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2007年6月 5日 (火)

6月5日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】

社説(2007年6月5日朝刊)

[事前協議]やはり形式だけだった

 私たちが理解している日米安全保障条約の「事前協議」は、一九六〇年に行われた安保条約改定で、米軍が配置や装備の重要な変更とともに戦闘作戦行動を取る場合に日本政府との間で「なされるべきもの」である。

 これは、米国との「対等性」を維持するため、当時の岸政権が在日米軍基地の使用がフリーハンドにならないように日本側の発言権を担保する目的で盛り込んだといわれている。

 だが、朝鮮半島有事の際に日本からの戦闘作戦行動を事前協議の「適用除外」とする密約で、日本側が「秘密の形式」を持ち掛けていたことが分かった。

 日米間で交わされた密約は、まず核を搭載した米軍機の日本飛来、米船艦の寄港を協議対象外にすることだ。次に、朝鮮半島有事に際し例外的な措置として米軍が迅速に対応できるよう日本にある基地を使用できる―ようにするものになっている。

 ここには、米国との対等性を目指す事前協議の意義が全く見られない。岸信介元首相はなぜ、基地使用に対する発言権を担保する仕組みをこんなにもあっさりと骨抜きにしたのだろうか。

 戦後日本の復興発展のためとはいえ、そこまで米国に従う必要があったのか。疑問と言うしかない。

 さらに強調したいのは、冷戦期の朝鮮半島有事を想定した「秘密の形式」が、今につながっていることだ。

 それが憲法前段や九条との間に軋轢を生み、「恒久平和の理念」をなし崩しにしたのは今さら言うまでもない。

 復帰後も続いたベトナム戦争、そして湾岸戦争、アフガニスタン紛争、イラク戦争では沖縄の基地が前線基地として使われた。これは紛れもなく「秘密の形式」の結果といってよく、その意味で元首相の責任は重い。

 この間、事前協議はただの一度も行われておらず、私たちが社説で問うたことにも政府は回答していない。

 「秘密の形式をとらなければ、後に続く政権が日米合意を守りきれない」と元首相は判断したというが、後の政権はそれを踏襲しただけだ。換言すれば、歴代政権は国民を欺いてきたのであり、政府には説明責任がある。

 我部政明琉大教授は「当時から今日に至る日米の『対等性』や日本の『真の独立』の虚構性が一層明白になったといえるだろう」と述べている。

 当然であり、継続された「秘密の形式」によって在日米軍基地の75%を押し付けられた県民がどれほど苦しんでいるか、政府はきちんと踏まえる必要がある。ほかにも密約はないか。政府に対する県民の疑いは消えない。

社説(2007年6月5日朝刊)

[内閣支持率急落]問われる首相の指導力

 共同通信社が今月一、二の両日実施した全国緊急電話世論調査で、安倍内閣の支持率は35・8%となり、昨年九月の内閣発足以来、最低となった。

 三月に安倍内閣の支持率が初めて40%を割り込んだが、その後は回復基調を見せ、前回(五月)支持率は47・6%。今回は11・8ポイントも下落した。

 不支持率は48・7%で10・5ポイント上昇した。不支持の理由では「首相に指導力がない」が最多。報道各社の世論調査で軒並み支持率が低下している。

 社会保険庁の年金記録不備問題や、「政治とカネ」問題で追及を受けた松岡利勝前農相の自殺が大きな影を落とし、国民の安倍政権離れが急速に進んでいることがうかがえる。

 社会保険庁の年金記録不備に対する国民の関心は高い。年金時効撤廃特例法案と社保庁改革関連法案が衆議院で可決されたが、特例法案は国会提出から二日後の強行採決だった。

 年金問題に対する政府、与党の取り組みに関して「評価しない」が52・5%、「評価する」は38・6%だった。

 参院選をにらんだ与野党攻防が激化しており、民主党と泥仕合をしているようでは支持離れが加速するだけだ。

 どのような基準で年金記録のない加入者らを救済するのか明確に説明できなければ、国民の支持をつなぎとめるのは厳しい。

 松岡前農相の光熱水費問題については安倍晋三首相は「説明責任を果たしている」と一貫して擁護してきた。

 しかし、首相の任命責任については「果たしていない」が69・5%、「果たしている」は19・9%。問題に正面から応じようとしなかった安倍首相の姿勢を国民は疑問視している。

 参院選まで二カ月を切った。安倍政権は発足後「戦後体制からの脱却」を掲げ、憲法改正、国民投票法、教育改革関連三法案などを重視してきた。

 安倍政権の志向と国民が重視する政策の間のズレがより鮮明になった。安倍首相が指導力を発揮し、国民が納得し安心できる改革を進めなければ逆風をくい止めるのは難しいだろう。

【沖縄タイムス・大弦小弦】 (2007年6月5日 朝刊 1面)

 発端は、北米で発生したペットの相次ぐ不審な死だった。ペットフードを食べた猫や犬が死んだのを受けて調査した米食品医薬品局が、中国産の原料から肥料や樹脂に使われる有害な化学物質を検出した。

 この騒ぎに中国の国家品質監督検査検疫総局は、異例の早さで調査結果を発表。企業が有害な化学物質を違法に添加していただけでなく輸出の際に商品名を偽り検査を免れていたと非難、騒ぎの沈静化に努めた。

 ところがその直後、中米パナマで販売されたせき止め薬に中国製の有毒な原料が含まれ、服用した百人以上が死亡したとのニュースが飛び込んできた。さらに米国は中国製練り歯磨きを使用しないよう警告した。

 一連の事件で、中国製品は信用を大きく失墜させた。思い起こせば、これまでも安全性に大きな疑問を投げ掛けるさまざまな問題が噴出してきた。死者を出すダイエット食品、法定外添加物や残留農薬の汚染食品。

 その背景に「拝金主義のまん延」が指摘されて久しい。加えて、食品への安全管理システムが未整備なうえに、監督部門が細分化されすぎて統一管理できないなど深刻な行政側の欠陥があるともいわれている。

 いずれにせよ、二○○六年の中国の農産物の対日輸出は九千五百億円を超え、その額と数量は減ることはないとされている。身の回りに安価な中国産の食品や製品が増えていく中だけに、安全性の追求は重要で緊急な課題だ。(福島輝一)


【琉球新報・社説】

県議会・検定意見書 世論は撤回求める方向だが

 県内の市町村議会では、高校教科書検定で沖縄戦の「集団自決」に日本軍の強制・命令があったとする記述が修正・削除された問題で、検定意見の撤回を求める意見書の可決が広がっている。
 4日にも宮古島市と南城市などの議会で検定意見の撤回を求める意見書が可決された。「集団自決が日本軍による命令・強制・誘導なしに起こりえなかったことは紛れもない真実であり、そのことがゆがめられることは、悲惨な地上戦を体験し、多くの犠牲を強いられてきた沖縄県民にとって到底容認できるものではない」などと、検定意見の撤回を求めている。
 ところが、県議会最大会派・自民党は教科書検定の撤回を求める意見書案に同意しない方向にある。
 同党内には「歴史の事実であり、検定意見は問題」との意見がある一方、「裁判で係争中の問題であり、判決前に政治が介入すべきでない」などとの慎重な意見も根強く、「意見の一致を見いだせない」として同意しない方針という。
 既に可決した市町村議会では、全会一致でスムーズに可決されてきた。だが県議会では、自民党が同意しない方向にあるため、19日にも開会予定の6月定例会の冒頭での提案は見送りになりそう。
 冒頭での提案見送りが、果たして民意を踏まえた選択肢といえるのだろうか。冒頭ではなくとも、会期中の提案はあるのだろうか。全会一致になるのかも含め、県民は注視している。
 集団自決をめぐる教科書検定では、琉球新報社が実施した県内市町村長アンケート調査で、回答者36人のうち、35人が「妥当ではない」「どちらかといえば妥当ではない」と答え、検定意見に批判的だ。
 その理由として、「日本軍から捕虜になるより死ぬようにと手榴(しゅりゅう)弾を手渡され、集団自決を強要されたのは紛れもない事実」「事実を葬るのではなく、将来に継承しなくてはならない」などだ。
 県議会議員を対象にした5月の緊急アンケート調査でも、回答した47人のうち、87%に当たる41人が「妥当ではない」などと検定を疑問視する回答だった。県議会でも検定意見撤回を求める意見が大勢だが…。
 県議会は、教育関係者らの「住民虐殺に関する意見書が全会一致で可決(1982年)できて、なぜ集団自決ではできない」との疑問にもぜひ答えてほしい。
 本社の復帰35年県民世論調査でも、検定意見賛成の7.7%に対し、76.2%は批判的だった。県民世論も検定意見撤回を求める方向にある。
 県民は、県議会の与野党が世論の動向にもしっかりと目配り、対応するかに注目している。

(6/5 10:44)

あすからサミット 試される安倍首相の存在感

 主要国(G8)首脳会議(ドイツ、ハイリゲンダム・サミット)が6日から始まる。深刻化する地球温暖化への対策で、世界に向けてどんなメッセージを発信するかが、最大の注目点だ。
 今回は安倍晋三首相とフランスのサルコジ大統領が初めて出席する。安倍首相は地球温暖化対策に意欲的で、2013年以降の国際的な温暖化対策の枠組み(ポスト京都)づくりを提起している。温室効果ガスの排出量を2050年までに半分にすると打ち上げてサミットに臨む。
 温室効果ガスの排出量の多いアメリカのブッシュ大統領、中国の温家宝首相との会談で、ポスト京都構築への協力を確認している。
 温室効果ガスの排出増加が予想される発展途上国の大気汚染対策や貧困対策にも支援する方針を打ち出している。
 来年のサミット開催地は北海道の洞爺湖。首相が議長を務める。今回のハイリゲンダム・サミットに続き、地球温暖化対策が最大の焦点になるのは間違いない。
 それだけに今回のサミットを参院選に向けての単なるパフォーマンスに終わらせることは許されない。
 日本は、京都議定書で定められた温室効果ガスの削減目標の達成にも厳しい状況にあり、腰を据えた対策が求められる。安倍首相の存在感、リーダーシップが試されることになる。
 もう1人の初顔・サルコジ大統領は、イラク戦争開戦をめぐって悪化した米国との関係改善を目指している。
 主要8カ国は、かつてのような求心力はないものの、世界経済、政治に大きな影響力を持っている。この8カ国の結束、協調が安定的な経済成長、地域紛争の処理、緊張緩和につながる。
 今回のサミットには、ゲストとして経済成長が著しい中国、インド、ブラジルなど5カ国の首脳を招いて対話の場を設ける。地球温暖化の問題にしろ、安全保障、エネルギーの問題に対処するためにもこれらの国との協調が必要不可欠だ。

(6/5 10:42)

【琉球新報・金口木舌】

 心身を鍛え、技能を高めることを鍛錬というが、本来は金属を鍛えることを指す
▼熱すると軟らかくなる金属の特性を利用し、金づちで打ち延ばしたり縮めたりして自在に形を作る。「鍛金(たんきん)」という言葉は耳慣れないが、文字通り金属を鍛える技法だ。刀剣などの鍛冶(かじ)も、鍛金の一分野になる
▼その鍛金造形を専門にする金属工芸作家、田仲康嗣さん(38)の県内初の個展が名護市の津嘉山酒造所で3日まで開かれた。皿や杯などの器から彫刻やオブジェに近い物まで、銅や真鍮(しんちゅう)など1枚の金属の板がさまざまな姿、形に変化するのが驚き
▼田仲さんは名護高から東京芸大に進み鍛金を専攻。卒業後は東京近郊で活動してきたが、昨年4月に古里の名護に拠点を移した。「沖縄ではなじみが薄いが、金属の魅力を多くの人に知ってもらいたい」と話す
▼鍛金には多くの作業工程があるが、金づちなどでたたくのが基本。合間に焼きを入れながら何万回とたたく気の遠くなる作業で、精神鍛錬そのものだ
▼それ以上に地方での創作活動は生活との両立に厳しさが伴う。ただ、田仲さんに限らず、こうした挑戦と周囲の関心・支えこそが、地域の創作活力や新たな文化潮流を生み出す原動力になる。

(6/5 10:40)


【東京新聞・社説】

“環境”サミット 危機感を共有したい

2007年6月5日

 六日開幕の主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)は、地球温暖化対策を主要議題に掲げる異例の“環境”サミットだ。高まる危機感を背景に、日米欧がまず足並みをそろえる場にしたい。

 最大の焦点は、二〇一三年以降の地球温暖化対策をだれが、いつから、どうするかということだ。

 京都議定書の約束期間は〇八年に始まり、一二年に終わる。だが、その後の枠組みづくりについて、話し合いはほとんど進展していない。

 一昨年の英国・グレンイーグルズサミットで、G8(主要八カ国)としてこの問題を検討していくことでは合意した。

 だがそれ以後も、温室効果ガス削減義務をめぐる先進国、途上国間の対立、欧州と米国の主導権争いという、京都議定書採択以来十年続く図式に大きな変化はない。

 しかし、今回は事情が違う。

 京都議定書の約束期間開始は、目の前に迫っている。ことし相次いで公表された国連「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の作業部会報告書は「希望はあるが、残された時間はわずか」と訴える。

 巨大ハリケーンの来襲は、米国民に異常気象の恐怖を実感させた。州レベル、企業レベルで対策を求める声が高まり、経済への影響を盾にして京都議定書を拒み続けるブッシュ政権も、サミットを前にして「来年末までに削減目標の合意を」と唱えざるを得なくなった。

 四月には国連安全保障理事会が、温暖化問題を初めて討議した。米国がその動向を注視する中国は、今は“途上国”として削減義務がないものの、急速な経済発展の反動である深刻な環境汚染にあえいでおり、同月の日中首脳会談で「ポスト京都」への協力を表明した。

 主要国の温暖化への危機感は高まった。しかし、その深さや形が違うため、共通認識のレベルに至っていない。一歩先んじる欧州に、出遅れてしまった米中-。足並みも乱れたままだ。次期枠組みでの主導権争いを始める前に、主要国は潜在する危機感を共有し、米中がポスト京都の舞台に立ちやすい道筋をまず見つけておくべきだ。

 その上で、十二月にインドネシアのバリで開かれる温暖化防止会議(COP13)でポスト京都の話し合いを具体化させ、来年の日本・洞爺湖サミットで軌道に乗せるようなメッセージを発してもらいたい。

 米欧中間の、そして洞爺湖への、さらにポスト京都への橋渡し役として、日本の環境外交の真価が問われる舞台である。

脱北船 『決死』が物語る過酷さ

2007年6月5日

 脱北者が直接日本へ来るのは珍しい。希望通り韓国行きはかなうようだが、生活苦などから生命を懸けてまで逃げ出さざるを得ない北朝鮮の実情は、ますます過酷にして、深刻なようだ。

 「生活が苦しかった」「一日おきぐらいにパンを食べるのがやっとだった」「自由がない」

 青森県の深浦港に木造船で着岸した四人は北朝鮮脱出の動機を話し、さらに「韓国へ行きたい」と希望しているようだ。

 脱北者が直接日本へ船で来たのは一九八七年に十一人が乗った「ズ・ダン号」事件以来のことだ。このときは北朝鮮の強い返還要求もあり、台湾に移送し、希望する韓国へ亡命という経路をたどった。

 昨年六月、日本では北朝鮮人権法が成立し、脱北者の保護に努めることになった。今回は初めてのケースになる。政府は人道的に対応する方針で韓国側と調整を始めた。

 それにしても天候が不順な中、一週間ほどかかった古ぼけた船での脱出行は命懸けだったに違いない。

 脱北者は、地続きの中国へ渡るのが通例だ。最近は中朝国境での取り締まりが厳しくなったため、より生命の危険が大きいにもかかわらず船での脱出になったようだ。

 その背景には、北朝鮮の極端な食糧難や経済失政、人権抑圧がある。軍事独裁体制を守るため、核・ミサイル開発に国力の大半を使い、民生をおろそかにした結果である。

 さらに昨年夏の水害、「核実験」による経済制裁で、北朝鮮は従来になく困難な状態に陥っている。

 脱北者は、これから増えることがあっても減ることはない。周辺国はあらためて認識する必要がある。

 中国は北朝鮮と特別の協定を結び脱北者を見つけ次第、強制送還しているようだ。このため、東南アジアの国々に逃れて韓国行きを目指す脱北者もかなりの数にのぼる。

 韓国へ移住の脱北者はさる二月に累計一万人を超え、これに伴う社会問題も起きている。脱北者の増加はこの地域の国々の悩みのタネだ。

 しかし、北朝鮮への強制送還は厳しい刑罰を免れない。政治的な理由だけでなく経済難民も人道的に扱う必要がある。

 米国は北朝鮮人権法によって、三十人の脱北者を受け入れた。中国の人道的取り組みも期待したい。周辺国は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も含め、協議の場をつくったらどうか。

 同時に、あらゆる機会をとらえて、北朝鮮に対して人権抑圧・侵害を許さないという国際社会の強い意思を伝える必要もある。

【東京新聞・筆洗】2007年6月5日

 毎朝六時台に母親からのモーニングコールがあるという。寮生活では、上級生を起こすのが下級生の仕事。寝坊はできない。理由は別でも朝起きるのに母親の助けを借りるのは、他の大学一年生とそれほど変わらないだろう▼マウンドに立つと、誰もできそうにないことをやってのける。早稲田大学野球部の斎藤佑樹投手のことだ。東京六大学野球春季リーグで早大は優勝を決め、斎藤投手は無傷の四勝目を挙げた。一年生では戦後初めてになる▼それでも一年生は一年生。胴上げに遠巻きで加わっていたが、呼ばれて宙を舞った。本人には「まさか」の瞬間だったが、優勝できた理由が分かる気がする。団体競技では一人が傑出していても、チームとしてまとまらないと優勝はできない▼今季は監督が「三勝八敗のチーム」と分析していたが、斎藤投手の活躍で大化けした。田中幸長主将が東京中日スポーツに寄せた手記には「投手陣のいい刺激になり『おれもおれも』という姿勢を感じました」とある。ベンチでも「一年生が投げるんだから助けてやろう」との雰囲気になった▼この下地には斎藤投手と他の部員、特に上級生との関係が普段からうまくいっていたことがあると思う。六大学野球の名物監督、明治大学の故島岡吉郎さんの持論は「大学野球は人間力がものをいう」だった。年齢の壁を超えてお互いを認め、刺激し合う関係とは人間力の為(な)せるわざの一つだろう▼早大野球部のメンバーに特別な才能があったとは思わない。誰でも意思があれば、いい仲間をつくることはできる。


【河北新報・社説】

内閣支持率最低に/夏の政治決戦に臨めるのか

 夏の参院選に向けて、政治の潮目が変わってきたようだ。
 1、2両日の共同通信の世論調査で、安倍内閣の支持率は35.8%(不支持率48.7%)と昨年9月の内閣発足以来最低になった。低落傾向をたどった支持率が4、5月に反転・上昇の兆しを見せた直後の失速だけに、自民党のショックは大きい。

 支持率失速の原因は言うまでもなく、年金記録不備問題への政府の対応と松岡利勝前農相の自殺を受けた逆風だろうが、今回の調査結果は安倍晋三政権に深刻な課題を2つ突き付けた。

 一つは、首相周辺が政権浮揚の旗印にと期待した「安倍カラー」が、年金という生活感覚に密着した政策テーマをめぐる怒りや不信感に一瞬のうちに吹き飛ばされてしまったことだ。

 安倍内閣の支持率が一時上向いたのは、歴代内閣が着手できなかった「憲法」「教育」に正面から取り組み、小泉純一郎前政権でさえ希薄だった「保守本流」の骨格の太さを世論が感じ取ったからだとされる。

 その安倍カラーの前には、民主党が与党攻撃の柱としてきた「格差」問題での戦術見直しを余儀なくされたほどだった。

 しかし、年金や税といった国民生活を直接左右する分野で、行政のミスや政府対応の遅れが表面化すれば、世論はまず何を置いても政権政党の責任を問うし、その何倍もの潜在力で政治に不信感を募らせるものだ。

 首相は社会保険庁改革関連法案と年金時効撤廃特例法案の衆院採決を強行、まずは国民の不安を除こうとしたが、世論はこの対応をうのみにしなかった。安倍政権は踏んではならない地雷を踏んでしまっていたのだ。

 与野党激突の中で持たれた自公両与党トップ会談で、太田昭宏公明党代表が、憲法にこだわる安倍首相に「参院選の争点は生活に密着したものを」と注文をつけたのも、世論の「安倍離れ」を前にした与党内部の焦りを裏付けたものであろう。

 二つ目の課題は、内閣支持率の失速にかかわった厚生労働相と農相の2つの閣僚ポストに注目するとおのずと見えてくる。

 厚労相と農相と言えば、つい最近までは自民党の代表的な族議員の元締だ。小泉前政権時代に「族」は弱体化したが、職域団体が大きな力を発揮する参院選では厚生労働と農林水産の関連団体が同党の有力な支持基盤であることに変わりはない。

 その柳沢伯夫厚労相は火だるま状態だし、農相は大詰めを迎える世界貿易機関(WTO)交渉を前に交代した。それは自民党にとって、参院選向けの戦闘能力の大きな低下を意味する。

 参院選の公示予定日まで1カ月。選挙区の広い参院選は直前の政治情勢の変化が「風」となって勝敗に直結すると言われるだけに、自民党の選挙戦略は部分修復ではなく土台からの組み立て直しが必要だ。その時間的な余裕があるのかどうか。

 民主党などの野党は潮目が変わって向いてきた有利な流れを維持できるかどうか。効果的な攻めと説得力ある公約提示ができるか、こちらも存在意義が問われる局面にあると考えたい。
2007年06月05日火曜日

【河北新報・河北春秋】

 日本海はこの時期、1年で一番穏やかだという。だが、新天地を目指して船出した家族にとっては荒海そのものだったに違いない▼青森県の深浦港にたどりつ いた北朝鮮の一家4人。おんぼろの木造船に運命を預けた。出航して4日間、荒波に翻(ほん)弄(ろう)され続けたという。ひたすらコンパスに従い「東」 へ。その先に新潟があり、目的地の韓国へ道が開けると念じての航海

 ▼ 企てが発覚した時に飲む「毒薬」まで持っていたというから、まさに決死行。20代の二男は覚せい剤も所持。「簡単に入手できる。眠らないよう使っていた」 という。その汚染ぶりも痛ましい▼今さらながら、あの国は「棄民」政策をとっているとしか思えない。「1日おきにパンを食べるのがやっと」と話す家族。国 の辞書にはきっと「棄国」という言葉もあるのではないか

 ▼「北」から直接、船で日本へ逃げてきたケースはまれ。中国の国境警備強化で陸 路での脱出が難しくなっているとも言われる。政府は脱北船にも目配りする必要がありそうだ▼日韓間では4人の希望通り韓国移送に向け調整が進む。今年2月 に1万人を突破したとされる韓国への脱北者。だが、進学や就職がうまくいかず、社会の下層でもがく人が多いという。荒波を越えてきた一家に笑顔が戻るのは いつのことか。

2007年06月05日火曜日


【京都新聞・社説】

ツアーバス  恐ろしい「8割が違反」

 「ツアーバス事業者の八割以上が法令違反」という衝撃的な調査結果が、このほど明らかになった。
 ツアーバス業界の労働実態が、ここまでひどかったとは驚かされる。背景にある国の規制緩和政策を含め、安全対策を見直す時期にきている。
 大阪府吹田市でさる二月に起きたスキーバス事故は、過当競争の下にあるツアーバス業界の実態を浮き彫りにした。調査は事故を受け、国土交通省が四月、全国の貸し切りバス事業者の一割弱にあたる三百十六社を対象に行った。
  その結果、全体では六割以上、ツアーバスだけでは八割以上の事業者に、安全や運行面での法令違反が見つかった。さらにその八割近くが、運転手の拘束時間 (最大一日十六時間)を守らなかったり四時間以上の連続運転をさせるなど、道路運送法などが定める過労防止義務に違反していた。
 過労運転の大型バスが、国道や高速道路を走り回っている実態に、ぞっとしない国民がいるだろうか。
  背景には貸し切りバス業界を取り巻く変化がある。国の規制緩和政策に基づいて二〇〇〇年にバス事業が免許制から許可制となり、新規参入組が四年間で約六割 も増えた。その結果、需給バランスが崩れて値下げ競争が起き、運転手に低賃金や労働強化の形でしわよせされる-調査結果はそれを物語っていよう。
 過当競争が事故多発にもつながったことは、営業用バスの事故に対する補償件数が、緩和前の一九九九年に比べ約三割増えた(〇四年度)という損害保険料率算出機構の調べからも類推できる。
 調査結果を受け、国交省は事業者への行政処分や指導などの改善策を急ぐ計画だ。指導や法令順守は当然だが、それだけで問題が解決するだろうか。
 運転手の労働強化や事故多発は、バブル崩壊後の経済活性化をめざして国が進めてきた規制改革の「負の側面」が露呈したと見るべきだろう。タクシー業界で起きたのと同様の事態が、貸し切りバス業界でも起きていたのだ。
 規制改革による競争激化は、接客態度の向上や料金値下げという恩恵を消費者にもたらした側面もある。だが、その結果、一番大切な「安全」が脅かされるのでは消費者にとっても本末転倒だ。
 「八割が法令違反」の実態は、その本末転倒が、実際に起きている恐れを示していよう。国民の安全にとって、重大な事態との危機感を持つべきだ。
 規制緩和が動きだした九〇年代半ば、経済評論家の内橋克人氏らが著書などで規制緩和のもたらす負の側面について強く警告していたのを思い出す。
 運輸や交通、食品や医療など、国民の命や安全にかかわる分野では、規制緩和のマイナス面に特に留意すべきだ。その視点に立って、国の運輸行政における規制緩和策を見直す必要がある。

[京都新聞 2007年06月05日掲載]

核放棄履行  先延ばしは許されない

 北朝鮮の核放棄をめぐり、六カ国協議(ことし二月)で合意した「初期段階措置」の履行期限から、一カ月半が過ぎた。
 初期段階措置では、北朝鮮が寧辺の核施設を停止、封印する代わりに、五カ国が重油五万トン相当のエネルギー支援を行うことなどが決まっている。
 履行が遅れている直接の原因は、マカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア(BDA)」から、北朝鮮関連口座の資金二千五百万ドル(約三十億円)の移管が難航しているからだ。
 北朝鮮は核放棄より「資金移管の実現が先」と譲らない。六カ国協議の再開も拒否している。かたくなな態度は、今後も資金移管に代わる新たな注文を次々に突きつけ、核放棄を先延ばしにする事態を予想させる。
 行き詰まり状態を打開するには、資金移管を受け入れる金融機関を米国が早く探し出し、問題を終結させることだ。とはいえ、資金移管は金融制裁解除にかかわる米朝の直接協議で決まったことで、六カ国協議の枠組みとは本来、かかわりがない。
 問題をすり替えて粘る北朝鮮に、各国による包囲網を崩してはなるまい。あくまで六カ国協議の合意履行を先に果たすよう迫っていくべきだ。
 国連安保理による制裁決議(二〇〇六年十月)に加え、最近の北朝鮮を取り巻く情勢は厳しさを増してきた。
 ソウルで先月開かれた南北閣僚級会談は、「初期段階措置」履行を求める韓国に対し、食糧と核を結びつける交渉を北朝鮮が拒否して決裂。韓国はコメ四十万トンの支援を先送りした。
 融和政策を推進する盧武鉉政権も、いま韓国が単独で支援を行えば、国際社会から強い非難を浴びると判断したに違いない。包囲網を狭めていくうえでは適切な判断といえよう。
 南北閣僚級会談に続いて、済州島で開かれた日中韓三カ国の外相会談では、核放棄と日本人拉致問題解決を引き続き迫っていくことで一致した。
 日中韓だけではない。ロシアも硬化している。プーチン大統領は先月末、核実験を強行した北朝鮮を制裁する大統領令に署名した。軍事物資やぜいたく品の輸出を禁止、核やミサイル開発に関係する人物の入国も許さない。
 北朝鮮の兵器の多くが、ロシア製技術を土台にしていることを考えれば、影響は大きい。かつての友邦も、核兵器にまで手を染める北朝鮮は看過しない、という意思表示だろう。
 青森県の海岸に脱北者家族が漂着、人権と食べ物を求めての決死の脱出だったことを明かした。一般国民の窮乏ぶりがあらためて国際社会に衝撃を与えた。資金移管問題にこだわって得る利益はどれほどか。北朝鮮は、選択肢がもはや一つしかないことを自覚すべきだ。

[京都新聞 2007年06月05日掲載]

【京都新聞・凡語】

 衣替えのシーズン。世はクールビズ時代とあって、沖縄のかりゆしウエアで閣議も。と思えば値札も衣替えとは。値上げラッシュとなっている▼身近な 食料品や日用品が続々。食用油や果汁飲料に続いてマヨネーズが十七年ぶりに上がる。コーヒーは二年連続だ。ティッシュペーパーやトイレットペーパーも。さ らにガソリンや航空運賃からインターネット接続料に至るまで▼理由はさまざまだ。原油高や円安の影響に加え目新しいのはバイオ燃料の需要増。原料のトウモ ロコシやサトウキビ価格高騰のあおりで大豆などの転作が進み、減産した農産品の価格が上昇。干ばつやハリケーンの影響も▼いずれパンやラーメンの値上げも ありそうだが、六月の主役は何といっても住民税だ。そろそろ納付通知が届くが、京都市で年間十万円以上増税になる場合もあるというからあらかじめ覚悟を▼ 国と地方の税源移譲に伴うものだが、一月から実施されている所得税減税と一体の住民税改定で基本的には増減税ゼロというのが言い分。ところが同時に定率減 税が廃止されるため実際には増税感が強まるのは避けられない▼所得税20%、住民税15%は恒久減税だったはずが昨年から半減、今年から完全廃止で最大十 四万円超の負担増。国民、厚生年金の保険料も上がった。わざわざ軽装にしなくとも、国民の懐は本物のクールビズ。

               

[京都新聞 2007年06月05日掲載]


【朝日・社説】2007年06月05日(火曜日)付

支持率急落―年金を政争の具にする愚

 安倍内閣の支持率が急落した。朝日新聞の世論調査では30%と、政権発足後の最低を記録した。不支持率は49%で、これまでの最高だ。

 下落の理由は二つある。ひとつは「宙に浮いた年金」問題と、政府の強引な対応への怒り。そして松岡前農水相の自殺で改めて浮き彫りにされた「政治とカネ」の問題が追い打ちをかけた。

 就任以来続いていた支持率下落が止まり、4月からは上昇基調に転じたと首相や自民党は喜んでいた。この二つのテーマが持つ政治的破壊力の大きさを思い知らされたことだろう。

 急落の引き金となった年金問題は、選挙を前に、とくに深刻かもしれない。3年前にも、当時の小泉首相や閣僚らの年金未納などが次々と明らかになり、参院選での自民敗北につながった。

 それだけ国民が強い関心を寄せるテーマなのだ。少子化や老後への不安、団塊世代の大量退職などを背景に、関心はさらに強まっている。暮らしと密接にかかわる問題であり、不公正や不公平があれば、人々は敏感に反応する。

 首相は先週の党首討論で、こう小沢民主党代表に呼びかけた。「年金は国民の信頼があって初めて成り立つ。お互いに政党同士の政争の具にすべきでない」

 その通りだと私たちも思う。

 だが、その日の夜、与党は受給漏れ年金の時効をなくす特例法案の審議をわずか4時間で打ち切り、採決を強行した。参院選に向けて、一刻も早く「火消し」に入ろうという思惑は見え見えだった。

 この問題を掘り起こしてきた民主党にも、参院選で与党批判の目玉にしようとの狙いがあったのは確かだろう。だが、自民党はさらに「政争の具」への拍車をかけようとしている。

 年金番号の統合を決めた時に厚相だった菅直人・民主党代表代行を非難するビラをつくり、先週末から大量にばらまき始めた。統合する際に不手際があったため5千万件もの年金記録が宙に浮くことになった、という理屈だ。

 首相も、地方での演説で菅氏を名指しで非難している。だが、菅氏の厚相時代を含め、それ以後の政権は自民党が握ってきた。自民党が菅氏に責任をなすりつけるのはお門違いだろう。

 そもそも、年金問題への関心の高さに目をつけたのは首相だったのではないか。社会保険庁に対する国民の怒りを引き寄せるため「社保庁解体」を参院選の売りものにし、その労組を支持母体とする民主党への批判につなげる――。安倍政権にはそんな思惑があった。

 それが逆に政権批判を招いてしまった。皮肉な展開である。

 国民が政治に求めているのは「宙に浮いた」ものも含めて、年金をきちんと受け取れるようにすることだ。そのために社保庁をしっかり機能する組織に改める。この問題を、選挙目当ての「政争の具」にしてはならない。

食事の宅配―おいしく食べて介護予防

 茶葉のてんぷら、ナスとオクラの煮物、新タマネギのサラダ、サクランボ。

 70歳の女性の家に届いた昼食を、ホームヘルパーが器に移して温める。ごはんは女性が自分で炊く。認知症で要介護1だが、食事の宅配サービスがあるので自宅で一人暮らしができる。安否の確認を兼ねたヘルパーの滞在は10分だ。

 次の訪問先の夫婦はともに80代。妻は要介護4で、日中も横になって過ごすことが多い。ヘルパーは妻を起こして、入れ歯と口の中を洗った。食事をおいしく味わってもらうためだ。届いた食事を温め、ひと口ひと口、介助する。

 要介護2の夫は1人で食べられる。夫婦の食べた量や体調を観察し、記録をつけて家を出る。30分の滞在だった。

 岐阜県瑞穂市が、ダイニングサポートと呼ぶ独自の高齢者向け配食サービスを始めて4年目になる。介護予防には栄養豊かな食事が何より大切と考えてのことだ。いま50人ほどが利用している。1食600円。食べやすいとろみ食もある。

 食事のサービスは、介護保険と別枠で行われている。いまの介護保険は訪問先で1軒ごとに調理する家事援助だけを対象にしているからだ。

 ヘルパーは利用者宅で食事作りをする代わりに食べる準備や口腔(こうくう)ケア、食事の介助に専門性を発揮する。定期的に体調や体力を調べ、効果を確認している。

 市からこの事業を任されている介護事業所「新生メディカル」は、サービスを始める前に、ヘルパーが利用者の自宅で作っている食事の内容を2週間にわたって調査し、驚いた。

 ある男性の家では毎日どんぶり物だった。うどんと、おもちが1日おき。そんな家もあった。食事は利用者の希望を優先する。しかし、変化に富んだ献立を思いつく高齢者は多くない。いまの仕組みでは栄養の偏りは避けられない。

 高齢期を元気に過ごすには、免疫力や筋力を高める質の高い食事が欠かせない。浜松大学健康プロデュース学部の金谷節子准教授が、ある民間病院で1000人あまりの入院患者を対象に調査したところ、栄養状態が悪い高齢者は、いい高齢者より入院日数が1.6倍長く、医療費も34%多くかかった。

 栄養士がいる施設とちがって、在宅の高齢者は十分な栄養をとれているのだろうか。とても心配だ。

 介護保険の利用者は年々増えて05年度の介護給付費は5兆8000億円に達している。そのうち52%が在宅サービスだ。在宅の利用者がどんな食事をしているのか、全国的な調査をする必要がある。

 栄養をそこなわない真空低温調理など、宅配に向いた調理法も開発されている。おいしくて栄養のある食事の宅配サービスを地域ごとに充実させて、介護保険に組み込むことはできないものか。

 一からの食事作りはヘルパーにとっても大変だ。介護保険の効果的な利用という点からも検討の価値がある。

【朝日・天声人語】2007年06月05日(火曜日)付

 米兵だった息子をイラクで亡くしたシンディ・シーハンさん(49)といえば、「反戦の母」として日本でも知られている。反イラク戦争の象徴的な存在だった彼女が、運動から身を引く。そんなニュースが、先日米国から伝わった。

 決別する思いがネットで公開されている。「(野党である)民主党の“道具”と中傷された」「イラクでの死者より、誰が次のアメリカン・アイドルになるかの方が大事な国」……。政治と国民への失望の言葉が連なっていた。

 「なぜ息子は死ななくてはならなかったのか」。素朴な問いが、彼女を駆り立てた。2年前、ブッシュ大統領の牧場前に座り込むと、賛同の渦が巻き起こった。反戦派から英雄視され、運動の「顔」として奔走してきた。

 一方で、大統領支持者からは「テロリストに味方する行為」などと非国民呼ばわりされた。もとは平凡な主婦である。身に降りかかる称賛と誹謗(ひぼう)、どちらも大きなストレスだったに違いない。

 〈身に沁(し)みて思ふ夜のあり戦場に曝(さら)すべく子を育(はぐく)み居らねば〉。戦後ほどなく、愛知県のある母親が詠んだ歌だ。時代も状況も違うけれど、この母親もシーハンさんも、戦争というものを通して、「命を生み出す自分」を強く意識した人だろう。

 増派を決めた米政府はなお息子たちを戦火にさらし、イラクでも母親の悲嘆はふくらみ続けている。シーハンさんは、戦争に終止符を打てるかどうかは「皆さん次第」だと、米国民に最後のメッセージを残した。書き終えて、しばらく泣いていたそうだ。


【毎日・社説】

社説:防災白書 高リスクを認識した対策を

 災害発生のリスクは、これまでにないレベルに高まっている、と内閣府がまとめた今年の防災白書が警告を発している。

 第一に、自然災害の発生要因が変化しているせいだ。地球の温暖化の影響で大雨の頻度が増加したり、熱帯性低気圧の強度が強まっているという。とくに集中豪雨は最近10年間に急増し、「滝のように降る」1時間50ミリ以上の降雨の回数は30年前の1・6倍に、「恐怖を感じる」同100ミリ以上の降雨は同じく2・3倍に増えた。防災白書として初めて温暖化問題を取り上げ、影響を検討することにしたのもそのためだ。

 第二に、生活空間や社会構造が防災力を低減させている。たとえば地下空間の利用が盛んになり、東京都内では地階のある建物が20年で倍増した。その結果、ちょっとした降雨量でも浸水被害が多発している。ビルの超高層化に伴って高層マンションも激増したため、家具類の転倒の危険や、ライフラインが停止した場合の被害は従来よりも深刻化している。

 高齢化によって1人暮らしのお年寄りも最近10年でほぼ倍増し、とくに女性は高齢者の5人に1人を占める。災害時の避難などの支援態勢の強化が必要だ。核家族化で家族の規模が縮小している上に、子供の塾通いなどで家族が別々に生活していることも問題を複雑にする要因だ。地方の過疎化は深刻で、中山間地では土砂災害などで孤立する恐れもある……と懸念材料を挙げればきりがない。

 それなのに、災害に対する住民の意識や備えは心もとない状況だ。転倒した家具の下敷きになる危険は知られているはずなのに、家具類を固定している人は約2割にとどまる。昨年の千島沖地震では津波警報が発令されても、実際に避難した人は対象人口の1割前後だけだった。

 白書が指摘するように、行政や住民、企業などがリスクの高まりへの認識を深め、それぞれが日常的に「減災」のために行動すべきは当然だ。企業には意識改革も求められている。首都直下地震では約650万人もの帰宅困難者が出ると予測され、それでなくても不足している首都圏の避難所などの負担が増大化する。帰宅困難者対策には、各企業が真剣に取り組まねばならない。オフィスビルに入っている企業同士の連携も不可欠だ。一次的な被害は防ぐことが難しくても、二次的被害は努力と工夫次第で減殺可能と心得、できることから着実に備えを固めたい。

 気掛かりは、高齢者や身体障害者らを把握する「災害時要援護者」の対策が遅々として進まないことだ。一人一人の支援プランを練り上げておくべきだとされるのに、整備を終えたのは全国約1800の地方公共団体のうち20団体にすぎない。しかも個人情報保護法が災いして、約85%の自治体では福祉部局と防災部局との情報の共有ができていないというから驚く。いざという場合に住民の命を守れない法制度は、どう考えてもおかしい。同法の見直しも含め、「減災」に必要な法整備も急務だ。

毎日新聞 2007年6月5日 東京朝刊

社説:脱北者 政府は課題を突きつけられた

 北朝鮮から小型船で脱出し、青森県深浦町沖で発見された家族4人が保護されている。

 4人は青森県警の調べに対して「生活が苦しく、1日おきにパンを食べるのがやっとだった」などと生活苦を理由に北朝鮮から逃げてきたと供述している。

 また先月27日に清津(チョンジン)付近を出港し、「船が揺れたので、船にしがみついて食事も話もできなかった」と航海は極めて厳しい状況だったことを語っているという。

 一方で、4人のうち1人が覚せい剤を所持していたことも明らかになった。捜査当局は4人の目的と具体的な行動の全容を明らかにすることが肝要だ。

 政府は4人について人道的に対応する方針だ。韓国行きを希望しており、3日の日韓外相会談では韓国に移送する方向で一致した。

 昨年6月には北朝鮮人権法が成立した。同法には脱北者と支援民間団体を保護・支援する努力規定が盛り込まれており、塩崎恭久官房長官は同法の趣旨に沿って対応をとる考えを明らかにしている。

 強制送還した場合、4人の命にもかかわることになり人道的見地からの対応は当然だろう。

 今後の課題は、今回と同様のケースが続出した場合、原則に沿ってきちんとした対応がとれるかという点だ。脱北者が日本海を船で渡るのは今回が2度目で極めてまれなケースだが、再び起きないとは言い切れない。

 むしろ脱北者をめぐる環境は大きく変化している。

 脱北と言えば中朝国境など陸路が中心だが、最近では北京五輪なども控えて中国当局の取り締まりも厳しくなった。このため周辺国で保護を求めるケースが多くなっている。

 韓国は06年には2000人以上も受け入れ、国内には1万人を超える脱北者が住むという。

 4人は韓国行きを希望したが、仮に日本で暮らすことを望む脱北者が現れた場合、政府はどう対応するのか。「人道的見地」を貫けるのだろうか。施設などの受け入れ態勢も十分ではない。

 北朝鮮人権法にしても直接、脱北者の受け入れにつながるものではない。ただ同法の背景には、拉致問題を「解決済み」と譲らない北朝鮮に対して、脱北者支援によって圧力をかける狙いもあったはずだ。

 その意味でも日本へ船で渡る脱北者が増加することを前提に、さまざまなケースを想定した検討や議論が必要だろう。脱北者支援を掛け声倒れにしてはならない。

 また今回はたまたま日韓外相会談がセットされており、早期に韓国との連携をとることができた。恒常的に脱北者問題で、韓国をはじめ近隣諸国と意見交換をしておくことが必要だ。

 一方、沿岸警備も問題を残した。海上保安庁は排他的経済水域や領海での不審船の航行を許したことになる。

 高速特殊警備船などで日本海のパトロールを強化していただけに、どこに盲点があったのかを検証し対応策をとるべきだ。

毎日新聞 2007年6月5日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:「実にこれ天下の二大私学が…

 「実にこれ天下の二大私学が運命を賭しての決戦である。学風の戦いである。諸君といえども徒(いたずら)に教場にノートを抱いて、文食い虫に甘ん じている秋(とき)ではない。諸君! 希(こいねがわ)くばノートを捨てよ。ペンを投ぜよ。しかして光栄ある我が学園の運命を擁護せよ」▲えらい気合だ が、これは早慶戦に向けた慶応の学生大会での法科教員の演説だ。教師がこれだから学生の興奮は尋常ではなく、双方1勝1敗のあと試合取りやめとなった。 1906年、その後19年間にわたる早慶戦中止をもたらした応援過熱である▲何しろ1回戦は勝った慶応の応援団が試合後に大隈重信邸の前で「慶応万歳」を 叫び、2回戦ではすでに故人だった福沢諭吉邸前で早稲田応援団が「早稲田万歳」を唱え旗行列する有り様だ。試合中止は3戦目の騒乱必至と見た学校当局の断 だった▲それから100年の歴史を刻んだ早慶戦だが、久々に「ノートを捨てよ。ペンを投ぜよ」の熱気がよみがえったようだ。斎藤佑樹投手を擁して東京六大 学春季リーグ完全Vを果たした早稲田の優勝パレードは、ちょうちんの列に市民の熱い祝福を浴び、近年にない盛り上がりを見せた▲それにしても10年ぶりに 六大学リーグ戦で神宮球場を満員にした「佑ちゃん人気」おそるべしである。いや人気ばかり注目しては失礼だろう。1年生の春のリーグ戦4連勝は80年ぶ り、さらに昨夏の甲子園、秋の国体、さらにリーグ戦と負け知らずで優勝を勝ち取った力と運もすごい▲当人は「昨夏からの運も使い切るころ。これからが実力 を試される」と淡々としたものだ。その勝っておごらずの心構えがまた人気を集めそうだが、応援過熱の逆効果は早慶戦の故事の示す通りだ。贔屓(ひいき)の 引き倒しは禁物である。

毎日新聞 2007年6月5日 東京朝刊


【読売・社説】

骨太の方針 政策の優先順位を明確にせよ(6月5日付・読売社説)

 成長戦略、行財政改革から環境、教育、治安・防災……。盛り込んだ項目は多岐にわたるが、対象が広がりすぎて、逆に焦点がぼやけてしまった。

 当面の経済財政運営の指針である「骨太の方針2007」の素案がまとまった。安倍内閣では初の「骨太の方針」だ。参院選へ向けて、経済政策に関する政府・与党の事実上のマニフェスト(政権公約)とも位置づけられる。

 素案は、人口減の中で経済成長を持続させ、生活の質を高くしていくことが日本経済の最重要課題だとした。人口増を前提にした諸制度を、根本から見直すべきだと訴えている。その通りである。問題は、そのための実効ある政策だ。

 素案が打ち出した政策は、参院選を意識してか、格差問題や地方への配慮が目立つ一方で、消費税問題など、有権者の痛みを伴う制度改革は、避けて通った印象がぬぐえない。

 成長力の強化戦略は、就労支援や中小企業で働く人の賃金引き上げなど、格差の固定化を防ぐ施策が中心だ。地域経済の成長力向上のためにと、地方の中堅企業の経営再建を支援する「地域力再生機構」を創設する方針も明記された。

 ダイエーやカネボウの企業再生を手がけた産業再生機構の地方版だ。だが、すでに経済産業省が始めた地方の中小企業再生支援策や、民間の事業再生ファンドと、機能が重複しないのかどうか。議論が十分とは言えない中で、あえて創設方針を盛り込んだ。

 景気回復が遅れている地方への配慮をアピールする狙いもあるのだろう。

 一方で、農産物の市場開放につながる経済連携協定(EPA)の加速方針などは、素案段階では文言の調整が終わらずに、空白のままだ。

 喫緊の課題である財政健全化に関しては、昨年の「骨太の方針」で示した歳出改革を実現するとしている。だが、歳出削減だけで財政再建は達成できない。

 素案は、税制改革については、今秋以降、消費税を含む本格的な議論を行うとし、「世代間・世代内の公平の確保」など、抽象的な「基本哲学」しか示さなかった。国民が知りたいのは、より具体的な改革の方向性ではないか。

 「骨太の方針」の策定は今年で7年目だ。政策運営の基本指針として定着し、最近では、予算獲得を目指す各省庁が、それぞれの政策を盛り込もうと熱心に動いている。

 その結果、内容は拡散気味だ。正式決定の際には、安倍内閣として何を最重点施策として取り組むつもりなのか、優先順位を明確に示すべきだろう。
(2007年6月5日1時49分  読売新聞)

大林組 トップの引責辞任で出直せるか(6月5日付・読売社説)

 談合と決別したはずだったのに、これほど深く談合に関与していたとあっては、経営首脳陣の引責辞任も当然だろう。

 ゼネコン大手の大林組が、和歌山県の官製談合や名古屋市の地下鉄工事談合に続き、大阪府枚方市の談合でも主導的な役割を果たしていたことが明らかになり、社長辞任と創業家出身会長の取締役降格に追い込まれた。

 2005年末にゼネコン大手各社が談合決別宣言をした後、大手トップが引責辞任するのは初めてだ。加えて、代表権のある副社長2人を含む取締役4人も退任するという異常事態である。

 日本社会に深く根を下ろした談合システムから、何としても抜け出さねばならない。ゼネコンだけでなく、公共工事を発注する側の国や地方自治体も、これを機に決意を新たにすべきだ。

 大手ゼネコンが、談合から完全に手を引くという決別宣言には大林組も加わっていた。法令順守を社内に徹底し、談合の仕切り役だった幹部らの配置転換などを進めてきたはずだ。

 しかし、決別宣言翌年の06年2月と6月に入札が行われた名古屋市発注の地下鉄工事でも、大林組の名古屋支店元顧問が逮捕され、宣言後も談合を続けていたことが明らかになった。業界の談合構造や企業体質は変わっていなかった。

 枚方市の官製談合では、清掃工場建設工事を巡り、大林組の顧問ら3人と大阪府警捜査2課の警部補、同市副市長らが逮捕された。顧問らは枚方市長の知人の警部補らを仲介役として市側に接触し、工事受注の謝礼として警部補らに計4000万円を支払ったとされる。

 問題の入札が行われたのは宣言の直前だった。だが、顧問は府警の特捜刑事で談合を取り締まる側の警部補をフィクサーとして利用していた。談合の手口が極めて悪質だ。

 府警も、事実関係を徹底的に究明し、膿(うみ)を出しきらねばならない。

 大林組には、関西地区の談合組織結成に力を注ぎ、“ドン”と呼ばれた元役員がいた。元役員が退職した後も、関西や東海地区で談合の仕切り役を務めてきたのは、大林組の関係者だ。

 談合が発覚するたび、大林組は、担当役員の辞任や報酬の一部返上などの措置を講じてきたが、その場しのぎの対応だったというほかない。

 もはや談合を「必要悪」などと済ませられる時代ではない。社内の談合体質を一掃しなければ、経営トップが責任を問われることが明確になった。大林組だけではない。他のゼネコンもそれを肝に銘じなければならない。
(2007年6月5日1時50分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月5日付

 孔子がいまの中国山東省、名山で知られる泰山のふもとを通りかかると、婦人が墓で泣いていた。わけを聞けば、かつては夫が、今はまた子供が虎に殺されたという◆この地を去ればいいものを。孔子の問いに婦人は、「ここには過酷な政治がないので」と答えた。孔子は弟子に告げた。「これを識(しる)せ(このことを記憶しておきなさい)、苛政(かせい)は虎よりも猛(たけ)きなり」と◆相手が獣ならば、抵抗のしようもある。「板子(いたご)一枚、下は地獄」の海には、なすすべがない。ときに、虎よりも恐ろしかろう。中国の古典「礼記(らいき)」に記された教えは、「苛政は海よりも猛きなり」と言葉を変えて現代に生きている◆「脱北者」の家族4人を乗せた漁船が青森県の港に漂着した。濃霧に助けられて官憲の目を逃れ、北朝鮮の清津(チョンジン)を出航したという。海が荒れればひとたまりもない、横幅が2メートルにも足りない小舟である◆一家は向こうで、「1日おきにパンを食べるのがやっと」の生活だったと話している。所持品のなかに微量の覚せい剤が見つかった。タコ漁で生計を支える20代後半の息子が自分で用いるためという。すさんだ暮らしぶりが浮かぶ◆ 核放棄さえ実現すれば「北」問題はすべて片がつく。そう楽観している国もある。脱北者の声に耳をすまし、「これを識せ」。孔子の言葉を借りて贈る。
(2007年6月5日1時50分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】支持率急落 首相は慌てずに初心語れ

 「年金不信」や「政治とカネ」を背景に、各種世論調査で内閣支持率が急落している。とくに年金記録紛失問題は政権にとって大きなダメージであり、対応を誤れば政府の年金政策全般への信頼を失わせかねない。

 安倍晋三首相は、これらに的確に対応することが不可欠だが、参院選を控えている時期だからこそ、政権の原点である「新しい国づくり」をどう実現するか、うろたえることなく国民に具体的かつ明瞭(めいりよう)に語るべきである。

 2、3の両日行われた産経新聞社とFNNの合同世論調査では、内閣支持率が32・3%まで落ち込み、不支持率は50%に迫った。

 年金問題や自殺した松岡利勝前農水相への安倍内閣の対応について、いずれも7割近くの人が「評価しない」と答えた。支持率低下の直接的な原因が数字に表れている以上、年金受給者の疑問や不安に応え、かつ政治資金規正法改正を実現するなど、当面の課題に誠実に取り組むしかない。

 深刻なのは、首相の指導力について7割近くの人が評価しておらず、その傾向が2カ月前の前回調査より強まっていることである。

 憲法改正や教育再生などを通じて国のあり方を見つめ直し、主張する外交を展開しようといった政権の基本的姿勢は、時代に合致したものだ。

 政権のメッセージが国民に十分に伝わっていないとすれば、首相はもっと説明の仕方を工夫すべきだ。また、首相を支える与党は、政権の意義をどの程度、共有できているのだろうか。

 世論調査では、参院選の最大の争点として第1に年金、第2に格差が挙がったが、それに次ぐテーマは憲法改正だった。首相が在任中の憲法改正を目指すと表明し、国民投票法が成立したことは、国民の憲法への関心を徐々に高めているといえよう。

 いまだに「憲法改正など争点にはならない」といった声が自民党幹部からも聞こえてくるのは、時代認識の欠如ではないか。

 天下り規制のための公務員制度改革の実現も、安倍内閣を性格付ける重要テーマの一つだ。参院選日程や国会会期の問題だけで、関連法案の成立を簡単にあきらめるのか。政府・与党はぎりぎりまで知恵を絞るべきである。

(2007/06/05 05:09)

【主張】露外相3島訪問 サミットで正式に抗議を

 ロシアのラブロフ外相が日本固有の領土である北方四島のうち国後島、色丹島、歯舞諸島の3島を初めて訪問した。プーチン政権がドイツの主要国首脳会議(サミット)で行われる安倍晋三首相との首脳会談を目前に、「領土問題で妥協の余地はない」との強硬なメッセージを発信したとみてよいだろう。

 1993年10月、故エリツィン前大統領が来日して調印した「東京宣言」は4島の名前を明記し、「法と正義」の原則を基礎として解決への交渉継続をうたっている。北方領土が係争中である現実を日露双方が認めていながら、一方の外交責任者が領土を訪問するのは、明らかに同宣言違反だ。自由と民主主義、法治主義の価値を共有すべきサミット自体の精神にも背く。

 しかも外相は、日本の漁船が昨夏、その沖合でロシア国境警備艇に銃撃され乗組員1人が死亡した歯舞にまで足を延ばした。挑発行為というほかない。モスクワの日本大使館はロシア側から事前に知らされていたとの情報もあるが、厳重抗議した形跡はない。

 ラブロフ外相は4島の63%と最大の択捉島は訪れなかった。在京外交筋は「択捉はロシアのもので係争地でさえないが、他の3島は交渉の対象にはしてもよい-とのシグナルとも受け取れる」と指摘する。そうだとすると、クレムリンが日本側に昨年来、顕著に浮上している「3島返還論」の支持勢力に呼応して、日本の世論の新たな分断工作を仕掛けてきたともいえる。

 ロシア側は一島たりとも返還の意思はないのに、分断で時間稼ぎをして結局は問題をうやむやにしてしまう作戦だ。日本への迎合といえば、同外相は色丹島の日本語を学ぶ生徒から日本の歌「さくら」を披露されたという。

 安倍首相はロシア外相の北方領土訪問をサミットの場で正式に抗議すべきである。係争中である以上、機会均等の立場から、麻生太郎外相の北方領土訪問も要求できるはずだ。

 これとは別に、先週末にはカムチャツカ半島沖のベーリング海で17人が乗り組んだ富山県の漁船「第88豊進丸」がロシア国境警備隊に拿捕(だほ)される事件が起きた。「漁獲量超過」の疑いで臨検後、港へ曳航(えいこう)中という。漁船銃撃事件で被弾した船体の返還もまだだ。後手外交のツケがたまってゆく。

(2007/06/05 05:08)

【産経抄】

 青森県で保護された北朝鮮からの脱北者家族4人について、いろいろ興味深いことがわかってきた。息子のタコ漁の収入では、1日おきにパンを食べるのがやっとといい、それでいて中国の人民元を所持し、少量ながら覚醒(かくせい)剤まで見つかった。

 ▼かの国の内情を知るいい機会なのだから、じっくり話を聞いてもらいたい。「人道上の観点から対応する」という安倍晋三首相の方針に異存はない。ただ、4人が望む韓国への移送が、あまりに短期間で実現するとすれば、「やっかい払い」の印象も否めない。

 ▼ 中国の民主化運動の象徴である魏京生氏(57)が、日本への入国を拒否されたニュースも気にかかる。魏氏は、米・ニューヨークからグアムに向かう途中だっ た。乗り継ぎ地で72時間以内ならビザなしで入国できる「寄港地上陸」を利用して、都内で開かれた「天安門事件18周年記念集会」に出席し、講演する予定 だったという。

 ▼くわしい事情はわからないが、「天安門」が引っかかる。18年前のきのう、300人以上の死者を出し、世界に衝撃を与えた事件について、中国政府がいかに神経をとがらせているか、小紙の連載企画『トウ小平秘録』に寄せる関心の高さでもうかがえる。

 ▼まさかとは思うが、圧力を受けて、あるいは顔色をうかがっての「やっかい払い」だとしたら、こんな情けないことはない。1998年に台湾を訪問していた魏氏と会談したことがある李登輝前総統は、いま「奥の細道」をたどる旅を堪能している。

 ▼訪日のたびに横やりを入れてきた中国政府は今回なぜかおとなしい。「相手を知り、決して受け身になってはならない」。中国にどう対応すべきか。きのうの小紙に載った李氏の言葉に思わず膝(ひざ)を打った。

(2007/06/05 05:10)


【日経・社説】

社説1 地域再生、規律ある機構へ中身詰めよ(6/5)

 安倍政権となって初の「骨太の方針」(経済財政改革の基本方針=仮称)のとりまとめ作業が経済財政諮問会議を舞台に大詰めを迎えた。会議では首相が力を入れようとしている地域経済の活性化策に関連して、民間有識者議員が「地域力再生機構」の新設を提案している。機構の創設は骨太方針の柱の1つになる。

 機構は3月に解散した産業再生機構の地方版といえるもので経営不振に陥った中堅企業の事業再生を手助けする。第3セクターの再生や破綻処理の調整役も担うとみられる。

 不振企業の事業再生については、この数年間に民間ファンドがかなり育っている。官主導型の組織を新設するからには対象企業を厳しく絞り込む歯止め策が必要だ。地元政治家などの不透明な介入を防ぐ仕組みも欠かせない。規律ある組織づくりを目標に、大田弘子経済財政相は具体的な中身を早急に詰めてほしい。

 機構の資本金は500億円で、預金保険機構などが出資する株式会社とする。設置期間は5年。産業再生機構などで事業再生を手がけた経験を持つ人を中心に専門家を集める。

 大都市と地方との経済力格差が深刻になっており、地域企業の再生は喫緊の課題だ。地方自治体が野放図につくってきた第3セクターが赤字体質に陥り、財政健全化の足かせになっている現状も改善する必要がある。機構に期待されるのはそうした役割だが、民間ファンドの再生機会を邪魔するような組織肥大化は許されない。民間が手がけにくい第3セクターの再生や破綻処理の調整に重きを置くのは1つの方向だろう。

 全国の第3セクターの3割強が赤字決算を出し、債務超過も約370ある(2005年度)。不振第3セクターの破綻時に、自治体が損失を肩代わりする契約を金融機関と結んでいる場合も多く、破綻処理に踏み込めない一因になっている。

 今国会で審議中の地方財政健全化法案が成立すれば、第3セクターの債務も自治体本体の債務と合わせて削減を迫られる。機構は第3セクターに業績開示を徹底させ、不採算事業や不必要業務を整理縮小させようとする自治体の背中を押す役割を担ってほしい。公共交通機関など住民生活に欠かせない第3セクターの経営再建では、再生ノウハウを持つ人材の派遣に徹する必要があろう。

 全国の商工会議所などが設置する中小企業再生支援協議会は企業再生に十分な力を発揮していないとの指摘もある。新たに機構をつくるなら屋上屋を架すことがないように協議会のあり方を見直すのが筋だろう。

社説2 脱北者への備えと海の守りを(6/5)

 青森県深浦町の漁港に漂着した北朝鮮からの脱北者とみられる男女4人について、日本政府は4人が希望している韓国行きを実現する方向で調整することになった。安倍晋三首相が「人道上の観点から対応する」と言明したことも含め、適切な措置だろう。だが、政府の脱北者問題への備えはまだ十分とは言えない。

 塩崎恭久官房長官は4日の記者会見で、4人を「脱北者」と判断したことを明らかにした。4人は北朝鮮の身分証明書である「公民証」を持ち、青森県警の調べに「自由を求めてきた。北朝鮮には人権がない」などと話しているという。

 命懸けでやってきた夫婦と息子2人の家族とされる4人の処遇については本人たちの意向を十分尊重し、人道的な立場から適切に処理するのは当然だ。これに関連して塩崎長官は「北朝鮮人権法の目的にかなうよう措置を講じる」とも強調した。

 昨年6月、議員立法で成立した北朝鮮人権法には「政府は、脱北者の保護及び支援に関し、施策を講ずるよう努めるものとする」との1項が盛り込まれた。ただ、努力規定にとどまっているのが現状だ。

 同法が想定する脱北者は今回の4人のように北朝鮮から直接日本にきた人たちだけではない。1959年から帰還事業で日本から北朝鮮に渡った元在日朝鮮人や日本人妻らが経済的に困窮した北朝鮮を脱出、中国などを経由して日本に戻ってくるケースが90年代半ばから増え、これまでに100人を超えたという。

 こうした脱北者への日本語教育や就職支援などは所管官庁が外務、法務、厚生労働などと多く、総合的な対策はまだ手つかずと言っていい。今後、様々な経路で脱北者が日本に助けを求めてくる可能性もあり、早急な体制づくりが必要だ。

 北朝鮮船の漂着は、11人が韓国への亡命を求めて福井県福井港にたどり着いた87年1月の「ズ・ダン号」事件以来といわれ、海の守りにも一石を投じた。今回は全長7メートルほどの木造小型船で海上保安庁もレーダーで探知できなかったようだが、仮に工作船だったら失態だった。

 国土交通省は4日、小型船への警戒態勢を強化する方針を打ち出したが、沿岸警備も見直してほしい。

【日経・春秋】(6/5)

 (1)住民たちの寄り合いの場所だった(2)戦国時代に武将が和睦を協議した(3)武田氏と北条氏が婚姻をととのえた(4)桃太郎が家来に団子を配った――山梨県の中央道談合坂サービスエリアでは、地名の由来について以上4説を紹介している。

▼2年前に大規模な官製談合事件が発覚した旧道路公団の施設名として穏当を欠くとみるのか、多くの客が「談合」の意味を聞くそうだ。むろん受注調整の話し合いが地名の元になったはずもないが、日本の入札談合の歴史は遠く江戸初期にさかのぼるというから、地名に疑いの目を向ける人がいても不思議はない。

▼大阪府枚方市の建設工事談合で逮捕者を出した大林組の社長が引責辞任を表明した。決別宣言の後も談合を続けていたゼネコンが指弾された、名古屋地下鉄事件でも大林組は業界の仕切り役だった。その責任をとり副社長らが辞めて2カ月もしないうちに別の事件が出てきたのである。トップが辞任するしかない。

▼枚方では大阪府警の警官や府議会議員も共犯で逮捕された。公共工事予算を甘い蜜と感じて、いろいろな連中が群がる様子を検察の捜査は暴き出しつつある。桃太郎の団子と違って、談合は甘い味がしても麻薬であり毒を含んでいる。そんな分かり切ったことを、大林組の首脳は痛い思いで反すうしているだろう。


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» 共同声明 『私たちは現日本政府の体制変革(レジームチェンジ)に反対します』英語版への当ブログの見解 [エクソダス2005《脱米救国》国民運動]
世界平和の野望さんと《村野瀬玲奈の秘書課広報室》の玲奈さんが中心となって,5月3日の憲法記念日を期して発表された共同声明 『私たちは現日本政府の体制変革(レジームチェンジ)に反対します』は広くブログスフィアに共感を呼び,168点もの賛同署名を集めた.この後も活動はさらに拡大し,矢継ぎ早にフランス語版,ダイジェスト版,中国語版が公開され,1ヶ月後の6月3日には全訳英語版が発表された.失念していたが,実はこの英語版作成に関しては,4月始めに世界平和の野望さんから翻訳依頼のコメントを頂戴しているのだが,当... [続きを読む]

受信: 2007年6月 7日 (木) 03時09分

» 自衛隊「情報保全隊」内部文書公表での志位委員長の会見 (しんぶん赤旗,2007-05-07) [エクソダス2005《脱米救国》国民運動]
共産党の志位委員長は5月6日国会内で記者会見を行い,自衛隊の情報保全隊による大規模な国民監視活動を詳細に記録した内部文書を独自に入手したとして,その内容を公表した.志位委員長は「自衛隊の部隊が,日常的に国民の動向を監視し,その情報を系統的に収集しているのは動かしがたい事実であり,違法,違憲の行為だ」と述べ,政府に対し情報保全隊の活動の全容を明らかにし,ただちに監視活動を中止するよう求めた.→【記者会見ムービー】 共産党が自衛隊の内部告発者から入手した文書は,2003年12月から2004年3月の... [続きを読む]

受信: 2007年6月 8日 (金) 14時23分

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