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2007年6月10日 (日)

6月10日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年6月10日朝刊)

[温暖化対策]求められるのは実効性だ

 地球温暖化対策の必要性は、主要国を含む世界各国の一致した見方といっていい。にもかかわらず、温暖化を防止するための具体的方策ではなぜ統一した見解が出せないのだろうか。

 八日に閉幕した第三十三回主要国(G8)首脳会議は、地球温暖化に伴う気候変動の原因となる温室効果ガス排出量を二〇五〇年までに「半減」させるとした日本や欧州連合(EU)の決定を「真剣に検討」することで合意した。

 温暖化対策は待ったなしの状況にある。であれば、この「半減」は各国が「義務」として受け止めるべきで、単なる「努力目標」で終わらせてはならない。

 それが、世界をリードする主要国が取るべき行動であり、責務だと考えたい。

 今回のサミットでは、最大の二酸化炭素排出国でありながら数値目標を設定することに消極的な米国も足並みをそろえた。

 自国の産業界への配慮から数値による「縛り」を嫌う米国の譲歩は、日本や議長国ドイツの粘り強い説得が功を奏したといっていい。

 だが、合意文書は参加各国の妥協の産物と化したようにも映る。具体的な数値をしっかり打ち出してないために、実効力という点で疑念を拭えないからだ。

 五〇年の半減目標から、議長国のドイツが主張していた「一九九〇年レベルから」とする文言が削られたことも腑に落ちない。

 自国の思惑だけで動けば一層の温暖化が避けられないのは言うまでもないはずだ。G8参加国はそのことを真剣に考えるべきであり、なぜきちっとした数値を盛り込まなかったのか残念と言うしかない。

 交渉関係者は「数値目標が入ったようにも見えるし、全面的に失敗したようにも見える」と話している。

 全体としてあいまいにされたのは明らかだろう。その意味で温暖化防止における実効性に疑問符を付けざるを得ない。

 数値目標の設定は急務である。各国は思惑を捨てて協調すべき時期にきていることを自覚する必要がある。

 今サミットではまた、京都議定書に定めのない二〇一三年以降の国際協力の新たな枠組み(ポスト京都)について、〇九年までに中国とインドを含めた主要排出国が参加してまとめることで合意した。温暖化防止で求められるのは各国の温室効果ガス排出規制策であり、何よりもその実効性だということを忘れてはなるまい。

[自殺総合対策]地域連携で孤立化防ごう

 警察庁のまとめで、昨年一年間に国内で自殺した人は三万二千百五十五人となった。前年より1・2%減少したが、九年連続で三万人を超えた。

 原因・動機別に見ると「健康問題」が全体の半分近い一万五千四百二人で最も多く、二番目が「経済生活問題」で六千九百六十九人だった。

 「経済生活問題」が原因の自殺は前年比で10・1%減少した。警察庁は景気回復の影響ではないかとみている。

 ここ数年、働き盛り世代、特に中高年の男性が仕事や生活上の問題で行き詰まり、追い詰められて自殺を選ぶという事例が目立つ。何とも痛ましい。

 経済生活が原因の自殺は、景気動向だけでなく経済・福祉政策なども影響していることが考えられる。今後弱者救済、セーフティーネット(安全網)の在り方なども視野に入れ、議論をさらに深化させていく必要がある。

 県警生活安全企画課のまとめによると、県内で昨年一年間に自殺した人は四百人に上り、過去最多となった。

 約八割は男性で、三十―五十代が全体の63%を占める。県内でも働き盛り世代の男性の自殺が際立っている。

 原因別では「病気苦」(百十八人)が最も多く、「経済生活問題」(九十八人)、「精神障害」(五十八人)と続く。二百四十三人が無職者だった。

 厚生労働省研究班の調査によると、自殺した人の約八割が悩んでいることを周囲に相談していなかった。まず社会的な孤立化をどのようにして防いでいくかが重要な課題になる。

 自殺対策基本法施行を受け、政府は二〇一六年までに自殺死亡率を20%以上減少させるとの数値目標を盛り込んだ自殺総合対策大綱を決めた。今後その効果を厳しく点検しつつ、さらに防止策を練り上げていくべきだ。

 メンタルヘルスの充実やカウンセリングの強化、自治体などの地域ネットワークづくりも重要になる。社会的な取り組み、関係団体の連携が自殺防止の鍵を握っている。少なくとも経済生活問題が原因の自殺は総合的対策によって防ぐことができるはずだ。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月10日 朝刊 1面)

 この役所は、以前からおかしかった。昨年、年金不正免除が発覚したとき、当時の責任者は一度も説明責任を果たさなかった。

 本紙の取材に応じず、責任者は帰宅したことも。問題となった五府県の社会保険事務局は謝罪したが、沖縄の社保局は会見の場を開かなかった。県民に真摯に向き合っているとは、到底、思えない。

 今度は五千万件の年金記録不備。出先でも十分な説明責任があるはずなのに、先日のサービス改善協議会では、この問題に踏み込まずに議事を進めようとしたらしい。委員が厳しく追及するのは当然だ。問題を避ける体質は変わらないのか。おかしい。

 記録不備に続き、千四百万件の記録漏れも明るみになっている。社会保険庁は手書きからコンピューター入力する際、膨大な作業のため、一部を入力しなかったという。加えて歴代長官は退官後、天下り先を転々とし、巨額の退職金を手にしたことも分かった。

 ずさんな管理責任がある長官経験者の老後は悠々自適。一方で、コツコツと保険料を納めたのに受給されない庶民。これは絶対に、おかしい。

 参院での意見聴取では、支給漏れで不利益を受ける夫婦は「安倍首相には逃げないで、と言いたい」と訴えている。国民が将来への安心を託した役所。こんないいかげんさでは、私たちの老後を任されない。政府は解体・再編を含め、この役所のおかしさをただすべきだ。国民は注視している。(銘苅達夫)


【琉球新報・社説】

サミット閉幕 “正念場”はこれからだ

 ドイツのハイリゲンダムで開かれた主要国(G8)首脳会議(サミット)は、地球規模の課題である温暖化対策について米国を含むG8各国が協調体制で取り組むことで合意し閉幕した。
 首脳会議の議題といえば、普通は経済や安全保障問題が圧倒的に多いが、環境対策を主要テーマに据えて熱を入れて議論したG8も珍しい。取り組みへの熱意に濃淡の違いはあるものの、それだけ温暖化対策が急務であり待ったなしの状況にさらされていることを、各国首脳は認識しているのだろう。
 米国に対し、議長国としての面目をかけたドイツの粘り強い説得や、日本の働き掛けなどが功を奏した形だ。合意を歓迎したい。
 合意文書は、気候変動が世界にとって「真の脅威」であると強調した上で、地球温暖化などをもたらす温室効果ガス排出の大幅削減の必要性で一致した。これを踏まえて「2050年までに温室効果ガスを少なくとも半減させることを真剣に検討する」とした。
 50年までの温室効果ガス半減については、安倍晋三首相がサミット前から内外に向けて再三アピールしていた。今年に入ってから「20年までに1990年比で排出量を20%削減する」との独自の目標を掲げるなど、温暖化対策の推進に熱心なEUとともに日本はサミットの議論を引っ張った。
 来年の洞爺湖サミットでも、温暖化対策が議題となることが濃厚である。議長を務める安倍首相は、ほっと胸をなでおろしているだろう。
 最大の成果は、これまで消極的な姿勢を崩さなかった米国を合意に引き込み、中国など新興5カ国とも協議していく認識を確認できたことだ。世界第2位の排出国である中国のほか、インドなどの新興国が参加しなければ、合意は絵に描いたもちに終わりかねない。
 国ごとに削減目標を課した京都議定書の枠組みは、12年で終了する。それ以降の国際的取り組みについても、主要排出国が09年に枠組みをまとめることで合意したことは意義がある。
 ただ心配な点も多い。一つは削減する場合、どの時点の水準を基準にとるのか、あいまいであることだ。EUと日本でも主張は食い違っている。
 さらに半減は、義務として課すのか、単なる努力目標なのか、不透明なままだ。合意文書の記述を「真剣に検討する」と妥協せざるを得なかったように、具体的な道筋はこれからである。
 とはいえ、残された時間は少ない。国益をめぐる思惑絡みで策をろうする余裕はない。洞爺湖サミットを控える日本も、これから真価が問われる。

(6/10 11:06)

自殺対策大綱 芽を摘み取る実践から

 自分の命を自ら絶つ自殺ほど悲惨で残酷なものはない。多発する自殺を食い止めるには、何が必要で何をなすべきなのか。
 政府が「自殺総合対策大綱」を閣議決定した。国の対策が示されたことは、社会に暮らす一人一人が自殺防止を考えるための一歩とするよう迫られていると受け止めるべきだろう。
 警察庁のまとめによると、昨年の自殺者数は全国で3万2155人に上った。9年連続で3万人を超えた。欧米の先進国と比較して突出して高い。
 深刻な事態は県内も同様だ。昨年は前年を41人上回って400人が命を絶った。統計を取り始めた1985年以降、過去最悪となった。「癒やしの島」などともてはやされている陰で、こんなに多くの人が自殺しているのだ。現実を直視せねばならない。
 大綱は、2016年までに自殺死亡率を20%以上減少させるとの数値目標を打ち出した。政府内には「30%減少」を求める意見もあったようだが、結局「20%減少」にとどまった。取り組みそのものが遅きに失した感は否めないというのに、スタート時の目標を定める姿勢としては、後ろ向きすぎないか。せめて半減させるぐらいの決意がほしい。実効性のある対策をきっちり推し進めてもらいたい。
 大綱は、数値目標以外では失業や多重債務など社会的要因への対策の強化、うつ病の早期発見、自殺や精神疾患に対する偏見をなくす取り組みなどの必要性を強調している。
 青少年、中高年、高齢者と世代別に自殺の特徴を示し、対策を提示したのも柱の一つだ。
 インターネットや携帯電話の普及などで、以前ほど大人の目からは分かりにくくなっている青少年の「いじめ」問題への対応、職場にあってはメンタルヘルス対策の推進、高齢者へは生きがいづくりといった具合に対策を盛った。
 大綱に「社会的な取り組みで防ぐことが可能」とある。この思いは万人が共有できる。職場や学校、地域でできることから始め、自殺の芽を摘み取りたい。実践の中から打つ手もきっと見つかるはずだ。

(6/10 11:05)

【琉球新報・金口木舌】

 旧東ドイツの秘密警察・シュタージには9万人余の局員がいた。家族や友人のことを密告する非公式協力員も多数抱え、密告者は国民の6.5人に1人という監視社会をつくりあげた
▼その時代の人々を描いた映画『善き人のためのソナタ』は評判通りの傑作だが、この映画を連想させる事態が起きた。自衛隊がイラク派遣に反対する市民団体の動向調査をしていた件だ。資料の現物を見ると、反対集会の参加者数や発言者の氏名まで事細かに書いてある
▼防衛庁(当時)は2002年にも情報公開請求者リスト作成で問題になった。同庁に資料請求した人の生年月日や旧姓までも調べ、「過去に自衛隊車両との事故」と記すなど身元調査をした形跡すらあった
▼だが当時と今では大きな違いもある。当時は長官が陳謝、官房長も更迭されたが、今回は閣僚が堂々と「調査は当然」と開き直っているのだ
▼自衛隊は国民を守るのが本来の任務のはずだが、今や自衛隊、政府を批判する国民から時の政権を守ることも任務らしい
▼辺野古沖の基地移設の事前調査に海上自衛隊が出動したこととも通底する。国策に異を唱える者を“軍隊”が堂々と監視する社会。シュタージの世界はひとごとではない。

(6/10 11:00)


【東京新聞・社説】2007年6月10日

週のはじめに考える 落葉樹の森で見つけた

 「美しい国」「美しい星」。美しさとは、このようにたやすく語られ、お仕着せであっていいものか。「秘された花」を探し求めて、「殯(もがり)の森」に分け入ります。

 寡黙で、だから美しい映画です。

 河瀬直美監督の映画「殯の森」。カンヌ国際映画祭で次席に当たるグランプリを受賞して一躍脚光を浴びています。

 ことし六十回目のカンヌ、世界最大のこの映画のお祭りは、娯楽と芸術のはざまで揺れているとも言われています。

美しいから選ばれた

 ハリウッドスターのレオナルド・ディカプリオや人気ロックバンドのU2が記念のパフォーマンスを華やかに繰り広げた赤じゅうたんの傍らで、「殯の森」の何が評価を得たのでしょうか。

 舞台は、奈良市の山あいにある高齢者のグループホーム。妻に先立たれた認知症の入所者と幼い子どもを事故で亡くしたばかりの若い女性介護士が、深い森の中をさまよい、次第に心を通わせながら、木々に埋もれたその妻の小さな墓を見つけるまでを描いています。

 ドキュメンタリー出身の監督だけに映像は穏やかで、音楽も最小限、登場人物は小声で言葉少なです。

 その代わり、茶畑の幾何学模様や落葉樹林の木漏れ日は優しく、美しく、瀬音や風音、虫の音や鳥のさえずりがほどよく耳に届きます。

 奈良を舞台にしていても、大仏殿や若草山は出てきません。主演の二人は泥まみれになってクマザサの中を迷走します。

 それでも審査委員長のスティーブン・フリアーズ監督は「美しいから選んだ」と語っています。

 河瀬監督は受賞後の記者会見で「日本人が誇りにしていたい思いを込めて作りました。映画界とか、若い人に向けてというよりも、私と同じように、この地球に生きる人に対して思いを伝えたい」と訴えました。

 そして「目に見えないもの、形にならないものの中にも、日本人が誇りにすべきものがあるんですよ」と、心の内を明かしています。

 美しいもの、誇りに思うべきものは、自ら感じ、読み取るものだと言いたげに。作中で、ヒロインの介護士とその同僚が「こうせなあかんてこと、ないからね」と、繰り返しささやき合っていたように。

 「美しい…」が、はやり言葉になっています。しかし、「美」には本来決まった形がありません。

 一輪の花を見て「美しい」と漏らす言葉は同じでも、その背景や内容は人それぞれに違います。

美は自ら見いだすもの

 「美は乱調にあり」と、思想家の大杉栄が断じたように、統一美、均質美だけが美しさではありません。

 非凡さだけでもないようです。

 「民芸運動の父」と呼ばれる柳宗悦は、無名の職人が大量に作った日用雑器の中に「平凡の美」を見いだしました。

 暮らしの中の「アート鑑賞マニュアル」とうたった「美の壺(つぼ)」は、NHKテレビの隠れた人気番組です。そこでは、陶磁器や盆栽だけでなく、瓦屋根や風呂敷さえも対象にされています。例えば、古い瓦屋根。「ふとした瞬間、あなたは軒に目を向ける。唐草の文様が刻まれた、古い瓦。少し視点を変えてみると、それまで気づかなかった美の発見がある」というのが美のツボです。

 マニュアルにできるのは、鑑賞の手順やポイントまで。美はやはり自ら見いだすものなのです。

 先人は、美の乱用も戒めました。

 「秘する花を知る事。秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず、となり。この分け目を知る事、肝要の花なり」。能の大成者、世阿弥がのこした奥義の書「風姿花伝」の名高い一節です。

 花とは、美とは、たやすく口にすべきものではありません。すぐに色あせてしまうから-というのが、古来伝わるこの国の美意識でした。

 「花とは何か」。世阿弥は自問自答します。「これぞ人それぞれの心に咲く花である。いずれがまことの花であろうか。ただ時の用に足りるもの、それを花と知るべきである」(現代語訳風姿花伝)と-。

 「殯の森」に戻りましょう。

 「殯」とは、敬う人の死を惜しみ、しのぶ時間、またはその場所のことだと映画は伝えています。

 認知症の男性は、森の中で亡き妻の魂と再会し、感謝の言葉をつぶやいて満足そうに目を閉じます。その森は、生と死を紡いで未来へつなぐ殯の場所でした。

言葉を軽んじる国が

 傷つき、汚れ、老いと死と再生を繰り返し、限りなくつながり続けるいのちの「美」。河瀬監督はふるさとの森でそれを見いだし、懸命に伝えようとしたのでしょうか。

 政治や経済の世界までもが、薄衣のような形容詞をまとっただけで見せかけの美しさをアピールし、社会がそれを受け入れる、あるいは見逃してしまう風潮に危うさを感じます。言葉を軽んじる国が、美しいはずはありません。

【東京新聞・筆洗】2007年6月10日

 観光案内風にいえば森と湖、オーロラ、ムーミンで知られる国、フィンランドは日本から遠いようだが、ロシアを挟んで「隣国」になる。面積は日本よ りやや小さく人口は約五百二十万人。専門家の間では自殺予防に成功した国として知られる▼人口十万人当たりの自殺者数を表す自殺率が一九九〇年には三〇を 超えていたが、総合的な予防対策を十年以上続けることで、30%減に成功した。世界保健機関は「自殺は、その多くが防ぐことのできる社会的な問題」と定義 づけているが、それを証明している▼日本では昨年の自殺者の数が警察庁の調べで三万二千百五十五人に上り、九年連続で三万人を超えた。その十倍から二十倍 は自殺未遂者がいると推定される。自殺や自殺未遂が一件起きると、少なくとも強い絆(きずな)のあった人のうち五人は深刻な心理的影響を受けるという見方 もある▼事態の深刻さからすると遅まきの対応になるが、政府が先日の閣議で自殺総合対策大綱を決定した。自殺率を二〇一六年までに20%以上減らすのが数 値上の目標になる▼秋田県で自殺予防に取り組む秋田大学の本橋豊教授は『自殺が減ったまち』(岩波書店)で、自治体が特色を生かして切磋(せっさ)琢磨 (たくま)すれば、自殺者数の減少ははるかに現実味を帯びると報告している。都道府県レベルの対策ならフィンランドの成功事例も適用できる▼本橋さんは 「安心して悩むことができる社会を」とも訴えている。自殺者をみんなで減らしていこうとする過程は、幸福な社会とは何かを考える過程と重なる気がする。


【河北新報・社説】

介護大手コムスン/撤退し円滑に事業引き継げ

 世間の指弾がよほど強いと知ったのだろうか。
 厚生労働省から、訪問介護最大手コムスン(東京)が事業所の打ち切り処分を受けた問題で、親会社のグッドウィル・グループの折口雅博会長は9日、コムスンの全事業について、同業他社を最優先に一括譲渡する方向で検討していることを明らかにした。

 コムスンの従業員約2万4000人についても、そのまま移したい考えという。
 問題発覚以来、8日初めて記者会見した折口氏。「看板の掛け替え」と批判されていたグループ会社の日本シルバーサービスへの事業譲渡については当面凍結するとしたものの、介護事業継続の意向を強く示していた。

 一夜にしての急変ぶりだが、コムスンが介護事業から退場を余儀なくされるのは至極当然だろう。
 コムスンは、介護保険法に基づく介護事業所の指定を受ける際、雇用実態のないヘルパーを職員数に含めて申請するなど、5都県8事業所で不正行為を働いた。東京都などが指定を取り消そうとすると、直前に事業所の廃止を届け、「処分逃れ」に動いたというから悪質だ。

 法例順守は、企業としての最低限のモラルで、まして介護といったお年寄りの心や体にじかに触れる分野では、それを超えた優しさや人間性が求められる。法さえ守れないのでは、福祉事業者としての資格はない。

 グッドウィル・グループが、コムスンの譲渡先として考えた日本シルバーサービスは5月末までコムスンの子会社だった。厚労省の処分をあらかじめ見越して、コムスンから日本シルバーサービスを切り離し、役員の重複がなければグループ企業への譲渡は問題ないという法を逆手に取った、ともみられる。奇策というほかない。

 「チャンスを与えてください」と、うっすらと涙さえ浮かべながら記者会見した折口氏。今必要なのは、コムスンの各事業所が指定期限まで利用者にサービス提供する法的義務を果たすよう督励するとともに、事業を継承する他業者を探し、要介護者の状態や介護プランなどを漏れなく引き渡すことだ。

 介護事業所の指定は6年ごとの更新制だ。コムスンの訪問介護、有料老人ホームなど全国で計2081事業所のうち、08年度で657カ所が、11年度までで計1655カ所が指定期限が切れ、6万人にも及ぶ介護サービスができなくなるとされる。

 東北6県でも指定打ち切りの対象は、宮城の45カ所を筆頭に、110カ所に上る。とりわけ、介護をコムスンにだけ頼っている地域では、心配はいかばかりであろう。

 せっかく慣れ親しんだヘルパーが代わってしまうのかどうか、早朝や深夜のサービスが受けられるかどうかなど、気をもんでいるお年寄りの姿を想像すると胸が痛む。

 厚労省、県、市町村は、コムスンの事業がスムーズに継承されよう受け皿づくりを行い、要介護者の安心が確保されるよう努める必要があろう。
2007年06月10日日曜日

【河北新報・河北春秋】

 仙台市街の北部に位置する東西約5キロの台原・小田原丘陵は、かつて一大窯業地だった。東端の窯跡からは素焼きの土器・須恵器が出土、その歴史は5世紀の古墳時代にさかのぼる▼藩制時代の17世紀末に登場し今も市民になじみがある「堤焼」。城下の北の守りを兼ねた足軽たちが生活用雑器を作り始めたのは丘陵の西端。大量にあった良質の粘土が庶民の暮らしを支えた時期もあった

 ▼ 奈良・平安時代には官窯群があり主に陸奥国府多賀城に供給する瓦を焼いた。その一つで丘陵のほぼ中央にある与兵衛沼窯跡。都市計画道路建設に伴い2年目を迎えた発掘の成果が考古学者の耳目を集める▼複雑な構造の平窯2基と、同時操業を示すあな窯7基は保存状態も良く「東日本には類例がない」発見。貞観11(869)年の大地震・津波被害に伴う多賀城復興に向けた朝廷直轄の窯とみられている

 ▼日本考古学協会は「日本窯業史を研究する上で極めて重要」と文化庁や仙台市にその保存を要望した。協会の要望書は超一級の文化財であるとのお墨付きと同じだ▼丘陵では古代の瓦がしばしば見つかり「瓦山」と呼ばれた所もある。考古学協会をして「国民的文化遺産」とも言わしめた窯跡群。瓦山の背後に横たわる歴史を、目に見える形で後世に伝えたいものだ。

2007年06月10日日曜日


【京都新聞・社説】

若年就労対策  生き生き働ける社会に

 低賃金と不安定な身分にある非正社員と、長時間労働にあえぐ正社員。三十代を中心にした若年労働者の就労のバランスが崩れてはいないか。
 若年層の雇用は、非正社員と正社員に二極化しているのが特徴だ。とくに卒業時期が「就職氷河期」と重なった二十五-三十四歳でその傾向が強い。
 総務省の調査では、非正社員の全雇用者に占める割合は三割を超えた。この中には居住費用を賄えず、ネットカフェやまんが喫茶に寝泊まりする若者もいる。
 まずはフリーターら若年層の生活水準の底上げを急ぎたい。
 今国会では、改正パート労働法に次いで、求人の年齢制限を原則禁止する改正雇用対策法が成立した。賃金の最低限度額の引き上げ法も審議中だ。
 改正パート労働法では、仕事内容や人事異動などが正社員と同じ条件のパート労働者への差別的な扱いを禁じている。
 しかし、この条件に当てはまる非正社員は極めて少数派だ。全体の処遇改善も企業に求めてはいるが、努力義務にとどまった。
 企業側にどこまで負担義務を課すのかという難しさはあるものの、パート労働者の側からすれば、中身や実効性に課題を残す改正といえよう。
 さらに法改正を積み重ね、よりよい制度づくりをめざしたい。
 非正社員の雇用のあり方が問われる一方で、正社員の長時間労働の問題も浮かび上がっている。
 国民生活白書によると、週六十時間以上働く若年正社員の割合は高まり、労働時間も延びる傾向にある。
 二〇〇六年度に労災認定された過労自殺では三十代が全体の40%を占め、突出していた。いかに若年労働者が酷使されているか、この数字が物語る。
 国会では、一カ月八十時間を超える残業の割増率を50%以上に引き上げる労働基準法改正案を審議している。長時間労働の歯止めとなるかどうかだ。
 一方、世論や野党の激しい反対で、今国会への法案提出が見送られた「労働時間の規制除外制度」だが、導入を望む声は経済界を中心に根強い。参院選後に議論が再燃する可能性も十分ある。
 非正社員、正社員を問わず若年労働者受難の時代といえそうだ。
 しかし、このまま働き盛りの若年労働者を疲弊させては、企業にとってもマイナスとなる。長期的な視野に立って若年労働力を活用し、育成したい。
 労働組合の役割も大事だ。非正社員の雇用安定や待遇向上への取り組みは、組織率の下がる労組の存続意義ともかかわってくる。同一労働同一賃金やワーク・シェアリングの考え方に立って非正社員と正社員の溝を埋められないか。
 若年労働者が夢や希望を持てない社会は健全とはいえない。国も産業界も対策への努力を惜しむべきではない。

[京都新聞 2007年06月10日掲載]

天下り規制  得点にならぬ強行採決

 官僚の「天下り」を規制する国家公務員法改正案が衆議院を通過し、週明けから参議院での審議が始まる。
 与党は一時、今国会での成立をあきらめたが、安倍晋三首相の強い意向を受け一転、成立を図る構えだ。
 年金支給漏れや松岡利勝前農相の自殺問題が逆風となり、内閣の支持率が一気に下落。七月の参院選への危機感から、天下り規制でポイントを稼ぎたい、というのが安倍首相の思いだろう。
 会期末が迫る中、参院では教育、社会保険庁の改革関連法案など重要法案が審議中のうえ、衆院で審議が始まった政治資金規正法改正案も待ち構える。
 厳しい日程だが、衆院の審議では天下りを規制するあっせんの仕組みなど、あいまいな部分が多かっただけに、参院ではしっかり議論してもらいたい。
 緑資源機構の事件が象徴するように、天下りが官製談合の温床になっていることは明らかで、与野党とも早急な「規制が不可欠」では一致している。
 問題は政府提出の改正案で、果たしてそれが可能かどうかだ。
 改正案は、二〇〇八年中に再就職のあっせんを一元的に行う「官民人材交流センター」を内閣府に設置。その後、三年以内に中央省庁によるあっせんを禁止する-が柱だ。
 衆院の審議では、センターの組織や人員などの制度設計について、政府は「有識者懇談会で検討する」というだけ。年間にどのくらいの人数を、どういう方法であっせんするのかといった具体像も示されなかった。
 天下りは残るが、官製談合の温床となる「予算と権限を背景にした押し付け的天下り」を根絶するために改正案の成立が必要、との主張も分かりにくい。
 そもそも、センター自体が「政府公認の天下りあっせん機関ではないか」との批判もあるのだ。政府には丁寧に説明する責任がある。
 参院では十一日の本会議で趣旨説明、翌日の内閣委員会で審議に入るが、内閣委の開催は原則、火、木曜に限られる。最大でも四日間しかないうえ、委員長ポストは民主党が握っている。
 委員会質疑を省略して本会議採決に持ち込む「中間報告」方式や、会期延長論が与党内に出始めたのはこのためだ。
 “禁じ手”の中間報告が許されないのは当然として、会期を延長するにしても参院選の日程を考えれば、小幅にならざるを得ないとの見方が強い。
 改正案は衆院を通過したため、成立か廃案のどちらかになる。
 安倍首相が「賭け」にでたともいえるが、今国会で目立つのは、生煮えの法案を審議も十分でないまま、数を頼みに強行採決する政府・与党の姿勢だ。
 ここでまた繰り返すようだと、得点どころか、国民の信を失いかねないことを自覚するべきだ。

[京都新聞 2007年06月10日掲載]

【京都新聞・凡語】

コムスン不祥事

 「私が追い求めているのは、大きいことをやること」「まず拡大していく、大きくなっていく。そして大きな力で社会貢献する」▼不正行為が発覚した訪問介護最大手、コムスンの親会社グッドウィル・グループの折口雅博会長は、自著『「プロ経営者」の条件』(徳間書店)で、こう語っている。あくなき上昇志向や事業拡大への執念は、同じ六本木ヒルズ族のホリエモン氏をほうふつとさせる▼「ベンチャー企業の生命線はスピードにある」と折口会長はいう。同著によれば、介護保険制度の導入前には十三店しかなかったコムスンの支店を、わずか三カ月で約一千店に増やした。一日に十店以上の計算になる▼事務所を探し、スタッフを採用・研修するといった時間が要ることを考えると驚異的なペースだ。ヘルパー数の水増し申請などの不祥事は、こうしたノルマに向けて遮二無二に突き進む拡大路線がもたらした当然の結果ではなかったか▼営利最優先の企業にも参入の道を開いているのが今の介護保険制度だ。だがルールを守るのが鉄則だ。破れば即刻退場するしかない。性善説を前提とした現行法の手直しも必要になろう▼同グループの「十訓」の一つに「正しくないことをするな、常に正しいほうを選べ」とある。戒めをかみしめ、誠心誠意をこめて利用者や従業員の受け皿確保に全力を尽くすべきだろう。

[京都新聞 2007年06月10日掲載]


【朝日・社説】2007年06月10日(日曜日)付

骨太の方針―官僚依存に戻す気か

 国の経済政策を決める重心が、静かに移り始めた。小泉前政権時代、政策の決定権は確実に首相の下にあったが、いま、官僚たちの手に戻りつつある。

 安倍首相が「戦後レジーム」からの脱却に精力を注ぐあまり、政官業の岩盤を壊す「構造改革」には力を割いていないからだ。

 前政権で改革の司令塔となってきた経済財政諮問会議が先週「07年版骨太の方針」の素案を示した。安倍内閣として初めてつくる経済財政の基本方針だ。

 なるほど、労働生産性の向上に数値目標を設けたり、最低賃金の引き上げなど「底上げ」をうたったり、サマータイム実施の検討を入れたり、内容はまことに盛りだくさんだ。しかし総花的で、前政権が掲げた郵政民営化のように、何が改革の本丸なのかが明確でない。

 この国の最優先課題は明らかだ。少子高齢化という荒波にどう立ち向かうか。人口減のなか高齢化で必要となる膨大な社会保障を支えなければならない。

 これから求められる負担増の痛みと、その先にある安心への道筋を、国民は知りたがっている。しかし、素案はそれに答えていない。

 あいまいさを象徴するのが、08年度予算の歳出削減策だ。「努力を緩めず、最大限の削減を行う」という。昨年の骨太の方針で、公共事業費を毎年1~3%減らすといった5年計画を決めた。それを最大限やるという意味だ。だが、何を優先し何に切り込むのか、具体的には示していない。

 民間議員が素案に「3%減」と明記するよう迫ったが、見送られた。このため、予算枠は財務省が8月に概算要求基準として示し、今後は財務省のペースで予算づくりが進められるが、夏の参院選を控え、各省からの予算ばらまきへの圧力も高まりそうだ。

 諮問会議が指導力を発揮できなければ、官邸主導もかけ声に終わり、官僚依存に先祖返りする。

 素案は、新たな財政再建目標を設けることにも踏み出していない。今の目標はプライマリーバランスの11年度黒字化。つまり国債の利払い費を除く歳出を、借金に頼らず税収でまかなうことだ。

 息長い景気回復で税収が大幅に増えており、この目標を達成できそうになってきた。タガを緩めないためには、早く次の目標を定めなければいけない。

 諮問会議が触れないのを見定めたかのように、財務省が動き出した。素案が出た直後に財務省の財政制度等審議会がまとめた来年度予算への建議は、新たな目標の必要性をしっかりアピール。利払いも税収でやる「財政収支の黒字化」など、より厳しい目標を指摘した。

 財政の主導権を財務省が取り戻しているのだ。諮問会議の力が落ちれば、やがて政官業の既得権者が息を吹き返す。官から民への改革も逆流しかねない。首相の責任はいよいよ重い。

抵当証券―裁かれた弱腰の金融行政

 激しく抗議する詐欺商法の業者に気押され、処分を先送りにする。そんな弱腰の金融行政が司法によって裁かれた。

 経営が破綻(はたん)した抵当証券会社「大和都市管財」の被害者らが損害賠償を求めた裁判で、大阪地裁は国に6億7000万円を支払うよう命じた。

 消費者の被害について国の賠償責任を認めた初めての判決である。画期的な判断と評価したい。

 抵当証券とは、融資先の不動産の抵当権を証券化し、細かく分けて売るものだ。この事件では、大阪にあった大和都市管財が破綻状態を隠して約1万7000人に抵当証券などを売りつけ、約1100億円を集めた。当時の社長は詐欺罪で懲役12年の刑が確定している。

 抵当証券会社は国に登録し、3年ごとに更新しなければならない。今回の訴訟では、旧大蔵省の近畿財務局が97年12月に大和都市管財の更新を認めたのが正しかったかどうかが争点になった。

 判決によると、近畿財務局は同社の経営状態に問題があるとして、95年夏に業務改善命令を出すことを決めた。改善が見られなければ、業務停止の処分をすることまで考えていた。

 ところが、呼び出した社長があたかも同和団体であるかのような名刺を示し、「組織を挙げて闘う」と抗議すると、財務局は改善命令を撤回してしまった。

 裁判で国側は、撤回したのではなく、資金繰りに問題はないと判断して留保しただけだ、と主張した。

 大阪地裁が「撤回」と判断した決め手は、大蔵省銀行局で課長補佐を務めていた現職官僚の証言だ。「近畿財務局は同和(が理由)だと格好が悪いんで、『カネがある』という説明づけを表向きにはしてきたと聞いている」と述べた。これを裏付けるような大蔵省の内部文書も証拠として提出された。

 もうひとつ、近畿財務局の行動で首をひねるのは、更新時期の前に帳簿を提出させたのに、社長らから抗議されると、財務状況を調べず返したことだ。

 こうした近畿財務局の対応からは、消費者を守ろうという姿勢がまったくうかがえない。

 判決は「検査を放棄した」と批判し、「更新登録は許容される限度を逸脱して、著しく合理性を欠いて違法」と結論づけた。当然の判断だ。国は控訴すべきではない。

 一方で、抵当証券は利率が高いが、損をすることもある。判決はそのリスクを指摘し、原告の被害のうち6割は過失相殺して認めなかった。うまい話には落とし穴があることを忘れてはいけない。

 抵当証券業者はバブル崩壊による地価下落で激減した。だが、規制緩和で新たな金融商品が次々と生まれている。政府も「貯蓄から投資へ」と旗を振る。

 金融行政は今回の判決を司法からの警鐘と受け止め、消費者保護を最優先に考えなければならない。

【朝日・天声人語】2007年06月10日(日曜日)付

 消防署の裏手で育ったので、「119番」には妙な親しみがある。拡声機から流れる緊迫のやりとりに身を硬くしていると、消防車や救急車がサイレンも高らかに飛び出していく。毎回、これぞ人助けの華だと思った。

 華が多すぎるのも考えものらしい。救急車の出番が増え続け、助かる命も救えない恐れがあるという。05年の全国の出動数は、10年前の1.6倍にあたる528万件。最寄りの救急隊が出払っているなどの理由で、到着までの平均時間は6分を超えて延びつつある。

 問題は、救急車をタクシー代わりに使う行為だ。全国に先駆け、東京消防庁が今月初めに動いた。救急隊が現場で「緊急性なし」と判断すれば、救急車を使わずに病院に行くよう説得する試みだ。

 東京では45秒ごとに救急車が出動している。ただの鼻血や手足の傷ならご遠慮を、となるのは当然だろう。ただし、同意が得られなければ軽症でも運ぶ。公共サービスの限界だ。

 自分や近親者の容体は重く見えるもので、救急隊との会話で我に返る保証はない。動転の中で「次の人」を思いやるのが難しければ、平時から、自分なりの119番の基準を考えておくのもよかろう。

 日本の消防署が初めて救急車を備えたのは、74年前の横浜だった。1年目の出動は213回で、市民が見物に来たそうだ(『救急の知識』朝日新聞社)。そんな神々しさはうせたが、白い車体は今日も、か細い命の火を運ぶ公器だ。軽率な「ちょい乗り」のために消える火もある。その程度の想像力は持っていたい。


【毎日・社説】

社説:視点 08年度予算 財政審もばらまきを容認するのですか=論説委員・今松英悦

 参院選後に決定される08年度政府予算の概算要求基準に向けて、財政制度等審議会が建議をまとめた。総論としては、日本の財政は膨大な債務を抱え持続可能性に不安があるとの認識から、政府には大胆な財政改革の断行に待ったなしで取り組むことを求めている。

 どうするのかとなると、通り一遍の歳出削減策が並べられているだけだ。消費税についても、安倍晋三首相の施政方針演説を引くにとどまっている。参院選を前にして沈黙したといわれてもやむを得ない内容だ。

 経済財政諮問会議が先に公表した「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2007」(骨太の方針07)素案も、選挙向けのアメと受け取られても仕方がないものになっている。

 日本はいま、そんなことをしていていいのか。景気拡大が6年目に入り、所得環境にも薄日が差してきて、浮かれているのか。これまで、財政再建を政府に迫る急先鋒(せんぽう)だった財政審までが、政治におもねるのでは、08年度予算は無残なことになりかねない。

 税収がここ2、3年大幅に改善していることは確かだ。その結果、07年度当初予算では国債の新発額は25兆円台まで圧縮できた。

 それでも、国債残高は国内総生産を上回っている。政府の目標通り国と地方を合わせたベースで11年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)が黒字化しても、国債残高はまだ増えつづける。こうした、財政状況では予算を政策に使う余地は極めて限られる。

 財政が本来の機能を回復するためにも、借金から一刻も早く抜け出す手を打たなければならない。そうしたことは、景気がいい時にやっておけば摩擦も少ない。増税も景気が悪い時に打ち出しては納得が得られない。

 財政審建議や骨太の方針素案で何よりも問題なのは、社会保障や公共事業の扱いだ。社会保障では国民の安心を図っていくことを優先すれば、財源確保が必要なことは自明だ。ところが、建議では本命である消費税上げには具体的に言及していない。秋以降の議論に任せるというのは無責任だ。

 公共事業でも07年度まで続けてきた前年度比3%減を続けることは明記されていない。減らしてほしいという願望は見えるが、なぜはっきり書かないのか。戦後一貫して高い水準の公共事業を実施してきたが、それでも社会資本は貧弱だ。政治の食い物になり、無駄が積み重なったからだ。事業評価の厳格化や入札などの透明化はそれでいい。この際、すべての事業をゼロから見直すといった、ショック療法をなぜできないのか。

 政治の風向きを気にしていたのでは予算のばらまきを容認することになる。ひいてはさらなる財政悪化の引き金を引くことになる。その意味でも、財政再建では後退は許されないのだ。

毎日新聞 2007年6月10日 東京朝刊

社説:自殺対策大綱 追い込まない社会目指そう

 毎日平均して88人もの人たちが自ら命を絶った。警察庁によると、昨年1年間の自殺者は3万2155人。前年より397人減ったものの9年連続で3万人を超え、米国や英国などと比べて突出して高い水準が続く。暗たんたる思いに駆られる。

 政府は「自殺総合対策大綱」を閣議決定した。昨年10月施行の自殺対策基本法に基づいて策定した自殺対策の初めての指針である。社会全体で自殺対策に取り組むことが待ったなしで求められる。

 金融破たんが相次いだ翌98年に自殺者が前年より一挙に8000人余りも増えて3万人台に突入し、その後も高止まりの状態が続いたのに、国がこれまで本格的な対策を講じてこなかったのは怠慢と言わざるを得ない。基本法も、民間団体の強い要請を受けて議員立法でようやく制定された経緯がある。国が早くから対策に本腰を入れていれば、救われた命もあったはずだ。手をこまねいてきた責任の重さを自覚してもらいたい。

 大綱は▽自殺は個人の問題ではなく、社会的要因により心理的に追い込まれた末の死▽制度の見直しや相談体制の整備など社会的取り組みで防ぐことが可能▽自殺を考えている人のサインを周囲が気付くことが課題--との基本認識を掲げた。ともすれば個人的問題と片付けられがちだった自殺を社会的問題と位置付け、予防は可能ととらえた意味は大きい。一人一人がそうした認識を持つことが自殺の根絶に向けた第一歩となる。

 大綱は当面の重点施策として、自殺の実態解明、国民への啓発、自殺する危険がある人と早期に接する可能性がある医師や教員らの研修、自殺未遂者や遺族へのケア、民間団体との連携強化など9項目を示した。数値目標として、2016年までに自殺死亡率(10万人当たりの自殺者数)を、05年の24・2人から20%以上減らして19・4人以下にすることも挙げた。

 重点施策をいかに実行するかが課題だ。90年に自殺死亡率が30・3人まで高じたフィンランドでは、徹底した実態解明と啓発事業などに国を挙げて取り組み、04年には20・3人と33%も減少させた。動機面などの調査研究は日本ではまだ緒についたばかりだが、NPO法人「ライフリンク」などが近く自殺者1000人の遺族らを対象に大掛かりな調査に乗り出す。国も支援を惜しまず、官民で実態解明に当たってほしい。

 失業、多重債務、過重労働、いじめ、健康問題など自殺の要因はさまざまで、その多くがうつ病などに罹患(りかん)するといわれる。行政や民間に種々設けられている相談窓口では、自殺の動機となる多様で複合的な問題に対処するため、それぞれの専門機関を機能的に紹介することが必要になる。精神科医につなぐ取り組みも欠かせない。とかく縦割りになりがちな弊害を改め、関係者・関係機関によるネットワーク作りが求められる。

 自殺者をなくすには、自殺に追い込まない、生きやすい社会の創出が必要だ。長い時間がかかろうとも、その実現を目指したい。

毎日新聞 2007年6月10日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:竹取の翁が竹林で不思議な竹を見つける…

 竹取の翁(おきな)が竹林で不思議な竹を見つける。光り輝く竹を切ると中から小さな女の子が出てくる。かぐや姫の物語は日本人なら誰でも知っているなつかしいおとぎ話だ。月から訪れ、月に帰って行くお姫様に心引かれるのは、最も身近な天体へのあこがれがあるからだろうか▲日本が今夏打ち上げる月周回衛星の愛称は「かぐや」に決まった。宇宙航空研究開発機構の一般公募に1万件以上の応募があり、1位の「かぐや」と2位の「かぐやひめ」で全体の2割強を占めた。3位は「うさぎ」、4位は「げっこう」、5位が「つくよみ」と続く▲「アメリカのアポロ計画とは違う、日本としての持ち味を出したい」「月の人(かぐや姫の一族)は不老長寿といわれているので、衛星が故障もなく順調に活躍してほしい」。応募者はさまざまな思いを愛称に込める▲それにしても、なぜ人類は月をめざすのか。他の惑星に行くための足がかりと考える人もいる。登山と同じで、「そこに月があるからだ」という考えもある。「月のきれいなラウンジで、お酒を飲みながら地球を眺めてみたい」。宇宙飛行士の向井千秋さんが語った言葉も思い浮かぶ▲足元の地球では、温暖化が重要なテーマとなっている。ドイツで開かれたサミットでは「2050年までに温室効果ガスの排出量を半減させることを真剣に検討する」との合意が成立した。ただ、実際に削減するための道筋作りはこれからだ▲月は何十億年も前から地球を見てきた。人類の登場は600万~700万年前。化石燃料の大量消費を始めたのはわずか200年前だ。竹取物語のころには想像もつかなかった急激な変化にどうブレーキをかけるか。月をめざす以上に難しい課題に私たちは直面している。

毎日新聞 2007年6月10日 東京朝刊


【読売・社説】

地方分権第2幕 一層の権限移譲に踏み込む時だ(6月10日付・読売社説)

 地方分権の第2次改革がスタートした。道半ばにある、国から地方への権限移譲に、さらに踏み込むべきだ。

 4月に発足した有識者7人による地方分権改革推進委員会が、今後の審議の方向性を示す「基本的な考え方」をまとめた。安倍首相と全閣僚で構成する地方分権改革推進本部の11日の初会合に報告する。

 「考え方」は、「地方が主役」を掲げ、中央政府と対等な「地方政府」の確立という理念を打ち出した。注目されるのは、地方議会の条例制定権を拡大し、条例で政省令などの内容を変更できるようにする「上書き権」の提案だ。

 1990年代後半の第1次改革は国の機関委任事務の廃止などを実現した。だが、政省令による国の関与は残り、自治体の自由度はあまり広がらなかった。

 木造の特別養護老人ホームは平屋建てに限られる。保育所には調理室を設置しなければならない。こうした政省令の規制を条例で除外できれば、地域の実情に応じた施設整備が可能になる。

 現在の法体系との整理が課題だが、実現を通じて、首長の提案の追認機関に陥りがちな地方議会を活性化する契機とすべきだろう。

 推進委は、国と地方の役割分担の「徹底した見直し」を主張する。国と地方の行政の重複を解消するため、国の出先機関の廃止・縮小を求めている。

 国の出先機関については、経済財政諮問会議の民間議員が先月、大胆な提言をした。約90の事務のうち、労働基準監督、交通基盤整備など61事務が自治体に移譲可能とした。出先の全職員約21万人のうち10万人前後が削減できるという。

 推進委が今後の議論を進めるうえで、一つのたたき台となるのではないか。

 権限や事務を国から地方に移す場合、それに見合う税財源の移譲が欠かせない。東京など大都市と地方の税収格差を是正する問題とともに、実現に向けて具体論を深める必要がある。

 推進委は秋の中間報告の後、順次、首相に具体的な勧告を行う。政府は、2010年の通常国会に新地方分権一括法案を提出する運びだ。

 地方分権では、権限や事務を奪われる側の中央省庁が常に、激しく抵抗してきた。第2次改革が成果を上げるには、政治の強い指導力が不可欠だ。安倍首相の実行力が問われる。

 権限の増える自治体は当然、より重い責任を負う。「平成の大合併」で市町村の規模は大きくなったが、重要なのは行政能力の向上だ。一層の行財政改革によるスリム化の努力も求められる。
(2007年6月10日1時37分  読売新聞)

出生率1・32 「確かな回復」にどうつなげるか(6月10日付・読売社説)

 日本の出生率が6年ぶりに上向いた。まずは朗報、と言えるだろう。

 2006年の人口動態統計によると、女性が生涯に産む子どもの数の推計値「合計特殊出生率」は、前年より0・06ポイント伸びて、1・32になった。

 出生率の回復は00年以来のことだ。この時はミレニアム(千年紀)ベビーが要因となって0・02ポイント持ち直した。以降は毎年、過去最低を更新し、05年は1・26まで落ち込んでいた。久々の反転であると同時に、上昇幅もなかなか大きい。

 昨年は73万組が結婚した。前年より2万組近く増えている。誕生した赤ちゃんは109万人で、これも前年を3万人上回った。多くの新たな家庭と新しい命が生まれていることを喜びたい。

 ただし、手放しで、とはいかない。今後も出生率の上昇が続くのかと言えば、懐疑的な見方が強いからだ。

 今回の出生率アップは、景気の回復が主因と見られている。

 失業率が低下し、雇用状況が好転している。結婚や出産をためらわせる経済的な不安が、やわらぎつつあることは確かだろう。だが、景気には波があり、好況がいつまでも続くことはない。

 また、第2次ベビーブーム(1971~74年)で生まれた団塊ジュニアが30代半ばに達していることから、出産世代の女性は急速に減少する。

 国立社会保障・人口問題研究所は、今後半世紀の出生率は、ほとんど1・2台で推移し、総人口は減り続けるとの長期推計を公表している。

 この予想を何とかして覆したい。

 そのためには、経済状況に左右されることなく、安心して結婚や出産ができるようにしなければならない。

 生き生きと子育てする若い親の姿を増やしたい。後に続く世代が、結婚や出産にあこがれを抱く社会にしたい。

 フランスは少子化の反転に成功し、出生率が2の大台を回復した。日本とは社会状況が異なる面も多いが、税制や雇用などあらゆる施策を連動させ、育児と仕事の両立を支援した結果だ。同じことをやるには無論、大きな財源を伴う。

 政府は、「子どもと家族を応援する日本・重点戦略検討会議」を設置して、包括的な少子化対策を検討している。だが、参院選をにらんで、必要な財源の議論に未(いま)だ踏み込めていない。

 具体的な施策のアイデアは、ほぼ出尽くしている。あとは優先順位をつけ、実行への道筋を早く示すことだ。

 今回の出生率上昇を、持続的な回復につなげていきたい。
(2007年6月10日1時37分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月10日付

 明治新政府の外務卿などを務めた副島種臣は、郷里佐賀では七賢人の一人として著名だが、その副島の「全心の書」と題する書展が東京・上野毛の五島美術館で開かれている◆没後100年を経たのを機に昨年、佐賀県立美術館で開かれたのに続く企画だ。副島は書家としても知られた。決まった文字の型はない。習字の手本にはしにくい。しかし、どの作品にも自由奔放、独創の気分があふれている◆普段は書に親しむ機会がない。パソコンの印字や携帯電話のメール文字を目にしない日はないが、手書きの文字を見ることもめっきり少なくなった。悪筆を知られずに済むが、筆跡で人柄を推測するような楽しみがない◆漢文の世界とも疎遠になった。この書展では作品の意味の説明がない。例えば「神非守人 人実守神」という作も専門家には深い意味がわかるのだろうが、佐賀県立美術館でも「副島がどういう気持ちで書いたかはわからない」と言う◆まず全心をこめ、これより遅くは書けないというくらい遅く最初の線を書く。その後も気をこめて出来るだけ遅く書く。構成や間隔は考えるな。そうやって修業を積めば、曲がっても筋の通った書になる。副島が語ったという書の習い方だ◆実際に毛筆を握って試してみたくなるような、ほかの分野にも通じるようなアドバイスだ。
(2007年6月10日2時5分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】被害者参加裁判 さらに詰めた論議を求む

 犯罪被害者や遺族が刑事裁判に参加し、被告に質問したり、検察側の論告求刑に意見を述べたりできる「被害者参加制度」に関する関連法案が、衆院を通過した。参院に送付され、今国会で成立することがほぼ確実な情勢となった。

 2年後にスタートする裁判員制度とともに、刑事裁判を根底から変革する制度といえる。ただ、賛否両論がある問題だけに、参院ではさらに審議を尽くすことを求めたい。

 被害者参加制度は、殺人、業務上過失致死傷、強姦(ごうかん)、誘拐などの犯罪に対し、その被害者や遺族が裁判に参加できる制度で、被害者側の申し出を裁判所側が許可すれば適用される。

 被害者や遺族は検察官の隣に座り、一定の条件付きで被告人質問や証人尋問が許され、さらに量刑に関しても意見陳述ができる。これまでの刑事裁判に比べ、犯罪被害者の立場に配慮した制度といえよう。

 例えば、凶悪な殺人事件で検察官が無期懲役を求刑した場合、被害者・遺族はこの求刑を不服として意見を述べたうえ、「死刑が妥当である」と主張することも可能となる。

 制度を積極的に支持してきた遺族からは「これまでの刑事裁判は、あまりにも被害者を疎外してきた。これでようやく変わる」と賛成する意見がある一方、「この制度は被害者を再び苦しめるだけで、導入は時期尚早だ」と反対する被害者・遺族もいる。

 また、施行は裁判員制度が始まる半年前の来年秋からとみられ、司法の現場では「裁判員の量刑判断にも大きな影響が出る。法廷が報復の場になりかねない」など、さまざまな意見が出され、論議を呼んでいた。

 政府案が衆院法務委員会に提出されてから5日間で審議を終え、採決されたのはいささか拙速だった。ただ、与党が民主党の意見も考慮して、法施行後3年をめどに見直しを検討する、などの条項を政府原案に加えたことは評価したい。

 今後、審議は参院に移るが、詰めた論議を行い、修正すべき点は迅速に手直しする必要がある。

 まず、裁判員制度を順調に軌道に乗せることが先決ではないか。裁判員制度に悪影響を与えるような仕組みにしてはならない。

(2007/06/10 05:03)

【主張】日豪2+2 協力と連携の輪を広げよ

 日本とオーストラリアの外務・防衛担当閣僚による初の安全保障協議委員会(2プラス2)が東京で開かれ、アジアと世界の平和と安全のために連携と協力を深めていくことで一致した。

 日本が同盟国である米国以外の国と2プラス2を開催したのは初めてである。安倍晋三首相とハワード豪首相が3月に署名した日豪安保協力共同宣言で決まった。

 日豪はそれぞれが米国と同盟関係を結んでいるだけでなく、民主主義の価値を共有し、地域の平和と安定にも共通の利益を持つ間柄だ。両国はイラク・サマワでの自衛隊による人道復興支援活動とその安全確保や、2004年のインド洋大津波での救難支援などで協力を深めてきた実績もある。

 日本ではアジアの安全保障を日米同盟の軸だけでとらえがちだが、中国の台頭や北朝鮮・イランの核問題など21世紀のアジアと世界の安全保障環境はめまぐるしく変化しつつある。米国もチェイニー副大統領が2月に日豪を訪問し、日米豪3カ国の戦略対話を深めることに期待を寄せている。

 「豪にとって、アジアで日本ほど親密な友人はいない」とダウナー外相が述べたように、豪州側でも日本への期待は高い。日豪が準同盟国としてヨコの協調と連携を深めて、米国との同盟協力を補完していく作業は重要だ。地域の平和、安全、繁栄にとっても有益な枠組みとして歓迎したい。

 今回の協議で日豪は、北朝鮮に対して「6カ国協議の合意履行」を求め、拉致問題解決に向けた協力を強化することでも一致した。また(1)安保協力に関する行動計画の策定(2)人道支援の共同訓練(3)テロ・大量破壊兵器に関する日米豪間の情報交換の強化(4)太平洋の島嶼(とうしょ)国に対する開発援助対話-など多様な協力テーマを採択した。

 ことしは日豪通商協定締結の50周年にあたる。経済通商面でも、日豪FTA締結をめざす動きが本格化する。日豪両国にはこれらの課題の一つ一つを着実に進めてもらいたい。

 日本にとってはアジア太平洋における安全保障協力の層を厚くすることにつながり、安倍政権が掲げる「主張する外交」にもプラスになるはずだ。日米豪の協力を軸に、価値と利益を共有するパートナーの輪を広げたい。

(2007/06/10 05:02)

【産経抄】

 生誕100年を迎えた詩人・中原中也に『正午』という作品がある。「あゝ十二時のサイレンだ、サイレンだサイレンだ/ぞろぞろぞろぞろ出てくるわ…」。副題に「丸ビル風景」とあり、昭和初期のオフィス街の昼休みをうたっている。

 ▼ビルから「ぞろぞろ」出てくるのはサラリーマンたちだった。現代の丸の内の風景とあまり変わりはないかもしれない。サイレンの音が正午の空に鳴り渡っていたことを除けばである。中也の詩はこう結んでいる。「空吹く風にサイレンは、響き響きて消えてゆくかな」。

 ▼ サイレンによる時報はいつか姿を消していったが、その前はお寺の鐘だった。角山栄氏の『時計の社会史』によると、江戸時代には全国で3万から5万の梵鐘(ぼんしょう)が時を知らせていた。人々は夜明けを告げる鐘で起きて仕事に行き、日暮れの鐘とともに帰っていたのである。

 ▼その時鐘の歴史は古代、天智天皇の時代にさかのぼる。「日本書紀」によると、天皇が大津宮(現滋賀県)に遷都した後、水時計を宮に備えて時刻を計った。そしてこれを初めて鐘と太鼓で知らせたのだという。西暦に直すと671年6月10日のことだ。

 ▼だがこれは、単に「時計事始め」の物語ではない。天智天皇は言うまでもなく大化の改新を起こし、中央集権に向けた大政治改革に乗り出していた。一方で大陸や半島から攻撃される脅威もあった。こうした難題を乗り切るには、秩序ある強力な政府や軍が必要だった。

 ▼そのために統一した時刻を定め、国民にも共有させようとしたのだろう。日本人が時間をよく守る民族とされるのも、その頃からのDNAが伝わってきているからかもしれない。「時の記念日」に古代から国づくりの息吹が伝わってくるようだ。

(2007/06/10 05:00)


【日経・社説】

社説1 首相は年金対応への自覚と責任を示せ(6/10)

 社会保険庁の年金騒動が混迷の度を深めている。5000万件の記録漏れ問題が表面化して以降、それ以外にも加入者・受給者の利益が損なわれていると疑われる問題が明るみに出て、国会審議では日々さまざまな数字が飛び交うありさまだ。この状態が続けば、かえって問題の所在や本質がわかりにくくなるだろう。

 国民が知りたいのは正確な情報と政府の対応策の中身に尽きる。当初の記録漏れを含めて問題の全体像と実態を正しく、かつ極力早く把握し、対応策を練る作業の先頭に立つべきは行政府の長である安倍晋三首相だ。首相は責任を自覚し、厚生労働省と社保庁双方の幹部へのガバナンス(統治)を強化すべきである。

 数十年もの間、社保庁は年金記録を極めてぞんざいに扱ってきた。5000万件問題が明るみに出たのは今年2月だが、この半月間にそれ以外にも多くの問題が浮かび上がった。(1)1970年代の保険料の特例納付の記録がはっきり残っていない(2)97年の基礎年金番号の創設時に約100万人を見逃した (3)コンピューターに入力していない厚生年金の記録が1430万件ある――などだ。また、かつて保険料を集めていた市区町村のうち、約280の自治体が納付実績を載せた名簿を捨てていた。

 これらがまかり通ってきたのは、歴代社保庁長官を頂点とする本庁幹部から地方の社会保険事務所の職員に至るまで、事なかれ主義が染み付いていたからだ。特に職員労組はコンピューター化に消極的だった。

 社保庁は厚労省の外局だ。代々の厚労相(厚相)、事務次官や官房長、年金局長らも同庁のいいかげんさを見て見ぬふりをしてきた。問題がここまで混迷した主因は、省と庁を挙げての無責任体制にある。

 その体質にメスが入ろうとしているのだから、闇に潜む問題が逐次表面化するのはやむを得ない面もあろう。国会が国民の声を拾い上げ、新たな数字が判明することもあろう。だが与野党のみならず首相官邸までもが、参院選を意識して社保庁たたきのパフォーマンスに注力しているようにみえるのはいただけない。

 先週末、社保庁の村瀬清司長官が早朝の東京駅頭でおわびのチラシを配った。その後、塩崎恭久官房長官は「(長官は)まだまだ努力しなければいけない」と述べた。おわび行脚に象徴的な意味合いはあろう。政権党にしてみれば選挙対策にもなろう。しかし現場の最高責任者として問題点の把握に粉骨砕身することこそが村瀬氏の責務だ。官房長官も力点の置きどころがずれている。

社説2 米ロは冷戦時代に戻るな(6/10)

 ハイリゲンダムでの2カ国間首脳会議で最も注目されたのは米ロ首脳会談だった。米ロ関係は冷戦終了後最悪という状態にあり、両首脳がどう打開の糸口を見いだそうとするのかが焦点だった。

 プーチン大統領はブッシュ大統領に対し、真っ向から対立しているミサイル防衛問題について興味深い提案を示した。この新提案が妥協のきっかけになる可能性は低いのかもしれないが、両首脳は冷戦時代への逆戻りという事態だけは避けるよう努力する必要がある。

 米国はイランや北朝鮮から発射される核ミサイルを撃ち落とすミサイル防衛システムを米国本土と海外に配備する計画を進めている。その一環として欧州ではポーランドとチェコに配備する予定である。これにロシアが猛反発してきた。

 このシステムは攻撃兵器ではなく防衛兵器であり、ロシアの核抑止力に打撃を与えないと米国は説得するが、ロシアは受け入れない。

 プーチン大統領は従来の主張を維持しながらも7日の会談では、東欧にミサイル防衛網を配備せずにアゼルバイジャンにあるロシアのレーダー施設を共同利用しようではないかとブッシュ大統領にもちかけた。

 プーチン大統領が対案を示したのは今回が初めてである。反対一本やりの姿勢を少し変え始めたのかもしれないとの期待も抱かせる。

 ミサイル防衛問題は今後の米ロ関係を決定づける重要な要因だが、両国の見解はコソボの地位、ロシアの人権政策、イランの核問題など多くの個別の問題についても厳しく対立している。さらにプーチン大統領は今年2月のミュンヘンでの演説にみられるようにブッシュ大統領の世界戦略自体を厳しく糾弾してきた。

 米ロの溝は深いが、ロシアは米国だけでなく欧州諸国からも強権的になりつつあるとの批判を受けている。重く受け止めるべきだ。

 両大統領は来月早々、米国で再会談する。ブッシュ大統領の別荘で開かれ、くつろいだ雰囲気の中で時間をかけた会談になると思われる。

 冷戦復活となれば、軍拡が始まり、テロとの戦いに支障が出るなど今の複雑な世界の状況がさらに複雑になる。実りある会談を期待する。

【日経・春秋】(6/10)

 「氷」は不思議な言葉だ。これだけだと冬だが、下に水が付いて「氷水」になると、夏を連想させる。「氷消ゆ」は春の光景だ。高樹のぶ子さんが小説の題名にした「氷炎」は広辞苑にはない。作品には四季を問わぬ洛北の風情が漂う。

▼氷あってのスポーツであるスケートも、いまは冬の風物詩ではない。フィギュアスケートのシーズンは7月に始まる。プロスケーターの八木沼純子さんがチームリーダーをつとめるアイスショーは5月に横浜と豊橋で公演した。8月は東京公演がある。真夏でも、足からの冷気を感じながら燦(きら)めく演技を楽しめる。

▼八木沼さんは小学1年の時に初めてアイスショーを見て衝撃を受けた。妖精たちが音楽と光のなかで華麗な空間を表現する。シュシュとエッジが氷を砕く音も。運動能力の限界に挑むスポーツの迫力と芸術性がリンクで融合する――。終われば荒川静香さんのようなスターもファン1人ひとりから花束を受けとる。

▼「スケートの藍衣(らんい)なびけば紅衣(こうい)また」(皆吉爽雨)。アイスショーかどうか、爽雨は次々に流れ過ぎる嫋(たお)やかな色彩動線を活写した。ジャーナリストでもある八木沼さんも、達意の筆でスケーターの内面に迫り、テレビ解説では、目に入る動きを瞬間的に言葉にする。スケートで培った集中力のなせる技と聞いた。


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