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2007年7月13日 (金)

7月13日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月13日朝刊)

[クルーズ船運航]外国人の誘客に知恵を

 スタークルーズ社(本社・マレーシア)の定期クルーズ船が一年九カ月ぶりに台湾―沖縄航路の運航を再開した。入国手続きに時間がかかり過ぎることなどを理由に運休していた。沖縄観光のためにも再開を歓迎したい。

 沖縄を訪れる外国人客のうち約五割はクルーズ客である。入域客に占める比重はそれだけ大きい。にもかかわらず、二〇〇六年の外国人観光客は前年比32・2%減の九万二千五百人にとどまっていた。定期クルーズ船の運休が大きな理由だ。

 言うまでもないが、仲井真弘多知事が掲げる一六年の入域観光客数一千万人達成は、台湾や韓国、中国を含む近隣のアジア諸国からの観光客をいかに増やすかが重要な鍵となる。

 ただ、クルーズ客を単なる観光客として、全体の入域客数に上乗せするだけのものにしては意味がない。

 クルーズ客の場合、県内で土産品などに使う消費単価は一万九千五百六十七円だ。これは本土各地から訪れる観光客の四割程度にすぎず、沖縄に長く滞在させることでいかに出費を増やさせるかが最大の課題となる。

 そのためには、滞在期間(上陸時間)をどう延長させるか。どのような形で金を落としてもらうのか。受け入れ地としてのアイデアが必要だろう。

 運休の理由となった入国審査手続きにしても、那覇港に寄港するクルーズ船の場合、対面審査によらなければならず二時間近くかかっていた。そのため審査後に上陸しても、観光に費やせる時間は四時間半から六時間に制限されていたという。

 今回は那覇港ではなく、先に入港した石垣港で入国審査を実施。東京や那覇、宮古から入管審査官十六人が応援に駆けつけて、審査事務を短縮している。

 こうすれば最終目的地では寄港とともに下船できる。観光客にとって無駄な時間が省け、その分買い物にも時間を費やすことができるというわけだ。

 海を中心にした美しい自然や長寿と結び付いたウチナー料理の魅力は、外国人観光客も認めるところである。

 一方で、移動をスムーズにする公共交通網などのインフラ、観光スポットを紹介する通訳やガイド、両替・郵便などのポートサービスをどう整えていくか。沖縄の魅力をどう発信していくかも大きなテーマとなる。

 〇九年には那覇市若狭の旅客船専用バースが供用される。外国人客を増やすには、ハードとソフトがうまく連動した“受け皿”が必要なのであり、そのために官民がどう知恵を出していくか。具体的な取り組みが求められる。

[フジモリ氏出馬]吉と出るか凶と出るか

 「えっ、あの人が?」「やっぱり出たんだ!」「でも、なんで?」。有権者の反応は大方そんなところではないだろうか。

 ペルーのフジモリ元大統領が国民新党の参院選比例代表に立候補した。

 参院選の立候補者三百七十七人、このうち比例代表百五十九人。その中でもフジモリ氏はとびっきりの異色候補である。

 一九九〇年にペルー大統領選に初当選して以来、およそ十年間にわたってペルー大統領を務めた。外国の元国家元首が日本の国会議員選挙に立候補するのはおそらく初めてのことだろう。

 しかもフジモリ氏は、軍部隊による市民殺害に関与した疑いや公金横領容疑などでペルー当局から刑事訴追されている身である。

 ペルー政府は昨年一月、チリに滞在するフジモリ氏の引き渡しをチリ政府に要請した。

 チリ最高裁は十一日、身柄を引き渡すべきではないとの決定を下した。フジモリ氏にとっては、政治活動再開の足掛かりにもなる大きな勝利といえるが、最終決定したわけではない。

 ペルー政府が異議申し立てを行うのは確実とみられており、最終的な結論が出るのは数週間から数カ月かかる見通しだという。

 フジモリ氏は今、チリのサンティアゴ郊外で自宅軟禁の状態にある。日本での選挙活動のためチリ政府に対して出国要請をした場合、チリ政府はどういう判断を下すのだろうか。

 フジモリ氏は二重国籍を持っており、公選法上は海外に居住していても国政選挙への立候補は可能だ。だが、仮に当選した場合、二重国籍のままでいられるのか。当選後も日本への出国ができない場合どうなるのか。ペルー政府との関係は悪化しないのか。

 困難な事情を承知の上でフジモリ氏に出馬を要請したのは国民新党の亀井静香代表代行である。比例代表の得票増を狙ったこの奇策、果たして吉と出るか凶と出るか。有権者の判断に注目したい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月13日 朝刊 1面)

 海外に旅立つ人には必ず「生水には気を付けて」と声を掛けている。筆者は十五年ほど前に東南アジアでひどい目に遭った経験から、海外では歯磨きでもミネラルウオーターを使うほど、細心の注意を払っていた。

 先月訪問した中国・北京では、視察先で必ずといっていいほど、ミネラルウオーターのペットボトルが配られた。連日三五度を超える猛暑。ありがたくちょうだいし、がぶ飲みしていた。

 十一日付本紙朝刊7面掲載の「北京の有料水、半分は偽物」という記事にギョッとした。記事中の銘柄に見覚えがあったからだ。飲料に適さない水道水を混ぜた「偽物水」は、家庭や事業所で使う大型ボトル入りと知り、少しは安心した。

 このところ、中国の「食の安全」に関する報道が相次いでいる。食品の安全性に問題があった四十一社に中国当局が輸出を禁止したかと思えば、「肉まんの具に段ボールを混入」というものまであった。

 訪中の際のガイドの一人が「金持ちは、高いけど日本製の食品を買っている」と話していた。貧富の格差が広がる一方の中国。その言葉が「中国の今」を如実に表しているような気がした。

 五輪を一年後に控え、中国当局は信頼回復に躍起だ。「事件」を公表することで安全管理の徹底を世界に示しているようにも映る。だが一連の報道に家人は「何でもありだね」とつぶやいた。一度損ねた信頼を回復するのは、そう簡単にはいかない。(船越三樹)


【琉球新報・社説】

再編交付金 問われる防衛相の「変節」

 就任早々、米軍再編の「日米合意案」の強行姿勢を打ち出し、波紋を広げた小池百合子防衛相だが、今度は再編交付金の名護市支給に「判断保留」ときた。沖縄担当相時代には、北部振興策廃止の閣議決定に反対までしてくれた。なのに、この「変節」ぶりは、いかがなものか。
 あの久間章生前防衛相さえ、「受け入れを表明し、環境現況調査でも県の同意書に市の同意も付いた。そのような協力をしてもらっている。対象にならないとは考えられない」と、交付金の支給に前向きだった。
 小池氏は、沖縄通の大臣だった。「かりゆしウエア」の全国普及にも率先着用で、貢献してくれた。那覇空港の沖合展開にも「国に要求する権利がある」と県を支援してくれた。
 それが、一体どうしてしまったのだろう。防衛大臣に就任した途端、前任者よりも厳しい態度で県民に挑んでいる。
 「変節」の背景には守屋武昌防衛次官の存在が指摘されている。守屋氏は異例の就任満4年を8月に迎える。“ミスター防衛省”の異名を持つ実力者だ。
 名護市への再編交付金支給問題では、久間前大臣は前向きだが、守屋次官は一貫して否定的だ。小池大臣の発言は、久間前大臣ではなく、守屋次官に寄っている。
 前任者の不適切発言による辞任で、突然の防衛相就任である。就任直後だ。不慣れで、官僚の準備した文書を読み上げるのが精いっぱいということか。しかし、それではトップとしての資質が問われる。
 防衛省は「文民統制」が要である。制服組(武官=自衛隊)と違い、守屋次官は背広組(文官)。だが、イラクへの自衛隊派遣、国民保護法など一連の有事法制、米軍再編法の制定の裏に守屋次官の活躍がある。制服組以上に“軍の論理”に精通する次官だ。
 小池大臣に求められるのは、文民統制の徹底である。それは軍の論理だけでなく、民の論理でも防衛を考え、実行すること。端的に言えば「平和憲法」の理念を、防衛省・自衛隊に徹底させることだ。
 理念が揺らぐから、「変節」を生む。沖縄に知友も多い小池大臣である。迷った時は沖縄の声、地元の声に耳を傾けてほしい。
 そもそも普天間移設問題は、住宅過密地にある「危険な基地の撤去」「沖縄の負担軽減」にあった。それが、いつしか新基地建設の話にすり替わり、新基地建設に異議を唱える自治体や地域住民を抑えるため「アメとムチの法」となる米軍再編法まで制定された。
 強行採決で制定された法である。「政府の恣意(しい)的運用」が懸念されたが、現実になりつつある。小池防衛相の発言には、今後も注視したい。

(7/13 10:16)

定期クルーズ船 海外客誘致に本腰を

 途絶えていた那覇―台湾間の定期クルーズ船が、1年8カ月ぶりに運航を再開した。観光客1千万人誘致を目指す沖縄にとって、朗報だ。海外からの観光客誘致に向けた大きな起爆剤になる。大いに歓迎したい。
 那覇―台湾間の定期クルーズ船は、マレーシアのスタークルーズ社が運航している。同社は、原油高による燃料高騰や配船調整などを理由に2005年10月を最後に、運航を休止していた。
 同社は11月までに30回の寄港を計画中で、約4万4千人の観光客を沖縄に送り込む予定だ。
 運航復活には台湾も含め、世界的な好景気の影響もあろう。同社に限らず、米国やイタリアなど世界3大クルーズ会社を含め6社が、沖縄への定期・不定期クルーズ船の寄港を予定している。今回の復活も含め、計43回の寄港が見込まれている。
 県は観光振興計画の中で、4年後の11年には年間200回(うち定期船は160回)のクルーズ船寄港誘致を目標に掲げている。
 そこで課題だ。まず、港湾の整備。現在、那覇港内にクルーズ船用のバースを整備中だが、当面は引き続き貨物用バースへの接岸だ。「空の玄関」の国際線ターミナルも不評だが、「海の玄関」はもはや問題外。国際観光地とは思えないイメージダウンだ。「海外客はお断り」とのメッセージとも受け止められかねない。
 海外ツアー客を迎える通訳を兼ねた現地ガイドの不足も指摘されている。通訳ガイドは登録が必要で、現在の有資格者は24人。10年後に海外客100万人を目指す県にとって資格を持つ通訳ガイドの育成も急務だ。海外客の利用が困難な免税店も不評。富裕層が多いクルーズ客を、呼び込まない手はない。商機を逸することなく、取り込む知恵を発揮したい。
 沖縄観光は昨年も563万人と過去最多を更新したが、その9割が国内客。海外客は約9万人と前年比減で、2%を切っている。定期クルーズ船の復活を契機に海外客を迎え、楽しませる誘客、接遇策など対応策に本腰を入れたい。

(7/13 10:14)

【琉球新報・金口木舌】

 豚は「泣く」のか、「鳴く」のか。先日、原稿に「泣き声以外はすべて食べられる」とのくだりがあり、普段使っている「新聞用字用語集」に沿って「鳴き声」に直した
▼用語集は「泣」は「人間が声をあげ涙を流す」、「鳴」は「虫・鳥・けものなどが声を出す」と峻別(しゅんべつ)している。一般の辞書もそうだ。「泣く」は人間特有の感情表現と規定しているようだ
▼ヤンバルクイナなどの貴重な生き物も「死亡」「死体」とは言わない。どんなに愛らしい犬や猫でも「里親」は使わない。「泣く」もそれと同様と考えれば分かりやすいか
▼しかし、虫や鳥ならまだしも、豚や牛が「鳴く」では少し情趣に欠けないか。逆に「ドナドナ」の歌のように売られていく子牛が声を出したら、やっぱり「泣く」がしっくりくる、という気もする
▼ただその子牛も単に声を上げているだけで、それが「泣き声」に聞こえるのは子牛を見送る人間のほうに悲しむ感情があるからか。だとしたらやはり、人間以外は「鳴く」でくくるしかないのか
▼芥川賞を受賞した又吉栄喜さんの「豚の報い」にはこんなくだりがある。「豚の発狂したような鳴き声をあび―」。確かに「泣き声」としたら、豚肉の味も変わってしまいそうだ。

(7/13 10:31)


【東京新聞・社説】

参院選第一声 耳の痛い話を避けるな

2007年7月13日

 参院選が公示され、各党首は第一声を上げた。一番の焦点は与野党逆転があるかどうか。だが、それだけでは足りない。有権者はもっと判断材料を求めている。耳の痛い話も避けないでもらいたい。

 安倍晋三首相は遊説スタートに東京・秋葉原駅前を選んだ。「アキバ」にはアニメやゲームの好きな若者が集まる。小泉純一郎前首相のように若い無党派層を取り込むことで、いまの“逆風”を食い止めようとしたのだろう。

 首相は「私は負けるわけにはいかない」と訴えた。与野党逆転は許さないという決意表明だ。

 太田昭宏・公明党代表は名古屋駅前の街頭に立った。三つの議席を同じ与党の自民党や、民主党などと争う最激戦区だ。「未来に責任を持つ公明党か、無責任な野党か」と、野党への対抗意識をむき出しにした。

 参院で与野党逆転しても、与党が政権から転落することはない。だが、野党が参院の主導権を握ると、政権運営は苦しくなる。惨敗すれば、首相退陣の可能性もある。絶叫調の首相と太田氏の第一声は危機感の表れか。

 一方、小沢一郎・民主党代表は岡山市内で第一声を上げた。参院自民党の幹事長に民主党の女性候補が挑み、民主党が「姫の虎退治」と呼ぶ一人区だ。地方から遊説を始めるのは小沢流の戦い方でもある。

 演説では「参院選で国民が野党に過半数を与えないなら、今後政権交代はあり得ない」と言い切った。これほどの“追い風”の中、与野党逆転できなければ、民主党は存続できない。そんな覚悟が伝わってくる。

 志位和夫・共産党委員長と福島瑞穂・社民党党首は東京・新宿駅前で演説し、改憲阻止を訴えた。

 国民新党の綿貫民輔代表は東京・有楽町で「立派な第三極をつくりたい」と述べた。地元・富山では民主党とともに無所属候補を推す。

 演説場所や内容に党首の思いが見える第一声だったが、残念なこともある。年金や「政治とカネ」などに熱弁は振るっても、国民の負担増にかかわる話はあまりしなかった。

 国から地方への税源移譲と定率減税の廃止で、六月から住民税が増え、増税感をおぼえる国民は多い。志位、福島両氏は「住民税の大増税」などと批判したが、与党の党首たちから説明はなかった。

 年金財源や財政再建で、国民の負担増の議論は避けられない。景気はよくなったといっても、国の財布は借金だらけだ。消費税もどうするのか。与野党とも有権者に語らねばならない課題だ。

パキスタン 焦りが亀裂を深くした

2007年7月13日

 世界に同時中継されたパキスタンのモスクろう城事件は、甚大な被害と憎悪を残し、国内外の不安定要因を急増させた。泥沼化を避けるため、国際社会のバランス感覚があらためて問われる。

 パキスタンは厳しい戒律を守るイスラム教国だ。かつてはアフガニスタンやイランの原理主義勢力とも良好な関係にあって、旧ソ連のアフガン侵攻の際にはイスラム兵の供給源にもなった。

 それが二〇〇一年の米中枢同時テロを機に、イスラム過激派と戦う米英の「パートナー」の側に回り、独立時から対立したインドとの関係も米英の仲介があって改善された。

 これら大変身は、クーデターで政権を奪って間もないムシャラフ大統領の生き残り策でもあった。そして今回の軍の強行突入も、大統領の保身に使われた側面がある。

 ムシャラフ大統領は選挙の洗礼を受けていない。年内に予定される大統領選と総選挙を前に、軍事政権批判や民主化要求のデモで揺さぶりをかけられ、自爆テロも続いて劣勢となり、焦っていたのか。

 「賞味期限が切れかかって敵ばかり」と地元で評されるに至って、陸軍参謀長も兼任する大統領が今回、宗教施設に向けた武力行使を命じたのだ。結果的に混乱しても選挙の延期や、場合によっては非常事態令など、政権継続に有利な状況すら生まれると読んだのかもしれない。

 イスラム施設には武装神学生が出入りした。タリバンやアルカイダなどの国際テロリストとの連携が疑われる過激派であり、これを掃討した点は米英の要請にはかなう。

 しかし、パキスタン国民は現政権下でも厳格な宗教観をもち続けている。軍の情報機関なども宗教を背景に過激な神学生らともパイプをつなぎ、利用し合ってきた。

 無実の信者も多数巻き添えにした一方的な攻撃は人道に反し、為政者側の独善とのそしりは免れない。水面下では話が通じていた神学生を問答無用と葬り去ったことで、対立の図式が先鋭化しかねないと、国際社会も覚悟しておくべきだろう。

 当面修復は極めて困難と言わざるを得ないが、テロとの戦いに直接関係しない近隣のインドや中国などが双方に語りかけてもらいたい。南アジア地域協力連合の出番でもある。核保有国の不安定化はなんとしても避けたい。

 日本はパキスタンの最大援助国である。一昨年の大地震で、民間も加わる人的な貢献も続け感謝されている。これらの積み重ねも踏まえて今回の惨劇を癒やす際、米英とは一線を画す宗教への理解も示すべきだ。

【東京新聞・筆洗】2007年7月13日

 参院選が公示された。天下分け目ともいわれて、近年これほど重要な国政選挙はない。小泉前政権から引き継いだ衆院の絶対多数を笠(かさ)に、強行採決を連発してきた安倍政権の手法が、初めて国民の審判を受けるからだ▼東京・秋葉原での安倍首相の第一声は「私は負けるわけにはいかないんです」と絶叫調だった。年金問題や閣僚の疑惑で吹き付ける逆風に危機感があるのだろう▼対する野党第一党、民主党の小沢代表は、自民参院幹事長のお膝元(ひざもと)・岡山市に乗り込んで「政権交代で本当の国民本位の政治に変える最後のチャンスだ」と真っ向勝負の構え▼今回は政権ばかりか、参院の存在意義も問われる。引退する扇千景議長が「参院らしくないこともあった。選挙を迎え、参院のあり方自体が一人一人の肩にかかっている」と苦言を呈したように、委員会審議も吹っ飛ばされた参院には不要論さえささやかれた▼そもそも一昨年の9・11郵政解散選挙が、参院での郵政改革法案否決をひっくり返す裏技だった。メディア総動員の“国民投票”的手法が図に当たり自民は圧勝。その絶対多数を引き継いだ安倍政権は、国民の負託以上の国民投票法や、改正教育基本法など、次々重要法案の強行採決に踏み込んだ▼一九七〇年代には、故河野謙三議長が「与党は三割、野党に七割の主張をさせろ」と名采配(さいはい)を振るって、“再考の府”と評された参院はどこへ消えたのか。山口二郎北大大学院教授は、安倍首相の適格性や、政治理念への評価で「有権者は、投票に覚悟が求められる」と言い切る。


【河北新報・社説】

’07参院選を問う 年金問題/信頼をどう回復するのか

 5000万件にも上る「宙に浮いた」年金記録の存在が明るみに出たことをきっかけに、年金業務に対する国民の憤りや不安、不信が噴き出した。年金問題は参院選で有権者が最も関心を寄せるテーマだ。

 きちんと保険料を納めてきたのに、記録ミスで年金を正しく受け取れないとあっては、国民が怒るのは当たり前だろう。

 社会保険庁によるずさん極まりない業務によって地に落ちた年金制度への信頼を、どのように回復するか。政府・与党はもちろん、野党にも突き付けられた重い課題と言える。

 国民が何よりも求めているのは、記録不備問題を一日も早く解決して受給漏れを根絶することと、原因を徹底究明し、安心して任せられる業務体制や年金制度に改革することだ。

 記録不備とそれに伴う受給漏れの責任が政府にあるのは言うまでもない。

 政府・与党は、原因や責任の所在を調査する検証委員会の設置、記録がなく保険料納付の証拠もない場合の年金給付を判断する第三者委員会の設置、時効撤廃特例法の制定など、矢継ぎ早に対応策を打ち出した。

 だが、今後の見通しは明確ではない。

 宙に浮いた5000万件の年金記録の照合を来年3月をめどに完了することなど、今後の作業目標は発表されたものの、基礎年金番号への統合作業がいつ完了するかは不明だ。第三者委員会による審査が実際にどのようになるかも分からない。

 長年にわたって積み重なってきた記録不備問題に関しては、特効薬のような解決策は恐らくないに違いない。政府・与党の対応策はいかにも泥縄的だが、野党側にしても、それに代わる有効な対応策を示しているとは言えない。

 政府・与党の対応策で問題解決が本当に図れるのかどうか。結局は、安倍晋三政権そのものに対する信頼感が問われていると言えるだろう。

 一方、今後の業務体制や年金制度の在り方については、政府・与党と野党の考えは鋭く対立している。

 政府・与党は、社保庁を廃止して日本年金機構に業務を移行させる社保庁改革関連法を先の国会で成立させた。年金制度については、保険料と国庫負担で基礎年金の財源を賄う現在の方式を変える考えはない。

 これに対し民主党は、社保庁を国税庁に統合して「歳入庁」を設置することや、基礎年金の財源を全額税で賄い、消費税の全税収を財源に充てることなどを主張している。

 政府・与党と野党の主張には、それぞれ数多くの懸念材料や疑問点が指摘される。どのような方法がより優れているのか、各党とも国民に対してさらに説明することが必要だ。

 3年前の参院選も、年金制度改革と閣僚ら与野党幹部の年金保険料未納問題などで、年金問題が最大の争点となった。

 3年たって、また似たような状況にある。年金制度への信頼回復は、政治への信頼回復にほかならないだろう。
2007年07月13日金曜日

【河北新報・河北春秋】

 各国の議会による国際組織・列国議会同盟によると、世界189カ国のうち二院制を採用している国は39%、73カ国という(1月現在)。大半は一院制。二院制は少数派のようだ▼もっとも日本を含むサミット参加8カ国や欧米各国は二院制が主流。近代民主主義の伝統のたまものとも言えよう。第二院には特色がある。イギリスに代表される貴族院型、米国のような連邦制型、それに参議院が当てはまる「多様な民意反映型」とも言えるタイプ

 ▼ その参議院の選挙がきのう公示された。安倍晋三政権に対する評価を軸に最大の争点である年金をはじめ、政治とカネ、憲法改正などをめぐり戦いが繰り広げられる▼参議院はかつて「良識の府」といわれた。衆院議員より任期が長く解散もない。長期的、総合的な視点から国政全般を見渡し、衆議院の行き過ぎにブレーキをかけ、足らざるを補う

 ▼その役割はとうに色あせた。だが、衆院が二大政党化の色彩を濃くする中、参院は多様な民意を映せる選挙制度を背景に「抑制と補完」の機能を取り戻す必要がある▼貴族院型や連邦制型とはひと味違う第二院の選挙。どの党が格差にあえぐ有権者の受け皿になるのか。少数意見も映し出されよう。結果次第では政局の流動化もあり得る。各党の訴えに耳を傾けたい。

2007年07月13日金曜日


【京都新聞・社説】

参院選スタート  国の在り方も問われる

 政党や候補者だけでなく、私たち国民もどんな政治を、どんな国をめざそうとするのかが問われる。そんな心構えで臨みたい。
 第二十一回参院選は、改選百二十一議席(選挙区七三、比例代表四八)に対し、三百七十七人が立候補。年金問題や「政治とカネ」、憲法改正、格差是正などを争点に十七日間の選挙戦がスタートした。
 与党が過半数を制すのか、野党が阻むのか。「天下分け目」の政治決戦だ。
 各党党首の第一声に、並々ならぬ決意がにじむのは当然だろう。
 東京・秋葉原の街頭に立った安倍晋三首相(自民党総裁)は、教育基本法改正や国民投票法成立などの実績を強調し、「改革か逆行か」と迫った。
 戦後レジーム(体制)からの脱却、美しい国づくりに向け、長期安定政権への一歩を築く構えだが、情勢は厳しい。
 地方重視の姿勢を示すため、岡山市内で演説した民主党の小沢一郎代表は、弱者、地方切り捨て、と安倍政権を批判。「国民本位の政治を」と訴えた。
 与党を過半数割れに追い込み、政権交代につなげたい、との戦略を描くもののこちらも確信を持てるほどではない。
 与党・公明党の太田昭宏代表が「未来に責任を持つ与党か無責任な野党か」と問えば、野党側も負けてはいない。
 年金問題の責任を追及するとともに、「スットプ貧困、九条を守る」(志位和夫共産党委員長)、「最悪の内閣を打倒する」(福島瑞穂社民党党首)、「民主主義を取り戻す」(綿貫民輔国民新党代表)、「脱しがらみの政治を」(田中康夫新党日本代表)と力をこめた。
 一寸先は闇。投票日までに何が起きても不思議でないのが政治の世界だ。過半数を大きく割り込むようだと進退問題も避けられない安倍首相、与野党逆転できなければ政界引退を表明した小沢代表。ともに背水の陣なのだ。
 国民もうかうかできない。年金など暮らしに直結した問題も大事だが、それにとどまらない。今後の政治の行方、さらには憲法や安全保障など、この国の在り方が問われる選挙でもある。
 それなのに各党の公約は十分とはいえない。年金の財源はどうするのか、消費税率を上げるのか、憲法をどう変えようとするのかなど分からない点が多い。選挙戦を通じ、見極める必要がある。
 京滋でも、京都選挙区(改選数二)に四人、滋賀選挙区(改選数一)に三人が立ち、舌戦が始まった。
 国政のテーマはもちろん、伝統産業や中小企業振興など「京都再生」、新幹線新駅や琵琶湖の保全など地域の課題にどう取り組むのかも語ってほしい。
 有権者も各候補の主張や選挙ビラ、新聞、選挙公報、政権放送などに関心を持ち、政策本意で選択したい。
 この国の針路につながる大事な選挙であることを肝に銘じよう。

[京都新聞 2007年07月13日掲載]

児童虐待防止  関係機関は連携強化を

 児童虐待が後を絶たない。各地の児童相談所には、相談や通告が相次ぐ。虐待によって命まで奪われるケースも目立つ。
 「親が悪い」「児童相談所の対応が遅い」と言うだけでは解決はおぼつかない。根絶に向けて地域社会に住む一人一人が関心を持ち、関係機関と連携、協力していくことが欠かせない。
 厚生労働省の集計では、二〇〇六年度に全国の児童相談所が対応した虐待件数は、過去最多だった前年度より三千件近く増え、約三万七千件に上った。
 京滋も例外ではない。都道府県で増加率が最大だったのは京都府(京都市を除く)で一・七二倍(四百五十九件)。滋賀県は一・一〇倍(七百九件)。京都市も一・五〇倍(五百四十八件)と、政令市では二番目の増加率となった。
 長岡京市での三歳児の虐待死など悲惨な事件が相次いだこともあって関心が高まり、通報などが増えたためと同省は分析している。気づきにくかった虐待の実態が、社会問題化の傾向が強まる中で目立つようになってきたといえよう。
 児童相談所に家庭への強制立ち入り調査を認める改正児童虐待防止法が先の国会で成立し、来年四月から施行される予定だ。
 これまで保護者が拒否すれば家庭に入って調査することができず、安否を確認するのも難しかっただけに、被害児の保護など、迅速な対応に効果が期待できよう。
 今後、この新しい制度を十分に機能させ、虐待を減らしていくためには関係機関の連携を一層強めなくてはならない。
 さらに、児童相談所に業務が過度に集中しないよう、保健所や医療機関、市町村、学校・保育所、警察など関係機関が役割分担化を進める必要がある。
 とりわけ日常的に住民とかかわりが深い保健所は最前線機関として、乳幼児検診や予防接種などの機会を通じて虐待の兆候を見逃さぬよう努めてもらいたい。京都府のように専門知識を持つ専任職員を保健所に配置することも必要だろう。
 医療機関や学校、保育所なども早期発見に全力を傾けてほしい。
 その上で、児童相談所と迅速に連絡をとり合うことが大切だ。医療機関や保健所が、事前に児童と接触しながら児童相談所への通告が遅れたために保護できなかった、というような事態を繰り返してはなるまい。
 一方、児童相談所は専門性を生かして相談や調査、指導などに取り組みたい。だが虐待情報を把握しながら、人員不足のために対応が遅れたケースも続発している。極力、児童福祉司などスタッフの増員を図るべきだ。
 虐待を防ぐには、近隣住民の理解と協力も必要だ。関係機関の連携強化にとどまらず、孤立しがちな家族を地域社会で支える態勢づくりが欠かせない。

[京都新聞 2007年07月13日掲載]

【京都新聞・凡語】

生活保護

 「働かざる者食うべからず」としても「働けない者食うべからず」の社会であってはならない▼しかし現実は厳しい。北九州市で先日、この四月まで生活保護を受けていた五十二歳の男性が自宅で孤独死しているのを警官が見つけた。死後一カ月以上で事件との関係はなさそうだが、男性の日記には「働けないのに働けと言われた」など市への不満がつづられていた▼市によると、男性はタクシーの運転手で、肝障害などで働けなくなり昨年十二月に生活保護を受けた。二月に肝障害などが改善、医師の「就労は可能」との所見も出されて、四月に保護辞退を申し出た、という▼市は一月以降、数回にわたって求職活動をするよう指導し、男性もハローワークを訪れていた。市では「無理な就労指導はしていない」と戸惑うが、六月五日付の日記では「おにぎりを食べたい」と記してもいた▼格差社会のなかで低所得層が拡大し、生活保護世帯は増加の一途だ。今年二月の受給者総数は百五十万人を超す。不正受給は論外だが、抑制方針を打ち出した国は就労促進を呼びかけ、市町村は申請件数減らしにやっきだ。市は男性を「短期間で自立したモデルケース」と評価していた▼施策を必要とする者の立場にたたぬ行政は不要だ。参院選に合わせたように発覚した男性の死、候補者らには氷山の一角と受け止めてもらいたい。

[京都新聞 2007年07月13日掲載]


【朝日・社説】2007年07月13日(金曜日)付

福祉の財源―有権者を見くびるな

 日本全体がさらに高齢化する時代に突き進もうとしているのに、本当に負担増なしで済むのだろうか。公示された参院選で各党の主張を聞くかぎり、将来への危機感が伝わってこない。

 安倍首相はいったん「消費税を上げないとは一言も言ってない」と語った。しかし、野党側に「それなら引き上げるかどうかを選挙で国民に問うべきだ」と突っ込まれると、「歳出削減をギリギリまで行えば、消費税を上げなくても済む可能性は十分ある」と、行ったり来たり。まったく腰が定まらない。

 小沢代表率いる民主党の公約も、「ハイそうですか」とはうなずけない。基礎年金を保険料から全額国庫負担へ切り替え、一定所得以下の高齢者へ支給する。ところが、財源は行政の仕組みを根本的に変え無駄を省いて生み出すので、増税なしでもやれると言い出したのだ。

 前回の参院選では、財源として年金目的消費税を導入すると言ったのは見込み違いだったのか。ただでも負担増は避けがたいと心配する有権者には、基礎年金を国庫で負担しても増税なしとは、にわかに信じられない話だろう。

 もちろん、まずは歳出削減を一層徹底させ、福祉財源を生み出す努力をするのは当然のことだ。すでに所得税・住民税の定率減税廃止や保険料のアップで、国民は負担増を求められている。

 とはいっても、この先さらに福祉の支出を切り詰めると、福祉サービスの切り下げにつながるのではないか。そんな懸念が出てきている。

 老人介護の現場では、ヘルパーらが低い処遇に絶望して仕事から離れるケースが多い。医療でも、とくに地方で小児科や産婦人科が減り、医師不足が問題になってきた。生活保護の支給が厳格になりすぎて、新しく出てきた貧困層を救えないという指摘もある。

 少子高齢化が進み、福祉支出がふくらめば、いずれ負担増が避けられない。福祉給付と負担の中長期の展望を語ってほしい。多くの国民がそう思っていることが各種の調査から分かっている。

 安倍首相は次のように考えているのかもしれない。

 消費税を中心とする負担増が数年後には必要になるだろう。だが、景気回復を背景に税収が堅調に伸び、政府が11年度に目指している財政健全化目標まであと4兆円余りに近づいた。経済成長を高め歳出カットを強化して、増税なしで進めるところまで進んでから、負担増を求めても遅くはないと。

 ならば、そうした展望を国民に正面から率直に語るべきだ。消費税をめぐって揺れる発言は、負担増論議から逃げているとしか言いようがない。

 残念なのは、与党も野党もこれまでの選挙で負担増の議論を封印して、相手を攻撃し、選挙を有利に進める材料に利用してきた嫌いがあることだ。そんな悪弊からこんどこそ脱してもらいたい。

郵政民営化―西川体制でやれるのか

 10月からの郵政事業の民営化まで3カ月を切った。現場は船出に向け士気を高めている、と思いたいところだが、「組織が緩んでいないか」と不安にさせられるような話も耳に入る。

 参院選が始まり、特定郵便局長の動きが活発になってきた。特定局は自民党の集票基盤だったが、いまは党を問わず民営反対派の候補を応援している。選挙とは別に、局長が地域ごとの会合に足しげく通う姿も目立つという。

 局長がいつも現場を留守にし、職員任せにしていて、はたして民営化の荒海へこぎ出せるのだろうか。

 全国で2万4000以上ある郵便局のうち8割近くが特定局だ。郵政は民営化で四つの事業会社に分かれ、郵便局会社は全社員の半分にあたる12万人を抱える。郵便局は民営化の成否を左右する。

 郵便局は、ゆうちょ銀行やかんぽ生保の窓口ともなる。顧客のニーズをキャッチする高性能のアンテナになれれば、金融商品の企画力が向上し、民営郵政は普通の民間会社に近づくだろう。

 反対に有能な窓口になれないと、ゆうちょもかんぽも郵便局を見限って独自の販路の構築に精を出す可能性がある。そうなると経営が行き詰まる。

 懸念がでているもう一つの理由は、公社総裁と日本郵政社長を兼ねる西川善文氏の求心力不足にある。公社25万人余に体を張って民間企業の魂を入れる、その気迫が一向に伝わってこない。

 特定局長がいまも活発に会合を開くことができるのも、西川氏が特定局長の組織に妥協した結果だ。

 問題の象徴といえるのが、西川氏が他の一般企業の社外役員を非常勤で兼務していることだ。取締役が4社、監査役が2社の計6社にも及ぶ。いずれも前職の銀行頭取時代からの兼務である。

 責任の重い大企業の最高経営責任者(CEO)に、社外役員を引き受ける余裕があるのだろうか。まして民営化の大事業を陣頭指揮する西川氏に、そのゆとりがあるとは思えない。事実、公社総裁を兼ねた4月以降は、6社の役員会などに欠席しがちだという。

 10月から民営へ移行することは、西川氏が1年半前に日本郵政社長に就いた時点で決まっていた。しかも、4社の取締役は今年の株主総会で任期が切れるはずだった。それなのに、4社とも再任が決まり、任期4年の監査役2社も引き続き務めるという。

 西川氏は6月末の記者会見でこの点を問いつめられて、「民営化後、辞められるところは辞めたい」としぶしぶ語った。民営郵政を率いるトップの姿勢として、理解しがたい光景だ。

 本業と両立困難な兼務の仕事は早々に整理した方がいい。欠席続きでは、兼務先の会社にも失礼だろう。

 現場を担う職員は、トップのふらふらした構えを見ている。西川体制で郵政民営化を乗り切れるのか、心配だ。

【朝日・天声人語】2007年07月13日(金曜日)付

 1万円札の平均寿命は3~4年だという。1000円札の1~2年より長生きなのは、釣り銭の役回りがないためだ。お札は国立印刷局で生まれ、日銀から浮世に出て、ぐるぐると商いに立ち会う。日銀に里帰りした折、傷んでいれば裁断され、使命を終える。

 どなたが、何のつもりで置いたのか。役所の男子トイレで、紙に包まれた1万円札が続々と見つかり、総額は400万円を超えた。たまたま物好きと縁ができたがために、お札たちは便所からメディアに登場する運命となった。

 添えられた手紙には「修業の糧としてお役立て下さい」とある。筆跡や状況から、同じ人物が全国を回ったようでもある。珍しく死傷者ゼロの事件とあって、連日、罪のない推理が花盛りだ。

 モノやサービスと交換され、お金は初めて、本来の役割を全うする。ぼろぼろになって、親元で切り刻まれる最期こそ本望だろう。その意味で、便所の万札たちは薄幸この上ない。持ち主が使う前に、お役人の管理下に置かれてしまった。

 いやいや、はなから騒ぎを「買う」つもりであれば、見事に使われたと見ることもできる。この騒動、視聴者や読者に小口転売され、いましばらくは消費され続けるはずである。

 福沢諭吉は「黄金は愚を智にし、醜を美にし、非を直にして向かうところ敵無し」と書いた。「よく積み、よく散ずべし」と盛んに寄付もした(福田一直『素顔の諭吉』)。金の力を知り尽くし、役立て方を説いた諭吉翁。便所に置き去りにされた札の右端で、何を考えていたろうか。


【毎日・社説】

社説:’07参院選 放送局呼び出し 総務省の強権的姿勢は疑問だ

 なぜ、こんなに強権的なのか。参院選が公示された12日、全国の放送局の幹部を呼び出し、候補者の当落報道を慎重に行うよう要請した総務省のことだ。

 放送局を監督する総務省は95年の参院選から、衆参の国政選挙で当落に誤りがないよう各放送局に要請している。それまでの選挙で数件だった当落の誤報が、05年の前回衆院選で一気に二十数件と増えたため、今回は「要請の趣旨が確実に伝わるように」と、幹部呼び出しを原則にしたという。

 要請を受けた放送局は計194社。NHKと在京キー局を本省が、それ以外を出先の各総合通信局が分担し、「当選確実の放送等を慎重かつ正確に行い、放送に対する国民の信頼にこたえるよう」求めた。

 何とも異様な光景である。近畿総合通信局では大阪の準キー局4社の社長が出向き、ほかでも社長や役員の姿が目立ったという。放送局が誤報をしないよう正確な報道に努めるのはあまりにも当たり前のことだ。それを総務省がわざわざ幹部を呼び付けてまで事前に要請する必要があるのだろうか。

 東北総合通信局はあらかじめ、誤報があれば開票日翌日の「30日午前10時まで」に報告してくるように求めた。まるで誤報するのを見越したような、放送局を見下した対応と言わざるを得ない。

 当落報道は、各報道機関が取材をもとに各自の判断で行うのが大前提だ。投票時間締め切り前のような、有権者の投票行動に影響を与えかねない報道はもちろん許されないが、そうでなければ憲法の「表現・報道の自由」で保障されることだ。仮に誤報があれば、その社がすべての責任を負い、速やかな訂正や謝罪が求められるが、国が指図すべきことではない。

 総務省は「要請はあくまでお願いベース」と説明する。しかし、そもそも95年から要請を繰り返してきたこと自体、余計な口出しである。放送局の免許交付権限を握る総務省の「お願い」は、放送局への圧力となり、報道への介入にもつながりかねない。

 菅義偉総務相は昨年、拉致問題に留意して国際放送を行うようNHKに初めて命令した。継続審議になったものの、放送番組の内容に対する新たな行政処分を盛り込んだ放送法改正案も通常国会に提出した。放送局に強圧的に振る舞う姿勢は極めて疑問だ。

 もちろん、放送局側にも反省すべき点はある。最近は各社とも、投票直後の有権者から投票した候補を聞き出す出口調査に力を入れ、それを判断材料にしているが、競争のあまり投票時間締め切り直後に「当確」を速報するケースも増え、誤報の一因にもなっている。放送局自らが国民に信頼される選挙報道を行わなければならないのは当然のことだ。

 放送局が今に至るまで、総務省の要請を問題視せず、受け入れてきたことも理解しがたい。国への毅然(きぜん)とした態度こそが国民の信頼を築くことも指摘しておきたい。

毎日新聞 2007年7月13日 東京朝刊

社説:国債格上げ 低金利を早く正常な水準に

 格付け大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスが日本国債の格付けを引き上げの方向で見直すことになった。「政府債務の状況が改善に向かう転換点に到達したことが示された」ことを理由にしている。

 ただ、ムーディーズは日本が継続的に債務残高の改善を図るためには、より断固とした改革のための諸施策が求められる、と論評している。その格上げも小幅なもので、先行きの財政状況次第では将来、再度の格下げもあり得るということだ。

 日本の財政再建はバブル崩壊後の経済停滞への対応以降、いびつになっている経済政策を、まっとうな形に戻すため必要かつ不可欠である。同時に、米国に次ぐ経済規模であることから、世界経済に与える影響も小さくない。国際通貨基金などが継続的に財政改革を求めているのもそのためだ。

 ムーディーズが上から4番目のAa3に格付けしていた日本国債を、6番目のA2に2ランク引き下げたのは02年5月のことだ。アフリカのボツワナのA1より低位なことなどが話題となった。刺激的ではあったが、実体経済からみて、バブル崩壊後の財政状況の急速な悪化や、金融システム危機が現実味を帯びていたことを考慮すれば無理からぬことだった。

 財務省は日本の債務は規模としては膨大だが、ほとんどが国内で消化されているうえ、国内貯蓄との見合いで考えれば、財政の持続可能性に問題が生ずることはないと反論してきた。ただ、国、地方ともに公債依存度が歴史的にも高く、自由に政策に使うことのできる財源がほとんどない財政状況は異常そのものである。

 その後、企業業績の回復で法人税収が盛り返し、単年度の国債新発額は減少に転じている。特別会計の積立金などを使い消却していることなどもあり、残高の増加幅も縮小している。日本の財政状況は最悪期を脱したとみることもできる。ムーディーズの判断は当然だろう。ムーディーズと並ぶスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)も4月に格上げしている。

 ただ、財政の立て直し、さらには、経済の正常化という観点からは、問題が山積している。これまでの超低金利政策は、長期金利にも影響を及ぼし、国債発行を円滑に進めるうえで大きな役割を果たしてきた。しかし、景気拡大が6年目に入っているいま、国債の発行額を抑制するためにも、金利を超低水準に抑えておくことは、将来にマイナスである。

 日本銀行は12日の政策決定会合で短期市場金利の誘導目標据え置きを決めた。しかし、年0・5%は低過ぎる。

 金利が正常化されれば、実効為替レートがプラザ合意以来の水準にまで低下している異常な円安も是正の方向に動くであろう。

 国債の格上げは基本的に経済そのものが良くなっていることの反映だ。この好循環を継続するためにも、財政も金融も踏み込んだ改革を進めなければならない。正念場はこれからだ。

毎日新聞 2007年7月13日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:引石散という仙薬がある…

 引石散という仙薬がある。それを石にかけて水で煮ると、すぐに石は芋のようになって食べられるという。いや、実際の話ではなく中国の道教の本「抱朴子(ほうぼくし)」(岩波文庫)にそうあるのだ。ある人は家人や弟子数十人と共に石を食べ十数年も元気に暮らしたという▲だからカセイソーダと古い段ボールを水で煮て肉まんの具にするくらいで驚いてはいけないのだろう。中国のテレビ局が段ボールで肉まんの具を増量していた北京の露店のとんでもない仙術を報じた。つい先日は、水道水をミネラルウオーターに変える中国の業者の仙術も伝えられた▲「抱朴子」には不老長寿の丹薬の作り方も書かれている。これら仙薬は水銀やヒ素化合物が調合された毒物ほど高級だったようだ。永遠の生命を求めた貴人はおかげで若死にし、とくに唐代は歴代皇帝のうち6人までも丹薬の中毒で死んだとされる▲こう聞けば、中国産原料を使ったかぜ薬で100人以上が亡くなったパナマの薬害や、米国でペット多数が死んだ中国産小麦のペットフード禍を思い出す方もいよう。中国では薬や食品に有害物質を用いる仙術も、いまだにまかり通っているようだ▲さすがに中国当局も長年ワイロをとって有害薬品を認可してきた高官を処刑したり、安全性に問題ある食品会社の禁輸措置をとるなどの対策を示し始めた。だが、地道に安全を図るより、危険な仙薬で手っ取り早い金もうけを求める商風土が一掃されぬことには国際的不安は消えない▲仙術の名誉のためにいえば、「抱朴子」は不潔な物を人に飲食させ、人を損なう者は寿命が奪われると書いている。人の悪事は家のかまどの神が天に報告するともいう。中国の悪徳業者は先人の書の読むべき場所を間違っている。

毎日新聞 2007年7月13日 東京朝刊


【読売・社説】

参院選公示 骨太の国家戦略を論じ合え(7月13日付・読売社説)

 社会保障制度の確立、日本の平和と安全の確保、財政の健全化――。我が国は、大きな転換期にあって、極めて多様かつ困難な課題に直面している。

 参院選が12日公示された。

 少子高齢化、人口減のもと、年金をはじめとする社会保障システムをどう確立していくのか。日本の安全保障環境の悪化にどう対処するか。消費税問題も含め税財政改革をどう進めるのか。

 内外に目を向け、国家運営や国民生活の基本問題について、各政党や候補者は明確な考えを提示し、骨太の論戦を展開していかねばならない。

 ◆年金だけが争点なのか◆

 安倍首相は、内閣発足以来の実績を問うとしている。安倍内閣は、「教育の憲法」ともいえる教育基本法を改正し、防衛庁を「省」に昇格させた。憲法施行60年の今年、憲法の改正手続きを定めた「国民投票法」も成立させた。

 いずれも、半世紀余、歴代政権がなしえなかったことだ。首相の掲げる「戦後レジームからの脱却」の一環だ。首相が東京都内での第一声で、これらを列挙し、「改革の加速」を強調したのも、最大の実績と考えているからだろう。

 社会保険庁を解体し職員を非公務員化する社保庁改革関連法や、教員免許更新制を柱とする教育改革関連3法も、そうした路線の延長線上に位置づけられる。

 有権者は、この安倍内閣の“実績”をどう評価するのか。

 防衛庁の省昇格関連法には、民主、国民新両党は賛成し、共産、社民両党は反対した。改正教育基本法や国民投票法では、民主党は対案を出した。両法には、必ずしも反対ではなかったということだろう。しかし結局、政府、与党案に反対したのは、参院選に向けて政府・与党との対立の構図を作り出す意図だった。

 こうした野党のそれぞれの対応をどうみるのか。これも有権者が投票する際の判断のポイントの一つになるだろう。

 それとともに問われるのは、今後取り組む政策を示した「公約」だ。

 民主党は、重点公約として、月額2万6000円を支給する「子ども手当」と、農家の生産費と市場価格の差を補償する「戸別所得補償制度」をあげている。

 これらには、「ばらまき」との批判もある。政策の妥当性や財源の手当てなどについて、民主党は、有権者に十分、説明する必要がある。

 年金問題は、ようやく与野党で制度論争が始まった。消費税率引き上げも含めて、さらに論議を深めたい。

 民主党は税率を据え置き、消費税収の全額を基礎年金に充てるとしている。これで年金給付を賄えるのだろうか。医療なども含めた社会保障全体の財源確保についてはどう考えるのか。

 ◆深めたい消費税論議◆

 安倍首相は、「消費税を上げないとは一言も言っていない」と言った後、軌道修正を図るなど発言は揺れている。

 選挙での増税論議は、政党にとって鬼門だろう。だが、前回参院選で勝利した民主党は、「年金目的消費税」の導入を掲げ、3%の引き上げを主張していた。消費税について、しっかりと論議するのも、政治の責任だ。

 憲法改正は、首相の「戦後レジームからの脱却」の核心だ。内閣の旗印のはずである。

 首相は、憲法改正の内容と道筋について、もっと明確に主張していくべきだ。民主、公明両党は、公約をみても及び腰だが、民主党の小沢代表は、もともと改憲論者である。首相と小沢代表の間で改正問題について論じ合ってはどうか。

 北朝鮮が進める核武装化は、日本にとって極めて深刻な脅威だ。だが、6か国協議でも、北朝鮮の核廃棄が実現するのか、先行き不透明感が強まっている。中国は依然として軍事力を強化している。日本の安保環境は、最悪の状況にある。外交・安保論戦がこのまま低調でいいはずはない。

 ◆参院はどうあるべきか◆

 今回の参院選は、自民党と民主党とがほぼ同数の候補者を擁立しての「2大政党」対決型選挙である。

 自民党は1989年の参院選以来、単独過半数を失ったままだ。96年以降は、他党と連立政権をつくるなどして国会運営にあたってきた。今回の選挙戦では、自民、公明両党の「与党」が、過半数を維持できるかどうかが、最大の焦点になっている。

 小沢代表は第一声で、野党が過半数をとれなかったら「今後の日本では政権交代はありえない」として、与党を過半数割れに追い込む考えを強調した。

 年金の記録漏れ問題、閣僚の不適切発言、政治資金絡みのスキャンダルで、自民党への逆風が強まっている。与党が過半数割れし、野党が参院で主導権をとれば、安倍政権の基盤は大きく揺らぐ。小沢代表は、政界再編も視野に入れつつ、衆院解散に追い込む作戦だろう。

 それでは、参院を政権奪取のための道具にすることにならないか。

 参院は、衆院の行き過ぎを抑制する「再考の府」とも言われる。しかし、政権を争う主舞台である衆院での政党間対立がそのまま参院に持ち込まれ、参院が「政局の府」になっている。

 こうした参院のありようをどうみるか。今回の参院選は、参院の機能や役割を考える好機でもある。
(2007年7月13日1時34分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月13日付 編集手帳

 嫁の堅苦しい言葉遣いに周囲が戸惑う。落語「たらちね」である。「今朝(こんちょう)は怒風(どふう)激しゅうして小砂眼入(しょうしゃがんにゅう)し、歩行なりがたし」と挨拶(あいさつ)されては、人が面食らうのも無理はない◆言葉は、相手の胸に納まって意味をもつ。「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく」は作家、井上ひさしさんの座右の銘と聞くが、「小砂眼入」は言葉を業とする者にとって不断の戒めだろう◆参院選が公示された。言葉に生きる政治家諸氏も、有権者の胸に納まる平易な語りをお忘れなく…と注文をつけて済めば話は簡単だが、今回は年金を含む社会保障のあり方が最大の争点になっている◆かみ砕いても、かみ砕いても、なおなにがしかの難解さが残るのが年金論議である。7党首の討論会でも、「基礎部分」「所得比例部分」「財政見通し」などの用語とともに、幾つもの数字が飛び交った◆候補者や党首が「むずかしい」ことを極力、「やさしく、ふかく」語るのは当然として、聴く有権者にも、制度の仕組みや用語を敬遠せずに咀嚼(そしゃく)していく努力が求められよう。「劇場型」ならぬ「学校型」の選挙戦かも知れない◆積もり積もった行政の怠慢が小砂となって眼入し、老後の生活は著しい視界不良のもとにある。歩行なりがたき今、いつに増して重い一票である。
(2007年7月13日1時39分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】07参院選 年金 党利党略抜きで論議せよ

 少子高齢化が加速し、担い手が減って受給者が増えるなか、将来の「年金制度」をどう変えていくか。どうすれば安定した年金運営ができるのか。これが「年金問題」最大の課題であり、今回の参院選の争点でもある。

 にもかかわらず、選挙を前にした国会での与野党の論争は、宙に浮いた年金記録の紛失問題に終始した。

 これでは本末転倒だ。老後への不安はなくならない。それどころか、年金不信は募るばかりである。

 今後の選挙戦で各党はあるべき年金制度の姿を分かりやすく国民に説明し、有権者の審判を仰ぐべきだ。

 11日の党首討論では、年金制度の財源論を中心に各党の本音がおぼろげながら見えた。

 たとえば、基礎年金の国庫負担割合が引き上げられるための安定財源確保について、安倍晋三首相は「消費税を上げなくて済む状況にもっていきたい。徹底した歳出削減に取り組む。新経済成長戦略で税収増を何とか実現していく」と述べた。

 民主党は従来の公約を踏襲し、基礎年金財源の全額税方式をとる。しかし、財源については2年前の衆院選の年金目的消費税(税率3%引き上げ)を引っ込め、現行の消費税率のまま全額を基礎年金財源に充てるという。

 有権者の懐に直接触れるせいか、どうも財源論については与野党ともに歯切れが悪い。まだまだ、議論が足りないからだろう。もっとはっきりとした論議を展開してもらいたい。

 年金情報をのぞき見して漏らしたり、不正手続きで保険料の納付率アップを装ったりと、次々と不祥事が発覚した社会保険庁を解体し、改革する法律は成立した。3年後に非公務員型公法人の日本年金機構に年金業務は引き継がれる。

 しかし、どこまで民間委託し、どうやって問題職員をふるいにかけるのかなど、具体的なことは何も決まっていない。歳入庁構想もあるだろう。与野党はもっと真剣に議論すべきだ。

 単に「100年安心」と言われても国民は納得しない。少子高齢化や経済成長、世論など多岐にわたる要素を念頭に、党利党略抜きに論議を深めてもらいたい。それが国民の年金不信解消につながる。

(2007/07/13 05:07)

【主張】消費者保護 大きな負担は効果をそぐ

 消費者保護の枠組み整備が急ピッチで進んでいる。経済産業省は、訪問販売、電話勧誘販売、通信販売による悪質商法を規制する特定商取引法を改正する。

 原則としてすべての商品・サービスについて一定期間内ならば、無条件に解約できるクーリングオフを可能にする。現行では対象品目を個別に指定しており、問題が発生するたびに該当する商品やサービスを加えるという後追いとなっていた。法律改正で、そんな「いたちごっこ」は終わるはずだ。

 また、高齢者に呉服や高級ふとんなどを大量に分割払いで売りつけ、行方不明になる業者もある。この場合、クーリングオフができず、信販会社に代金を支払い続けなければならない。

 そこで、割賦販売法も改正し、悪質業者の信販会社への参入を防ぐとともに、クレジット契約もクーリングオフの対象とする。信販会社には、信用情報機関に照会し消費者の支払い能力を事前審査することも義務付ける。

 悪質業者の信販参入規制は当然だ。老人が高額商品を大量に購入するような契約も、型通りの審査で分割払いを承認する信販会社への批判は強かった。応分のリスクを負わせることで、信販会社も慎重になるはずだ。

 政府のこうした取り組みの姿勢は評価すべきだ。とりわけ、悪質商法の根絶には全力を尽くしてほしい。

 ただ、消費者保護策の中には、やや首をかしげたくなるものもある。

 例えば、導入が固まった、ガス瞬間湯沸かし器などの点検・修理制度だ。製品劣化事故を防ぐため、メーカーに長期間、利用者への点検時期の通知と有料点検・修理を義務付ける。利用者は連絡先をメーカーに伝える。

 期間は製品ごとに決めるが、目安は出荷から「10年間以上」という。この間、利用者の転居先が分からなくなったり、リサイクル店などに処分したりした場合、メーカーに所在の把握ができるのか。利用者がそのたびに連絡しなければならないのか。

 メーカー、利用者の双方に負担がかかり過ぎて、実効性を損なわないかとの懸念が残る。「消費者保護」「安全重視」の流れを止めないためにも、対策を講じる場合は、負担と効果の兼ね合いを吟味しなければなるまい。

(2007/07/13 05:06)

【産経抄】

 昭和30年ごろの話である。いっしょに町を歩いていた知り合いの作家が、路上で4枚の千円札を拾い、警察に届け出た。今なら4、5万円に当たるだろうか。結局落とし主が現れず、全額を受け取ることになった作家から相談を受ける。

 ▼「この金はだれの物なのでしょうか」と。以前別の知人が、似たような経験をしていたので、すぐ答えることができた。「だれのでもない金はだれよりも不幸なものの物である」。知人は細君と相談して、手にした金を孤児院に届けていた。

 ▼ 早速、盲学校に出かけて校長に金を手渡した作家は、子供たちから感謝の演奏をささげられる。門を出てからも、耳に音がよみがえってきた。「一本刀土俵入」などで知られる長谷川伸によると、作家は「頬(ほお)に涙をながしつつ歩いていた」という。小説のタネにするために、書き損じの原稿用紙の裏に書き留めていた挿話(そうわ)のひとつだ。

 ▼全国の県庁や市役所の男子トイレで和紙に包まれた一万円札が見つかり、総額400万円以上にのぼっている。持ち主が現れなければ、職員が発見した場合を除いて約6カ月後には、届け出た人の所有となる。

 ▼「修業の糧としてお役立て下さい」と書き残した人物の目的はわからないが、「自己顕示」のにおいがプンプンする。世のため、人のために大金を使う「善行」というより、世間を騒がせて面白がっているとしか思えない。

 ▼ 子供時代から辛酸をなめ尽くしてきた長谷川は、流行作家となってからもつましい暮らしぶりを変えなかった。戦時中は、海軍と陸軍に匿名で献金を続け、戦後は「子供がいない代わりに」と、苦学生の学費を援助し、就職の面倒までみた。昨今の謎の1万円騒動を知ったら、なんというだろう。

(2007/07/13 05:07)


【日経・社説】

社説 地域の活性化は地方分権と規制緩和で(7/13)

 参院選が公示された。昨年9月に安倍政権が発足してから初の本格的な国政選挙である。各党が掲げたマニフェスト(政権公約)を基に、主要な課題についての政策の差異や疑問点を点検してみよう。

 日本経済は全体として緩やかな拡大が続いているが、地域間の格差は残っている。地域経済の活性化にどう取り組むかは、大きな政策課題のひとつである。

問題多い補助金配布

 日銀が発表した6月の企業短期経済観測調査によると、企業の景況感を示す業況判断指数(全産業ベース)は中部、近畿など大都市圏が大幅なプラスになっている。これとは対照的に、北海道や東北、四国などはマイナスだ。以前よりもマイナス幅は小さくなったものの、これらの地方では景気が「悪い」とみる企業の割合が「良い」をなお上回る。

 雇用情勢でも有効求人倍率が2倍を超す愛知県を中心に大都市圏では人手不足感が強い。一方、北海道や高知県、沖縄県などの求人倍率は低く、労働力に余剰感がある。

 安倍政権は「地方の活力なくして国の活力なし」と地域経済のテコ入れに取り組んでいるが、まだ十分な効果は表れていない。

 自民党は参院選のマニフェストで企業誘致の促進や観光振興、地域再生を担う人づくりを打ち出し、地域資源を活用した中小企業による新事業の創出では5年間に1000件という数値目標も掲げた。これに関連する法律も先の通常国会で成立した。

 かつてのように公共事業をばらまくのではなく、人づくりや地域資源などソフト面を重視した点は評価できる。ただし、国が基準を設けたうえで、それに適した事業を選んで補助金を配る手法はこれまでと同様だ。地域の活性化を名目に地方向けの細かな補助金が増えているのは、財政規律の点でも問題があろう。自治体が自由に使えるはずの地方交付税を補助金のように扱う「頑張る地方応援プログラム」も、地域活性化につながるかどうか疑問符が付く。

 一方、民主党はすべての農家を対象とする所得補償制度の創設を地域活性化の柱に据え、地場の中小企業の研究開発を税制で支援する政策も盛り込んだ。数値目標を示した項目では、林業で100万人の雇用を目指すとの項目が目を引くが、現在の林業就業者は5万人程度であり、目標数値が過大と言わざるを得ない。

 景気回復が鈍い地域は官需への依存度が高く、建設業者が地域経済の中心という構造のままである。公共工事の発注額はピークの1998年度に比べて4割強も減ったが、建設業者の数は1割しか減っていない。

 活力を取り戻すには、こうした矛盾を抱える産業構造の改革が欠かせない。この点で自民党は「中小・中堅建設業の経営基盤の強化を促進する」と述べているだけだ。さらに踏み込み、地方建設業界が再編統合を進めて農業や福祉など新分野へ進出するのを後押しすべきだろう。

 経済グローバル化に対応して産業構造の改革を進めていくという視点も大切だ。最近では外国企業の直接投資によって地方企業が再生する事例も目立っている。海外からの投資や外国人観光客が増えれば地域経済の刺激になる。自民、民主ともに、この視点での政策が物足りない。

民間の力を引き出せ

 地域を活性化する最大のカギは地方分権と規制緩和である。国が横並びの事業を地方に押し付けるのではなく、自治体が創意工夫し、各地の特性に応じて民間の力を最大限に引き出すことが重要だ。企業を誘致するための大胆な減税や、土地利用規制の大幅な緩和などは、現在の制度ではなかなか難しい。

 分権については自民、民主とも前向きだ。自民党は道州制導入に関して、2005年総選挙時の「検討」から今回は「推進」へと一歩進め、新分権一括法案の 3年以内の提出も明記した。民主党も「分権国家」の実現を掲げ、自治体の条例制定権を強化し、地方への補助金を全廃する方針を打ち出した。だが、国から地方への税源移譲については両党とも明確にはふれていない。この点では公明党が国と地方の税源比率を将来、一対一にすると明記している。

 税収の格差も問題になっている。05年度の住民1人当たりの地方税額を見ると、最大の東京と最少の沖縄で3.2倍の開きがある。

 自民党が提唱する、住民税の一部を故郷などに振り向ける「ふるさと納税」では、格差はほとんど縮まらないだろう。全国知事会は三大都市圏から地方に流れるお金は最大で1300億円程度と試算している。地方分権の推進と併せて、地域間のばらつきが少ない地方税を増やすなどの本格的な制度改革が必要になる。

【日経・春秋】(7/13)

 JR上野駅から横町を通って浅草へ向かうと、途中の、寺が並ぶ一角に秋葉神社がある。明治の半ば、今の秋葉原駅を建設するときに、ここに遷座した。世界一の電気街で、昨今は「萌(も)え!」の街の地名・駅名はこの神社に由来する。

▼参院選党首第一声の場所に、自民党は秋葉原駅前を選んだ。梅雨空から雨がぱらつくなか、東京都選出の衆院議員や都議会議員らが顔をそろえた演説会場を囲む聴衆に、これはアキバ系のパソコンマニア、メイドカフェファンだ、と思われる若い人はほとんどおらず、アキバとは縁遠そうな年齢の方ばかりだった。

▼対する民主党は意表を突き、岡山県山間部にある過疎の新庄村を予定したが、悪天に阻まれ、岡山市に変わった。公明は名古屋。あとは東京で、共産と社民は新宿、国民新党は有楽町、新党日本は築地だ。大事な選挙戦のスタートを切る場所だ。たくさん人が集まるだけでない理由や狙いがあって決めたのだろう。

▼秋葉原駅を造る前、辺りは、明治初年の大火の後、町の家屋を取り払って設けた火除地(ひよけち)だった。その真ん中に鎮火の神様を祭る秋葉神社を建立し守護神とした、と神社の縁起にある。年金や政治とカネの問題などで燃え上がった火の手を鎮める狙いを込めて自民党は場所選びをしたのかどうか、そこは分からない。


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