« 知れば知るほど怖~い関係、今回の地震の震源地と柏崎刈羽原発、&中越地震震源地、&深沢(ガス注入現場)の位置関係について。 | トップページ | 7月22日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。 »

2007年7月21日 (土)

7月21日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月21日朝刊)

[米軍装甲車侵入]実に傍若無人な行為だ

 米軍は一体どういう感覚をしているのだろうか。

 装甲車というのは、物資や兵士を運ぶトラックなどの車両とは異なり戦闘車両といっていい。そのような米海兵隊の異様な車が、うるま市にある県立沖縄高等養護学校の敷地内に侵入し、方向を転換して出て行った。

 海兵隊は誤って進入したことを認めている。だが、生徒らの恐怖感をあおり、不安を与えたのは確かだ。米兵の傍若無人な行為には怒りを覚える。

 防犯カメラには迷彩色を施した装甲車が正門から入り、しばらくして出て行くのが写っている。言うまでもないが、周辺の風景からそこが学校だということは容易に察しがつく。

 しかも、装甲車がUターンした所は生徒らが日常の活動を行っている場所だ。実際、装甲車が入ってきたとき、生徒五、六人が近くを走っていた。

 そのような場所に乗り入れ、四十秒ほど後進や前進を繰り返したというのだから呆れ果てるしかない。兵士への教育はどうなっているのか、在沖海兵隊指導部の感覚を疑わざるを得ない。

 同校の塩浜康男校長は、「養護学校には、大きな音や見慣れないものを見るとパニックを起こす生徒もおり、許せる問題ではない」と話している。

 仲井真弘多県知事も「常識外というか、普通なら考えられない。あいさつも断りもなく(学校内に)入るなんて、日米地位協定以前の問題。非常識の極み」と述べている。

 当然であり、今回の行為は絶対に許されるものではない。

 海兵隊報道部は「日米地位協定に基づき、通常訓練から戻る途中だった。地域に不安を与えたとすれば残念だ」とコメントしている。

 宜野座村漢那の村加工直売センター「未来ぎのざ」駐車場への乗り入れしかり。米軍は、事あるたびに地位協定を盾に弁明するが、もうそういうことをやめさせようではないか。

 確かに地位協定は、基地や訓練施設間の移動の際の公道使用を認めている。だが、それは今回のように学校施設内にも及ぶのだろうか。

 もし、そうであればそれこそおかしいのであり、地位協定を抜本的に改正していく必要がある。

 外務省は「学校に無断で進入することは不安を与える行為であり、今後同じことが起きないよう米大使館に申し入れたい」と言うが、悠長に過ぎる。

 私たちが求めるのは外務省による怒りの抗議であり、県民の憤りを県民の側に立って訴えることだ。申し入れるだけではなく、このようなことは二度としないと約束させることが大事だ。

[キジムナーフェスタ]親子で感動を味わいたい

 先ほどまでおしゃべりしたり、ふざけ合っていた子どもたちが舞台が始まると、じっと見入る。興味津々といった表情だ。そして笑いの渦が会場を包む。演技者の一つ一つの動きにくぎ付けだ。子どもたちは目を輝かし、演劇に感動した様子だった。

 昨年の国際児童・青少年演劇フェスティバルおきなわ(愛称・キジムナーフェスタ)の一公演の光景である。優れた児童演劇は国も言葉も越え、子どもたちだけでなく大人の心も魅了する。

 今年のキジムナーフェスタは、二十一日から二十九日までの九日間、沖縄市で開かれる。沖縄市、実行委員会などが主催し、沖縄タイムス社などの共催だ。

 世界十五カ国から三十九劇団が集い、四十六作品が上映される。

 新しい企画としては絵本カーニバルがあり、「日本昔ばなし」でおなじみの市原悦子さん、常田富士男さんが民話の世界に誘う。このほか演劇を通して紛争地域の子どもたちのことを考えるシンポジウム、バレエなどのワークショップ、琉球古典音楽、落語など多彩な公演がめじろ押しだ。

 三回目となるフェスタは好評で、前売り券が完売した作品も多いという。過去二回で、世界の児童演劇の素晴らしさがすっかり定着したのだろう。見る人たちの五感に訴える演劇の奥深さが理解されたのかもしれない。

 優れた文化、芸術との出合いは子どもたちの感性を磨く。子どもの時に触れた文化、芸術がその後の心の成長に大きく影響するからだ。郷土文化で子どもたちの心をはぐくむと同時に、楽しみながら世界の文化に触れるのがキジムナーフェスタの良さである。

 さまざまな言語による物語。創造性をかきたてる演技。心を和ませるユーモア。舞台と会場の一体感も楽しい。どれも生の演劇でしか味わえない感動がある。演劇を通して世界の出来事を知る絶好の機会にもなるはずだ。夏休みも始まった。親子一緒に夢にあふれる舞台をぜひ見てもらいたい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月21日 朝刊 1面)

 オールディーズのバンドで有名な那覇市松山のライブハウス。午前零時を過ぎて、いよいよ盛り上がりを見せるころ、車いす四人を含むグループが入ってきた。

 客が乗れば大半はフロアで踊る店だから、どうなるんだろうと心配したが、すぐに杞憂となった。何人かは常連さんのよう。頭上に大きく手拍子を打ち、上半身でリズムを取ってノリノリだ。何の違和感もない。

 彼らが入店した直後に、驚くべき光景が。フロアにある約十五センチの段差を、前輪を浮かし、バイクの「ウイリー」状態でバランスを取り自力で降りてしまった。ただ者ではない。話してみると、車いすバスケで有名な沖縄シーサークラブのメンバーだった。

 うちの一人、平良幸一さんの職場を後日訪ね、話を聞いた。「あれくらいなら、うちのメンバーだとだいたいできます。やろうと思えば階段だって降りますよ」。バスケは高さを競うので、片輪を浮かしてシュートする技もあるとか。

 平良さんは中学三年のときに不慮の事故で車いす生活になった。約三十年前だ。街に出ると奇異に見られ、差別的な視線を受けたと振り返る。今は障害者に対する理解や設備が進み、当時がうそのようだと言う。

 「不便ではあるが不自由さはない」と何度も繰り返す。でも平良さんのように、スポーツまで楽しめる例は少ない。「ほとんどの車いす利用者は、周囲の手助け、介助が必要なんです」と穏やかに話した。(山城興朝)


【琉球新報・社説】

米軍装甲車侵入 許されない傍若無人さ/占領意識の払しょくが必要だ

 またも米軍の事件である。18日、事もあろうにうるま市の沖縄高等養護学校内に米軍装甲車が無断で侵入し、公然とUターン。かと思えば、宜野座村の特産品加工直売施設の駐車場に相次いで計7台の装甲車が乗り入れ、買い物客を騒然とさせる。まさに傍若無人の振る舞いである。
 装甲車が無断侵入し、Uターンした養護学校内では、陸上部の生徒たちがランニング中だった。同校の防犯カメラに映った映像を見ると、その危険性は明らかだ。
 突然の装甲車の学校侵入に「陸軍が入ってきた」と職員に訴えてきた生徒もいたという。
 養護学校の中には、人一倍繊細で敏感な生徒たちも少なくない。恐怖はいかばかりか。

行為は「非常識の極み」

 ヘルメットをかぶった兵士が装甲車のハッチから頭を出し、通りをうかがう様子も確認されている。
 米中枢同時テロ(9・11)以後、米国はアフガン進攻、イラク攻撃といまなお「戦時」にある。だからというのであろうか。
 有事でもなかろうに、学校内や民間地に装甲車が大挙押し寄せる。沖縄戦が終わってすでに62年。日米講和条約が発効し55年。米軍統治下から沖縄が本土に復帰して35年にもなる。まさか米軍は、沖縄をいまだ米軍統治下の占領地とみてはいないか。
 事態に、仲井真弘多知事は20日午前の定例会見で「いくら軍隊とはいえ、学校に断りもなく(乗り入れ)、Uターンするとは常識以前の問題だ」「非常識の極み」とまで怒りをぶつけている。
 米軍側の釈明はこうだ。特産品駐車場への乗り入れは「安全整備のために一時停車」。学校侵入は「一台が方向を誤り、国道224号沿いの学校の駐車場へ侵入したが、即刻方向転換し、車列に戻った」。とても納得などできない。
 安全整備の場所が足りず、民間駐車場を使う。沖縄本島の20%を占める米軍基地である。整備の場所はいくらでもあるはずだ。
 緊急な整備が必要な事態が起きたとすれば、なお問題だ。何しろ、3年前には整備不良で米軍ヘリを大学構内に墜落炎上させた“前科”もある。タガが緩んでいないか。
 米軍はそこが学校であることを認識しながら侵入している。本紙への回答文で米軍は「海兵隊は地域の方々そして隊員の安全を最優先事項としている」と強調しているが、学校への無断侵入は生徒の安全を無視した行為だ。
 しかも今回の一連の事件に、米軍は装甲車が「道路の通行を許可されている」としているあたりは、問題としての認識が欠如しているとも受け取れる。
 納得がいかないのは外務省の対応だ。学校内への無断侵入も含め「法的に立ち入ってはいけないとはならない」と、米軍の行為を容認している。

犠牲強いる“欠陥協定”

 日米地位協定に詳しい本間浩法政大教授は「米軍が無断で民間施設を使うことは全く許されていない」と、米軍の協定違反を指摘している。
 専門家の指摘を、外務省が否定する。「本土で起これば国会で厳しく指摘される問題」(本間教授)が、沖縄なら許されると米軍も外務省も甘くみてはいないか。
 3年前、本紙は日米地位協定改定キャンペーンを展開した。国民・県民に犠牲を強いる不平等協定の重大な問題点を、外務省の機密文書で明らかにした。
 航空法で禁じる米軍の低空飛行を「基地間移動」と拡大解釈で容認し、裁判権放棄で米軍優位の裁判を支援し、国内法違反の米軍戦車移送を法改定で合法化するなど対米追従の政府・外務省の姿勢と米軍優先の実態が、機密文書で次々に明らかになった。
 格安の自動車税、高速道路のタダ乗り、使い放題の光熱水費と、日米地位協定を超える「思いやり予算」の問題もある。
 「法律順守の意識を持っていない人たちが指揮官」(本間教授)という米軍にいかに再発防止を求めるか難題だが、学校への無断侵入すら「合法」とする外務省の対応は、あまりに悲しすぎる。
 地位協定違反の有無を問う前に、暴挙を抑止できない米軍優先の地位協定自体が問題の本質である。再発防止のためにも“欠陥協定”を国民本位に改定し、傍若無人の米軍のふらちな行動に、きちんと歯止めをかけたい。

(7/21 10:03)

【琉球新報・金口木舌】

 やはり、難しいということなのだろうか。「慰霊の日」を前に一般公開した「沖縄陸軍病院南風原壕群20号」は1カ月がたち、壕内の劣化が進んでいるという
▼先日開かれた「南風原平和ガイドの会」(藤原政勝会長)での意見交換会で、劣化は“予想以上”だということが分かった。一度に多くの見学者を受け入れず、じっくりと戦争遺跡と向き合い戦争の実相を知ろう、という取り組みは大切だ
▼これまでの見学者は2100人。一度の見学人数を10人以下に抑え、“壕の負担”を最小限にする取り組みにボランティアガイドの支えも大きい。壕中央の天井に掘られた「姜」の文字は劣化し薄くなっている。誰かが指で触れた跡もあるという
▼ガイドは、壕内のものに触れないよう見学者に説明するが、耳を傾けない人がいるのは残念だ。「保存と公開」の論議は以前から続く。保存処理のためレプリカにしたらどうかという声がある一方で、すべてを見せるのが重要との声も
▼保存処理には多額の費用が掛かる上、崩落の危険性もあるようだ。一般公開をした以上、公開しながら保存する方策について皆で知恵を出し合いたい
▼難しいから、とあきらめるわけにはいかない。戦争遺跡が語る歴史は重い。

(7/21 10:24)


【東京新聞・社説】

6カ国協議 米国は重荷を背負った

2007年7月21日

 北朝鮮の「核放棄」へ向けて「次の段階」の措置に進むことが合意された。しかし、肝心の実施期限は明記されなかった。北朝鮮との直接接触で六カ国協議を先導してきた米国の責任は重い。

 予想された通りだった。

 六カ国協議の首席代表会合は、三日間の日程を終え、中国の武大偉外務次官は共同報道文を発表して、参加国が「次の段階」への移行を確認したことを成果として強調した。

 さる二月の六カ国協議で合意した「初期段階の措置」である五つの核施設の稼働停止・封印は、すでに実施に移された。

 「次の段階」では、北朝鮮が「すべての核計画の完全な申告」と「すべての既存の核施設の無能力化」を実施することになっている。

 このため、今回の会合の焦点は「次の段階」の実施期限を設定できるかどうかにあった。

 米国代表のヒル国務次官補は「年内実施」の見通しを示していたが、北朝鮮は抵抗し、報道文に期限を盛り込めなかった。期限がなければ時間稼ぎを許すことになる。

 核兵器を体制保証の最大の“武器”とみる北朝鮮にとって、核放棄は存亡をかけた判断になる。期限設定の難航はかねて予想されていた。

 今回の会合では、八月に非核化、経済・エネルギー支援、北東アジアの平和と安全−など五つの作業部会、九月上旬には次回の六カ国協議を開くことで合意した。

 ここで、具体的段取り、期限を設定できるよう、周辺国はこれまで以上の連携が求められる。

 とくに米国には重い責任がある。最近、北朝鮮が求める米朝直接折衝にしばしば応じて、六カ国協議を先導する形になっているからだ。

 しかも、資金洗浄という不法行為を不問に付し、ヒル氏は平壌まで出かけて行った。協議の進展には、ある程度の妥協は必要だが、一度妥協すると、北朝鮮はさらに要求をつり上げ、時間稼ぎをする。

 これからもテロ支援国の指定解除や「体制の保証」など、難題を持ち出しそうだ。妥協は結果として核放棄を遠ざける。

 また米朝が進むのに伴い、北朝鮮は米国と他の周辺国との離間策を使い始めた。日本に対しては拉致問題などを理由に非難を繰り返し、米朝軍事会談を提案して韓国はずしを画策するなど攻勢をかけている。

 日本も韓国も「次の段階」での見返りの対北支援では重要な役割を果たさざるを得ない。それに、多国間の枠組みでなければ、「核放棄」は実現できない。米国は周辺国との一層の意思疎通が必要だ。

若者の雇用 正社員化進める方策を

2007年7月21日

 景気回復と団塊世代の退職などを背景に雇用情勢は改善したが、フリーターやニート(無業者)など若者の状況は厳しいままだ。参院選では若年者の雇用対策をもっと論じてもらいたい。

 今や労働者の三人に一人は非正規雇用者である。総務省の労働力調査では昨年の正規雇用者は前年比三十七万人増えて三千四百十一万人に、非正規雇用も四十四万人増の千六百七十七万人となった。今年四月の完全失業率は3・8%と九年一カ月ぶりに4%を下回った。雇用の改善は順調だ。

 だが若者たちの雇用は依然として厳しさが残る。十五−三十四歳のフリーターは三年連続で減少したが百八十七万人もいる。非労働力であるニートは六十二万人。せっかく就職しても三年間に離職する者が中卒で約七割、高卒で約五割、大卒で三割以上という“七五三現象”が続く。これが高い失業率に結びつく。

 こうしたことから今年の青少年白書は「社会的自立が困難な若者が多い状況は、健全な社会とは言えない」と警鐘を鳴らしたほどだ。

 フリーターなどを放置すれば所得や結婚、教育、年金などあらゆる場面で格差が拡大する。少子化対策も進まない。高齢化で生活保護も拡大しよう。政府が若年者対策に真剣なのもこうした理由があるためだ。

 政府の「フリーター二十五万人常用雇用化プラン」は企業によるトライアル雇用などを通じて若者たちの就職を支援するものだ。厚生労働省は「三十五万人の就職を実現し九割以上が正社員になった」という。

 政府はさらに再チャレンジ支援策の一環として国家公務員3(ローマ数字の3)種(高卒程度)で初めて中途採用試験を今秋に実施する。また十月施行予定の改正雇用対策法では企業に募集や採用時での年齢制限を原則禁止し、中途採用の増加を求める狙いがある。これらはしっかりと推進すべきだ。

 だが肝心の企業側の姿勢は厳しい。日本経団連が昨年夏に実施した企業アンケートによると、フリーターの中途採用について約七割が「経験・能力次第で採用する」などと答えたものの、「採用しない」とはっきり回答した企業も24%強あった。こうした姿勢は変える必要がある。

 今回の参院選で各党は格差是正と雇用対策を重点公約に掲げている。自民党は就職氷河期に直面した年長フリーターの正社員化推進を掲げ、民主党も非正規雇用者の均等待遇やフリーター・ニートの就職支援を打ち出した。各党の政策の方向は正しい。さらに踏み込んだ具体策をまとめ有権者の審判を仰いでほしい。

【東京新聞・筆洗】2007年7月21日

 随筆家岡部伊都子さんは西瓜(すいか)好きである。「ま夏はほとんどごはんが食べられない…ともかく、ではじめたころから、なくなってしまう終(おわ)りまで、毎日西瓜を配達してもらって…三度三度、西瓜をしゃりしゃり食べておくのが、毎年のならわしとなった」(『伊都子の食卓』藤原書店)▼岡部さんは、沖縄で戦死した婚約者や、学徒兵として南方で戦死した隣家の医学生と食べた西瓜が忘れられない▼灯火管制下の大阪・心斎橋に出て、二重の暗幕をあげてはいったある喫茶店で、少女が無邪気にかぶりついた真っ赤な西瓜から、ピュッとお汁が飛んで、青年の頬(ほお)にかかった▼出征前夜「この戦争は間違っていると思う。天皇陛下の御為なんか死ぬのはいやだ」という婚約者に「私やったら喜んで死ぬけど」と言ってしまった。戦争に加担したという慚愧(ざんき)の思いが、戦後の文筆活動の出発点となる▼岡部さんは、自殺を思いつめた人や、へとへとに疲れ切った人々にはこういう。「ともかくも、今夜はおいしいものを食べてちょうだい。あなたのいちばん好きなものを食べて、それから、これからどうするかを決めましょうよ。おいしいものを食べて、美しくお化粧をしてね。それからよ、死ぬのは」。好きなものを食べることができれば生きていられる▼八十四歳になった岡部さんの著作百三十三冊から選(よ)りすぐりの言葉を集めた『清(ちゅ)らに生きる』(同)が出た。その一つに「人間の愛とは、よりそうことだと思う。一方が一方に近づくのではなく、双方からよりそうことだ」とある。


【河北新報・社説】

’07参院選を問う 憲法/各党は争点明確化に努めよ

 憲法問題が参院選の鮮明な争点になっているかというと、そうとは言えない。公示直前から気になっていたが、自民党も民主党も憲法改正をめぐる各党間論争に後ろ向きに見える。

 年金問題などの風圧が強い自民党は「憲法は票にならない」と、自主憲法制定の党是や「憲法を参院選の争点に」とした安倍晋三首相の約束をどこかにしまい込んでしまった観がある。

 民主党の小沢一郎代表も公示前日の党首討論会で「参院選で憲法問題を掲げる必要性を私は認識していない」と述べ、憲法論戦に冷水をかけてしまった。
 こうした憲法問題の争点外しは二つの点で納得がいかない。

 参院選で「年金」に関心が集中しているのは確かだが、有権者は暮らしの問題だけでなく、「政治とカネ」や安全保障・平和の問題を含めて「国の針路をどう取ったらいいのか」「国の形をどうつくるのか」といったトータルな問いかけをしようとしているのではないのか。

 憲法は大事な問いかけの一つのはず。それを欠くことは有権者に目隠しをするのに等しい。これが納得できない一つだ。
 二つ目は、先の国会で成立した国民投票法(憲法改正手続き法)に関係する。安倍内閣は衆参両院のそれぞれ3分の2の同意が要る改憲発議を2010年に目指すので、この参院選は任期中に初の発議にかかわる参院議員を選ぶ選挙になるのだ。

 国民の憲法観は10年以降の国民投票時にいきなり問われるのではない。それは、この参院選を皮切りに国民投票まで行われる何回かの国政選挙を通して3分の2の合意勢力または反合意勢力を選ぶ過程で問われる。
 これだけ国民投票と深くかかわる今回の選挙で憲法を語らないわけにはいかないだろう。

 新憲法草案をたたき台とした「改憲」の自民、不足点や改正
点を補い改める「論憲」の民主、環境権などを重視する「加憲」の公明、争点化に積極的な「護憲」の共産、社民、自主憲法の国民新…。有権者は各党の立場と主張を比較したいのだ。

 その上で、自民、民主の両党にあらためて注文がある。
 安倍政権は衆参両院の3分の2の改憲発議勢力が不可欠な将来の明文改憲とは別に、首相の肝いりでつくった政府の有識者会議「安全保障の法的基礎に関する懇談会」で日米同盟強化に向けた集団的自衛権行使の容認を柱とする解釈改憲の道をこの秋までに開こうとしている。

 少なからぬ世論は解釈改憲路線が暴走しないか危うさを感じている。安倍首相はこれを否定するなら、明文改憲と解釈改憲の関係を整理して示すべきだ。
 民主党の小沢代表は「憲法改正は国民の合意がなければできない」と繰り返し強調する。しかし、これは当たり前のことだ。
 国民投票法成立後にとりわけ政党に求められる役割は、党としての明確な憲法観と方針を持ち、国民的な合意を形成するための先頭に立つことだろう。
 「国民的合意」という言葉は決して党内意見を調整するための隠れみのではないのだから。
2007年07月21日土曜日

【河北新報・河北春秋】

 仙台市の緑化行政はどうもちぐはぐだ。湿った半日陰を好むモチノキを人口100万人達成の記念に、日当たりのいい市役所前庭に植えたことがある。当然、ほどなく枯れた▼街路樹のトウカエデの葉が市内の全域で黄変したことがある。なぜか市は樹木の病気と思い込んだ。薬剤を散布したり枝を切ったりした。原因は単なる水不足だったことが後に分かる

 ▼ 今回は地下鉄東西線工事に伴う青葉通のケヤキをめぐる迷走だ。当初、223本のうち50本の撤去が必要だった。市は全部を移植する方針を示したが、実に多くの市民が反対して計画撤回▼年老いたケヤキを移植しても残念ながら多くが枯れてしまう。高額な移植経費も問題だ。常識で考えてみれば、結論は言わずもがなだったろう。かわいそうでも、やはり伐採が妥当な選択だ

 ▼市が委嘱した杜の都の環境審議会にも責任がある。というのは、過去に移植したケヤキの多数が枯れ、それを表ざたにするなという意見が委員から出ているからだ。事実を隠され、市民は蚊帳の外に置かれた▼おかげで2度も市民アンケートを行うなど痛い授業料を払った。ただし維持管理に法外な費用がいらない緑化を考える契機にはなったか。ちぐはぐぶりを解消するためにも今後は市民がオープンに議論できる場をぜひ。

2007年07月21日土曜日


【京都新聞・社説】

6ヵ国協議  「次の段階」中身が重要

 相変わらず北朝鮮のペースだったということだろう。
 北朝鮮核問題をめぐる六カ国協議の首席代表会合は三日間の協議を終え、共同報道文を発表した。
 二月の六カ国協議での合意に基づく核施設稼働停止など「初期段階措置」開始を受け、「次の段階」となる核施設の無能力化と核計画の申告について、北朝鮮が「真剣に履行する」ことを確約。八月中に五つの作業部会、九月上旬に次回六カ国協議を開催することなどで合意した。
 米国が強く求めていた履行期限は盛り込まれず、作業部会に先送りされる形となった。北朝鮮が交渉のテーブルに着くことを優先させたともいえよう。
 米朝枠組み合意による二〇〇二年までの「核施設凍結」状態に戻っただけとの見方もできるが、二月以降、足踏みが続いていたことを考えると前進には違いない。この流れを大事にしたい。
 とはいえ楽観はできない。北朝鮮の今後の出方など不透明な部分が多い。しっかり見極める必要がある。
 五カ国は最終目標である北朝鮮の核廃絶に向け、結束を一層強めなければならない。本当の交渉はこれからだ。
 焦点は、作業部会で調整する「次の段階」の中身と期限だ。「無能力化」の定義や対象施設、手順を決めるだけは十分とはいえない。二度と使えない状態になったかどうかの検証が不可欠だ。
 核計画の申告も同様だ。プルトニウムなどに加え、米国は高濃縮ウランによる核開発疑惑も申告対象としている。計画自体を否定している北朝鮮が、簡単に応じるかどうか。仮に受け入れたとしても自己申告をうのみにはできまい。
 いずれも、検証にかかる期間も考慮し履行期限を定める必要がある。
 二月合意では、「次の段階の措置」を達成すれば、五カ国は重油九十五万トン相当の支援を行う手はずだった。
 履行期限に合意しなかったのは北朝鮮の引き延ばし作戦との指摘もある。措置を細かく区切り、支援を少しずつ引き出す狙いではないか、というわけだ。
 すでに北朝鮮は、見返りとして軽水炉提供などを求めているという。さらに米国に対し、テロ支援国家指定の解除などを要求する構えとも言われる。
 ここに至ったのは、米国が譲歩に譲歩を重ね、北朝鮮に足元を見透かされた結果でもある。
 イラク政策が行き詰まるブッシュ政権にすれば、北朝鮮外交で得点を稼ぎたいところだろうが、あせりは禁物だ。
 拉致問題が進展しない限り支援には参加しない、との方針を貫いている日本も考えどころだ。このまま「次の段階」に進むようだと孤立しかねない。
 日朝作業部会で拉致問題の進展をめざすと同時に、これまで以上に各国に日本の立場についての理解を求める必要がある。日本外交の真価が問われよう。

[京都新聞 2007年07月21日掲載]

地震と原発  事後対応も見直さねば

 新潟県中越沖地震で起きた東京電力柏崎刈羽原発事故について、東電は計六十三件のトラブルが発生したことを明らかにした。
 発生数の多さとともに、事故後の対応に数々の不備があったことに驚く。ハード面の改善はもちろん必要だが、今回の事故を教訓に、全国の原発でソフト面の見直しも徹底させる必要がある。
 東電の発表では、地震により七基ある原子炉すべてが設計時の想定を大幅に上回る揺れに見舞われた。いずれも炉の本体部分に異常はなかったが、うち一基では二日間にわたり、微量の放射性物質が大気中に放出された。使用済み燃料プールからこぼれ出た水の一部が海に流出したことも想定外の事態だった。
 変圧器の火災は、地震による地盤沈下による影響で高圧ケーブルがショートし絶縁用の油に引火した可能性が高いことが新潟県などの調査で分かった。
 さらに、同原発では油火災に対応できる化学消防車はなく、四人の社員が変圧器火災現場にかけつけたものの、消火栓からの水の出が悪く、爆発の恐れから傍観していたことも明らかになった。
 事故時の対応マニュアルはあったが、今回のような同時多発的なトラブルに対しては、設備も人員態勢も不十分だったのが実情ではないか。
 大気中への放射性物質漏れの防止などは、原発職員にとって基本中の基本だろう。マニュアル通りに排風機を止めていれば防げたはずの事故が、なぜ防げなかったのか。うっかりミスで片づけることはできない。作業員のミスが致命傷となったチェルノブイリ事故のようなケースもあるのだから。
 事故後の情報開示も問題が多い。東電は地震発生後、放射能漏れの恐れはないと言い続けた。だが、当日深夜になって外部への水漏れを発表した。大気中への微量放射能漏れは、翌日になってから発表した。
 こうした対応に地元が不信感を抱くのは当然だ。柏崎市の会田洋市長は地盤の傷みを理由に消防法に基づく使用停止命令を東電に出したが、東電の対応への不信感も含まれているのではないか。
 万一の場合には住民を避難させる責任がある地元の行政や警察など関係機関にどこまで情報が提供されていたのか。東電側の情報管理、開示態勢について国は厳しく検証するべきだ。
 ハード面では、原発周辺の海底断層について東電が一九八〇年ごろに確認した際、断層の規模を過小評価したため、設計面で考慮されなかったことも明らかになった。地層のたわみを重視する変動地形学の観点を考慮しなかったためというが、結果として断層が原発直下まで延びていたことを見落とした。
 想定外のトラブルが多発した今回の事故は、地震列島・日本で、原発の安全を守るのが容易でないことを示している。

[京都新聞 2007年07月21日掲載]

【京都新聞・凡語】

 狗(いぬ)の肉を、羊の肉と偽って売るから「羊頭狗肉(ようとうくにく)」。見かけ倒し、看板倒れの意味だ。北京の「段ボール肉まん」は典型と思っていたら、テレビ局のやらせ報道だったという▼「告発番組」の看板を掲げたテレビ局自身が、羊頭狗肉だったわけだ。もっとも、市民には段ボール肉まんを信じる声も多い。「中国製品の信用低下を懸念する当局が、やらせ報道と言いくるめた」というのだ▼北京の騒動に驚いてはいられない。新潟県中越沖地震で深刻な看板倒れが明らかになった。「耐震は万全」としてきた柏崎刈羽原発の、ずさんな防災態勢と断層調査の甘さが露呈。行政命令による運転停止に追い込まれた▼柏崎市では、自動車部品工場が被災した影響で国内自動車メーカー全社が生産休止に陥る非常事態だ。トヨタをはじめとする得意の生産手法「カンバン方式」が裏目に出た。徹底した在庫排除は、特定企業に集中して部品供給を頼っている場合は、弱点にもなるという証明だ▼政治家や官僚の看板倒れはもっとひどい。事務所費問題は言うに及ばず閣僚の暴言、失言。年金記録問題は、「日本の看板倒れ構造の象徴」と言ってよかろう▼段ボール肉まんと聞き、四年前の流行語「毒まんじゅう」を思い出した。政官業を含め、日本社会から看板倒れの毒まんじゅうを全部吐き出させる。八日後の投票日こそ、その機会だ。

[京都新聞 2007年07月21日掲載]


【朝日・社説】

2007年07月21日(土曜日)付

参院選—この風向きをどう読むか

 優勢な民主党、不振の自民党——。朝日新聞などの調査で、こんな参院選挙の情勢が浮き上がってきた。

 いずれも現時点での推計だ。投票先を明らかにしない有権者も多い。獲得議席の推計幅は、朝日新聞調査の場合、自民、民主ともに10議席以上もある。それだけ競り合っているところが多いわけで、状況はまだ流動的である。

 それでも、自民、公明の与党にかなりの逆風が吹いているのは間違いない。与党が参院での過半数を失う可能性も小さくない。場合によっては、安倍首相の交代もありえないことではない。

 そうした空気を感じ取ってのことなのだろう。街頭演説などで危機感を訴える自民党の幹部や候補者たちのボルテージが上がってきた。

 「与野党が逆転すれば、法案はすべて通らなくなる。政局は大混乱だ」

 「政治をガタガタにされて困るのは国民の皆さんだ」

 まるで、このまま民主党政権になっていいのか、と言わんばかりである。

 もともと首相は、選挙が始まる前から「私と小沢さん、どちらが首相にふさわしいか、国民の考えを聞きたい」と党首力の戦いを挑み、政権選択選挙という構図を描いてみせた。

 対する小沢民主党代表も「負ければ政界引退」と退路を断って応じた。

 本来、参院選は衆院選のように政権を直接、選ぶものではない。問われるのは安倍政権10カ月の実績に対する有権者の評価である。とはいえ、今回は両党首の気負いに自民党の危機感が加わり、「政権選択」の雰囲気が色濃く漂う。

 さて、与党幹部が言うように、参院で与野党の勢力が逆転したら、本当に「大混乱」になるのだろうか。

 確かに、政府・与党が出す法案や予算案が、衆院は通っても参院で軒並み否決されるような事態は、与党には耐え難い「大混乱」だろう。

 だが、有権者から見れば、景色は違うかもしれない。与党だけで採決を強行する強引な国会運営はできなくなる。その意味で、政治が落ち着きを取り戻す「正常化」でもあるからだ。

 与党が法案を通したければ、野党の主張もとり入れる必要がある。たとえば「政治とカネ」の問題で、抜け穴だらけの政治資金規正法改正でお茶をにごすようなことでは通用しまい。

 民主党にも新たな責任が求められる。与党の案に説得力があるなら、野党が単に与党を追い詰めるために協力を拒んだり、法案をつぶしたりすれば、次の総選挙で有権者のしっぺ返しを食うだろう。政権交代をめざすと言う以上、民主党も軽はずみな態度はとれまい。

 政治の大混乱か、正常化か。政権交代へ歯車を進めるか否か。護憲や弱者、格差への対策を訴える共産党や社民党、あるいはミニ政党に期待を寄せるか。

 あと8日間の考えどころである。

6者協議—次は核施設を使用不能に

 核兵器の材料をつくり続けてきた北朝鮮の主な施設の動きが止まった。封印する作業も始まった。

 次に北朝鮮がしなければならないことは、すべての核計画の「完全な申告」と、すべての核施設を使えないようにする「無能力化」だ。それが2月に6者協議で合意したことである。

 新たな段階の措置をどのように実行していくか。それを話し合う6者協議が昨日まで北京で開かれた。

 2月合意を「真剣に実施する」と6者で確認したのは、当然のこととはいえ、好ましい展開だ。8月末までに五つの作業部会、9月初めに6者協議を開き、実施の行程表をつくることになった。できるだけ早く6者の外相会合を開くことでも一致した。

 だが、「申告」と「無能力化」をいつまでに終えるかという日時の目標は設定できなかった。この二つの措置は、北朝鮮が再び核兵器づくりに戻れないようにするためのものだ。実行の期限を切れなかったのは残念だった。

 とはいえ、6者協議のほか、米朝などの二国間対話で、かなり突っ込んだ意見のやり取りがあったようだ。合意の実行に向けて、作業部会で技術的な問題を含めて細かく詰めてもらいたい。

 その際に大事なのは、北朝鮮と5者がそれぞれ取るべき行動を段階ごとに決めて、綿密に組み合わせていくことだ。

 そうした作業はもちろん容易でない。

 核計画の「完全な申告」というが、北朝鮮はいまの核危機のきっかけとなったウラン濃縮の計画を認めていない。だが、少なくともパキスタンから濃縮装置が渡ったといわれる。申告では、こうした疑惑を解いてもらわねば困る。

 核兵器やプルトニウムなどの核物質がどこにどれだけあるのか。その実態も明らかにされなければならない。

 「無能力化」といっても、具体的にどの施設にどんな処置を施すのか。これまで北朝鮮の核施設が凍結されたことはあっても、永久に使えなくする作業は初めてだ。凍結解除—再稼働という過去の失敗を繰り返さないためだが、無能力化の方法を細かく定めなければならない。

 「申告」と「無能力化」に対応するのが、5者による「重油95万トン相当の経済・エネルギー・人道支援」だ。

 この支援を5者はきちんと実行しなければならない。だが、どんな支援物資をいつ渡すかは、北朝鮮が取る行動ごとに段階を踏んで進める必要がある。その行程表づくりが大切なのだ。

 今回、1時間を超える日朝協議もおこなわれた。それぞれが重視する拉致問題や過去の清算などで基本的な考えの応酬に終わったようだ。解決へ互いに努力することは確認したというが、突破口はなかなか見つからない。

 核の放棄という目標に向けて6者協議を動かしていく中で、日朝作業部会も活用し、話し合っていくしかあるまい。

【朝日・天声人語】2007年07月21日(土曜日)付

 小さな小さなイタリア車の話である。フィアット500が発売50周年を祝った。生産終了から30年たつが、ころころと子豚似の姿はチンクエチェント(500)の名で愛され続ける。過日の式典には各国から1500台が集まった。

 虚飾を排した13馬力の豆自動車に改良を重ね、世界で360万台が売れた。「楽しく、可笑(おか)しく、微笑(ほほえ)ましく、そして時に哀(かな)しく……小さな身体(からだ)の中にはイタリアの薫りがぎゅうぎゅうに詰め込まれていた」(岡崎宏司『わが心に残る名車たち』光文社)。

 チンクエチェント博物館(愛知県南知多町)の深津浩之さんは語る。「整備なしには走ってくれず、乗り心地も快適ではないが、自動車の機能はすべて備えている。機械の本質を伝える生きた遺産です」

 生産を止めた75年、皮肉にも「簡素を是とする時代」の幕が開く。同じ年、日本の衣料大手レナウンは〈飾らない、自分自身を偽らない生活〉を掲げたブランド「シンプルライフ」を発表した。西友が無印良品を世に問うのは5年後だ。

 衣食足りれば、関心は楽しみや安らぎに向かう。価値観は枝分かれする。中で一つ確かなのは、資源や環境の制約だ。大きく激しいモノやコトは、存在理由を厳しく問われよう。筆頭はもちろん、戦争である。

 欧州の路地裏で出会うチンクは、もともとベソをかいたような前面がつぶれ、大泣きになっていたりする。だが、まとう空気は雄弁だ。道具に飾りは要らぬ/まず人が汗をかけ/暑けりゃ窓を開けよ。それは地球からの伝言にも聞こえる。


【毎日・社説】

社説:6カ国協議 引き延ばし戦術を許すな

 北朝鮮の核廃棄をめぐる6カ国協議の首席代表会合が終わった。

 懸念された通り、北朝鮮は引き延ばし戦術に出た。「初期段階の措置」に続く「次の段階の措置」をいつまでに履行するかという期限の設定を拒み、結論は8月の作業部会に持ち越された。

 「核施設の無能力化」という総論で合意しながら、各論に入らず、見返りの経済支援は要求するという北朝鮮の基本姿勢が明らかになった。腹を据えて慎重に交渉を進めないと、成果はあがらない。

 今回、北朝鮮は2月の6カ国協議合意のうちで、「初期段階の措置」とされた寧辺(ニョンビョン)の核関連施設の稼働停止を実行した。

 だが、やすやすと応じたわけではなかった。米国が凍結処分していたマカオの銀行の北朝鮮資金について、凍結解除を要求し、その資金が北朝鮮に届くまで動かなかった。米国の対北経済制裁を揺さぶったのである。

 韓国に対しても、5万トン重油支援の先行実施を受け入れさせた。米韓が譲歩した見返りとして、北朝鮮は、やっと寧辺の施設を稼働停止した。

 今年1月、ヒル米国務次官補はベルリンで北朝鮮側と2国間協議を行った。2月の合意事項は、その延長上にあるとされている。

 その後、ヒル国務次官補は今回の会合の前に北朝鮮を含む関係国を往復した。「すべての既存核施設の無能力化」と、高濃縮ウランなど「核計画の完全な申告」という「次の段階」の内容を具体化し、8月には6カ国の外相会合を開いて、核廃棄の日程表を決定できるという自信をのぞかせていた。

 だが北京入りしてから会合の直前に米朝協議を3回もやったが、北朝鮮は「次の段階」に進む意思があるというだけで、問題は先送りされた。米国は「非核化にはずみがついた」と自画自賛しているが、北朝鮮を追い込んでいるというより、米国が振り回されたという印象がぬぐえない。

 次の舞台は作業部会になる。北の核廃棄を必ず実現するという協議の原点に立ち返って、米国は北朝鮮の戦術を再吟味し、日本や韓国、中国との足並みをそろえておく必要がある。そうでないと、議論は空転を繰り返すだけになるだろう。

 日朝協議も行われたが、日本側が解決を迫っている拉致問題は従来のまま進展はなかった。

 しかし北朝鮮側は、元公安調査庁長官が介在して詐欺事件に発展した在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の土地・建物の問題を取り上げた。日朝の作業部会に尾をひく可能性がある。この問題を提起してきた真意がどこにあるのか、よく見極めておかなければならない。

 今回の首席代表会合では、国際世論が期待するような具体的な結果は出なかった。とりあえず次の作業部会につなげたという点では、必ずしも失敗したというわけではないだろうが、ずるずると北朝鮮のペースにはまらないよう警戒が必要だ。

毎日新聞 2007年7月21日 東京朝刊

社説:農業コンクール 規模拡大超えて地域再生も

 毎日新聞社主催、農水省、愛知県豊橋市・田原市など後援の第56回全国農業コンクール全国大会が豊橋市で開かれ、熊本県菊池市の農業生産法人「コッコファーム」が毎日農業大賞を受賞した。

 今回も農業コンクールには、各都道府県の中でも傑出した農業経営、農業技術をもつ43の農業者、法人が、その成果を出品した。書類審査で20件にしぼられ、各分野の農業学者で構成される中央審査委員が、現地で成果を調査し、その上で、豊橋市での発表となった。10件に名誉賞(農林水産大臣賞)、10件に優秀賞が贈られた。

 日本の農業政策は現在、従来の品目別経営安定対策から、品目横断的経営安定対策に、本格化に移行しつつある。具体的には、「担い手」と呼ばれる一定以上の規模の農業を営む認定農業者、集落営農に政策的支援をしぼり、日本農業の規模を拡大して国際競争力の強化を目指す。

 しかし、毎年の農業コンクールに出品する農業者・法人は、そうした農政改革の目標を、はるか以前に自力で実現している。その意味で農業コンクールは、日本の農業の強化・再生が可能であることを、実績をもって報告する場にもなっている。

 ここ数年の農業コンクールでは、先端的農業者・法人が、遊休地や耕作放棄地などをリースで活用して急速に規模を拡大する印象が強かった。しかし今年は、頼平審査委員長が「私的な利益の追求だけにとどまらず、地元の農地や自然環境の荒廃を防ぐことに真剣に取り組み、有能な農業者の育成や高齢者の生きがいを高めることに熱心だ」と講評したように、一定の実績を積み上げた農業者や法人が地域や日本農業の再生に取り組み始めたことが印象的だった。

 毎日農業大賞を受賞した「コッコファーム」の松岡義博氏は、40ヘクタールの鶏卵事業とその加工食品の開発などで25億円の売り上げを達成した。その実績もさることながら、「過疎こそ宝だ」として、35歳までの若い農業者と55歳以上のベテランとの融合をはかり、自然環境型テーマパーク「コッコパーク」に都市の人々を呼び込む構想など、地域への貢献や、農業から都市への発信なども評価された。

 ようやく本格化した農政改革をよそに、最先端の農業では規模の拡大に一定のめどをつけ、地域や農業そのものへの貢献が模索され始めたのかもしれない。

 また、前回の松山市での農業コンクールでは、南ア原産のキク科多年草オステオスペルマムの新種育成で、苗を欧米に輸出しパテント収入も得るビジネス、ビルの屋上や壁面を植物で覆うグランドカバープランツというビジネスの事例が報告された。

 今回の豊橋市のコンクールでも、全国13の動物園やサーカスの動物の飼料を一手にまかなうという、京都府南山城村の「クローバーリーフ」の西窪武氏の報告があった。農業の最先端では、従来の農業の枠を超えたアグリビジネスの分野も切り開かれつつある。

毎日新聞 2007年7月21日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:「偽りのなき香を放ち山の百合」は飯田龍太の句…

 「偽りのなき香を放ち山の百合」は飯田龍太の句。このユリはめったに人の入らぬ深い渓谷で見事な大輪の花をつけたヤマユリだと黛まどかさんが鑑賞文を寄せている(新日本大歳時記)。赤い斑点のある白い花弁に金色の線が入ったヤマユリは優美な香りも名高い▲日本の山に自生するヤマユリが1862年に初めて英国王立園芸協会で紹介された時、英国人は心底その美しさに驚いたらしい。「この花が英国で起こしたセンセーションほど大きな反響を生んだ花が他にあったか」とは出品した園芸商への賛辞だ▲花の大きさ、気品、つける花の数、力強い香り、すべてが人々を魅了し、これを機に欧州でユリ栽培ブームが起こる。この時すでにオニユリやテッポウユリも伝わっており、日本はユリの美しさで知られた(春山行夫著「花の文化史」講談社)▲おかげでユリの球根は明治から大正にかけて日本の主要輸出農産物になる。1912年には横浜の種苗会社1社で1500万個のヤマユリの球根が欧米に輸出された。最盛期には各品種あわせた日本からの輸出球根は4000万個にのぼったという▲だが、かつてのユリ大国日本も今日では、日本原産の品種などを改良した園芸種の球根を欧州から輸入している。先ごろ中国への日本産米の輸出が話題となり、日本ブランドの農産物輸出が模索されているおりだ。ユリの昔話を聞けば、花卉(かき)の輸出も往年の勢いを取り戻せないものかと思う▲より深刻なのは、かつてシーボルトら欧州の植物採集家を驚かせた日本の自生のユリが、乱獲や環境破壊で種類によっては見るかげもなくなったことだ。花を愛する世界の人を感動させた「偽りのなき香」を日本の山野から失うようなことがあってはならない。

毎日新聞 2007年7月21日 東京朝刊


【読売・社説】

6か国協議 「北」の核廃棄へ楽観は禁物だ(7月21日付・読売社説)

 北朝鮮の核廃棄への手順を詰めることはできず、困難な作業は先送りされた。

 北朝鮮の核・ミサイルの深刻な脅威の下にある日本としては、とても先行きを楽観視することはできない。

 6か国協議首席代表会合は、8月の作業部会と9月初めの6か国協議、それに続く6か国外相会合という当面の日程を確認しただけで終わった。

 北朝鮮の核施設凍結に続く「次の段階」の措置をめぐる具体的な論議には入れず、焦点だった「次の段階」の履行期限目標は設定できなかった。

 2月の合意では、「次の段階」で、北朝鮮は「すべての核計画についての完全な申告」と「すべての既存の核施設の無能力化」を実施しなければならない。その見返りは、「重油95万トン分に相当する経済、エネルギー、人道支援」だ。

 米国は、「年末までに達成可能だ」として、今回の会合で、実施期限を声明文に盛り込むことを目指していた。そのためには、「次の段階」の行程表を作り、細部を詰める必要があるが、突っ込んだ議論はなかったようだ。

 核計画の「完全な申告」や、核施設の「無能力化」、見返り支援の内容とその実施方法について、作業部会は、どこまで十分に討議できるのか。その結果を踏まえて開かれる6か国協議で、行程表を示すことができるのかどうか。

 北朝鮮は核開発で獲得したものは何一つ放棄していない。核計画の申告や、核施設の無能力化が実行されたとしても、その先に、核兵器とプルトニウムなど核物質の廃棄という核心の交渉がある。

 どんな交渉ごとでも楽観は禁物だが、北朝鮮相手ではとくにそうだ。北朝鮮は「初期段階」の措置の履行では、「60日以内」という期限を守らなかった。米国に金融制裁の解除を要求し、マカオの銀行で凍結された資金の全額返還が実現するまでテコでも動こうとしなかった。

 現に、2月合意の完全な履行は、日本と米国の行動次第だとして、「敵視政策を解消する実際的な措置」をとるよう求めている。狙いは、テロ支援国指定解除や経済制裁解除だろう。「次の段階」で履行期限を設けても、見返りの要求が通るまで実行しようとはしまい。

 米国には、合意を急ごうとする姿勢が目立つ。だが、完全な核廃棄へ確かな行程も見えない現状では、安易に妥協を急いではならない。

 日本としても、そうした立場から、米国と緊密に協議する必要がある。8月の日朝作業部会で、北朝鮮の出方をしっかり見極めねばならない。
(2007年7月21日1時42分  読売新聞)

総連課税判決 「公益性」が明快に否定された(7月21日付・読売社説)

 「公益性は認められない」という極めて明快な判断だ。

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)側が東京都に課税処分の取り消しを求めた訴訟で、東京地裁は、都の主張を全面的に認め、総連敗訴の判決を言い渡した。

 朝鮮総連中央本部の土地と建物について、都は美濃部都政時代の1972年、国交のある国の大使館など在外公館と同様、「外交機関に準ずる機関」として固定資産税などの免除を決定した。

 2003年、この決定を石原知事が見直し、年額約4200万円の税を納めるよう課税通知した。総連側はこれを不服として提訴していた。

 朝鮮総連は「政治的思惑による突然の変更は不当で、信義に反する」と主張した。「日本との民間交流の窓口の役割を果たしている」とも言ってきた。

 地方税法には「公益上の事由」で税を免除できる規定がある。この点について判決は、中央本部の施設は「内部組織の局、委員会などが使う事務室や役員室が相当部分を占めており、不特定多数の者に利用されていると認められる証拠はない」とし、公益性を否定した。

 都は、使用実態を調べ、課税権者として当たり前の対応をしたに過ぎない。そもそも、美濃部都政時代の免除の決定が問題だったとも言える。

 総連関係者が様々な不正工作に関与してきた経緯もある。都が「免除決定を都民が納得するかどうかだ」としてきたのは、それもあってのことだろう。

 都が課税に踏み切ってから、同様の決定をする自治体が相次いでいる。総務省も都道府県を通じ、安易な減免を続けていないか、再三にわたって見直しを求めている。しかし、それでも朝鮮総連関連施設のある自治体の約3割が全額免除したままだ。

 判決は、社会情勢などが変化しているのに、「漫然と減免措置を継続していることは、正当な職務のあり方とは言い難い」とまで述べている。速やかに課税に踏み切るべきだ。

 中央本部をめぐっては、整理回収機構が差し押さえの手続きを進めている。破綻(はたん)した在日朝鮮人系の朝銀信用組合から総連に流れ、不良債権化した約627億円を返済しないためだ。

 朝鮮総連は「中央本部の施設まで強奪しようとする総連弾圧だ」との抗議声明を出している。北朝鮮は国連事務総長に同様の書簡も送っている。法にのっとった措置への筋違いの抗議だ。

 破綻処理では1兆円を超える公的資金が使われた。納税義務はもちろん、返済責任もきちんと果たすべきだ。
(2007年7月21日1時43分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月21日付 編集手帳

 臨床心理学者の河合隼雄(はやお)さんは美しい花を見ると、ときに心のなかで花に語りかけたという。「あんた、花してはりますの? わて、河合してまんねん」◆俳人の斎藤慎爾(しんじ)さんは「生と死の歳時記」(法研)に書いている。「『わて』という存在が、一回しかない人生の中で河合隼雄という壮大な劇を演じる」と。人は誰もが透明の仮面をつけ、「…してまんねん」の人生を生きている◆「世界は劇場、男も女もみな役者」はシェークスピア劇の言葉だが、「いい人」と見られることに疲れたり、「元気者」の看板が重荷になったり、ひとたび楽屋に戻れば、役者は誰しもへとへとだろう◆「わて、…してまんねん」。自分の姓をあてはめて呪文(じゅもん)を唱えると、すうっと肩の力が抜ける。疲れた現代人に数々の著書を通して薬剤を調合してくれた河合さんの、これも「心の処方箋(せん)」に違いない◆高松塚古墳の国宝壁画を損傷した事故などで心労を重ねたのだろう。文化庁長官当時に脳梗塞(こうそく)で倒れ、療養していた河合さんが79歳で亡くなった。いまの世では数少ない「大人(たいじん)」の風格をもつ人だった◆ついつい上っ面の正義を振りかざしたり、きれいごとの建前を並べ立ててしまったときなど、ひとり、花につぶやくことがある。あんた、花してはりますの? わて、編集手帳子してまんねん。
(2007年7月21日1時42分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】07参院選 公務員改革 脱官僚主義へ議論尽くせ

 消えた年金問題で、社会保険庁のずさん極まりない“親方日の丸”の仕事ぶりに国民の怒りが集中した。与野党とも公務員制度の抜本改革を参院選の選挙公約の一つに掲げているのは当然だ。

 とりわけ与党は、天下り防止を柱とする公務員改革関連法を先の国会で会期を延長してまで成立させた。なおのこと安倍晋三首相は、選挙戦でもっと改革の重要性を国民に訴える必要があるのではなかろうか。

 緑資源機構など相次ぐ官製談合の背景には、天下りによる官民の根深い癒着構造がある。公務員の倫理観の乱れをこのまま放置してよいのか、改革は先送りできないところまできているように思える。

 政治評論家の屋山太郎氏が指摘するように、日本の官僚機構は行政だけでなく立法をも牛耳ってきた。それを許し、利権を共有してきた族議員ら政治家の責任は重い。そうした明治以来の悪弊を断ち切るためにも、公務員制度改革は進めなければならない。

 とりわけ問題なのはエリート官僚組織の専横ぶりだ。族議員を動かして業務実態が不透明な特殊法人や公益法人を次々と設け、自らがトップとして転身する。これもまた一つの天下りだ。ポストは数年で後輩にたらい回しされる。そんな仕事に責任感を持てないのは当然であろう。

 今回の法改正で国家公務員の再就職は、内閣府に設置する「官民人材交流センター」(新人材バンク)に一元化される。省庁ごとの従来型斡旋(あっせん)は全面的に禁止されることになる。

 移行時期などで一部与党議員の修正要求を盛り込んだ経緯もあり、新人材バンクには、野党などから「天下り公認機関」との批判もある。たしかに、実際に機能するかどうかは、今後の制度設計の詳細にかかっている。安倍首相は、その具体像にも踏み込んで、国民に説明を尽くすべきだ。

 公務員制度改革の根本が、行政機構の効率化にあることは言うまでもない。官の役割を根本から見直し、行政コストの無駄を省いてスリム化を目指す。そのことは、公務員の仕事の質向上にもつながる。

 改革の必要性では野党も異存がないはずだ。選挙戦では、何より改革を前に進める論戦を期待したい。

(2007/07/21 05:02)

【主張】6カ国協議 会合の無能力化が心配だ

 北朝鮮の核放棄へ向けた「初期段階の措置」である核施設の活動停止を受けて開かれた6カ国協議は、停止した核施設の“無能力化”など「次の段階の措置」の実施期限を議長声明に盛り込むことができなかった。

 初期段階の措置は「60日以内」という期限が設けられたが、実際は3カ月も遅れた。それよりはるかに困難が予想される「次の段階の措置」に期限を設けられないようでは、実施はいつになることやら見当もつかない。

 6カ国協議は、米国が対北融和路線に転換して以来、いちだんと北朝鮮に振り回されているように見える。このままでは、北の核施設が無能力化する前に、6カ国協議の方が無能力化しかねない。再度、「対話」と「圧力」の原則に立ち返るべきだ。

 米首席代表のヒル国務次官補は期限を設定しなかったことについて、初期段階の措置が期限を設けて遅れたことをあげ、「注意深いやり方だ」と評価した。だが、そうであれば「期限は作業部会で設定する」というのは矛盾であり、言い訳にしか聞こえない。

 イラク問題に手を焼くブッシュ政権は、残り1年半の任期中に何とか北朝鮮問題では成果をあげ、得点としたい考えだといわれる。しかし、形だけの成果では将来に禍根を残すだけで、逆に失点と批判されることだろう。

 米国が次々と譲歩・妥協することを知った北朝鮮は、これからも見返り要求を強めるに違いない。国際金融機関からの対北融資に道を開くテロ支援国家指定の解除は、最優先項目だろう。最近は韓国からの米軍撤退、核撤去要求などもほのめかしている。

 テロ支援国家の指定は日本人の拉致事件も要因の一つだ。安易に解除するようなことがあれば、米国は北朝鮮の支持は得られても、同盟国・日本の支持は失うことになる。

 拉致問題に固執するあまり6カ国協議で孤立する−という説があるが、逆だ。国家として譲れぬ原則を堅持するからこそ、北朝鮮は日本を交渉相手とせざるを得ないのである。交渉しなくては何も得られないからだ。

 北朝鮮が安倍晋三政権への非難を強めているのは、拉致問題の重みの証明であると同時に、参院選の結果への期待の表れでもあるのだろう。

(2007/07/21 05:01)

【産経抄】

 亡くなった河合隼雄さんは60歳を過ぎてから「源氏物語」を通読している。若い時にも一度挑戦しながらよく理解できず挫折した。しかし大学の客員研究員として米国に2カ月滞在したのを機に再挑戦、一気にこの長編を読み切ったそうだ。

 ▼河合さんは言うまでもなく、臨床心理学の第一人者だった。だが、専門外のことでも博覧強記で知られていた。特に「源氏物語」をはじめ「とりかへばや物語」「落窪物語」「浜松中納言物語」など日本の物語への造詣は深かった。晩年は「物語博士」の趣さえあった。

 ▼なぜ物語なのかは著書『物語を生きる』(小学館)で述べている。河合さんらの心理療法は、対象者に症状を自分の物語に組み込み、語ってもらわねばならない。それぞれの物語を後押しすることが大切だ。それにはこちらも、さまざまな物語を知っている必要があるという。

 ▼そのうえで、「源氏物語」を「紫マンダラ」と分析している。この物語、実は作者の紫式部自身を描いたものだと。母、娘、妻とすべての体験をもったであろう彼女が光源氏という男性像を中心に据え、それとの関連で自らの「世界」を提示した物語だというのだ。

 ▼ちょうど、密教で宇宙の真理を描くマンダラの絵のようだというわけである。ここでは光源氏は現実味の薄い「最高の便利屋」みたいな存在である。「源氏」を理想的なプレイボーイの小説と読んできた者には、実に新鮮で「目からウロコ」の思いがした。

 ▼あたかも来年は「源氏物語千年紀」である。国際的なシンポジウムが予定され、通読しようという人も増えているという。俗に言えば「源氏ブーム」である。そんな意味でも、河合さんを失ったことは、痛恨のきわみとしか言いようがない。

(2007/07/21 05:00)


【日経・社説】

社説1 北朝鮮の時間稼ぎの6カ国協議では困る(7/21)

 北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議の首席代表会合は3日間にわたったが、すべての核施設の無能力化など「次の段階」の措置の実行期限を明示できずに閉幕した。米首席代表のヒル国務次官補は「今回の会合で勢いをつけることができた」と成果を強調したが、米政府の最近の対応は融和主義的で北朝鮮の時間稼ぎに手を貸しているようにさえ映る。

 今回の首席会合では6カ国協議の2月合意を踏まえ、全核施設の停止など「初期段階の措置」に続き、全核施設の無能力化と全核計画の申告など次の段階の措置の期限を設定することが焦点になっていた。

 ヒル氏は17日北京入りすると、翌日からの首席会合を前に、北朝鮮の金桂官(キム・ゲグァン)外務次官と四川料理をともにするなど同日中に3回も会談を重ね、次の段階は「年内に達成したい」と伝えた。

 首席会合の報道発表文に期限が明記されることが期待されたが、結局は見送られた。ヒル氏は「この時点で期限を区切る必要はない」との見解を示した。これでは計4時間に及んだ米朝会談は何だったのかと疑いたくなる。料理は辛かったかもしれないが、ヒル氏の北朝鮮への姿勢は甘すぎるのではないか。

 私たちが2月合意を「北朝鮮の全面的な核廃棄に向けた第一歩にすぎない」と限定的評価にとどめていたのは、あまりにも抜け穴が多いからだ。北朝鮮が保有する原爆やプルトニウムの取り扱いがあいまいだし、いったんは認めた高濃縮ウラン(HEU)計画も不透明なままだ。

 そもそも初期段階の措置への着手も2月合意よりも3カ月も遅れている。北朝鮮は初期段階を履行するに当たっても、2月合意にはない金融制裁の解除など様々な条件を出して5カ国を揺さぶってきた。

 6カ国協議の目的には日本人拉致問題の解決も含まれている。今回、外務省の佐々江賢一郎アジア大洋州局長と金次官との会談がようやく実現したが、実質的な協議は8月末までに開催する日朝国交正常化に関する作業部会に先送りされた。

 6カ国協議が2003年8月にスタートしてから早4年となる。この間、北朝鮮は核保有宣言、ミサイル連射、地下核実験実施などと身勝手な振る舞いを続けてきた。

 これ以上、北朝鮮に時間稼ぎを許すことがないように、議長国・中国を含め5カ国は結束して「対話と圧力」を一段と強める必要がある。北朝鮮の「検証可能で後戻りのきかない全面的な核廃棄」を目指す6カ国協議の原点を忘れてはならない。

社説2 留保を要するバーナンキ証言(7/21)

 バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は18、19日、上下両院で証言した。金融政策運営に関する年2回の議会報告だが、信用度の低い人(サブプライム)向け住宅ローン問題の波及が懸念されているときだけに注目を集めた。議長は問題の重大さを認めつつ、経済の先行きへの市場の不安を鎮めようとした。

 問題を直視する姿勢は歓迎したい。19日の上院証言ではサブプライムローンを組み込んだ金融商品の損失が「500億—1000億ドルに達する」との試算を紹介した。ローンの延滞や担保の差し押さえで、ローンを組み入れた金融商品の価値が下がっているのを踏まえた発言だ。バーナンキ議長が挙げた損失額は、民間金融機関の推計にほぼ見合っている。

 そのうえで、バーナンキ議長は国債に対する社債の金利上乗せ幅が依然低水準であることなどを挙げ、金融市場全体は問題を消化しつつあるとの認識を示した。バブル崩壊後の日本では銀行に不良債権が集ったのに対し、米国では証券化を通じてリスクが1カ所に集中していない。

 全体の景気についても、議長は住宅部門の不振を企業部門などが補う形で持ち直しつつあると指摘した。19日公開された、6月27—28日の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録では、景気下振れリスクが低下したとの見方がFOMCメンバーの大勢だった。バーナンキ証言はこうした認識を踏まえたもので、株式市場の安心材料になった。

 もちろん、住宅市場の調整がもたらす問題には引き続き注意が怠れない。例えば、米証券ベアー・スターンズ傘下のファンドが投資したサブプライムを組み込んだ金融商品は、洗い直すと紙くず同然だった。

 サブプライムよりは信用度が高い「オルトA」という層向けの住宅ローンも焦げ付きが増えている。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、オルトAを基にした住宅ローン担保証券を格下げ方向で見直し中だ。市場価格で再評価しようにもできない金融商品も多く、投資家は含み損を抱えている。

 日本のバブル崩壊でも問題は数年かけ次第に顕在化した。米国の住宅市場も山が高かった分、調整に痛みは避けられない。油断は禁物だ。

【日経・春秋】(7/21)

 長嶋茂雄さんは高校時代、タイガースの藤村富美男選手に心酔し、そのフォームをまねて毎日バットを振り続けていた。「下手でも振って振って、好きで好きで夢中でやった」。本紙に連載中の「私の履歴書」で、こう振り返っている。

▼甲子園をめざす球児たちが地方大会で熱闘を繰り広げている。何かと物議をかもす高校野球ではあるが、一人ひとりの情熱はミスターにも引けをとるまい。「好きで好きで夢中」になれるのが若さというものだ。スポーツに限らず、マンガ、写真、映画……。さまざまな「甲子園大会」に高校生が集い、競い合う。

▼正岡子規の故郷、松山市の「俳句甲子園」はこの夏で10回目。片や石川啄木ゆかりの盛岡市では昨年から「短歌甲子園」が始まった。今年の大会は出場校も増え、33チームが啄木流の3行書き短歌に挑む。〈カバン一つ/負いて若さを供(とも)にして/ひゅっと往きたしひとに混じりに〉。昨年の団体戦優勝作品だ。

▼「意欲がない」「勉強しない」。昨今の高校生の評判は芳しくないけれど、白球を追う若者も詩歌に没頭する生徒も、とても個性的だ。それを抑えつけ、ありきたりの物差しを当てるのは大人たちなのだろう。早世した歌人、小野茂樹の歌を思い出す。〈あの夏の数かぎりなきそしてまたたつた一つの表情をせよ〉


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