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2007年6月16日 (土)

6月16日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年6月16日朝刊)

[文科省意見書]「削除」の根拠が薄弱だ

 高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」をめぐる記述の中から日本軍の関与を示す記述が教科書検定で削除された問題で、文部科学省が教科書を審査する「教科用図書検定調査審議会」に提出した意見書で削除を求めていたことが明らかになった。

 出版社五社七冊の日本史教科書に対する指摘の中で、「日本軍に『集団自決』を強いられたり」などの記述に対し「沖縄戦の実態について誤解するおそれがある表現」と指摘するなど、検定意見と同様の記述になっており、文科省が主導した形跡もうかがえる。

 伊吹文明文部科学相は「意見書はあくまで第三者である審議会委員の判断の資料」と強調し影響力を否定したが、とても額面通りには受け取れない。

 自民党県議の代表と面談した布村幸彦審議官によると、審議会では「渡嘉敷、座間味の両島で部隊長の直接の命令があったかどうかは断定できない」との意見で一致した。「『集団自決』のすべてに軍命があったとは言い切れないという判断から、軍命を削除する検定意見に至った」としている。

 しかし、生き残った住民の証言から日本軍の命令・強制・誘導などがあったことは明白だ。軍の関与を認めつつ記述を削除するやり方はおかしい。

 渡嘉敷島などで直接の軍命があったかどうかを疑い、揺さぶることにより沖縄戦で起きた「集団自決」への軍の関与をすべて否定しようとしている。

 住民は自分の判断だけで死を選んだというのか。軍関与の削除は「集団自決」に関する日本軍の責任を免除し、住民の死を殉国美談に変えてしまう。

 数々の住民証言や沖縄戦研究によって積み上げられてきた「沖縄戦」像を根本から覆すものであり、その政治的な意味を軽視することはできない。

 沖縄戦では住民を巻き込んだ地上戦が展開された。沖縄戦を考える場合、「集団自決(強制集団死)」はまさに核心的な問題なのである。

 安倍政権登場後、靖国神社参拝や従軍慰安婦、東京裁判など、歴史認識の在り方が問われるようになった。こうした政治的文脈の中に今回の問題を位置づけてみていく必要がある。

 検定意見が大阪地裁で係争中の「集団自決」訴訟を取り上げ、ことさら原告側の日本軍元戦隊長の証言や最近の学説状況の変化を根拠として挙げるのは一方的であり、とても中立・公正とはいえない。文科省や審議会側と原告らとの人的つながりも垣間見える。

 沖縄の歴史を振り返ると、安易な沖縄戦の書き換えを許すわけにはいかない。文科省はどのような根拠で削除を求めたのか明らかにすべきだ。

[NOVA業務停止]利用者本位の経営を

 英会話学校最大手のNOVAが経済産業省から六カ月間の一部業務の停止命令を受けた。

 誇大な広告で利用者を勧誘したり、受講契約時に虚偽の説明をするなどの特定商取引法(特商法)に違反する行為があったと経産省が判断した。

 NOVAは一九八一年創業。他社に比べ安い受講料や、鉄道沿線に教室を置く「駅前留学」で業績を伸ばした。

 ウサギにくちばしがついたキャラクター「NOVAうさぎ」をブレークさせるなど、ユニークなCM戦略やテレビ電話を使って自宅で講師と対話する「お茶の間留学」で話題をさらった。

 一方、最近は中途解約した利用者(受講生)が未受講分の料金返還を求める訴訟が相次いでいる。

 四月には東京都の男性がポイント制受講料の過払い分の返還を求めた訴訟の上告審判決があり、最高裁第三小法廷は、受講契約を特商法違反として男性の請求を認めた二審判決を支持、NOVA側の上告を棄却して同社の敗訴が確定した。

 低価格化による語学学習の大衆化、というNOVAの果たした役割は大きい。しかしその商法は受講者のことを真に考慮したものとは言い難い。語学を短期間の学習で習得するにはかなりの努力がいる。NOVAの商法は、継続する者には有利で割安だが、学習を期間の中途でやめる者にはすこぶる不利な契約なのだ。

 語学学習の業界では「一年を超える契約は結ばない」という自主ルールがあるという。それは長期にわたる受講者の囲い込みを阻止するという狙いもあろうが、重きは受講者の権利擁護、学習権の確保だろう。

 営業停止の対象業務は長期間の新規契約などである。NOVAはホームページで「これを契機に生まれ変わろうとしています」と生徒らに呼び掛けている。真に消費者の権利を重んじる経営体質に生まれ変われるか、この六カ月が正念場だ。判決や行政命令を真摯に受け止め、法律の抜け道を探るようなことがあってはならない。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月16日 朝刊 1面)

 役人は仕事をしているように演じる。そんな辛口エッセーを読んだ。

 最近の年金問題や行政と政治が絡む官製談合など公務員を目指す若者には気の毒なほど役所の体たらくが続く。日本は行政手続きに関する法律が完備されておらず、役人の裁量が大きすぎるのが問題だと指摘される。

 先日、ある市役所からの電話を受けた。「先ほどお宅の記者の質問に答えた。正式な話は課長から聞くように伝えてほしい」。行政資料の有無を問い合わせただけで、相手が変われば別の話が聞ける内容ではないと、記者は言う。

 耳を疑う組織論理。例を挙げるときりがないが、行政情報の扱いをめぐる取材側と役所のせめぎ合いは日常茶飯事だ。最近も市民団体が県内高校の生徒会に「集団自決」の歴史教科書問題で署名活動を求めたことで、県教育庁は実施状況を調査したが、その結果は公開しないという。

 行政目的に作成した資料のすべてを公開対象とするのが情報公開条例の基本原則。「課長にも聞け」「資料は非公開」と言える根拠はないはずだが。「日本は行政手続法が欧米と比べて三十年ほど遅れている」と行政学者は嘆く。

 役所を管理・運用するルールが未整備では納税者の権利が危うい。「役人は法規を楯に形式的理屈をいう技術を習得すべし」(役人学三則、末広巌太郎著)。優秀な役人の心得だとされる。行政学は役人の裁量をどう狭めるかが長年の課題らしい。(屋良朝博)


【琉球新報・社説】

EPA県民大会 農業を守る決意を結集

 今動かなければ、取り返しがつかなくなると、経済団体はじめ県民には強い危機感がある。日本とオーストラリアの経済連携協定(EPA)の締結へ向け協議が行われているからである。最悪の場合、沖縄の農業は壊滅的打撃を受けてしまう。きょう「食と農と暮らしを守る県民大会」が那覇市で開催される。沖縄農業への甚大な影響を強く訴え、政府に慎重な交渉を求める。
 世界の国々では今、経済のグローバル化を目指しEPA締結が加速している。日本はその動きに乗り遅れているといわれ、政府がオーストラリアや東南アジアの国々と交渉を進めるのは理解できる。
 EPAのメリットは、貿易や投資の自由化、円滑化を進め、日本企業が海外に進出するための環境を整備し、両国の経済を活性化させることだ。また、資源エネルギー、食料などの安定的輸入の確保や輸入先の多角化なども挙げられる。メリットもあるが、半面、自国農業は危機に立たされる。
 沖縄への影響も深刻だ。県農林水産部が2005年の農業生産額を基に試算した数字がある。それによると、EPAが締結されて農産物の関税が撤廃された場合、直接的にはマイナス229億円の影響がある。波及効果も含めると影響額はマイナス781億円にも膨れあがる。とりわけ基幹作物であるサトウキビは安価なオーストラリア産砂糖に太刀打ちできず、05年生産額の143億円すべてが失われる。産業が消滅してしまう可能性さえある。
 酪農、パイナップル生産も同じように甚大な影響を受ける。関連する産業の衰退で、失業率の悪化に結び付くことも懸念される。とりわけ離島地域の影響は深刻だ。
 県民大会では、「農業への多面的な機能への配慮と、地域に欠かせない重要な農畜産物を、関税撤廃の対象から除外するよう求める」とする決議を採択する予定だ。
 農業保護を守る県民大会は、1988年のパイン輸入自由化反対総決起大会以来だ。主催者は1万人の動員を目指している。沖縄の声、意志を結集して、県民総意の決意を訴える方針である。
 日本の食料自給率は40%。先進国の中で最も低い。地球温暖化の影響で世界的に気象異変が起こっており、農業環境の悪化で、生産量が著しく落ち込んだ場合を考えると、背筋が寒くなる。06年度版農業白書は、輸入に過度に頼る危険性を強調している。より安定的な食料確保のためにも自給率の向上が重要な課題である。
 今後のEPA交渉は7月末を含めて年内に3回行われ、農業分野の議論開始は早くても年末になる見通しだ。政府は、自国農業を衰退させないという前提に立ち、交渉を進めるべきである。

(6/16 10:03)

米掃海艇寄港 押し付けの友好・親善は迷惑

 在日米海軍が掃海艇2隻を与那国島に寄港させると通知していた問題で、外間守吉与那国町長は11日、寄港反対を表明した文書をケビン・メア在沖米国総領事に送った。住民感情への配慮、住民の安心・安全の確保などを反対理由に挙げているが、外間町長の判断は極めて妥当だと考える。6月は慰霊の日もあり、県民にとって厳粛な月。よりによって、この月に寄港というのも無神経にすぎないか。
 米海軍はどうしても八重山諸島に「拠点」を確保したいのか、石垣市に拒否された後、与那国に寄港を申し入れていた。それによると、慰霊の日の翌24日から3日間、長崎県佐世保基地所属の掃海艇2隻を寄港させるという。目的は「親善・友好訪問および乗組員の休養」だという。
 米軍は総領事を通じて町に対し「町長宅での歓迎パーティー」「米軍兵士とのバーベキュー大会への小中学生の参加」「艦長の記者会見」|などを要請している。押し掛ける方が、歓迎パーティーを求める神経にはあきれてしまう。「友好・親善」の押し付け、と言われても仕方がない。
 米艦船の民間港への寄港は県内だけでなく全国的に増えている。外務省によると2006年には28回にもなる。ソ連崩壊(1991年)以降、最も多い。背景には05年の在日米軍再編に関する合意で、日米軍事協力を向上させようと「港湾・空港の使用」を明記していることがある。その後、寄港回数が増加している。また、寄港の際、米軍は港の形状、水深などを詳しく調査、データを蓄積している。まさに「有事」に備えての事前調査を全国的に進めていることになる。
 これで、八重山諸島に米海軍がこだわる理由も見えてくる。やはり、台湾海峡への備えであり、軍港化を目指すものとみるのが自然だろう。とはいえ、与那国町長が反対し、県が自粛要請しても、日米地位協定第5条で寄港が認められている。政府は米側の要請を機械的に伝えるだけでなく、与那国町や県の意をくみ、寄港の自粛要請はできないのだろうか。

(6/16 10:02)

【琉球新報・金口木舌】

 「ものづくりの町」として知られる大阪府東大阪市。工場集積率は全国ナンバーワン、各分野でトップシェアを誇る会社やユニークな製品開発に取り組むオンリーワン企業も多い
▼が、高い技術力はあるもののものづくりに関心を持つ若者が減り、技術継承が懸念される。その中で東大阪宇宙開発協同組合を設立、人工衛星づくりに取り組み、来夏いよいよ宇宙へ打ち上げられる。「夢を打ち上げるんやない、夢で打ち上げるんや」とメンバーの鼻息も荒い
▼埼玉県に国内唯一のオーボエ専門メーカー「ムジーク・ヨーゼフ」の工房がある。主(あるじ)の仲村幸夫さん(53)は南風原町出身。オーボエはアシで作った2枚のリードを振動させて音を出すダブルリード楽器
▼首里高、武蔵野音大でオーボエを学び卒業後、ドイツで演奏家に。その後、制作者へと転身。世界の一流演奏家から「神からオーボエ奏者への贈り物」と絶賛されるほどの名器を手掛ける
▼その仲村さんが、古里への恩返しとして、温めてきた工房移転がいよいよ実現する。南城市で17日着工、秋にも工場が完成する
▼世界が認める名器が沖縄から発信されれば沖縄も、ものづくりの島として注目されるはず。“沖縄発世界へ”の夢が広がる。

(6/16 10:00)


【東京新聞・社説】

パレスチナ 分裂と内戦が心配だ

2007年6月16日

 パレスチナ自治区がイスラム原理主義組織ハマスの制圧したガザと、ファタハ支配のヨルダン川西岸に分断された。非常事態宣言が出され、連立内閣は崩壊した。中東にまた暗雲が立ちこめている。

 パレスチナは、ハマスとパレスチナ解放機構(PLO)主流派のアッバス自治政府議長率いるファタハが今年三月、連立政権の樹立で歩み寄ったばかりだった。

 しかし、ガザで内部抗争に逆戻りし、特にハマス最高幹部のハニヤ首相の自宅へのロケット弾砲撃の報復としてハマスは、ファタハ系への総攻撃を展開した。十四日までにファタハ拠点や幹線道路などを制圧したが、この一週間で約百人の犠牲者数が抗争の激しさを物語っている。

 ファタハはヨルダン川西岸での支配態勢を固める一方、アッバス議長がハマスのガザ支配を「軍事クーデター」と断定した。ハマスは「解散は無効。ハニヤ首相は続投する」と切り返し、分裂局面に突入した。

 抗争の根っこは自治政府の治安権限をめぐる対立にある。昨年三月、選挙でハマス政権が発足したものの、故アラファト議長以来のファタハ部隊による支配構造はそのまま温存された。ハマスはこれに対抗して独自の治安部隊を創設し、両派が主導権争いを繰り返してきた。

 ハマスの兵力はファタハ部隊に比べて劣る。だが武力闘争を重視して士気は高く、対イスラエル強硬姿勢のイランやシリアからの武器支援を得て、ガザ全土での実権掌握に打って出たとみられる。

 ハマスがイスラエルの生存権を認めず、米国、欧州連合(EU)からパレスチナ自治政府への支援が停止され、窮乏を強いられているとの不満がファタハ側にはある。逆にハマス側には、ファタハは占領者である敵と妥協しているように映る。相互不信が強いのだ。

 パレスチナが第三次中東戦争でイスラエルに占領されて四十年。独立国家樹立が悲願なのに、内戦状態が恒常化すれば、独立への道はますます困難になる。

 イラクのイスラム教シーア派勢力やレバノンのシーア派組織ヒズボラと同様に、ハマスもスンニ派組織ながらイランの支援を受けている。米国は、イスラエルを交渉相手と認めるアッバス議長ら穏健派を支える方針だが、親イラン勢力との対立を煽(あお)ってはなるまい。

 パレスチナの主要支援国である日本も両派和解へ最大限の外交努力を重ねたい。武力抗争が続けば、中東の経済発展を促す「平和と繁栄の回廊」構想も絵に描いたもちになる。

6カ国協議 今度は北朝鮮の番だ

2007年6月16日

 今度は北朝鮮が核関連施設の稼働停止を実行に移す番だ。そのための条件としていたマカオの銀行に凍結されていた北朝鮮資金の送金が完了したからだ。これ以上の横車は許されない。

 マカオ政府は「北朝鮮側の指示通りにすべてを送金した」と言明した。北朝鮮が強く求めていたマカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)にある北朝鮮関連の二千五百万ドル(約三十億円)は、近々のうちに北朝鮮の手に入ることになった。

 これまで、北朝鮮は「送金が実現すれば、直ちに初期段階措置を履行する」と繰り返してきた。

 六カ国協議で合意した「初期段階措置」では、北朝鮮は寧辺周辺の核施設の稼働停止と封印、国際原子力機関(IAEA)の監視と検証を受け入れることになっている。

 この合意からすでに四カ月がたっている。もともと六十日以内に履行することになっていたが、大幅に遅れている。北朝鮮が核問題とは直接関係ない米国による金融制裁の解除、とくにマカオの資金の凍結解除を求めていたためだ。

 障害は取り除かれた。北朝鮮は言明通り直ちに「初期段階措置」を実行すべきだ。国際的な約束を守るのは義務である。

 この措置が確認された段階で周辺国による北朝鮮への重油五万トンの提供も実施に移される。

 そうなれば、「北朝鮮のすべての核兵器と既存の核計画の放棄」(二〇〇五年九月の共同声明)に向けての第一歩を踏み出す。

 しかし今回はもやもやが残った。

 北朝鮮の横車に米国が無原則に譲歩したからだ。金融制裁は、北朝鮮による偽ドル札の使用や資金洗浄などの不法行為があったためだ。

 BDAの北朝鮮関連口座凍結もその一環だったが、中央銀行につながるニューヨーク連邦準備銀行もかかわって送金することで、制裁は骨抜きになってしまった。

 ブッシュ政権はイラク戦争やイランの核問題で手いっぱいになっており、北朝鮮の核問題を早く一段落させたいという思惑からだろう。

 心配されるのは、北朝鮮のごね得容認という誤った意向を伝えないかということだ。

 北朝鮮は、次なる要求として米国によるテロ支援国の指定解除や、朝鮮戦争の休戦協定から平和協定への移行を求めてくる可能性が強い。米国は厳しく対応する必要がある。

 北朝鮮の非核化への道は険しい。周辺国の一層の連携が求められる。そうでないと、北朝鮮は新たな条件を持ち出してくるに違いない。

【東京新聞・筆洗】2007年6月16日

 東京・銀座の女王バチといっても高級バーの話ではない。銀座で本物のミツバチが飼われていて、昨年は百五十キロもハチミツが採れたと聞けば、これ は驚きだ▼『銀座百点』六月号に、フードジャーナリストの向笠(むかさ)千恵子さんが「銀座、ミツバチの誘惑」という楽しいエッセーを寄せている。昨年か ら、松屋デパート近くの紙パルプ会館屋上にハチの巣箱が置かれ、ハチミツを採集する「銀座ミツバチプロジェクト」が始まったという▼仕掛け人は同会館役員 で「銀座の街研究会」代表世話人の田中淳夫さんや高安和夫さんら。岩手県の藤原養蜂(ようほう)場の協力で、サクラが咲く三月末から梅雨入りの六月後半ま で、マロニエやトチ、ユリノキなど、銀座周辺の街路樹や皇居、浜離宮など庭園の花木が蜜(みつ)源となる▼ハチの行動半径は二-三キロあり、一匹が日に十 -二十往復する。銀座のビルの高さが五十六メートル以下に制限されているのがハチの飛行高度に合うらしい。なにより、ミツを集めるハチの授粉によって花が 実となり、鳥が集まり、虫を捕る、そんな生態系のサイクルに自分も加わっている実感に、メンバーは癒やされる▼不思議な効果もあった。早朝、ごみをつつく カラスが減ったという。ミツバチには巣のミツを狙うクマを追いかけ回す習性があり、黒いものに反応するため、銀座のカラスも標的になって逃げ出したらしい ▼今は会員らがケーキやカクテルにして味わっているが、ゆくゆくはパリ・オペラ座の養蜂ハチミツが土産品になっているように、銀座土産の名物にしたいとい う。


【河北新報・社説】

年金記録不備問題/まず情報を全面公開せよ

 公的年金記録の不備問題は、コンピューターに未入力の新たな記録の判明や社会保険庁の対処のまずさなどから、混乱が収拾するめどが立たない。
 政府が最優先で取り組まなければならないのは、年金受給漏れの人を出さないことだ。

 そのためにまず必要なのは、決意表明などではなく、年金記録の情報を速やかに、全面的に国民に公開することだ。その上で、問題解決の方策を具体的に示すべきだろう。

 5000万件に上る対象者不明の年金記録の問題が表面化した以降も、約1400万件の手書きの厚生年金の記録や、基礎年金番号に複数の番号がある約2万人の存在など、重要な情報がぽろぽろ出てくる。

 こんな状態では「まだ何か隠しているのではないか」と国民が不信感を抱くのは当然だ。
 情報隠しは悪質な行為だが、虚偽の情報を出すに至っては論外と言わなければならない。
 社保庁が12日に行ったサンプル調査結果の報告は、まさに虚偽情報に当たる。

 紙台帳を撮影したマイクロフィルムの保険料納付記録から3090件を抽出して、オンラインシステム上のデータと照合した結果、保険料納付に関し4件の入力ミスがあり、氏名、生年月日では食い違いはなかったという。柳沢伯夫厚生労働相も国会でその通り答弁した。

 ところが翌13日、氏名や生年月日などの入力ミスもあったことが発覚した。
 これまでさんざん批判されてきたのに、社保庁の隠ぺい体質、無責任体質は一向に改まっていないことを示すものだ。
 政府はこの問題をあいまいにしてはならない。虚偽報告の関係者の責任を厳しく問い、厳重に処分すべきだ。

 年金受給漏れを防ぐ上で今後重要な役割を担うのは、総務省の出先機関に設置される第三者委員会だ。
 第三者委員会は、領収書などの証拠がない場合に年金支給の可否を判断し、社保庁に意見を提示する。「親方日の丸」的体質の社保庁に判断は任せられないという、政府の強いメッセージにほかならない。

 運営方法や判断基準などを早急に示してほしい。現在、給付額などに不服のある場合に審査する社会保険審査制度との関係も明確にする必要がある。

 第三者委員会の設置によって、過去の審査と判断が違ってくることが予想される。その場合、過去の審査に対する救済措置も検討の必要があるだろう。審査制度の在り方も全面的に見直すべきではないか。
 政府が提出している社保庁改革関連法案では、審査制度は組織変更に伴って用語を改めるだけにすぎない。

 総務省の検証委員会が発足し、年金記録不備問題の原因や責任の所在の調査も始まったが、報告がまとまるのは今秋の予定だ。報告を改革法案に反映することもできない。
 政府、与党は改革法案を今国会で成立させる方針だが、現状では認められない。廃案とし、練り直すよう求めたい。
2007年06月16日土曜日

【河北新報・河北春秋】

 「小泉劇場」とは言ったが、「安倍劇場」とは言わない。安倍晋三首相は小泉純一郎前首相が率いた一座の人気役者で、座長を引き継いだわけだが、前座長のように観客席の国民を巧みにとらえる芸を持ち合わせていないのだろうか▼そんな安倍首相が今国会の幕引きに苦心している。23日の会期末を、野党ペースで進む年金記録不備問題の後始末で迎えるか、それとも安倍内閣が公務員制度改革の切り札とする天下り規制法を成立させて迎えるのか

 ▼ 閉幕後、観客のまぶたに残像として浮かぶのは安倍首相の顔か野党党首の顔か。それは夏の参院選という第2幕の出来にかかわるので、首相が天下り防止策に執着するのは分かる▼そこで自民党内に浮上してきたのが10日間前後の会期延長を容認する声。幕を引くのを少しだけずらし、内閣のとっておきの出し物でフィナーレを飾ろうというわけだ

 ▼こんな声を発する役回りは首相の出身派閥の幹部らと決まっている。延長論は支持されるか。池に投げた小石の波紋がどう広がるかを見極めた上で、決断するのは安倍首相だ▼しかし、こうした舞台回しを観客席は正直どう受け止めるか。観客がそこに無理があることに気づけば、舞台はたちまちぎこちなくなってしまうし、劇場内の空気はしらけてしまう。

2007年06月16日土曜日


【京都新聞・社説】

鴨川条例  「府民協働」で育てたい

 京の街に鴨川がなかったとしたらどうだろう。潤いに欠け、街の表情も大きく変わるのか。いや、想像することさえかなわない。
 平安京以来、千二百年にわたって人々の暮らしと深く結びついているのだから、当然かもしれない。今も憩いの場として親しまれているが、一方で岸辺の景観や迷惑行為など新たな課題が浮上している。
 途中で合流する高野川を含め、京の市街地を縦断する鴨川を守り、次代に引き継ごうというのが「鴨川条例」だ。
 学識者でつくる検討委員会や府民の意見を踏まえて府が条例案をまとめ、十九日開会の六月議会に提案する。
 利用の在り方を含む総合的な河川環境の保全条例は全国初という。先駆的な取り組みとして評価したい。
 ただ、バーベキューなどを禁じ、罰則も設けるなどの規制が盛り込まれているだけに府民の理解が欠かせない。府は丁寧に説明するとともに、規制の是非や仕組みなどしっかり議論してほしい。
 条例案は基本理念、府や府民の責務を挙げたうえで、(1)安心・安全の確保(2)良好な河川環境の保全(3)快適な利用の確保-を府民協働で推進するとしている。
 特徴的なのは(2)で、鴨川への土砂流入を防ぐため環境保全区域を指定する。
 上流域を想定しており、区域内で土砂を掘削したり、建物などを新築、改築する際には府の許可が必要となる。
 府が本来担う河川管理の範囲を超えているうえ、届け出制より規制がきつい許可制としたことからも、「清流を守る」との府の強い意思が読み取れる。
 さらに鴨川納涼床も、色や高さなどの外観や構造が周囲と合わないものが出てきたため、審査基準を定めるなど良好な景観づくりにも踏み込んだ。
 府民に直接かかわるのは(3)で、橋や石垣へのスプレーなどによる落書き、人家が隣接する区域などでの打ち上げ花火、バーベキューを禁止する。
 いずれもマナーの問題だが、条例による規制が必要なほど、現状がひどいということだろう。寂しい限りだ。
 中でも、バーベキューのため大勢が押しかけている地区では、切実な問題となっている。ただ、落書きや打ち上げ花火とは少し性格が異なる。
 川に親しむという観点からすれば、禁止区域を設ける以外にも方法はないものか。知恵を絞りたい。
 そこで大事な役目を担うのが新設する「鴨川府民会議」だ。禁止区域や環境保全区域は、府民会議の意見も取り入れて指定する予定という。条例の見直しにもかかわる。文字通り府民の声を生かす組織にする必要があるだろう。
 鴨川の隣接区域を管轄する京都市との連携も不可欠だ。「府市協調」が本物かどうかが試されよう。
 府民も「自分たちの川」との意識を持って、鴨川条例を大きく育てたい。

[京都新聞 2007年06月16日掲載]

じん肺訴訟和解  国は謝罪し抜本策示せ

 国発注のトンネル工事に従事し、じん肺になった元作業員らが国に損害賠償を求めている「トンネルじん肺訴訟」で、国と原告側が近く和解する見通しとなった。
 国が政策転換し、和解に応じることは一定評価できる。しかし、これまでの患者や遺族の苦しみを思うと、遅きに失したと言わざるをえない。
 トンネルじん肺訴訟は、鉄道や道路、ダムなど公共工事のトンネル現場で働きじん肺になった約九百六十人が全国十一地裁に一斉に提訴した集団訴訟だ。
 工事現場で多量の粉じんを長期間吸い込んだことが原因で、肺機能に障害が起こり、激しい呼吸困難やせきを引き起こすのが、じん肺である。
 国が今回、和解に踏み切ったのは昨年七月以降、東京など五地裁でいずれも、「じん肺を防ぐための規制を怠った」として損害賠償を命じられたからだ。
 司法から「不作為」を厳しく指摘され国が一審で「五連敗」したというわけである。これ以上争っても、勝訴する見込みがないと判断したのだろう。
 和解内容は、国が現行の「粉じん障害防止規則」を改正し、粉じん濃度の定期的測定や防じんマスクの義務付け、現場での労働時間の八時間以内への短縮-などの対策を推進するという。
 こんな対策すら、なぜ実施されてこなかったのか。首をかしげざるをえない。劣悪な環境で働かせられてきた原告らはまさに国の犠牲者といってもよい。
 一方、今回の和解で原告側は総額三十二億円に上る賠償請求を放棄する。
 原告の多くは、工事を請け負ったゼネコンに対する訴訟ではすでに和解をすませている。あえて同じ工事で国を相手に提訴したのは「国が本気で施策を打たない限り、じん肺はなくならない」という強い思いからだ。
 国は一連の訴訟で、具体的な解決策を示すよりも損害賠償の消滅時効や除斥期間を持ち出し、原告らじん肺患者を苦しめてきたのが実情ではなかったか。
 提訴しながら無念のうちに亡くなった人や、高齢になるにしたがい病状が悪化している患者も多い。解決をここまで長引かせた国の責任は重い。
 公共事業に伴うトンネル工事は今後も続く。じん肺は現在進行形の問題ということである。
 安倍晋三首相は、近く原告団と会談しお見舞いと弔意を表明するという。首相はまず、これまでの国の「無策」をわびることだ。
 東京大気汚染訴訟で国費拠出を決めるなど、首相はこのところ患者救済に柔軟姿勢である。参院選への思惑もあるのだろう。
 肝要なのは謙虚に患者の訴えに耳を傾け、その声を政策に生かすことだ。これ以上患者を泣かせてはならない。新たな患者を出してはならない。

[京都新聞 2007年06月16日掲載]

【京都新聞・凡語】

ワルトハイム・元国連事務総長の死去で

 若き日の、忘れ去りたい過去が、晩年の評価に影を落とす。ワルトハイム・元国連事務総長死去のニュースに、激動の二十世紀と人間の運命について、考えさせられた▼一九七二年から十年間、国連事務総長を務めた。中越戦争など、国際紛争の火消し役として名声を博し、八六年には自国オーストリアの大統領にも選ばれたが、隠していた過去の経歴が問題となった▼第二次大戦中、ナチス・ドイツ軍の将校としてバルカン半島でユダヤ人の強制移送に加担した疑惑が大統領選前に表面化したからだ。本人はユダヤ人虐殺などへの関与を強く否定したが、内外の疑惑はぬぐい去れなかった▼ナチスが欧州を席巻した時代に、積極的にせよ消極的にせよ、かかわりを持った人は多い。その経歴を明かすには相当の覚悟がいるのは分かる。ドイツでも昨年、作家のギュンター・グラス氏が、親衛隊にいた過去を告白をして、話題になった▼スウェーデンの探検家スヴェン・ヘディンも、第二次大戦中のドイツとのかかわりが問題となった。大谷光瑞とも文通の仲で、世界の探検家のあこがれでもあるヘディンも、自国の評価は割れている▼戦争という不条理に運命をもてあそばれた世代には、今も明かしたくない過去を持つ人もいることだろう。だが歴史の審判を受ける立場の人たちは特に、隠し通して済む話ではなさそうだ。

[京都新聞 2007年06月16日掲載]


【朝日・社説】2007年06月16日(土曜日)付

社保庁法案―どさくさで押し通すな

 次々と明らかになる社会保険庁のずさんな年金管理。それを追いかけるように出される政府の対応策。年金相談が殺到した電話はパンクしてしまった。

 社保庁改革法案の提出をきっかけに噴き出した年金不安は、かつてないほど広がっている。そんな中で与党は、年金の時効をなくす法案と抱き合わせで、社保庁法案を成立させようとしている。

 年金記録が宙に浮いたり消えたりした人を救済するため、年金の時効を停止して支給漏れを補償することは必要だ。そのための法案に異論はない。

 しかし、社保庁を6分割して非公務員型の公法人とする政府案は、採決を急ぐべきではない。

 ずさんな記録管理はまだ全容が明らかになっていない。政府の救済策もあいまいなところがたくさんある。そんな中途半端な状態で社保庁の枠組みを変えても、年金への信頼を高めるどころか、かえって不信を増大させかねない。ここは廃案にして出直した方がいい。

 年金制度を長く維持していくには、何と言っても、信頼が第一だ。まずは、年金の記録漏れの実態をすべて明らかにして、救済すべきだ。そのうえで、二度と間違いを犯さないよう対策を示すことを優先させなければならない。

 政府が提出した社保庁法案は、3年後に新しい組織へ移行することを想定している。しかし、いまの社保庁のでたらめぶりを見れば、このまま非公務員型の公法人に移しても、きちんと運営できるのか。大いに疑問がある。

 「親方日の丸」でなくなれば、職員の意識が変わり規律も生まれる。政府はそう言うが、それだけでは説得力がない。

 今回の騒ぎで改めて分かったのは、保険料の記録管理が大事なことだ。

 ところが、社保庁法案は公務員のリストラと民間委託に主眼が置かれている。記録管理の組織をどうつくるのか。人員をどう配置するか。そうした肝心なことは、何も決まっていない。法律の成立後に内閣に置く第三者機関で定めるというのでは、不安は消えない。

 そもそも、自民党は昨年、社保庁を国の機関である「ねんきん事業機構」とする政府案をいったん認めたのに、手ぬるいと廃案にした。本人の了解を取らずに保険料を免除扱いにする不正がきっかけだった。今回の記録管理のひどさはもっと根が深く、深刻な問題だ。

 年金への信頼を欠いたまま新組織をつくっても、砂上の楼閣になるだけだ。

 安倍首相は年金問題を持論の「戦後レジームからの脱却」と同一に置き、参院選の争点にしようと意気込んでいるようだ。しかし、それは何か勘違いをしているとしか思えない。

 いま問われているのは、これまで政府が放置してきた年金のずさんな管理であり、その後始末の方法である。政府・自民党が胸を張って選挙の争点にできるような代物ではない。

北朝鮮送金―次は核施設の停止だ

 北朝鮮の核問題で、ようやく障害が取り除かれつつあるようだ。マカオの銀行口座にとどまっていた北朝鮮の資金が、国外に送金されたという。北朝鮮の粘り腰に米国が譲った形だ。

 2月の6者合意では、本来なら4月中旬までに北朝鮮の核施設は停止・封印されるはずだった。それが頓挫したのは、米国の制裁で凍結されたマカオの北朝鮮資金の送金解除が滞ったためである。

 米国は今年に入って凍結解除を決め、口座にあった約2500万ドルの資金を北朝鮮が動かせるよう手続きを進めた。だが、外国の民間銀行がこの資金を扱うのを嫌ったことなどから、他行への送金がなかなか実現しなかった。

 今回、米国とロシアの中央銀行を経由させるという異例の手段で、ようやくロシア極東の民間銀行に送金できるめどがたったと見られている。

 北朝鮮は、送金できないことを理由に、6者合意の履行を先延ばししてきた。これでもう、その論法は通じない。かねて「送金が実現すれば核施設を停止する用意がある」としてきた。その発言を実行しなければならない。

 2月の合意通り、北朝鮮はただちに核関連施設を停止すべきだ。国際原子力機関の要員を一刻も早く受け入れ、封印などの実務作業の詰めを急ぐ必要がある。

 6者協議のヒル米代表が来週、日中韓を回る。北朝鮮の出方を見つつ、合意の実行に向けて6者であらためて仕切り直すことも考えるべきだろう。「失われた時間を取り戻す」(同代表)ために、関係国は全力をあげてもらいたい。

 それにしても、この口座凍結は核問題の解決に大きな影を落とした。

 米国は、北朝鮮が米ドル札の偽造や麻薬密輸などで得た違法資金の洗浄にマカオの銀行が使われたと見ている。金融制裁はその意味で「ドル防衛のための当然の措置」だったのだ。

 したがって、核合意を実行する前提として金融制裁の解除を迫った北朝鮮の主張はもとより筋違いだが、なりふり構わぬ北朝鮮にそんな理屈は通らない。

 心配した通り北朝鮮は強く反発し、国際社会との対立は深刻になった。昨年の弾道ミサイル発射や核実験も、それと無縁ではなかろう。米国の強硬策が逆に危機を深めた面は否めない。

 その後、ブッシュ政権は北朝鮮との対話路線にハンドルを切ったものの、今回の送金解除で予想外に手間取ったことも含め、進展が遅れているのは遺憾だ。

 だが、米国による金融制裁が無駄に終わったわけではないだろう。

 これで送金できるようになったとしても、北朝鮮の資金に対する監視の目はこれまで以上に強まるに違いない。核実験などの挑発で、北朝鮮は頼みの中国との関係をすっかり冷えさせもした。

 そんな北朝鮮にも出口はある。核放棄へ6者合意を誠実に実行することだ。それが生き残りへの道である。

【朝日・天声人語】2007年06月16日(土曜日)付

 例年より遅れながら、梅雨前線が北上してきた。「梅雨入りお見舞い申し上げます」と、新聞に広告が載っていた。さわやかな気分からは遠い。けれど、煙る雨の奥に、盛んな生命の営みを感じる季節でもある。

 湿気の中から生じるものには「嫌われ者」が多い。〈梅雨茸(つゆだけ)の咎(と が)あるごとく踏まれけり 田村コト〉。いまごろのキノコを、俳句では総じて梅雨茸と呼ぶ。生き物なら、ナメクジあたりが筆頭だろう。昭和の名人、落語家 の五代目古今亭志ん生の半生記「なめくじ艦隊」を思い起こす。

 志ん生一家が5人で暮らす貧乏長屋には、大小のナメクジが艦隊よろしく押し寄せた。塩をまいても参らない。夜になるとピシッ、ピシッと鳴いて、大きいヤツがカミさんの足の裏に吸い付いたというから、すさまじい。毎朝、炭入れにいっぱい取って川にうっちゃっていたそうだ。

 〈滑らかに生き居ることを憎しとし蛞蝓(なめくじ)は女に塩まかれたる 斎藤史〉。呼び名の「ナメ」は滑らかという意味だが、「クジ」には定説がないと聞く。水回りに出没しては主婦の不興を買ったが、都会ではもう目にすることはまれだ。

 この時期には、鉢植えの下に潜んでいることが多い。夜になると艦隊を組んで出撃し、柔らかい芽を食べてしまう。植物の葉に銀色の「航跡」を見つけたら、園芸好きな人は要注意である。

 どうにも敵が多いけれど、やさしい目を向ける人もいる。〈なめくぢも夕映えてをり葱(ねぎ)の先 飴山實〉。なべて生き物に命あり。雨も光も、へだてなく万物に降り注ぐ。


【毎日・社説】

社説:年金検証委 不作為も監督責任も見逃すな

 わが国の行政史上、最悪とも言われる不作為とミスと放置はなぜ起きたのか。年金記録問題検証委員会が原因と責任の所在を解き明かす作業に取り組む。さまざまな角度から分析・検証し、国民が納得できるような報告を提示してもらいたい。

 不明記録に端を発した年金騒動は「浮いた・消えた・見つからない・つながらない」のトラブル件数が次々と明るみに出て、底なしの様相を呈している。

 列挙すると(1)持ち主不明の記録5000万件(2)コンピューターに未入力の記録1430万件(3)1970年代に保険料を一括して納めた「特例納付」の記録が残っていない(4)納付名簿を破棄した市町村は191(5)サンプル調査で1%の入力ミス--などだ。自民党幹事長が「本当に解決すべき数字はどれか」と頭を抱え込んでしまうのも無理はない。

 社会保険庁は24時間対応の専用フリーダイヤルを設置したが、利用者が殺到、電話のつながらない状態が続いている。年金制度への不信と不安がうっ積したこの状況を何と形容したらいいのだろう。昔の「米騒動」にも匹敵する社会不安である。

 政府は、1年間で5000万件の名寄せを終える▽支払い漏れを認定する第三者委員会を設ける▽原因究明の検証委員会を設置する、の3本柱で対応しようとしている。運用上の問題点をあまり検討せずに、参院選前にあわてて提示した感じがあり、関係者もその実効性に疑いを抱いている。しかし与党は選挙公約にした以上、推し進める責任がある。

 検証委は首相指示で総務省に置かれた。厚生労働省内ではお手盛り検証と言われかねないからで、厚労省の権威も失墜したものだ。

 社保庁の職員は3層構造と言われてきた。厚労省から出向のキャリア組、社保庁採用の中堅幹部、地方事務官として採用され組織変更で国家公務員に移行した職員。中途半端な身分制度が、おざなり仕事をはびこらせたという指摘も多い。組織構造が仕事の進め方、職員の意識にどう影響を与えたのか、徹底的に解析してほしい。

 仮に事なかれ主義のまん延が一連の不祥事の病巣であったとしても、それをえぐり出し、職員を督励する責務は一義的に社保庁長官が担う。その上には統括する厚労相がおり、任命した首相にも連なる。範囲をどこまで広げるかはさておき、政治責任の追及に聖域を設けてはならないし、責任の取り方も国民が納得できるものを示すべきだ。

 原因追及を人の問題に帰するだけでなく、複雑な年金制度の中にトラブルを生む種がなかったかどうかも検証しなければならない。年金は「申請主義」に貫かれている。被保険者や受給者からの申し出がない限り、記録の訂正が行われないというのでは、必ず不利益をこうむる人が出てくる。

 今秋に出る検証委報告は、国民の立場に立った、わかりやすく、信頼の置ける年金制度への引き金となることを期待したい。

毎日新聞 2007年6月16日 東京朝刊

社説:核「初期措置」 北朝鮮は速やかに履行せよ

 マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)に凍結されていた北朝鮮関連資金について、2000万ドル(約25億円)以上の送金手続きが始まった。ニューヨーク連邦準備銀行からロシア中央銀行を経て、ロシアの商業銀行にある北朝鮮口座に送られるという。

 異例の措置とはいえ、資金問題が解決に向かった以上、北朝鮮が6カ国協議の合意履行を拒む理由はない。北朝鮮は核施設の停止や封印など「初期段階措置」に速やかに着手すべきだ。本来の履行期限は4月中旬であり、すでに2カ月もずれ込んでいる。

 米国にも注文したい。対北朝鮮交渉が難しいのは承知しているが、米国の対応はいかにもお粗末だった。北朝鮮のしたたかさが目立つ分、米外交の脇の甘さや調整力の欠如も感じられた。今後の交渉に生かすために、反省すべき点は謙虚に反省すべきである。

 そもそも、BDAの北朝鮮資金の違法性を指摘したのは米国だった。米財務省は05年秋、「愛国者法」に基づいて米金融機関とBDAの取引を規制した。その一方で凍結資金の全額を北朝鮮に返還することにしたのは国務省主導の判断である。二つの省の相反する決定について、ちぐはぐな印象が最後まで消えなかった。

 当初、中国銀行の口座経由で資金を返還する予定でいながら、根回し不足から中国側に断られたのも、理解に苦しむ。結局、ロシアが助け舟を出し、米側は「愛国者法」に縛られない連銀を経由して資金を送るという「超法規措置」で問題解決を図った。最近、対立が目立つ米露の協力自体は歓迎すべきことかもしれない。

 だが、違法性の高い資金の送金に米露の中央銀行が関与し、あたかも不正の抜け道を示すような形になったのは、将来に大きな禍根を残す恐れがある。日本で言えば、日銀が巨額のマネーロンダリング(資金洗浄)に関与するようなものではないか。難題を解決するためとはいえ、国際社会に不明朗な印象を残したのは残念だ。

 もっとも、北朝鮮がこれで満足するとは限らない。国際金融システムに参入したい北朝鮮は、何としても米国に「テロ支援国家」指定を解除させたい。北朝鮮工作員の犯行とされる国際テロ「ラングーン事件」の舞台となったミャンマーとの国交回復(今年4月)も、そのための布石だろう。北朝鮮は今後とも、硬軟の外交攻勢、揺さぶりをかけてくるはずだ。

 一方、米政府も最近は北朝鮮への強い批判を控え、指定解除に前向きとされる点が気がかりだ。北朝鮮が合意に沿って「初期段階措置」を速やかに履行するかどうか予断を許さず、拉致問題もいっこうに進展しない。北朝鮮の核実験やミサイル発射などで、日本は直接的かつ重大な脅威にさらされている。そんな状況下で米国が「テロ支援国家」の指定解除へ動くのは、とても賛成できない。

 ともあれ事態は動き出した。今後は6カ国協議の早期再開に向け、関係国の意見調整を進めたい。

毎日新聞 2007年6月16日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:古代ギリシャの哲学者アリストテレスの「動物誌」には…

 古代ギリシャの哲学者アリストテレスの「動物誌」には、ウナギの養殖業者は水をきれいに保つよう努めていると書かれている。ギリシャ人はウナギの養殖を行っていたのだ。だが哲人にもウナギの生殖法はやはり謎で、地中のミミズから生まれると考えていた▲ウナギがどうやって生まれるのか、ヨーロッパ人はよほど不思議に思ったらしい。古代ローマの博物誌家のプリニウスは、岩に体をこすりつけてそげた体の一部から生まれるといい、17世紀のオランダの科学者は5月の露から生まれると説いた(荒俣宏著「世界大博物図鑑」平凡社)▲積年の謎が解かれたのは20世紀になってからだ。デンマークのシュミット博士が、その産卵場所を大西洋のバミューダ島近くの海底だとつきとめたのだ。ちなみに日本のウナギのそれが太平洋のマリアナ諸島西方海域と確認されたのは一昨年である▲だが、大西洋のかなたで生まれるヨーロッパウナギの資源量は、最近の乱獲で1970年代のわずか1%ほどに激減しているという。先ごろワシントン条約締約国会議で稚魚の輸出規制が可決され、欧州連合(EU)が稚魚漁獲量の大幅削減を決めたのもこの資源枯渇の危機のためだ▲稚魚の多くは中国に輸出され、そこで養殖されてかば焼きに加工されたものが日本に入ってくるという。輸出規制はやがてかば焼きの値段に影響を与えそうだが、世界一のウナギ好き国民として心配すべきは、稚魚減少は世界的傾向だということだ▲輸出国である英国ではウナギの稚魚(グリッグ)は、群れて動き回るさまからだろう、元気で快活なことのたとえにされる。ここはヨーロッパウナギの元気回復を願い、協力するのがウナギの恩恵を最もよく知る日本人の務めだろう。

毎日新聞 2007年6月16日 東京朝刊


【読売・社説】

北朝鮮資金送金 核の脅威は何も変わっていない(6月16日付・読売社説)

 これで、北朝鮮が、核廃棄の「初期段階の措置」へ、ようやく動き出すのかどうか。

 マカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア」(BDA)で凍結されていた北朝鮮の資金が、紆余(うよ)曲折の末、ニューヨーク連邦準備銀行とロシア中央銀行を経由して、ロシアの民間銀行にある北朝鮮口座へ送金された。北朝鮮が入金を確認すれば、送金手続きは完了するという。

 米国は、資金洗浄など北朝鮮の不法行為に加担したとして、反テロ法である愛国者法に基づき、BDAを制裁対象に指定し、米金融機関にはBDAとの取引を禁止した。

 今回の資金返還は、いわば超法規的な扱いだ。しかも第三国送金まで認めたことになる。釈然としない措置だ。

 北朝鮮は資金の全面返還を6か国合意履行の前提条件としてきた。ブッシュ米政権が北朝鮮に譲歩する政治的妥協に踏み切ったのは、6か国協議の崩壊を避けるためだったのだろう。

 問題は、北朝鮮に、どう核廃棄への具体的措置を実行させていくかだ。

 北朝鮮の核兵器開発に一応の歯止めをかける6か国合意からすでに4か月がたった。「初期段階の措置」の実施期限は2か月前に過ぎた。北朝鮮の義務履行をこれ以上遅らせることはできない。

 北朝鮮にとって「初期段階」の実行は、難しいことではあるまい。老朽化が進む核施設の稼働を止め、国際原子力機関(IAEA)要員を受け入れるだけで、見返りに重油5万トンを得ることができる。韓国からは別途、コメ40万トンも入る。

 一方、核施設凍結にとどまる限り、北朝鮮はいつでもプルトニウム生産を再開でき、凍結解除の脅しもかけられる。

 重要なのは、初期段階に続く「次の段階」の措置を早期に北朝鮮に実施させることだ。北朝鮮は「すべての核計画についての完全な申告」と「すべての既存の核施設の無能力化」を約束した。

 だが、「濃縮ウラン計画」は含まれるか、核施設の「無能力化」をどう定義するか。詰めはこれからだ。核兵器や保有プルトニウムの廃棄などの核心部分は、将来の交渉に委ねている。6か国協議の場で、核廃棄への道筋で早期に合意できると楽観することはとてもできない。

 核兵器を体制維持のための最大のカードとみなす金正日政権が、それを容易に手放すはずはない。日本にとっての深刻な脅威は厳然と存在する。

 北朝鮮の大量破壊兵器や弾道ミサイル開発につながる取引を禁じる国連制裁決議は依然、有効だ。国際社会は、北朝鮮への監視と警戒を緩めてはならない。
(2007年6月16日1時34分  読売新聞)

NOVA処分 「駅前留学」が重ねた嘘と不正(6月16日付・読売社説)

 組織ぐるみの悪質な違反である。一部業務の停止処分は当然だ。行政の対応は、遅すぎたのではないか。

 経済産業省は、英会話学校最大手のNOVAに、1年超の長期コースの新規契約の勧誘など、一部業務の6か月間停止を命令した。東京都も都条例に基づき、改善を勧告した。

 消費者とのトラブルが起きやすい取引のルールを定めた特定商取引法の違反行為が、18項目に及んでいたからだ。

 違反は、レッスンの勧誘時に、「予約は好きなときにできる」などと嘘(うそ)の説明をした「不実告知」のほか、「書面記載不備」「誇大広告」などだ。

 中途解約の際、返還すべき金額を過小に精算したり、契約後の一定期間は、解約に応じなければならないクーリングオフに、応じていない事例もあった。

 不正の多さにあきれる。しかも、本社がマニュアルや通達で、現場に違反を指示していた。法令順守(コンプライアンス)の意識を全く欠いている。

 NOVAは、「駅前留学」や「お茶の間留学」などの宣伝で知名度を高め、急成長した。全国で教室数は約900、生徒数が約42万人の業界首位である。

 だが、規模に比べて講師数が少なく、受講生とのトラブルが急増中だ。「全国1000教室」を目指した拡大志向がゆがみを生み、違反に走ったのだろう。

 各地で受講料の返還訴訟が起き、中途解約金返還をめぐる1件では、最高裁で4月に会社敗訴が確定した。

 NOVAは再発防止策を取り、法令順守を徹底しなければならない。処分対象外だった既契約のレッスンは続け、受講生の不安を解消することも大事だ。

 NOVAの違反を長期間、放置してきた行政の責任も重い。

 都は02年、NOVAに「不実告知」などで行政指導した。いったん改善されたが、その後、逆に違反は増え続けた。だが、経産省と都が立ち入り検査したのは、今年2月になってからだった。

 こうした対応の遅れが不正を野放しにし、被害を拡大させた。国、都道府県、国民生活センターなどが情報交換し、違反を早期に是正させるべきだった。

 都はNOVAに対し、27日までに改善報告書の提出を求めた。経産省は、今後2年間、四半期ごとに寄せられた苦情と対応策を同社に報告させる。

 行政は、NOVAの改善策を厳しくチェックし、改善が不十分なら、刑事告発を含め、特商法に基づく罰則の適用をためらうべきでない。消費者保護をさらに徹底するため、特商法の罰則強化などの検討も急ぐ必要がある。
(2007年6月16日1時34分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月16日付

 古今和歌集には夏の歌が三十四首あり、うち二十八首にホトトギスが詠まれている。都会では「テッペンカケタカ」「特許許可局」の鳴き声を耳にすることも稀(まれ)になったが、いまも季節を代表する鳥であるのは変わらない◆随筆家の寺田寅彦が信州・星野温泉でホトトギスの声を浴びるほど聞いたのは昭和の初めである。何のために鳴くのか。物理学者でもあった人は随想「疑問と空想」のなかで、科学者らしい考察をしている◆多くは鳴きながら飛ぶ。雌を呼ぶつもりならば、鳴き終わった時にはもう別の場所に移っているのでは用をなさない。おそらくは自分の発する音波が地表面に反響するのを利用して、飛行に必要な測量をしているのだろう、と◆言葉を発し、その反響に耳をすませ、自分が現在いる位置と進むべき方角を確かめる。考えてみれば人間の世の中も、ホトトギス式の音波測量で成り立っているのかも知れない◆記者会見を嫌い、釈明の音波を発せぬまま不正の深みに嵌(はま)った介護サービス会社がある。契約時の甘言がどう反響するかを測り損ねた英会話学校がある。金銭の計算術には長じていても、測量術を知らない企業の騒動がつづく◆その鳴き声を「トキヨ、キヨク」(時よ、清く)と聞いた人もあるという。なんだかホトトギスに叱(しか)られているような気がする。
(2007年6月16日1時50分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】北資金送金 追加制裁で合意実行迫れ

 マカオの金融機関バンコ・デルタ・アジア(BDA)に凍結されていた北朝鮮資金の返還送金作業が実施された。この問題は本来、資金洗浄などの違法に対する法執行に過ぎず、核協議の取引材料として認めること自体が間違いだった。しかし、ともかく、これで北にとって6カ国協議が2月13日に合意した核廃棄へ向けた「初期段階の措置」の実行を延期する口実はなくなった。

 北朝鮮は今後、「今回の資金だけでなく、すべての金融制裁を解除せよ」などと、新たな条件を持ち出してくることが予想される。各国は、新たな条件には一切応じることなく、2・13合意の即時実行を迫るべきである。すでに実行期限(4月14日)は2カ月以上も過ぎている。

 それでも北は、あらゆる手段を用い合意実行や6カ国協議の再開を遅らせる戦術に出てくるだろう。再度の核実験があるかもしれない。

 各国は不測の事態に備えつつ、北に合意の即時実行を迫る方策を考えるべきだ。方策には対話と圧力がある。対話による合意を実行しない以上、圧力以外にはない。追加制裁である。それも北に時間かせぎを許さないためには期限を切った制裁が必要だ。

 北への経済制裁は効果がないという説がある。日本や米国などが貿易制限などをしても、中国や韓国がその分増やしているから無意味だと。しかし、米国の金融制裁、日本の独自制裁、国連安保理決議に基づく兵器、ぜいたく品禁輸などの国際制裁は確実に効果をあげているとの見方が有力だ。

 北朝鮮がBDA資金問題にあれほどこだわったのは、(1)口座の多くが金正日総書記に直結するものだった(2)北が国際金融システムから締め出された-ためで、米国による金融制裁は予想以上の効果があったとされる。

 米国は今回の送金にあたって、米露の中央銀行を通すという超法規的奇策を用いた。米国を頂点とする国際金融システム、法の支配への信頼を失いかねない措置というべきだ。これ以上の対北譲歩は有害無益である。

 追加制裁には各国の協調がより有効だが、ロシアが先月末、国連制裁に加わり、韓国もコメ支援を留保するなど状況は若干よい。拉致問題解決のためにも圧力を高める必要がある。

(2007/06/16 05:22)

【主張】年金検証委 「労使癒着」の徹底追及を

 年金記録紛失問題の原因を究明し、その責任の所在を明らかにする「年金記録問題検証委員会」がスタートした。社会保険庁について(1)仕事の仕方(2)職業の意識(3)組織の構造-などを中心に問題点を洗い出し、徹底した論議を進めるべきである。

 委員会は社保庁から離れた総務省に第三者委員会として設置され、委員も前検事総長を座長とする外部の法律や年金の専門家だ。誰にも気兼ねすることなく議論し、年金加入者である国民が納得いく検証を期待したい。

 年金問題の根底には、労使の異常な癒着があるといわれる。その癒着の象徴が「自治労国費評議会(現・全国社会保険職員労働組合)」と社保庁が結んでいたいくつもの覚書である。

 たとえば「ノルマを課さない」「職員の競争心をあおらない」「端末機操作45分で15分の休憩」「1日のキータッチは5000以内」-など仕事内容を制限するものが目立つ。民間企業では考えられない甘さだ。

 この覚書が社保庁の体質そのもので、不祥事を次々と生んだといっても過言ではない。

 不正な手続きで保険料の納付率アップを装う。有名人の年金情報をのぞき見して漏らす。組織ぐるみで裏金をつくる。極めつきが、大問題になっている5000万件や1430万件の宙に浮いて誰のものか分からない年金記録の不祥事である。

 なぜ、こんな不祥事体質が生まれたのだろうか。

 社保庁は数十人の厚生労働省キャリア組を頂点に、約800人の社保庁採用職員と約1万6000人の都道府県採用職員が3層構造を形成している。長官をはじめとするキャリア組は在任期間中に余計なトラブルを嫌って、改革に乗り出そうとはしなかった。都道府県採用の職員は国家公務員でありながら、地方事務官制度のもとに自治労の支配を強く受けてきた。

 その結果、労使のなれ合いと怠慢が常態化し、組織が閉鎖的になり、不祥事体質が続いてきたとされる。

 検証委は1カ月以内に中間報告を公表し、秋には報告書をまとめる。それを受け、国はきちんとした処分を下すべきだ。さもなければ、年金制度に対する国民の信頼は回復しない。

(2007/06/16 05:19)

【産経抄】

 台湾の李登輝前総統の奥の細道旅行は、ご本人にはいささか不満なものだったようだ。距離は760キロをこえたが、ほとんどは新幹線や高速道路だった。「芭蕉の苦労がわからない」とぼやき、「次はぽつぽつと歩いてみたい」と語っていたという。

 ▼この時代にぽつぽつ歩くのは至難だろうが、その意欲はすごい。岩手県平泉町の中尊寺を訪ねたときには「(奥州藤原氏が)なぜここに都を置いたか、今も解せない」と首をかしげたそうだ。どうやら関心は芭蕉だけでなく、東北の「地政学」にもあったようだ。

 ▼ その李登輝さんの旅に合わせるように、坂上田村麻呂の墓が見つかったというニュースがあった。見つかったというより、すでに発掘されていた京都の古墓がそうであると、文献などで確認されたのだ。言うまでもなく、平安初期、東北の蝦夷(えみし)を「平定」した武将である。

 ▼司馬遼太郎さんは「街道をゆく」シリーズ『陸奥のみち』で、当時の中央政権の蝦夷観を解きほぐしている。同じ蝦夷でも農耕生活に入った者を「田夷」、従来の狩猟採集を続ける者を「山夷」と区別した。そして「山夷」を凶悪として、討伐の対象としたという。

 ▼坂上田村麻呂はそうした使命を帯び、数次の大遠征を行った。今の岩手県南部に胆沢城を築いた。司馬さんによればここで「開拓農民をまもり律令国家の北限とした」のだ。今から見れば理不尽にも思えるが、それが国づくりの歴史というものだった。

 ▼李登輝さんは親しかった司馬さんから、そうした東北の歴史について聞いたのかもしれない。そして北の方から見た国のあり方に興味を持ったのだろう。それにしても「22歳まで日本人だった」と言う前台湾総統から日本について学ぶことは多い。

(2007/06/16 05:16)


【日経・社説】

社説1 追加利上げのカギは市場との間合い(6/16)

 日銀が追加利上げに向け微妙な段階に入った。景気が底堅く、物価も徐々に上向くとの判断に立っているからだ。世界的なカネ余りが続き、リスクを意識しない投資も膨らんでいる。金融市場の混乱につながらないよう、どう適切な着地を進めるかという難問が控えている。

 福井俊彦総裁は15日の記者会見で、金融政策について慎重に言葉を選んだ。金融市場が利上げを織り込み始めるなか、あえて無用な思惑を誘うのを避けようとした。総裁は景気、物価が日銀の基本シナリオに沿っていると指摘するにとどめ、市場が日銀の方ばかり見ず自ら知恵を絞って見通しを立てるよう求めた。

 米国では連邦準備理事会(FRB)幹部のインフレリスクへの警戒発言を機に、市場関係者は年内利下げの見通しを引っ込めた。欧州中央銀行(ECB)はあと1、2回は追加利上げするとみられる。好景気が続くなかで、放っておけば金融環境が緩和の度合いを増すと、主要国の中央銀行は判断しているようだ。

 日本には2つのシグナルが伝わってきている。ひとつは円安だ。政策金利は米国の5.25%、欧州の4.0%に対し、日本は0.5%。米欧との金利差を映して日本からの資本流出が膨らみ、円はドルやユーロに対して大幅安になっている。円安は輸出採算の向上を通じて企業収益を下支えするが、拡大中の景気とそぐわない感じも出てきている。

 もうひとつは長期金利の上昇だ。米国では利下げ観測の後退を機に、10年物国債利回りでみた長期金利は節目となる5%台に乗せた。1990年代以来の長期的な金利低下傾向が転機を迎えたとの指摘もある。欧州の長期金利も上昇気味。日本でも長期金利は2%に近づいてきた。低金利の修正を迫る波が日本にも押し寄せつつあるのか、注目を要する。

 政治との摩擦を招き市場が混乱した2月の利上げと違って、市場に背中を押される形の自然体の追加利上げは望ましい姿であろう。もちろん中央銀行には説明責任を果たす義務がある。消費者物価がなお前年比でマイナスなのだから、日銀は将来の物価について、とりわけ的確な見通しを示す必要があるだろう。

 カネ余りに伴ってプライベートエクイティ(未公開株)投資やヘッジファンドなどの投資資金が膨張し、国境をまたぐ金融取引も急拡大してきた。金利上昇で取引コストが増せば、これらの取引が急速な巻き戻しに転じる可能性もある。金融政策では、市場との適切な間合いがこれまでにも増して大切になっている。

社説2 元公安庁長官のあきれた所業(6/16)

 公安調査庁といえば、北朝鮮や在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の情報収集を進め、動向を監視するのが大きな仕事のひとつだ。その組織の元トップが朝鮮総連に助け舟を出していた。あきれた所業である。

 総連は整理回収機構から628億円の債務返還請求訴訟を起こされている。敗訴すれば東京都内にある中央本部の土地・建物の明け渡しを迫られる立場だ。そこで元公安調査庁長官の緒方重威氏が社長を務める投資顧問会社が、土地・建物を35億円で購入する契約を結んだ。

 資金はファンドを組んで調達することになり、所有権移転登記も済ませていた。しかし契約では1年間は引き渡しを求めず、総連側には5年後の買い戻し予約権も認めた。緒方氏が絡む売買劇はこんな構図だ。

 まだ代金は支払われず登記が先行していることから、東京地検特捜部は、架空の不動産取引により資産差し押さえを逃れようとした疑いがあるとして強制捜査に乗り出した。

 仮装売買かどうか、即断はできない。しかし、問題は、元公安調査庁長官が総連の延命につながる不動産売却の受け皿になろうとしていたという厳然たる事実があることだ。

 緒方氏は「中央本部には実質的に大使館・公使館の機能がある。在日朝鮮人の権利を守りたかった」としている。それが信念だとしても、立場をわきまえれば、こうした救済策には決して手を貸せないはずだ。

 広島高検検事長を最後に10年前に退官した緒方氏は、公安調査庁に通算6年間も勤務した経歴を持つ。今は私人とはいえ、調査・監視対象に対する緊張感の欠如は驚くほどだ。

 国民からは、公安調査庁という組織そのものへの疑念も持ち上がろう。同庁は戦後混乱期に治安維持を目的に発足したが、今ではその役割があいまいになっている。約1500人もの職員を抱えた組織のあり方が改めて問われるのではないか。

 今回の問題には、元日弁連会長の土屋公献氏も総連側代理人として介在していた。法曹界の大物OBが不明朗な取引に名を連ねていた事態は異様であり、法曹への国民の信頼を損ないかねない。法曹界の要職にあった緒方、土屋両氏には全容を包み隠さず明らかにしてもらいたい。

【日経・春秋】(6/16)

 マカオから北朝鮮の平壌までは直線距離で2000キロほど。同じアジアの都市なのに、時には4万キロも離れている。マカオの銀行に眠っていた北朝鮮関連資金の送金ルートだ。カネはまずニューヨークに渡りモスクワに移り、やっと極東へ。

▼2500万ドルの札束が地球を一回りする光景を思い浮かべてしまう。かの国に核施設の運転を止めさせるための凍結資金移管は、それほど厄介な仕事らしい。世界中の金融機関が二の足を踏み、ニューヨーク連銀が汚れ役を引き受ける羽目に。そもそも違法性の強いカネなのに、そこまでして返してやるとは……。

▼資金凍結という制裁を科した米国は自ら抜け道を用意したわけだから、ずいぶん寝覚めが悪いはずだ。しかし将軍様もそこまでしてもらったからには、6カ国協議での約束をきっちり守り、ただちに核施設を封じてもらわなければ困る。これでまだ四の五の言うようなら国際社会を向こうに回した詐欺ではないか。

▼北朝鮮に絡む話題といえば、朝鮮総連の本部売却劇も不可思議だ。こちらは元公安調査庁長官らが差し押さえ逃れの抜け道をこしらえようとしていた。元長官は総連への同情心がひときわ強いようだが、よもや在職中はといささか心配だ。あちらでもこちらでも、したたかな相手に踊らされる現実にため息が出る。


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