が実行されれば、欧州にミサイルの照準を当てる」などと発言、「冷戦回帰」まで口にして恫喝(どうかつ)的姿勢を見せた。

 日本に対しては、あえてこの時期を選ぶかのようにラブロフ外相が北方領土を視察し、日本を牽制(けんせい)した。

 プーチン政権による自由、民主、人権の抑圧、独裁傾向の強まりなどへの批判も一段と高まり、G8内でのロシアの「異質さ」が際立った。

 来年の洞爺湖サミットに向けては、温暖化対策と並び、ロシア問題がより深刻化する可能性がある。北方領土問題、資源エネルギー問題などをかかえる日本としても、対露戦略を改めて抜本的に見直し、万全の態勢を立て直すことが急務である。

(2007/06/09 05:04)

【産経抄】

 国際社会でクマと言えばロシアの代名詞のようなものだった。それも「体が大きく獰猛(どうもう)」で、しかも「狡猾(こうかつ)」という、クマにとっても迷惑げなイメージだった。そのロシアが今、欧米の外交専門家の間では「部屋の中のゾウ」と言われているそうだ。

 ▼冷戦時代も含め、かつてはクマがこちらに攻めてこないよう防御線を引くのが外交の要だった。しかし旧ソ連の崩壊とともに、西側に対しすっかり協調的になった。クマよりおとなしいゾウに変じたのかと思い、部屋、つまり主要国(G8)の中に入れたのだ。

 ▼ところがそのゾウさん、石油価格の高騰などでしっかりと「栄養」をつけ、一段と大きくなってきた。プーチン大統領の強権的政治で「野性味」も取り戻しつつあるようだ。いつ家の中で暴れ出すかわからない、という意味だろう。「言い得て妙」とはこのことである。

 ▼確かにこのところのロシアとプーチン大統領の存在感は際だっている。ドイツでのサミットを前に、米国を「世界支配を狙っている」と批判する。欧米に対しては、米が東欧に配備を図っているミサイル防衛システムについて「欧州は火薬庫になるぞ」と脅してみせた。

 ▼ただでさえ温暖化対策をめぐって溝がある米と欧州との間に、くさびを打ち込む狙いがあるのは見え見えだ。冷戦時代に戻って国際政治の主役になったような勢いだ。部屋に入れたゾウをどう扱えばよいのか、欧米諸国のとまどいや苦悩が目に浮かんでくるみたいだ。

 ▼むろん日本にとっても人ごとではない。北方領土問題では、エリツィン時代よりずっとかたくなになった。最近も漁船が拿捕(だほ)されている。こちらは「クマ」のままだ。国際政治では努(ゆめ)、見せかけの協調姿勢にだまされてはならない。

(2007/06/09 05:03)


【日経・社説】

社説 サミットが米中参加の排出削減に道(6/9)

 米国、中国、インドなど、温暖化ガスの主要な排出国が応分の責任を果たし、2050年までに世界の排出量を半減させる。ドイツ北東部のハイリゲンダムで開かれた主要国首脳会議(G8サミット)は、米中の対立で凍りついていた地球温暖化防止の新たな枠組みづくりを、米国も参加して「再スタート」させることを決めた。世界は動きだした。

 京都後へ首脳合意

 首脳声明に盛り込まれた、2050年までに半減という数値は、基準年も示されないざっくりしたもので、中印を巻き込むための方策も具体性を欠いている。それでも、排出削減に背を向けて独自の有志連合まで模索していた米政府を、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の枠内にとどめ、京都議定書の次をにらんだ国際協議に積極的に復帰させた政治的・歴史的意義は大きい。

 人類社会が出す温暖化ガス総量の約半分を米国と中国が占める。その両国が今は排出削減の責務を負っていない。中国は途上国として成長の権利を掲げて削減義務をかたくなに拒絶し、米国は経済の減速を理由に京都議定書から離脱した。互いに非難を繰り返し、話し合いのテーブルにつかず、結果的に双方とも排出削減の責任を免れてきたといえる。

 この不幸で不条理な負の構造が、この6年間固定したままだった。それを突き崩し、文字通り世界が柔軟かつ多様に、共通だが差異ある責任を果たす仕組みに道をつけた、サミット議長のメルケル・ドイツ首相の熱意と手腕は高く評価される。

 安倍晋三首相がサミット直前に提唱した2050年に世界で半減という目標と、主要排出国の参加という原則が、二つとも声明に書き込まれたことで、欧州と米国の懸け橋になるとしていた日本の面目は保たれたと言っていい。1月の訪欧以来、急速に地球環境問題への取り組みを強めてきた安倍政権は、これで来年7 月の北海道洞爺湖サミットでの主導権発揮へ一応の土台を築いた。

 今回のサミットが確認したのは、怨念(おんねん)や行きがかりを捨てて、新しい枠組み協議のスタートラインにみんなが並ぶことまでである。次に進むべき方向については、同床異夢の可能性が極めて高い。

 日本はポスト京都議定書の枠組みについて、まだ何ら具体案を示していない。サミットの首脳声明では、ことし12月にインドネシアのバリ島で開くUNFCCCの気候変動会議で、ポスト議定書協議を本格的にスタートさせることを明言している。日本の真価がここで問われる。

 排出削減協議への復帰を宣言した米ブッシュ政権だが、政権内部にはいまだに国別の総量規制に反対する声は強い。ハイリゲンダムでG8首脳と会談した中印など新興5カ国の首脳も、先進国と同じ排出削減義務には強く反発している。日本でも国別の数値目標には経済界や経産省に強い抵抗があり、いまだに日本の立ち位置は定まっていない。

 一つ注目すべきことは、サミットでは地球温暖化問題は「世界経済」の新たな挑戦と機会という文脈で議論されたことだ。政治ではなく経済、負担や重荷ではなく新たな経済発展のチャンスというとらえ方が、世界の大勢になりつつある。

 大統領選挙の候補者たちを見る限り、米国の次期政権は国別の排出削減義務を積極的に受け入れることは間違いない。州レベルでの削減義務化が広がり、大手企業は排出権取引の定着のため、連邦政府に排出規制の「キャップ」を設けるよう要請している。米国は急速に変わる。

 削減は経済の文脈で

 その変化を織り込んで、低炭素社会への戦略を練ることを安倍政権は求められている。国別総量規制は省エネが進んでエネルギー効率が高い日本には不利。どんな形でも国の規制強化につながるキャップの導入には反対。国際社会では全く相手にされない、こんな後ろ向きの議論とはそろそろ決別しないと、北海道洞爺湖サミットの成功は危うい。

 日本が提唱している業種ごとのエネルギー効率改善をめざすセクターアプローチは、総量削減を補完するサブシステムとして大いに活用すべきだが、それだけで実効ある排出削減にはつながらない。排出権取引など経済が自律的に排出削減・低炭素へと向かう仕組みを早く立ち上げないと、国際社会に置いてきぼりをくう。その可能性を如実に示したのが、今回のサミットである。

 先進国が京都議定書よりも志が低い目標設定をしたら、UNFCCCの188カ国に及ぶ加盟国は受け入れまい。国別総量規制と国際的な炭素市場の確立、新興国を巻き込むセクターアプローチのような技術移転システムが次の課題だ。

【日経・春秋】(6/9)

 大阪の街にはソースの香りがあふれている。と言ったら大げさかもしれないが、たこ焼き、お好み焼きに始まって関西人がこの調味料をひときわ好むのはたしかだ。目玉焼きにソース。豚まんにソース。天ぷらにだってソースをかける。

▼そんな土地ならではの味を醸してきた老舗イカリソースを、一昨年傘下に収めたのが東京のブルドックソースだった。西に拠点を得た業界最大手の値打ちに着目したのかどうか、今度は米系投資ファンドが買収に乗り出した。100年余の歴史を持つ東の名門はTOB(株式公開買い付け)に対抗しようと大わらわだ。

▼すべての株主に新株予約権を発行するけれど、ファンド側にはこの権利を使った株式取得はさせず会社がカネで買い取ります、という手の込んだ作戦だ。株主総会の行方は? 法廷闘争になったらどうなる? 身近なソースメーカーをめぐる騒ぎは、M&A(企業の合併・買収)時代の荒波をいやでも感じさせる。

▼イカリが身売りされたとき、関西人は伝統の風味が変わらないかと気をもんだ。今回、米系ファンドは「自ら経営を行う意図はない」らしい。その通りなら味を心配することはなかろう。とはいえ「ソース事業を理解していない」と反発するブルドック経営陣のプライドは高い。この買収劇の味はなかなか複雑だ。


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