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2007年6月 2日 (土)

6月2日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】

社説(2007年6月2日朝刊)

[被害者参加制度]もっときめ細かな論議を

 犯罪被害者や遺族が刑事裁判の法廷で被告に直接質問したり、量刑に関する意見を述べることができる「被害者参加制度」の導入を柱とした刑事訴訟法などの改正案が衆院で可決された。参院に送られ、今国会で成立する見通しだ。

 殺人や業務上過失致死傷、強姦、逮捕・監禁、誘拐など生命、身体や自由に関する犯罪について、被害者側の申し出を裁判所が許可すれば適用される制度である。

 これまで、日本の刑事裁判は裁判官、検察官、弁護士の法曹三者で行われてきた。検察官が訴追権を一手に握っているのは、刑事裁判から私的な復讐心などを排除し、裁判官に理性的な判断を求めるためだとされている。

 その意味で、今回の改正案は法廷を様変わりさせる「大変革」といえる。なのに、衆院はわずか五日間の審議でスピード採決した。被害者・遺族、被告の双方の立場に立った、もっときめ細かな論議が必要だ。

 同制度は、当事者なのに「裁判から疎外されてきた」という被害者・遺族側の不満、理不尽さに後押しされる形で生まれた。

 ドイツやフランスなど西欧では一九七〇年代以降行われているが、被害者感情が強く出過ぎ、「法廷が報復の場になる」との弊害も指摘されている。

 その一方で、「支援体制が不十分なまま、精神的に強く知識がある被害者だけが裁判に参加すると、それができない人は切り捨てられることになる」「被告側に反論され、被害者が二次被害を受ける恐れもある」などの消極意見も出ている。

 二〇〇九年には、一般市民が審理に参加する「裁判員制度」がスタートする。与党も、被害者の質問が裁判員の量刑判断に影響を与えかねないとの慎重論が出ていることを踏まえ、法施行後三年をめどに見直しを検討するなどの条項を政府原案に加えている。

 被害者や遺族が裁判に参加する権利を与えられることは重要だ。裁判に参加することが遺族の立ち直りにもつながるし、被告も遺族が苦しむ姿を見て真の更生につながるはずだ。

 しかし、報復感情を直接、法廷に持ち込むシステムをつくることは、裁判を復讐の場とするだけでなく、被告側への人権的配慮や防御を一層困難にしかねない。

 日弁連は「被告が委縮するなど弁護活動に支障が出る」「証拠に基づく冷静な審理や公平な量刑が困難になる」と反対している。

 裁判員制度開始に備えた模擬裁判などで、さまざまな角度から問題点を検証し、対応する必要がある。


社説(2007年6月2日朝刊)

[禁煙週間]受動喫煙被害は深刻だ

 世界禁煙デーの五月三十一日から七日間は禁煙週間だ。喫煙習慣のある人にせめて一日、できれば一週間たばこを吸うのをやめてもらい、自分や周囲の人の健康について考える機会にしてもらう、というのが主な狙いだ。

 各行政機関には住民の健康問題に重要な影響を与えるたばこの害を広く知らしめて、被害をできる限り抑える努力が求められる。

 言うまでもなく、たばこにはタールやニコチン、アンモニア、一酸化炭素など有害物質が含まれている。これら有害物質は、たばこの火の付いた部分から立ち上る副流煙と、喫煙により吸い口から直接体内に入る主流煙とでは、副流煙の方に主流煙の約二倍から四倍以上含まれるという研究機関のデータがある。

 副流煙を吸うことになる受動喫煙がより身体への打撃が大きいといわれる理由だ。乳幼児の周囲での喫煙は虐待だという専門家もいる。家庭内に喫煙者がいると受動喫煙は防げない、家の中での分煙はできないと言い切る。

 同じことは、人が多く集まる公共施設や飲食店などでも言える。換気扇などをたくさん設置しても同じ建物内で効果はほとんどないだろう。喫煙室を密閉しても出入りの際に煙が部屋の外へ流れ出てしまうのは防げない。

 昨年県がスタートさせた「禁煙・分煙施設認定制度」は禁煙に対する意識を高めるのに役立っている。四月末現在、敷地内完全禁煙は四十八施設、施設内完全禁煙は百八十二施設(いずれも公表希望施設だけ)と発足時より増えている。

 しかし禁煙を政策として進めるのは簡単ではない。がんの対策をめぐる国の新たな基本計画づくりの案を議論する厚生労働省の協議会で喫煙率半減が同省の原案から外され、たばこ事業を所管する財務省に配慮したと、委員らを失望させた。

 個人の嗜好に国が口を挟むなという声がある。非喫煙者としてはこれらに対し、人前では吸うなと言い続けることが大事だろう。

【沖縄タイムス・大弦小弦】

大弦小弦 (2007年6月2日 朝刊 1面)
 マクドナルドがイタリアへ進出したとき、店内にピッツァーラを置くことが条件だったらしい。

 美食文化をファストフードに侵されたくないという気位だろう。ミラノ大聖堂横の商店街内に進出した時は大いに話題となり、ショップ側が周りの建造物に合わせて看板を黒字に金色で高級感を装った。

 先の大戦で敗戦国となり、米軍基地が置かれたのは日本と同じだ。でも何かが違う。ありていの言葉では言い表せない雰囲気があり、それは自国への誇りか、あるいは流行の「国家の品格」という感覚の差によるものだろうか。

 三年前に沖縄国際大学で起きた米軍ヘリ墜落事故がもしイタリアであったなら、警察は事故機を差し押さえ、米兵の“容疑者”を事情聴取するだろう。現に一九九八年二月、オーストリア国境近くのスキーリゾートで事故を起こした米軍電子戦闘機を一時押収、事故翌日にパイロットから事情聴取した。

 証拠品に触ることも関係者の氏名公表すら米側に拒否される日本とは大違いだ。警察は「捜査は続けている」と虚勢を張るが時効は八月に迫る。「日米地位協定の壁がある」との説明は、欧州の協定も同じ構造であることを指摘すれば論拠はうせる。

 混乱した現場で協定をひもとく暇はなく、現場保全の官権を行使するのが先だ。イタリアは当然のごとく主権を行使した。協定の法論理に迷い込むと教訓は得られまい。主権意識と外交力の差だ。(屋良朝博)


【琉球新報・社説】

刑事訴訟法改正案 真に被害者救済になるか

 犯罪被害者と遺族による被告人質問、さらには“論告求刑”なども可能となる「被害者参加制度」の導入を基本とする刑事訴訟法改正案が自民、公明、民主党などの賛成多数で1日、衆院本会議で可決された。参院に送られ、今国会で成立する見通しだ。
 「これまで被害者は裁判の蚊帳の外だった。やっと法廷に立てる」との評価がある半面、「法廷が報復の場になる」など、賛否両論がある中での採決。しかも、わずか5日間の審議でのスピード可決だ。刑事司法の原則を大転換するといわれるほどの改正にしては、その過程は、あまりに拙速と言わざるを得ない。否定的な被害者の意見も反映させるなど、参院ではもっと慎重な審議を求めたい。
 被害者参加制度は殺人や強姦(ごうかん)、逮捕・監禁、誘拐など生命、身体や自由に関する犯罪について被害者側の申し出があり、裁判所が許可すれば適用される。犯罪被害者らを刑事裁判の当事者に近い形で法的に位置付けようというものだ。
 被害者や遺族側は法廷で検察官の横に着席。意見陳述に必要な範囲での被告人質問と、被告の生活態度など情状にからむ証人尋問ができる。また、検察官の論告求刑と同様の意見陳述も、起訴された法定刑の範囲内で認められる。
 改正案ではそのほか、刑事裁判の中で被害者側が被告に損害賠償を請求できるようにし、有罪の場合は同じ裁判官が賠償命令を出す「付帯私訴」制度も創設した。
 改正をめぐっては、これまで被害者側が「当事者なのに法廷の外にいるのはおかしい」などと主張。参加制度の創設を強く要望してきた。一方、日弁連は「被告の防御が困難になる」などと指摘している。確かに(1)性犯罪などは被害者の名前や住所を明らかにしないで訴訟手続きができる(2)民事裁判でも性犯罪などの被害者が法定外からモニターを通じて証言できる―などの新規定をみると、被害者側に配慮しているのは評価できよう。
 ただ、この配慮が逆に被害者にとって二次被害を引き起こす恐れもある。例えば、性的被害者が法廷に出ても、忌まわしい過去を思い出すだけとなりかねない。被害者にとっては、法廷に出るだけでも苦痛なはずだ。
 さらに、2年後に始まる裁判員制度で、裁判員に対し、「被害者から直接質問されれば、被告人は沈黙する恐れもある。被害者の意見が過度に重視され、証拠に基づく冷静な事実認定や公平な量刑に影響を与える懸念もある」(日弁連)との指摘も見過ごせない。
 これらの疑問点を残したままの見切り発車的な可決は、大いに疑問だ。7月の参院選挙を意識した安倍政権の思惑があるのでは、と疑わざるを得ない。参院では、国民が納得する徹底審議を望む。

(6/2 10:02)

天下り規制 確実に効果上げる論議を

 天下り規制を強化する国家公務員法改正案が7日の衆院本会議で採決されることになった。自民、民主両党の国対委員長会談で一致した。当初、与党は1日の衆院内閣委で採決し、衆院本会議へ上程する構えを見せていたが、混乱を回避するために先送りしたとみられる。しかし、国民の側から見れば、いつ採決するかが最大の関心ではない。談合の温床となっている天下りの規制に実効ある法案か否か、そのことが重要なのだ。
 政府が提出した改正案は、2008年中に再就職あっせんを一元的に行う「官民人材交流センター」を内閣府に設置し、その後3年以内に各中央省庁によるあっせんを全面禁止する内容である。さらに新設される「再就職監視委員会」が違反を確認した場合、懲戒処分や過料、最高で懲役3年の刑事罰を科すと定めている。
 これで天下り問題は根絶するのだろうか。疑問がいくつかある。第一に、センタースタッフは各省庁の人事当局と「必要に応じて協力する」として、省庁の関与が残されたことである。各省庁の人事担当者のやり方によっては、省益が優先され、センター機能が骨抜き状態とされかねない。第二は、「センター設置から5年経過後に体制を見直す」という規定である。改正案がまとまる過程でも見られたように、各省庁の反発は強い。揺り戻しによって、省庁あっせんが復活する可能性もある。
 各党は、これらの問題点を追及し、改正案が将来においても骨抜きにされないよう、より厳格なものに高めていく論議をしてほしい。
 緑資源機構発注の林道整備でも官製談合があったとして摘発された。談合は刑法96条に規定されている犯罪である。にもかかわらず続発するのは、法令順守の意識がまひしているとしか思えない。根絶のためには、温床となっている天下りの規制強化が最優先されるべきだ。
 参院選をにらんで、採決を急いだり、遅らせたりするのは愚の骨頂である。省庁あっせんを確実になくすことができるのかどうか、与野党は真剣に議論してほしい。

(6/2 10:01)

【琉球新報・金口木舌】

金口木舌

 「青は藍(あい)より出でて藍より青し」は、青色は藍玉から作り出すが、元の藍よりも鮮やかな青色だという意
▼中国戦国時代の儒家、荀子は「学問はとどまることがない」とし、弟子も努力次第で師匠を超えるものだと説いた。師匠より優れた弟子の例えとして「出藍(しゅつらん)の誉れ」がある
▼私塾のない北大東村に村営の学習塾がある。14年前にふるさと創生資金でつくり、子どもたちの学ぶ意欲を育ててきた。3月に、開設以来の講師が退職したため、その存続が危ぶまれた。同村教委は、講師募集を呼び掛け、全国から約100人の応募があったという
▼新しい講師は、塩川健三さん(61)。那覇市立大道小校長などを務め「子どもたちの役に立ちたい」と応募し4月に赴任(1日付夕刊)。教壇に立つのは20年ぶり、初任地の記憶がよみがえる、と新鮮な気持ちだそうだ
▼北大東村の小学校は児童数が少ないため違う学年同士が一緒に学ぶ複式学級。教諭が一人一人の子どもたちにかかわる時間も限られるなど村営塾は教育機会を支える場だった
▼無料だった村営塾は、自治体の財政難で4月から有料化された。が、それよりも存続が地域には大きな恵みだという。師を乗り越える人材の育成を期待したい。

(6/2 10:15)


【東京新聞・社説】

国会あと三週 落ち着きなさい、総理

2007年6月2日

 残り会期三週間の国会が荒れている。迫る参院選へ与野党の対決色が強まるのはやむを得ないにせよ、安倍晋三首相の焦りが議会政治を壊しかねないことを心配する。もっと落ち着いてはいかがか。

 連日の強行採決に世論の風当たりが強まることを気にしたのだろう。与党は、官僚の天下りを規制する国家公務員法改正案の衆院通過を来週半ばに先送りした。今国会成立へ速やかな採決を指示していた首相の意気込みが空回りした格好だ。

 与党は一日未明に、社会保険庁改革法案と年金時効撤廃特例法案を「数の力」で衆院通過させている。間を置かぬ再びの強行採決には、河野洋平衆院議長もさすがに難色を示したようだ。

 官製談合事件続発を受けての国家公務員法改正案は、与野党の折衝で六日委員会採決、七日衆院通過の日程が合意された。成立はかなり厳しいとみられている。

 今国会は七月の参院選日程を念頭に、今月二十三日までの会期が決められている。延長は容易でない。その中で、安倍政権は改憲手続きを定めた国民投票法を成立させ、航空自衛隊の派遣を延長するイラク特措法案、改正教育基本法を受けた教育三法案がいま参院で審議中だ。

 週明けには社保庁法案と年金特例法案も参院で審議入りする。国家公務員法改正案も再来週以降、参院に回ってくるとみられる。ただでも法案が大渋滞を起こしているのに。

 参院選に政権の命運がかかる首相は「安倍カラー」をよほど強調しておきたいのだろう。重要法案すべての成立を指示し、与党幹部との摩擦も伝えられる。参院選前の今国会は参院で法案を継続審議にできない。審議半ばのままでは廃案となってしまう。このため参院自民党は指示を連発する首相に懸念を強めている。

 首相の焦りは最近の支持率急落と松岡利勝前農相の自殺というダブルショックが大きいとされる。重要法案を全部やろうとすれば、よほどの無理を通すしかない。

 首相はドイツで開かれる主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)に出席するため、五日から九日まで日本を離れる。場合によっては、帰国後から会期末までの二週間で、強行採決を重ねることにもなりかねない。

 衆院三百三十六議席という与党の圧倒的多数が首相を強気にさせているなら、勘違いも甚だしい。これは小泉前政権の郵政解散・総選挙で得た議席だ。国民は首相に白紙委任しているわけではない。それを忘れてもらっては困る。

教育二次報告 『修身』復活はごめんだ

2007年6月2日

 「徳育」は教科とし、教科書もつくれという。教育再生会議がまとめた第二次報告は、提言の柱の一つに「徳育の充実」を掲げた。教材の例に偉人伝を挙げるが、戦前の「修身」復活ならごめんだ。

 二次報告は「学力向上」「心と体-調和の取れた人間形成」「大学・大学院の再生」「財政基盤のあり方」を四大テーマとし、「心と体」の冒頭の提言で「徳育の充実」をうたっている。

 社会の規範意識や公共心を身につけさせる教科に道徳があるが、再生会議の議論ではいまの道徳教育は十分ではないとし、さらに発展させた教科として徳育を位置づける。国語や社会科、体育、総合学習の時間なども関連付けて充実させるとしており、重要視している姿勢がわかる。

 ことし一月の一次報告は子どもの規範意識を高める方策として「民話や神話・おとぎ話、茶道・華道・書道・武道などを通じて徳目や礼儀作法、形式美・様式美」を掲げた。復古調が目立ち、諮問した安倍晋三首相が絶賛した内容だった。

 この具体的手段が徳育の教科化だが、教材には「教科書と副教材を使う」という。「その際、ふるさと、日本、世界の偉人伝や古典などを通じ、他者や自然を尊ぶこと、感動などに十分配慮したものが使用されるようにする」と補足説明も付く。

 教科書とは文部科学省の検定を受けたものを指す。すでに小学校では副教材「心のノート」が使われているが、これには一定の考え方や感じ方を教え込むものではないかとの批判が出ている。検定を受け、一定の枠にはめられた教科書で徳育を教えることはその傾向がさらに強まる。ましてや、偉人伝などとくると、戦前の教科書を思い浮かべてしまう。

 徳育の評価方法に報告は「点数」を外した。規範意識の習得度を数値化するのは困難であり、当然だ。ただ、教科である以上は評価が伴う。記述式も検討されたという。

 具体的には中央教育審議会でも議論されるだろうが、教科化そのものをもっと慎重に吟味すべきだ。徳育が昔の「修身」のような授業として復活を目指すのなら、批判は相次ぐだろう。

 徳育の教科化に会議メンバーの間では意見が分かれていた。まとまらない段階で座長と座長代理に結論が一任された。七月の参院選を前にして出てきた二次報告は、これを「美しい国」の土台にしたい首相の意向に再び沿う内容だ。会議は公開されておらず、結論までのプロセスが見えにくい。子どもの将来にかかわる重要なことをこんな手順で進めていっていいものだろうか。

【東京新聞・筆洗】

筆洗

2007年6月2日

 「スピーディーにタイムリーに対応していかなければ」と、安倍首相は得意のカタカナ英語で記者団に胸を張る。一日未明までずれ込んだ社保庁改革関連法案と年金時効撤廃特例法案の衆院通過だった。後世、この首相の突然の決断を、歴史はどう評価するだろう▼とりわけ五千万件もの該当者不明の記録漏れに対応しようという特例法案は、提案から実質四時間の委員会審議で即日強行採決、すぐに本会議可決だ。野党ならずとも、“拙速”の批判を免れまい▼政治とカネの疑惑で追い込まれた松岡前農相の自殺に加え、この記録漏れへの世論の猛反発というダブルショックで、内閣支持率が急落したのに慌てふためいたか。来月の参院選前に、とにかく早くけりをつけよという首相のトップダウンだった▼年金法案は昨年の今ごろも、社保庁による手続きデータ偽造が全国で次々明るみに出て、審議先送りとなったいわくつきだ。これらの責任追及も果たさぬうちに、新たに五千万件もの記録漏れが明るみに出たのだから、社保庁を解体し民営化しようという与党案を、信用せよというほうが無理というものだ▼そもそも安倍内閣は、年金問題の争点化は不利だとして、参院選後の臨時国会に先延ばしし、憲法改正の方へ世論の関心を振り向けようとしていたのではなかったか▼“問答無用”の国会運営で、思い出すのは七十五年前の五・一五事件だ。「話せばわかる」といって軍部の凶弾に倒れたのは犬養毅首相だったが、衣替えした安倍首相、かりゆし姿の下は、独断専行の鎧(よろい)か。


【河北新報・社説】

教育再生第2次報告/日程優先の拙速な内容だ

 政府の教育再生会議(野依良治座長)が1日、1月の第1次報告に続く第2次報告を安倍晋三首相に提出した。

 学力向上と規範意識の育成を柱に(1)授業時間数10%増に向け土曜授業の実施(2)徳育(道徳教育)の教科化(3)めりはりのある教員給与体系の実現―などを掲げている。

 このほか、保護者や児童が就学先を選べる学校選択制の導入促進、小学校に英語教育の導入、高校での奉仕活動の必修化など、盛りだくさんな内容だ。

 だが、第1次報告と同様、徹底した検討を重ねた末にまとめられた報告とはとても言えない。議論が生煮えのまま盛り込んだ内容が多すぎる。

 第1次報告は、教育改革関連3法案の提出に向けた通常国会の政治日程に合わせて提出された。今回は政府が今月策定する「骨太の方針」に間に合うようまとめられた。日程を考慮することは必要としても、拙速であっては何にもなるまい。

 例えば、土曜授業。報告は学校週5日制を基本とした上で、必要に応じて行えるようにするとしているが、学力向上の強い圧力がかかっている今日、事実上、土曜授業の復活につながるものと言える。

 学校が隔週5日制から完全週5日制になった際、減った授業時間数が7%だった。今回の10%増はそれを勘案した数字というが、10%増が必要な根拠はあいまいだ。増やした分を何に充てるのかも明確でない。それでなくても、「ゆとり」のない学校現場で、どのように対応していけるかも不明だ。

 授業時間数の増加を強く求めるためには、児童生徒の学力の状況や「ゆとり教育」の功罪について徹底して検証するのが先決だろう。

 児童生徒の基礎学力や学習意欲を向上させることが極めて重要なのは言うまでもない。それでも、求められる学力水準をめぐって国民の共通認識はないのが現実だ。その状況のまま授業時間数を増やすのは、児童生徒や学校間の競争を過熱させることにしかなるまい。

 再生会議が学力向上とともに強く主張しているのが徳育の充実・強化だ。

 当初は正式教科にする方針だったが、既存の教科と同様の扱いをすることは困難として正式教科化を断念し「新たな教科」と位置付けた経緯がある。

 現在も、道徳教育は小中学校で教科外活動として「道徳の時間」が設けられ、週1回程度の授業が行われている。現在と何をどう変えるのか、もっと十分説明する必要があるだろう。

 再生会議は首相の肝いりで設置されたが、当初から権限や役割があいまいだった。

 再生会議の報告について、伊吹文明文部科学相が「実施に移すかどうかは政府側の判断」と述べているように、政府が都合のいいところをつまみ食いして利用しているのが実態だ。

 12月には予算編成に合わせて第3次報告が予定されている。日程優先で拙速な報告が続くなら、再生会議の存在意義すら問われるのではないか。
2007年06月02日土曜日

【河北新報・河北春秋】

 宮古市出身の元キックボクサー、藤原敏男さん(59)は不運だった。時代に見過ごされた。タイ式キックボクシングのムエタイで、史上初めて外国人王者になったのが1978年▼「キックの鬼 沢村忠」が引っ張ったブームは既に去り、総合格闘技の人気の高まりにはもう少し歳月を必要とした。83年、隠れたヒーローは141戦126勝(97KO)という戦績を残しリングを降りた

 ▼ 「気にしない。世の中がそうじゃなかった」。闘いの軌跡を振り返る言葉が重々しい。現在は東京・荒川区でジムを経営。「人のためじゃない、自分のために闘って満足感でいっぱい」とも▼4日、東北における格闘技の系譜に新たな1ページが加わる。プロボクシングの世界ミニマム級タイトルマッチ(横浜)に、北上市出身の八重樫東(あきら)選手(24)=大橋ジム=が挑む。王者はくしくもタイ人(28)

 ▼勝てば、ともに青森市出身のレパード玉熊、畑山隆則両選手に続く東北出身3人目の世界チャンピオン。さらにプロ7戦目での王座獲得なら、日本人最短記録。当日、会場には200人を超す応援団が駆け付ける▼同じ東北人。日本向け中継もない中で相手をなぎ倒した29年前の藤原さんのファイトが重なる。時代の片隅に刻まれたワンシーンが輝きを増してよみがえればいい。

2007年06月02日土曜日


【京都新聞・社説】

失業率3%台  賃金上昇につなげよう

 総務省が発表した四月の完全失業率が前月より0・2ポイント改善して3・8%となった。3%台回復は九年ぶりだ。
 五年前には、5・5%まで悪化したことを考えれば、景気拡大を背景に雇用情勢は、ようやく好転の兆しが明確になったと言ってよかろう。
 雇用者数を実数でみると、四月は前年同月より八十五万人増えて五千五百四十四万人、逆に完全失業者は十六万人減って二百六十八万人になった。
 失業率改善は、団塊世代の一斉退職時期を迎え、各企業が新規学卒者の採用を増やしていることが大きい。女性が積極的に働き口を求めるようになり、一度失業した人が再就職を果たす半面で、リストラされる人が減っている。
 雇用増が賃金、物価を押し上げ、さらに個人消費を回復させる循環に乗れば景気の本格上昇が期待できる。政府、日銀は雇用の推移を見極め実効ある経済、金融政策を打ち出してもらいたい。
 光がさしてきたとはいえ、雇用の中身を子細にみれば、構造的問題が解消しているわけではない。増えているのは非正規社員が中心で、肝心の賃金上昇には結びついていないのだ。失業率の地域間格差も相変わらず大きい。
 総務省の調査では、一-三月期に非正規社員は六十三万人増えて千七百二十六万人となり、雇用者に占める割合は33・7%と過去最高に達した。
 賃金の伸びは、これに合わせるように鈍く、労働者の昨年度所定内賃金は、前年度比0・4%減だった。
 人手不足がはっきりしてきたにもかかわらず、コスト削減から賃金水準の低いパートやアルバイトの増員で対応する企業が多いことを物語っている。
 正規社員の雇用を増やすことが、いまは何より求められる。企業が非正規社員を正規社員に転換できるよう、政府は支援策をさらに充実させてほしい。
 卒業時期が「就職氷河期」時代に当たった二十五-三十四歳の若年層の支援はとくに重要だろう。
 アルバイトやフリーターで働かざるをえない人が多いこの年齢層には、いつでも職業訓練や研修を受けることができるシステムを完備すべきだ。それが格差解消にもつながる。
 地域ごとに時給六百七十円前後に抑えられている最低賃金の引き上げや、働き方の基本ルール見直しを急ぐことも欠かせない。与党は、今国会に労働関連三法案を提出しているが、他の法案が目白押しで成立は困難な情勢だ。
 三法案のうち、最低賃金法改正案は引き上げ額が不明確で批判も多い。時給八百円程度(平均千円)を主張する野党案もある。
 議論をやり直し、金額アップを再検討してはどうか。せっかくの失業率改善をうまく活かし、息の長い景気拡大と成長に結びつけなければならない。

[京都新聞 2007年06月02日掲載]

農相後任人事  「最大の危機」に焦りも

 衝撃的な松岡利勝前農相の自殺から四日、安倍晋三首相は後任に元防衛副長官の赤城徳彦氏を起用した。
 当選六回ながら四十八歳の若さで初入閣だ。清新な人材登用で政権のイメージ回復を図るねらいがあろう。
 折からの年金記録の不備問題とダブルショックで安倍政権が受けたダメージは大きい。内閣支持率が再び低下し、「政権発足後最大の危機」とさえいわれ、残り約三週間に迫った会期末を控えて強引な国会運営が目立つ。
 赤城新農相は松岡前農相と同じく農水省の出身で農政のプロである。その意味で即戦力を期待されたといえるが、同時に不祥事が相次ぐ安倍内閣のてこ入れの役割があるのは間違いない。
 政権発足からわずか八カ月で二人の閣僚が「政治とカネ」の問題で辞任や自殺に追い込まれたのは深刻な事態だ。
 この間、柳沢伯夫厚労相の不適切発言や久間章生防衛相の対米発言など数多くの閣僚が物議を醸してきた。参院選を前に、安倍首相がいくら否定しても内閣改造論がくすぶり続けている。
 赤城氏起用は渡辺喜美行革担当相と同じ効果をねらっているのかもしれない。前担当相辞任を受けて官僚の天下り規制法案をまとめるなど強い個性を発揮して活躍、政府内で「ピンチをチャンスに変えた」と評価が高いという。
 首相はその天下り規制法案に強いこだわりを示す。参院側が審議日程のめどが立たないと難色を示したが、今国会成立を急ぐ姿勢だ。官製談合の温床として国民の批判が強く、参院選に向けて実績を上げたいとの思惑がある。
 たった五時間の審議で衆院を通過させて参院に送り込んだ年金時効撤廃特例法案と社保庁改革関連法案で与野党は全面対決の様相だ。にもかかわらず「廃案覚悟」で無理押しするのは安倍首相の焦りの表れともいえよう。
 政権発足後、支持率の低下傾向が続いていたが、憲法改正など「安倍カラー」を前面に打ち出してから持ち直し、政権運営に自信を持ち始めていた。
 ところが年金支給漏れ問題が浮上してから支持率急落に見舞われている。年金問題で敗北した前回参院選の悪夢が頭をよぎったのは想像に難くない。
 そこへ松岡前農相の自殺だ。説明責任を果たさない松岡氏を徹底して擁護、かえって精神的に追い込んだという首相責任論まで取りざたされる。政権の危機感は相当に強いようだ。
 安倍首相は憲法改正や教育改革などを政権目標に掲げ、戦後体制の変革をもたらす重要な法律を相次いで成立させてきた。一方で年金に限らず生活に密着した問題を軽視してきたきらいがある。「政治とカネ」も含め国民の関心事とずれがあった。逆風はそのつけが回ったといえるのではないか。参院選に向けて戦略の立て直しを迫られよう。

[京都新聞 2007年06月02日掲載]

【京都新聞・凡語】

救済

 このところ、よく耳にする言葉といえば、やはり「救済」の二文字だろう。もらえるはずの年金が消えたり、宙に浮いたりした人たちを「救う」ことを意味するらしい▼ところがこの言葉の使い方を巡っては「不適切」と異論の声があがる。救済は読んで字のごとく「救い助けること」(広辞苑)。社会保険庁が犯したミスなのに「救い助けるとは何事か」とする憤りはうなずける▼民法には「救済権」の用語もある。「侵害された権利の救済を求める権利」(同)とされ、人間として生きる権利を奪われた人たちを裁判など司法制度によって助ける行為を言うのだそうだ▼そんな用途もあってか、「救済」には甘い響きがつきまとう。明治のころアイヌ民族は「救済」という名のもとに移住させられ、独自の風習も禁じられたというから要注意だ▼最近のスポーツ界でも「救済」の文字を目にする。高校野球界は、スポーツ特待制度の廃止で大混乱。大あわての日本高野連は、生徒が野球を続けられるよう、「救済措置」をとったという。おかげで騒ぎも鎮静化。ものごと丸く収めるのにもなかなかの効用があるようだ▼ここ数日、年金問題での政府答弁で「救済」の言葉が聞かれなくなった。そう思ったとたん年金法案が衆院を通過した。この二文字が姿を変えて「社保庁“救済”法案」となっては国民こそ救われない。

[京都新聞 2007年06月02日掲載]


【朝日・社説】2007年06月02日(土曜日)付

安倍首相―少し頭を冷やしては

 内閣支持率の急落。そして松岡農水相の自殺。そんななかで来月には、参院選挙という政治決戦が迫る。安倍首相は焦りを募らせているようだ。

 あと3週間ほどの国会で一つでも多くの法案を通し、有権者に目に見える成果をアピールしたい。その気持ちは分からないではないが、このところの強引さは度を超している。

 「宙に浮いた年金」を救済するための特例法案を急ごしらえで国会に出し、未明の衆院本会議で押し切ったかと思えば、夜が明けた同じ日に国家公務員の天下りをめぐる公務員制度改革関連法案を衆院で可決させるよう、与党に号令をかけた。

 天下り規制では、民主党も対案を出して審議の続行を求めている。採決強行に踏み切れば、国会の大混乱は避けられなかった。さすがに河野洋平衆院議長が「連日の強行採決は国民から見ていかがなものか」と与党をさとし、きのうの採決は見送られた。

 宙に浮いたり、消えたりしてしまった年金記録をどう救済するか。官製談合の元凶である天下りをどう改めるか。どちらも国民の暮らしや税金の使い方に絡む重要な課題である。一日も早く対策を講じる必要があるのは確かだ。

 だが、郵政民営化総選挙で得た巨大議席の数の力にまかせて、ブルドーザーのように野党をなぎ倒しにして突き進んでいいわけはない。苦言を呈した河野議長の判断は当然のことだろう。

 自殺した松岡氏が受注企業などから多額の献金を受けていた緑資源機構の官製談合事件は、役人らの天下りと引き換えに税金の使途をゆがめる「談合社会」の根深さを改めて見せつけた。

 政府の新人材バンク構想は、そもそも天下りを続けることを前提にしたものだ。それで談合社会の根を断てるとはとても思えない。あっせんを一元化しても、役所の予算や許認可と引き換えに民間が再就職を受け入れる、天下りの構図は変わりそうもないからだ。

 公務員の再就職と役所の権限とが絡む構造をどう断ち切るか。公務員の意欲をそがないような人事制度も含め、幅広く対策を考えねばならない。目先の選挙への思惑から拙速で基本的な制度をいじられては困る。

 年金の問題も同じだ。先月末、社会保険庁改革法案の採決を衆院の委員会で強行した直後、朝日、毎日、日経3紙がそれぞれ行った世論調査で、内閣支持率がそろって過去最低を記録した。そうした拙速ぶりに対する批判の表れだろう。

 新人材バンクの法案は来週、衆院を通過する見込みだが、参院で十分に議論する時間はなさそうだ。年金特例法案や社保庁改革法案にしても、駆け足の審議にならざるを得ない。

 首相は頭を冷やす必要がある。終盤国会ではもっと丁寧な姿勢で課題に取り組むべきだ。

教育再生会議―一から出直したら

 21世紀の日本にふさわしい教育体制を構築し、教育の再生を図るため、教育の基本にさかのぼった改革を推進する。

 これが、安倍首相によって内閣に設けられた教育再生会議の目的である。

 その高らかな宣言と、以下の2次報告書の内容との落差は、どうしたことか。

 ・夏休みや土曜授業を活用して授業時間を1割増やす。

 ・すべての子どもにわかりやすく、魅力ある授業にするため、教科書の分量を増やし、IT化などを推進する。

 ・徳育を教科化する。

 昨秋発足した再生会議は、各界の有識者17人が起用された。学力と規範意識を高めるという狙いに、異論は少ないだろう。私たちは社説で、斬新で骨っぽい提言を求めた。

 だが、今年初めの1次報告書に続いて、今回もやはり期待はずれだった。

 長い議論を経て学校が週休2日制になったのは、ほんの5年前のことだ。学力が低下したから土曜授業で補う、というのは安易すぎないか。

 再生会議の席上、陰山英男・立命館小学校副校長は、土曜授業の復活に反対したといい、会議後、「何時間かけてこれをやらせれば、こんな風に学力が上がるとかそんなもんじゃない」と語った。現場を知る人の率直な思いだろう。

 学力をめぐる最大の問題は、できる子とできない子の格差が広がっていることだ。授業についていけない子を、時間数を増やすだけで救えるとは思えない。

 教科書を厚くしてIT化を進めれば、魅力的な授業になるというのも、いささか的はずれではないか。

 「道徳の時間」を徳育として教科化することにも疑問がある。検定教科書を使うことになれば、政府の考える価値観を教室で押しつけることになりかねない。

 規範意識で思い起こすのは、光熱水費問題などでの故松岡前農水相の説明と、かばい続けた首相の態度だ。子どもが規範を学ぶのは、教室だけではない。

 それにしても、名だたる有識者がそろいながら中身が薄っぺらになってしまったのはなぜだろう。会議の進め方とメンバー構成に問題がありはしないか。

 議事録を読む限り、委員は印象論や体験をもとに提言することが多い。だが、その提言の良しあしをデータに基づいて検証し、論議を深めている様子は伝わってこない。

 その例が「母乳で育児」を提言しようとした「親学」だろう。きちんと論議を詰めていないので、批判されると、あっさり引っ込めてしまった。

 再生会議はさらに論議を重ね、年末に3次報告を出すという。それなら、せめて二つの提案をしたい。

 会議を公開する。論議に緊張感が生まれ、国民の関心も呼びやすくなる。

 オブザーバーとして教育研究の専門家を置く。教育の歴史の中で、提言の良しあしを検証することができるだろう。

【朝日・天声人語】

2007年06月02日(土曜日)付

 新横綱の白鵬が、明治神宮で土俵入りを初披露した。両腕を大きく広げて体をせり上げるのは、「攻め」の姿勢を表す不知火型だ。万緑の中、新しく打った綱の純白が際だっていた。

 清新に響くしこ名は、大鵬と柏戸が覇を競った柏鵬時代にちなむ。周囲はずばり「柏鵬」と考えたが、少し遠慮して木偏をはずしたそうだ。「鵬」は中国の古典「荘子」に描かれた、ひと飛び九万里の伝説の鳥。名前負けしなかったのは、さすがである。

 名前をもらった「柏」と「鵬」は、対照的な気質と取り口で、60年代に黄金期を築いた。柏戸が豪胆なら大鵬は緻密(ちみつ)。柏戸は一直線、大鵬は自在。攻めまくる柏戸を、大鵬が懐深く受けてしのぐ土俵はテレビ桟敷を熱くした。

 70年代には「輪湖」(輪島、北の湖)、90年代末には「曙貴(あけたか)」(曙、貴乃花)と双璧(そうへき)の時代があり、来場所からは朝青龍との「龍鵬時代」である。龍も鵬も外国人なのを、新しいと見るか、寂しいと見るかは、それぞれだろう。だが、22場所ぶりの東西横綱に、賜杯争いの興味が膨らむのは間違いない。

 名行司と言われた第28代木村庄之助さんは、横綱の土俵を数多くさばいてきた。ある雑誌に「戦っているときは獣でいいが、その前後は常に神聖な力人(ちからびと)でなくては」と話している。起居の美しさを欠けば、二枚看板も色あせてしまう。

 不知火型の横綱は、短命に終わるというジンクスがあるという。しかしまだ22歳である。片や朝青龍は雲竜型、26歳。モンゴルも日本も熱くする心技体を磨いてほしい。


【毎日・社説】

社説:教育再生2次報告 もっと時間かけ練り上げよう

 教育再生会議の第2次報告は、学力向上をうたって「ゆとり教育」の否定的見直しを打ち出した第1次報告を具体化した。規範性を高めるため道徳を新しい教科に昇格させ、「効率化を徹底し、かつメリハリをつける」財政で予算や給与に差異をつけ、世界トップランクの大学・大学院を育て上げようという。

 また小学校の英語教育導入や高校の奉仕活動必修化、さらには「親の学びと子育て応援社会」の実現と、提起する諸施策は実に多岐にわたる。1月の1次報告以降わずか4カ月余で十分に論じ尽くしたとは思えない。

 再生会議は1次報告で日本の教育状況を「公教育の機能不全」と表現し、矢継ぎ早に多様な問題提起をしてきた。それには現実の問題が背景にあり、根拠なく諸病状を訴える“不定愁訴”ではない。反発が強く大幅にトーンダウンした「親学」にしても、現実に起きている親による事件や給食費不払いなどの実態を契機としている。

 しかし、だからといって、現状がひとくくりに短絡的に否定されてよいわけではない。

 報告は学校の授業時間を1割増加させる方策として「教育委員会、学校の裁量で、必要に応じ、土曜日に授業を行えるようにする」とした。「学校週5日制を基本としつつ」と前置きはしているが、公立の義務教育で学校選択制が広がる中、引きつけ策として土曜授業再開に弾みがつくのは間違いない。それは学校5日制をなし崩しにまひさせていくことになる。

 5日制は、学校・家庭・地域が連携して「生きる力」の育成を目指す「ゆとり教育」の土台であり、その実施には長い論議と試行があった。92年に月1回で始まり、段階を踏み完全5日制に移行するまでに10年をかけた。

 必要な修正や改廃はすべきだが、それには、問題点は何か、何が原因か、問題を繰り返さないためにはどうするか--などを徹底的に論じ合い、ほぼ共通した認識を分かち合うのが前提だ。

 また道徳は、全教科学習を通じて学ぶことを戦後の基本的な理念としてきた。これを新教科にするなら、道徳で検定教科書を使うことの意味の重大さなどについて丁寧に論を尽くす必要があるが、報告にその気配は感じられない。

 再生会議だけでなく、今の政財界各分野にわたってかまびすしい教育改革論議全体がこうした慌ただしさを帯びている。現場は戸惑うばかりだ。

 例えば、教育関連3法改正を審議している参院文教科学委員会で与党推薦参考人が教員免許更新制について「10年に1度の講習で一律に免許を更新することが教員の資質向上策としてどれほど有効性があるのか疑問だ。まだ審議すべき余地は大きい」と指摘したことなどは象徴的だ。

 安倍晋三政権が掲げる「最重要政策」だからこそ時間をかける。そう腹を据えよう。再生会議の報告でお墨付きを得たとばかり駆け出すような実施は、長く悔いを残す大失策を招きかねない。

毎日新聞 2007年6月2日 東京朝刊

社説:住民票裁判 子供の立場優先して当然だ

 東京都世田谷区の事実婚の夫婦に生まれた女児の住民票をめぐる裁判で、東京地裁が無戸籍を理由に住民票を作成しないのは違法として、同区に作成を命じる判決を下した。夫婦が出生届に「嫡出でない子」と記すのを拒んだため、女児は無戸籍状態に置かれているが、判決は女児に不利益を生じさせてはならないとクギを刺した。

 初めての司法判断というが、一部の自治体では無戸籍の子にも住民票を認めている。先行した行政手続きを司法が追認した格好だ。戸籍の有無によって行政サービス面で差別されるべきでないとの考え方が定着しだしており、もとより無戸籍は子の意思によるものでもない。住民票は出生届を基に作成するのが原則としても、誕生の事実が明確ならば作成しない方が不自然でさえある。行政サービスのためだけでなく、行政側には居住者を把握する義務があるとも考えるべきだろう。判決は妥当と言え、自治体の前向きな取り組みを促すことになりそうだ。

 直接争われていたわけではないが、訴訟では、事実婚やシングルマザーの登場など時代の変化への対応が問われていた。家族法が曲がり角に立たされていることは否めず、戸籍のあり方自体を問い直そうとする声もある。遺産の法定相続分を嫡出子と非嫡出子とで差別する規定などは、憲法の平等原理に抵触する、との指摘もある。民法の「300日規定」をめぐる議論が高まる折、「前夫の子」と戸籍に記されることを嫌って無戸籍になっている子の救済を求める動きも、判決で勢いづきそうだ。

 しかし、戸籍は日本国民であることを確定し、家族の法的関係を安定させる重大な役割を果たす。養育、扶養の義務を明確にし、健全な親子関係を培うためにも機能している。法に違背する以上、リスクやトラブルを覚悟すべきであることも言うまでもない。「罪のない子の救済」を名分にして、親による確信的な行為をなし崩し的に容認する動きが広がることが、好ましいとは考えにくい。

 「300日規定」にしても、幼児虐待や少年非行の中に父母の再婚に起因するケースが目立つことなどを踏まえれば、見直しへの慎重論が根強いのは無理からぬところだ。戸籍に関するトラブルは、一義的には個別事例ごとに家裁の調停や審判などで解決を目指すべきであり、その際の手続きや運用の利便性を高める改善策を講じることが先決でもある。

 一方で、社会の変革が進み、家族や結婚のあり方も大きく変化しているのに、多くの人々が固定観念にとらわれているとすれば、望ましい状況ではない。旧来の家族制度のくびきが少子化の一因ともされている。欧米諸国などでは法律上の婚姻にこだわらぬカップルが増え、国によっては嫡出子よりも婚外子が上回っている現実にも注目する必要がある。

 判決を機に、家族観の変質や多様化を直視し、理解するようにも努めながら、家族法についての論議を深めていかねばならない。

毎日新聞 2007年6月2日 東京朝刊


【読売・社説】

教育再生会議 第2次報告の論点を深めよ(6月2日付・読売社説)

 安倍首相直属の教育再生会議が第2次報告をまとめた。

 今年1月の第1次報告に盛り込んだ「ゆとり教育の見直し」について、今回いくつかの具体策を示した。

 目玉となるのは、授業時数を10%増やす策として、「土曜授業」を挙げたことだ。夏休みの短縮、朝の15分授業などとともに選択肢の一つとされた。

 ただし現行の「学校週5日制」という基本は崩さない。教育委員会や学校の裁量で、必要に応じて土曜授業を可能にするという提言だ。

 6日制から5日制への移行の経緯、私立学校の半数が依然6日制を採用している現状、保護者や教員らの意識動向など、掘り下げた議論を進めてほしい。

 土曜授業の復活について、再生会議としての検証、評価を示し、現場が責任を持って選択できる体制を作ることが必要だろう。

 「徳育」は当初、国語、算数などと同等の教科とする方向だった。だが、中央教育審議会の山崎正和会長が「教科で教えるべきでない」と発言するなど異論も出始め、報告書では「従来の教科とは異なる新たな教科」にとどまった。

 数値での成績評価は行わない。教科書はつくるが、副読本などと併用し、担任教師が教える。教員による運用の仕方が今後、問われることになるだろう。

 1次報告にはなかったテーマが大学・大学院改革だ。卒業資格の厳格化や、優秀な海外の学生を集めるため9月入学枠を増やし、英語授業を拡充することなど多様な提言をしている。国立大学の大胆な再編統合も打ち出した。

 注目されるのは、これら大学改革のため、効率化、成果主義、実効性ある分野への「選択と集中」といった競争原理に基づく教育財政改革案を示した点だ。

 財務、文部科学両省の間で論争になっていた国立大学の運営費交付金の配分法についても、報告書は「努力と成果を踏まえた新たな配分の具体的検討」を提唱している。

 単純に予算の効率化の観点から競争原理導入を迫る動きに、再生会議が同調することがあってはならない。

 公立小中高校の教員給与も、教員評価によるメリハリある支給に改めるよう提言している。ただ、その評価を、だれがどこで、どんな基準で行うのかは示されていない。

 過度の競争原理導入は、教育現場に混乱をもたらす。再生会議の今後の検討課題には、「教育バウチャー」制や公立学校への効率的予算配分なども挙げられているが、慎重な議論を望みたい。
(2007年6月2日2時23分  読売新聞)

コメの輸出 中国の富裕層にどう売り込む(6月2日付・読売社説)

 農林水産物の輸出促進のテコになるのだろうか。

 日本と中国が、日本産米の輸出再開で合意し、今月半ばにも第一陣のコメが出荷される。

 中国は4年前に農産物の検疫制度を見直し、それまで認めていた日本産米の輸入を禁止した。しかし、今年4月の温家宝首相来日の際、関係改善の一環として、日本が害虫駆除を徹底することなどを条件に、容認に転じた。

 世界最大のコメ消費国である中国で日本産米が受け入れられれば、画期的な出来事だ。コメは基幹的な農産物だけに、国内農業の将来にとって、明るい材料となろう。

 日本は、農林水産品の輸出拡大に力を入れている。2006年に3700億円だった総輸出額を、2013年に1兆円に増やすことを目指している。

 昨年のコメの輸出量は約1000トン、金額はわずか4億円だったが、2年前の2倍以上だ。台湾や香港向けが伸びており、中国本土の門戸が開けばさらなる拡大が望める、と関係者は強気だ。

 中国では経済発展で沿岸部を中心に所得水準が上がり、価格が多少高くても、おいしい食品への関心が強まっている。例えば水産品では、高級マグロやエビ、アワビなどの輸入が増えている。

 問題は、日本産と中国産のコメの大幅な価格差である。中国では一般的なコメの小売価格は1キロ=50~60円程度という。一方、日本では1キロ=300~400円が標準的だ。

 輸送費などを考慮すれば、中国本土での価格は、台湾や香港と同じ1キロ=800~1000円程度になるという。

 ただ、日本産米の味の良さは中国でも定評がある。農薬が少ないなど、安全性でも注目され始めた。すしなど日本食の人気も高まっている。日本を訪れた中国人観光客の中には、コメを土産として持ち帰る人も少なくないという。

 中国のコメ消費量は年間約2億トンだ。シェア1%で200万トン、0・1%でも20万トンとなる。日本の年間生産量850万トンから考えれば相当な量だ。コメが余剰になっている日本から見て、実に魅力的な市場といえよう。

 農林水産省は輸出を後押しするため、今月から7月にかけ北京や上海で日本産米の試食会などを開く計画だ。農業団体は駐在員を常駐させ、本格的に市場開拓に乗り出す。

 戦後、自動車や家電などメイド・イン・ジャパン製品の輸出では、品質の優秀さと、地道な営業が成果を生んだ。政府や農業団体、輸出業者らが一体となって市場開拓に当たらねばならない。
(2007年6月2日2時23分  読売新聞)

【読売・編集手帳】

6月2日付 編集手帳

 東京駅の赤レンガの駅舎に向かって歩いていくとき、中央の大時計が見えてくると決まっていつも、“虎造節”が口をついて出る。俳優の小沢昭一さんが随筆集「散りぎわの花」(文芸春秋)にそう書いている◆「清水次郎長伝」で一世を風靡(ふうび)した浪曲師、二代目広沢虎造は若いころ、電機会社に勤めていた。大時計を取り付ける作業に加わり、趣味の浪花節をうなりながら汗を流した、という伝説が残っている◆建築家、辰野金吾の設計による鉄骨レンガ造りの東京駅は1914年(大正3年)12月に完成した。虎造が上方の浪曲師広沢虎吉のもとに弟子入りする3年前のことである◆「壮麗」という言葉に形を与えたかのような、日本の近代建築を代表する駅舎は、空襲でドーム形の屋根などが焼け落ちた。戦後の応急処置で現在の姿になって60年がたつ◆戦災前の姿に復元する工事が先月末から始まった。5年後の春には、若き日の虎造が目にしただろう創建時の威容がよみがえる。虎造ファンの小沢さんがうなる浪花節にもきっと熱がこもるに違いない◆旅ゆけば駿河の国に茶の香り…。東京駅から新幹線に乗って静岡あたりに差し掛かっても、今では虎造節を口ずさむ人も稀(まれ)だろう。「なにはぶし夜のラジオに聞きながら眠りし人はいづこに行きぬ」(小池光)。歳月である。
(2007年6月2日2時23分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】教育再生会議 評価したい徳育の教科化

 政府の教育再生会議が第2次報告で、道徳の授業を見直し、「徳育」を新たな教科とすることなどを提言した。学力とともに規範意識を身につけ、豊かな感性や情操を育(はぐく)むことは、教育再生のため重視すべきで、評価したい。

 徳育の教科化については、一部から異論があったが、土曜授業の活用など「ゆとり教育」見直しの具体策とともに提言の柱になった。

 小中学校で週1時間ある「道徳の時間」は、思いやりや生き方などを考える貴重な授業のはずだが、進路指導や別の授業に流用されるケースもあった。副読本などを使っておこなっているものの、学校や教師によって授業内容に大きな差がある。

 提言では教科書をつくることにも踏み込み、多様な教材の活用が提案された。教科になり教科書をつくるようになれば、教材の工夫や指導法の研究も進むだろう。

 教師の力量が問われる授業でもある。子供たちはテレビや雑誌、インターネットなどでさまざまな情報に接しており、「生半可なエピソードでは子供たちはなかなか乗ってこない」という声も聞く。子供の心をとらえ考えさせる教材や授業が欠かせない。

 提言では点数による評価はしないとしたが、記述式などの評価は工夫しだいでできる。道徳教育に詳しい昭和女子大の押谷由夫教授(教育学)は「評価を通じて子供たちを見る目が養われる」という。教師の指導力向上にもつながるはずだ。

 子供をめぐる問題や事件の多発で、小中学校では外部講師を招くなど道徳教育に力を入れる傾向が出ている。フリーターやニートなど若者の問題を背景に、茨城県では全県立高で今年度から「道徳」が必修化されるなど徳育重視の動きがすでに始まっている。

 親学の緊急提言は見送られたが、今回の報告で「親の学びと子育てを応援する社会へ」とし、早寝早起きなど規則正しい生活やあいさつ、礼儀作法などを学校や家庭、地域が連携して身につけさせることも盛り込まれた。

 徳育充実と共通する背景には、子供のしつけが満足にできない保護者の問題がある。学校のせいばかりにせず、保護者も提言を受け止め、連携を深めなければ教育再生は実現できない。

(2007/06/02 05:06)

【主張】新農水相人事 首相の支え改革に不可欠

 安倍晋三首相は、自殺した松岡利勝前農水相の後任に、初入閣となる赤城徳彦氏を起用した。農水省官僚を経て政界入りした農政通であり、年齢も48歳と若い。即戦力と清新なイメージをねらった無難な人事といえる。

 赤城氏は自民党政調副会長として、直前まで参院選公約のとりまとめにあたっていた実務派である。まずはその手腕に期待したい。

 首相にとって、この後任人事は、年金記録の紛失問題などで揺らぎかけている政権を立て直すきっかけにすべきものでもある。

 昨年末、佐田玄一郎氏の辞任を受けて起用された渡辺喜美行革担当相は、就任早々、公務員の天下り規制問題に直面した。

 渡辺氏は、各省庁や与党との間に大きな軋轢(あつれき)を生みながらも、「新人材バンク」の制度設計に奔走し、安倍政権の特色を出すことに貢献したといえるだろう。

 その過程では、霞が関の官僚組織や自民党実力者の間から、公務員の再就職を官邸サイドが一元管理しようとすることに激しい抵抗があった。

 しかし、首相は一貫して渡辺行革相を支持した。短期間で結論を得る上で重要なことだったといえる。

 もっとも、肝心の公務員制度改革法案の行方は、1日の衆院可決を求めた首相の指示が、ひと晩で週明けに変更されるなど揺れている。あわてず、ぶれない首相の姿勢が肝要である。

 農政には、年内合意に向けて山場を迎えている世界貿易機関(WTO)ドーハ・ラウンド交渉や、豪州との経済連携協定(EPA)の推進などの課題が山積している。

 農水相は諸外国との厳しい交渉に臨む一方で、自由化に反対する農業団体の説得にもあたる難しいポストである。国内対策では、自民党内や支持団体を押さえ込む腕力も必要だ。

 首相はコメの中国輸出など「攻めの農政」にも取り組んだ松岡氏の能力を評価していたが、松岡氏は十分な結果を出せないまま去った。

 赤城氏の力量は未知数だ。国内で積極的に農業改革を進めるには、首相の強力なバックアップがここでも必要となる。与党側も新農水相との緊密な連携が欠かせない。

(2007/06/02 05:06)

【産経抄】

 新横綱・白鵬の土俵入りは不知火型で行うという。朝青龍の雲竜型が「せり上がり」のとき、片手を脇腹に当てるのに対し、こちらは両手を大きく広げる。背中の綱の結び方も少々違うようだ。全体として不知火型の方が華やかな印象を受ける。

 ▼ところが歴代、不知火型で土俵入りした横綱は「短命」に終わることが多かった。そのためこの「型」はあまり人気がなく、雲竜型の方が圧倒的多数を占めてきたのだという。白鵬があえてこの少数派を選び、ジンクスに挑戦するのにはちょっとした理由がある。

 ▼大相撲の世界は「一門」と言われるいくつかの派閥に分かれている。白鵬が所属する宮城野部屋は立浪一門である。その立浪一門から出た横綱は、豪快な力相撲で知られた羽黒山や、美男力士として人気があった吉葉山をはじめ、ほとんどが不知火型を用いてきた。

 ▼ことに吉葉山は宮城野部屋を再興した横綱である。白鵬としては、一門の「型」を伝承するためにも、不知火型の土俵入りを披露していくことになったようだ。モンゴル出身の若者が日本の古い伝統を背負っていこうというのだから、どこかほほ笑ましくも思えてくる。

 ▼それはいいが、政治の世界でいつまでも「型」にこだわるのはいかがだろう。今国会終盤、民主党は何でも反対の党に変じた。委員長の口をふさぐという新戦法は加わったものの「実力」や不信任案乱発で採決を阻止しようとする。これこそ旧社会党の「お家芸」だった。

 ▼社会保険庁の年金記録紛失は政府の責任である。だから、抵抗姿勢を示した方が世論の支持を得られるとの計算かもしれない。だが反対政党という「型」から抜け出せず、崩壊にいたった旧社会党の「悲劇」も忘れてはならないのだ。

(2007/06/02 05:04)


【日経・社説】

社説1 システム障害防止へIT人材の育成を(6/2)

 通信、航空、鉄道など日本経済を支える重要インフラでシステム障害が相次いでいる。NTTのIP(インターネットプロトコル)電話や全日本空輸の搭乗システム、JR東海の新幹線ネット予約システムなど、先月だけで5件以上のトラブルが起きた。重要インフラは国民への影響が大きいだけに、各事業者は原因究明と対応策を急いでほしい。

 トラブルはシステムを更新した際のプログラムミスなどが原因で、人災の色彩が強い。最近はネット予約や決済に対応するため、従来の基幹システムにIPベースの新しい端末をつなぐ例が増えている。その際に処理がうまくなされず、情報の滞留が事故に発展するケースが多い。

 国内線の搭乗手続きができなくなった全日空は、1988年に導入した基幹システムに新しい端末を接続、両者間で情報を変換して処理してきた。今回のトラブルはその接続装置の更新が原因とみられるが、詳しいことはまだわかっていない。

 光ファイバーによるNTTのIP電話は2005年春の不具合以来、10回もトラブルが発生した。100年の歴史がある固定電話に対し、IP電話は登場したばかりの技術で、故障原因も毎回異なり、改修してもモグラたたき状態が続いている。

 IP技術は情報を安く大量に処理するのに適しているが、ひとたび許容量を超えると全体に支障を来す。しかも個人がパソコンや携帯電話から接続できるようになり、想定外の注文が集まる場合がある。6億円の賞金が注目されたサッカーくじや、05年秋の東京証券取引所のシステム停止などはそれに該当する。

 問題はIP技術に精通した技術者や開発を統括できる経験者が日本には少ないことだ。米国の技術だけに、大手情報企業でも個々の機材は外国製に頼っている例が多く、技術面でのブラックボックスがある。若者の理科系離れが進み、特に情報分野は新3K(きつい、厳しい、帰れない)職場として敬遠されている。

 日本ではIT(情報技術)の専門教育を受けた人材は年間1万人弱しか誕生しないが、インドや中国はその20倍に上る。団塊世代の技術者が退職すると日本のコンピューターが動かなくなるという2007年問題が指摘されたが、先月の状況を見る限り冗談でなくなってきた。

 システム会社の業界団体、情報サービス産業協会が対策作りに乗り出したが、本来は国を挙げてIT人材の育成を進める必要がある。重要インフラの安全性のみならず、日本経済の信頼性が問われている。

社説2 「道徳」の教科化は短絡的だ(6/2)

 教育再生会議が第2次報告で、道徳教育を「徳育」として教科に格上げするよう求めた。今年度中に学習指導要領を改訂するべきだとしている。教員免許は設けず、点数評価もしない「新たな教科」と位置付けているが、疑問の多い提言である。

 2次報告には、教育委員会などの裁量による土曜授業実施や大学9月入学の大幅促進、教員給与体系の見直しなど様々な提案が並ぶ。このうち大きな柱のひとつは道徳教育の充実など規範意識の向上策である。

 たしかに戦後の学校教育は知識の詰め込みに追われ、「知徳体」のバランスに欠ける面があった。ルールを守り、他者を思いやり、生命を尊ぶといった道徳観念が揺らいでいる。そんな不安が社会にはある。

 しかも、地域や家庭の教育力が低下し、インターネットなどには有害情報があふれている。「心の教育」がこれまで以上に重要になっていると多くの人が考えているだろう。

 だからといって、なぜ教科にすることにこだわるのだろうか。

 現在でも小中学校には週に1回「道徳の時間」がある。教科ではないから授業に熱が入らないとの指摘もあるが、多くの学校では効果的に教えようと工夫を凝らし、教育全体のなかで道徳に取り組んでいる。

 その充実を唱えるならば教科という形に固執するのではなく、現場の創意工夫を助け、授業を興味深くする手立てを探るべきである。教科にすれば文部科学省による統制が強まり、微妙な価値観を含む道徳教育が硬直し、画一化する懸念がある。

 提言では点数評価はしないとしているが、教科である以上、何らかの評価は伴うだろう。それでは、道徳心というものをかえって矮小(わいしょう)化するのではないか。

 再生会議は検定教科書導入も今後の課題としている。これはさらに問題が大きい。検定教科書となれば、文科省が重箱の隅をつつくように記述をチェックすることになろう。

 中央教育審議会の山崎正和会長は個人的見解としたうえで、「道徳を学校で教える必要はない」とまで述べている。この発言には道徳の取り扱いの難しさがにじんでいる。教科にすれば規範意識が向上すると考えるのはあまりにも短絡的である。

【日経・春秋】

春秋(6/2)

 「いずれ菖蒲(あやめ)か」は「どれも優れていて選択に迷う」ことだが時に「どなたも美しい人ばかり」の意味にも使う。美人薄命の言葉どおり、花菖蒲(はなしょうぶ)の一輪の命は4日ほどだそうだ。花菖蒲園では毎朝、しおれてしまったのを摘み捨てる「花殻(はながら)摘み」に忙しくなる。

▼400種150万本を植えた東洋一の花菖蒲園、千葉県香取市の水郷佐原水生植物園でうかがった話だ。「あやめ祭り」が始まった園には「天候不順のため現在二分咲き」の看板が出ている。「花が育つのに必要な、冬寒く春暖かい順調な季節の運びが今年はなくて、冬が暖かく春に冷え込んだのが響いた」という。

▼昨日発表した今年の防災白書は「災害リスク認識を高め、多様な主体の行動を」がテーマだ。平たく言えば「災害の危険が高まっている事実に目を向け、家庭や企業で自らを守る備えを」だろうか。地球温暖化による気候変動で大雨・台風被害がひどくなる恐れを、初めて指摘してもいる。

▼列島が梅雨入りすれば花菖蒲は盛りになる。首都圏の水源である利根川水系のダム、近畿圏の琵琶湖のいずれも水位は十数年来の低さで、そのうえ今年の夏は暑いと予報されているから、梅雨に大地を十分潤してほしいとも思うが、暴れ梅雨は怖い。「いずれの異常気象がましか」と問われたような困った気分だ。


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» 乱と役、城と柵(1) [日本の歴史@これがキーワード]
乱というのは単なる国内の反乱、役というのは戦争、城というのは古代では中央朝廷が作った要塞、柵というのは俘囚(ふしゅう)側の作った要塞似たような意味でも、使い分けたようです。では、まず“役”について、前九年の役を簡単に説明します。日本史では、戦争のこと...... [続きを読む]

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