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2007年6月22日 (金)

6月22日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年6月22日朝刊)

[骨太方針07]先送り項目が多過ぎる

 「美しい国へのシナリオ」を副題に閣議決定した安倍内閣初の「骨太の方針2007」は、全体として小粒の政策を総花的に並べただけという印象がぬぐえない。

 骨太の方針は、安倍政権が来年度の予算編成にどう臨むか。その基本姿勢を国民に示すものといっていい。

 歳出・歳入の一体改革を策定し、二〇一一年度に政策経費を借金に頼らず税収などで賄う「基礎的財政収支」を黒字化させるという目標を掲げた小泉前政権から継続する税財政改革は、どうなっているのか。

 その進捗状況や歳入、歳出における基本姿勢はどうなのか。そのために、どの政策を優先させるのか。具体策が求められていたはずである。

 だが、肝心の部分について方針は「国、地方を通じ歳出全般にわたり最大限の削減を行う」という文言をわずかに記しただけだ。

 そこからは、安倍晋三首相の熱意を読み取ることはできない。

 歳出増を要請する声で、民間議員が求めた「公共投資3%減」など具体的な削減幅を明記できなかったというが、抵抗を押し返せなかったのは首相の指導力に問題があるからではないか。

 年金問題も同じだ。方針は、領収書などがない場合に年金給付の是非を審査する第三者委員会の判断を踏まえて「加入者・受給者全員が、本来受け取れるはずの年金を全額間違いなく受け取ることができる」と明記している。

 そのための相談態勢強化や年金記録管理システムの構築も掲げた。

 だが、記入漏れの数は膨大で、首相が「完全に支払う」と述べても解決の糸口を見いだすことが難しいのは明らかではないか。

 だからこそ解決までの工程表(ロードマップ)が必要だったのであり、なぜそれを作らなかったのか、その理由を首相は説明する責任がある。

 そのほかにも道州制や地方企業の再生を支援する「地域力再生機構」「ふるさと納税」の検討、経済連携協定(EPA)の推進、農地改革、行財政システム改革から地球温暖化対策、教育再生などきめ細かく並べている。だが、実効性にはやはり疑問が残る。

 基本方針を首相がこだわる「美しい国」に絡めたことも、国民の理解からは程遠い。国民が求めているのは、政策の実効性なのであり首相の政治理念との整合性ではないからだ。

 後の世代に負担は残さないとしながら、消費税改革を含む項目の多くを秋以降に先送りしたことしかり。実効性がなければ「骨太の方針」は絵に描いた餅になる。

[体験型観光]持続発展できる仕組みを

 体験型観光に携わる地域や企業など県内の五十八団体が今月十三日、県体験型観光推進協議会を設立した。受け入れ側による自主・横断的な資質向上への取り組みとして期待したい。

 昨年の入域観光客は五百六十四万人と過去最高を更新した。仲井真弘多知事は、向こう十年間で一千万人誘致を政策として掲げている。

 ただ、観光客一人当たりの消費額は頭打ち状態で推移し、外国を含む他地域との激しい値引き合戦によりホテルなどは消耗戦を強いられている。

 付加価値の高い体験滞在型観光は地域経済への波及やリピーター効果が高い。より成熟した観光の形態であり、沖縄観光が目指すべき姿といえる。

 二〇〇七年の修学旅行は、六年ぶりに減少する見通しとなった。盛り返すには、魅力的な体験学習のプログラムを提供することが欠かせない。

 幸い、独自の自然や文化・歴史、農漁業がある沖縄は、体験型観光にうってつけの素材に恵まれている。

 東村などはエコツーリズムで先駆的な取り組みをし、根付いてきた。しかし農業体験のグリーンツーリズムや、健康保養をうたうウエルネスなどはいまひとつ形が見えてこない。

 観光客に三線や民芸品づくり、農漁業を実際に体験をしてもらうには、まずそれを教えることのできる地域の人材が必要だ。さらに、その知恵と経験をうまくプログラムに結びつけるコーディネーターの養成も求められる。

 何よりも、地元にとっては客をもてなす負担ばかりなく、それに見合う利益をもたらすような仕組みでなければ持続は難しい。

 南城市は、体験滞在型観光の拠点として三施設を整備し、食・歴史・海と多彩なプログラムを準備している。今後の取り組みに注目したい。

 県推進協議会は、まず情報交換し課題を洗い出すことからスタートする。いずれは体験メニューの情報センター機能や、報酬・業界内の約束事などのガイドラインを示す、指導的な役割を担う組織に育ててほしい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月22日 朝刊 1面)

 「ハーリー鉦が鳴ると梅雨が明ける」といわれる。ハーリー鉦からは少し遅れたが、二十一日沖縄は梅雨明けした。カーチーベー(夏至南風)の季節の到来だ。

 今でもお年寄りたちは梅雨のことをスーマンボースー(小満芒種)と呼ぶ。梅雨を表す言葉としては、なぜかこちらの方がしっくりくる。今年のように激しく降り、降水量が多いとなおさら。それだけにカーチーベーの響きが心地よい。

 消防庁が運用するおもしろいホームページがある。現在まで語り継がれる自然災害や防災に関する言い伝えを集めた「災害伝承情報データベース」。災害に対する教訓として二千近いデータを公開している。

 「東の空に虹が立つと台風が近い」など広く伝わるものから、「多良岳に雲がかかれば雨」(長崎県諫早市)といった地域版までさまざま。「デイゴの花が多く咲くと台風が多い」など県内の事例も紹介されている。

 岩手県に残る「津波てんでんこ」は、地震があったら「てんでんばらばら」に逃げようと教える。薄情にも思えるこの言い伝えは、明治三陸地震津波で親が子を、子が親を助けようと共倒れになった体験から生まれたのだという。

 学術的な裏付けのないものもあるが、過去の災害を後世に伝えたいという先人たちの願いが読み取れる。継承が難しい時代である。地域で語り継がれてきた事実の重みと、自然とともに生きた人々の言葉を大切にしたい。(森田美奈子)


【琉球新報・社説】

国会の会期延長 政争の具とは情けない

 国会の会期延長が決まった。12日間の延長は、安倍晋三首相が執念を見せる国家公務員法改正案の今国会成立を目指すためという。重要案件の論議の時間が欲しいなら、文句も少なかろう。だが、多数与党の強行採決が横行する今国会だ。会期延長までも「政争の具」になるようでは、あまりに情けない。
 会期延長は、自民、公明の与党の国対委員長会議、党首会談で決まった。野党は反対しているが、多数与党の力で22日にも衆院で議決される見込みだ。
 与党は、会期延長で天下り規制のための国家公務員法改正案の来月4日成立を図るほか、社会保険庁改革関連法案、年金時効撤廃特例法案の成立を今月29日にも目指すという。
 国民が注目する3法案である。会期延長で改正案の中身を十分に精査し、与野党で白熱した論議を行い、国民の理解と了解を得られるような国会審議が展開されるのであれば大いに歓迎したい。
 だが、今国会での論議を見る限りではイラク特措法、教育改革3法、米軍再編法など重要事案での与党の「強行採決」が目立つ。
 数で押し切る「与党の横暴」が印象に残る中で、12日間の会期延長を行ったところで「結果」は見えている。失った国民の信頼を取り戻すのは容易ではない。延長を決めた安倍首相をはじめ与党は、そのことを肝に銘じるべきだ。
 会期延長で、来月22日に予定されていた参院選挙の投票日が29日に延びる。那覇市などは22日を前提に、すでに投票のための入場券を印刷済みだ。会期延長で、24万枚を刷り直す。延長国会の審議の中身しだいでは、無駄な出費になりかねない。市民生活への影響も少なくないだろう。
 その参院選の勝敗は、年金問題や公務員制度改革の「成果」が左右するというのが与野党の一致した見方だ。与党が国会の会期延長を強行するのも、参院選で国民にアピールする「成果」づくりのためだ。だとするならば与野党ともに覚悟が必要だ。
 延長国会で論議される公務員制度改革は、官製談合の温床とされる天下り防止の対策が焦点で、公務員の「新人材バンク」が対策の目玉だ。だが、談合の抑制効果には否定的な見方が強い。
 年金問題は、社会保険庁の記録不備に始まり、社保庁のミスで受け取れなかった受給者の救済問題、さらにはグリーンピアに代表される官による年金基金の膨大な無駄遣いなど、枚挙にいとまがない。
 いずれも問題の核心となる原因究明、再発防止、確実な救済策の構築が求められている。数に頼らず、国民の疑問に丁寧に答え、ニーズに応える徹底論議こそが、国会に国民の信頼を取り戻すすべだ。

(6/22 9:54)

教育3法成立 見切り発車は現場混乱に

 昨年12月の教育基本法の60年ぶりの改正を受け20日、教育改革関連3法が参院本会議で可決、成立した。教員免許更新制の導入や教育委員会への国の関与の強化など、全国約110万人の教員、学校現場に大きな影響を与える。
 3法は、学校教育の目標などを定めた学校教育法、国と地方のかかわりを規定した地方教育行政法、新たに免許更新を盛り込んだ教員免許法だ。
 安倍晋三首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」の一環として「教育再生」を最重要課題に掲げている。教育は「100年の大計」だ。だが国会審議では、与野党双方が求めた教育関連予算や教職員定数の拡充、免許更新制の実効性への疑念など、論議が不十分なまま採決となった。「現場無視だ」「参院選の目玉づくり」「国会の会期日程をにらんでの政治思惑優先の採決」との批判も当然だ。
 改正3法の中身をみると、学校教育法では義務教育の目標として「我が国と郷土を愛する態度」や公共の精神、規範意識の養成を明記している。「歴史について正しい理解に導き」との表現もある。正しい歴史は国が判断するのだろうか。沖縄戦の集団自決をめぐる教科書検定での日本軍の関与が修正・削除されたことに対し、県民から「沖縄戦の実相をゆがめるもの」として、撤回要求が出されている。国の見方や価値判断の押し付けには危うさが伴う。
 その上、地方教育行政法では、教育委員会への文部科学相の是正指示、要求権を盛り込み、改正教育基本法では自治体の教育基本計画作りで政府の基本計画を参考にするよう求めている。教育への政府の影響力をかなり強化している。
 国の関与が強まれば、教育は良くなるものでもないだろう。むしろ地域の特性や学校の創意工夫が失われないか懸念する。
 教育改革は国民に「愛国心」を強制することではない。愛される国造り、そのための教育者と人材育成が基本である。十分な論議も尽くさず、見切り発車での教育3法改正は将来に禍根を残しかねない。

(6/22 9:53)

【琉球新報・金口木舌】

 「記憶」を辞書で引くと「物事を忘れずに覚えている、覚えておくこと」とある
▼本紙が慰霊の日を前に実施した県内四十一市町村アンケート調査で、半数以上の自治体が慰霊祭以外に独自の平和事業を行っていると回答した。だが、中には予算ゼロという自治体もあった
▼沖縄戦終結から六十二年の月日が流れた。自治体担当者からは、戦争体験の語り部の減少や財政難などの、平和行政を取り巻く厳しい状況を指摘する声も上がる
▼慰霊の日の前夜、沖縄市中央の小さな飲食店で、沖縄戦と平和について考える集まりがあった。出席者は沖縄戦を実際には体験していない、ほとんどが戦後生まれの人たちだった。彼らは祖父や父母らから伝え聞いた話を語り合った
▼小さな集まりだったかもしれない。だが、「物事を忘れずに覚えておく」には大事な試みだ。こうした試みは人が集まる場所さえあれば、家族や友人同士など、誰とでもできることだ
▼沖縄戦体験者自身が戦争を語ることが不可能になる日はいずれ訪れる。戦争体験の継承は、行政主導の事業に頼るだけのものでもない。県民一人一人が祖父母や父母らから聞いた自らの沖縄戦の記憶を語ること、それも記憶の継承となるはずだ。

(6/27 9:31)


【東京新聞・社説】2007年6月22日

温泉施設爆発 都会の死角に安全策を

 東京都心の繁華街近くで温泉施設が爆発で吹き飛んだ。都会で増えている癒やしの場所だが、天然ガスが充満、引火したらしい。原因究明とともに、安全管理基準の整備を急がなくてはならない。

 東京都や千葉県の地下は天然ガスを埋蔵している「南関東ガス田」だ。大半はメタンガスで、高圧のために水や湯に溶けた状態だが、地上に噴き出すと燃えることもある。

 二〇〇五年二月には東京都北区の温泉掘削現場で天然ガスを含んだ水に引火し、炎が十メートル以上も上がった。今回の現場となった渋谷区松濤(しょうとう)は都内屈指の高級住宅街として知られるが、二十三区内はどこでも深く掘っていけば、温泉水とともに天然ガスが噴き出す可能性がある。

 北区のときは人的被害はなかったが、渋谷の温泉施設では女性従業員三人が死亡し、近くを歩いていた男性も巻き込まれて重体という惨事になった。爆発したのは、温泉利用棟とは別の、更衣室兼休憩室の従業員用建物だった。地下室にガスが充満して爆発したとみられるが、もし一体化した施設だったら、もっと悲惨な事故になっていただろう。

 天然ガスもわいてくる温泉施設であれば、設備が整っていたかどうかが問題だ。ガスを湯から分離する装置が必要となる。山間部の温泉なら開放的だからガスが室内にたまる可能性は低いが、都市部の施設だと屋内や地下室に装置が設けられるケースが多く、湯から分離したガスを外部に排出する機器もいる。

 それでも屋内にガスがたまる危険性がある。ガス検知器も不可欠だ。これらが設置、機能して初めて安全性が確保される。検知器がなく、換気扇が機能しなかった疑いが出ている。運営会社や施設の管理保守会社は天然ガスの危険性を認識していたかどうか疑いがもたれている。警視庁には徹底した原因究明を望む。

 ボーリング技術が進み、深くまで掘削できるようになったことで、都市部では温泉施設は増えている。都内の源泉数は百四十八カ所にのぼるという。安全確保をないがしろにしたままでは、営業がおぼつかなくなるだろう。

 北区での火災の教訓から、都は掘削時については指導要綱をつくり、ガス対策を求めている。しかし、営業施設をチェックする具体的な仕組みはない。安全管理上の盲点であり、行政の怠慢ともいえよう。

 自治体は温泉施設の緊急点検に乗り出したが、速やかに安全管理対策に取りかかるべきだ。危険が野放しにされたままでは、事故が繰り返されることになってしまう。

高速道路料金 大幅な引き下げを急げ

 関越自動車道と中央自動車道が二十三日直結する。両道を結ぶ首都圏中央連絡自動車道(圏央道)が完成したためだ。課題は割高な通行料金。政府は全国の高速料金の大幅引き下げを急ぐべきだ。

 圏央道は都心から四十-六十キロ圏を走る環状道路。計画約三百キロのうち今回は東京・あきる野インターチェンジ(IC)と八王子ジャンクション(JCT)間約九・六キロが開通する。数年後には東名、東北、常磐、東関東自動車道などと結ばれる予定である。

 問題は料金だ。短い区間でも六百円以上かかるため、地元は「待ち望んだ開通だが、これでは市民が利用できない」と強く反発した。このため国土交通省は急きょ夜間・早朝の割引を実施することを決めた。

 今回に限らず、高速道路料金への不満は全国的なものだ。内閣府が昨年七月に行った「道路に関する世論調査」では高速道路の通行料金は「高い」とし、管理・サービス水準を下げたり、新たな財源措置を検討して今より低い料金にすべきだと答えた人が51・8%に達した。

 海外との比較でも日本の高速料金は一キロメートル当たり二四・六円と高い。米国の原則無料は別として、フランスの約一一・五円、イタリア約七・五円と比べて突出している。また日本の高速道路の利用割合は低く、結果的に二酸化炭素の排出量も多い-と国交省も指摘している。

 一方、一昨年十月に発足した高速道路会社六社の業績は好調だ。サービスエリアなど関連事業の好調もあって今年三月期連結決算は当初予想を上回る純利益を計上した。料金下げなどの利益還元が期待されたが、各社は内部留保にあてるという。

 日本は建設費など借入金を料金収入で返済する償還主義をとっているため、高速料金は割高になる。

 国交省側も料金には「問題意識は持っている」という。その対策として主要道での休日・夜間帯の割引を行う「社会実験」を行ってきた。同省は実験をさらに拡大する方向だ。また中日本高速道路(本社・名古屋市)などは企画割引を実施中だ。

 それも結構だが一時的でなく根本的な値下げを考える必要がある。昨年末の道路特定財源見直しの際、政府・与党は二〇〇八年度からの料金引き下げで新たな措置を講ずることで一致した。それならば早く実施すべきだ。

 また社会実験や割引はノンストップ料金収受システム(ETC)利用者に限定されている。高速道路でのETC利用率は現在約七割だが、全体の装備率はまだ低い。幅広い値下げになるように工夫してほしい。

【東京新聞・筆洗】2007年6月22日

 <でんきを消して、スローな夜を>と呼びかける『100万人のキャンドルナイト』が今年も、夏至の二十二日から三日間行われる。夜八時から十時までの二時間の消灯で、ゆるやかにつながるくらやみのウエーブを世界大に広げようとの試み▼呼び掛け人代表の、マエキタミヤコさんは「日常の中でごく自然に電気を消して、キャンドルの光のそばで過ごす時間が少しずつ増え、暮らしそのものが変わっていってほしい」。そんな想(おも)いを伝える文化活動だという ▼参院選目前の与野党攻防で会期を延長、強行採決を乱発する国会は、とてもスローな夜どころではない。消えた年金問題に火が付き、重要法案を次々成立させる駆け足日程で、あとからボディーブローのように効いてくるのは、おそらく改正教育三法だ▼“戦後レジームからの脱却”をとなえる安倍政権。教員免許更新制や地方分権に逆行する学校管理強化で国家を前面に立てる動きは、戦前回帰を思わせる。従軍慰安婦問題で米下院が日本政府批判を強める動きを侮ってはならない▼歴史学者の原武史さんが、自身の小学生時代を振り返る『滝山コミューン一九七四』(講談社)は、戦後社会の理想と現実を鋭く問う好著▼東京西郊の団地族が“みんな平等”のジレンマに傷つきながらも、児童や女性が学校現場に直接参加して、熱い連帯の“公界(くがい)”を実現した。少なくともそこに不登校問題はなかった。原さんとは同世代のマエキタさんらが呼びかけるキャンドルナイトは、ネットを現代の公界にしようとの試みにも見える。


【河北新報・社説】

福島県汚職初公判/「わいろ性」徹底した議論を

 5期18年にわたって福島県政を担った前知事佐藤栄佐久被告(67)の裁判が21日、東京地裁で始まった。
 県発注のダム工事をめぐり、弟の祐二被告(64)とともに収賄罪に問われた栄佐久被告は初公判で「まったく身に覚えのない事実で起訴された」と全面否認、無罪を訴えた。祐二被告も同様に否認し、検察側との対決姿勢を鮮明にした。

 2人が受注業者の選定にどうかかわったのか、相互の連絡はあったのかどうか、さらに実際に高値の土地取引だったのかどうかなどが裁判の争点になりそうだ。
 起訴事実では、栄佐久被告らは2000年の木戸ダム(福島県楢葉町)の入札で、ゼネコンの前田建設工業(東京都)などが落札できるよう便宜を図った。その謝礼として2002年、郡山市の土地をダム工事の下請けに入った水谷建設(三重県)に高値で買い取らせるという形で、多額のわいろを受け取ったとされる。

 取引された土地は栄佐久被告らの実家の会社とも言える「郡山三東スーツ」の社有地約1万1000平方メートルで、価格は約9億7000万円だった。
 公共工事に絡む汚職事件では現金でわいろを受け取ることが多い。土地売買によるわいろの授受は異例のケースだろうが、実際に金銭が移動しており、わいろと認定されても不思議はない。

 検察側はわいろの額を約1億7000万円と判断した。土地の時価はどう見積もっても8億円を超えず、その差がわいろに当たるとの考えだ。弁護側は通常の商取引であり、わいろの授受ではないと主張している。
 土地はその後、約8億円で事件とは関係のない企業に転売されたことが分かっている。弁護側主張を支える事実になるのだろうが、仮に02年に時価に近い価格で売買されたにしても、ダム工事にかかわった業者が買ったということだけで十分に疑念を抱かれる行為だ。

 価格の妥当性はもちろん、工事を請け負った業者が買う理由がどこにあったのかは、これからの公判で十分に解明されなければならない。
 受注の際の栄佐久被告の関与も重要なポイントになる。検察側は栄佐久被告が「前田建設が一生懸命営業しているようだな。考えてみたら」などと当時の県土木部長に言ったことを指摘したが、弁護側はそんな事実はなかったと反論した。

 栄佐久被告の関与の有無は事件の成立に直結する。県政全般に絶大な権限を持つ知事という立場を考えれば、業者名を挙げただけでもかなりの影響を及ぼすのではないか。
 被告弁護側は初公判で、検察の捜査を批判した。かなり厳しい取り調べが行われたことを訴え、罪を認めたとされる2人の供述調書は信用できないと指摘している。
 汚職事件はそもそも物証に乏しいことが多く、供述内容が重要になってくる。それだけに取り調べ状況を確認しながら、調書の信用性などをしっかりと検証しなければならない。
2007年06月22日金曜日

【河北新報・河北春秋】

 きのう自民、公明の党首会談で国会の12日間延長が決まった。ここ20年間で参院選前の通常国会の会期が延長されたのは1989年、98年と2回ある。妙な符合でまたもや9年ぶり。「九」は「苦」にも通じる数字だ▼延長に伴い参院選の投票日は当初予定より1週間繰り延べされ7月29日となった。ただ、選挙事務を担う自治体には「22日投票」の線で既に走りだしていたところもあり、苦しい対応を迫られている

 ▼ 宮城県は日付入り選挙啓発ポスター約1万3000枚を印刷済み。「シールを張り訂正する。刷り直しより費用がかかるかも」と担当者。八戸市は広報誌約9万部を配布。訂正のチラシを配り直す予定だ▼苦虫をかみつぶしているのは群馬県選管。経費節減を狙い同日選となるよう知事選を22日に設定した。が、あてが外れ経費負担が見込みより約3億円も増えるという

 ▼「突然やってくる解散総選挙と事務的に変わりはない」と言うのは、投開票所172カ所の確保が必要な仙台市選管。だが、夏休み本番でスポーツや地域の行事が入っている施設も。言葉の平静さとは裏腹に主催者との調整に苦戦を強いられそう▼ ちなみに過去2回の会期延長後の参院選はいずれも自民党が大敗。宇野、橋本両内閣が総辞職した。さて、今回は。

2007年06月22日金曜日


【京都新聞・社説】

パレスチナ分裂  独立国家の悲願どこへ

 パレスチナ自治区が二つに割れ、分裂が固定化しかねない情勢に陥っている。
 自治政府内で穏健派ファタハと、強硬派ハマスが衝突。ファタハはヨルダン川西岸、ハマスはガザ地区を支配地域としてにらみ合い、権力の並立状態が出現した。
 治安部隊の権限をめぐる両派の確執から武力衝突が起こり、ハマス勢力がガザ地区を制圧したのが直接の原因だ。
 ファタハを率いるアッバス議長は、ハマスのハニヤ首相を一方的に解任。独立系のファイヤド氏を新首相とする緊急内閣を発足させた。
 両派を中心に、ことし三月に発足したばかりの挙国一致内閣は、もろくも崩壊してしまった。
 悲願の「西岸地区とガザ地区を基盤にした独立国家」を、一丸になって目指すはずが、これではパレスチナは分断され中東和平のプロセスは方向を見失ってしまう。
 独立国家という民族の悲願をあきらめてよいのか。流血や憎悪を乗り越え、両派はもう一度歩み寄るべきだ。
 周辺のエジプトやヨルダンなど穏健派諸国には仲介の動きも見える。両派を加え、早急な和平協議開催を望みたい。必要なら、周辺各国の国際部隊派遣も考えねばならないだろう。
 ハマスは、米国がテログループとみなすイスラム原理主義組織だ。ファタハと違いイスラエル承認を拒否してきた。今回、ガザ地区に勢力を集中させた結果、西岸地域で影響力を喪失した。
 事態の変化に、欧州連合(EU)や米国はファタハ新内閣の支持を発表、ハマス単独内閣の発足(昨年三月)以来停止していた援助の再開を決めた。イスラエルも同調する姿勢を示している。
 アッバス議長は、こうした動きを歓迎しながらハマスとの交流を一切、打ち切ると宣言した。
 交渉断絶による分割統治の固定化は、西岸地区に比べて経済格差が大きいガザ地区住民百五十万人の生活をさらに苦しめることになろう。
 イスラエルの建国以来、苦難を耐え忍んできたパレスチナ民衆を見捨ててはなるまい。ハマスと交流の窓口は常に開けておくべきだ。
 ハマスとしても、イランから支援があるとはいえ、現状では経済封鎖で締めつけられる状態は変わらない。じり貧を避けるためにも、銃を置いてファタハと向き合う方が得策ではないか。
 ガザ地区ではハマスの攻勢を警戒して国境周辺にイスラエル軍が部隊を集結させ、小競り合いから二十日にはガザ北部を空爆した。
 パレスチナで、いま最もやってはならないのがイスラエルの介入だ。ファタハとハマス両派を説得し、イスラエルに自重を促す。日本を含めて、国際社会の圧力を一層強めたい。

[京都新聞 2007年06月22日掲載]

会期12日間延長  国会は官邸の下請けか

 あす二十三日までだった国会の会期は、十二日間延長され、七月五日までとなる。
 これにより来月二十二日予定の参院選は一週間先送りされ、二十九日投開票(十二日公示)となる。
 参院選前の会期延長は異例だ。それも安倍晋三首相が天下り規制の強化を目指す国家公務員法改正案の成立に強くこだわったためである。
 年金記録不備問題や松岡利勝農相の自殺をきっかけに、安倍内閣の支持率は急落した。この状態での参院選入りを回避するために、重要法案を仕上げ、その実績をアピールしたかったのであろう。
 参院自民党や公明党の反対を押しのけて、局面の転換を図ろうとしたところに、官邸の「あせり」が見て取れる。
 もちろん会期延長は、すべて問題視されるわけではない。重要法案の審議を尽くすうえで、時間が足りなければ、当然、延長の選択肢もあり得よう。
 問題は、そうした前提で会期延長されるのかどうかだ。国会は最終盤にきて、重要法案はだんご状態にある。二週間足らずの延長幅で、どこまで審議を深められるか。首をかしげざるを得ない。
 重要法案には問題が多い。首相肝いりの国家公務員法改正案にしても、これで本当にキャリア官僚の省庁による「押しつけ的な天下り」は根絶できるのか。それどころか「天下り容認法」になりはしないか。疑念は深まるばかりだ。
 とりわけ「宙に浮いた年金」「消えた年金」問題は深刻だ。社会保険庁改革関連法案、年金時効撤廃特例法案で、国民の不安、不信は解消できそうにない。
 政府が新たにつくる「第三者委員会」が救済役を担う。国民の権利回復を判断する重要な機関が、役所まかせの政令、省令で済ませていいのか。新たな混乱は生じないか、心配は尽きない。
 政治資金規正法改正案や労働関係三法案なども残っている。延長国会は、せいぜい採決に持ち込むための一定の「時間稼ぎ」が見え見えである。
 こんど改選となる参院議員の任期は七月二十八日である。国会を任期満了まで延長し、与野党は修正協議を含めて、国民が納得する政策論争を進める。そのうえで、参院選に臨み、国民の審判を受ける。そんな選択もあったはずだ。
 それにしても「数の力」による与党の相次ぐ採決強行は目に余る。出した法案は通す。修正もしない。これでは国会は何のためにあるのか。存在意義が問われよう。政治不信を増幅させかねない。
 国会は官邸の下請け機関でなければ、追認機関でもない。延長国会では厳に慎まなければならない。民主党衆院議員に対する懲罰問題も度を越している。
 衆参両院議長は与野党間のアンパイア役だ。国民は見ている。かびくさい先例や規則にしばられることなく、公正、公平な国会運営を基本に、民意を背にした「個性ある指導力」を求めたい。

[京都新聞 2007年06月22日掲載]

【京都新聞・凡語】

富山地裁の冤罪事件

 過ちては改むるにはばかることなかれ-。日本の捜査当局は論語の教えが大嫌いのようだ。富山地裁であった冤罪(えんざい)事件の再審初公判は、「お上」の体質をあらためて見せつけた▼事件の内容はこうだ。無実の男性が女性暴行事件の犯人にされ、裁判で服役した。刑を終えた後に真犯人が現れ誤認逮捕と分かった。証拠を十分調べないまま無理やり自白させる捜査を絵に描いた事件だった▼再審は、男性の有罪を取り消し名誉を回復するための措置である。ところが、検察側は「被告人は無罪です」の一言だ。弁護側が求めた県警取調官に対する証人申請は「必要ありません」と述べ裁判長も却下した▼こんな言葉だけで、父親の死にも立ち会えなかった男性の冤罪が晴れたとでも言うのか。ずさんな警察の捜査をうのみにした検察、裁判所の責任も重いはずである。問題なのは、やってもいない犯罪を男性がなぜ自白したかである▼「誰も信じられなくなった。自分が犯罪者と思い込み、感情を押し殺した」。男性はそう語った。密室の取調室で何があったのか。検察の一部で取り調べを録画・録音する試行が始まったが、警察はいまだ導入に消極的だ▼裁判員制度導入を控え、警察や検察、裁判所は男性の次の言葉を何と聞く。「(裁判に)絶望した」。論語には、こんな言葉もある。〈過ちを改めざるこれを過ちという〉

[京都新聞 2007年06月22日掲載]


【朝日・社説】2007年06月22日(金曜日)付

教育3法―現場を画一的に縛るな

 文部科学省がこれまで以上に教育現場に口をはさみ、画一的な考え方を押しつけることにならないか。

 そんな疑問が解消されないまま、教育関連3法が成立した。

 安倍首相にとっては、「愛国心」を盛り込んだ半世紀ぶりの教育基本法改正に続く教育改革である。

 文科相が教育委員会に是正要求や指示をすることができる。教員の免許を更新制にする。学校に副校長や主幹教諭を置くことができる。こう並べていくと、今回の法改正が上意下達の強化を狙っていたことが改めてわかる。

 これが本当に教育の再生につながるのか。学力を引き上げ、不登校やいじめを解決することになるとは思えない。

 それどころか、教育委員会や学校、教師が萎縮(いしゅく)し、新たな試みをしなくなるのではないか。それが心配だ。

 法律が成立したとはいえ、どのように運用するのか、あいまいなところが多い。文科省は現場の判断を重んじ、創意工夫の芽を摘まないようにしなければならない。

 教育委員会に対し、文科相が指導などだけでなく、是正要求や指示までできるよう改正されたのは、いじめ自殺と必修科目の履修漏れがきっかけだった。

 しかし、今後、どのようなときに指示などを出すのかははっきりしない。文科相は国会答弁で「私が判断した時」「(どんな状態かは)定義はあらかじめできない」などと答えた。これでは文科省の権限が際限なく広がりかねない。

 文科省には慎重な運用を求めたい。万一、発動する場合には、なぜ、是正要求や指示が必要なのかをきちんと説明しなければならない。

 講習を条件に教員免許を10年ごとの更新制にしたことも、現場への影響が大きい。だが、どんな講習を受け、免許を取り上げられるのはどういう場合なのか。具体的な内容が示されていない。

 これでは教師の不安が増すのも無理はない。優秀な人材が集まらなくなる恐れもある。講習の内容や判定の基準を公開し、透明性を高めてもらいたい。

 学校に副校長や主幹教諭を置くことも、画一的に進めない方がいい。中間管理職が増えて、子どもたちに向き合う教師が減るのでは、なんにもならない。この制度を使うことを教育委員会や学校に無理強いしてはいけない。

 それにしても、安倍首相の教育改革では、不思議なことがある。教育予算については、何ら手だてが講じられていないことだ。

 国会審議でも教育予算の増加について与野党を問わず要求が相次いだが、首相の歯切れは悪かった。骨太の方針に盛り込まれた内容もあいまいだった。教育への公的支出を見ると、日本は先進国の中でも低いレベルにとどまっている。

 これで教育が改革の本丸だと胸を張るのは、なんともちぐはぐだ。

イラク特措法―ブッシュ政権支援法か

 イラクで輸送業務にあたっている航空自衛隊の活動が、さらに2年間延長されることになった。そのためのイラク特別措置法改正が成立した。

 イラクでは宗派間のテロや米軍への攻撃がやまず、犠牲者は増える一方だ。派遣部隊を撤収、縮小する国が相次いでいる。そこに自衛隊をとどめるかどうか。そんな重大な判断だったのに、国会で政府は十分な説明をしたとは言い難い。

 この戦争は間違った情報に基づいて始まった。小泉前首相はそれを支持し、世論の反対を押し切って自衛隊まで派遣した。この出発点の誤りを率直に認めることが大前提のはずだ。なのに、政府・与党はそれをほおかぶりしたまま延長を決めた。極めて遺憾である。

 そのほかにも、ふたつの大きな問題が放置されている。

 第一に、どのタイミングで航空自衛隊をイラクから引き揚げるのか、いわゆる出口戦略がない。第二に、自衛隊が現地でどんな活動をしているのか、ほとんど説明されていないことだ。

 政府が出口戦略を語れないのは当然だろう。そもそも自衛隊の派遣を続けるという結論が先にありきなのだ。日米同盟への配慮を最優先してイラクに自衛隊を出した以上、いつ完全撤収するかも米国の政策次第で判断せざるを得ない。それが本音なのではないか。

 ブッシュ米大統領は昨年の中間選挙で大敗し、いまや支持率が3割を切る苦境にある。来年に迫る大統領選挙では、共和党陣営の劣勢が必至だ。イラク政策への批判がその底流にある。

 イラクで活動する自衛隊は、そうした大統領を支える日本側の「証し」となっている。特措法は名目こそイラク復興支援をうたうが、実態はブッシュ政権支援の側面が大きいのだ。

 航空自衛隊は、どんな物資を運んでいるか。政府側の国会答弁によれば、今春までの9カ月間に運んだ物資のうち、95%は多国籍軍向けだった。人道復興支援より、もっぱら米軍などの軍事作戦を下支えしているのが実態ではないのか。

 しかも、攻撃への危険を避けるため、輸送機の運航を中止するケースが増えているようだ。どれほど危険なのか、詳しく説明すべきだ。

 自衛隊の活動について、政府の秘密主義は明らかに行き過ぎている。国会に実態を報告しないことには、文民統制は機能しようがない。

 都合の悪い情報にふたをするのは、先ごろ共産党が自衛隊の内部文書として追及した情報保全隊の問題にもつながる。

 イラクへの自衛隊派遣に反対する人々の動きを監視したという文書を「政府が公表したものでないのでコメントしない」というのでは、はなから説明する気がないとしか思えない。

 派遣延長を含め、こうした政府のやり方は、日米同盟や自衛隊に対する国民の信頼を高めることにはならない。

【朝日・天声人語】2007年06月27日(水曜日)付

 伝わるところでは、日本で初めてボーナスを出したのは、三菱の創始者岩崎弥太郎だったという。三菱史料館によれば、明治9年、英国の船会社と上海航路の覇を競い、勝って相手を撤退させた。

 弥太郎は喜んだ。「社中各員別(わ)けて勤勉事務を担任し其(そ)の功績を見ること少なからず」。幹部から給仕まで、給料のほぼ1カ月分にあたる報奨金を奮発したそうだ。ボーナスは働きに報いて支給されたものだった。

 「勤勉事務」とは縁遠かった社会保険庁が、全職員にボーナスの自主返納を求めることになった。幹部から末端までを対象とし、退職者にも応分の「寄付」を求めるという。安倍首相や柳沢厚労相も率先して返納する。官邸主導による、政官あげての「総ざんげ」の趣だ。

 「当然だ」と言う人、「まだ甘い」と収まらない人、さまざまだろう。だが、国民の不満をそらす演出を感じる人も、少なくないのではないか。参院選は1カ月の後に迫っている。

 総ざんげの元祖といえば、終戦直後の「一億総ざんげ」である。その正体を、「緊急の場面に直面した支配層の放ったイカの墨」と突いたのは政治学者の丸山真男だった。今度のざんげも選挙前の目くらましではないのか。いぶかる声も聞こえてくる。

 弥太郎は、英国会社との競争の際、経費節減のために自らの報酬を半分にした。社員もならって3分の1を返上したという。目的のある返納なら張り合いもあろう。だがイカの墨となってやがて消えるなら、国民にも職員にも、残るのはむなしさだけである。


【毎日・社説】

社説:国会延長 選挙に有利とはならない

 自民、公明両党は21日、今国会の会期を7月5日まで12日間延長することを決めた。これにより、参院選の投票日は当初想定されていた7月22日から同29日に1週間ずれ込むことになる。候補者や各地の選挙管理委員会などが「22日投票」を前提に動き始めていた中での異例の延期である。

 なぜ国会延長か。理由はやはり年金支給漏れ問題に行き着く。

 延長を主導したのは公務員制度改革関連法案の成立にこだわった安倍晋三首相だ。年金問題で支持率が急落し、今のままでは選挙は首相が争点にしたかった憲法改正や教育再生は影を潜め、年金一色になる可能性がある。そんな中、各省庁の天下りあっせんを禁じる公務員制度改革は国民に支持されやすい改革の旗印になると考えているのだろう。

 ところが、各種の世論調査を見ても公務員改革への有権者の関心は決して高くない。首相は最近、社会保険庁の歴代幹部の天下りや同庁の無責任体質に言及し、それを変えるためにも公務員改革が必要だとも語っている。しかし、これも多くの有権者にはこじつけのように聞こえているはずだ。

 一方、自民党は中央官庁が反発している事情から元々、この法案に熱心ではなかった。それでも延長を受け入れたのは、1週間でも参院選が延びれば年金問題への有権者の怒りが少しは収まると期待しているからではなかろうか。

 7月29日投票となれば夏休みが本格化し、投票率が下がって公明党などの組織票が決め手になるとの思惑もあると野党側は指摘している。だとすれば、これも有権者をばかにした話だ。なりふり構わぬ延長は逆に有権者の怒りを増幅させるのではなかろうか。

 会期を延長し、審議時間を確保して議論を積み重ねるのは無論、悪いことではない。だが、現実には社会保険庁改革法案など今後も与党の強行採決ラッシュが続くと思われる。数の力を頼りに突き進む首相や与党は、参院選を前に焦るばかりで、冷静さを失っているとしか思えない。

 対する野党も強行採決を期待している節がある。与党の「数の横暴」をアピールできるからだ。実際、野党には否決されるのを承知で内閣不信任案を提出するなど抵抗の手段が限られているのは確かだ。ただ、有権者はそんな混乱劇ばかりを望んでいるだろうか。

 年金支給漏れ問題は民主党議員が、こつこつと調査し、しつこいほどに厚生労働省や社会保険庁を追及して、長年にわたる無責任の連鎖を暴いたものだ。貫くべきはそうした姿勢であるはずだ。

 小沢一郎代表は20日、民主党などが提出した河野洋平衆院議長の不信任決議案を採決する衆院本会議を欠席し、地方回りをしていたという。自民党が「与党を国会軽視と批判する資格があるのか」と反発するのも当然だろう。

 せっかく会期を延長するのだ。参院選前に争点や論点をきちんと整理するため、ぜひとも安倍首相と小沢代表ら野党党首との党首討論を実現させるべきである。

毎日新聞 2007年6月22日 東京朝刊

社説:イラク派遣延長 いよいよ出口戦略を考えよ

 航空自衛隊の活動を2年間延長する改正イラク復興支援特別措置法が成立した。政府は1年間の活動内容を定めた基本計画を作成し、8月からイラクでの5年目の活動に入る。

 イラク情勢は、多くの民間人や兵士の命が失われ依然として泥沼状態が続いている。派遣隊員は安全を確保しながらの慎重な任務遂行が求められる。

 私たちは活動の延長を認める前提として、審議を通じて活動内容の詳細をできるだけ国民に開示すること、イラク開戦を支持した政府判断の徹底検証--などを求めてきた。

 しかし国会では敵に手の内をさらすとして非公開が前提となり、十分な情報の開示がなされなかった。検証も「大量破壊兵器が開戦当時は存在すると信じるに足る理由があった」という答弁が繰り返され論議は深まらなかった。

 開戦と統治については米、英でも深刻な反省が生まれている。政府は検証委員会などを作り報告をまとめるべきだ。仮にそれが政府の判断ミスを認めることになっても、今後の国家戦略を練る上で貴重な教訓になるはずだ。

 不十分な審議の中でも明確になったこともあった。昨年7月、陸上自衛隊はサマワから撤退した。それ以降の空自の輸送回数は150回でそのうち国連関連の人員・物資輸送が25回だった。

 政府は具体的な人員・物資の内容を明らかにしていないが、国連以外はほぼ米軍を中心とする多国籍軍の輸送であることが透けて見えてきた。活動が当初の人道復興から米軍支援に変化したのだ。

 政府関係者は空自の活動は米国からも非常に感謝されていると話す。日本は北朝鮮の核・ミサイル問題を抱え、安全保障を米国に頼っている。C130輸送機3機での活動は、日米同盟維持の費用対効果の面でも割安だという考え方を口にする国防関係者も多い。

 そうであるならば国会でもきちんとその実態を説明すべきだったし、今後もその趣旨で国民に理解を求めるべきだ。人道復興支援を強調することは正直ではない。

 活動が危険を伴うことも明らかにされた。バグダッド空港では、ミサイル攻撃のおとりにするために火炎弾(フレア)を放ちながら着陸するケースも多いという。久間章生防衛相は「刃の上で仕事をしているようなもの」と表現した。

 同相が危険性に言及した背景には、批判を極力避けようと安全性を強調する官僚に対して、「危険な目にあっている実態を明らかにすべきだ」という自衛隊内の不満に応える意味もあったようだ。

 今後、米軍の兵力は削減されながらも駐留は長期化するのではないかという見通しが出ている。新政権になっても早急な完全撤退は考えにくいかもしれない。

 撤退時期について久間防衛相は「国際社会や米軍増派の効果など全体を見ないと判断できない」と語るにとどまった。主体的な出口戦略を考えないと米軍に追随するしかない状況に追い込まれ、引き際が難しくなる危険性がある。

毎日新聞 2007年6月22日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:来日した物理学者のアインシュタインが…

 来日した物理学者のアインシュタインが関西に行く途中の汽車から「ああ、あそこに大層不経済なものがある」といって指さした。そこには電信柱の電灯が白昼ついていたという。そこで誰かに「もったいない」という日本語を教わったかどうかは知らない▲谷崎潤一郎の「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」といえば、日本家屋のうす暗がりの美をたたえた名随筆だ。このアインシュタインの話が出てくるのは、すでに暗がりの美を忘れ、何もかも電灯でこうこうと照らし出す近年の日本人の無神経と浪費をたしなめるくだりだ▲「近頃(ちかごろ)のわれわれは電灯に麻痺(まひ)して、照明の過剰から起る不便と云(い)うことに対しては案外無感覚になっている」「待合、料理屋、旅館、ホテルなどが、一体に電灯を浪費し過ぎる」「何より彼より、一遍(いっぺん)明りを減らしてみたら覿面(てきめん)に諒解(りょうかい)するであろう」▲これが書かれたのは74年前だから、むろん今日の「照明の過剰」は当時の比ではない。ならばここで一遍明かりを減らし、そこで地球環境問題に思いをめぐらしてはどうかという夏至のキャンペーン「100万人のキャンドルナイト」が今年もきょうから24日にかけて行われる▲市民団体と環境省が連携して4年前から始まったこのキャンペーンだが、期間中は毎夜各地で多彩な催しがある。とくに24日夜8時から2時間のライトアップ施設の消灯には全国6万施設以上が加わる見通しだ。主催ホームページは家庭にも無理のないかたちでの消灯を呼びかけている▲この世には夜の暗がりでしか見えないものもあるのだろうか。そこではふだん光の中に埋もれていた感覚やアイデアと出合えるのか。「陰翳礼讃」は、こう結んでいる。「まあどう云う工合になるか、試しに電灯を消してみることだ」

毎日新聞 2007年6月22日 東京朝刊


【読売・社説】

空自派遣延長 イラク再建へ支援継続が必要だ(6月22日付・読売社説)

 イラク再建の道は依然として険しいが、失敗は許されない。日本は、引き続き国際社会の共同支援活動の一翼を担い、責務を果たすべきだ。

 改正イラク復興支援特別措置法が成立し、航空自衛隊の輸送活動の期限が2年間延長された。

 イラクでは今、米英など26か国の部隊計19万人以上が治安維持や人道復興支援に従事している。アジア太平洋地域からも、日本以外に、韓国、豪州、シンガポールなど5か国が参加中だ。

 テロが続発するイラクでは、安全な活動はあり得ない。開戦以来の米兵の死者は3500人を超えた。多くの国が犠牲者を出しながらも、イラク復興と中東の安定のために尽力している。

 空自のC130輸送機3機による輸送の危険性は、かなり限定的とされる。イラク国内の空港の着陸時には、武装勢力の地対空ミサイルなどへの警戒を怠れないが、実際に攻撃された例はない。

 多国籍軍や国連の人員・物資の輸送は3年余で500回以上になる。イラク政府や国連の評価は高い。イラク情勢が最大の課題である米国を支援することで、日米同盟の強化にも寄与している。

 危険を最小限に抑えつつ、日本の人的貢献を最大限アピールする。空自の活動は、日本の国益に合致する現実的な選択肢と言える。

 日本が2003年秋に表明した50億ドルの政府開発援助(ODA)のうち、実施されたのは15億ドルの無償援助だけだ。35億ドルの有償援助は、10件、21億ドル分の使途が決まったが、着手されていない。治安の悪さに加え、イラク政府の受け入れ態勢が整っていないことが原因だ。

 ODA実施や文民の活動が困難な状況下で、自衛隊の活用は当然のことだ。

 改正イラク特措法の衆院通過時には、空自の撤収に関する「出口戦略」の検討を求める付帯決議が採択された。

 陸上自衛隊は昨年7月、イラク南部サマワから無事、撤収した。多国籍軍から地元への行政権限の移譲や、この地域からの英豪両軍の撤収の時期に合わせるという、入念な出口戦略が奏功した。

 空自についても、他国軍の動向や現地情勢を慎重に見極めつつ、将来の出口戦略を練る必要がある。

 イラクの治安回復には、宗派対立の解消や周辺国の協力が欠かせない。

 日本は3月にイラク各派の有力者を東京に招き、国民融和セミナーを開催した。5月にエジプトで開かれたイラク安定化国際会議では、麻生外相が、イラン、シリアの協力を呼びかけた。こうした地道な外交努力を重ねることも重要だ。
(2007年6月22日1時36分  読売新聞)

被害者裁判参加 冷静、慎重な運用が求められる(6月22日付・読売社説)

 あくまで慎重な運用が求められるだろう。

 刑事裁判への「犯罪被害者参加制度」の新設を柱とする改正刑事訴訟法などが成立した。来年12月までに導入される。

 犯罪被害者本人や遺族は、希望すれば法廷で、被告や証人に質問したり、求刑に関して意見を述べたりできるようになる。殺人や誘拐、死亡交通事故などの重大事件が対象だ。被害者は弁護士を付けられる。日本の刑事裁判の形態を大きく変える制度だ。

 「裁判の蚊帳の外に置かれてきた」と訴えてきた多くの犯罪被害者は、新制度の導入を歓迎している。

 被告は、自らに有利になる証言をすることが多い。これに対し、遺族しか知らない事実を示して、反論することもできる。これが、真実解明に役立つという意見もある。

 一方で「被告の顔を法廷で見ることにより、改めて心が傷つく」として、制度の導入に反対してきた被害者もいる。

 犯罪被害者の声を尊重するのは、当然のことだ。だが、被害者と被告のやりとりが感情的になった場合、冷静な事実認定の障害になる恐れがある。刑事裁判の運用に支障をきたす制度になってしまっては、元も子もない。

 法務省は、「検察官が被害者の質問を事前チェックするので、感情的な質問は防げる」としている。しかし、それだけで十分だろうか。

 検察官は、被害者との意思疎通を密にしなければならない。裁判官には、法廷の秩序を守る訴訟指揮が求められる。

 新制度導入の約半年後には、裁判員制度も始まる。

 被害者の発言が、裁判の素人である裁判員の心情に、どのような影響を与えるかも考えるべき問題だ。検察官が無期懲役を求刑した事件で、被害者が「死刑を」と、意見を述べるケースも出てくるだろう。その際、裁判員の量刑判断に影響を及ぼすこともあり得る。

 裁判所に採用された証拠だけに基づいて、有罪か無罪か、さらに、量刑を決めるのが、刑事裁判の原則だ。裁判官は、裁判員となる人たちに、その原則を周知し、感情に流されない判断をするよう徹底することも必要になる。

 被害者が参加する裁判の量刑が、参加しない裁判より重くなる、といった傾向が出ては、公正さが損なわれる。

 改正刑訴法の付則には、新制度の導入から3年後の見直し規定が明記されている。法務省や最高裁は、運用状況を絶えずチェックし、必要に応じて、制度の抜本的な見直しも行うべきだ。
(2007年6月22日1時35分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月22日付

 各種アンケートの結果を企業が送ってくださる。そのつど興味深く拝見しているが、長く保管する資料はそう多くない。シチズン時計「夫婦の時間」はいまも手もとにある◆2年前の調査で、全国の夫婦200組に「1週間で最も心地よい時間」をたずねている。回答の最上位は夫が「土曜の午後9時」、妻が「月曜の午前10時」であったという◆なるほど、私の姿が消える休み明けが心地よいの、ほほう――と、すねる人はいまい。「そんなものさ」と達観する人、「どこの家も一緒だね」と妙に安心する人、夫の側の感想はそこらあたりだろう◆答える時刻に多少の食い違いはあれ、どこかに「心地よい」と感じる時間があるならば贅沢(ぜいたく)は申すまい。昨年の同じ月を上回ること6%、4月の離婚件数が急増したという◆離婚後に夫の厚生年金を夫と妻で分け合うことができる年金分割制度の申請が4月から始まった。新制度を待って離婚を切り出した中高年の妻も多くいたとみられる。「赤い糸夫居ぬ間にそっと切る」という現代川柳があるが、切った糸の断片を見せられる瞬間はなかなか心臓に悪かろう◆エレベーターやジェットコースターに限らず、結婚生活も日ごろの点検が大切と聞く。「やっぱり、君もあれかね、月曜日かな…」と、家庭内のアンケートでもしてみますか。
(2007年6月22日2時11分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】ヒル氏訪朝 拉致を置き去りにするな

 6カ国協議の米首席代表を務めるヒル国務次官補が、北朝鮮首席代表の金桂寛外務次官らと会談するために訪朝した。核施設封鎖など「初期段階措置」の履行や6カ国協議再開について北朝鮮と直接協議するのが目的だという。楊潔●中国外相の訪朝予定も発表された。

 北朝鮮の核問題は、2月の6カ国協議で寧辺の核関連施設の停止・封印や国際原子力機関(IAEA)査察再開を含む初期段階措置で合意した。にもかかわらず、北朝鮮は米財務当局による金融制裁の解除を要求し、4カ月に及ぶ迷走を重ねてきた。

 ヒル次官補は、米政府がみずから科した制裁を骨抜きにする形で今回の訪朝にこぎつけた。この間、当初は「6カ国協議の枠外で米朝協議はしない」としていた原則は崩れ、「対話と圧力」の重要なテコとなっていた金融制裁も後退してしまった。

 さらに米国が、北朝鮮に対するテロ支援国指定の解除問題に踏み込み始めたことも、日本人の不信感を強めた。拉致問題がからむからである。年初来のヒル次官補のかじ取りに対し、日米同盟国間の温度差を懸念する声が高まっているのは見過ごせない。

 6カ国協議の最終目標は、北朝鮮の保有するすべての核を検証可能で後戻りのできない形で完全廃棄させることだ。米側には、核を放棄して国際社会に復帰したリビア型の解決に期待する志向が強いという。訪朝を通じて完全廃棄への確かな道筋が開けるのなら、それを歓迎しない理由はない。

 だが、初期段階措置はその第一歩にすぎず、その先にはウラン濃縮や既存の核兵器関連物質の完全廃棄と査察検証という困難な作業が待っている。しかも、これまでの北朝鮮には誠意ある姿勢がみられないのが実態だ。

 ヒル次官補は初期段階措置の履行だけでなく、完全廃棄の意思と誠意を北朝鮮から引き出さねばならない。2月合意からいかなる後退も許されないことを銘記すべきだ。その上で、拉致問題の解決についてもきちんと念を押してもらう必要がある。

 核、ミサイル、拉致の包括解決が日本の一貫した方針だ。安倍晋三政権が「拉致解決で進展がない限り、経済支援もしない」と主張してきたのは当然であり、この姿勢を貫くべきだ。

●=簾の广を厂に、兼を虎に

(2007/06/22 05:10)

【主張】会期延長 責任伴う決断を支持する

 安倍晋三首相は公務員制度改革関連法案などの成立を図るため、参院選の日程をずらして国会会期を延長することを決断した。

 首相が天下りの慣行を断ち切るための法案を最重要の課題とする判断を支持したい。参院選に向けて、各党が争点を明確化させることにもつながり、有意義である。

 23日で会期末を迎える今国会の会期は12日間延長され、当初「7月5日公示、22日投票」と想定されていた参院選の日程が1週間遅れる。各候補にとっては、選挙運動や資金面での負担が増えるだろうが、もともと選挙日程が確定していたわけではない。

 会期延長の最大の眼目は、天下り規制強化などを柱とする公務員制度改革法案の成立を図ることにある。

 官による押し付け的な天下りを廃止し、各省OBが契約などをめぐり古巣に口利きするのを禁止するのは、官製談合を断ち切るために不可欠だ。

 関連法案の柱である「官民人材交流センター」(新人材バンク)の創設が、天下り規制の万能薬だとはいえない。しかし、公務員制度の抜本改革に向けた第一歩ととらえ、天下り官僚たちのやりたい放題に一刻も早くブレーキをかけるためにも、その実現を急ぐ必要がある。

 参院選を控えた土壇場での会期延長に野党は反発し、与党内にも異論がある。しかし、やるべき仕事が残っているのに、帰宅時間が来たらほうり出して帰ってしまうようなことは、民間の感覚では考えられない。

 通常国会の会期は150日間で、1回の延長ができるという国会法のルールにも外れていない。

 首相が成立させようとしている法案内容の評価や、会期延長に踏み切ったこと自体の是非についても、参院選で有権者の審判を受ける。与党過半数維持を目指す首相にとって、今回の決断がプラスにつながるかどうか。そのリスクも負ったうえでの会期延長だと考えるべきだろう。

 年金記録紛失問題に政治としてどう対処するかも、残された会期の中で大切なテーマだ。責任の押し付け合いや、加入者の懸念をあおるような議論ではなく、受給漏れや年金制度そのものへの不信を取り除くために、各党は知恵をしぼるべきである。

(2007/06/22 05:09)

【産経抄】

 「失敗学」の提唱者、畑村洋太郎工学院大教授によれば、失敗にも「よい」のと「悪い」のがある。畑村さんが「よい失敗」のひとつに挙げるのが、1954年に2機の飛行機が起こした空中爆発事故だ。どちらも、英政府の主導で開発された世界初のジェット旅客機、コメット機だった。

 ▼チャーチル首相は「イングランド銀行の金庫が空になっても原因を究明せよ」と厳命した。その結果、実際に使用される状態とは異なる条件で耐久実験を行ったため、金属疲労の計算を誤っていたことがわかった。

 ▼56人の人命が失われ、社会に与えた衝撃も大きかった。それでも、事故をきっかけに未知の部分が多かった金属疲労の研究が進み、技術の進歩につながったことは、評価できるという(『失敗学のすすめ』講談社)。では、東京都渋谷区松濤の温泉施設「シエスパ」の爆発事故はどちらの失敗なのか。

 ▼ 地下千数百メートルからくみ上げる温泉はもともと海水だった。プランクトンなどが分解されてできたメタンガスが溶け込み、南関東地域の地下に天然ガス田を形成している。平成16年7月に千葉県九十九里町のいわし博物館で起きた爆発事故で、その存在が知られるようになる。

 ▼翌年2月、東京都北区の温泉掘削現場で起きた火災は、噴出するガスの恐ろしさを改めて見せつけた。火災の後、東京都が作った安全確保のガイドラインは、あくまで掘削時に限ったもの。営業開始後も危険な状態が続くのは、自明のはずなのに。

 ▼何よりずさんなガスの管理をめぐる、運営会社と管理委託先の責任のなすりあいは見るに堪えない。過去の事故から学ばず、判断ミスを繰り返し、揚げ句の果てに女性従業員の夢を奪った。「最悪の失敗」に決まっている。

(2007/06/22 05:06)


【日経・社説】

社説1 国民に役立つ社会保障番号の制度設計を(6/22)

 年金記録騒動をきっかけに安倍晋三首相が「社会保障番号」を創設する考えを示した。国民1人ひとりに国が1つの番号を決めて、公的年金だけでなく健康保険や介護保険も含めて加入録や保険料納付歴、受給の状況などを一体管理する仕組みだ。

 国民からみて役に立つ制度にするには、社会保障に関する国民と国・自治体との間のやりとりを本人だけが手軽に把握できる仕組みが必要になる。個人情報の流出を根絶する観点からは政府内のどの部局を運営主体とするのか、厳格に運用する体制を整えなければならない。納税者番号制度との関係を整理することも課題だ。年金問題でわかったずさんな情報管理体制を立て直すためにも、制度設計に早急に着手すべきだ。

 制度創設は今年の骨太の方針にも盛り込まれた。税制改革に関連して「納税者番号の導入に向けて社会保障番号との関係の整理を含めて検討する」と指摘し、社会保障の項で「個人が自分の健康情報、年金や医療などの情報をオンライン管理し、手続きを安全かつ簡単に行うことができる仕組みの構築」に言及した。

 首相は「カードにする制度としてつくったら便利ではないか。年金など自分の情報を確かめやすい」と述べている。ICカード化した健康保険証を国民1人ひとりが持つ「健康ITカード」を念頭においた発言とみられる。厚生労働省は2012年度に導入する計画で、その際は1人に1つの固有の番号をつける。

 この番号で各人の年金や医療の負担・給付の状況を管理するとともに関連情報をカードに入力すれば、保険料納付や受診の履歴がパソコンなどで一覧できるようになる。将来の年金受給額も試算できる。いわゆる社会保障サービスの可視化だ。転職したときなどに年金記録が宙に浮くような事態も解消しやすくなろう。

 将来は番号の「使い道」をどこまで広げるかが課題になる。例えば住民票の請求や旅券申請など公的サービスを受けるときに番号を示せば本人確認しやすくなる。金融取引の際に提示を義務付けるなど納税者番号の機能を持たせることも可能だ。

 現在、国民を対象に政府がふっている番号制度には基礎年金番号と住民票コードがある。どちらかの機能を充実させて社会保障番号として使うことは検討課題だが、新たな番号制度の創設を含め、低コストで効率的な方法を研究すべきである。

 プライバシーをしっかりと守りつつ、「払ったお金の記録はきちんと把握してもらいたい」という国民の当然の思いに応える制度が必要だ。

社説2 懸案を処理して審判仰げ(6/22)

 国会の会期が7月5日まで12日間延長されることになった。これに伴い7月22日に予定されていた参院選の投票日は同29日にずれ込む。参院選のある年の会期延長は異例だが、安倍晋三首相は国家公務員法改正案などの成立を期すために勝負に出た。必要な法案を処理したうえで、与党はその実績と意義を、野党はそれぞれの政策を訴え、参院選で審判を仰ぐことが重要だ。

 参院自民党などの慎重論を押し切り、首相が今国会成立にこだわる国家公務員法改正案は、官民人材交流センター(新・人材バンク)の創設などの天下り規制が柱になっている。各省による天下りあっせんを禁じ、内閣府に設けるセンターが一元的に再就職を支援する形に改める。首相は「公務員のリストラを促すためには、こうした透明なシステムが必要」と強調している。

 緑資源機構などの相次ぐ官製談合事件では、天下りの弊害が改めて浮き彫りになった。天下り規制は急務である。センターの具体案が示されていないため、国会審議はいまひとつ深まらない。官房長官の下に設ける有識者会議で制度設計をすることになっており、法成立後、速やかに検討作業を始めるよう求めたい。

 延長国会のもう1つの焦点は、社会保険庁改革法案と年金時効撤廃特例法案を巡る与野党攻防だ。民主党が追及してきた年金の記録漏れ問題では、社保庁のずさんな記録管理の体質が露呈した。

 社保庁改革法案は保険料徴収などで不祥事が相次いだ社保庁を廃止・解体して、2010年1月に新たに「日本年金機構」を発足させるという内容だ。機構は独立行政法人に似た公法人だが、より民間に近い組織になる。信頼が地に落ちた現在の社保庁を残すわけにいかないのは明らかだ。今国会で成立させて、社保庁解体の道筋をつける必要がある。

 年金への不安感を鎮めるには、支給漏れが判明した人に5年の時効を適用しない特例法の制定は不可欠だろう。政治資金規正法改正案などの他の重要法案とともに、着実に成立させなければならない。異例の会期延長を生かして、今国会でまだ2回しか実施されていない党首討論も、ぜひ開催してほしい。

【日経・春秋】(6/22)

 「陰が極まり陽に変じる日」が冬至なら、夏至は「陽が極まり陰に変じる日」だ。柚湯(ゆずゆ)に入ったりカボチャや小豆(あずき)粥(がゆ)を食べたりする冬至と違って、これといった夏至の習わしがないのは、縁起の良い一陽来復とは対極にある日だからか。

▼その夏至の今日、国会は12日間の会期延長を決める。与党からもあがった強い反対の声を抑え込み、選挙日程が1週間ずれ込むので「大変ご苦労をかけるが」と頭を下げつつ押し通した強行策を議決・承認する日が、たまたま「陽が極まり陰に変じる日」に重なったのは安倍晋三首相には気掛かりかもしれない。

▼燮――あまり見ないこの難しい字は「しょう」と読み、意味は「和らげる」。燮理と書けば「和らげ治める」で、古代中国では物事を和らげるのが善い政治とされたのか宰相の別称に使われ、慣用句の「陰陽を燮理す」は、天地万物を生成する陰と陽の性質を和らげ程よく整える優れた政治のたとえに用いられる。

▼会期を延ばすのは、天下りあっせんを禁止し官製談合をなくすとの効能書きを付けた国家公務員法改正案や、社会保険庁を解体・出直しさせる改革法案を成立させたいからだ。緑資源機構事件や年金記録漏れで噴出した国民の不信を、それで和らげ「陰陽を燮理」できるか。参院選に向け安倍政権の正念場は続く。


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