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2007年7月12日 (木)

7月12日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月12日朝刊)

[参院選公示]安倍政治を問う選挙だ

年金問題が主要争点に

 第二十一回参議院選挙が十二日公示され、二十九日に投開票される。

 安倍政権が発足して九カ月。安倍晋三首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げ、国民投票法制定、教育基本法改正、防衛庁の省への昇格などに力を注いできた。

 一方で社会保険庁の年金記録不備問題や「政治とカネ」をめぐる問題が矢継ぎ早に表面化し、閣僚の失言も相次いだ。

 「安倍政治」をどう評価するか。年金などの個別の争点と同時に問われなければならないのは、「安倍政治」の功罪である。

 沖縄選挙区には自民党公認で現職の西銘順志郎氏(57)=公明推薦=と、野党統一候補で元参院議員の糸数慶子氏(59)=社民、社大、共産、民主、国民新党推薦=が立候補し、与野党の一騎打ちになる見通しだ。

 県内では、普天間飛行場移設を中心とする米軍再編のほか、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題が新たに浮上している。経済振興も大きな課題だ。

 西銘氏は「自立への一議席」を強調し、沖縄の自立的発展へ向けた経済振興策を中心に訴えている。

 年金問題については、完全支払いに向け一年以内に記録不備を精査し、納めた人が漏れなく受けられるようにすると強調する。

 糸数氏は「平和の一議席」と訴え、憲法問題や平和、県民の暮らし、安全などに力点を置いている。

 年金問題では政府の対応を批判し、年金記録を確認できる年金通帳と基礎年金を税金で賄う方式が必要だと主張する。

 安倍政権発足後、昨年十一月の県知事選、四月の参院補選で自公の公認・推薦候補が当選した。三連勝を目指す与党陣営は、今回の選挙に勝利することによって「仲井真県政が盤石になり、基地問題でも政府に対する発言力が増す」とみる。

 背水の陣で臨む野党陣営は、安倍政権の支持率低下、教科書検定問題の浮上などを「追い風」と受け止めている。「タカ派色の強い安倍政権に沖縄からノーの声を上げる」ことで国政の流れを変えたいとしている。

 この国の将来と沖縄の針路について論ずべき課題は多い。有権者の投票意欲をかき立てる論戦を期待したい。

「政治とカネ」どう評価

 安倍政権発足後、佐田玄一郎行政改革担当相が政治資金収支報告書への虚偽記載で辞任。巨額の光熱水費問題で批判された松岡利勝農相は、国会での追及には答えず、疑惑を抱えたまま自殺した。

 改正政治資金規正法成立後も赤城徳彦農相の政治団体の事務所費問題が新たに浮上した。政治とカネの問題があらためて注目を浴びている。

 「年金選挙」といわれる今回の参院選で、政治とカネの問題も見過ごせない争点だ。

 国民投票法が成立したことによって三年後には改憲の発議が可能になった。自民党は参院選の公約の中に「二〇一〇年に改憲発議を目指す」と明記している。年金問題が浮上したためにかき消された感があるが、憲法改正問題についての有権者の判断が問われる選挙でもあることを肝に銘じたい。

 参院選の改選議席は一二一(選挙区七三、比例代表四八)。安倍内閣の支持率が低落する中で、自民、公明の与党が計六十四議席以上を獲得し、非改選を加え過半数(百二十二議席)を維持できるかどうかが大きな焦点となる。

政治の行方決める一票

 自民党幹部は参院選を「中間評価」と位置付け、どんな結果でも首相退陣は必要ないとしている。だが、野党が過半数を獲得した場合、安倍首相の進退問題に発展する可能性がある。

 一方、民主党の小沢一郎代表は、野党が過半数を獲得できなければ政界を引退すると表明している。自ら退路を断って政治決戦に臨む構えだ。民主党が敗れた場合、党内の意見の違いが表面化し、分裂の危機を迎えることが予想される。

 争点の切実さといい、選挙結果が政局にもたらす影響といい、今度の参院選は、政治の行方を決める極めて重要な選挙といえる。

 それだけに、候補者の政治姿勢や政策をよくよく吟味し、「私の一票が政治を動かす」という自覚を持って大事な一票を投じたい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月12日 朝刊 1面)

 あなたが尊敬できる日本人はだれでしょうか。こう問われたケネディ米元大統領は、真っ先に「上杉鷹山」の名を挙げたという。

 米沢藩九代藩主で、危機にあえぐ藩財政を立て直した名君として知られる。自ら一汁一菜を実践する倹約に努め、藩士たちと共に畑に下りて鍬を持ち、農林業の振興に腐心した。埋もれていた有能な人材登用にも関心を持ち続けたという。

 無駄を徹底的に排除する一方、貧しい台所事情の中で必要不可欠な産業へ積極的に投資し、飢饉に耐え得る藩によみがえらせた。支えになったのは「主権在民」の思想。藩の存在は人民のためにあるという考えを広く浸透させ、痛みを伴う改革を可能にさせた。

 思想家・内村鑑三は著書『代表的日本人』(岩波文庫)で鷹山を取り上げ、深い洞察力を持ち、自身の欠点や弱点を熟知していたと評している。果たして、現代に鷹山のように人を惹きつける魅力にあふれた指導者はいるのだろうか。

 公私の区別なく税金を使い回す疑惑が明るみに出ても「法的責任」を隠れみのにする閣僚が後を絶たず、人心とは乖離するばかりだ。改革の名の下に痛みを我慢する価値を見つけ出すのは易しいことではない。

 三十五歳の若さで隠居した鷹山が後継に贈った「伝国の辞」には、指導者としてあるべき姿がつづられている。「人民は国家に属したる人民にして我私すべき物には無之候」。きょう参院選が公示される。(石川達也)


【琉球新報・社説】

参院選公示 信を問われる安倍政権/争点は年金だけではない

 第21回参院選が12日に公示される。29日の投開票に向けて、年金記録不備問題や政治とカネの問題、憲法改正などを争点に選挙戦が繰り広げられる。
 最大の焦点は与党が64議席以上を獲得し非改選を加え過半数を維持するか、野党が逆転するかである。
 自民党内には参院選を、安倍晋三首相が次の衆院選で信を問う前の「中間選挙」と位置付ける声がある。参院を軽んじることがあってはならない。今参院選は昨年9月の安倍内閣発足後初の大型国政選挙である。選挙結果は安倍政権に対する国民の評価ともいえる。
 各地域の課題解決にもつながる重要な選挙でもある。有権者は各党、各候補者の政策を十分に検討し、貴重な一票を投じてほしい。

憲法問題も重要

 今参院選では改選121議席(選挙区73、比例代表48)を争う。共同通信社の集計では選挙区に220人、比例代表に11の政党・政治団体から159人の計379人が立候補する見通しである。
 最大の争点は年金記録不備問題だ。基礎年金番号に統合されず、誰のものか分からない年金の加入記録は約5千万件に上り、うち約30万件が「生年月日不明」である。さらにオンラインに未入力の記録が約1430万件ある。
 国民の年金制度への信頼は地に落ちたと言っていい。多くの党が選挙公約の一番目に「年金問題の解決」を挙げているのは当然といえよう。
 問題はそれぞれの政策の実効性であり、さらには年金受給者と加入者の痛みをどれだけ真剣に考えているかである。
 国民の多くが老後の支えを公的年金に頼っている。支給開始年齢が引き上げられるなどの改定にも国民は耐えてきた。にもかかわらず、国に支払い記録がなく、受給できないケースが出ている。
 政府のこの間の対応は後手に回った感が否めない。参院選直前になって対応策を示してはいるが、国民の不安解消につながるかは不透明である。
 年金記録不備問題だけでなく、憲法改正問題も重要である。
 与党の重点政策では年金問題に押しやられ、十番目に「新しい時代にふさわしい憲法をめざす」と憲法改正を掲げた。2010年以降の国会を視野に入れ、国民的な議論を深めていくとの表現にとどめている。
 しかし早ければ、3年後には国会で与党が憲法改正を発議することが予想される。今参院選の当選議員は任期中に改正作業にかかわることになろう。
 国民投票法の成立など、憲法改正に向けた環境づくりが着々と進んでいる。九条改正を焦点にした憲法改正問題は今後、正念場を迎えることからも、今回の参院選は極めて重要な意味を持つ。

棄権せず投票を

 政治とカネの問題も重要な争点である。
 辞任した佐田玄一郎前行革担当相の不透明な事務所経費処理、自殺した松岡利勝前農相の光熱水費に対する国民からの批判などを受けて改正政治資金規正法が成立した。
 しかし、その後も赤城徳彦農相に関係する政治団体が実体のない事務所に多額の経費を計上していたことが発覚するなど、政治とカネをめぐる問題が安倍内閣では相次いでいる。
 柳沢伯夫厚労相の「女性は産む機械」発言、久間章生前防衛相の「原爆投下はしょうがなかった」との発言もあった。これら問題発言への国民の評価も注目される。
 沖縄選挙区(改正一議席)は現職の西銘順志郎氏=自民公認、公明推薦=と前職の糸数慶子氏=無所属、社民、社大、共産、民主、国民新党推薦=の一騎打ちとなる見通しである。
 年金記録約5千万件の記録照合と通知を来年3月をめどに完了させるなどの政府方針を西銘氏が評価するのに対し、糸数氏は制度の抜本改革などが必要として評価していない。米軍普天間飛行場移設問題では西銘氏が「県内移設も一つの選択肢」としているのに対し、糸数氏は「県内移設は認めない」と対立。それぞれの政策の違いも鮮明になっている。
 基地問題など県民生活に密接にかかわる問題は国政の課題でもある。参院選は国政選挙とはいえ、身近な選挙である。
 有権者は棄権することなく、自らの意思を投票で示してほしい。

(7/12 9:46)

【琉球新報・金口木舌】

 都内の沖縄料理店や沖縄風居酒屋でも「スクガラス豆腐」は人気の一品。白肌の豆腐の上に行儀良くスク(アイゴの稚魚)の塩辛が並ぶさまは見ていて楽しいし、酒の肴(さかな)にはぴったりだ
▼「豆腐じょーぐー」を自任する宮里千里さんは昨年の本紙文化面で書き連ねた「おきなわ豆腐ロード」で、「豆腐とスクガラスは兄弟分」だと論じている
▼スクガラスと豆腐の“盟友”を見いだしたのは「琉球新報」創刊者の一人で、食通としても知られる松山王子尚順
▼歴史家の山里永吉氏は「あまり上品でもないなま豆腐にシュクガラスを組み合わせて、客膳にのせるという英断は、尚順でなければできない芸当であった」と記す
▼ 当の尚順は「人前で弁当を開いていきなり生豆腐とシュクの塩辛が飛び出した時には、傍人の嘲(あざ)笑いと共に弁当の主が顔を赤らめるのを見た事が度々ある」と1938年の随筆「豆腐の礼讃」に書いている。嘲笑の的となった豆腐とスクガラスを名コンビに仕立てた“食通男爵”の着想に驚く
▼沖縄の夏の風物詩ともいえるスク漁は、旧歴の6月1日前後の大潮に最盛期を迎える。豆腐の上にちょこっと並ぶ数匹のスクを眺めながら、海岸に押し寄せるスクの大群に思いをはせる。

(7/12 9:36)


【東京新聞・社説】

年金、政治とカネ、憲法… 参院選きょう公示

2007年7月12日

 参院選がきょう公示される。発足十カ月になる安倍政権に評価が下る。年金、政治とカネ、憲法、税と、争点は明確だ。与野党逆転はあるか。熱い戦いを期待する。

 今回の参院選ほど、多くの政策課題で争点がはっきりしているのは珍しい。十一日の日本記者クラブ主催の党首討論会でも、争点が次々と浮かび上がった。

 二十九日の投票日へ、さらに論点を詰める選挙戦を望む。有権者は分かりやすい選択肢を求めている。

 政権の信頼が問われる

 党首討論でもそうだったが、争点の一番は年金問題だ。

 安倍晋三首相は“消えた年金”について「打てる手段、打てる政策をすべて出している」と、対策に万全を期していることを強調した。

 公明党の太田昭宏代表は「必ず全額受け取れるようにしたい」と、与党の立場から首相を後押しした。

 いずれも年金不信を払拭(ふっしょく)しようとしている。政府・与党は数年前に年金問題で「百年安心」を唱えて、当時導入した制度に胸を張った。

 しかし、その制度のもとでいま、国民の不安と怒りが燃えさかる。

 該当者が不明の五千万件の納付記録、入力されずに放置された千四百万件余の記録…。

 消えた記録はもっとあるのではないか。そうなれば、もう年金制度は信じられない。有権者の多くが、まだ隠された情報があるのではないかと疑っている。首相はこれにしっかり答えねばならない。

 民主党の小沢一郎代表は「自称『百年安心の年金』か、抜本改革かだ」と訴えている。

 だが、民主党の提唱する全額税方式の最低保障年金も、今の消費税率を維持したままで、財源が足りるのか疑問がつきまとう。

 安倍政権の「百年安心」年金を信じるのか、小沢民主党の年金改革に乗るのか。有権者が判断するにはまだ材料が足りない。双方とも議論を掘り下げ、分かりやすく有権者に伝える努力をすべきだ。

 いまだに説明がない

 年金制度と消費税問題は切り離せない。その税制について首相は「秋に議論する」の一点張りだ。首相は「消費税を上げないとは、言っていない」と述べたり、そのときにならなければ分からないような言い方をしている。野党が明確な発言を求めるのも、もっともなことだ。

 「政治とカネ」問題の対立軸は実に分かりやすい。

 赤城徳彦農相の事務所費問題。領収書をつけて内訳を公表するかどうか。党首討論でも野党が公表を迫ったのに対し、首相と公明党の太田氏は必要ないとの認識を示している。

 昨年暮れの佐田玄一郎前行革相の不正経理問題を皮切りに、自殺した松岡利勝前農相の「何とか還元水」問題など閣僚による「政治とカネ」をめぐる騒ぎが続いてきた。

 その都度、首相は問題の閣僚をかばい、彼らはいまだに説明責任を果たしていない。

 こうした政権のありようを是とするか非とするか、これも選挙戦の大事な争点である。

 参院議員の任期は六年ある。先の国会で国民投票法が成立した。安倍自民党は、二〇一〇年の改憲発議を目指す政権公約を明らかにしている。首相の狙い通りに進めば、この選挙で選ばれる人たちが、改憲作業に手を染めることになる。

 党首討論でも各党の違いがそれなりに示された。改憲に意欲を見せる首相に、小沢氏は「緊急の必要性はない」と述べた。

 共産党の志位和夫委員長と社民党の福島瑞穂党首は改憲阻止。これを選挙戦で訴えていくと宣言した。公明党の太田氏は九条第一、二項の維持を訴えた。

 改憲の動きが具体化するにつれ、九条護持論も盛り上がりを見せている。参院選の候補者たちは九条を変えるか変えないか、なぜそうすべきなのか、を語るべきだ。首相は海外での武力行使を認めるのかと問われて、返答を留保している。これではいけない。

 参院選は衆院選と違って、与野党が逆転しても直ちに政権交代にはつながらない。有識者らからなる「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)は参院選を「政権審判の選挙」と位置づけて、安倍政権の政策や実績に有権者が点数をつけるよう提言している。

 「戦後レジーム(体制)からの脱却」を繰り返す首相は、教育基本法改正、防衛庁の省昇格、役人の天下り規制などを、そのシンボルに掲げている。

 有権者の力量も試される

 この選挙では、その路線自体に、有権者が是非の答えを出すことになる。これまで示された「目次」だけでなく、具体的な政策の中身が選択のポイントとなる。

 首相は「約束したことは必ず実行していく」と言っている。その約束は信頼に足るか。与野党逆転を訴える野党もまた、実のある政策を提起しているか。じっくり聞いて、見極める力量を有権者も備えたい。

 暮らしにかかわる大事な選挙である。有権者の力量も試される。

【東京新聞・筆洗】2007年7月12日

 ♪アイ レフト マイ ハート…日本では「思い出のサンフランシスコ」の名で知られるトニー・ベネットの名曲が流れる中、球場を後に家路についた米国の野球ファンも、ゲームを堪能したことだろう▼衛星中継で見守った日本の野球ファンも、ア・リーグの抑えのエース二人をとらえて1点差、2アウト満塁まで詰め寄ったナ・リーグの最終回の猛攻に、イチロー選手のMVPがふいになるのではと、最後までハラハラドキドキだった▼ことしはケガによる辞退もなく、今が旬の両リーグの名選手が勢ぞろいした真剣勝負だった。その中で、七十八回の球宴史上初めて、自身でも初のランニング本塁打をしてのけるのだから、イチローの強運にはあらためて脱帽だ▼球場で見るプレーで一番美しいのは三塁打だ。ダイヤモンドを駆け抜ける走者と、外野からの返球、連係プレーが塁上で交錯する緊迫感は、野球の醍醐味(だいごみ)だ。それを超えるのがランニング本塁打▼五回の第三打席、最初フェンスを越えたと見てゆっくり一塁を回ったイチロー。右翼のグリフィーが、フェンスでクッションしたボール処理を誤ると見るや、二塁から三塁へ、ぐんぐん加速する。グリフィーはその前にA・ロドリゲスを好返球で刺している。固唾(かたず)をのんだが、イチローは悠々セーフだ▼七回を3者凡退に抑えた斎藤隆投手の救援ぶりも見事だった。岡島秀樹投手はあいにくブルペンだけで、出番はなかったが、これだけのゲームに参加できた喜びは代え難い。よき思い出を胸に“霧の街”を後にできたろう。


【河北新報・社説】

’07参院選を問う 政権選択/退路を断って戦うべきだ

 「参院選は中間選挙みたいなもの。政権をかけてやるものではない」(森喜朗元首相)という議論は形式論ではその通りだが、実態的には正しくない。

 与党の議席過半数維持が最大の焦点である今回の参院選に有権者が注目するのは、形式や建前の政治にではなく、実態としての政治に関心を抱くからだ。

 与党が年金記録不備問題などで逆風にさらされ、参院選で大敗を喫することになれば、衆院で3分の2以上の議席を占めていても政権運営に行き詰まる。

 野党の勢いに追い込まれて衆院が解散され、その総選挙でも負ければ政権の交代である。

 参院選敗北を受けて自民党内閣が総辞職した1989年や98年の政変を引き合いに出すまでもなく、今回の参院選は政権がかかる選挙だ。安倍晋三首相、小沢一郎民主党代表ら各党首はそう思っているに違いない。

 与党の目標は言うまでもなく自民・公明両党が非改選議席を合わせて過半数を維持することだ。衆院の巨大与党議席という小泉純一郎前政権の遺産の上に参院での与党過半数という実績を重ねれば、政治は安定する。

 政治の安定は、安倍内閣が「戦後レジームからの脱却」の象徴とする憲法改正に向けて大きな布石となる。「戦後最長」とうたう景気の拡大をさらに上向かせ、経済の「上げ潮路線」を結実させるために不可欠の要素だとの思いも強いだろう。

 与党が過半数を維持するためには64の改選議席が要る。公明が13の改選数を守ると仮定すれば、自民は51。自民党が仮に98年敗北時の44議席を下回れば、政局が一気に流動化するのは間違いない。

 民主党の目標は与党目標の裏表で、与党の過半数割れは野党の過半数獲得を意味する。その中で小沢代表が民主の目標を55に引き上げたのは、同党の参院議長を誕生させるためだ。

 参院で野党の攻勢を続けたまま衆院解散に追い込み、衆院でも野党が勝利して政権交代につなげるのが基本戦略だろう。

 ただ小沢氏は6月末、与党過半数割れの場合に「政権の枠組みをどうするか―という問題が出てくる」と発言し、与党を巻き込んだ政界再編の可能性を示唆して党内に波紋を広げた。

 小沢氏らしい現実論と言えるかもしれないが、これでは有権者に分かりにくい。やはり民主党を中心とした反自公野党政権という政権選択の明確な対立軸を示しておく必要があろう。

 参院選で野党の合計議席が過半数に達した場合、共産、社民の両党は来るべき野党連合政権を視野に入れ、民主党とどんな距離を取るのかが注目される。

 共産、社民はこの選挙で自民、民主両党の対決にうずもれないよう、独自色を発揮できるだけの党勢を獲得しなければならないが、そうした党の主体性と民主党との連携とのバランスをどのように保つのか。それは党の将来にもかかわる。

 参院選で与野党勢力が接近すれば、与野党両方の顔を持つ国民新党は間違いなく政権選択のキャスチングボートを握る。この党からも目を離せまい。
2007年07月12日木曜日

【河北新報・河北春秋】

 外国からの批判には居丈高に反論するのが常の中国にしては珍しい。政府機関の5部門の担当者がそろって会見し「中国は発展途上で食品安全の基礎は相当弱い」などと釈明した▼国際的なブーイングに抗しきれなくなったのだろう。パナマで死者を出した風邪薬、毒入りの歯磨き、ペットフード、おもちゃ、農薬まみれの野菜。中国製食品や薬品への反感は強まるばかり

 ▼ 厚労省の「輸入食品監視業務ホームページ」を開いてみる。検疫所が摘発し、廃棄や積み戻しを命じた事例が全部載っている。閲覧が嫌になるほどの量だ。圧倒的に多いのが中国産▼今月の違反事例は、冷凍エビフライ、ウナギのかば焼き、健康食品の冬虫夏草、落花生、イカ団子、冷凍焼きそば、赤貝、ハトムギ、ニンニクの茎。いずれも基準値以上の大腸菌や農薬が検出された

 ▼全量検査でない検疫でこれだけの違反例だ。現実には相当多数の汚染食品が流通している可能性があるだろう。さすがに中国も危機感からか、41の業者を昨日までに輸出禁止処分にした▼京大名誉教授の農学者渡部忠世さんが近著『百年の食』(小学館)で言うには「できるだけ目の届く所で育ち、収穫されたものを食糧にするのが自然の摂理だ」。とりあえず日本人がわが身の健康を守るには、これに限る。

2007年07月12日木曜日


【京都新聞・社説】

参院選公示  安倍政権の実績を問う

 安倍晋三政権の実績を問う初の本格的選挙となる。
 参院選が公示され、二十九日の投票に向けて各党の総力戦が始まった。
 最大の焦点は与野党のどちらが参院の過半数を取れるかである。衆院選のような政権選択選挙ではないというものの、結果次第で政局に発展しかねない。
 現在は安倍首相自ら「厳しい選挙」という情勢だ。年金記録不備問題や事務所費など「政治とカネ」、相次ぐ閣僚辞任など逆風にさらされている。内閣支持率は危険水域に低下したままだ。
 初の戦後生まれの首相として憲法や教育基本法の改正など「戦後レジーム(体制)からの脱却」を政権目標にして発足したが、年金や格差など国民生活に直結した政策課題でつまずき、閣僚の不祥事で足元をすくわれた形である。
 「選挙の顔」として自民党内の期待を集めて誕生しただけに、今回の参院選は安倍政権の求心力を維持できるか、最初で最大の関門だ。民主党の小沢一郎代表は野党が過半数をとれなければ政界から引退を表明している。有権者の審判の重さは衆院選並みといえよう。

 政策論争を見極めて
 長年にわたるずさんな年金記録問題が最大の争点になるのは間違いない。野党の追及に政府、与党は対策になりふり構わず、防戦に躍起である。
 年金など民主党の公約を財源の裏付けがないと批判、返す刀で政権党の実行力をアピールする戦術だ。大いに結構、具体的な政策論争を展開してほしい。
 年金問題に対する国民の関心の高さは将来に対する不安の裏返しである。医療・介護など安心できる社会保障制度を確立するための設計図を各党で競ってもらいたい。その際に消費税を含む財源問題を避けるのは無責任だ。
 身近な問題は大切だが、憲法や安全保障問題から目をそらせてはならない。憲法改正手続きを定めた国民投票法が成立して改憲が視野に入ってきた。日米同盟やアジア外交の在り方は国と国民の安全に直結する。冷静に判断したい。
 行財政改革と地方分権は一体的な問題であり、国民生活のありようにかかわってくる。少子高齢化時代に入り、効率的でむだのない行政システムに変えることは喫緊の課題だ。教育や雇用・労働、経済政策、環境対策など争点は多く、じっくりと政策を見極めたい。

 過半数のせめぎ合い
 勝敗ラインは参院の過半数百二十二を超えるかどうかである。非改選議席が与党五十八、野党六十三あり、それぞれ六十四議席と五十九議席が目標だ。実際には選挙後の駆け引きが予想され流動的だが、選挙戦の大きな目安となる。
 与党は衆院で絶対的な勢力を保有しているが、参院で与野党の勢力が逆転すれば政府の予算案や法案の成立がおぼつかなくなる。そうなれば国会運営に行き詰まって衆院の解散総選挙に追い込まれる事態も想定されるのだ。これが政権交代へのステップとなる。小沢代表はこの一点に政治生命をかけた。
 今回改選されるのは六年前の小泉ブームのさなかで当選した議員たちだ。当時と政治環境が大きく変化しており、各党・各候補の死力を尽くしたせめぎ合いが続く。結果によっては安倍首相の退陣や小沢代表の政界引退、民主党の混乱など政界再編絡みの激変もあり得る。
 決めるのはすべて有権者の一票だ。最近の投票率は低下しているが、今回は関心が高い。夏休みに入って余暇予定もあろうが、使い勝手のよくなった期日前投票制度をぜひ利用するべきだ。民主主義の権利を放棄してはなるまい。

[京都新聞 2007年07月12日掲載]

買収防衛策発動  日本的経営の良さ磨け

 ブルドックソースが国内初の買収防衛策を発動した。対抗する米系投資ファンド「スティール・パートナーズ・ジャパン」は最高裁に抗告したが、勝ち目は薄かろう。
 株式公開買い付けをめぐる攻防は、ブルドック側の防衛成功で決着する見通しだ。
 とはいえ代償も大きい。防衛策はスティール以外の全株主に対して一株あたり三個の新株予約権を割り当てる。スティールは議決権比率が激減するかわりに約二十三億円を受け取る。
 弁護士費用なども加えれば、会社側の負担は約三十億円と、年間純利益の六倍近くに膨れあがる可能性がある。事前の買収防衛策導入を怠った経営側の責任を問う声が株主から上がるのは当然だ。経営側は、株主総会で表明した今後の経営戦略で成果をあげなければならない。
 一方でスティール側の打撃も大きい。株主総会で、会社提案の防衛策が88%もの高率で承認されたのは、スティールの姿勢が不信を呼んだせいだろう。
 司法の場では、東京高裁がスティールを「乱用的買収者」と認定した。「短中期的に株をブルドック自身や第三者に転売し…資産処分まで視野に入れて自らの利益のみを追求している」とまで指弾されたスティールが今後、市場の信頼を回復する道は険しい。
 ことしの株主総会シーズンを振り返れば、スティール以外でも、短期的に大幅な株主還元を求めるファンド側の提案はほとんどが退けられている。
 従来の日本的経営の特徴は、中長期的な企業利益を優先することだといわれてきた。雇用確保なども含め、安定成長を求める意向が株主側にも強かった。
 今回の防衛策発動をめぐる攻防は、こうした”日本型資本主義“への信頼が、なお根強い証しともいえよう。だがそれも企業の努力次第だ。
 ファンドと経営側の緊張関係は今後も続く。問われるのは、企業価値を高める方向で競合しあえるかだろう。企業体質を強め、株主の信頼に応えることだ。

[京都新聞 2007年07月12日掲載]

【京都新聞・凡語】

裁判員制度開始間近

 大手企業では特別休暇を創設するなど、備え始めたところもあるという。裁判員制度開始が間近に迫る。態勢は整ってきたとはいえ、最近の司法の動きには、少なからず不安がよぎる▼衝撃を受けたのは死刑が確定した「袴田事件」の一審を担当した元裁判官の述懐だ。「当時から無罪の心証があった」と、再審開始を求める上申書を最高裁に提出した▼静岡県で一家四人が殺害された事件は、自白調書四十五通のうち採用されたのは一通だけ。被告は公判で一貫して無罪を主張した。死刑判決を書いた元裁判官本人が、三十九年たって「良心の呵責(かしゃく)に耐えきれず…」とは。刑事裁判への信頼がそがれる出来事だった▼新司法試験の考査委員を務める法科大学院教授が、実際の試験問題と類似した問題を学生に教えた事件も見逃せない。一つ間違えば、違法な手法で裁判官や弁護士が誕生した可能性があった▼光市母子殺害事件の差し戻し控訴審にも驚いた。被告の荒唐無稽(むけい)ともいえる陳述変化。死刑判決阻止を狙う弁護団の作戦だとしても、あんな審理に臨む裁判員の心労は計り知れない▼冤罪(えんざい)が明らかになった富山の女性暴行事件や、鹿児島の選挙違反事件。一歩も進まぬ警察取り調べの可視化。死刑判決も出すのが裁判員制度だ。「国民の義務だから」と言われても、足がすくむ。条件整備に、もっと時間をかけたい。

[京都新聞 2007年07月12日掲載]


【朝日・社説】2007年07月12日(木曜日)付

参院選公示―「安倍政治」への審判だ

 きょう、参院選挙が公示される。昨年9月に就任した安倍首相にとって、初めて迎える大型国政選挙である。

 9カ月ほど前、自民党総裁選で大勝したころは、これほど厳しい逆風の下で初の審判を受けることになろうとは、予想もしなかっただろう。

 「宙に浮いたり、消えたり」の年金不信、閣僚に相次いで発覚した「政治とカネ」のスキャンダル、無神経な失言の連発。いわば「逆風3点セット」にきりきり舞いの状態が続くなかで、選挙戦に突入することになった。

 首相にとって、この選挙は小泉前首相の時代とは違う「安倍カラー」を前面に掲げ、有権者に問う場になるはずだった。そのためにこそ、国民投票法など対決色の強い法律を、採決強行を連発しながらどんどん通していった。

 教育再生や集団的自衛権の解釈などでいくつもの有識者会議をつくり、提言を急がせたりもしている。

 首相はテレビ局などを行脚して「この9カ月の実績を評価してほしい」と訴えている。だが、逆風3点セットに直撃され、「年金記録信任選挙」(民主党の小沢代表)の様相を呈しているのはさぞかし不本意なことだろう。

 むろん、年金の問題はこの選挙の大きな争点だ。国民の不信や怒りにどう応え、安心できる制度、組織をつくるかを論じる必要がある。

 だが同時に、この9カ月に安倍政治がやったこと、やらなかったことを、その手法も含めて有権者がしっかりと評価するのが、この選挙の重要な目的であることを忘れてはならない。

 小沢民主党にとっても、この参院選がもつ意味は極めて重い。2年前の郵政総選挙での屈辱的な大敗を帳消しにする絶好のチャンスだからだ。

 かりに参院で野党が過半数を押さえれば、政府・与党の法案を否決したり、審議の進め方を決めたりできる。いくら衆院で与党が多数を占めていても、与党主導の政治運営はできなくなる。

 参院選の結果で、すぐに自民党から民主党へ政権が移ることはないけれど、衆院解散・総選挙に追い込めれば、政権交代の大きな足がかりになりうる。政界再編という別の展開もあるかもしれない。

 小沢氏が「ここで負ければ政界引退」と退路を断ってみせたのも、長年追い求めてきた政権交代可能な二大政党制への天王山と思えばこそだろう。

 年金をはじめ、赤城農水相の事務所経費で再燃した「政治とカネ」の問題などの3点セットは、どれも大事なテーマである。公明や共産、社民も含め、論戦に注目しよう。そして、これからの日本の政治のあり方をめぐって重要な選択が問われていることを心にとめておこう。

 安倍政治がめざす「戦後レジームからの脱却」か、小沢民主党がめざす政権交代可能な二大政党制か――。投票日までの18日間、しっかりと目を凝らしたい。

モスク制圧―力ずくでは危うい

 礼拝の場であるモスクに学生が陣取り、軍が武力で制圧する。パキスタンの立てこもり事件は悲惨な結末を迎えた。双方で約60人の死者が出ている。

 首都イスラマバードの中心部にあるモスクには寄宿制の神学校が併設されており、数千人の学生が学んでいる。その宗教施設がいつの間にかイスラム過激派の拠点になってしまった。

 欧米の映画や音楽ソフトを売り物にする店に押しかけて商品を持ち去る。「いかがわしい商売をしている」と、中国人を拉致する。一部の学生は、そんな宗教警察まがいの活動までしていた。

 パキスタンはイスラムの国だが、国民の多くは穏健で世俗的だ。ムシャラフ政権が過激派の摘発に乗り出したのは、「国民の理解と支持が得られる」と判断してのことだろう。

 9・11テロを機に、パキスタンはアフガニスタンのタリバーン政権への支援を打ち切り、米国の「テロとの戦い」に協力する方針に転じた。首都で過激派が我が物顔にふるまうのを許せなかったのは当然だ。

 問題は、その対処の仕方である。

 今月初めに学生たちが立てこもりを始めた直後、当局は宗教施設への電気や水道の供給を止めた。兵糧攻めにしながら、じっくりと時間をかけて説得する余地もあったのではないか。

 ところが、わずか7日で陸軍部隊を突入させ、力でねじ伏せた。砲撃まで加え、モスクには白煙が上がった。

 その映像は国内だけでなく、イスラム圏に広く流れた。信仰のよりどころへの攻撃が人々にどう受け止められるのか、もっと慎重に考えるべきだった。

 いまパキスタンでは「テロとの戦い」の名目で、逮捕状もないまま身柄を拘束され、行方不明になるケースが相次いでいる。心配する家族の要請で最高裁長官が調査を始めると、ムシャラフ大統領は長官を停職処分にした。

 この一件で大統領への批判が噴き出した。5月には大統領支持派と反対派が衝突し、多数が死亡する事件が起きた。力ずくの対応が政権への信認を掘り崩し、過激派につけいるすきを与えている。

 貧しい子どもたちが無料の神学校に行かなくても公立学校で学べるような環境を整える。腐敗を許さない社会を築く。そんな地道な努力を重ねることで、過激派を孤立させる必要がある。

 軍事クーデターから8年。ムシャラフ大統領は陸軍参謀長を兼ね、権力を一手に握り続けている。そのことへの批判もますます強まっている。

 年内には、民政移管へ向けて大統領選挙と総選挙が予定されている。このままではムシャラフ氏の続投は危うい。

 もしパキスタンの政情が不安定になれば、隣のアフガニスタンや中央アジアの国々にまでその影響が及ぶ。

 国際社会が結束してテロと戦うことが、いよいよ難しくなる。

【朝日・天声人語】2007年07月12日(木曜日)付

 漫画家の東海林さだおさんがテレビの料理番組に身もだえする様子を書いている。画面にはチャーハンを作るフライパンの大写し。右上あたりのご飯と具が混ざっていないのに、先生は「そろそろいいですね」。思わず「頼む、頼むからそこんとこ混ぜてくれ」(『東京ブチブチ日記』文春文庫)。

 目の前の不条理に手を出せない。同じもどかしさを、間接民主主義に感じることがある。国会審議や党首討論を見ながら身もだえした経験はなかろうか。「そこんとこ、まだ生煮えだぞ」と。

 参院選が公示される。いよいよテレビの前のあなたが、画面のチャーハンに木じゃくしを突っ込む時である。有権者の思いが重なれば、国政の味つけや盛りつけは違うものになる。

 一票では変わらないと斜に構える御仁がいるが、棄権の零票ではなお変わらない。年金も格差も税金も、これから数年の政治決断はその先の暮らしにはね返る。だから、若い人には重い一票になる。自身に痛みの波が及んだ時、あの日は海で遊んでいたと悔やんでも遅い。

 先の国会では、安倍首相の執念で重要法案が次々と成立した。それを可能にした与野党の勢力図はしかし、前首相が「郵政選挙」で遺(のこ)したものだ。この間、ずっと軽んじられた第二院の選挙ではあるが、そんな政治の姿と現首相への評価を下す好機となる。

 平凡な民主国家に生きる幸せをかみしめたい。寝ていれば、誰にも間違いなく投票日はやって来る。安倍さんに期待する人も、失望した人も、木じゃくしを握りしめて待とう。


【毎日・社説】

社説:パキスタン 「核保有国」の不安定化が心配だ

 新たな流血や政変の引き金にならないか--。そんな心配が先に立つ強行突入だった。パキスタンの治安部隊が首都イスラマバードの宗教施設に突入し、ろう城していたイスラム神学生を中心に多数の死者が出た。警告を重ねての突入とはいえ、宗教施設内での流血と宗教指導者の死亡を受けて、反政府運動が勢いづくことは避けられまい。

 この施設には、モスクや神学校などがあり、国際テロ組織アルカイダやアフガニスタンの原理主義組織タリバンに関係する神学生もいたという。神学生らは厳格なイスラム法に基づく「世直し運動」を展開する一方で、売春に関与したとして複数の女性を拉致するなど、違法行為も重ねた。

 まるで「国の中の国」のように振る舞い、国際テロへの関与も疑われる宗教施設に対して、ムシャラフ政権が強い態度で臨んだのも分からないではない。だが、武装神学生の「人質」または「人間の盾」となった人もいたという。これらの人々を巻き込まないよう最善の努力をしたのかどうか、政権側に疑問を呈しておきたい。

 強行突入の背景には、隣国アフガンや対テロ戦争を続ける米国の圧力もあっただろう。アフガンでは01年からの米軍の攻撃でタリバン政権が崩壊したが、その後タリバンが再結集し、親米カルザイ政権を揺さぶっている。アフガンや米国は、なぜもっとタリバンなどを取り締まらないのかとパキスタンへの不満を募らせていた。

 だが、パキスタンはもともとイスラム色の強い国だ。ソ連のアフガン侵攻(79年)の際は、イスラム勢力の拠点となった。米国もイスラム勢力への武器供給などを通じてソ連軍との戦いを間接支援した。そのイスラム勢力の中から台頭したタリバンは、パキスタンとの関係が深い。いかに米国などが過激派の取り締まり強化を求めても、ムシャラフ政権がおいそれと応じにくい状況もある。

 懸念されるのは、反政府運動の激化により政情がさらに不安定化することだ。事実上の核保有国であるパキスタンの政情不安は、国際社会に大きな影響を与えずにはいない。ムシャラフ氏自身、99年のクーデターで政権を握った。その際、米国などはパキスタンの核兵器の動向を思って肝を冷やした。仮にムシャラフ政権が崩壊の危機に直面すれば、核をめぐる8年前の懸念が再燃するだろう。

 パキスタンの神学校やモスクは、英国のテロ事件との関連も指摘された。神学校などのあり方を問い直すのは当然だが、大統領の強権的な手法がイスラム勢力の怒りを買ってきたことも忘れてはならない。たとえば、軍参謀長職と大統領職を兼任するムシャラフ氏への批判は今年5月、カラチでの大規模な流血事件に発展した。

 近く行われるはずの総選挙で与党陣営を勝利に導き、再び大統領職に就くのがムシャラフ氏の目標だろう。だが、権力を頼んでの強硬策には限界がある。国を安定させるには、穏健イスラム勢力を取り込んだ幅広い連携が必要だ。

毎日新聞 2007年7月12日 東京朝刊

社説:’07参院選 きょう公示 針路を決めるのは有権者だ

 参院選が12日公示される。安倍政権発足後初めて全国の有権者の審判を仰ぐ国政選挙。非改選議席を合わせて与党が過半数を維持できるかどうかが焦点だ。5年余続いた小泉政権後の日本の針路を定める選挙でもある。

 公示に先立って11日には自民、民主、公明、共産、社民、国民新党、新党日本各党の党首による討論会が開かれた。年金問題や政治とカネ、憲法改正、消費税率の引き上げ、教育改革、格差問題、地方分権……。討論会では参院選の争点がほぼ出そろったと言っていいだろう。

 ところが、肝心なところであいまいな発言が多く、これではまだ判断ができないと感じた有権者も多いのではなかろうか。

 最も多弁だったのは安倍晋三首相だ。年金記録漏れ問題に加え、赤城徳彦農相の不明朗な事務所経費問題も浮上し、逆風にさらされる中で迎える参院選。首相はともかく昨秋の就任以来の実績をこと細かにアピールするほかないと思っているのだろう。

 しかし、年金記録漏れ問題では「どうして今年2月の時点で民主党が指摘していたのに、事の重大性に気づかなかったか」という小沢一郎民主党代表の質問に明確な答えはなかった。赤城農相の問題も国民の多くは「なぜ、領収書を示してきちんと説明しないのか」と疑問を抱いているのに、これも話をはぐらかすだけだった。

 憲法改正に関しては「合意を重視する」などと強調し、むしろトーンダウンした印象だ。自民党は参院選公約のトップに2010年の国会で改憲案の発議を目指すと記している。改憲は「安倍政治」の中核でもあろう。やはり、首相自身が例えば9条をどうしたいのか、もう少し具体的に語らないと有権者は戸惑う。

 小沢氏は民主党の年金改革案について従来以上に具体的な説明を試みたが、与党側からは財源があいまいだとの指摘が相次いだ。公約の実現性が問われる時代だ。民主党は改めてきちんと整理して説明すべきだろう。

 また、小沢氏は今、改憲の緊急性を感じないと語った。だが、党の公約には憲法改正問題がほとんど触れられていないのは「憲法問題は民主党内がまとまらないからではないか」と見ている有権者も多い。少なくともなぜ改憲を急ぐ必要がないのか、今後、丁寧に説明してほしい。

 イメージだけでなく、政策を重視する有権者は確実に増えている。毎日新聞では今回の参院選で、インターネットを通じて有権者自身の考えと各政党候補者の主張が比較できる「毎日ボートマッチ(えらぼーと)」を始めた。各党や各候補の政策をよりくわしく知る一助になればと考えている。

 投票日は29日。各党の論争が深まるのを期待すると同時に、有権者もじっくり政策を比較して投票しよう。そんなマニフェスト型選挙を定着させる参院選としたい。

毎日新聞 2007年7月12日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:日本初の選挙は、天平3(731)年…

 日本初の選挙は、天平3(731)年、諸役所の官吏約400人が藤原宇合(ふじわらのうまかい)ら参議6人を選んで推挙した出来事といわれる。ただ、それが投票によるものかどうかは分からない。これを機に、有能な者を任命して国政に参与させる「参議」という官職が生まれた▲明治維新でも参議という官職は一時復活するが、戦後の憲法制定で2院制議会の一方を「参議院」と名づけるには議論もあった。「公議院」「特議院」などの案も検討され、国会審議では「参議」という言葉が古めかしく封建的という批判も出る▲だが「それは、つまり古くから尊重された良い言葉の印かもしれませぬ」と応じたのは当時の金森徳次郎国務相だ。そして「大体、知恵を出して……議会の働きを達成しようというものにはこういう言葉がよろしいのではないか」と答えている▲ならば参議院は、古くから尊重された参議の語感通りに有能な賢者の府として役割を果たせているだろうか。扇千景議長が退任あいさつで「参議院らしくないこともあった」と語ったのは、まともな審議抜きで法案成立マシンのようになった会期末の参院の姿を思い浮かべてのことだろう▲常にその存在意義が問われる宿命の参議院も創設60周年、迎えて21回目の選挙の公示である。安倍内閣には初の本格的な国政選挙だが、年金記録漏れや政治とカネをめぐる大逆風の中での審判となった。いきおい結果次第で政権存続の可否はおろか、政界再編をうんぬんする声も出る▲天平の参議選挙は、藤原氏の権力伸長を示す歴史的人事をもたらした。この参議院選挙が歴史に何をもたらすかは、これから有権者が決める。「参議」院にふさわしい賢者は、17日間の政策論争をじっくり聞いて見極めればいい。

毎日新聞 2007年7月12日 東京朝刊


【読売・社説】

党首討論会 やっと年金制度論に踏み込んだ(7月12日付・読売社説)

 年金改革をはじめ、主要な争点をめぐる政策論争をもっと掘り下げねばなるまい。

 参院選の公示前日、主要7党首による、日本記者クラブ主催の討論会が開かれた。

 年金問題をめぐる論戦は、年金記録漏れの責任論と当面の解決策に終始してきた。党首討論でも、参院選を「年金信任選挙」と位置づける民主党の小沢代表と安倍首相が同様の応酬を繰り返した。

 だが、安倍首相は「打てる手段、政策はすべて打った」と言明した。野党も、政府の対策自体には、大きな異論を示さなかった。もう年金記録漏れ対策で争う段階ではない、ということだろう。

 むしろ論議すべきは、国民生活の安心と安定のための年金制度改革だ。

 小沢代表は、「制度の問題に取り組むべきだ」と提起し、安倍首相や公明党の太田代表も応じた。これは前進である。有権者が望むのも、そうした論戦だ。

 論戦の中心は、財源論だ。

 小沢代表は、改めて消費税率を据え置き、消費税全額13・3兆円を基礎年金に充てる構想を表明した。

 これについて、小沢代表は、年収1200万円超の人には、所得比例の2階建て部分だけで現行の給付水準23万円並みになるとして、基礎年金部分の給付はしない、とする所得制限を設ける考えを示した。消費税の税収のすべてを基礎年金に充てても、財源が不足するとの見方があるからだ。

 これに対し、安倍首相や太田代表は、民主党の構想を実現するには、所得制限を年金受給者の4割にまで広げる必要があり、問題がある、と指摘した。

 こうした問題については、経済成長の動向、少子高齢化の進行、巨額の長期債務など多様な問題に目配りしつつ、消費税率引き上げを含め、税・財政の議論に踏み込む必要がある。しかし、まだまだ論議は、十分とは言えない。

 憲法について、安倍首相は憲法改正発議に必要な国会議員3分の2の勢力形成に全力をあげる、と表明した。

 疑問なのは、小沢代表の発言だ。「世の中の状況が変化してこう変えた方がよい、と言うなら改正すればよい」とする一方で、「60年間、このままで来ている」から、「参院選で憲法問題を掲げる緊急の必要性はない」と語った。

 だが、憲法改正が現実の課題となっているのは、「世の中の状況」が大きく変化しているからこそではないか。

 年金制度や税・財政、憲法は無論、外交・安全保障、教育、経済などの重要な論点がある。これらについても、政策論戦を深めてもらいたい。
(2007年7月12日1時44分  読売新聞)

改正DV法 配偶者暴力防止に細かな施策を(7月12日付・読売社説)

 配偶者による家庭内暴力(ドメスティック・バイオレンス=DV)が後を絶たない。

 2001年に施行されたDV防止法の保護命令制度を拡充した改正法が、先の通常国会で成立した。来年1月から施行される。

 法改正をテコに、今後、国や地方自治体は、DV対策をより一層充実させていく必要がある。

 加害者に発せられる保護命令には、被害者や子供に6か月間近づくことを禁止する接近禁止命令と、自宅から2か月間立ち退かせる退去命令がある。

 DV防止法に基づいて全国各地に設置された配偶者暴力相談支援センターに寄せられる相談は、年々増え続け、昨年度は過去最高の5万8528件に上った。99%が女性からの相談だ。

 昨年1年間に出された保護命令は2208件で、これも年々増えている。

 保護命令が出されるのは、被害者が直接暴力を受けた場合に限られていたが、今回の改正で、生命や身体に対する脅迫についても、対象に加えられた。

 接近禁止命令が出された場合、被害者が申し立てをすれば、加害者が電話をかけたり、ファクス、電子メールを送信したりすることも制限される。

 加害者が被害者の親族や支援者などに近づくことも禁止出来るようになる。

 被害者の切実な声に配慮した内容だ。遅きに失した感もあるが、一歩前進と言えるだろう。

 夫が妻を殺害する殺人事件も、年間に約120件起きている。昨年12月には、徳島県でDV防止法の接近禁止命令を受けていた男が、別居中の妻を刺殺する事件が起きた。命令を申し立てた妻を恨んで、調査会社を使って妻の住居を割り出していた。

 警察と配偶者暴力相談支援センターが密接に連携し、加害者、被害者双方の状況を把握して行く必要がある。

 内閣府の調査によると、DV被害者の54%が「相手と離れて生活をするために必要なお金がない」と答えている。

 被害者の自立支援も重要な課題だ。

 政府は、DV被害者の就職や転居を支援するため、身元保証人を確保する新制度を近く発足させる。女性が身を寄せる施設の所長が保証人を引き受けて金銭の負担が生じた時は、国や自治体が負担する損害保険でカバーする制度だ。

 今回の法改正で、配偶者暴力相談支援センターの設置が、都道府県だけでなく市町村にも努力義務として課せられるようになった。

 国と自治体が協力して、きめ細かな施策を講じていかなければならない。
(2007年7月12日1時45分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月12日付 編集手帳

 投手の投げた球が捕手のミットに収まるまで平均0・4秒という。以前、本紙に載ったイチロー選手の談話を読み、腕時計の秒針に見入った覚えがある ◆0・4秒間に、「あっ、このまま普通に打ってもヒットにはならないぞ」と分かれば、バットのヘッドを遅らせてわざと詰まらせ、ボテボテの内野安打を狙う。頭ではなく「体が判断します」と語っている◆大リーグのオールスターゲームで、イチロー選手が球宴史上初のランニング本塁打を含む3安打を放ち、MVP(最優秀選手)に選ばれた。シーズン最多安打記録などに加え、“考える体”をもつ天才に勲章がまた一つ増えた◆打席に入るといつも、バットを正面に立て、袖を軽くつまむ。本紙の同じインタビューで理由を聞かれ、不調なときも相手投手にそれを悟らせないためだと答えている。「いつものイチロー」と思わせるには一連の動作が欠かせないと◆体の不調に限らず、強打者ゆえの期待の重圧に苦しむ場面も多かろう。心身の乱れという傷口を少しでも見せれば、相手は容赦なく塩をすり込んでくる。打席での儀式は透明な絆創膏(ばんそうこう)であるらしい◆名探偵シャーロック・ホームズは「緋色(ひいろ)の研究」のなかで語っている。「天才とは際限なく苦痛に耐えうる能力をいう」と。その人が次に驚かせてくれるのは何だろう。
(2007年7月12日1時45分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】参院選公示 国の再生に目そらすな 「年金」だけが争点なのか

 安倍晋三首相にとっては初の本格的な国政選挙となる第21回参院選が、きょう公示された。

 29日の投票日までに、安倍内閣は発足から10カ月を経過する。その間の実績を有権者がどう採点するかが、この選挙の意義の一つである。

 憲法、教育など国のあり方をめぐる改革が、ようやく軌道に乗ったばかりだが、年金記録紛失問題や赤城徳彦農水相の事務所経費問題で逆風を受け、厳しい選挙戦を強いられることが予想されている。

 日本の現況に目を向ければ、技術力、競争力、学力の低下やモラルの崩壊が指摘されるなど、多くの課題を抱えている。

 政党党首は、新たな国づくりと、その危機を突破する青写真を示すときである。有権者には、その危機認識を共有したうえで、投票行動に臨むことが求められているのではないか。

 ≪評価できる改革理念≫

 年金記録をめぐる受給者らの不安を除去することは緊急課題だが、すでに政府は各種の対応策に着手している。各党がそれに注文をつけ、さらに国民本位の対策としていくことは有効だが、それ一色で国政選挙を争うテーマになるとは到底、思えない。「年金」だけが争点ではない。

 安倍首相は政権発足直後に教育基本法を改正し、さきの国会では教育再生関連3法、憲法改正手続きを定める国民投票法の制定を主導するなど「美しい国」の理念を具体化した。

 与野党の反対を押し切って会期を延長し、公務員制度改革関連法、社会保険庁改革関連法も制定した。官僚主導の政治やあしき労使慣行にメスを入れることで「戦後レジーム(体制)」からの脱却に歩を進めたばかりだ。

 こうした改革路線は高く評価できるものであり、さらなる公務員制度改革や特殊法人改革、新たな日本年金機構の創設などに向けて、その姿勢を貫くことが重要である。

 これまでの論戦で、野党は年金記録問題で政府・与党を揺さぶり、自民党はその防戦に多くのエネルギーを費やしてきた。

 その構図にとらわれているかぎり、より重大な日本の危機への回答は見いだせないだろう。

 さきの国会では、重要法案の採決が与党単独など不正常な形で行われることが多かった。野党の反対に加え、与党内にも改革に対する有形無形の抵抗が根強いことの表れといえる。

 改革の継続には政権の強い意志とリーダーシップが必要で、それに賛同する議員、勢力の結集が前提となる。

 直接的に政権を選択する衆院選と異なり、参院選は「中間評価」であると自民党幹部らは主張する。それ自体は正しいが、劣勢を意識した中での発言は、敗北に備えて予防線を張っている印象を与えかねない。

 同じ与党の公明党が「国民の審判を得る重要な選挙で、中間選挙ではない」(太田昭宏代表)と明言しているのとは対照的である。

 首相の改革路線を継続、加速しようとするなら、選挙の定義付けなどではなく、参院過半数の維持に向けた努力を最優先にすべきではないか。

 ≪政局論は後で間に合う≫

 この選挙は、3年後から可能になる憲法改正案の発議に関与する議員を選出するものであることも忘れてはならない。

 11日の日本記者クラブでの党首討論会で憲法が取り上げられたが、安倍首相は「これから(改正の)結果を残すためには、多数派の形成が必要だ」として、個別の改正テーマについて踏み込むことはしなかった。

 核心となる9条改正は、日米同盟を堅持し、どう強化していくかを問う格好の争点となるはずだ。民主党の小沢一郎代表との論争が聞きたい。

 その民主党は選挙公約で、イラクへの自衛隊派遣を直ちに終了するとしている。米国などが多くの犠牲を払いながら、イラク再建への努力を続ける中、政権を目指すという政党が、それで外交・安全保障政策に責任を持ちえるのだろうか。

 国の再生を委ねるための選択肢が示されているかといえば、まったく不十分である。有権者も何が本質かを見極める必要がある。

(2007/07/12 05:01)

【産経抄】

 大学進学率の高まりは、みんなが勉強をしたからではない。家計が豊かになって、大学の粗製乱造が進んだからだ。少子化が進むからさらに大変になる。大学は質より量に走り、学生を熊手でかき集めなければ経営が成り立たない。

 ▼ 門戸が広がれば、軽佻(けいちょう)浮薄が拡大するのは避けられないだろう。大学入試は記憶力にたけた学生に有利にできている。「ゆとり教育」が進んで受験科目は絞られる。学生に負担をかけないというのがその理由だ。すると、数学ができないまま経済学部に入ることになる。

 ▼ここが国際基準とは違う。本紙連載の「やばいぞ日本」は、欧米の大学院に留学した若手官僚が経済学の計算式が解けずに落ちこぼれると報告していた。数学者の芳沢光雄さんは著書『数学でわかる社会のウソ』で、学力低下よりさらに深刻なのは学習意欲の低下だと語る。

 ▼ その原因は、数学を日常生活に役立たない無用の長物と軽視してきたからだという。幕末の英雄、吉田松陰は「世間のことは算盤珠(そろばんだま)をはずれたものはなし」と数学をあらゆる分野で大切にしていた。やがて、工部大学校が招いた英国人学者の指導により、工業立国の礎を築いたと芳沢さんは説いている。

 ▼どうやら数学の極意は、問題を解く「解法パターンを当てはめる」のではなく、「不思議だなと思う気持ち」と「工夫の積み重ね」にあるらしい。そこで大学設置基準を厳しくし、放逐された一般教養課程を引き戻すことが肝要だと主張している。

 ▼このままでは、ものづくり大国から転げ落ち、日本の衰退にもなりかねない。だからこそ、参院選では国をかたち作る教育と憲法を問うてほしい。記録漏れ年金、新農水相の事務所費問題ばかりが事の本質なのか。

(2007/07/12 05:00)


【日経・社説】

社説 安倍政権10カ月の審判となる参院選(7/12)

 第21回参院通常選挙が12日公示される。29日の投票日に向け年金問題、地域活性化・農業政策、政治とカネなどを争点に、参院の過半数をめぐる与野党の激しい選挙戦が展開される。昨年9月に発足した安倍晋三政権に対して有権者が初めて審判を下す極めて重要な国政選挙である。その結果次第では日本の政治に大きな地殻変動が生まれる可能性もある。

深めたい年金制度論議

 参院選では参院定数の半数である121議席(選挙区73、比例代表48)が改選される。自民、公明の与党が参院全体で引き続き過半数122議席を維持するには今回の選挙で64議席以上を確保する必要がある。与党が過半数を維持できるのか、民主党など野党が与党を過半数割れに追い込むかが選挙の最大の焦点である。

 年金の記録漏れ問題が表面化して以来、安倍内閣の支持率は急落している。加えて閣僚の問題発言や事務所費問題などが響き、自民党は苦しい戦いを迫られている。安倍首相は景気の着実な回復や、国会で教育基本法の改正、国民投票法、公務員制度改革法など数々の重要案件を成立させた実績を示しながら、参院選では「成長を実感に!」を掲げ、信頼できる年金制度の再構築、教育の再生、地域の活性化などを訴える。

 野党は自公政権によって格差が拡大し、国民生活が不安にさらされていると批判。民主党は参院選で与党を過半数割れに追い込み、次期衆院選で政権交代を実現することを目標に(1)すべての加入者に年金通帳を交付(2)1人月額2万6000円の子ども手当創設(3)農家に戸別所得補償制度の導入――を公約の柱に据えた。

 公示に先立って11日、日本記者クラブで7党の党首討論が行われた。ここでの議論の中心はやはり年金問題であった。年金の記録漏れ問題で安倍首相は民主党や共産党の主張も取り入れた網羅的な対策を打ち出しており、同日の討論でも「打つべき手はすべて打った」と強調した。年金問題の論点は記録漏れ対策から次第に制度論議に移りつつある。

 小沢一郎民主党代表は現行消費税の全額を投入して所得の比較的低い人たちを対象とした最低保障年金制度の導入を提起した。これに対して安倍首相や太田昭宏公明党代表から「財源がいい加減。最低保障年金の額や所得制限額が明示されていない。自営業者の所得捕捉はどうするのか」などの疑問が示された。

 一方、与党は基礎年金の国庫負担の比率を2009年度に2分の1まで引き上げるとしているが、そのための財源2兆5000億円をどうするかについて明示していない。安倍首相はこの日も消費税について「歳出削減や経済成長により上げなくてもいい状況にもっていきたい」と述べるにとどまり、明言を避けた。

 太田公明党代表は現行の25年間加入していなければ年金をもらえない仕組みについて加入期間の短縮も検討すべきだと提起した。国民の年金不安を解消するために与野党が制度論に踏み込んで議論することを歓迎したい。財源の裏付けを伴う責任ある年金論戦を深めてほしい。

 年金の制度論や財源論を深めていけば、日本の財政そのものをどう立て直していくかの議論に行き着く。民主党はマニフェストに盛り込まれた施策を実施するための経費を15兆3000億円とし、その財源は補助金整理や行政経費節減などで確保するとしている。一方、安倍首相も2011年度に財政の基礎的収支を均衡させるには12兆円から14兆円の歳出削減が必要と述べている。

行財政の抜本改革競え

 自民党も民主党も消費税論議を避け、もっぱら歳出削減を徹底して行うと強調している。しかし、両党のマニフェストには歳出削減の具体的な手順・道筋は明示されていない。中央省庁の再々編など説得力のある行財政改革のビジョンを提起しないと有権者の理解は得られまい。

 参院選は衆院選のような政権交代を賭けた選挙ではない。第2院の半数改選選挙であり、時の政権にとって本来は中間評価の選挙という意味合いを持つ。しかし、まだ衆院選で有権者の審判を受けていない安倍政権にとって、今回の参院選は有権者の本格的な審判を受ける最初の選挙となり、その政治的な意味合いは大きい。参院で与党が過半数割れの事態になれば政権運営や政策の方向性にも重大な影響が出てくるのは間違いない。

 参院選に与党が敗北したからといって直ちに首相の進退問題に結びつくわけではない。参院選後の国会で首相指名選挙があるわけでもない。ただ、過去には参院選の惨敗で首相が退陣したケースもあった。そうした可能性もはらんだ重要な国政選挙である参院選に主権者である国民が1人でも多く投票に参加することが望ましいのは当然である。

【日経・春秋】(7/12)

 児童文学作家の宮川ひろさんの『あて名のない手紙』(メディアパル)に「豆の花」と題したエッセーがある。麦のみどり濃くなるころ母が棒で大豆の種豆を蒔(ま)く穴を開ける。そのあとを兄と2粒ずつ種豆を置いていった。なぜ2粒なのか。

▼数年前、山形で、だだちゃ豆の生産者から「豆は2粒のほうが発芽も育ちもいい。ときには仲良く支えあい、あるときは競いあって成長してくれる」と聞いて、宮川さんは納得した。サヤの豆が膨らんでも村では枝豆で食べなかった。大豆は大事な現金収入、実って大豆になる日を待った。

▼大相撲名古屋場所は3年半ぶりに東西に横綱2人が並んだ。最近の朝青龍の品行について世の風当たりは強かった。1人横綱の重圧は大変なもので、ややもすると「唯我独尊」の世界に陥る。白鵬が国技の屋台骨を半分背負うことで朝青龍もきっと変わる。竜虎相打つの伯仲となれば、観戦の枝豆の味わいも違う。

▼2粒の種豆は土俵だけでなく、日本の政治土壌にも蒔かれている。2大政党の形が現実味を帯びてきたが、豆のサヤの中身がちゃんと詰まっているか心配だ。公示日のきょうから参院選の天下分け目の戦いが始まる。ハトやカラスにほじられて蒔き直しにならぬよう投票日までの17日間、じっくり見極め、大事に種豆を蒔きたいものだ。


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