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2007年6月 8日 (金)

6月8日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年6月8日朝刊)

[陸自市民監視]この人権感覚は問題だ

 共産党の志位和夫委員長は、陸上自衛隊の情報保全隊が自衛隊の活動に批判的な市民団体のほか政党、労組、ジャーナリスト、宗教団体などの動向をまとめた「内部文書」を入手した。

 調査リストには自衛隊のイラク派遣に反対する集会やデモなどの関連だけで四十一都道府県の二百八十九団体・個人に上り、高校生も含まれている。

 県内ではイラク戦争に反対した市民団体ら十三団体のデモ行進やビラ配りなど十五件も入っていた。

 そもそも自衛隊のイラク派遣に反対する市民運動は、監視が必要な異常な行為なのか。政府批判、自衛隊批判は「言論の自由」「報道の自由」によって保障された人権の一つではないか。

 今回リストアップされた個人や団体のメンバーらはさぞ驚き、自衛隊への不信感を募らせたことだろう。

 文書は百六十六ページ。陸自東北方面情報保全隊がまとめた「情報資料」(二〇〇四年一―二月)と、情報保全隊本部が作成した「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」(〇三年十一月―〇四年二月)の二種類。

 志位氏は「個人のプライバシーに対する侵害行為で憲法違反だ」と鈴木政二官房副長官に中止を要請したが、塩崎恭久官房長官は記者会見で「法律にのっとって行われる調査活動や情報収集は当然、受け入れられるべきだ」と述べ、許容範囲との認識を示した。

 久間章生防衛相は「自衛隊が情報収集活動をするのは当然」とした。防衛省の守屋武昌事務次官は、反対集会などの情報を集めていたことを認めた上で「自衛隊法に基づく調査研究で違法性はない」と説明している。

 しかし、自衛隊の調査・情報収集に何の限定も加えない発言はおかしい。「自衛」の名目であれば何をしても許されるというわけでもあるまい。調査にもおのずから限界があるはずだ。

 集会の自由、デモ行進の自由などを含む「表現の自由」は、民主主義社会では最も尊重されるべき人権である。写真撮影などで市民のプライバシーを脅かし、市民運動を委縮させるようなことがあってはならない。

 シビリアン・コントロール(文民統制)の原則を忘れるべきではない。このような調査は自衛隊による民の統制につながる本末転倒の発想で、自衛隊の市民監視と批判されるゆえんだ。

 特に沖縄は広大な基地を抱え、歴史的体験を踏まえればイラク派遣への反対運動が起きるのも当然ではないか。

 約五年前、自衛隊で情報公開請求者の個人情報リストを作成していたことが問題になったが、プライバシーを軽視する自衛隊の人権感覚はおかしい。

[コムスン不正]介護を食い物にするな

 虚偽申請により事業所指定を受けていた訪問介護最大手の「コムスン」に対し、厚労省は来年四月以降は指定を打ち切り、新たな指定もしないよう都道府県に通知した。

 これに対抗する形で、コムスンの親会社であるグッドウィル・グループは全事業を別の子会社に譲渡する方針を決めた。

 あからさまな処分逃れである。そっくり事業を譲渡しても不正の体質は変わらない。それを繰り返せば、将来的な介護サービスの質低下は目に見えており、許されるべき行為ではない。

 不正の内容は、雇用実績のないヘルパーを職員数に含めて申請し、介護報酬を不正請求する方法だ。

 東京や青森では、八事業所が指定を取り消される直前になって廃止届を出し、処分を逃れていた。

 厚労省は本社が組織ぐるみで関与していたとみて「連座制」を適用し、全国に展開する介護事業所の八割に当たる約千六百カ所に処分を広げた。当然の措置である。

 コムスンは県内でも事業展開し、十七事業所のうち十四カ所が来年四月から順次閉鎖されることになる。利用者は他の指定事業所へスムーズに移行できると、県は見ている。

 全国では約六万人の利用者がいるとみられ、厚労省は他社を紹介するなどの対応策を自治体に要請した。

 しかし、ヘルパーと介護される高齢者との間にはこれまでに人間関係もできていることなどから、混乱は避けられないだろう。

 仁坂吉伸和歌山県知事は事業譲渡しても認可しない考えを表明し、「法の制裁を逃れようと考える人間が福祉事業に手を出しているのはおかしい」と述べた。利用者側からは「老人介護が食い物にされる」との批判もある。

 厚労省によると、介護保険開始からこれまでに約四百六十カ所が指定取り消し処分を受けた。

 介護サービスの質低下を防ぐためには、報酬審査の厳格化や抜け道をふさぐ制度改革が欠かせない。

【沖縄タイムス・大弦小弦】 (2007年6月8日 朝刊 1面)

 バルト海沿岸の歴史あるリゾート地を高さ二・五メートルのフェンスがぐるりと囲む。総延長十二キロ。「ベルリンの壁が復活したよう」と不快感を示す住民も多い。

 ドイツのハイリゲンダムで主要国首脳会議(サミット)が始まった。サミットに反対する数万人規模のデモや集会が続き、負傷者も出ている。壁は治安対策。関係者と約三百人の住民以外は立ち入ることができない。

 二〇〇〇年の沖縄サミットの時も、過去に例のない厳重な警備が敷かれた。過剰さや生活への影響を心配する声もあったが、サミットはつつがなく終了。警備面からは「大成功」だった。

 来年のサミット開催地に北海道洞爺湖町が決まったのも、警備上の観点からだという。会場が山頂にあり警備が容易と評価された。死者を出したイタリアのジェノバサミット以降、警備のしやすい静養地が会場の主流になりつつある。

 ハイリゲンダムでもそうだが、デモは反グローバル化の訴え。過激な行動をとっているのは一部にすぎない。大半は国家という枠を超え、地球市民の立場から問題を提起する。政府とNGOとの対等なパートナーシップこそ、目指すべき政策決定システム。

 沖縄サミットにおける沖縄側の最大の収穫は、さまざまな国際NGOとの出合いだった。彼らを通して環境や貧困などグローバリゼーションの負の側面がえぐり出された。もう一方の主役であるNGOの声にも耳を傾けたい。(森田美奈子)


【琉球新報・社説】

自衛隊の国民監視 矛先の向かう先が違う

 いつから自衛隊は国民に矛先を向けるようになったのだろうか。陸上自衛隊が自衛隊の活動に批判的な市民団体や政党、労組、ジャーナリストなどの動向を調査した内部文書の存在が6日、明らかになった。国民を守るべき自衛隊が、自衛隊を守るために国民を監視する。本末転倒だ。
 共産党が入手・公表した自衛隊の「内部文書」は2種。「イラク派遣に対する国内情勢の反対動向」(2003年11月―04年2月)と「一般情勢」(04年1―2月)で、いずれも陸上自衛隊の情報保全隊が作成したものだ。
 文書にはイラク派遣に反対する集会やデモ、ビラ配布などを行った289の団体・個人の動きが詳細に記録されている。
 県内でも沖縄弁護士会や沖縄平和運動センターなど15団体、5個人の活動が「監視対象」となっていた。
 7日の参院外交防衛委員会で、久間章生防衛相は、「監視活動」が陸上自衛隊に限らず、海上、航空自衛隊でも行われていた可能性を認めている。
 反対集会への参加者の撮影も行われていた。「撮影は違法」との野党の指摘に久間防衛相は、マスコミ取材を例に「取材が良くて自衛隊が駄目だという法律の根拠はない」と反論している。マスコミの取材と自衛隊の監視を同列に並べる感覚も、いかがなものか。
 自衛隊による「国民監視」の事実を内部文書で暴露された防衛省は「部隊の保全のために必要な情報活動」「情報収集はイラク派遣時に限ったこと」と釈明している。
 これに対し野党は「個人のプライバシーに対する侵害行為で、憲法違反」(共産党)「シビリアンコントロール(文民統制)が全く効いていない」(民主党)「税金を使った憲法違反の行為で言語道断」(社民党)と批判している。
 戦前、戦中は特高警察が国民を監視し、発言によっては逮捕・拘留し、反戦の声を抑えた。加えて、負け戦すら勝ち戦にすり替える軍の「大本営発表」で情報操作し、国民を戦争に駆り立て、多くの国民を死に追いやった歴史がある。
 自衛隊による「国民監視」に、市民からは「戦前の特高警察の復活を思わせる」「戦前回帰に身震いする」などの声が上がっている。
 自衛隊は、存在自体が憲法違反との意見もある。改憲論争の焦点の一つに「9条改正」による自衛隊の“軍隊化”もある。
 国の平和と独立を守り、直接・間接侵略に対処するのが自衛隊の主任務のはずだ。しかし実態が、戦前の特高警察を想起させる国民の監視機関だとするならば、やがて矛先を国民に向ける軍隊に変わりかねない。そんな自衛隊なら、民主国家・日本には不要だ。

(6/8 9:49)

コムスン不正 高齢者への影響が心配だ

 介護サービス最大手のコムスンで発覚した不正で、厚生労働省は同社事業所の8割に当たる1600カ所に対する指定打ち切りと、新規指定禁止を都道府県に通知する厳しい措置をとった。介護への国民の不安が広がっている。少子高齢化が進む中で、民間活力の導入で進められてきた介護制度の抜本的な見直しが求められている。
 「コンプライアンス」という言葉がある。一般的には企業の「法令順守」を意味し企業倫理、経営倫理との関連でも使われている。
 コムスンは、介護職員の水増しや勤務実態のない看護師の常勤登録などの虚偽申請での事務所開設、介護報酬の過大請求などの不正が相次いで指摘されてきた。「経営第一主義、福祉は二の次」の経営は、まさにコンプライアンス違反の典型的な事件である。
 厚労省の業界最大手への制裁は、同社を通じ介護を受けている6万人ともみられる要介護高齢者への「介護の空白」を招く懸念もある。
 県内でも同社の17事業所のうち14事業所が処分対象だ。629人の利用者がいる。心配だ。
 要介護者への影響は大きいが、業界最大手への制裁措置で国は悪質業者の排除、業務改善による信頼回復、そして法令順守の徹底を促すはずだった。
 ところが、コムスンの親会社のグッドウィル・グループは、指定禁止措置に対し、コムスンの全事業を7月31日付で同じ連結子会社の日本シルバーサービスへの譲渡を決めた。事業譲渡で厚労省の制裁措置を回避するのを狙っている。あきれた行為だ。法の裏をかく処分逃れの「脱法行為」と批判されて当然だ。厚労省、都道府県は慎重に対応してほしい。
 老後の生活を支える年金では、社会保険庁の記録不備で5000万件以上が宙に浮いた状態で、年金への信頼が揺らいでいる。その中で介護までもおかしくなったのでは、高齢者の不安は深まるばかりだ。
 介護は命を預かる仕事だ。必要なのは脱法の知恵ではない。信頼回復に向けた法令順守と社会的責任を果たす使命感だ。いま一度、問い直したい。

(6/8 9:48)

【琉球新報・金口木舌】

 ZARDのボーカルとして人気があった坂井泉水さんが亡くなって(享年40歳)12日。過去の作品がオリコンアルバムチャートの上位に続々登場し、歌姫への追悼と再評価の機運が高まっているという
▼がんで闘病生活を送っていた病院の階段から転落するという衝撃的な最期だけに、憶測も呼んでいる。「負けないで」などの楽曲に勇気づけられたファンには切ない思いも募るだろう
▼「転落死」と聞くと、ウルトラマンシリーズの脚本家として知られる金城哲夫さんを思い出す。1976年2月、南風原町の実家で、2階の窓から家の中に入ろうとして足を滑らせ、命を落とした。享年37歳
▼中央で名を馳(は)せた脚本家が帰郷して苦悩する心の軌跡は「ウルトラマン昇天」(92年、山田輝子著)など多くの著作や関係者の証言で描かれている。その死にもやるせなさが残る
▼浦添市で開催された「ウルトラマン伝説展」を最終日の5月27日に見た。金城さんの足跡の大きさをあらためて知ったその日、坂井さんが亡くなっていた
▼次作が期待されていただけに、やはり早すぎる。だが、過去の作品の輝きは失われない。多くの人の心と記憶に刻み込まれ、伝えられていくことだろう。

(6/8 9:46)


【東京新聞・社説】

自衛隊 市民の自由を尊重せよ

2007年6月8日

 陸上自衛隊の情報保全隊が、イラクへの部隊派遣に反対する市民活動を監視していた。言論や思想信条の自由に対する圧力と受け取られても仕方ない。政治的中立の立場に徹すべきだ。

 自由な意見を表明する市民らの行動が、これほど詳細に自衛隊に監視されていたのかと驚かされる。

 高校生らが「イラク派兵おかしいよ」と題して二〇〇三年十一月、東京都新宿区で開催した集会も、同じころ愛知県の航空自衛隊小牧基地に派遣中止の申し入れ書を届けた九人の訪問も、大規模デモと並べて記録されていた。

 共産党が入手した「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」という文書には、街頭行動などの主催団体、実施日、場所、参加者数、発言内容といった情報が細かく整理されている。抗議行動の参加者に丸印をつけた記録写真や、運動の形態や規模などで分類した集計も添付されている。編集に関与した組織として情報保全隊などの名があり、自衛隊の内部文書だとされる。

 集会に参加した市民らが閲覧すれば無言の圧力を感じるだろう。「自衛隊が情報を収集して分析することは悪いことではない」という久間章生防衛相の説明は、表現の自由や人権に対する配慮が欠如している。

 文書によると、自衛隊は市民団体のほか報道機関や労働組合、政治家などを幅広く監視していた。自衛隊のイラク派遣に反対すればただちに“反自衛隊”と警戒して情報収集していたのなら、あまりに短絡的だ。その多くは、平和憲法下の自衛隊の役割を理解したうえで派遣に反対した行動、意見表明だったからだ。

 実力組織の自衛隊は政治的中立を厳守すべきであり、特定の人物や団体を色眼鏡で監視すれば立場や権限の逸脱につながる。思想の自由が保障されなかった時代に軍部が市民活動を抑圧した記憶も刺激される。

 かつて自衛隊への接近を企てたオウム真理教のような危険団体を警戒するというのなら、市民と社会の安全を守る任務として理解も得られよう。しかし、小さな集会まで監視する活動は、自衛隊が何から何を守ろうとしているのか、市民らに疑いを抱かせかねない。イージス艦の能力に関する秘密が流出していた事件などをみると、市民より隊内を先に監視すべきだとさえ思える。

 防衛省と自衛隊は、まず今回の文書の目的、根拠、運用の状況を明らかにして、人権の尊重を確認してもらいたい。過剰な監視活動については組織内の責任を検証し、再発防止策を講じねばならない。

政治とカネ 問題の本質を見失うな

2007年6月8日

 「政治とカネ」問題がやっと動きだした。与党は政治資金規正法改正案の来週の衆院通過を目指し、民主党は修正を求めている。残る国会会期はわずかだが、国民が納得できる審議を望む。

 松岡利勝前農相が自殺した直後、自民党幹部は「松岡氏がいなくなったのだから、やる意味がなくなった」と漏らした。こんな姿勢で「政治とカネ」問題に取り組んでいるのなら許されない。

 昨年暮れに辞任した佐田玄一郎前行革相の不正経理問題を皮切りに、松岡氏や伊吹文明文部科学相らの巨額な事務所費が相次いで発覚しながら、制度見直しの国会審議は後回しにされてきた。最終盤での審議入りは遅きに失した感はある。

 現行法では、事務所費や光熱水費などの経常経費に領収書の添付や使途の明細の報告は義務づけられていない。だから、知られたくない経費を処理する「抜け穴」に利用しているのではないか。これが一連の疑惑の核心であり、その穴をふさぐのが制度改正の原点のはずだ。

 ところが、自民、公明両党の改正案は資金管理団体の経常経費のうち一件五万円以上の支出について、領収書添付を義務づけると同時に、資金管理団体の不動産取得禁止を明記した。国会提出直前になって、既に所有している不動産の利用状況の報告を義務づける付則まで追加した。

 資金管理団体が多額の不動産を所有する小沢一郎・民主党代表に照準を合わせたものだ。野党からは、批判の矛先を松岡問題から小沢氏に向かわせるものだとの声があがる。

 そもそも所有する不動産の利用状況を報告させるなら、事務所費なども過去にさかのぼって内訳を説明すべきだ。伊吹氏や中川昭一・自民党政調会長らが説明責任を果たしていないのを忘れてもらっては困る。

 一方、民主党案は領収書添付義務の対象をすべての政治団体とし、額も一件一万円超に広げている。知られたくない支出は別の政治団体に付け替えたり、五万円未満に細切れにすれば、使途を明らかにしないで済む与党案よりはまだましだ。

 民主党は不動産と併せて株の取得禁止も盛り込んだ。与党側は、小沢氏の問題があるから腰がひけているという批判をかわすものだ、と攻めている。

 参院選が迫り、与野党が応酬するのも無理はないが、そういう話ではない。問題はどうすれば政治資金の「出」を透明化できるかだ。本質を見失わない議論を求める。

 与党は自らの案を押し通さずに、柔軟に修正を検討してもいいのではないか。

【東京新聞・筆洗】2007年6月8日

 一九九七年の米国映画『グッド・ウィル・ハンティング』は心を閉ざした数学の天才青年と、境遇が似た中年心理学者の心の交流を描いた佳作。青年役のマット・デイモンが脚本も手がけ、アカデミー賞脚本賞を受けて、スターダムに乗るきっかけとなった▼面白いタイトルで、内容から“善き心を探す”という意味かと思ったら、ウィル・ハンティングは青年の名前。映画のテーマとも掛け言葉になっていて、なかなかしゃれたネーミングと感心したものだ▼厚生労働省が、虚偽申請を理由に、指定を打ち切った訪問介護大手「コムスン」の親会社は、人材派遣の東証一部上場企業「グッドウィル・グループ」といい、摘発対象となって映画のタイトルを連想した▼創業者の折口雅博会長は日商岩井社員当時、東京・芝浦に巨大ディスコ「ジュリアナ東京」を仕掛けて知られる。その後独立、同グループ設立後は、福祉分野への貢献で紺綬褒章受章、青年経営者賞、日本赤十字社社長表彰も受け、経団連理事も務める起業家だ▼小泉政権の「官から民へ」の掛け声で、本来、公的機関が担うべき老人介護も“ビジネスチャンス”の対象となって、人材派遣業界はこぞって参入した。グループ名の“グッドウィル”も善きネーミングとたたえられるところだ▼だが、コムスンは、指定取り消し前に、事業所の廃止届を出して処分を免れようとしたり、全事業をグループ内の別企業に譲渡して処分の骨抜きを図る悪質さが問題化。これでは介護とは、老人を踊らせるビジネスと思われかねない。


【河北新報・社説】

自衛隊の内部文書/自由の国で気味が悪い

 なんとも薄気味悪く、背筋がぞっとした。今時こんなことが、組織的に、日常的に行われていたのか。

 陸上自衛隊が、自衛隊の活動に批判的な市民団体のほか、政党、労組、ジャーナリスト、宗教団体などの動向をまとめた「内部文書」の存在が判明した。共産党が自衛隊関係者から入手したとして公表し、防衛省が資料作成について認めた。

 文書はA4判、166ページで、(1)陸自東北方面情報保全隊が収集した「情報資料」(2004年1―2月)(2)情報保全隊本部が作成した「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」(03年11月―04年2月)の2種類ある。

 文書には、自衛隊の活動に反対するデモや集会、ビラ配りについて、日時や場所、団体名、個人名、内容などを記載。写真も添付されていた。派遣反対の集会やデモの関連だけで全国41都道府県の289団体・個人に上り、高校生も含まれている。

 さらに、国会議員の発言、新聞記者の取材活動や、派遣反対運動とはおよそ関係がないとみられる年金制度や消費税に関する集会なども記録されていた。

 情報収集は、イラク派遣の基本計画閣議決定を控えた直前から、陸上自衛隊本隊の主力部隊がイラク・サマワに到着した時期に当たる。イラク派遣について、国内で賛否が渦巻き、反対運動も高まっており、自衛隊が神経質になっていたことは間違いない。

 情報保全隊の任務は自衛隊施行令に基づく各自衛隊の訓令で規定されており、隊員と外部の不審者との接触などを監視。自衛隊施設に対する襲撃や業務の妨害などを防ぐための情報収集も含まれるが、民間の情報収集対象については、極めて限定されている。

 政府は「法律をもとにした調査活動や情報収集は当然、受け入れられるべきだ」(塩崎恭久官房長官)と、今回の自衛隊の対応について、許容範囲との認識を示しているが、果たしてそうだろうか。

 多様な議論や主張を認めず、一方的に敵と決めつけ、多数の市民を監視するのは、常軌を逸しているとしか思えない。何かしらざわっとするし、憤りも覚える。

 個々人の行動や正常な職業活動が、本人が知らぬ間に、権力からチェックを受けるとすれば、プレッシャーを感じ、息苦しい社会になる。

 言論、集会、結社の自由が保障され、個人のプライバシーが守られることが、自由、民主主義の根幹であることは確認しておきたい。

 防衛省は、自衛隊の内部文書を明らかにし、調査の意図や方法などについて説明する必要があろう。

 自衛隊は、国内はもとより海外での大規模災害救助活動などで実績を積み上げ、信頼を勝ち得てきた。国土の防衛を担ってもらうことについても、国民の間でほぼ合意に達している。
 市民の監視は、国民の信頼に水を差し、道を逆行しているのではないか。
2007年06月08日金曜日

【河北新報・河北春秋】

 「会社は三辺が等しい正三角形であれ」と言うのは運動具のアシックスの創業者鬼塚喜八郎さんだ。三頂点に従業員、経営者、株主。そして経営者の役割は社 会に貢献する方向にそれを導くことという▼「人と社会のためになる。誰もが納得できる方向であれば困難は突破できる。天が必ず助けてくれる」。幾度もの経 営危機を乗り越え世界的な企業に育て上げた人の、味読すべき言葉だろう

 ▼ 訪問介護で最大手のコムスンに対し、不正に事業所指定を受けていたとして厚労省がレッドカードを突き付けた。指定更新と事業所新設は今後一切認めない。有 無を言わせぬ厳しい退場処分だ▼同社は人材派遣会社の傘下で急成長した。経営陣は介護事業を単なる金もうけの手段とみていたのではないか。従業員も利用者 も重視されなかった。図解すれば経営者と株主が突出した奇妙な三角形

 ▼「高齢者の尊厳と自立を守り、お客様第一主義に徹します」。企業 理念である「コムスンの誓い」の一節が、今となってはしらじらしく響く。共鳴して利用を申し込んだ人も多かったろうに▼処分を知った親会社は、全事業を別 の子会社に譲渡させるという。看板の掛け替えだけで業務を続ける奇策。社会に貢献する誠実な姿勢を身に付けない限り、事業の永続などあり得ぬものを。

2007年06月08日金曜日


【京都新聞・社説】

まだない

【京都新聞・凡語】

まだない


【朝日・社説】2007年06月08日(金曜日)付

コムスン―処分逃れを許すな

 不正がばれて処分を食らったら、事業を丸ごと身内の仲間に譲って継続を図る。こんな人を食ったようなやり方が許されるのだろうか。

 訪問介護最大手のコムスンが、厚生労働省の処分を避けるためにとった事業譲渡が批判を呼んでいる。

 処分は、全国に展開しているコムスンの介護事業所が来年の4月から順次、指定の更新期を迎えたときに、更新を認めないというものだ。これにより、同社の2千余りの事業所のうち約1650カ所が事業をできなくなる。

 こんな処分を受けたのは、東京や岡山、青森などにある8事業所を開設する際、条件を満たすため、うその申請をしていたからだ。辞めたヘルパーを責任者としたり、他の事業所の職員の名義を使ったり、という具合である。

 さらに、これらの事業所が取り消し処分となる直前に、自ら事業所の廃止を届け出て、処分を逃れていた。

 介護保険は40歳以上の人が払う保険料と、税金で運営されている。サービスを受ければ自己負担もある。その制度を食い物にする事業者は、トップ企業でも退場してもらわなければならない。

 処分を受けたコムスンは、その直後、同じグッドウィル・グループ内の会社へ来月に事業をすべて譲渡する方針を公表した。しかもこの会社は、先月までコムスンの子会社だったという。

 子会社を切り離したのは、事業譲渡の下準備だった疑いがある。こんなことが可能なのは、グループの持ち株会社がすべてを統括しているからだ。グループ内の別会社へ譲渡しても実質的な経営主体は同じだ、とも判断できよう。

 厚労省は、こんな見え見えの処分逃れを許してはいけない。事業譲渡を凍結するよう指導したのは当然のことだ。

 私たちの老後の支えとなる介護保険は当初、総額4兆円足らずで発足したが、高齢化が進むにつれて利用が広がった。いまや7兆円まで膨れあがり、保険料は月4000円を超えた。高齢化がさらに進むこれからが正念場だ。

 しかし、急成長の陰で不正も横行し、事業者が報酬をごまかす不正請求が後を絶たない。厚労省は「保険あってサービスなし」との批判を恐れて業者を増やすことに努めてきたが、これからは不正に厳しく対処していかなければ制度が持たなくなるだろう。

 コムスンは、一連の不正や厚労省の処分に対して、責任者が直接説明したり謝罪したりすることを拒んでいる。従業員2万人の大企業とはとても思えない。事業の継続を図りたいなら、一刻も早く説明責任を果たすべきだ。

 忘れてならないのは、全国で約6万5000人といわれるコムスンのサービスを利用しているお年寄りたちのことだ。

 厚労省も同社も、いかなる事態になろうと利用者に迷惑が及ぶようなことがないよう、気を配らなければならない。

政治とカネ―与党は修正協議に応じよ

 与野党が激突する構図になっている国家公務員の天下りをめぐる新人材バンク法案が衆院で可決された。

 国会の会期は残すところ2週間あまり。限られた参院審議の日程を考えると成立は難しいと与党もさじを投げかかった法案だが、安倍首相の強い意向で成立を目指すことになった。

 参院選挙に向けて一つでも成果が欲しい。失敗したとしても、民主党が天下り改革に反対したと批判できる――。そんな計算があってのことかもしれないが、尋常ならざる決意を首相が見せているのは確かのようだ。

 そこまでの熱意があるのなら、首相にはもっと真剣に取り組むべき課題が別にある。「政治とカネ」をめぐって浮上した政治資金規正法の改正である。

 国会の開会前から、佐田行革担当相が事務所経費の不正処理で辞任し、松岡農水相ら閣僚や与野党幹部に疑惑が広がった。民主党出身の角田義一参院副議長が辞め、追及の渦中にいた松岡氏の自殺という悲惨な出来事もあった。

 この問題に決着をつけずに国会を終えることは許されない。本来なら、疑惑を持たれた政治家が自ら説明責任を果たすべきだったのに、それが果たされそうにないのは極めて遺憾である。

 少なくとも与党や民主党が法案を提出した規正法の改正だけは、何としても実現しなくてはならない。それが国民に対する最低限の義務だ。

 そんななか、民主党が一歩を踏み出した。民主党案を取り下げ、その代わりに与党案を基本にした修正案を出し直す。土俵をひとつにして、与野党で修正協議をしようというわけである。

 私たちはこの動きを歓迎したい。

 事務所費など、いまは収支報告書に領収書をつけなくていい経常経費に領収書を義務づける点では、与野党は同じだ。違うのは、資金管理団体だけを対象にするか、すべての政治団体とするか。1件5万円以上の支出とするか、1万円超の支出とするか。さらに、資金管理団体の不動産取得を禁じるかどうか。

 民主党が今回まとめた修正案では、与党案にある不動産の取得禁止を取り入れて政党以外の政治団体に範囲を広げ、加えて株など有価証券の取得も禁止した。

 参院選をにらんで、民主党にも思惑があるのは間違いない。小沢代表の巨額の不動産取得の問題で与党に攻め込まれるのを防ぐ。譲歩してでも改正を実現するという姿勢を強調したい――。

 国民の政治不信に応えるために与野党が競い合うのは大いに結構だ。自民、公明の与党側も「わが党こそが改正を実現した」と言えるよう知恵を絞ればいい。

 野党が反対したからだ。いや、与党が譲らなかったからだ。国会が閉幕した時、こんな言い訳だけは聞きたくない。この国会で「政治とカネ」の問題にはけじめをつける。首相は決意をもって与野党の修正協議を実らせるべきだ。

【朝日・天声人語】2007年06月08日(金曜日)付

 やるべき仕事が山ほどなければ、さぼる楽しみが減ってしまう――。英国の作家が言ったという迷文句に、苦笑したことがある。

 社会保険庁の人たちは、楽しみを味わったのだろうか。宙に浮いた5千万件の年金記録のほかに、さらに1430万件の記録漏れが明るみに出た。作業が膨大になるからと、コンピューターに入力もしていなかった。入力ミスと違い、知りつつ置き去りにした印象が強い。

 コンピューターを導入するときは、「1日のキータッチは平均5000以内」といった覚書も取り交わしていた。いまなら慣れた人が1、2時間でこなす仕事量である。「ブラ勤」「ポカ休」「親方日の丸」。ぬるま湯職場を象徴した古い言葉が、われ知らず口をつく。

 トップの長官には、高級官僚が就いてきた。その入れ替わり立ち替わりぶりは、天下りの“拝命待ち”さながらだ。天下り先を転々とし、巨額の退職金をもらって、涼しい顔の人もいる。組織あげての体たらくに、国民の憤りはいよいよ強い。

 〈年金の代わりにストレス支給され〉と、きのうの本紙川柳欄にあった。自民党は参院選を前に、記録の照合を1年で終えると公約した。とはいえ作業はそれこそ膨大だ。選挙しのぎのカラ手形ではないかと、冷ややかに見る向きもある。

 だが「綸言(りんげん)汗の如(ごと)し」、と言う。王が口にした言葉は、汗が体に戻らないように取り消せない、という意味だ。政府は責任を持ち、社保庁には大汗をかいてもらうしかない。光陰は矢の如し。やるべき仕事は山ほどある。


【毎日・社説】

社説:新銀行東京 自治体の金融機関は不要だ

 石原慎太郎東京都知事が2期目の政策の目玉にし、05年に設立した新銀行東京の経営が抜き差しならない状態になっている。今月初めに発表された3月期決算は、貸し出しの伸び悩みや、貸し倒れの増加などで、547億円の最終赤字となった。この結果、3月末時点での累積赤字は849億円に膨らんだ。

 都は、当初計画で08年3月期の黒字化を目指していたが、2年先送りすることにした。規模の圧縮や審査を厳格にするなどして、存続を図っていく方針だ。また、経営トップも交代させる。

 国段階では政策金融の全面的な見直しが行われる。不十分な中身ではあるが、日本政策投資銀行の民営化や、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫や国際協力銀行の国際金融業務などの一元化が来年10月に実現する。真に必要な政策金融は残すが、それ以外は民間金融に任せるということだ。

 地方レベルでもこのことはなされなければならない。新銀行東京の設立構想が出てきた当時は、たしかに、銀行の不良債権処理がたけなわであったこともあり、中小企業向け貸し出しも細り、政策的な対応が必要になっていた。政府は貸し渋り対策を講じたが、一方では、不良債権対策で資産圧縮を迫られている以上、うまくいくはずはなかった。

 都による中小企業や地場産業向けの新銀行設立は理論的にはそれなりに意味があった。ただ、設立は2期目就任から2年後の05年で、民間金融機関の不良債権減らしは進展し、新たな銀行が必要な状況ではなくなっていた。

 簡便な審査で必要な資金を早期に融資する手法も、貸出先が多ければ多少の焦げ付きや返済遅延があっても成り立つ。しかし、その前提は失われていた。

 今後、新銀行東京は規模を縮小し、審査を厳格にし黒字化を目指す。ただ、それにより存続できても、当初の設立目的からは乖離(かいり)することになる。一方、再建がはかばかしくない場合には、都が大半を出資している約1100億円の資本金は食いつぶされる。

 石原都知事は追加出資はないと言明しているが、客観的にみて、存続を図ろうとすれば、いずれ資本増強が欠かせないというのが、金融関係者の見方だ。「進むも地獄、引くも地獄」という都知事の言葉は、その通りだ。

 もはや役割は終わり、ニーズにも乏しい。ビジネスモデルとしては崩壊している。問題を先送りすればするほど、状況は悪化する。バブル崩壊以降の金融システム危機下で、経験してきたことだ。

 都は経営立て直しのため、前副知事などを新銀行東京に送り込む。体制強化のためだろうが、銀行業務に通じているわけでもない。石原都知事のメンツのために存続すると受け取られかねない。

 自治体の銀行はいらないということを都は真摯(しんし)に受け止めるべきだろう。同時に、都民の税金から出された1000億円の出資の目減りを最小限に抑える措置も明確にする必要がある。

毎日新聞 2007年6月8日 東京朝刊

社説:公務員法案通過 政権にきしみも見え始めた

 国家公務員の天下り規制を柱とする公務員制度改革関連法案が7日の衆院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決された。与党は11日に参院審議をスタートさせる方針だ。

 今国会の会期は23日まで。自民党側が「日程的に今国会での成立は困難」と主張すると、安倍晋三首相が「今国会で」と押し戻す。首相と自民党の間では奇妙な応酬が続いている。年金支給漏れ問題などで安倍内閣の支持率が急落する中、政権にきしみが見え始めたと言っていいだろう。

 法案は各省庁がそれぞれ行ってきた国家公務員の天下りあっせんを禁止し、内閣府に設置する「官民人材交流センター」に一元化するなどの内容だ。

 官製談合事件を例に出すまでもなく、天下りは官・業癒着の温床となってきた。このため毎日新聞は社説で天下り問題に手をつけた内閣の姿勢は評価する一方、センターは各省庁の人事当局と「必要に応じて協議する」ことになっている点など、実際には骨抜きになる懸念があるとも指摘してきた。

 衆院審議を通じ、これらの懸念が払しょくされたとは言えない。また、今回の法改正では、退職後2年間は業務にかかわりの深い企業には再就職してはならないという現在の規制は、センターへの一元化が実現した段階で撤廃することになっている。これで本当に癒着を断ち切れるのかという問題も残ったままだ。

 民主党は(1)事前規制の期間を退職後2年間から5年間に延長する(2)センター設置も認めず、再就職先は民間同様にハローワークなどで自ら見つけるよう求める(3)早期退職勧奨を禁止する--などの「天下り根絶法案」を提出したが、あっさり否決された。野党の主張に政府・与党がまるで耳を傾けないのも理解に苦しむ。

 首相が今国会成立にこだわるのは、年金問題などで一転して逆風にさらされる中、公務員制度改革は参院選でアピールできる数少ない改革の旗印だと考えているからだろう。

 ところが、自民党と呼吸が合わないのはなぜか。教育関連3法案や社会保険庁改革法案など、あれもこれも「最重要法案」と位置づけ、実績作りを焦る首相の姿勢もほめられたものではない。

 しかし、今回の改革には中央官庁側の反発が強く、その意向を受けた自民党側に元々、熱意が乏しかったことを忘れてはならない。法案策定の過程では多くの自民党議員が「国民受けを狙ったパフォーマンス」と批判していたのだ。「審議日程が確保できず、成立は困難」というのは成立を必ずしも望んでいない言い訳ではないかとさえ疑う。

 「参院本会議採決に至らず廃案になれば野党が反対したから改革がつぶれたとアピールすればよい」と語る自民党幹部もいる。こうした無責任な態度にこそ国民は今、不信感を募らせているのだ。

 まず、首相と自民党が足並みをそろえることだ。今のままではますます世論は離れていくだろう。

毎日新聞 2007年6月8日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:ホタル前線が北上中で、関東以西の各地から…

 ホタル前線が北上中で、関東以西の各地からホタル便りが届いている。朝の最低気温が16度を超えると姿を見せるといわれるが、どうも地域版が報じ るホタルの様子だと、平年よりもかなり速いペースで飛び始めているようだ▲ちょうどこのホタルの季節、長さ4~5センチの細長いつり鐘状の白や赤紫の花を まとまってつけるのがホタルブクロだ。高さ80センチほどになるキキョウ科の多年草で日当たりのよい草地などにみられる。学名の「カンパニュラ」はラテン 語で小さなつり鐘、英語名も「ベルフラワー」という▲日本でもツリガネソウという異名があるが、ホタルブクロの名は一度聞けば忘れない。きっと子供がつり 鐘のような花をホタルを入れる袋にしたからだろうと誰しも思うが、実はちょうちんを「火垂(ほた)る袋」という地方があり、ちょうちんに似ているからつい た名だとの有力説もある▲百科事典にも併記される両説だが、石川県立自然史資料館前館長の本多郁夫さんのホームページ「石川の植物」では論争(?)に決着 をつけるべく実際にホタルをホタルブクロに入れてみた。すると入れたはいいが、花冠の部分がもろく、ひねって口を閉じるのはとても無理という▲ホームペー ジには花冠をヒモでしばって閉じ、花弁越しにホタルの光を浮かび上がらせた幻想的な写真が紹介されている。だがこと名前の由来については、袋の口が閉じに くいだけでなく、ホタルの出そうな場所にホタルブクロはあまり生えないので、ちょうちん説に軍配が上げられた▲ただ実際は袋に不適でも、昔の人が花の中で 光るホタルの美しさを想像してつけた名だとホタル派も強弁できる。季節の花と生き物のおりなす小さな謎は、後世の人の楽しみにとっておいていい。

毎日新聞 2007年6月8日 東京朝刊


【読売・社説】

内閣支持率 「年金不安」と「政治不信」で急落(6月8日付・読売社説)

 激しい落ち込みぶりだ。

 読売新聞の電話世論調査で、安倍内閣の支持率が32・9%に急落した。内閣発足以来、最低の数字だ。5月面接調査の支持率49・6%から、極めて短い期間に有権者の支持離れが起きた。

 理由は明らかだろう。年金の記録漏れ問題と、松岡利勝・前農相の自殺だ。

 年金保険料の納付記録が、社会保険庁のミスで受給額に反映されない。これが国民の年金不安に火をつけた。

 松岡前農相の資金管理団体は、光熱水費などで不明朗な支出を計上していた。農林水産省所管の「緑資源機構」は、天下り先の企業や団体と官製談合を続けていた。これが政治不信を増幅させた。

 今回の調査で、松岡前農相の「政治とカネ」の問題をめぐり、首相の対応が適切でなかったと言う有権者が8割に上った。近づく参院選で重視したい政策に「年金」をあげる人は7割に達した。

 安倍首相は、膨れあがった政治不信と年金不安の払拭(ふっしょく)に向けて、最大限の努力を傾注しなければなるまい。

 政府・与党は、該当者不明の年金保険料納付記録の名寄せを、1年以内にすべて完了させる。時効は撤廃して全額補償する――などの対策を打ち出した。

 有権者の半数は、政府の対策を「評価する」と答えている。迅速な対応への期待も込められているのだろう。

 だが、名寄せは正確に行われるのか、調査結果はいつまでに通知されるのか。政府はこうした疑問に的確に答え、今後の対策についても、懇切に説明する必要がある。記録漏れの原因と責任についても、十分に検証すべきだ。

 安倍政権のつまずきで、民主党は今回、22・5%と比較的高い支持率を記録した。だが、参院選を前に、年金記録漏れ問題を国民不在の政争の具にするなら、有権者の反発を招くことになろう。

 これは本来、与野党一致して取り組むべき問題だ。民主党は、より具体的な解決策を示していくことが肝要だ。

 政権発足以来、下がり続けていた内閣支持率が、5月には初めて上昇した。これは、憲法改正の手続きを定めた国民投票法を成立させるなど、政権課題の着実な処理が評価されてのことだろう。

 年金記録漏れは大事な問題だ。だが、これ以外にも、国政上の重要な課題が山積している。

 教育改革関連3法案、イラク特措法改正案、社会保険庁改革関連法案、政治資金規正法改正案などだ。いずれも、日本が直面する課題に関(かか)わる重要法案だ。

 安倍首相がなすべきことは、これら法案を確実に仕上げることだ。
(2007年6月8日2時3分  読売新聞)

日豪安保協議 戦略的な枠組みに発展させたい(6月8日付・読売社説)

 日米同盟をより強固にし、日本の国際平和協力活動を充実させる。日本と豪州の関係を、そのための戦略的な枠組みに発展させたい。

 日豪の外務・防衛閣僚協議(2プラス2)の初会合が都内で開かれた。3月に両国首脳が署名した日豪安保共同宣言に基づくもので、日本が米国以外の国との2プラス2を開催するのは初めてだ。日豪関係は新段階に入った。

 協議では、北朝鮮の核、ミサイルやイラク、アフガニスタンなどの「共通の課題」に日豪が連携して取り組む方針で一致した。先週末にはシンガポールで初の日米豪防衛相会談も開かれ、3国の安全保障面の協力強化で合意している。

 日豪両国はともに、アジア太平洋地域における米国の重要な同盟国だ。日豪が“準同盟国”的な関係を構築することは、日米豪3か国の関係を強化し、日米同盟の深化とアジアの安定に寄与する。日本外交の幅も広がる。

 日豪協議では、急速に大国化する中国に対し、国際社会で建設的な役割を果たし、軍事面の透明性を向上するよう促すことを確認した。この点でも、日米豪が連携を強化することが重要だ。

 6月下旬の米豪共同軍事演習と、来年前半の豪州とインドネシアを中心とする東南アジアでの災害救援の机上演習に、自衛隊が参加することも決まった。

 自衛隊と豪州軍は様々な協力実績がある。カンボジアと東ティモールでの国連平和維持活動(PKO)や、インド洋津波の救援だ。自衛隊のイラク復興支援活動で、現地の治安維持を担当するオランダ軍が撤退後、その任務をすすんで引き継いだのも豪州軍だった。

 国際平和協力活動が本来任務となった自衛隊にとって、海外経験が豊富な豪州軍は信頼できる貴重なパートナーだ。久間防衛相が「豪州は日本の海外活動の先輩だ」と語るように、豪州軍との連携の重要性は一段と増すだろう。

 国際テロ対策、大量破壊兵器の拡散防止、東南アジアの海上交通路(シーレーン)の安全確保も重要な協力分野だ。

 日豪両国は今後、一連の課題に関する情報交換や共同作業を通じて、実務的で具体的な協力を着実に積み重ねるべきだ。それが、両国の新たな安保関係を永続的で、確かなものに高める。

 日米豪の枠組みを基盤とし、さらに連携国を広げる努力も大切だ。

 インドとの関係強化を重視する安倍首相は夏に訪印する。格好の機会だ。日本や豪州と同様に米国と同盟関係にありながら、盧武鉉政権下で停滞している韓国との連携の立て直しも課題となる。
(2007年6月8日2時3分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月8日付

 将棋九段の加藤一二三(ひふみ)さんがいつぞやテレビで、中原誠永世十段とタイトル戦で対局した思い出を語っていた。対局場では加藤さんの正面に床の間があり、ダルマが置かれてあった◆「どかしましょうか?」と中原さんが聞いた。視界に赤い色がちらついては気が散るだろう、と。中原さんには背中のダルマである。競技者の神経は背後の置物にまで反応するのだと、加藤さんの回想を聞きながら感じ入った覚えがある◆将棋に限るまい。野球選手にはグラウンドが、サッカー選手にはピッチが、ゴルファーにはコースが、神経の張りつめた厳粛な対局場である。TBSの情報番組が起こした「盗聴」未遂の騒動には驚いた◆きのうが最終日のゴルフの関東アマチュア選手権に出場した注目の高校1年生、石川遼選手の競技中の声を拾うため、石川選手と同じ組で回る同伴選手に、小型の隠しマイクを装着してプレーをするよう依頼し、断られたという◆どの選手も、おのが一打一打に全神経を集中する競技者である。石川君の素顔が見たいので、あなた、踏み台になってくださいな…。そう告げるにも等しい依頼を平気でできる神経が分からない◆マナーの悪い観戦など、対局場に競技者の気を散らせるダルマがあれば、それを戒めるのが報道機関であろう。「どかされる」側では困る。
(2007年6月8日1時52分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】コムスン 介護業者の健全化が急務

 社会に貢献した結果として利益を得る。介護業者はこの介護ビジネスの在り方をどう考えているのだろうか。訪問介護最大手といわれる「コムスン」を見ていると、利益の追求しか念頭にないように思えてならない。

 厚生労働省はコムスンが虚偽の申請で事業指定を不正に取得していたとして、全国の介護事業所の指定を順次打ち切り、事業指定もしないよう都道府県に通知した。

 介護保険法に基づく、新たに導入された厳しい処分で、同じ業者が複数の事業所を経営している場合、不正行為から5年間、系列の事業所でも新規の指定や指定の更新が認められない“連座制”の初適用である。

 これに対し、親会社のグッドウィル・グループ(GWG)はコムスンのすべての事業を別の子会社に譲渡して逃げ切る作戦に出た。だれが見ても法の網の目をくぐる行為だろう。

 不正を招いた経営体質に全く手を付けないまま、看板だけを付け替えてグループ内で事業を引き継ぐわけで、二重の背信行為ではないか。

 厚労省はGWGに対し、事業譲渡の凍結要請を出した。

 GWGは「サービスを継続し、利用者の間に混乱や不安が広がるのを抑えたい」と主張しているが、コムスンのサービスを受けている約6万5000人の利用者の保護を逆手にとった偽善的理屈にしか聞こえまい。厚労省の要請を受けるのは当然だろう。

 厚労省は利用者への影響を考え、省内に対策本部を設置し、各自治体にも相談窓口を置くよう要請した。利用者に不利益が生じないよう他の業者を積極的に紹介するなどの対応策も徹底してもらいたい。

 厚労省によると、平成12年4月の介護保険導入から昨年12月までに指定を取り消された事業所は459カ所で、介護報酬返還請求額は55億円を超え、31億円が未返還のままだという。

 新規の業者を確保するため、厚労省は質を問わず、利益を追い求める業者の参入を許し、甘い指導を繰り返してきた。事業所の処分も氷山の一角だろう。そのツケがいま、回ってきている。厚労省は法令順守の体制を整えるとともに健全な介護ビジネスモデルの構築を促さねばならない。

(2007/06/08 05:08)

【主張】李氏靖国参拝 日本文化表敬とも映った

 訪日中の台湾の前総統、李登輝氏が靖国神社を参拝した。先の大戦で日本兵として戦死し、靖国神社に祭られている亡兄をしのぶためで、「政治的、歴史的には考えないで」と語った。

 靖国神社をめぐっては、中国、韓国が首相参拝を政治問題化し、台湾にも靖国神社=悪として批判する勢力がある。来春の台湾総統選挙も控え、李氏には政治的リスクもあった。

 それでもあえて参拝に踏み切ったのは、まずは李登輝氏が記者会見で語ったように、亡兄への肉親の情からだろう。李氏夫妻が会見の中で見せた涙がそれを物語ってもいた。

 靖国神社には約250万人の軍人、軍属が祭られ、そのうち約2万8000人が台湾出身者という。李氏の胸のうちには、台湾同胞への追悼の気持ちもあったにちがいない。

 台湾は当時、日本であり、台湾出身者は日本国民として犠牲になったのだから、靖国神社は当然のこととして慰霊、感謝の対象としたのである。

 台湾には台湾出身者の靖国神社合祀(ごうし)に反対して訴訟まで起こしているグループがある。しかし、靖国神社を参拝する台湾人の方がむしろ多い。李登輝氏と同じ心情からであろう。

 多くの日本人にとって、靖国神社は国のために犠牲になってくれた人々に対する追悼と感謝の場であり、日本人の伝統的な心、日本文化に根ざした大切な場所である。

 その靖国神社に李氏が困難を押して参拝してくれたことに、多くの人が素直に感謝の気持ちを抱いたのではないか。李氏の靖国参拝は、日本文化への表敬とも映ったのである。

 この李氏の靖国参拝に対し、中国は早速、「日本は李の目的が何かを知っているはずだ。中日関係に(悪い)影響を及ぼさないように望む」(外務省)と批判した。しかし、そうした不当な批判こそが、日中関係に「悪い影響」を及ぼすと知るべきである。

 「奥の細道」をたどった今回の訪日で、李氏は3回の講演を行い、日本文化の大切さ、日本の国際社会での役割などを語った。学術、文化的に価値の高い内容であった。

 李氏の比較的自由な訪日が実現したのは、関係者の努力に加え、安倍晋三内閣の良識にもよる。評価したい。

(2007/06/08 05:07)

【産経抄】

 「四十五ねんのあいだわがまま/お ゆてすミませんでした/みんなにだいじにしてもらて/きのどくになりました/じぶんのあしがすこしも いご/かないので よくよく ヤに/なりました ゆるして下さい…」。

 ▼「反骨の書家」として知られる木村三山の母親センは昭和30年、首をつって64歳で死んだ。18歳で上州の農家に嫁いでから、働きづめの人生だった。ころんで大腿(だいたい)骨を折り、家族の負担になることが耐えられなかったようだ。

 ▼孫の教科書を借りて字を覚え、書き上げた遺書は、三山と弟の詩集『母の碑』に収められた。センは近所に住む寝たきりの老人が、家族から厄介者扱いされていることに、心を痛めていたともいう。

 ▼介護をめぐる悲劇はいまも枚挙にいとまがない。少子高齢化が進むなか、みんなで保険料を出し、負担を分かち合うしかない。訪問介護最大手の「コムスン」による、介護報酬の不正請求は、この介護保険制度の精神を踏みにじる行為だ。

 ▼ 厚生労働省の退場処分に対して、親会社のグッドウィル・グループは、別の子会社に全事業を譲渡する奇策に出たが、厚労省は、待ったをかけた。当然だ。大型ディスコの成功で名をはせ、「質の高い介護サービスを日本中の高齢者に届けたい」と語っていた折口雅博会長(45)の志はどうなったのか。

 ▼ 事件が介護現場に与える影響ははかりしれない。現場でまじめに仕事に取り組むヘルパーの意欲がそがれ、制度自体への不信感が広がれば、行き着く先は「介護難民」の大量発生だ。「昔〈うばすて山〉があって/いまは〈うばすて山〉はないが/どこにでもある」。『母の碑』にある「姥捨山」の一節。現代にもあてはまるなんて、あまりに情けない。

(2007/06/08 05:04)


【日経・社説】

社説1 出生率反転、機を逃さず一層の支援を(6/8)

 2006年の合計特殊出生率は1.32と、前年を0.06ポイント上回った。反転は6年ぶりだ。これまで結婚・出産を先延ばしにしてきた団塊ジュニアが、雇用情勢の改善などで出産に踏み切ったことが背景にある。ただ、数の多いこの世代が「出産適齢期」にあるのも、あと数年でしかない。反転の小さな芽がしっかり定着するよう、この機を逃さず社会全体で子育てを後押しすべきだ。

 まず重要なのは景気拡大をさらに持続させ、若者の生活不安を取り除くことだろう。02年半ばに5.5%まで悪化した完全失業率は、その後の景気拡大で徐々に好転し、今年4月には3.8%にまで回復した。収入の安定は初めて親となる勇気を与える上に、子だくさんをも生み出す。昨年生まれた子の内訳をみると第3子の増加が目立つが、これも経済効果の証しかもしれない。今後は低賃金で不安定な非正規雇用をどれだけ減らせるかも課題だろう。

 もう一つのかぎは、仕事と家庭を両立させるしくみだ。政府の昨年末の人口推計からは、足元の出生率好転を帳消しにする深刻な人口減社会が浮かび上がる。 50年後の生産年齢人口は4600万人と現在の半分近くまで減り、総人口に占める割合も66%から51%に落ちる。女性に仕事か家庭かの二者択一を迫る社会では、社会保障制度を維持し、労働力不足を補うことは難しい。

 これまでも両立のための施策は打たれてきたが、効果ははかばかしくなかった。女性の育児休業取得率は年々増えたものの、1人目の子を産んだ女性のうち働き続ける者の割合は3割以下で、20年来、横ばい状態だ。長時間労働が当たり前の雇用慣行や、私生活を軽視する職場風土を放置してきたためだろう。

 こうした反省から、政府の複数の会議が最近、相次いで「仕事と生活の調和」を合言葉に、働き方の見直しを提言したことは注目してよい。調和の実現に向けた「憲章」の提案や、既婚女性の就業率向上、労働時間短縮などの数値目標を達成するため「行動指針」を作る案もある。

 ただ議論の過程では、両立そのものに消極的な意見が出るなど、迷走場面も多かった。位置づけがあいまいな憲章や指針に、どう実効性をもたせ、具体的に肉付けするか。先送りしている財源問題と併せて、安倍政権のリーダーシップが問われる。

 官民で柔軟な働き方を導入した英国では、出生率上昇に加え、従業員の定着率や生産性の向上などのメリットも実証されている。こうした事例を企業経営者も見据えるべきだ。

社説2 終点が近づいた欧州利上げ(6/8)

 欧州中央銀行(ECB)が6日、単一通貨ユーロを採用する13カ国の政策金利を0.25%引き上げることを決めた。利上げは2005年12月以来8回目で、最重要の政策金利は年4.0%と6年ぶりの高水準に回復した。トリシェECB総裁はなお利上げを続ける姿勢を示したが、今後の物価上昇に対する警戒姿勢はやや緩め、利上げ局面の終点が近づいていることを印象づけた。

 利上げの判断は妥当といえる。域内経済は活発な設備投資を軸として年率2%を超す堅実な成長を続けている。ドイツが1月に実施した間接税増税の悪影響も今のところ目立っていない。一方でインフレ圧力は残る。景気拡大で設備の稼働率が高まり、通貨供給量(M3)の伸びも10%台と高率だ。独金属業界の労使が4%台の賃上げで合意するなど、賃金上昇が広がる地合いもある。

 市場関係者の関心はECBが利上げを今後も続けるかどうかだった。トリシェ総裁は金利水準が「引き続き緩和方向にある」と述べ、利上げの継続を示唆した。だが物価監視の姿勢は最近の利上げ直後に使った「非常に綿密に監視する」から「綿密に監視する」にやや緩め、08年の景気に関する内部予測も下方修正した。ECBが利上げを終える時期を探り始めたといえる。

 主要通貨間の金利差が変われば為替相場にも影響を及ぼす。米連邦準備理事会(FRB)は昨年6月以来、利上げを見送っている。日銀の利上げも昨年7月と今年2月の2回だけだ。金利上昇が大きいユーロ相場は最近、円やドルに対して最高値を更新した。利上げが一服すれば、ユーロ高基調が変わる可能性がある。

 日米欧の金融政策に関する市場の見方は微妙に変化している。米国では景況感の改善などからFRBが金融緩和に動くとの見方が後退し、長期金利が上昇した。日本でも堅調な景気情勢を受けて日銀が早めに利上げに動くとの観測が強まり、7日も新発10年物国債の利回りが一時、年1.890%と今年に入って最も高い水準をつけた。

 金利が高い海外通貨建ての投資を拡大する動きが日本の個人投資家の間で目立っている。為替変動のリスクにも十分目配りする必要がある。

【日経・春秋】(6/8)

 モスクワの中心に一日中、明かりがともらないビルがある。建築工事が終わってから、かなり時がたつ。日が暮れると、街は夜の顔となり、周囲の建物は煌々(こうこう)と輝き始める。ひっそり1棟だけ、黒々とそびえ立つ姿は、どこか不気味だ。

▼ビルは完成と同時に、ロシア企業が丸ごと買い取ったそうだ。入居者が少なくても気にする様子はない。不動産の値段が1年間で約5割も上がったからだ。いずれ転売すれば、大もうけできると踏んだのだろう。札束を握った男女がポルシェやフェラーリで走り回る。バブルに歓喜する新興経済大国の横顔である。

▼「暗黒ビル」は東京でも増えている。こちらは新築ではない。歴史的な建築物が寂しく取り壊しを待っている。都心の再開発が進み、昭和初期に建てられた風格あるビル群の灯が、次々と消えていく。郊外では、40年を経た多摩ニュータウンで空室が目立つ。少子・高齢化と都心回帰が、国の風景を塗り替える。

▼投機が目的の高層住宅は上海にも多い。サンパウロでは、経済成長の10倍の速さで不動産の価格が高騰している。カネ余りに酔う国々。子供が減っていく日本。宇宙から地球を眺めれば、それぞれの事情で「暗黒ビル」が点在する不思議な模様が見えるだろう。それは世界経済の歪(ひず)みを伝えるサインかもしれない。


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» ついにここまできた国民監視システム [4つの目で世の中を考える]
この画像を見て欲しい(クリックで二段階に拡大表示されます)。 6月1日に書いた記事「すでに国民総監視システムとして利用されていた携帯電話」にあるように、ほとんどの人間が携帯電話を持っていることによってすでに、警察等は携帯電話の番号を打ち込むだけでその人間がどこに居るか瞬時に地図画面上にその位置がリアルタイムで表示される仕組みになっている。 (これは携帯の電源を切っていてもおおよその位置がわかってしまうらしい) それにこのシステムを併用して、その位置付近のカメラにボタン一つで繋ぐ... [続きを読む]

受信: 2007年6月10日 (日) 16時28分

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