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2007年7月10日 (火)

7月10日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月10日朝刊)

[米軍枯れ葉剤使用]早急に実態を調査せよ

 知花弾薬庫でVX神経ガスのガス漏れ事故が発生し、作業をしていた米兵など二十四人が病院に収容された―との衝撃的なニュースが伝わってきたのは、復帰前の一九六九年七月のことであった。

 米紙ウォールストリート・ジャーナルの報道によって、米軍は初めて、マスタード、GB、VXなどの毒ガスが沖縄に貯蔵されている事実を認めた。ベトナム戦争さなかの出来事だ。

 当時の新聞は「空にB52 海に原潜、陸に毒ガス。天が下に隠れ家もなし」と、住民の安全をないがしろにした軍事優先の米軍統治を強く批判した。

 だが、貯蔵されていたのは核兵器や毒ガスだけではなかったようだ。猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤が六一年から六二年にかけて、北部訓練場などで散布されていたというから驚きだ。

 沖縄での枯れ葉剤散布などによって前立腺がんにかかったとの元米兵の申し立てに対し、米退役軍人省はダイオキシンを浴びた可能性を認め、作業に携わった元米兵の後遺症を認定したという。九八年一月十三日付の同省の公式文書で明らかになった。

 元米兵が沖縄に勤務していた六一年から六二年にかけての時期は、米軍がベトナム戦争に介入し、枯れ葉剤を使用し始めた時期と重なる。

 米軍はその後、ゲリラをジャングルからあぶり出す目的で、おびただしい量の枯れ葉剤をベトナムの密林や水田などに散布した。

 その結果、密林が死に絶え、ベトナムの住民だけでなく、米国のベトナム帰還兵の中にも、がんなどの健康被害を訴える人たちが続出した。

 結合双生児として産まれたベトちゃんドクちゃんに象徴されるように、今なお続く健康被害、環境被害の深刻さは、二十世紀の国家犯罪ともいえる様相を呈している。

 北部訓練場ではかつて、ダムの湖水面を利用した訓練が行われているが、枯れ葉剤の散布が行われたとすれば由々しい問題だ。ダイオキシン残留の可能性がないかどうかを含め、早急に事実関係を調査すべきである。

 米軍の関係部局は、元米兵の申し立てに対し、「沖縄でダイオキシン使用を確認する文書はない」と回答したという。

 今回も同じような回答が予想される。だが、記録文書がないから確認できないというだけでは住民の不安は解消されない。基地を提供している政府と、当事者である米軍の誠実な対応を求めたい。

[学力テスト不正]現場の荒廃招くだけだ

 東京都足立区の学力テストの最中に区西部の公立小学校で、教員が児童の答案を指さして誤答に気付かせる不正があった。昨年四月のことだが、背景に学校間の競争原理があるとすれば、将来にもつながる由々しき問題だと言わざるを得ない。

 安倍晋三首相が進める教育改革は、学力テストの結果公表や学校予算の傾斜配分、学校選択性の導入など多岐にわたって学校を競い合わせる施策になっている。足立区は改革を先取りしているともいわれている自治体だが、程度の軽重はあれ、不正が単に一自治体にとどまるとは考えにくい。

 今年四月に行われた全国学力テストが「学校のランク付けに使われてはいけない」ことは明らかだ。しかし、少子化の進展と経済格差の拡大など子供を取り巻く教育環境の変化は父母や保護者の間にも競争意識を生み出している。いい学校イコール学力テストの点数の高い学校という連想が働くのは避けられない。

 いい学校に子供を入れたいとする親心が学力テスト結果の公表を求めるのは自然な感情だ。教員の評価も結果に左右されるとなれば、試験結果を上げるための特訓が行われたりする。

 現に答案指さしのあった小学校では校長が過去の問題をほとんどメモして、翌年の児童に練習問題として繰り返しやらせていたという。

 沖縄県教職員組合の全国学力テストについての教員アンケートで「成績が悪いと困るので、何らかの手立てをするよう教頭に言われた」「放課後の補習設定があった」などの回答があった。学校現場の長に相当な心理的重圧がかかり、それが現場教員にのしかかっている構図が見て取れる。

 足立区の学校では三人の答案用紙を抜き取り、採点から除外することまでやっていた。教育の機会均等の理念から由々しき問題だ。子供のためを考えれば教育者としてやっていけないことは自明の理。“熱心さ”のあまり学校現場を荒廃させていることにもっと気付くべきだ。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月10日 朝刊 1面)

 心臓が止まった人に電気ショックを与え蘇生させるAED(自動体外式除細動器)を、さまざまな場所で見掛けるようになった。一般にも使用が解禁され三年、普及と威力を実感する。

 四月、大阪の私立高校で野球の試合中、投手が打球を胸に受けて心肺停止状態に。観戦していた救急救命士が学校にあったAEDで救命措置を施すと、球児は間もなく息を吹き返した。二月の東京マラソンでは、一キロごとに配備されたAEDが、ランナー二人の命を救った。

 国内では毎日百人近くが心臓突然死に見舞われている。救命率は一分ごとに10ポイント低下。一一九番通報から救急車到着までは平均六分。この「空白の六分間」に居合わせた人が適切な手当てをすることで救命率は大きく変わる。

 空港や駅、ホテルを中心に設置が進み、全国に約九万台。県内は六月末現在六百七十四台。「消火器並み」という欧米に比べればまだまだだが、普及により時間の壁は取り払われつつある。

 「高校生が部活中に倒れ死亡する事例があった。あれば助かったかもと思うことも」。県高等学校PTA連合会(西銘生弘会長)は、今月、県内六十四の高校にAEDを贈る。「助かる命を増やしたい」。

 使い方は子どもでも難しくないという。しかし実際使えるかは別。戸惑いやためらいが別の壁をつくる。高P連は贈呈と同時に講習会を開く。いざというときちゅうちょしないために。(森田美奈子)


【琉球新報・社説】

枯れ葉剤散布 まず事実関係の解明急げ

 米軍が1961―62年に米軍北部訓練場などで猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤を散布していたことが判明した。作業に携わった元米兵が後遺症などの補償を求めた審判をめぐる退役軍人省の公文書に記されている。
 ダイオキシンは自然分解がされにくく、汚染は長期間続くと指摘される。ゆゆしき事態だ。
 何よりも県民の「水がめ」に近い場所だ。しかも汚染が広範囲に及んでいる可能性がある。政府や県は詳細に事実を掌握するとともに、現地調査を含め早急に事実解明に乗り出す必要がある。
 枯れ葉剤の散布が明らかになった退役軍人省不服審判委員会の決定文によると、元米兵は61年2月から62年4月まで輸送兵として沖縄に赴任。枯れ葉剤が入ったドラム缶の輸送やドラム缶に枯れ葉剤を注入する作業に従事したほか、雑草除去のために枯れ葉剤を散布したというのだ。
 散布された場所は、北部訓練場内とその周辺の道路脇などで「2カ月以上にわたり枯れ葉剤を浴びた」と証言している。
 相当量の枯れ葉剤がまかれた恐れが強い。今回因果関係が認められた元米兵以外にも数10人の退役軍人が、ベトナム戦争時に沖縄で枯れ葉剤にかかわったことを理由にがんなどを患ったとして補償を求めていることからも、大量散布の疑いは消えない。
 ベトナム戦争中に展開された枯れ葉剤作戦に関する悲劇や悲惨さなどは、テレビ報道、映画などを通してよく知られている。散布地域ではがんや先天性異常児、死産などが多発。前立腺がんになったとの元米兵の主張に対し、同省も証言内容や証拠などから「矛盾がなく正当」と認定した。
 北部の森林地帯には貴重な生物種や植物などが生息・分布している。自然環境への影響はないのか。ダムの水は大丈夫だろうか。看過できない問題だ。
 北部訓練場を抱える東村の伊集盛久村長は「まず事実関係をはっきりさせてもらいたい。その上で、村民を対象とした健康診断の実施を国に求めたい」と語る。懸念は当然である。
 最近嘉手納基地で起きたジェット燃料漏れ事故で米軍は、県による汚染土壌の採取や現場撮影を頑強に拒んだ。今回も恐らく情報開示や調査要請に対し、非協力な姿勢で臨むであろうことは想像に難くない。
 だが事は県民の健康、安全にかかわる極めて重大な問題だ。米国の公的機関が認めている。散布の事実はなかったでは済まされない。枯れ葉剤を使用した場所や使用量などについて、一刻も早く事実関係を包み隠さず明らかにする責任がある。

(7/10 9:42)

農相事務所費 この説明では納得し難い

 またも「政治とカネ」の問題が浮上した。よくもまあ次々に出てくるものである。
 不透明な経費の処理が疑われているのは、赤城徳彦農相に関係する政治団体「赤城徳彦後援会」だ。活動実体のない事務所を主たる事務所として県選挙管理委員会に届け、多額の経常経費を計上していた。
 事務所として登録されたのは両親が住んでいる茨城県筑西市の実家で、計上された経費は1998年から2005年までに計約7600万円に上る。03年から3年間の経常経費で、家賃に相当する事務所費が計約530万円などと報告していた。
 ところが農相の父親は後で修正したが、当初「家賃はもらっていない」と否定。事務所としての使用実体はないと語っていた。後援会の代表と報告書に記載されている元県議も「聞いたことがなく、実体はない」と一時は否定していた。
 農相は「(父親が)どう答えたか分からないが、そこが主たる事務所。初当選以来まさに拠点。付け替えや架空計上は全くない」と釈明した。
 農相の釈明と父親らの当初の説明には明らかに食い違いがある。この食い違いは、どう受け止めればよいのだろう。農相のこれまでの弁明では不十分だ。領収書などの具体的な資料に基づき、適切に処理したことを言葉を尽くして証明するのが筋ではないか。
 しかも農相は、多額の光熱水費疑惑をかけられ、明確な説明がないまま自殺した松岡利勝前農相の後任である。納得できるような説明がなされない限り、国民の政治不信は膨らむ一方だ。
 安倍晋三首相は「赤城氏はかなりの詳細を説明したと聞いている。十分だろう」と述べた。閣僚としての説明責任を果たすよう指示するのではなく、逆に幕引きを図ろうとしている印象である。
 与党は、5日に閉幕した通常国会で改正政治資金規正法を強行採決して成立させたが、かねて酷評されてきたとおりだ。皮肉にも同法が「ザル法」であることを早々に裏付けた。

(7/10 9:41)

【琉球新報・金口木舌】

 神秘小説「帝都物語」の著者で博物学研究者の荒俣宏さんは、磯遊びの達人でもある。磯通い歴40年以上を誇る筋金入り
▼生物観察や写真撮影などのノウハウを満載した「磯あそびハイパーガイドブック」(小学館)を昨年7月に共著で出版しているが、その中には沖縄の海も多数紹介されている
▼ダイビングなど重装備でなくても触れられる砂浜や潮だまり、干潟など、人間と自然が共存する空間を「里海(さとうみ)」と呼び、磯の生命の感動を伝える
▼その点では本紙日曜日掲載の「やんばる海辺の物語」も同様だ。写真と文を担当する名護市在住のフリーの動物カメラマン松久保晃作さん(45)は、荒俣さんが来県するたび、磯遊びを一緒に楽しむ仲。単なる説明調でない軽妙な文章も魅力
▼「砂浜で遊んだ遠い昔を懐かしく思い出した」。スナホリガニが紹介されると、南部在住の中年男性から反響が寄せられた。連載は1年間続く予定
▼タイトルこそ“やんばる”だが、「海はつながっている。沖縄の海にすむ生物の面白い生態を紹介したい」と松久保さん。身近な磯に足を運ぶと、知らない世界があるかもしれない。「海には人の心と体を元気にする魔力がある」。荒俣さんはそうも書いている。

(7/10 9:35)


【東京新聞・社説】

残留孤児支援 『帰ってよかった』国に

2007年7月10日

 中国残留孤児訴訟の原告団が、給付金の支給など国の新たな支援策を受け入れた。大きな区切りだが、これで終わりにしてはならない。今後も生活相談などの継続的な支援が必要である。

 現行の支援策は生活保護中心で、就労収入などがない一人暮らしの孤児の場合、医療や住宅費とは別に最大八万円の保護費を支給し、国民年金を受給していれば、その分を差し引いていた。

 新しい支援策は孤児全員に国民年金を満額の六万六千円、さらに生活保護費に代わる特別給付金を最大八万円支給する。

 孤児の救済については十五地裁で国家賠償請求訴訟が起こされた。八地裁で判決が出され、国が早期に帰国させる責務を認めながらも孤児側の勝訴は昨年十二月の神戸地裁判決だけだった。それだけに孤児側には政治解決を求める声が強く、安倍晋三首相も一月に、訴訟とは別に夏までに解決するよう指示していた。

 最終的に合意したとはいえ、孤児側が完全に満足しているわけではない。新支援策が給付額を大幅に増やしたとはいえ、あくまで生活保護の延長であり、一定の収入があれば給付額から差し引く「収入認定」の考えを踏襲している点だ。

 厚生年金や就労収入の三割を収入認定対象から外す優遇措置がとられた。残りについても孤児側が生活保護扱いを最も「尊厳を踏みにじる」と反対していた心情を酌み取った運用を心掛けてもらいたい。

 同時に忘れてならないのは、給付金などの支給でこの問題がすべて解決するのではないということだ。

 日中国交正常化以後に国費で帰国した残留孤児らは約六千三百人で、平均年齢は七十一歳。そのうち六割が生活保護を受けている。日本語の日常会話で不便を感じない孤児は四割にも満たない。このため帰国後に就労が思うようにできず、七十歳以上では六割に就労経験がない。

 孤児が置かれた特殊な状況に配慮し、これまで以上に帰国後の日本語や生活習慣の指導、就労相談体制を拡充する必要がある。孤児の中には日本語が理解できないため自宅に引きこもるケースが少なくない。そうした孤児への巡回相談の機会も増やすべきである。

 老後の不安を抱える孤児の中には孤児専用の老人ホーム建設を求める声も出ている。検討してはどうか。

 孤児が訴訟を通じて強く求めていたのは「人間の尊厳の回復」だった。行政の対応だけではなく、われわれ国民も社会に受け入れ、孤児が「帰国してよかった」と思えるようにしたい。

防 衛 白 書 小池さんの宿題集だ

2007年7月10日

 ことしの防衛白書が、防衛相交代の直後、まとまった。小池百合子・新防衛相にとって、北朝鮮問題や在日米軍再編への取り組みなどをめぐる内容は、当面の課題をおさらいする手がかりになる。

 小池氏は、内外の情勢が複雑な時期に防衛相の職を引き継いだ。北朝鮮問題など、日本の安全に対する懸念はいまだ解消されず、在日米軍再編の見通しも不透明だ。数週間たてば、参院選の結果を受けて、政権の顔ぶれの変動も想定される。

 当面、小池氏の使命は、防衛体制と政策の安定を保つことだろう。今回の防衛白書は、周辺情勢や基本課題の復習に役立つはずだ。

 日本の安全保障を取り巻く環境の中で、白書が特に重視したのは北朝鮮の核開発と弾道ミサイルの問題だった。北朝鮮は、非核化に向けた初期段階措置の受け入れに前向きな姿勢を示しているが、先月下旬には日本海に短距離の弾道ミサイルを発射したとみられる。弾道ミサイル発射は国連安全保障理事会の決議に違反する行動であり、周辺国や国際社会との協調にかける決意の固さはいぜん不確実だ。

 白書は、中国の国防政策の透明性や国防予算の傾向についても、年々関心を強めつつある。弾道ミサイル技術を応用して人工衛星を破壊した一月の実験や、伸び率が17・8%に達した本年度国防予算といった事例を指摘している。

 不透明な周辺情勢に備えるにあたって、脅威の抑止、国土防衛などで最大の柱となるのは、日米安保体制だ。在日米軍再編をめぐり、白書は「抑止力の維持と地元負担の軽減」の両立という目標を詳述している。小池防衛相は昨年九月まで二年間、沖縄担当相を務めた経験を生かし、普天間飛行場移設問題などで地元との調整に尽力してほしい。

 日米安保体制は、イージス艦の能力に関する秘密が漏れた事件で、信頼関係が揺らぎかけた。その修復も大切な課題だ。

 安全保障環境の視野を広げると、国際テロリズムや大量破壊兵器の拡散といった脅威も、深刻の度が増している。一月の防衛省昇格に伴い、自衛隊には、国際平和協力活動など海外での部隊行動が本来任務に加えられた。

 半面、自衛隊の海外派遣には憲法の平和主義に基づく制約がある。集団的自衛権をめぐる憲法解釈変更の問題をめぐっても、世論の不安は根強い。脅威に備える態勢の強化によってかえって緊張が高まることがないよう、防衛政策の立案と統制に細心の注意を払わねばならない。

【東京新聞・筆洗】2007年7月10日

 宮本実さんには敗戦直後の惨劇の記憶も家族の思い出もなかった。物心つくころには中国人の養父に育てられていた。豊かではなく、主食はトウモロコシやアワ。牧童として働いた。それでも小学校に通うことができた。けんかしたときに「日本に帰れ」と罵(ののし)られるのがつらかった▼なにくそと勉強し、師範学校に進むことができた。二十二歳で校長になったが、文化大革命のときに批判の対象となる。これが望郷の念を帰国への決意に変えたのか、一九七八年に家族とともに帰国した。作家の井出孫六さんが宮本さんを取材したのは七年ほど後のこと。日本語がまだ下手で、安定した仕事に就けずにいた▼井出さんが月刊誌『世界』に当時連載した「蒼氓(そうぼう)は今もなお…」で紹介した中国残留孤児の実情のほんの一部だ。国の対応の冷たさを指摘し、「一家が再び中国に戻っていくようなことになってはならないような光が、彼らに与えられなければならないだろう」と記した▼だが中国残留孤児に光が与えられるには、二十年以上の月日を要した。国に賠償を求める集団訴訟を起こしたことでようやく事態が動きだし、新たな生活支援策が決まった。原告団の池田澄江さんの「苦しんだが、もうそろそろ光が見える」との言葉を聞くと胸が締め付けられる▼中国残留孤児の多くは敗戦直後、宮本さんと同様に幼児で、自らの意思で残留を希望するはずがない。戦争の犠牲者であり、国はなぜもっと早く孤児の人生に光を与えることができなかったのか▼戦後六十二年。時間は取り戻せない。


【河北新報・社説】

中国残留孤児訴訟/現実的な解決方法になった

 全国の中国残留孤児が国家賠償を求めた訴訟が、全面解決することになった。新たな給付金の支給などを盛り込んだ政府与党の支援策を、原告の残留孤児側が受け入れたためだ。
 司法の場であくまで国の責任を追及するのも選択肢の一つだろうが、残留孤児と家族らの現実の生活や高齢化を考えれば、政治が関与した解決も迫られていた。

 解決に踏み切った残留孤児らのために、国はできるだけ早く支援策を実行に移さなければならない。同時にこれまでの行政について率直に反省の気持ちを示すべきだ。

 訴訟は現在、仙台や山形、東京など全国の10地裁と、札幌など6高裁で争われている。原告数は約2200人で、帰国した残留孤児の9割にも上る。
 これほど多くの人が国の賠償責任を求めたこと自体、深刻に受け止めなければならない。国の戦後処理のあり方、ひいては戦争による個人の損害をどう救済するのかという極めて重い問題を突き付けている。

 原告の残留孤児側は訴訟で、国が早期帰国を実現させる義務を怠った結果、日本語の習得などが困難になり、経済的な苦境をもたらしたなどと主張した。
 原告の窮状はほとんど疑いようのない事実であり、誰しも認めざるを得ないが、だからといって国の賠償責任には直結しない。これまでの司法判断も割れている。

 最初の判決は2005年に大阪地裁で言い渡されたが、「中国や帰国後の日本で受けた不利益は見過ごせない」と指摘する一方で、「国の義務違反はない」と責任を否定した。

 06年の神戸地裁判決は、身元保証がない限り帰国を認めないという不当な制限や帰国後の自立支援の貧弱さを指摘し、国の賠償責任を認めた。ところが続く今年1月の東京地裁判決は、国の責任を全く認めないばかりか、残留孤児について「見過ごせないほどの損害は生じていない」とまで言及した。

 この非情な東京地裁判決によって、かえって政治による早期救済を求める声が高まった。安倍晋三首相が訴訟の原告団代表と会って支援を表明したのは判決の翌日だ。残留孤児らの年齢を考えれば、最高裁まで争うよりも、政治の場で解決策を探るのは当然だった。

 与党のプロジェクトチームが具体策をまとめ、原告側と交渉した結果、国民年金の満額支給や生活保護に代わる給付金制度の創設などで折り合った。時間はかかったが、生活救済を最優先にしたのは評価できる。
 訴訟終結によって国の責任を正面から問う機会はなくなるのだろうが、なぜ残留孤児の問題が生じたのか、政府はその認識を示すべきだ。
 国による旧満州(中国東北部)への移住政策がそもそもの原因であり、さらに戦後の冷戦構造によって帰国が遅れる結果になった。残留孤児らの責任はどこにもない。
 その見方に立って残留孤児らに向き合うことこそ、政治の責任ではないだろうか。
2007年07月10日火曜日

【河北新報・河北春秋】

 農相赤城徳彦氏のホームページによると、赤城家は戦国時代に筑波山西麓(せいろく)に土着し代々、名主の家柄という。「徳」のある当主が輩出してきたのに違いない▼茨城県筑西市にある実家の構えを見ても門地の特別さはうかがえる。その名家が疑惑の舞台に変わった。赤城農相の事務所費問題

 ▼ 実家を政治団体の主たる事務所とし2005年までの16年間に経費約1億3000万円を計上した。当初、親族が事務所としての実体を否定したことから疑惑が膨らんだ▼農相が「架空計上はない」、安倍晋三首相も法的に問題なしと強調しても沈静化の兆しはない。安倍内閣で閣僚の事務所費問題は3人目。前任農相はその渦中に自殺しているのだ。「政治とカネ」の問題は目前の参院選で厳しく問われよう

 ▼古代中国の「君子行」。「君子は嫌疑の間に処(お)らず」と説く。徳のある人や為政者は疑いがかけられるような状況にわが身を置いてはいけない―という。農相にはもう遅い。が、疑いを晴らすべく説明責任は果たしてもらいたい▼資金管理団体に限り5万円以上の支出の領収書添付を義務化した政治資金規正法。それでも“ザル法”との批判がある中での政治団体の経費問題。自らを嫌疑の間におかないためにはすべてに領収書が要るのでは。君子の行いは無理なのだから。

2007年07月10日火曜日


【京都新聞・社説】

残留孤児支援策  これで十分とは思えぬ

 普通の日本人として、胸を張って生きたい-。その言葉がすべてを物語っている。
 国に損害賠償を求めていた中国残留孤児の集団訴訟がようやく終結する見通しとなった。孤児ら原告・弁護団が政府与党の支援策を受け入れることを決めたからだ。
 孤児らにとっては苦渋の選択だったに違いない。ただ、裁判の長期化を考えれば政治解決による新支援策は一定評価されてよいだろう。
 支援策の大きな柱は▽現在は三分の一しか支給されていない国民年金の満額支給(六万六千円)▽さらに生活保護に代わる給付金制度を新設し、単身世帯で月額最大八万円支給-の二つだ。
 孤児の約七割が現在、生活保護を受けている。ところが受給額は年金と合わせても月額最大八万円である。新支援策で大幅増額になることは朗報ではあるが、十分に「血のかよった」施策だとは言い切れまい。
 孤児側が支援策で最後まで抵抗したのが給付金制度の仕組みだ。というのも給付金は支給の前提として収入状況などを詳しく調査するからだ。孤児にとっては、使い道を厳しくチェックされる生活保護と何ら変わらず、「監視されている」と反発したのもうなずける。
 最終的に、孤児らは回数を年一回にすることなどで収入調査を受け入れた。だが「生活保護に感謝しろ」といわんばかりの姿勢が、孤児たちの気持ちをいかに傷つけてきたかに行政は気づくべきだ。
 支援策を受け入れた背景には、高齢化が進む中、老後設計もままならない孤児らの窮状という厳しい現実がある。孤児らの平均年齢はいまや七十歳だ。
 司法救済の限界が、重くのしかかったこともあろう。一連の集団訴訟は京都をはじめ全国十五地裁で提訴され、神戸地裁で勝訴したものの、七地裁で孤児側が敗訴しているからだ。
 とはいえ孤児の早期帰国や帰国後の自立支援で、国の不作為や怠慢を厳しく指弾する判決も出ている。政府や国会はそのことを肝に銘じ、支援策以外の施策の充実を図ることも忘れてはならない。
 孤児の多くは帰国した時、中年を過ぎ日本語がうまく話せないために就労ができないケースが多い。継続的な日本語学習や帰国者の交流を促す「支援・交流センター」の一層の拡充を求めたい。
 今回の支援策は安倍晋三首相が指示したものである。首相はきょうにも、孤児の代表と面会する。「美しい日本」というのなら、孤児らに心のこもった謝罪の言葉を述べてもらいたい。
 そもそもなぜ孤児が生まれたのか。
 国策で中国に送り出され、そのまま中国に置き去りとなり、戦後は祖国への帰国の道を長く閉ざされてきた事実に、社会もあらためて目を向ける必要がある。
 無関心は許されない。日本人を、もう悲しませてはならない。

[京都新聞 2007年07月10日掲載]

京の観光客数  増えたが質も考えたい

 二〇〇六年に京都市を訪れた観光客数は四千八百三十九万人にのぼり、過去最高となった。伸び率は前年比2・4%増で六年連続で記録を更新した。
 京都人気の根強さを象徴する数字といえる。
 目標とする「観光客五千万人」に迫る勢いだ。
 どうやら冬季の誘致戦略が功を奏したようだ。「京都・嵐山花灯路」の健闘も光る。冬の嵐山をあんどんで演出し、前年比一・五倍の約九十七万人が訪れた。
 地元や市、府、京都商工会議所が一体となれば、可能性が広がる好例だろう。
 観光消費総額も初めて六千億円台を突破した。ただ、地元がどのくらいの恩恵を受けているのかが見えにくいのが残念だ。市民が波及効果を実感できれば、さらに弾みがつく。
 観光客数の多さも大切だが、目先の数値ばかりにとらわれていては本質を見失いかねない。観光の「質」についてもしっかり見据え、対策を講じたい。
 近年の京都ブームの背景を見ると、雑誌やメディアの「京都特集」やテレビのドラマによる影響も大きい。
 地元が敏感に反応して、数々の観光イベントを企画するなど、素早い対応が実を結んでいるともいえる。
 ただ、こうしたイベントは、底の浅い一時的な、あきられやすい側面も併せ持っている。
 やはり京都観光の神髄は、「伝統文化の重み」であり、精神文化の深さを伝えることではないか。
 伝統芸能にもっと身近に触れる場面を増やしたり、町並みの保全維持にも配慮するなど長期的な戦略も組み立てたい。
 和装や陶器、漆器など、数々の伝統工芸も大切な観光資源となるだけに、技の継承などのテコ入れも求められる。
 市や市観光協会は、旅行会社のアイデアを生かしながら、伝統工芸の体験教室や京都文化を学ぶコースも新設した。斬新な試みに期待したい。
 一方、観光客数が増える中で、シーズン中の交通渋滞の問題は積み残されたままだ。市は、嵐山や東山の観光地で車の通行規制などに着手したが、まだ決め手は見つかっていない。
 高校生の修学旅行が減っているのも気がかりだ。教育的な効果はもちろん、生涯を通じて京都への親しみを持ってもらう意味でも若者の旅行者をもっと積極的に受け入れたい。
 海外からの観光客は前年より10%増えた。だが、市内の地理案内も含め、果たして、もてなしの心で接しているかどうか、もう一度、周囲を見渡したい。
 観光は単に経済活動にとどまらない。観光を考えることは、住民自身が足元の貴重な遺産に気づかされることにほかならない。
 観光客の伸び率が好調な今こそ、京都ならではの観光のあり方を追求したい。

[京都新聞 2007年07月10日掲載]

【京都新聞・凡語】

新・世界の七不思議

 子どものころに読んだ本で、なぜか「世界の七不思議」だけは覚えている。ピサの斜塔もあったが、古代魚シーラカンスの絵の印象が、強烈だったせいかもしれない▼一般に世界の七不思議といえば、二千年以上前、アレクサンドリアの哲学者が選んだエジプトの「ギザのピラミッド」などを指す。その後、幾通りもの七不思議が誕生。読んだ本は、子ども向けに選び、書かれたのだろう▼スイスの財団の「新・世界の七不思議」は大がかりだ。古代の七不思議で現存するのはピラミッドだけのため、新たに選出、後世に優れた歴史的建造物の姿を伝えよう-と世界に呼びかけたのだから▼八百を超す世界遺産を七十七に絞り込み、著名な建築家らが二十一の最終候補を決めた。日本からは京都・東山の清水寺がノミネートされたが、電話とネットによる投票の結果、惜しくも涙をのんだ▼確かに当選した中国の万里の長城などに比べると知名度やスケールの点ではかなわないものの、他にはない魅力がある。最終候補のうち、唯一の木造建造物であり、清水の舞台の柱には、くぎや金具が一切使われていない▼伝統の技術に裏打ちされたダイナミックな建築と景観。日本の「木の文化」そのものであり、自然との共存を大切にしてきた心をも表す。それを当然のように受け継いできたこの不思議。がっかりすることはない。

[京都新聞 2007年07月10日掲載]


【朝日・社説】2007年07月10日(火曜日)付

残留孤児支援―今度こそ失望させるな

 終戦の混乱の中で旧満州に置き去りにされてから62年、中国残留日本人孤児への支援問題が決着した。

 速やかな帰国と自立への支援を怠ったとして、残留孤児らは国を相手に損害賠償を求める裁判を起こしていた。そうした残留孤児と与党との間で、支援の拡充策が合意に達したのだ。

 弁護団や支援者を含めた残留孤児側と与党の、合意への努力を評価したい。支援策を詰めるよう指示した安倍首相の決断も見逃せない。

 合意案は、秋の臨時国会で立法化される見通しだ。孤児らはその段階で裁判を終えることになる。孤児はいずれも老境を迎えている。支援策を一日も早く実施してもらいたい。

 支援策の柱は二つある。まず、残留孤児がいま受け取っている基礎年金の月約2万2000円を、満額の約6万6000円に引き上げる。さらに年金とは別に、月8万円を上限に特別給付金を支給する。

 ただし、他に収入があれば、特別給付金から差し引くことになった。

 孤児らは当初、収入分を引かれることに難色を示していた。手取りが抑えられるというだけではない。役所が孤児の収入を調べることになり、生活保護と同じように監視されると反発した。

 それにもかかわらず孤児らが受け入れたのは、収入の3割は差し引く対象から外すという配慮が加えられたからだ。

 収入の申告に際して、役所は孤児らを監視していると受け取られないように細心の注意を払わなければならない。

 そもそも孤児らが訴訟を起こしたのは、やっと帰国しても日本語や年齢の壁から思うように働けず、6割が生活保護を受けているという現実からだ。

 たとえば、幼いころ孤児となった男性は中国人養父母に育てられ、教師になって校長を務めた。47歳で帰国したが、仕事は製品の箱詰め作業ぐらいだった。12年間勤めても年金は夫婦で月9万円ほどで、生活保護を受けざるをえない。

 残留孤児らは、旧満州の開拓という国策によって生み出された。だが、孤児らが望む「帰ってきてよかったと心からいえる生活」にはほど遠かったのだ。

 事態を動かしたのは、約2500人の残留孤児のうち9割が裁判の原告に名を連ねたことだ。政府・与党も孤児らの怒りを無視できなかったといえる。

 だが、孤児らをそこまで追い込む前に、なぜ今回のような支援策をつくれなかったのか。政府は「残留孤児だけを特別扱いできない」という態度だった。94年に議員立法でできた中国帰国者支援法も中途半端で、基礎年金も3分の1しか保証されなかった。政府も国会も改めて反省しなければなるまい。

 原告団代表の池田澄江さん(62)は「日本人に生まれてよかった」と述べた。

 支援策は、終戦時に13歳以上だった残留婦人にも適用される。残留孤児や婦人らを二度と失望させてはならない。

マニフェスト―数字なしでは落第だ

 参院選挙の公示が目前に迫り、各政党のマニフェストが出そろった。

 思い返せば、「マニフェスト」という耳慣れない言葉が一気に市民権を得たのは4年前の衆院選挙だった。

 こんどの参院選は、4回目の大型国政選挙になる。さぞや充実したものになったろう。そう思って自民党のマニフェストをめくった人は、無残に期待を裏切られることになる。

 政権党だけに、ボリュームも体裁も立派だ。安倍首相肝いりの「新憲法制定の推進」に始まって年金、教育、外交などで、155もの項目がずらりと並ぶ。

 だが、ほとんどの項目に欠けているものがある。「数字」である。いつまでに実現し、財源をどう調達するか。そんな数字がすっぽり抜け落ちているのだ。

 「できることしか言ってはならない。それが責任政党だ」。首相は最近、こう繰り返す。だが、自民党はすぐできることも、いつかできたらいいなと思うことも、ごちゃ混ぜにしていないか。

 いわゆる公約と、マニフェストの違いは何なのか、思い出してみよう。

 政策の目標や優先順位、財源、達成時期などを具体的に数値で示すこと。それがマニフェストの特徴だ。

 数値が明記されていれば、有権者はその達成度を客観的に検証することができる。次の選挙でどの政党を選ぶのか、その明確な基準にもなりうるのだ。その意味で、自民党のマニフェストはまったく落第である。

 民主党のマニフェストはどうか。項目数を全部で60に絞り込み、とくに年金、子育て、農業の3点に力点を置く。

 評価したいのは、新規の政策に必要な費用を15兆3000億円と見積もって、その財源を明示したことだ。

 補助金の一括交付金化などムダの排除で6.4兆円、特殊法人などの原則廃止で3.8兆円、談合と天下りの根絶による行政経費の節減で1.3兆円――といった具合だ。

 いかにもおおづかみだし、全体の整合性があるのか疑問に思えるところもある。この数字を標的に、自民党は「実現性があるのか」と議論を吹っかけるだろう。そんな具体的な論戦をこそ、有権者は聞きたいのだ。

 直接、政権選択を問う総選挙と比べ、今回の参院選のマニフェストは少し違った意味合いを持っている。

 自民党にとっては、安倍首相が初めて受ける審判だ。安倍カラーを鮮明に出すべきところなのに、あっさりした記述に終始したのは物足りない。

 小沢民主党にとっては、この参院選に勝ち、「次の総選挙で政権を奪えば」実現したい政策を訴えることだ。現実味のある政権構想への第一歩として、有権者に受け入れられるかどうか。

 マニフェストを読み、論戦に耳を傾ける。どの政党の主張が信頼できるか、しっかりと見極めて1票を投じよう。

【朝日・天声人語】2007年07月10日(火曜日)付

 森永乳業提供の育児相談サービス「エンゼル110番」が、相談してきた人に「実家のありがたみ」を聞いている。家事・育児の手助けや精神的援助を抑えて、首位はしっかりと金銭的・物的援助だった。夫の実家からの支援にも抵抗はなく、「甘え上手なママ像」と分析されている。

 赤城農水相の政治団体が、両親が住む茨城県の実家を事務所とし、05年までの10年間に約9000万円の経費を計上していた。実家のありがたみで、家賃は無料らしい。では、それだけの額になった根拠は何かとなる。

 赤城氏は、電話代や切手代と、別の事務所の経費も合算したと説明した。いったん事務所ではないと認めたご両親も「地元の活動拠点だ」と修正した。親心か。

 この政治団体の場合、経費を裏づける領収書はいらない。だから赤城氏は「公表すべきものはした」と強気だ。法律を盾に、疑惑に口を閉ざした前任者と同じ言い方である。安倍首相も、同じようにかばっている。安倍氏と赤城氏は、おじいさんたちも首相と農相の関係だった。

 赤城氏は、東京にある妻の実家にも、別の政治団体の事務所を置いている。無論、濃密な親類づきあいは悪いことではない。実家は優しく、頼りになる。だが、都合よく使ってばかりでは全国の実家が泣く。

 赤城氏は予定通り、きょうにも欧州に出かけるという。帰国の予定は参院選の最中だ。このまま国民が納得できる説明がなければ、与党の候補者にも迷惑が及ぶだろう。政治家なら法律への「甘え上手」だけは慎んでもらいたい。


【毎日・社説】

社説:’07参院選 消費税率上げ 自民、民主とも逃げるのか

 挑発につい乗ってしまったのだろうが、安倍晋三首相が先週のテレビ番組で、「私は消費税を上げないなんて一言も言っていない」と発言した。

 自民党は参院選を意識し消費税率上げは封印してきた。総裁自らがこの一線を越えてしまったのだ。

 確かに、自民党の参院選公約には07年度をめどに消費税を含む税制の抜本改革を行うとある。「経済財政改革の基本方針2007」にも、歳出削減でも対応しきれない社会保障の負担増は先送りしないことが盛り込まれている。政府も自民党も、消費税を含む増税は排除していないと読める。

 安倍発言には公示目前でもあり、自民党内で反発が大きく、その後、安倍首相は「徹底的に歳出削減の議論をしていく。上げなくてすむ可能性は十分ある」と火消しに躍起となった。返す刀で、民主党の基礎年金を全額、現行5%の消費税でまかなう構想を、実現できないと批判した。

 歳出削減とあわせて、成長力を高める政策が効果を上げれば税収も伸び、増税しなくとも、財政再建を進めていくことができる。これが安倍政権が国民に提示している財政改革の姿である。

 ただ、楽観的な政策をとっていればおのずと財政状況が改善するというものではない。小泉純一郎前政権は消費税率の引き上げこそやらなかったものの、定率減税廃止など負担増につながることは実施した。最近の税収増にこのことも寄与している。また、景気次第で税収は大きく変わる上、歳出を増やさざるを得ないこともある。

 さらには、財政が国民の安心や安全にかかわるサービスを安定的に担っていくためには、余裕をみておかなければならない。いま、税収が好調だからといって、これがいつまでも続くわけはない。06年度の一般会計税収実績が補正後見通しを下回ったのがいい例だ。

 いまのままで財政再建ができるのか不安だとの思いは、国民も持っている。なぜ、自民党も民主党も、安心できる財政再建の姿を提示しないのか。

 民主党が前回の総選挙で打ち出した消費税率引き上げをあっさり下ろしたことも簡単には解せない。小沢一郎代表の言うように、この間、国民負担増があったことは事実だ。では、民主党の主張する基礎年金の全額国費負担や、各種の国民生活支援は、行政の仕組み見直しや歳出の無駄の削減などの措置だけで可能なのか。自民党と同様、経済が引き続き好調で、税収も増えていくことが前提になっているように思われる。

 いま、財政再建が重要なのは、団塊世代が年金受給者になる10年代半ばまでに、健全化のめどをつけなければならないからだ。そのためには、消費税のみならず、個人所得税や法人税、各種の資産税も含めて、議論しなければならない。ところが、そのたたき台も示されていない。自民党も民主党もこの争点から逃げてはならない。

毎日新聞 2007年7月10日 東京朝刊

社説:中国残留孤児 国は辛酸償う誠意を示せ

 全国16の地・高裁で争われている中国残留孤児訴訟が、終結に向かう。原告側が、与党プロジェクトチーム(PT)が決定した新しい支援策の受け入れを決めたためだ。戦中、戦後を通じて異境で辛酸をなめた孤児たちが、ひとまずは当たり前の日本人として生きる権利を得、老後の生活安定につながる支援を受けられる見通しが立った。

 PTの支援策には参院選を前にした与党としての点数稼ぎ的な色彩があるとしても、孤児側の主張に歩み寄りを示した点では評価できよう。とくに創設する特別給付金制度には、賠償的な意味合いが含まれていると解釈できる。他の戦争被害と異なり、国策によって生じた被害を、国として初めて認めたものと言えるかもしれない。

 生活保護を基盤とすることへの異論はあるが、現に帰国した孤児の約6割が生活保護を受けており、他の戦争被害者らとのバランスなども考慮すれば、やむを得ないところかもしれない。今後の運用面で別の収入などへの十分な配慮がなされるようにルールを整備することはもちろん、未解決となっている中国残留婦人への支援や無年金者などへの対策にも万全を期さねばならない。

 振り返れば、孤児たちは国から冷たい仕打ちを受け続けてきた。国策移民として危険地帯に送り込まれたにもかかわらず、旧満州(今の中国東北部)からの引き揚げ事業は他地域よりも遅れ、多くが取り残された。戦後は、かつての敵国で加害国側の人間として生きることを強いられた。日中国交回復後も政府は孤児の帰国事業には及び腰で臨み、帰国者への支援もつれないものだった。その結果として、過半数が生活保護に頼らざるを得ない現状がある。

 政府としては、これまでの至らざる部分を素直に認め、慰謝に努めるべきだ。塩崎恭久官房長官は記者会見で「(孤児に)日本に帰ってきてよかった、と言ってもらえるようにする」と語ったが、誠意の限りを尽くした支援策の実行に期待したい。孤児側は高齢化が進むため、解決を急いで妥協に応じた面があることも、十分に考慮されねばならない。

 一連の訴訟では原告側勝訴の判決は1例にすぎないが、国側の勝訴判決でも補償措置を欠いたことなど政治的責任を繰り返し指弾された事実を、関係者は改めて重く受け止めねばならない。司法から批判されるまで、自ら立ち上がろうとしなかった行政や国会の姿勢が、厳しい反省を迫られていることも忘れてはならない。

 終戦から60年余を経た今、戦争被害の数々を改めて検証し、責任の所在や補償のあり方などを問い直す必要を痛感する。戦争の悲惨さを直視し、実相を後世に伝える努力を怠ってはなるまい。原爆投下をめぐる久間章生・前防衛相の発言のように「しょうがない」で片付けていたのでは、非戦の誓いをまっとうすることもおぼつかない。この際、孤児たちの苦難の歴史も掘り起こし、理解を深め、語り継いでもいきたいものだ。

毎日新聞 2007年7月10日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:紀元前4世紀末、カルタゴの封鎖を受けた…

 紀元前4世紀末、カルタゴの封鎖を受けたシラクサの独裁者アガトクレスは起死回生の挙に出る。封鎖をかいくぐり1万4000の兵を60隻に乗せ、敵の本拠北アフリカを急襲したのだ。カルタゴにほど近い海岸でアガトクレスは、乗ってきた船を焼き払わせた▲敵地で退路を断った兵の士気はいやがうえにも盛り上がり、カルタゴ領を思うままに荒らし回った。もっとも船を焼いたのは、船団警備の余力がなかったための窮余の策で、士気高揚は思わぬケガの功名だった(松谷健二著「カルタゴ興亡史」中公文庫)▲「背水の陣」の西洋版が「船を焼く」だ。参院選を前に民主党の小沢一郎代表と渡部恒三最高顧問が「敗北したら政界引退」を宣言したのも、船を焼いての士気高揚と、選挙結果をめぐる責任論を避ける安倍晋三首相との違いを際立たせる狙いだ▲政府与党の失点による野党優位が伝えられる中、これを果断とみるか、あざといとみるかは人による。ただかたや安倍首相の方は、自ら船を焼くどころの話ではない。逆に自陣営から次々に燃え上がる火の手を消すのに懸命という有り様である▲新たな火元となった赤城徳彦農相の団体の事務所経費問題で首相は「問題ない」と、はなから火などないとの姿勢だ。だが事務所の実態についての関係者の説明は定まらない。それを見て国民が感じた不審をそう軽んじてはいけない。くすぶった火は事実に即した明快な説明で消すことだ▲仮に船に火を放たなくとも、選挙結果によってはそれこそ政界再編も取りざたされる今度の参院選である。与野党ともに確たる退路も見えない戦いになるに違いない。その帰すうを決める有権者もまた、背後に水を負っての1票を投ずるつもりで選挙にのぞみたい。

毎日新聞 2007年7月10日 東京朝刊


【読売・社説】

残留孤児支援 早期決着に導いた政治判断(7月10日付・読売社説)

 中国残留孤児に対する支援問題が、政治判断で決着した。支援策を早期に実施すべきだ。

 残留孤児訴訟の原告が、与党のプロジェクトチーム(PT)がまとめた支援策の受け入れを決めた。これにより、永住帰国した孤児約2500人のうち、約2200人が、国を相手に全国15地裁で起こした訴訟は終結する。

 孤児に対しては、現在、収入がなければ、生活保護費と基礎年金を合わせて、月8万円が支給されている。

 これを、14万6000円に増額するのが、支援策の柱だ。特例措置として、通常の3分の1の額が支払われてきた基礎年金を満額の6万6000円に引き上げる。さらに、生活保護費に代えて、8万円の特別給付金を支給する。

 永住帰国した孤児の平均年齢は、70歳を超えた。言葉の壁から、社会になじめず、安定収入のないケースが多い。6割以上が生活保護を受けている。

 与党は、秋の臨時国会で関連法案を成立させ、来年初めにも支援策を実施する方針だ。

 支援内容は、高齢化が進み、経済的に苦しんでいる孤児にとって、大きな支えになるだろう。

 孤児たちは、国に対し、「早期に帰国を実現させず、帰国後の自立支援も怠った」として、賠償を求めていた。

 これまでに、8地裁で判決が出され、神戸地裁だけが国に賠償を命じた。しかし、その他の訴訟では、国の責任を認めず、裁判で孤児側が勝つのは難しい状況になっていた。

 東京地裁で1月に国が勝訴した後、安倍首相は、政府・与党で支援策を検討することを表明した。「裁判の結果は別にして、高齢化した残留邦人の置かれた状況に配慮しなければならない」との理由だった。

 訴訟が各地で続けば、決着までに、なお長い時間を要しただろう。

 支援策で、孤児側が最後までこだわったのは「収入認定」の問題だった。行政が孤児のアルバイトや厚生年金などの収入を調べ、その額に応じて特別給付金を減額するものだ。孤児側は「生活が監視される」と拒否していた。

 与党PTは、収入のうち3割については、収入と見なさず、減額対象としないこととした。孤児側も受け入れた。

 「収入認定」を残したことについて、与党PTは、「優遇し過ぎとの批判を受けても、孤児のためにはならない」と説明する。もっともな判断である。

 支援策を、孤児と、その家族の生活安定に役立てたい。
(2007年7月10日1時24分  読売新聞)

赤城農相問題 もっと丁寧に説明してほしい(7月10日付・読売社説)

 赤城農相は、事務所費問題について、もっと丁寧に説明すべきではないか。それが、疑惑の払拭(ふっしょく)につながる。

 赤城農相の政治団体「赤城徳彦後援会」が、茨城県筑西市の農相の実家を「主たる事務所」とし、2003~05年に計約1227万円の経常経費を計上していた。農相の実家に住む母親は「家賃や光熱費は受け取っていない」と語っている。

 野党は、別の政治活動費を経常経費に付け替える「虚偽報告」などの疑惑があるとして、農相の罷免を安倍首相に要求している。12日の参院選公示を控えて、政府・与党に攻勢をかける一つの材料とする思惑もあるのだろう。

 問題のポイントは、経常経費が後援会の実際の事務所費や人件費、光熱水費などであったかどうか、である。

 農相は、実家の事務所以外に、後援会が水戸市内の自民党茨城県第1選挙区支部の事務所を使った経費を合算していると説明し、「架空計上はない」と明言した。安倍首相も「(経費を)合わせて計上することは法律で認められている」と語り、罷免を拒否している。

 実家の事務所について、農相の両親は「事務は水戸事務所で行っており、以前ほど活発ではないが、地元の活動の拠点となっている」と説明した。

 ただ、こうした説明だけでは、架空計上の有無を判断するのは困難だ。農相は、実家と水戸市の事務所のそれぞれの事務所費、人件費、光熱費がいくらかなどを明らかにしてはどうか。

 すべての政治団体は、過去3年間の1件5万円以上の経常経費について、領収書の保存を義務づけられている。その領収書を公表すれば、説明に説得力を持たせることができる。

 各政党は、参院選に向けて走り出している。本来なら、憲法、社会保障、教育、外交・安全保障などの政策論争を展開すべき時だ。各党首が「政治とカネ」の問題の追及と釈明に明け暮れ、重要な論点が脇に置かれるようでは、有権者にとっても不幸なことだ。

 農相の事務所費問題は、先の通常国会で成立した改正政治資金規正法の不備も浮き彫りにした。

 改正法は、資金管理団体に限って、1件5万円以上の経常経費に領収書の添付を義務づけている。だが、農相の後援会は資金管理団体ではないため、規制の対象とならない。全国の資金管理団体は1万1600余で、約7万に上る政治団体の2割未満にすぎない。

 政治資金の透明性の向上は、政治家全体が常に考えるべき課題である。
(2007年7月10日1時24分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月10日付 編集手帳

 自分は5歳で死別した父親のことを覚えている。妹には9歳で死別した母親の記憶がほとんどない。「なぜだろう」と、作家の山田風太郎さんが随筆集「死言状(しごんじょう)」(小学館文庫)に書いている◆記憶力の優劣ではないという。父の死後、母は父のことを自分に語ってくれた。母の死後、自分は中学の寄宿舎に入り、妹には母のことを話してやれる人がいなかった、と◆家族であれ、隣近所の人々であれ、あとに残った誰かが思い出を語ってくれるから、亡き人の面影や声音(こわね)がいつまでも消えることなく、幼い者の胸に宿りつづける。記憶とはそういうものかも知れない◆中国残留孤児の多くは生き別れた父母の思い出を誰からも聞かせてもらえずに育った人々である。日本に永住帰国して故郷の風光に触れ、肉親や親類縁者の昔話を聞きながら今、失われた記憶を訪ねて心の旅をしている方もあろう◆中国残留孤児訴訟の原告・弁護団が、与党の提示した支援策の受け入れを表明した。支給額の増額などが盛られている。孤児の6割が生活保護なしには立ちゆかない厳しい現実のもとで暮らす。遅ればせながらこの支援策が「記憶の旅人」の支えになればいい◆永住帰国者の平均年齢は70・5歳という。古希を迎えてなお、「孤児」と呼ばねばならない、呼ばれねばならない人々がいる。
(2007年7月10日1時36分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】選挙責任論 戦わせるべきは政策論だ

 参院選公示を控え、与野党党首の責任論に注目が集まっている。一大決戦に臨み、党首が退路を断つ決意を示すのは、有権者の関心を高めるという意味で、それ自体は結構なことだ。

 しかし、この選挙で問われるべきは単に責任論なのだろうか。政策論争を展開して有権者に選択肢を示し、その審判を待つのが本筋であることを、もう一度思い起こしたい。

 民主党の小沢一郎氏は、選挙で与党を過半数割れに追い込めなければ、代表を辞任するとしていたが、さらに今期限りでの政界引退にも言及し、責任論の議論を加速させている。

 一方、安倍晋三首相は、勝敗ラインは言わない立場を崩していない。

 民主党は「首相と小沢氏とで、覚悟の差が出た」(鳩山由紀夫幹事長)などと強調しているが、「潔さ」だけで判断できるほど単純なものではなかろう。支持狙いの見方もある。

 二大政党政治体制への流れが進んでいるとはいえ、小沢氏はあくまでも野党党首である。代表をやめようが引退しようが、直接的に政権運営には関係がない立場だ。

 かたや安倍首相が自身の責任論に言及すれば、内閣の交代を意味することにもつながる。その発言はより重く、おのずと制約があるはずだ。

 責任論に込める決意を、今は政策論に向けるときではないのか。

 年金記録紛失問題では、政府・与党の対応に、野党が注文や批判を加える構図となっている。

 受給者の不安を早急に取り除くことは、与野党共通の課題だ。首相は野党の主張を取り入れていく考えも示しており、よりよい対応策のための議論を深めてほしい。

 消費税率の引き上げ問題も争点化しつつある。当面、上げないとする民主党に対し、首相がどこまで踏み込んだ論争をしかけるか、注目したい。

 憲法改正問題についても、首相はもっと積極的に取り上げ、野党の見解を引き出すべきだろう。

 閣僚の相次ぐ失言、不祥事は政府側の失点であり、そこを野党が突くのは当然である。しかし、肝心の政策論争が生煮えのまま、ムードに流された選挙戦となることを、有権者が望んでいるとは思えない。

(2007/07/10 05:10)

【主張】中国残留孤児 政治決着での支援を歓迎

 戦争の犠牲者ともいえる中国残留孤児に、やっと光があてられた。孤児が国を相手取り、損害賠償を求めた集団訴訟は、原告・弁護団が政府与党の支援策を受け入れ、終結することになった。

 高齢化が進む孤児の窮状を救うには、政治決断しかなかっただけに、全面解決の方向で決着したことを評価し、歓迎したい。

 中国残留孤児による訴訟は現在、東京、大阪など10地裁と6高裁で係争中で、これまで8地裁で判決があり、孤児側が勝訴したのは、昨年12月の神戸地裁の判決だけである。

 原告になっている孤児は、約2200人で、帰国孤児の約9割を占めている。孤児らは、「国は帰国後の生活支援を怠った」として、平成14年から次々と訴訟に踏み切り、裁判闘争を展開してきた。しかし、このまま裁判が長期化すれば、さらに原告の高齢化が進み、生活も改善されない。

 政治決断のきっかけは、今年1月の東京地裁判決だった。原告の敗訴だったが、安倍晋三首相が厚生労働省に対し、支援策を指示したことで、解決に向けて大きく動き出した。

 訴訟の流れは原告不利の状況が続いていただけに、孤児側にとっても政治決着に持ち込むぎりぎりの局面を迎えていたといえる。

 支援策に大きく関与したのが、与党プロジェクトチーム(PT)の案で、原告側と水面下で交渉を重ね、今回の受諾の運びとなった。まさしく政治決着である。

 孤児の6割以上は生活保護を受給しており、年金と合わせても最大月8万円で生活している。言葉が不自由なうえ、仕事にも就けない状態では、とても生活できる金額ではない。大半が70歳近い高齢者でもある。

 PTの支援策は、国民年金を満額支給(月額6万6000円)し、給付金と合わせて、単身世帯で最大14万6000円を支給することなどが柱となっている。国が支援する以上、残留孤児だけを優遇するわけにもいかない。他の戦争被害者などとのバランスを考えれば、今回の生活支援策は妥当なものと理解したい。

 また、社会が残留孤児にもっと目を向け、温かく受け入れられるような環境づくりに努めることも肝要だ。

(2007/07/10 05:10)

【産経抄】

 「知らなきゃいけないことと/知らなくてもいいことと/きかないふりをしている方がいいことと/きいてはいけないことと/黙っていなくてはいけないことと/黙っていてはいけないことと」。きのうの新聞を読んでいて、森田省子(せいこ)さんの「上品」という詩を思いだした。

 ▼民主党の小沢一郎代表が、参院選で負けたら責任を取って、政界を引退する考えを表明した。といっても、議員を辞職するのではなく、次期衆院選に出馬しないということらしい。これって有権者が「知らなきゃいけないこと」だろうか。党の士気を高めるのが狙いならご自由になさったらいい。

 ▼ただし「安倍晋三首相との覚悟の差が出た」という鳩山由紀夫幹事長の発言はお門違いだ。たかがといってはなんだが、野党党首だからいえること。首相の進退はそんな軽いものではない。

 ▼日曜の報道番組は、赤城徳彦農水相の事務所経費問題で持ちきりだった。「光熱費月800円で辞任要求するのか」と首相はかばうけれど、肝心の農水相からは、納得のいく説明がない。違法ではないのだから、「きいてはいけないこと」といわんばかり。

 ▼参院選を目前にして、有権者に日本の将来の選択肢を示すためには、「消費税引き上げ」について「黙っていてはいけない」はずだ。にもかかわらず、与野党ともに及び腰なのは、勝つために「黙っていなくてはいけない」というわけか。

 ▼ 森田さんの詩はこう続く。「そんな/耳と目と口のつかい方が/お前の 大抵 下品の証明になります。」。政策そっちのけの悪口合戦はとどまるところを知らない。どちらがより下品になれるかが、勝負の分かれ目になりかねない。選挙なんてしょせんそんなものといわれたら、それまでだが。

(2007/07/10 05:05)


【日経・社説】

社説1 財源の裏付け伴う責任ある政策論争を(7/10)

 民主党が参院選向けのマニフェスト(政権公約)を公表し、各党の公約が出そろった。民主党は年金問題など「3つの約束・7つの提言」を柱に据え、主要な公約実現に必要な経費を15兆3000億円とし、その財源は補助金など行政の無駄を省くことによって確保するとしている。参院選では財源に踏み込んだ与野党の責任ある政策論戦を期待したい。

 民主党の小沢一郎代表は参院選で何としても与野党逆転を実現し、次期衆院選では政権交代をめざすことを繰り返し強調している。民主党が政権をめざす以上、その参院選のマニフェストは次期衆院選までにらんで、財源の裏付けを伴った責任ある内容であることが望ましい。

 民主党のマニフェストは「国民の生活が第一」を掲げ、格差是正、国民生活の不安解消に力点を置いているのが特徴だ。焦点の年金問題では、すべての加入者に年金通帳を交付し、年金制度を一元化して年金の基礎(最低保障)部分は現行の5%消費税全額でまかない、消費税は引き上げないとした。

 また、安心して子育てができる社会をめざし、1人月額2万6000円の「子ども手当」を支給することを打ち出した。さらに地域再生策の柱として農業政策を重視し、農家に対する「戸別所得補償制度」を創設するとした。こうした政策は財源との関係でばらまきにならないかどうか、よく吟味する必要がある。

 マニフェストに盛り込まれた主要政策を実現するには(1)年金基礎部分への消費税全額投入で6.3兆円(2)子ども手当創設で4.8兆円(3)公立高校無償化などで0.3兆円(4)農家の戸別所得補償で1兆円(5)高速道路の無料化で1.5兆円(6)最低賃金引き上げのための中小企業対策等で1.4兆円 ――で合計約15.3兆円が必要だとしている。

 この財源を民主党は(1)補助金の一括交付化等で6.4兆円(2)談合・天下り根絶による行政経費節減1.3兆円(3)特殊法人・独立行政法人・特別会計の原則廃止で3.8兆円(4)国家公務員総人件費の節減1.1兆円(5)扶養控除など税制の見直しで2.7兆円――で確保するという。

 自民党などから「財源の裏付けがあいまい」との批判を受けて、財源論に一歩踏み込んだ形だが、なお不十分な面も少なくない。補助金の削減は大いに進めるべきだが、一括交付化で6.4兆円の財源が本当に出てくるかは疑問だ。補助金削減で地方に税源移譲しなければ地方財政に穴があく。国・地方を通じた行革の具体的な道筋を提示すべきである。

社説2 買収防衛で踏み込んだ高裁(7/10)

 米投資ファンドのスティール・パートナーズがブルドックソースの買収防衛策の差し止めを求めた仮処分申請で、東京高裁はスティールの抗告を棄却した。先月末に申請を却下した東京地裁の決定と結論は同じだ。しかし今回の高裁決定は買収者のスティールの投資行動にも着目し、「本件では濫用(らんよう)的買収者であると認めるのが相当」と認定した点が注目される。

 高裁は買収防衛の是非について踏み込んだ見解を示したが、当然のことながらファンド全般について論じたわけではない。ファンドが友好的に企業を買収して事業再生に貢献することもある。今回の高裁決定を見て、ファンド全般を好ましくない存在とする見方があるとすれば、短絡的すぎる。

 高裁は、スティールがブルドック株の100%買収を目指しながら、同社の経営方針を示さなかったことなどに言及した。そのうえでスティールの投資行動について「様々な策を弄(ろう)して買収対象会社の株を対象会社や第三者に転売して売却益を得ようとし、最終的には対象会社の資産処分まで視野に入れて、ひたすら自らの利益のみを追求しようとしている」と述べた。

 高裁は、スティールが濫用的買収者であるとしてブルドックの対抗策の正当性を認めた。防衛策発動の手続きも、株主総会で圧倒的多数の賛成による特別決議が成立し、スティールへの金銭補償もあることから相当であると結論づけている。

 先月末に決定を出した東京地裁は株主総会の特別決議などを重視し、買収者が濫用的かどうかには踏み込んでいなかった。

 東京高裁は2005年、取締役会の決議だけでも防衛策が認められる例として、買収者が株式の高値引き取りを会社関係者に求める場合などを例示していた。

 今回、高裁がスティールのブルドック買収を濫用的としたことで、日本で初めて新株予約権を利用した買収防衛策が発動される。だが買収・防衛の是非は個々の事例ごとに論じられるものであり、他の企業の経営者は防衛策の利用を安易に考えるべきではない。経営努力で企業価値を高めることが本来の使命だ。

【日経・春秋】(7/10)

 農相を6回も務め、14年前に亡くなった赤城宗徳氏はなかなか気骨のある明治人だった。日本中が騒然となった60年安保のころは防衛庁長官。岸信介首相はデモ規制のための自衛隊の治安出動を求めたが、宗徳氏は要請を拒否した。

▼「同胞相克の『残酷物語』となっては内乱的様相に油をそそぐ」。本紙の「私の履歴書」で、首相にこう直言したと打ち明けている。孫の徳彦農相も頑固さにかけてはおじいさん譲りなのかもしれない。実家を政治団体の事務所として多額の経費を計上していた問題をめぐり、きちんとした説明を拒み続けている。

▼もっとも、同じ拒否でもこちらはひどくあたふたした様子。比較しては宗徳氏に失礼か。「もう10年以上も事務所としては使っていない」と話した父親も前言を翻し、みんなが「実家は事務所」と唱え始めた。ならば領収書は? スタッフの稼働実態は? と湧(わ)く疑問を背に、本人はきょう欧州に旅立ってしまう。

▼「月に800円の光熱費で辞任要求ですか」。安倍首相はことさらに小さな額を持ち出してまで農相擁護に躍起だ。何とも寂しい図ではないか。かつて宗徳氏は岸首相と私邸で対決し、自衛隊出動を断った。「悲壮な息のつまる一瞬だった」とはその述懐だ。2人は孫たちの姿をどんな思いで眺めていることだろう。


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