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2007年6月 4日 (月)

6月4日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】

社説(2007年6月4日朝刊)

[「集団自決」と軍命]「魂の叫び」に応えたい 「軍が駐留した島で起きた」

 「あの悲劇は、決して自発的な死ではない。軍隊が駐留していた島でしか起きていない。日本軍の命令、強制、抑圧によって死に追い込まれたのです」

 十六歳の時、生まれ故郷の渡嘉敷島で「集団自決」を体験した金城重明氏(沖縄キリスト教短期大学名誉教授)は、言葉を一つずつかみしめるように静かに語った。

 文部科学省の教科書検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」削除を求める検定意見がついた問題で二日、那覇市内で開かれたシンポジウム「挑まれる沖縄戦―『集団自決』検定を問う」(主催・沖縄タイムス社)。

 金城氏は「皇軍の支配は一木一葉に至るまで及んだ。軍の命令以外に住民の死はあり得なかった」と、あらためて軍命があったことを証言した。

 沖縄戦の悲劇の極みとも言うべき「集団自決」は、米軍が上陸した一九四五年三月二十七日をはさんで、二十六日に慶良間諸島の座間味島と慶留間島で、二十八日に渡嘉敷島で起きた。

 三つの島々で約七百人の住民が犠牲になったが、金城氏は日本軍の海上挺身隊が配備された島々でしか、集団自決が起こっていないことを強調している。

 日本軍の命令があったかどうかについては、大阪地裁で係争中の訴訟で元戦隊長から軍命を否定する意見陳述がなされている。

 しかし、軍命の物的証拠がないからといって「強制はなかった」と言い切れるのかどうか。

 集団死には、当時の住民が軍や官と運命を共にする「共生共死」や「鬼畜米英」への恐怖心、「生きて虜囚の辱めを受けず」(戦陣訓)の軍国思想などさまざまな要因が複雑に絡んでいる。

 沖縄戦では、方言を使っただけでスパイ行為をした者として死刑になるなど虐殺された住民も少なくない。

 軍の命令があったかなかったかは、必ずしも言葉による命令があったかなかったかだけで決められるものではないことを見落としてはなるまい。

強制された「軍民共生共死」

 軍は「米軍の捕虜になるな」と命令するとともに、「いざという時」のために、住民に手りゅう弾を配っていたという証言が数多くある。

 そうした状況下で米軍が上陸し、住民が手りゅう弾などで自決したことは、まさに日本軍の強制、誘導があったと言ってしかるべきだ。

 安仁屋政昭・沖縄国際大学名誉教授は「合囲地境」という旧戒厳令の用語を使って、軍命の存在を指摘した。

 陸海空ともに敵の包囲、攻撃などに直面した状態で、「軍民共生共死の一体化が強制された」と指摘している。

軍の圧力や誘導がなければ、集団死も起こらなかったとみることができる。

 高嶋伸欣琉球大学教授は「沖縄がしっかり意思表示すれば、検定意見を変えさせることは可能だ」と述べ、検定撤回に向けた取り組みの必要性を訴えた。

 県内の市町村議会では「軍命」削除に異議を唱え、検定意見の撤回を求める意見書の採択が十市町村を上回り、今後も増える見通しだ。

 四日には、東村の東中学校三年生全員が同村議会に検定意見の撤回を求めて請願書を提出する。

 「教科書から歴史的事実を削らせてはいけない」という子どもたちのけなげな訴えに、土砂降りの雨が上がり、明るい日が差したような安堵感がわいてくる。

「政治介入」と自民反対

 だが、県議会最大会派の自民党は「会派内で賛否が分かれ意見が一致しなかった」として六月定例会で検定意見の撤回には賛成しない方針だ。

 「軍命の有無が係争中の裁判で焦点になっている段階での意見書は、司法への政治介入になる」と、反対意見があったという。

 県議会は、八二年に文部省(当時)が今回と同様に「住民虐殺」の記述を削除しようとした際、全会一致で意見書を採択、記述を復活させた経緯がある。

 県民の自治に関する意思決定機関であり、県民意思を代弁し、行動する意味は重い。

 屋嘉比収沖縄大学准教授は「今回の教科書検定を「沖縄戦を学び直す機会にしたい」と提案した。

 軍命関与の真実を究明し、無残にも自決した人たちの「魂の叫び」に応えたい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】

大弦小弦 (2007年6月4日 朝刊 1面)
 那覇の小高い場所や西海岸から本島北部に視線を向ければ、なだらかな稜線の上にそれは見ることができる。数十キロ離れた地からでも確認できるほどだから、その巨大さが分かる。

 読谷村内にある米軍楚辺通信所の本格撤去が、先月末から始まった。高さ約三十メートルのアンテナ三十基から成る円状の施設は、直径約二百メートルにもおよぶ。名付け親は知らないが、まさに「象のオリ」とはよく言ったものだ。

 広大な嘉手納飛行場とともに米軍の構築物の中でも際立つ巨大さは、戦後の沖縄を威圧してきた象徴だったように思う。本紙一日付朝刊社会面では、オリの一角が重機によって崩され、アンテナらしき金属柱が力なく横たわっている。かつて県民を見下ろしてきた面影は見当たらない。

 そして忘れてはならないのが、やはり一九九六年四月以降の国による一年間の不法占拠だろう。当時の大田昌秀知事の機関委任事務拒否で米軍用地の使用契約が切れ、法によって国家を運営する政府が自ら法を犯してしまった。

 その後、国は米軍用地を暫定使用できる特措法を改正。施行以前にも遡及適用できるという、つじつま合わせで事態を乗り切った。その手法はそれまでの政府の基地政策を露呈した事例といっていいだろう。

 今年六月には、「象のオリ」も完全に姿を消す。だが、政府の不法占拠の事実は消えることはない。さらに大部分の巨大な基地は依然として残されたままだ。(比嘉弘)


【琉球新報・社説】

中国産事故多発 輸入品に厳格な検査を

 中国産の有毒原料を含んだ食品や医薬品の事故が各国で相次ぎ、消費者に警戒感と不信感が広がっている。せき止め薬で約100人が死亡した国もあり、見過ごせない。日本を含む各国は、中国からの輸入品に厳格な検査を導入するなど「食の安全」に万全を期す必要がある。
 事態を放置してきた中国政府の責任は重い。輸出品の管理強化にとどまらず、製造者のモラル低下や企業と癒着する役人の腐敗問題などに一段と目を光らせ、危険な食品がまん延する状況を根絶してもらいたい。
 私たちの日常生活に「メード・イン・チャイナ」の文字が目に付くようになって久しい。スーパーなどでは生鮮食品をはじめ、加工食品の内容欄に「輸入国・中国」の表示がかなり増えた。安価で品質もまずまずというのが普及の背景にあるが、安全性に対する懸念はくすぶっていた。
 そんな中で、今回の事態は起きた。死者を出す重大な事故は、輸入する食料品に検査済み証明書の添付を求めない米国や中米を中心に広がっており、日本では比較的騒ぎになっていない。基本的には安全性が十分に確認された食品しか販売していないことがあるが、これだけ他国で深刻な健康被害が相次ぐと「対岸の火事」とも言っておれない。
 米国では、中国が輸出した化学物質「メラミン」を含むペットフードを食べたとみられる猫や犬が相次いで死んだ。パナマでは中国製のせき止め薬に有毒な原料が含まれ、多数の死者を出した。中国産の練り歯磨きからも致死量の有毒物質が検出され、米食品医薬品局はすべての練り歯磨きの積み荷を検査すると発表した。
 中国は改革・開放路線で拝金主義がまん延し、製造者のモラルが低下したとされる。これを助長しているのが、地方を中心に横行する役人の不正で、偽物天国の印象すらある。2001年以降に限っても、プラスチックで光沢をつけた毒コメ、ブタの廃棄物でつくった肉まん、下水から抽出した油で揚げたパン、古革靴を煮てつくった偽牛乳、髪の毛を混ぜた偽しょうゆ、でんぷんや樹脂でつくった偽卵などが危険食品として問題になった。驚きを通り越し、あきれるばかりだ。
 こうした違法な食料品が大量に出回っている実態は、中国当局も認め、今後、検査に合格した食料品だけを輸出する考えを示している。当然の方針だろう。
 ただ、油断はできない。日本政府は、安全・衛生検査強化策を中国任せにすることなく、不明な点は徹底して中国側にただす取り組みが求められる。人間の体内に入るものだけに、これまで以上に強い姿勢で臨むべきだ。

(6/4 10:09)

内閣支持率急落 厳しい視線受け止めよ

 安倍内閣の支持率が35・8%と政権発足以来、最低になった。社会保険庁の年金記録不備問題や「政治とカネ」問題で追及された松岡利勝前農相の自殺が影響したとみられるが、今度ばかりは安倍晋三首相も、世論調査に「一喜一憂しない」とは言えまい。調査に表れた世論の批判を重く受け止め、一連の問題に真正面から向き合ってほしい。
 本紙加盟の共同通信社が1、2両日実施した全国緊急電話世論調査によると、内閣支持率は5月中旬の前回調査から11・8ポイント下落した。無党派層に至っては13・2%まで落ち込んでおり、世論の「安倍離れ」が顕著だ。
 松岡前農相の光熱水費問題を擁護し続けた首相に対しては、任命者としての「責任を果たしていない」と回答した人が自民支持層で46・8%、公明支持層では66・4%に上った。与党支持層も厳しい視線を向けている実態は、首相にとってショックであろう。
 政治とカネにまつわるうわさが絶えない人物を、政権誕生の功労者として閣僚に指名した責任。疑惑発覚後も一貫してかばい続け、内閣に留めた責任。さらに現職閣僚の自殺という異常な事態を招いた責任。いずれも問われてしかるべきで、うやむやにできないことを強く認識すべきだ。
 支持率急落のもう一つの要因は5千万件にも上る「宙に浮いた」年金問題だろう。批判が噴出するや首相は、救済策を提起し、衆院で年金時効撤廃特例法案の強行採決に踏み切った。しかし、同法案は社会保険庁と加入・受給者双方に記録がない場合の判断基準があいまいだ。どこまで救済されるか不透明な部分が少なくない。
 そもそも、膨大な年金が宙に浮いた責任はどうなったのか。支持率の急落は、責任の所在を明確にしない政権運営に対し、国民の厳しい視線が向けられたからにほかならない。
 一方の野党も、国会で一連の首相責任を追及し切れていない印象がある。会期末が迫っているが、参院選にらみの駆け引きなどではなく、国民の目線で中身のある論戦を期待したい。

(6/4 10:07)

【琉球新報・金口木舌】

 TBS初のニュースキャスターとして活躍した参院議員、田英夫さん(83)が今期限りで引退する。田さんは海軍特攻挺部隊の生き残りで「沖縄に行った同じ部隊は全員戦死した」
▼62年前の沖縄戦は航空機が米艦船に体当たりする特攻をはじめ、戦艦「大和」の出撃、人間魚雷、陸海軍の特攻挺など、命と引き換えにしたあらゆる特攻が実行された
▼航空機の特攻に対して米軍は、強力なレーダーを使って特攻機の位置を割り出し、迎撃機に待ち伏せさせた。それをくぐり抜けても、15メートル以内に接近すれば爆発する信管を付けた対空砲が火を噴いた
▼米軍は特攻機対策を重ね、1945年5月末には「神風特攻の脅威を自信を持ってはね返すところまで来ていた」(ニミッツ元帥)
▼一方、特攻隊員は米軍の防空システムに対する情報を部隊に戻って報告できない。生還を許されなかったからだ。無策のまま20歳前後の若者が次々と戦死した
▼特攻隊員の「青春群像を表現した」と語る県出身監督の作品が全国で上映中だ。しかし、特攻を命じた軍、国家の戦争責任は描かれない。「戦争の愚かさを知らない人が多くなった」(田さん)今、過去と真摯(しんし)に向き合う姿勢を忘れたくない。

(6/4 9:45)


【東京新聞・社説】

穀物の高騰 マヨネーズは警告する

2007年6月4日

 米国のエネルギー政策が、日本の食卓に波及する。グローバル化した食べ物の供給線は、国際情勢や地球環境のささいな変化に大きく揺れる。輸入依存の飽食ニッポン。このままでは続かない。

 最大手のキユーピーが六月から、マヨネーズを十七年ぶりに値上げした。原料の食用油が急騰したためという。

 急騰の理由は、トウモロコシだ。輸出量の七割を占める米国でトウモロコシの相場が跳ね上がり、大豆からトウモロコシに転作を図る農家が後を絶たない。

 「トウモロコシ特需」がはじけるきっかけは、一月のブッシュ米大統領の一般教書演説。十年後にガソリン消費量を二割削減、代替燃料の供給量をバイオエタノール換算で七倍に増やす方針を打ち出した。

 バイオエタノールは、トウモロコシからつくる。シカゴ商品取引所の相場は翌月二倍になった。

 トウモロコシの生産量の六割は家畜の飼料に回る。牛肉一キロを作るのに十一キロのトウモロコシが必要だ。肉類や乳製品にも値上がりの気配がある。バイオ燃料先進国ブラジルでは、原料のサトウキビを増産するためオレンジ畑がつぶされており、砂糖やジュースも高くなりつつある。

 オーストラリアの干ばつによる大凶作で、小麦の値段も上がっている。大豆は豊作だが、中国の輸入が増えて高値が続く。

 米国、中国、エネルギー対策や温暖化…。グローバル時代の食卓は、複雑に絡み合うさまざまな要素の微妙なバランスの上に乗っている。

 国際市場で食べ物を確保する努力は引き続き必要だ。だが、地球では、八億人以上が飢えている。一方で、水産物に見られるように他国との競合も多くなり、経済力にものをいわせて世界中から食べ物をかき集められる時代ではなくなった。

 日本の食料自給率は40%。その危うさを今あらためてかみしめたい。

 国内でもバイオ燃料への期待は高い。だが、資源作物には頼らずに、稲わらや廃木材など、食べられない物や部分を活用する技術を確立し、世界に示す気概がほしい。

 全体で埼玉県ほどの広さになる耕作放棄地を、エネルギーの“畑”として再利用できないか。

 消費者も気持ちを切り替えたい。

 ありあまる「モノ」を食い散らす暮らしをやめて、限りある「いのち」をいただく感謝を取り戻そうと、マヨネーズの値上げは告げている。

 手始めに、年間二千万トンを超える食品廃棄物を減らす工夫を、家庭でも始めてみてはいかがだろうか。

米国とイラン 核問題でも直接対話を

2007年6月4日

 イランが国連安保理決議を無視してウラン濃縮活動を継続中だ。解決への道筋はみえてこない。事態打開の試みとして、米国とイランがイラク問題に続き核でも直接対話に踏み込んだらどうか。

 ドイツで開かれた主要八カ国(G8)外相会合はイランに対し、安保理決議が定める、すべてのウラン濃縮関連活動を停止する義務の履行を強く要求した。主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)議長国ドイツのメルケル首相はイラン核問題を主要議題にすると表明している。

 イランは核開発計画が平和利用目的であると主張してきたが、国際原子力機関(IAEA)は最近「イランが濃縮活動を拡大している」と安保理に報告し、エルバラダイIAEA事務局長は「三-八年以内の核兵器製造」の可能性を指摘した。

 国連安保理は二回、イランへの制裁決議を採択し、加盟国に核・ミサイル関連技術の移転禁止、武器の全面禁輸、イランの核関連組織の金融資産凍結などを義務づけた。イランの新油田開発に対し外国からの投資が差し控えられるなど、影響が出始めている。

 イランの強硬路線は国際的孤立を深めるばかりだ。制裁が長期化すれば、国民生活が圧迫される。政治指導者らは、安保理決議を順守し、国際社会の要求に誠意を示す賢明な選択をするよう重ねて求めたい。

 米国とイランは、一九八〇年の断交以来初めて大使協議を行った。イラク問題に限ってはいるが、二十七年ぶりの公式協議であり、その意義を評価したい。両国が対立する政治宣伝を繰り返してきたことを考えれば、直接対話は相互の主張を理解する一助となることは確実だ。

 今回の大使協議を契機として、核問題や中東・湾岸地域の安全保障など包括的な対話へと発展させることが望ましい。それが、両国にとってプラスになることは間違いない。

 ブッシュ米政権は、空母を含む艦艇をペルシャ湾に派遣し、イラク戦争開始直前を思い起こさせる演習を実施した。チェイニー副大統領は、イランの湾岸地域での影響力阻止を言明し、米政府高官らはイラン攻撃も選択肢の一つと述べている。

 湾岸地域での軍事活動が不測の事態を招き軍事衝突に進展すれば、中東全体に戦火が拡大する危険性がある。米国の自重が必要だ。

 安保理決議は米英仏中ロの常任理事国をはじめ全会一致で成立した。IAEAの報告を受けて、国際社会が結束して対応していくのが不可欠であることは言うまでもない。

【東京新聞・筆洗】

2007年6月4日

 日本人は四字熟語が大好きなのだという。岩波書店の辞典編集部は新書『四字熟語ひとくち話』で、「世代を超えての会話ができる、いまや数少ない話 題」とまで記している▼四字熟語に「気を付けなければいけない」と指摘している人もいる。公明党の太田昭宏代表だ。漢字が四つ並ぶものを四字熟語とすれば 「富国強兵」「憲法改正」などの四字熟語が念頭にある。推察するに、中身の議論が深まらぬまま言葉だけが踊ることへの警戒感なのだろう▼米中枢同時テロを 受け、米政府の高官が日本に支援を要請したときに使った「ショー・ザ・フラッグ」は、四字熟語に転換すると「旗幟(きし)鮮明」になる。旗幟とは「はた」 と「のぼり」のことで、見ればすぐに敵か味方か分かる。アフガニスタンでの米軍を日本が支援するときのキーワードになった▼今回はどんな言い方をしたの か。ニュースの洪水の中で注目されなかったと思うが、過日、米英両軍が大型輸送用ヘリコプターを中心とする陸上自衛隊部隊のアフガン派遣を日本に打診し た、との報道があった。防衛省は現状では困難と伝えたが、打診は撤回されていないという▼「日米同盟」は今「変革」を旗印にしており、具体例がまた一つ増 えた。でも今回は武装勢力に狙われやすいなど、危険度が高い。米国が求める「旗幟鮮明」は、とどまるところを知らないかのようだ▼太田さんにならえば「日 米同盟」に気を付けたい。日本には憲法九条がある。国民が知らぬ間に「唯々諾々」と、軍事面の一体化が進むことは許されない。


【河北新報・社説】

進む「魚離れ」/「食育」で魚食文化守ろう

 食育を充実させ魚離れを食い止めたい―。政府がこのほど閣議決定した2006年度の「水産白書」はこう提言する。水産物の消費拡大のため食育という国民運動に期待せざるを得ないとしても、八方ふさがりの状況が続く中では、腹を据えて長期的な運動に取り組みたい。

 白書によると、世界の水産物貿易量に占める日本の割合は、1995年の16%から下がり続け、2004年は12%。BSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザの発生、健康志向の高まりを受けて、欧米など諸外国も魚を食べ始めたためだ。

 マグロ、エビの取引では、市場の高値に日本の業者がついていけない「買い負け」も起きている。日本が自由に魚を買える時代は終わっており、白書は「水産物の奪い合いが起きるおそれもある」と警告する。

 こうした中、国内の魚離れはさらに深刻になり、若い層以外でも魚介類消費量が減少。(1)子どもが好まない(2)肉類より割高(3)調理や後片づけが面倒―などの理由で、魚より肉類を選んでしまっているという。

 だが、白書は悲観的な見通しを示しているだけではない。
 大日本水産会の調査では、魚介料理を増やしたい人、子どもに切り身魚を食べさせたい人がそれぞれ過半数に上る。肥満や生活習慣病が問題となる中、血栓をつくりにくい魚の栄養特性にも注目が集まる。消費者の9割は食の安全を重視し、生鮮・加工水産物では国産品志向という調査結果も紹介している。

 魚離れは進むが、日本人が魚嫌いになったわけではないと解釈したい。こうした消費者意識は水産物の消費拡大のための追い風ととらえ、関係者の奮闘を期待したい。白書はその方策として、「食育」を通して魚食文化を守ることを提案している。

 20年前に「魚食健康都市」を宣言した気仙沼市は地域を挙げて努力している。その一つが「プチシェフコンテスト」。子どもたちの魚の創作料理コンテストで、市内の若手料理人や母親が運営を支える。サンマハンバーグ、中華風サンマ豆腐など子どもたちが考案した入賞メニューは毎年、学校給食に。昨年は過去の入賞メニューのレシピが本になり各方面に配られた。

 子どもの時から魚食を身近に感じてもらう。食べる作法やしきたりを覚える。地球規模で魚を考える。それは手間と時間がかかるが、魚離れに歯止めをかける効果があると信じたい。

 回転ずしは人気があり、総菜メニューにも水産物が多く取り入れられ始めた。消費者ニーズに合った加工、流通業界の努力は引き続き必要だろう。マグロ乱獲をやめるなど水産資源回復への努力、国際競争力のある経営体育成など行政の役割も重要なのは言うまでもない。
2007年06月04日月曜日

【河北新報・河北春秋】

 「ピンチをチャンスに変える」と口では言っても実行は難しいもの。だが今年の「農業白書」を見ながら、なかなかやるなと感心した▼農林水産物の輸出が好 調なのだ。2006年は約3700億円。このところ年12―13%もの伸びを示す。海外で広がる日本食ブーム、アジアで増える富裕層の旺盛な購買力にも支 えられ、薄暗がりに明かりがともったような形だ

 ▼ 農産物ではリンゴが頑張る。輸出額57億円は4年前の2倍以上。9割方が青森産で、ほとんどが台湾向け。経緯が象徴的だ▼台湾がWTOに加盟した02年、 輸入数量制限がなくなり関税も下がった。貿易ルールはチャンスも平等にくれる。輸入解禁でピンチに立った青森の業界が打って出た。輸出向けは総出荷量の数 %とはいえ順調に伸びる

 ▼日本の農産物は「高くても高品質」が売り。「自動車で言えばロールスロイス」と海外で安倍晋三首相が紹介する ほどだ。台湾でも1個900円もする贈答用の大玉リンゴが人気を集める。だが100円を切る小玉も送る。市井の人のハートもつかむのが青森の作戦だ▼リン ゴに限らず次の狙いは中国。富裕層が的といっても競争相手の出現もあり得る。チャンスで得た「果実」を長持ちさせ、作る人々の元気をしぼませないために も、青森流の戦略が必要では。

2007年06月04日月曜日


【京都新聞・社説】

NIE  豊かな教育実践展開を

 寒さ厳しい信州の冬。ある小学校の四年生のクラスで理科のテストがあった。問題の一つは「氷が溶けたら何になる?」だった。
 みんなは「水」と答えたが一人だけ「春になる!」と書いていた。採点していた担任の先生は、にっこり笑って「○」をつけた-。
 二十年ほども前の話だという。ほのぼのとした心の膨らみが先生たちの間で語り継がれ、新聞のコラムにもなった。
 もしこの記事が授業で使われたら、子どもたちはどんな反応を示すだろう。いや今だって、気持ちが温かくなったり、じっくり考えてみたくなる記事は新聞にいくらも載っている。
 そんな記事を「生きた教材」として学校で活用する活動が「NIE」(エヌ・アイ・イー=教育に新聞を)である。米国で一九三〇年代に始まり、日本では八九年から教育界と新聞界が手を携えて実施している。
 原則二年間の実践校は二〇〇四年度に目標だった全国の小中高校の1%、四百校を超え、〇六年度は四百九十校(京都府十校、滋賀県七校)になった。〇七年度分は来月に正式決定する。
 一定部数が配置される新聞を使い、教科や総合学習の中でさまざまな取り組みが行われている。漢字や言葉の意味を調べる、四コマ漫画の吹き出しを自分たちで考える、記事の感想文を書く、外信ニュースに登場する国々や都市を地図で確かめる…。工夫を凝らして授業を豊かにする先生たちに拍手を送りたい。
 効果ははっきりしている。日本新聞教育文化財団(新聞財団)の〇五年度調査によると、NIEを体験した子どもたちの半数前後が「文章を読むのが好きになった」「ニュースに関心を持つようになった」などと答えている。
 将来の社会の支え手である子どもたちが、「メディア・リテラシー」(情報を読み解く力)を身に付けてくれるのは私たちの願いだ。教育界が目指す読解力・表現力向上にも合致すると信じている。
 しかし「広がり」「深まり」の面で課題がある。学習指導要領に位置付けられていないため、実践校確保に四苦八苦している地域や、取り組みが当該の先生の枠内にとどまり、学校ぐるみの活動にならない事例も少なくない。教育委員会や校長の一層の理解と協力を期待したい。
 普及・定着の一助にと、新聞財団が今春、NIEガイドブック「ようこそ『新聞』へ」を刊行した。十五年ぶりの第二弾で、前作は大学でテキストに利用されるほど硬派だったが、今回は各新聞社の実務者が「分かりやすさ」を念頭に執筆、ビジュアルに編集した。
 NIEに二の足を踏んでいる先生たちは、この冊子を手に取ってほしい。多くの仲間に「ようこそNIEへ」と声を掛けたい。問い合わせは新聞財団NIE部=電話045(661)2031=へ。

[京都新聞 2007年06月04日掲載]

脱北者漂着  海上ルートは想定外か

 「決死の覚悟」だったのだろう。青森県の日本海沿岸の漁港に、小さな木造船に乗り男女四人が漂着したとの一報には驚かされた。
 警察に保護された四人は「韓国に行きたい」と話していることなどから、北朝鮮からの脱北者とみられる。
 安倍晋三首相は、四人について「人道上の観点から対応する」と述べ、韓国行きの希望をかなえる方向で調整する方針だ。韓国側も前向きに受け入れる意向を表明した。まずはほっと一息だ。
 だが、北朝鮮の出方次第では新たな日朝間の火種になる可能性もある。日本としては慎重に対応する必要があろう。
 四人は、年配の夫婦と二十代と三十代の息子だといい、北朝鮮の身分証の「公民証」を持っていた。
 警察や入管当局の調べに対し、四人は「生活が苦しかった」と言い、「韓国に行くつもりだったが、警備が厳しくて難しいと思い、(地名を知っている)新潟を目指した」と供述。北朝鮮東北部の漁港を先月二十七日に出航したという。
 それにしても、船は全長わずか七メートルの老朽船である。「北朝鮮当局につかまったら、飲んで死ぬつもりだった」という「毒薬」を所持しており、死を覚悟で脱北を図ったのだろう。
 政府は警察の事情聴取が終わり次第、入管難民法に基づいて四人の対応を検討する。北朝鮮への強制送還はせず、日本滞在が可能な一時上陸許可などを経て韓国への出国手続きに入ると見られる。四人の意思を尊重し、韓国とともに問題解決にあたってもらいたい。
 今回の脱北者漂着は、日本に新たな課題と難題を突きつけたともいえる。
 なぜ、四人が船を使い危険な海を選んだのだろうか。これまでの脱北は中国との国境越えや領事館への駆け込みがほとんどだった。北朝鮮、韓国に加え、北京五輪を控えた中国が中朝国境の警備を強化したため、想定外の日本海が新ルートとして浮上した可能性がある。
 最終目的地は違っても、日本に来る脱北者が今後増えないとも限らない。
 昨年成立した北朝鮮人権法で政府は、脱北者についても、拉致被害者と同様に「支援」することをうたってはいる。だが、その具体策はほとんど手つかずというのが実情だ。速やかな脱北者受け入れ態勢の整備が求められよう。
 脱北者が絶えない背景には、軍事を優先する北朝鮮の「先軍政治」にある。食糧難は慢性的に続き、国民生活は悪化の一途とされる。
 核放棄をめぐる六カ国協議も足踏み状態が続く。核施設凍結の見返りに提供されるエネルギー支援も受けられず、経済危機に拍車がかかっていよう。
 今回の脱北を北朝鮮が外交カードに使ってくることも考えられるが、ここは淡々と対処すべきだ。そのためにも米中韓や国連とも意思疎通を深めておきたい。

[京都新聞 2007年06月04日掲載]

【京都新聞・凡語】

動植綵絵                                        

  相国寺は金閣寺や銀閣寺が属する臨済宗相国寺派の本山。静かな境内は、この三週間、大変な人出だった▼承天閣美術館できのう閉幕した「若冲(じゃくちゅ う)展」。江戸中期の京都の画家、伊藤若冲の最高傑作・動植綵絵(さいえ)三十幅が一時里帰りし、釈迦(しゃか)三尊像三幅と約百二十年ぶりに再会。一堂 に展示される歴史的な機会に足を運んだ人波は一日平均で約六千人、入場を待つ列が続いた▼動植綵絵と釈迦三尊像は、若冲が精魂を傾けて描き上げ、両親や 弟、自身の永代供養料として生前に寄進した。極彩色、細密描写の名画は、年一回、観音の前に罪を懺悔(ざんげ)する相国寺の重要な儀式に掛けられ、荘厳の 仏画として大切にされてきた▼動植綵絵が皇室に献上され御物になったのは明治二十二(一八八九)年。その下賜金で、現在の相国寺の境内が守られ、維持され た▼三尊像を中心に左右に十五幅ずつ掛けられた動植綵絵はまさに荘厳。二百五十年も前の絵とは思えない色彩の美しさ。綿密描写は写実を超え、目に見えない 世界まで描いた不思議な精神性で魅了した▼三尊像と動植綵絵は一具の仏画であると再認識した美術史家。生きとし生けるものの命の輝きを描いた傑作は、山川 草木悉皆(しっかい)成仏の仏教精神の絵画とたたえた禅僧。時を超えて心に響く独創の極致。一堂の展覧は、美しくかけがえのないものへのメッセージを鮮や かに伝えた。

[京都新聞 2007年06月04日掲載]


【朝日・社説】

2007年06月04日(月曜日)付

脱北者―小舟に託した命の重さ

 長さ7.3メートル、幅はわずか1.8メートル。屋根もない小さな木造船で、家族とみられる4人は海を越えてきた。

 青森県の深浦港に入ると、「北朝鮮から、自由を求めて来た」と話したという。言葉の通りだとすれば、北朝鮮の東北部から5日あまりかけて、900キロもの距離を渡ってきたことになる。

 深浦港にいた釣り人や漁師たちは「よくもあんな粗末な船で」と驚いた。高い波が来れば、途中の日本海で転覆しかねない古びた小舟。持ち物などから、北朝鮮の工作員でないことは、ほぼ間違いなさそうだ。だとすれば、追いつめられた家族が、本当に命がけで海を渡ったということか。北朝鮮での厳しい生活の一端がうかがえる。

 4人はいま、青森県内の警察署に保護され、担当者らが事情を聴いている。

 脱北した人が、直接日本に着いた例は87年の「ズ・ダン号」以来と見られる。今回の漂着に日本がどう対応するのか、各国も注目しているだろう。

 まずは4人の健康状態などに十分気を配ったうえで、詳しい経緯や希望をじっくりと確かめてほしい。そのうえで、人道的に対処していくことが必要だ。

 日本では昨年6月、北朝鮮人権侵害対処法が施行された。その中に、こんなくだりがある。

 「脱北者の保護及び支援に関し、施策を講ずるよう努めるものとする」

 今回の出来事は、直接渡ってきた脱北者に対し、この法律にのっとって対処する最初の事例になった。政府の適切な対応が求められている。

 4人は「韓国に行くつもりだった」と話しているという。日本政府と韓国側とが調整を進めた結果、どうやら本人たちの望みはかないそうだ。

 脱北者への対応には、こうした近隣各国との連携が欠かせない。

 北朝鮮から周辺国への脱北者は、90年代の後半から増え続けている。食糧難が伝えられるなかで、今後、さらに広がる可能性もある。

 今度のことで日本と朝鮮半島が、小舟で渡れるほどに近いということを、改めて実感させられた。

 この先、脱北者とどう向き合っていけばいいか。受け入れ態勢や枠組みなどを、普段から周辺各国で話し合っておくことが大切だ。沿岸警備のあり方にも新たな課題ができた。

 もう一つ、目を向けておきたいことがある。

 今回のケースとは事情が異なるが、日本にはすでに100人を超す脱北者が暮らしている。大半が、かつての帰還事業で北朝鮮に渡った在日朝鮮人と日本人配偶者、その家族たちだ。

 脱北者を支援するNGOなどが力を貸しているものの、日本語教育や就職などを含め、生活支援の手だては乏しい。

 この人たちをどう支えるかについても考えたい。

被害者参加―「求刑」はいきすぎだ

 犯罪にあった被害者や遺族が法廷で検察官の隣に座り、被告や証人に直接問いただす。それを可能にする法律の改正案が衆院で可決された。

 この改正については被害者らが熱心に働きかけてきた。犯罪の当事者であるにもかかわらず、裁判が始まるとカヤの外に置かれてきたからだ。

 改正案の提出に先だって、私たちは被害者の参加を基本的には支持した。同時に、裁判の使命である真実の解明という役割をそこなうことがないよう注文をつけた。

 この点で、検察官が論告・求刑をしたあと、被害者も独自に「論告・求刑」ができる、という改正案の規定には賛成できない。

 被害者からの「求刑」はあくまでも意見とされているが、そんなに単純に割り切れるものではない。凶悪な犯罪になればなるほど被害者は被告に強い憤りを持つことが多い。「求刑」は検察官より厳しくなることもあるだろう。

 2年後に始まる裁判員制度では、素人の市民が裁判官とともに、有罪か無罪かだけでなく量刑も決める。法廷の最終段階になって聞いた被害者の生の声に大きく影響されないか。それが心配だ。

 いまでも被害者には意見を述べる機会がある。そこで被告への思いを語ることもできるはずだ。参院では、被害者が「求刑」まですることの是非について、十分に議論して見直してもらいたい。

 改正案が通ると、被害者は被告や証人に直接質問できるようになる。その際、検察官や裁判官が被害者の質問の内容をあらかじめ確かめる。被害者からすれば不満かもしれないが、裁判が報復したい気持ちをぶつける場になってはいけないからだ。

 政府案に対しては、与野党の一部議員や日本弁護士連合会などから「刑事裁判のあり方を根底から覆す」といった懸念や反対論が根強くある。

 加えて、最近になって被害者の一部からも「参加しないと処罰感情が薄いと受け取られる。被告の顔も見たくないのに、無理をして参加することになる」と反対の声が上がった。被害者の気持ちは一様ではないのだ。

 法廷に出たいという被害者がいれば、一方で出たくないという被害者もいる。どちらの気持ちも尊重して対応すべきなのは言うまでもない。

 実際に法廷に立てば、被告の心ない言葉に傷つくことがあるだろう。

 被告が無罪になったり、冤罪が明らかになったりすれば、検察官だけでなく被害者も冤罪への加担を批判されることがあるかもしれない。

 こうした被害者の負担を減らすには、法廷などで寄り添う弁護士が必要だ。改正案には、資力のない被害者のために公費で弁護士費用を援助する制度を検討することも盛り込まれた。この仕組みは早期に実現する必要がある。

【朝日・天声人語】

2007年06月04日(月曜日)付

 新聞社などの世論調査は、すべての有権者が同じ確率で当たるくじのような方法で回答者を選ぶ。いざ質問という時に「宝くじはさっぱりなのに」とぼやかれることもある。これより不人気と思われるPTA役員などは、断りにくい輪番制になっていたりする。

 さて、2年後に登場する裁判員も、貧乏くじになるのだろうか。市民が刑事裁判に参加するといえば聞こえはいいが、どれほど厄介な仕事が、どんな頻度で回ってくるのか、気になる方も多かろう。

 裁判員は何度かの抽選と面接などで選ぶ。一つの事件につき原則6人で、最近の事件数から試算すると毎年3500人に1人が「当たる」らしい。事件が多い千葉県では、少ない秋田県より4倍も選ばれやすい。

 このほど東京地裁で3日間の模擬裁判があった。協力した会社員は「体力的には1週間でも可能と思う。仕事の都合さえつけば」と語った。多かれ少なかれ、私的な日程への影響は避けられない。辞退できるのは、人に代われぬ重要な仕事がある場合などに限られる。

 つい辞退「できる」と腰が引けるのは、お国に時間を制約されることがめったにないからだろう。8割が消極的という調査もある。だが、こう考えてみたい。裁判員とは、被害者にも加害者にもならず、司法試験も通らずに、法廷の深奥を体験できる権利だと。

 私たちの見聞や交際範囲は意外に狭い。生き方を異にする、見ず知らずの人たちとの共同作業は、自分の常識をほぐす機会にもなるはずだ。なかなかの当たりくじではないか。


【毎日・社説】

社説:新興株式市場 抜本的な見直しで質の向上を

 世界的に株高が続く中で、日本市場の足取りが鈍い。新興市場が低迷したままで、その影響が主力株にもおよんでいるようだ。株価が相対的に安いと、M&A(企業の合併・買収)でも日本企業は不利になる。市場統合など新興市場の見直しを早急に行うべきだ。

 新興企業向けとしてはもともと店頭取引市場があった。現在はジャスダックに衣替えしているが、規制緩和が進む中で、取引所間の競争に勝ち抜くためとして、新興市場の創設が相次いだ。

 その結果、東京証券取引所のマザーズ、大阪証券取引所のヘラクレス、そしてジャスダックなど、国内の6証券取引所がすべて新興市場を開設している。

 背景には、長期にわたって低迷を続けた日本経済を、ベンチャービジネス育成により活性化させようという政府の方針もあった。上場基準が大幅に緩和され、事業を開始する前の企画会社の状態でも株式公開を認めてきた。

 しかし、昨年1月のライブドア事件をきっかけに、新興市場の株価急落が始まった。マザーズやヘラクレスの株価指数は、ライブドア事件以前と比べ7割程度も下落している。

 東証1部全銘柄を対象にしたTOPIX(東証株価指数)は、ライブドア事件直前のレベルを上回っている。しかし、ダウ工業株30種平均が史上最高値を更新し続けているニューヨーク市場など、世界の主要市場の動きに比べると、力強さに欠ける。

 新興市場の取引は、ネット取引による個人投資家が主導してきた。しかし、株価急落で痛手を受け、東証1部上場の主力銘柄にもその影響がおよび、日本株全体が足踏みを続けている。

 市場が乱立し、取引所同士が自らの市場に取り込もうと競争を展開しているという状況が、上場企業の質を下げる結果につながっている。

 上場にまつわる手数料収入を得ようと証券会社が競っていることも同様だ。新興市場の株価下落は、業績の下方修正が相次いでいることも影響しているが、証券会社も責任を痛感すべきだ。

 東証は、マザーズ初上場のインターネット総合研究所の上場廃止を決めた。情報開示についての問題を指摘している。上場維持が不適当な会社については、市場からの早期撤退を求めるのは当然だ。

 みすず監査法人が解散を正式に決めたが、粉飾に手を貸したり、適切な監査を怠ると監査法人自体が存立できない時代だ。ベンチャー企業だからという甘えは通用しないことを、企業側も認識すべきだろう。

 虚偽の情報が飛び交い、短期の利ざやを狙った取引が支配する新興市場は、投資というより投機の場となってしまった。事業の実態が不明な会社が上場を継続しているということも含め、市場設計にそもそも問題があったことを認め、規制当局とも連携し、取引所は市場の質を高めるよう抜本的な見直しを行うべきだ。

毎日新聞 2007年6月4日 東京朝刊

社説:がん対策計画 絵に描いた餅にならぬよう

 がんは今や「国民病」ともいえる身近な病気になった。日本では年間30万人以上ががんで死亡している。生涯に男性の2人に1人、女性の3人に1人ががんにかかるとの推計もある。

 高齢化が進むと、ますますがんによる死亡者は増える。誰にとっても無縁ではなくなったがん対策に、どう取り組むか。

 政府の「がん対策推進協議会」は先月末、がん対策基本法に基づく「がん対策推進基本計画」案をまとめた。今月、閣議決定される見通しだ。

 計画案作りで評価したいのは、複数の患者代表が参加したことだ。これまでのがん対策が、どちらかといえば医師や研究者の視点に偏っていたことを思うと、大きな前進だ。計画案策定の過程では、患者代表の委員ら5人が事務局案に対し独自の「対案」を提出し、議論に影響を与えた。

 計画案は、全体目標として「75歳未満のがん死亡率を10年以内に20%減少」「すべてのがん患者・家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上」を掲げている。

 重点的に取り組むべき課題には、「放射線療法と化学療法(抗がん剤治療)の推進と専門医の育成」や「治療の初期段階からの緩和ケアの実施」を挙げた。いずれも日本で遅れが目立つ分野であり、患者にとっては早急に実現してほしい課題だ。

 もうひとつの重点課題である「がん登録」も、国民への理解を求めつつ、体制を整えていかなくてはならない。

 全体目標を実現するための個別の目標も、欠かせないものばかりだ。「がん検診率の向上」「拠点病院での放射線療法や外来化学療法の実施体制の整備」「緩和ケアの知識・技能を持つ医師の増加」などに加え、「相談支援と情報提供」も、患者や家族が不安や疑問を解消するために不可欠だ。

 残された課題は、ここに掲げた目標をどのように具体的に実行していくかだ。

 がん患者や家族は、医療の質や情報の「地域格差」「施設格差」に悩まされている。納得できないままに、よりよい医療を求めてさまよう「がん難民」も生まれた。こうした格差を解消しつつ、医療体制を整備していくには、具体的な実施計画が必要だ。

 患者代表の「対案」には、どの対策を誰がいつまでに実施するかを示した行程表が盛り込まれていたが、基本計画案には取り入れられなかった。

 今後、都道府県が基本計画を基に、がん対策推進計画を策定するが、ここでは具体的な実施計画を示す必要がある。目標が確実に達成されているかどうかを国レベルでチェックし、評価することも重要だ。「喫煙率半減」が盛り込まれなかったことなど、基本計画自体の問題点も適宜、見直さなくてはならない。

 がん対策に必要な財源を、どう確保するかという根本的な課題もある。基本計画はあくまで出発点であり、今後の取り組みが問われている。

毎日新聞 2007年6月4日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:1933年2月、ジュネーブの…

 1933年2月、ジュネーブの国際連盟総会は、満州事変を日本の自衛力行使とは認めがたい、とするリットン調査団報告書を圧倒的多数で採択した。日本の全権・松岡洋右は反対宣言書を朗読し、満場注視の中を退席する。大時代なニュース映像を思い出した▲国際捕鯨委員会(IWC)総会で、沿岸捕鯨再開の願いが断たれた。日本代表団は「忍耐は限界に近い」と、脱退や新組織創設もほのめかしている。テレビで見る限り、批判演説の口調は重く、苦渋がにじむ。だが、傍聴した日本の民間関係者は涙を流して喜んだ、と現地電が伝えている▲環境保護の声の高まりで、商業捕鯨は86年から一時停止が続いている。日本など伝統国は巻き返しを図り、昨年のIWC総会では再開を支持する宣言が可決された。流れが少し変わったように見えただけに、反応の激しさも当然だろう▲戦前の日本は、国際連盟脱退から孤立、戦争への道を歩んでしまった。いまの時代、クジラ戦争とはなるまいが、いさかいの種を増やさない方がいいに決まっている。脱退といった強硬手段を取れば、他の条約との関係で南極海の調査捕鯨ができなくなる恐れもある。ならば、話し合いの余地はあるのか▲IWCはイヌイットなど先住民に、文化伝承のための捕鯨を認めている。和歌山県太地など生活と密着した地域で地元消費に限定した再開提案は「商業的」と一蹴(いっしゅう)された。ミンククジラの数が回復して持続可能な資源になった、という科学データも事実上黙殺された▲理屈で押して、形勢逆転に必要な加盟国の4分の3以上を取り込むのは無理だ。「文化の違い」で片付けるには深すぎる溝である。それを埋める妙案がないのがどうしようもなく歯がゆい。

毎日新聞 2007年6月4日 東京朝刊

【読売・社説】

「合憲」報告書 首長の多選禁止へ踏み出す時だ(6月4日付・読売社説)

 地方政治の長年の懸案である首長の多選禁止の法制化に向けて、与野党が具体的な検討を始める時ではないか。

 総務省の有識者研究会が、首長の3選以上の禁止は「必ずしも憲法に反するものとは言えない」とする報告書を公表した。

 首長の多選については、様々な弊害が指摘されてきた。強大な権限が集中し、独善性が強まる。人事や政策が偏り、組織の風通しが悪くなる。業界と癒着し、腐敗を招きやすい。

 昨年は、5期18年務めた福島県の前知事がダム工事をめぐる収賄容疑で逮捕された。岐阜県庁では、4選された前知事時代の巨額の裏金問題が発覚した。

 首長の多選禁止法案は過去3回、議員立法で提出されたが、いずれも廃案になった。憲法の「法の下の平等」や「立候補の自由」「職業選択の自由」を侵す恐れがあるとの慎重論があったためだ。

 報告書は、多選禁止を、首長の権力を抑制する「合理的な手法の一つ」と評価し、「法の下の平等」などには反しない、と結論づけた。国民の権利・自由を保障するため、権力を法的に制限すべきだとする立憲主義に立脚した考え方だ。

 政府の研究会の報告は従来、論点整理にとどまっていたが、今回は、憲法論の観点から明快な結論を打ち出した。

 今年1月の読売新聞の世論調査では、知事の多選制限を59%が支持した。国民にも理解が広がっている。

 報告書は、再選まで禁止するのは憲法上問題があるとしたうえ、3選以上の何選から禁止するかや、対象とする首長の範囲は「立法政策の問題」とした。

 首長が独善に陥りやすいのは3期目ごろからで、特に権限の強い知事と政令市長については多選の弊害が大きい、と指摘されている。

 埼玉県や川崎市、東京都中野区などが定めた多選自粛条例は4選が対象だ。自民、民主、公明の各党も4選以上の候補を推薦しない方針を決めている。

 これらを踏まえれば、まずは知事と政令市長について、4選を禁止するのが妥当なところだろう。

 知事ほどには権限が強くない市町村長については、一律に禁止する必要はあるまい。4選以上の禁止条例の制定を可能とする根拠法を定め、あとは各自治体の判断に委ねるのも一案である。

 今後は、政治の出番だ。自民党は法制化の議論を始めている。各党とも報告書を踏まえて具体策を検討してほしい。

 首長の多選禁止は有力な腐敗防止策だが、万能ではない。議会が本来の監視機能を果たす努力も欠かせない。

 
(2007年6月4日1時45分  読売新聞)

留学生政策 日本で学ぶという気にさせねば(6月4日付・読売社説)

 多くの優秀な留学生を集めるためには、日本留学をより魅力的なものにしなければならないだろう。

 日本の大学などで学ぶ留学生の数を、現在の12万人から2025年には3倍に増やす。このような目標が、政府のアジア・ゲートウエー構想に盛り込まれた。

 教育再生会議の第2次報告も、新たな留学生政策を、「産業政策、外交政策を含めた国家戦略」の観点から再構築するよう提言した。議論の過程では、留学生100万人受け入れを目指すべきだとする提案もあった。

 世界の優れた人材を日本文化の理解者として育成していくことは、国際社会での日本の立場の強化につながる。国境を越えた人材の流動化が進む中、日本に留学した有能な人材を日本企業に迎え入れることで、国際競争力も向上する。

 1983年に政府が留学生「10万人受け入れ」を打ち出した当時、その数は1万人に過ぎなかった。目標の10万人を達成し、これからは量より質の時代だ。

 欧米諸国は、優秀な留学生の獲得にしのぎを削っている。世界全体の留学生はアジア出身者を中心に急増しており、2025年には現在の約3倍になるとの試算もある。

 日本への留学生は、中国と韓国からの学生が8割を占める。だが、両国の優秀な学生の多くは、米国に留学している。日本は、この後れをどう取り戻すか。

 ゲートウエー構想は、質の確保との両立を前提に、今後とも少なくとも現行の受け入れシェア(世界の留学生の5%程度)を維持することとした。

 優秀な人材を集めるためには、高い研究水準に基づいた教育が求められる。英語による授業プログラムを拡充する必要もあるだろう。

 言葉や生活文化の違いを理由に、企業が外国人の採用に消極的なことも、日本留学の魅力をそいでいる。

 日本留学に熱意を持つ学生が、手探りで日本の教授に手紙を送っても放置されて、断念するケースもある。

 イギリスは世界110か国、ドイツは13か国に留学支援の拠点を持つが、日本学生支援機構の海外事務所は韓国など4か国に限られている。ゲートウエー構想は、事前相談や帰国後のフォローを担う海外拠点の拡充などを提唱しているが、その具体化を急ぐべきだ。

 海外での日本語教育の拡充や、留学生には依然として厳しい住宅事情の改善なども、課題だろう。

 留学生受け入れを促進するための施策を、早急に講じなければならない。
(2007年6月4日1時46分  読売新聞)

【読売・編集手帳】

6月4日付 編集手帳

 心に、深く感じること。知性や意志と区別された、感覚、欲求、感情、情緒などに関(かか)わる心の能力。日本国語大辞典(小学館)で「感性」を引くと、こんな解説がでている◆成熟社会を迎え、商品開発のカギは、値段の安さや高品質だけではない。感性価値が決め手になるとして、経済産業省が「感性価値創造イニシアティブ」を提唱した。感性に訴えるチャレンジである◆世界でも、日本は色の表現が多い国だろう。例えば「金花色」。抹茶を保存する金花茶壺(ちゃつぼ)に用いられた黄金のような色を言う。浅葱(あさぎ)色、龍爪(りゅうづめ)色、菫(すみれ)色、橘(たちばな)色…。和名の伝統色には文化の香りがする◆これらの伝統の100色を使い、ベビー服をそろえたのは、金沢市のクオーレ・アモーレだ。最新のナノテクによるやさしい肌触りとともに、繊細な感性をくすぐる。経産省は、感性価値と技術力を活(い)かした成功例として紹介している◆山形県の職人たちが開発した、菊地保寿堂の急須「まゆ」は、取っ手が日本刀のシャープなイメージで、塗りは鎧(よろい)を模した漆黒色である。清流が流れるような注ぎ口の切れと、心地よい雰囲気が、海外の見本市でも評判だったという◆感性を大事にする日本のモノづくりが、需要を生み出し、海外販売にも弾みをつける。「KANSEI」はいつの日か、国際語になることだろう。
(2007年6月4日1時44分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】防災問題 災害の質の変化見逃すな

 間もなく本格的な梅雨期を迎える。今年も各地で大雨被害が出るのだろうか。夏から秋にかけての台風による暴風雨も気がかりだ。

 平成19年版の「防災白書」が内閣府によってまとめられた。地球温暖化の影響などで、かつてないレベルにまで災害リスクが高まっていることに強く注意を喚起する内容となっている。

 災害の被害を受ける人間社会は、都市化や高齢化の進行で年々、脆弱(ぜいじゃく)性を増している。風水害に関しては、これまでの常識が通用しなくなりつつある。災害の新たな局面を踏まえたうえでの対策強化が急がれる。

 この10年間で、雨の降り方は気のせいなどではなく、明らかに異常になっている。1時間に50ミリ以上の雨の観測回数は30年前に比べて1・6倍、100ミリ以上の雨の回数は2・3倍に増えている。山間部ではがけ崩れ、河川の下流部では洪水が起こり、都市部ではビルの地階や地下鉄への浸水事故が発生している。

 東京湾と大阪湾、伊勢湾の沿岸部のゼロメートル地帯には400万人以上の人口と資産が集中している。2005年に米・ニューオーリンズを襲ったハリケーン「カトリーナ」の猛威を先例として、湾岸エリアの高潮防災に力を入れることも必要だ。

 昨年は竜巻災害も相次ぎ、九州と北海道で観測史上最悪となる12人の犠牲者をだした。被害を受ける範囲は狭いが、突発的な破壊力があるので油断できない。

 白書は地震についても注意を呼びかけた。阪神・淡路大震災以来、新潟県中越、福岡県西方沖、能登半島などで大きな地震が続いている。いずれも大規模地震の切迫性が指摘されている地域以外での発生だ。地震はどこで起きても不思議はない。そのことを改めて知らせると同時に日本列島が地震活動期に入っていることを告げている。

 大都市では高層マンションも増えている。大地震がくると「高層難民」が発生する。独居の高齢者はこの10年間で2倍近くに増加している。災害時の要援護者情報の整備が必要だが、個人情報の壁に阻まれやすい。

 災害の質が変わり、危機は増大しつつある。現実を直視した防災対策の組み立てが急がれる。

(2007/06/04 05:02)

【主張】脱北船漂着 有事の備えは万全なのか

 青森・深浦港沿岸の日本海で不審船が発見され、北朝鮮からの脱出者とみられる男女4人が保護された。韓国への移送を求めているというが、まずは身元や動機、脱出経路の特定など、慎重に事実確認を進めることが重要だ。

 同時に、水際の監視体制に問題はなかったのかどうか、さらには、脱北者に対する日本としての基本的な取り扱い、対応措置などについても法整備を含めて再点検し、不備については早急に対策を講じる必要があろう。

 北朝鮮経済の逼迫(ひっぱく)にあわせ、脱北者は近年、急増している。韓国当局によれば、経済危機が深刻化した90年代後半から増え始め、韓国入りした脱北者は昨年だけで2000人以上、累計では1万人を超えたという。

 多くは、中朝国境を越えて朝鮮族が多い中国東北部に身を隠し、支援団体の協力で最終目的地を定めるケースとされる。これに対して中国は、北朝鮮への配慮や自国の社会不安要因となることを恐れ、国境管理や密入国者の摘発を強めている。脱北ルートは今後ますます多様化しそうである。

 海事関係者によれば、今回のように全長7メートル程度の小型船で日本海を渡る脱北は「無謀な行為」だとし、日本への漂着は過去に1例あるのみだ。北ではエンジン付き船舶の調達は極めて困難な状況から、同種ケースの頻発は考えにくいとする見方もある。

 しかし、国民の不満が危険水域まで高まっている北朝鮮では、金正日体制の崩壊も絵空事ではない。その場合には、北からの大量難民の発生が現実のものとなりうる。5年前の瀋陽日本総領事館への脱北者駆け込みで、わが国の難民対応の無策ぶりが厳しく批判されたのは記憶に新しい。

 昨年6月には、日本でも北朝鮮人権法が成立し、脱北者の保護については、政府として「対策を講じるよう努める」と定められた。だが、その定義はあいまいなままにされ、ケース・バイ・ケースの対応にまかされているのが実情だ。早急に問題の整理をしておくべきである。

 水際の監視にも課題を残した。小型船は事前捕捉が難しいとはいえ、やすやすと接近を許したのは問題だ。工作船だったら、それでは済むまい。沿岸警備態勢の再検討も迫られよう。

(2007/06/04 05:02)

【産経抄】

 すでに梅雨入りした九州の南部では、青梅の収穫も始まったようだ。広口ガラス瓶やホワイトリカー、氷砂糖とともに、スーパーの店頭に並ぶおなじみの風景も目につく。梅酒の季節の到来だ。

 ▼最近は大手ビールメーカーや清酒の蔵元などが新商品を競い、品ぞろえの充実を売り物にする居酒屋も少なくない。プロの味にかなわなくても、自家製ならではの楽しみもある。雑菌の侵入に注意するぐらいで、あとは、ひたすら待てばいい。寝かせれば寝かせるほどうまくなる。

 ▼昔の中国では、家に女の子が生まれると、紹興酒の入った甕(かめ)を地中に埋め、娘が嫁入りするときに掘り出して来客に振る舞ったという。これに倣って、子供が生まれたときに作った梅酒を大事に保存している知人がいる。歳月そのものを味わう酒なのかもしれない。

 ▼ 作家の半藤一利さんの夫人、末利子(まりこ)さんのエッセー『最後の梅酒』は、飲むに飲めない梅酒を描いた佳品である。気持ちのいい付き合いをしてきた隣 家は、高齢の父娘の2人暮らしだった。やがて父親が亡くなり、庭にあった梅の木も切られることになる。引っ越していく娘は、半藤家に瓶詰めの梅酒を残して いく。

 ▼「死んだ智恵子が造つておいた瓶の梅酒は 十年の重みにどんより澱(よど)んで光を葆(つ つ)み、いま琥珀(こはく)の杯に凝(こ)つて玉のやうだ」。詩人の高村光太郎は、亡き妻への哀惜の念を梅酒の甘さに重ねて、『智恵子抄』に収めた。10 年前といえば、智恵子はまだ心の病に侵されていなかった。

 ▼わが亡き後に、梅酒を飲みながら、しのんでくれる人がいるだろうか、とふと思うことがある。もっとも、漬けたその年に飲み尽くしてしまうのが常のことなのだが。「わが死後へわが飲む梅酒遺したし」石田波郷

(2007/06/04 05:00)


【日経・社説】

社説 首脳外交が解く地球環境政治のもつれ(6/4)

 地球温暖化の防止に向けて、温暖化ガスの排出削減目標を欧州連合(EU)の首脳会議、日本の安倍晋三首相はそれぞれ公表した。今度は、環境問題に消極的とされてきた米国のブッシュ大統領までもが、温暖化防止の目標設定を提案した。方向性も手段も、日米欧の違いは大きい。が、世界を巻き込んだ温暖化防止の新たな枠組みづくりが、国際政治の喫緊の課題だという点では一致する。

米国は転進し始めた

 今週、ドイツのハイリゲンダムで開く主要国首脳会議(G8サミット)では、新たな枠組みを目指す共通の認識が具体的な宣言として結実するかどうかが最大の焦点となる。国益に反する、経済活動を阻害する、として、温暖化対策に背を向けてきた米ブッシュ政権も、温暖化問題への対応を徐々に変えてきている。

 きっかけは2年前に英国・グレンイーグルズで開いたG8サミット。ブレア英首相は各国の科学アカデミー総裁らを招き、首脳会談の中で地球の温暖化が科学的に証明された現在進行形の危機であることを、ブッシュ大統領にも認めさせた。それまで米政権は二酸化炭素(CO2)などによって地球は温暖化しないとし、全米科学アカデミーから、科学者の論文をねじ曲げて引用してはいけないと叱(しか)られていた。

 温暖化を科学的事実として受け入れたことで、米政府の対応はすぐに形を変え始めた。国家エネルギー戦略では省エネやバイオガソリンの普及を掲げた。今回のブッシュ提案では、京都議定書を離脱した理由の一つだった「数値目標」を、設定すべきだと主張を変えた。この数値目標はEUが提示した総量削減の目標とは違うと米政府高官は説明しているが、政策のニュアンスがこれまでと大きく変わったことは明らかだ。

 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の加盟国会議などでは、削減義務を真っ向から否定する中国と、途上国という枠で中国やインドが義務を負わない制度に背を向ける米国とが対立し、身動きがとれない状態が続いていた。そこに風穴を開けたのが、ブレア英首相らのサミットを舞台にした首脳外交だった。

 今回のハイリゲンダム・サミットで議長を務めるメルケル独首相は、中国、インド、ブラジル、南アフリカ共和国、メキシコの5カ国も招き、排出抑制のための合意を得ることに並々ならぬ熱意を見せている。ブッシュ提案も、メルケル独首相からの事前の強い働きかけを受けて出されたと解釈すべきだろう。

 今回のサミットで具体的な削減目標が宣言文に盛り込まれるかどうかはわからないが、米政権の転進ぶりと、いつまでも途上国代表のポジションにはいられないという中国の自覚を見極める機会ではある。

 再来年1月に発足する米国の次期政権が、具体的に排出削減に踏み込んでくるのはほぼ確実だ。現在、米上院にかかっている温暖化関連の法案は、みな具体的な削減目標、2000年比50%減などの数値目標を明記している。米国の大統領候補の顔ぶれが事実上決まる来年7月に開く北海道洞爺湖サミットが、環境首脳外交の正念場になる。その布石をハイリゲンダムでどう打てるか。日本の環境外交の真価が問われる。

 2050年に世界で半減という目標と、柔軟で多様な対応という日本案は、米国と中国を巻き込む可能性があると日本政府は自画自賛しているが、足して2で割る折衷案が評価されるとは限らない。

日本の覚悟を世界に

 首脳外交と並行して、UNFCCCの場で、京都議定書の次の枠組みを巡る議論が始まる。こうした枠組み交渉は、軍縮交渉とよく似ているといわれる。すぐれて技術的でありながら、高度に政治的で、検証や評価などを含めて、何よりも実効が重視される。日本は2050年までの長期目標というざっくりした案を示してはいるが、京都議定書の次、2013年以降の行動計画について具体策は何も提案していない。

 実効ある枠組みをつくるための戦略目標をこれから明らかにしなければならない。政府は1日に閣議決定した「21世紀環境立国戦略」を柱に、自然との共生や、循環型社会の推進、途上国支援など総合的な戦略を実行に移すとしている。日本は何をなすのか。相応の覚悟を示さずに、外交交渉はリードできない。

 連邦政府が政策の大転換に二の足を踏んでいるうちに、米国では州政府が排出権取引を可能にする削減義務を相次いで制度化した。日本でも経済と環境を両立させるキャップアンドトレードの実現に政府が消極的なのを見かねて、東京都が排出削減の義務化を打ち出した。日本政府もトップの決断が必要ではないか。

【日経・春秋】

春秋(6/4)

 観光客が目立つ奈良の街も、定番コースを少し外れると路地沿いに民家が軒を並べる懐かしい風景に出合う。そんな古い街並みの一角を映像制作の拠点とする女性を10年前に取材した。今年のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した河瀬直美さんだ。

▼当時27歳。半年後に公開を控えたデビュー作で描いたのが故郷奈良の山村だった。風景の美しさと離散する家族の切実な表情が強い印象を与え、役者の大半が土地の素人と聞き驚いた。自主制作で磨いたドキュメンタリーの技法と、創作が融合した独特の作品は同年カンヌで新人賞を獲得。一躍時の人になる。

▼「東京はモノが多すぎて、自分をなくしてしまう。奈良にいても注目する人はしてくれるし、人とのつながりはできていく」。かつての言葉通り今回の受賞作の舞台も奈良市郊外。主人公の認知症男性は市内の古書喫茶店店主が演じた。養父母に育てられた経験が生む「家族」というテーマでも一貫している。

▼10年前の本紙記事では肩書に「映像作家」とある。こだわりを貫き、10年かけ期待に応えた河瀬さんは、今では多くの人の目に「日本を代表する映画監督」の1人と映っているだろう。地域に根ざし、目の前の現実に向き合うことが広く世界への道を開く。これは映画だけの話ではない。


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» 金閣寺と銀閣寺 [金閣寺の歴史]
金閣寺(きんかくじ)はやっぱり学生のときの修学旅行での思い出という感じです。そして金閣寺って本当にすごい建物だと思います。やっぱり写真を見るより実物の金閣寺ですよ。京都という場所はいいところです。アクセス方法や駐車場はここのサイトで調べて下さい。そういえば銀閣寺の存在も歴史のなかでは重要ですので金閣寺ばかりがクローズアップされていますが、銀閣寺もお忘れなく。... [続きを読む]

受信: 2007年10月 7日 (日) 07時32分

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