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2007年7月30日 (月)

7月30日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 喜ばしいことに傲慢自公お灸記念日にすることができました。6月はじめから続けてきたこの地方紙・主要紙の社説とコラムの資料としての採録活動もやり抜くことができました。

 当初始めた時には投票日までのつもりでしたが、結果が分かった後の政局とそれに対するマスコミ論調も興味深いので、投開票日3日後の8月1日まで記録することにします。

 どのようなマスコミをわれわれは目撃したのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月30日朝刊)

[参院選開票結果]安倍政治への不信任だ

ねじれ生じ波乱は必至

 参議院が大きく動いた。郵政選挙といわれた二〇〇五年九月の総選挙の際、自民党の側に大きく振れた振り子は、最大といっていい振れ幅で今回、民主党の側に振れた。

 自民党は歴史的な惨敗を喫して参議院第一党の座から転落、公明党を含む与党は過半数を維持することができなかった。

 衆議院では与党が三分の二を超え、参議院では野党が過半数を超えるというねじれが生じたことになる。国政の波乱を予兆させる選挙結果だ。

 沖縄選挙区は野党統一候補で無所属の糸数慶子氏が自民公認・公明推薦の前職西銘順志郎氏を大差で破り、国政への返り咲きを果たした。

 昨年十一月の知事選、四月の参院補選で連敗した野党にとって、今度の参院選は、奈落に沈むか立ち直りのきっかけをつかむか、のがけっぷちの選挙だった。今度の勝利で再生への足掛かりをつかんだことになる。

 参院選の沖縄選挙区はこれまで、中央政治の影響を受けつつも、沖縄に固有の争点を前面に押し出して争われることが多かった。「基地と経済」という復帰以来の争点がそれだ。

 「経済の与党、基地の野党」という構図は、沖縄の選挙事情を語るキーワードであり続けた。

 だが、今度の選挙では、個別の政策争点に加えて、安倍政治そのものが争点化した。選挙期間中、無党派層や自民・公明支持層の一部からもしきりに「安倍政権にお灸を据えたい」という声が聞こえてきた。

 糸数氏が大差で勝ったということは、安倍政治に対して沖縄の有権者が強い拒否反応を示し、「ノー」の審判を下したことを意味する。

 年金問題であらわになった行政不信、「政治とカネ」をめぐる閣僚の不祥事と安倍晋三首相の事後対応のまずさ、うんざりするほど続いた閣僚の失言。今度の選挙は全国的に安倍政権に対する有権者の怒りが爆発した選挙だった、といっていい。

 安倍首相にとっては、就任後初めての本格的な国政選挙だった。その選挙で支持層からも見放され、大敗を喫したことの意味を安倍首相は深刻に受け止める必要がある。

歴史の見直しに危機感

 西銘氏は告示前から逆風にさらされ、最後まで「負の連鎖」をはね返すことができなかった。

 県知事選、参院補選で連勝した勢い。自公と経済界の強固な組織力。かつての革新共闘会議を思わせるような圧倒的な運動量。勝てる要素があったにもかかわらず大敗を喫してしまったのは、逆風がいかに強かったかを物語っている。

 年金問題は沖縄選挙区でも大きな争点になった。「集団自決」(強制集団死)の記述をめぐる教科書検定問題や憲法改正の動きに対しても、有権者は敏感だった。

 歴史認識や戦後体験などウチナーンチュの琴線に触れるテーマが浮上したために、野党支持層だけでなく、広範な有権者から「このまま進むと大変なことになる」という危機感が生まれた。退職教員など沖縄戦や米軍統治を経験した世代の動きが目立ったのも今回の特徴だ。

 西銘陣営は年金や教科書検定問題に対して、選挙期間中、「政府に喝」というチラシを配って政府の対応を批判した。選挙のための選挙用の主張ではなく、選挙後もその姿勢を貫き、喝を入れてほしい。

 暗礁に乗り上げている普天間飛行場の辺野古移設問題について仲井真弘多知事は、難しい判断を迫られることになりそうだ。辺野古移設に明確に反対を示した糸数氏が当選したことは、参院選とはいえ、それなりの重みを持つものである。安易な妥協を許さない県民意思の表れ、と受け取めたい。

野党は立て直しが急務

 県内の野党各党は、今度の選挙結果で取りあえず一服ついた、といえる。だが、この結果は野党にとって、体制立て直しのための猶予期間が与えられたとみるべきだ。

 かつて革新陣営の「接着剤」の役割を果たしたのは社大党である。だが、今の社大党にその力はない。民主党は影響力を増しつつあるとはいうものの、沖縄ではまだ野党第一党の地位を占めるに至っていない。野党陣営の中にリーダーシップの取れる政党がいなくなったのだ。

 反自公勢力の課題が今度の選挙で克服されたとはいい難い。そのことを冷静に見つめたほうがいい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月30日 朝刊 1面)

 選挙は幸せをつかむための選択である。誰もが親の時代より豊かで、幸せでありたいと願い、人を選び政党を選ぶ。

 六年前、小泉政権が登場して以降、この国を取り巻く状況は様変わりした。「自民党をぶっ壊す」という言葉に多くの人が当時の閉塞感を打ち破ることを期待し、その年の参院選での与党大勝を後押しした。

 振り返れば、痛みに耐えて強くあれ、と国から求められ続けた六年だった。規制緩和、三位一体改革…。強くなれば幸せになれる、と思った。しかし、人は強い一面もあれば脆い面もある。「勝ち組」「負け組」という格差が生まれ、企業の業績が右肩上がりの一方で、個人の暮らしに景気回復の実感はいまひとつ薄い。

 政治の手のひらに強者は残ったが弱者はこぼれ落ちたままだ。ニート、派遣社員、障害者、年金問題。政治は国民に強さを求めるだけで、こぼれ落ちた人々を救うことに無関心だった、と言わざるを得ない現実が横たわる。

 政治だけではない。耐震偽装や公共工事談合、牛肉偽装など、国民の信頼を欺く事件も相次いだ。誰を信じていいのか。不信と疑心が渦巻き、求めても与えられないというつらさや哀しみを味わった人も多かろう。

 個人の力だけで幸せをつかむには限界がある。それを手助けするのが政治だ。今回の参院選、結果は決まった。痛みに耐えるのはもうご免。今こそ「幸せになりたい」という国民の願いに政治が応える番だ。(平良哲)


【琉球新報・社説】

07参院選 「良識の府」を取り戻せ

 年金問題を最大の争点とした第21回参院選は、29日投開票が行われ、年金問題を追い風にした民主党が躍進し議席を大きく伸ばしたのに対し、自民党は改選議席を大幅に減らし惨敗した。
 与野党が一騎打ちの激しい戦いを繰り広げた沖縄選挙区は、無所属で野党各党から推薦を受けた元職の糸数慶子氏が、自民公認で公明推薦の前職・西銘順志郎氏を破り当選した。
 与党は自民、公明両党の非改選議席を合わせて過半数を割り込んだ。安倍晋三首相は、昨年9月の就任以来、初めて臨んだ全国規模の国政選挙で国民から極めて厳しい審判を下された。
 一方、民主党は参院の第一党に躍り出た。小沢一郎代表が描く次期衆院選での政権交代の道筋が現実味を帯びてきたと言えよう。

自ら招いた逆風

 参院選の結果は、衆院選とは違い、政権選択に直接結び付くものではない。とはいうものの、安倍政権にとっては、今回の選挙結果は不信任を突き付けられたも同然である。
 各種世論調査で与党の劣勢が伝えられた以後、自民党執行部は首相の責任問題の火消しに躍起になってきた。首相自身、続投を表明している。だが今後、進退問題に発展する可能性も否定できない。
 有権者はなぜ民主党に多くの議席を与えたのか。
 重要法案を強調する割には、与党の国民への説明は不十分で、国会では与野党の論議が深まらないまま、対立法案を強引に採決にかける姿勢が目立った。先の通常国会の会期末で乱発した強行採決が好例である。
 衆院で議席の3分の2を占める巨大与党を背景に「数の論理」で押し切る政治手法を推し進め、与野党の合意が軽視される。こうした「安倍政治」への異議申し立てでもある。猛省を促していると受け止めるべきだ。
 国民は、首相が掲げる「戦後レジーム(体制)からの脱却」に対しても、もっと丁寧な説明を求めているのではないか。国の行方や国民の暮らしを左右する重要法案に対して、慎重に論議を尽くすことを政治に強く期待しているはずだ。首相をはじめ、政府与党は国民の期待や願いには耳を傾け、常に謙虚であるべきだ。今後の国のかじ取りに生かす必要がある。
 与党を惨敗に追い込んだのは言うまでもなく、年金問題を中心に吹き荒れた「逆風」にある。しかし逆風は、決して自然発生的に起きたのではない。その源は、政府与党に発しているのだ。自らまいた種である。

示せるか存在意義

 年金問題だけではない。原爆投下について「しょうがない」と公示直前に発言し辞任した久間章生前防衛相の失言もしかり、説明責任を果たさない赤城徳彦農相の事務所費問題もしかりである。
 首相はこれらの問題に指導力を発揮できなかったばかりか、逆にかばい続けた。国民の怒りを買い、不信が広がり、不安をもたらしたのは当然だ。
 発足から10カ月。この間の「安倍政治」は、沖縄選挙区の行方にも影を落とした。
 米軍普天間飛行場の移設問題では、十分な説明もなく、名護市辺野古海域の環境現況調査(事前調査)で海上自衛隊が投入された。
 文部科学省の歴史教科書の検定では、沖縄戦の「集団自決」をめぐる軍の関与に関する記述が削除・修正された。県民の総意である検定の撤回と記述の復活要求は一顧だにされない。
 いずれも県民にとってはゆるがせにできない重大な事柄だ。新たな基地を造らせないことなどを軸に「平和の1議席」を訴え、平和な暮らしをアピールした糸数氏の勝因にもつながっている。
 自民党の記録的ともいえる大敗で選挙は幕を閉じた。だが年金制度の抜本的な制度の設計、政治とカネの問題など選挙戦で争点になったさまざな問題は片付いていない。国民の立場に立った制度の在り方をめぐる議論などは、むしろこれからだ。3年後には与党による憲法改正の発議も予想される。
 今の参院は、「良識の府」と呼ぶには懸け離れすぎている。党利党略が優先され、衆院の議決をなぞって追認するだけでは参院の機能は果たせない。今回の結果で参院での論議に緊張が戻ってくることを期待したい。参院の存在意義を示してほしい

(7/30 9:48)

【琉球新報・金口木舌】

 「貧乏には2通りある。暗い貧乏と明るい貧乏。うちは明るい貧乏だからよか」。先日の新報女性サロンで、タレント島田洋七さんが語る「がばい(すごい)ばあちゃん」の内容に抱腹絶倒した
▼がばいばあちゃんは言う。「幸せは、お金が決めるものじゃない。自分自身の心の在り方で決まるんだ」。親元を離れ佐賀の祖母に預けられた島田さんは、貧乏暮らしの中で祖母から生きるヒントをもらった
▼沖縄のおばぁも、テレビドラマや出版物で全国に発信されている。型にはまったとらえ方は気になるが、逆境を笑い飛ばすたくましさや、ちゃめっ気などが共感されているのだろう
▼だが、おばぁ人気の陰で、独り暮らしの高齢者が誰にもみとられず死を迎える「孤独死」があることも忘れてはならない。那覇市では2006年度に8人、本年度は6人(27日現在)。全国で増加が懸念され、国や自治体が対策に乗り出した
▼65歳以上のお年寄りは県全体の16・5%。激烈な沖縄戦から生還し、戦後復興に尽くした世代が、社会から孤立し独りぼっちで死んでいくのは何ともやり切れない
▼夏休みが始まった。学校では教えてくれない人生の知恵がたくさん詰まった、おばぁと遊ぼう。

(7/30 9:45)


【東京新聞・社説】

安倍自民が惨敗 『私の内閣』存立難しく

2007年7月30日

 安倍政治にノーの判定が下された。どんな主張も政策も国民の信頼を失っては実を結べない。参院選の突風はそう教えている。首相の「私の内閣」は存立可能か。

 「小泉・郵政総選挙」から二年足らず。小泉後の安倍晋三政権が信を問うた参院選はまるでオセロゲームのように「黒白」が反転した。

 一議席を争う二十九選挙区で小沢一郎氏の民主など野党が安倍自民党を圧倒した。改選数三や五の大都市圏も自民と公明の候補は押しまくられた。東京、埼玉、神奈川などで民主に、どちらかがはじき出された。

 比例代表では自民得票率が前回参院選をさらに割り込んだ。凋落(ちょうらく)ぶりは目を覆うばかりである。
 「敗因は安倍さん」の声

 選挙の最終盤に自民比例候補の陣営で聞いた悲鳴と落胆が耳に残る。「なんで安倍さん、こんなに人気ないの?」「九年前の橋本政権の参院選最終盤と空気が同じ。負ける」

 橋本政権は必ずしも不人気だったわけでない。が、長い不況に手をこまぬく与党の失政批判に加え、財政政策の首相のブレ発言がたたって自民は大敗。四十四議席だった。

 安倍氏は首相就任十カ月の信任を求めた。教育基本法を変えた、改憲へ国民投票法をつくった、想定外だった年金の記録不備問題も手を打っている、と。

 遊説先では、公務員制度の改革や地域の再生、攻めの農政も掲げて「改革か逆行か」と訴えた。

 戦後生まれ初の日本国首相は戦後体制脱却を唱える。しかし気負いは空転した。語る言葉が目次の域を出ず、戦後の何が悪く、だからどうする、を語れなければ、国民がついていくはずはない。

 首相は気づいていなかったのだろうか。先の国会の強引な運営は支持離れに拍車をかけた。「空気が読めない」-こんな批判が与党にくすぶる中での、橋本政権時の獲得議席も下回る惨敗に、与党からも「敗因は安倍さん」の陰口が聞こえる。
 進行していた基盤の劣化

 野党は国民の年金不安への政府対応、そして閣僚らの失言や不透明なカネの説明不足をめぐっても、後手を繰り返す首相の甘さを突いた。

 政権リーダーの「資質」が焦点になれば反政権側に追い風が吹く。30%前後に下落した内閣支持率は選挙前から与党の劣勢を物語っていた。だが、これほどの逆風の厳しさは、それだけでは説明し切れない。

 自民の支持基盤の甚だしい劣化である。前兆はかねてあった。突然変異のように人気を集めた小泉長期政権で忘れられていた深刻さが、今春の統一地方選で実感されていた。

 四十四道府県議選と主要都市の市議選結果が参院選の自民敗北をかなりの確率で予言している。都市で民主は議席を大幅に伸ばし、自民の金城湯池の農村部でも躍進した。

 今回参院選の一人区でいえば、県議大幅減の岡山や滋賀、九州でも自民の幹部やベテランが敗れた。東北の一人区、四国は全滅。石川、富山ですら自民は苦杯をなめた。

 かろうじて当選できた人も、農家の所得補償などを掲げる小沢民主に守勢に立たされた。縮むパイを蜜月のはずの自民と公明が奪い合う。そんな事態が各地で展開された。

 自公で二議席死守を目指す大都市の選挙区で、公明から自民へパンフ配布の要求があった。実際に配ったかどうか“監視”つきで。終盤には自民の県議一人につき五百票分を融通するよう公明が求めた。

 「こっちだって当落の瀬戸際」と自民陣営。母屋を乗っ取られる、堅い宗教団体票を当てにした連立を続けていれば、支持基盤が弱るのは当たり前だよねぇ、といった自民陣営の運動員の嘆きを聞いた。

 猛烈な逆風は連立与党間にも冷気を吹かせた。そもそも右傾斜の目立つ安倍自民と公明の相互にある違和感は、自公の参院半数割れで増幅されておかしくない。

 忘れるわけにいかないのは、主要な争点が小泉・安倍政権通算六年半の決算でもあったことである。地方・弱者切り捨て政治だ、と格差拡大を攻める野党に、与党の反論は迫力を欠いた。地方の荒廃が進み、都市住民にも不公平感が募る中での「政権審判」選挙だったのだ。

 歴史的といっていい惨敗だが首相は続投するという。自公両党の執行部も退陣はあえて求めていない。ただ求心力の減衰は避けられまい。

 内閣改造で急場をしのぐにも人事は就任来の首相の“鬼門”である。国会はじめ政権の運営は困難を強いられよう。よほどの覚悟が要る。
 速やかな総選挙が常道だ

 勝った民主にはもちろん第一党の重い責任がのしかかる。衆院は与党圧倒多数のままだ。参院の多数野党が政治をかき乱すと映れば、世直しを期待した有権者は裏切られたと思うだろう。悲願の政権も遠のく。

 とはいえ政権との安易な妥協は困る。多少の混乱なら談合よりましである。衆院の与党の暴走を抑え、参院で再考を促せるなら、二院制本来の機能発揮が期待できるからだ。

 首相にも要望する。あなたはいまだ総選挙の洗礼を受けていない。ぜひ、速やかな政権選択選挙を、と。

【東京新聞・筆洗】2007年7月30日

 山形県米沢市には、東京から新幹線なら二時間半弱で着く。江戸時代には上杉鷹山が改革を断行し、疲弊した藩を立て直した地として知られる▼先日、市内を歩いた。シャッターの下りている店が目につく。「売店舗」の張り紙は色あせている。「あそこのそば屋は数カ月前、あそこの店は数年前…」。中心部の商店街で、お年寄りが寂しそうに話す▼小泉純一郎前首相が構造改革を進める過程で、山形3区選出の加藤紘一衆院議員が苦言を呈したことがある。「改革で地方は疲弊している。一度よく見た方がいい」と。小泉氏は東京の繁栄を例に挙げ、改革の成功を強調。耳を貸さなかったと聞く▼参院選挙で自民党が惨敗し、与党で過半数を確保できなかった。年金や政治とカネの問題、閣僚の失言と敗因を挙げればいくらでもある。でも米沢市を歩くと小泉、安倍政権下での改革の痛みに耐えてきた人たちの、悲鳴ともいえる怒りが底流にはあったように感じる。山形選挙区で自民党は十八年ぶりに敗れている▼「改革と成長を止めるな」。安倍晋三首相は選挙中、絶叫していた。改革の成果を実感できている人の心には響く、ワンフレーズかもしれない。でも改革により生活が苦しくなった人には「もう止めるしかない」と思わせる効果があったろう▼鷹山は家督を継ぐ際、<受次(うけつぎ)て/国の司の/身となれば/忘るまじきは/民の父母>と一首詠んでいる。父母たる慈愛をもって改革を行う決意を示したのだと伝えられる。いつの世にも通じる決意だと、選挙結果が教えてくれる。


【河北新報・社説】

参院選で自民惨敗/戦後政治の潮目は変わるか

 自民党の歴史的敗北である。

 東北の8議席を見ても、自民が2議席に減らし、民主系が6議席を制した。全国的に自民から民主への議席移動は地滑り的だった。

 民意は「安倍政治」を否定しただけではない。安倍政治の下地になっている伝統的な自民党政治そのものも否定したのではないか。

 年金記録不備問題は、かつて自民党と旧社会党が微妙な政治バランスを保った「55年体制」の産物との見方をされた。「窓口端末機の連続操作は45分以内」などと社会保険庁労使が交わした確認事項を見ると否定もできない。

 しかし、55年体制は自民党が政治支配を貫くための巧妙な仕掛けだった。今回の選挙ではこの党のそうした古い体質も問われた。

 「政治とカネ」の問題は、結党から52年の今でも、政治家としての行動倫理が自民党に根づいていないことを示した。「事務所費問題」から閣僚らの志の低さを感じ取った有権者も多いはずだ。

 憲法改正は自民党の歴代首相が積み残した宿題だが、自主憲法制定の党是が安倍政治のもとで息を吹き返した。世論は一般的な改憲手続きに柔軟だが、戦争放棄の九条改正には厳しい目を向ける。微妙な世論の賛否を束ねて改憲に持っていこうとする安倍政治のスタンスに危うさはなかったか。

 「自民党をぶっ壊す」と強弁した小泉前政権の登場は、硬直を続ける自民党政治を一時的に延命させる仕掛けだったかもしれない。

 昨年9月に小泉政権からバトンを受け取ってスタートした安倍政権では、古い自民党を象徴する党内派閥が復権した。政権初の「骨太の方針07」の周辺には、省庁と癒着する族議員がうごめいた。

 小泉政権時代に施された薄メッキがはがれ、本来の自民党政治の「地金」が浮き出てしまった。それが安倍政治の姿だと言える。

 競争における勝者にばかり光を当てようとする「新自由主義」(市場原理主義)も、小泉構造改革をきっかけに顕著になった自民党の政策思想的な地金である。

 構造改革路線の影である「格差」は小泉前政権の負の遺産として安倍政権に引き継がれた。しかし、安倍政治は効果的な格差是正策を打てないまま、国民生活には実感のない経済成長戦略に走る。

 世論が違和感を抱くこうした政策的なスタンスは、年金や「政治とカネ」問題、国会で相次いだ法案の採決強行、閣僚の問題発言の連発などが重なることにより、マイナスの方向に加速度をつけて転がり落ちていったのではないか。

 衆参両院を車の両輪に例えれば、自民・公明の与党議席が定数の3分の2を超える巨大な車輪(衆院)と油を差しても回りにくい小車輪(参院)で、車体を前に進めるのもままならなくなるだろう。
 有権者は今回の選挙でこうした高い代償を払いながら、地金をむきだしにした安倍自民党に「ノー」を突き付け、少しでも現状を変革できるよう願ったのだろう。

 安倍首相は続投を表明したが、自民党がなすべきことはまず、巨大与党の思い上がりを捨てることだ。参院選敗北のふちから謙虚さを拾い上げなければならない。

 与野党対決の激化で国会運営の摩擦係数は一気に高まるが、政策的には思い切ってウイング(翼)を広げ、野党との協調ののりしろをできる限り多く取るべきだ。

 そのためには、国民各階層の要求と共感をきめ細かく吸収できる党に再生しなければなるまい。

 偏狭なナショナリズム的風潮に流されたり、派閥や官僚・族議員の言動に惑わされたりせず、リベラル勢力を含めた党内のさまざまな主張や思想を尊重できる多様性を持った党を目指すべきだ。

 野党の柱となる民主党は大勝した。しかし、「この党に政権を任せる」という有権者の信頼感を獲得したかというと話は別である。

 次の衆院選で与党を過半数割れに追い込めるだけの政権戦略と政策、それに現実味のある野党連携の舞台を準備しなければ、ポスト自民の資格は得られないだろう。
2007年07月30日月曜日

【河北新報・河北春秋】

 圧勝したのはやはり民主党だった。きのう投票の参院選で、有権者は安倍晋三政権に厳しい審判を下した。暮らしに対する不安が一挙に噴き出したと言えようか▼「一人区」の自民党の惨敗ぶりが、それを物語る。年金に加え、ますます広がる都市との格差、市場原理一辺倒の農政…。疲弊しあえぐ地方が民主党に「希望」を託した形だ

 ▼ 老練な選挙戦術もあった。政治家として退路を断ち与野党逆転にかけた小沢一郎代表。勝敗ラインさえ言わない首相をよそに「潔さ」を印象付け、地方に入っては支持拡大に猛進した▼東北の「1人区」でも、フレッシュな民主系新顔3人が初議席をものにした。高校球児で海外経験のある青森の平山幸司さん。秋田の松浦大悟さんは元民放アナウンサーで地域を肌で知る。共に37歳。山形の舟山康江さんは41歳。元農水官僚で3児のママだ

 ▼厚い自民の地盤で当選者たちは道を切り開いた。「もともと地上に道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」。魯迅『故郷』の一節。道とは希望の例えでもある。有権者の「希望」を背に民主党はほかの野党と解散総選挙へ道を探るだろう▼参院を野党に制せられた与党。安倍首相が歩む道は険しい。岐路にも立たされよう。選挙は終わった。緊迫極まる第二幕が始まる。

2007年07月30日月曜日


【京都新聞・社説】

参院選自民惨敗  安倍政権に「ノー」の審判

 昨年九月に誕生した安倍晋三政権に初の審判が下った。国民が出した答えは、明確な「ノー」だった。
 「天下分け目」と言われた参院選は民主党が大躍進、自民党は惨敗、公明党も議席を大きく減らした。非改選議席を含む参院の勢力は与野党が逆転し、野党が過半数を制した。
 第一党に躍り出た民主など野党が参院の主導権を握ることになる。衆院で可決した法案が参院で否決される事態が続く可能性もあり、そうなれば国会運営は行き詰まろう。
 安倍首相は早々と続投の意向を示したが、責任を問う声や解散総選挙論がでてもおかしくない情勢だ。求心力低下は避けられまい。首相も自民も厳しい局面を迎えている。
 今回の参院選は、「年金選挙」と呼ばれた。五千万件にのぼる不明年金記録など、社会保険庁のずさんな管理が次々と明らかになり、国民の不信や怒りが高まるなか、選挙戦に突入した。
 与党にとって年金が最大の逆風になったことは確かだろう。
 松岡利勝前農相、後任の赤城徳彦農相の事務所費など「政治とカネ」をめぐる問題や閣僚の相次ぐ失言も響いた。
 首相の対応のまずさも政権への不信感を高めたことは間違いない。

声あげた地方と弱者
 「戦後レジーム(体制)」からの脱却と「美しい国」づくりを政権目標に掲げる安倍首相にすれば不本意だろう。
 憲法改正への手続き法である国民投票法などを成立させ、憲法を争点に参院選に臨むつもりだったからだ。
 だが、有権者は「年金」だけで安倍政権を評価したのではあるまい。
 成長路線の陰で、ワーキングプア(働く貧困層)の問題は、深刻さを増すばかりだ。景気回復とはほど遠い中小零細企業、医療など広がる地域間格差。
 小泉前政権が進めた規制緩和と三位一体改革の「負の遺産」とされるが、引き継いだ安倍政権は有効な手を打てず、格差を拡大させたのではないか。
 東北、九州、四国など一人区で自民が大きく負け越したのは、こうした地方の不満が噴出したからにほかなるまい。
 将来への不安も募る。地方や弱い立場の人が安倍政治に不信任を突きつけた。その象徴が年金問題だったといえよう。
 民主も喜んではいられまい。大躍進は「敵失」によるところが大きい。選挙公約で地方や生活者への政策を打ち出し、自民との違いをみせたが、今後は政権を担える実行力を示す必要があろう。
 衆院で多数を占める与党は強引な国会運営への批判を謙虚に受け止めるべきだ。政治の混乱を誰しも望んでいない。
 与野党とも党利党略に固執せず、民意を真摯(しんし)にくみとって国民第一の政治を心がけてもらいたい。

「地歩」を固めた民主
 京都選挙区は、民主前職の松井孝治氏が与党への逆風を生かし、府内全域から支持を集め再選を果たした。自民新人の西田昌司氏は逆風の中、自民や推薦の公明の支持基盤を固め逃げ切った。
 共産新人の成宮真理子氏は、無党派層の一部に食い込み追い上げたが、選挙区での議席獲得は果たせなかった。
 「年金逆風」は京都でも吹き荒れ、松井氏の独走、西田氏の守勢となって表れたといえよう。
 民主は比例区でも着実に票数を重ね、国政レベルでは自民と並ぶ二大政党化の地歩をより確実にしたといえる。京都政界での影響力が強まろう。
 自民は郵政総選挙での保守分裂のしこりや組織力の弱体化などが解消されず、安定した党内運営や結束力の強化が課題として残った。共産は一定の存在感を示したものの、退潮傾向に歯止めがかからず反転攻勢の足掛かりをつかめたとはいえまい。
 年金問題が焦点になったが、当選者には格差や医師不足、中小企業活性化など地元の声も国政に反映してもらいたい。
 選挙結果は来年の京都市長選に影響するのは必至だ。オール与党対共産の二極構図が継続されるのかどうか。各党は早急な戦略構築が迫られよう。

「嘉田旋風」も味方に
 滋賀選挙区は、民主党新人の徳永久志氏が、自民党前職の山下英利氏ら二人に大差をつけ初当選を果たした。
 徳永氏は民主優位の追い風を受けながら、嘉田由紀子知事の新幹線新駅凍結方針に協力した実績などを訴え、無党派層まで広く浸透したのが勝因だろう。
 民主は、これで県の参院議席(二)を独占。衆院を含めた県選出の国会議員数でも六となり自民の四を超えた。
 嘉田知事が誕生した昨夏の県知事選以来、滋賀の政治風土は一変、県民の投票行動は都市型の色彩を一層強めた。環境や女性の権利などを重視する一方、無駄な公共工事、既得権構造に反発する「嘉田党」が大きな勢力になっている。
 逆風が吹いたにせよ、自民が今春まで新幹線新駅推進にこだわり嘉田知事の抵抗勢力と見られたことと、今回の敗北は無関係ではなかろう。先の県議選では過半数を割り、基盤としてきた農村地域でさえ自民離れが起きている。
 深刻な低落傾向に自民が歯止めをかけるには県民ニーズを的確につかみ、政策に生かし実行する以外にない。
 民主は国政「県第一党」の責任を負うことになった。「年金」はもとより医師不足解消、琵琶湖汚濁の解明など県民向け公約も確実に守ってもらいたい。

[京都新聞 2007年07月30日掲載]

【京都新聞・凡語】

参議院選挙を終えて

 民主党が大勝利し、自民党が涙を流した参院選。安倍晋三政権に突風が吹きつけた▼五千万件もの「消えた年金記録」などで有権者の関心が高かった。十二年に一度、参院選と統一地方選が重なる「亥年(いどし)選挙」は投票率が大きく落ち込むと言われるが、三年前の56・5%をも上回った▼亥年選挙は地方議員が自身の選挙で疲れて身が入らないとされるが、今回は期日前投票者数がそのジンクスを打ち破った。実際、総務省が発表した最終集計は国政選挙で初めて一千万人を超し、その結果、六千万票を超える投票総数のうち二割近くを占めたのは驚きだ▼初めて導入された前回は七百万人を上回り、二年前の衆院選で九百万人に近づき、今回の一千万人超と、うなぎ上り。期間が公示翌日から投票日前日までと長く、利用しやすいことが大きいだろう。駅前や大型店舗の近くに投票所が設けられた地域もあった▼今参院選は在外投票で、従来の比例代表に選挙区も加えられた。最高裁判決が導入を促し、公選法が改正されたためだが、海外に七十万人を超す対象者がいるという。選挙人名簿登録者こそ少ないが、タイでは前回を上回る投票があり、海外各地で選挙への関心を高めたようだ▼有権者が抱く生活や政治への不安、不満は大きい。工夫で投票率はさらに高まる可能性がある。次なる国政選挙への宿題だ。

[京都新聞 2007年07月30日掲載]


【朝日・社説】2007年07月30日(月曜日)付

参院選・自民惨敗―安倍政治への不信任だ

 衝撃的な選挙結果である。

 安倍首相は昨秋の就任以来、この参院選での勝利に狙いを定めて、さまざまな手立てを講じてきた。有権者はその実績に対して、はっきりと「不合格」の審判を下した。

 しかし、首相は結果を厳粛に受け止めるとしながらも「私の国づくりはスタートしたばかり。これからも首相として責任を果たしたい」と述べ、政権にとどまる意向を表明した。まったく理解に苦しむ判断だ。

 ●民意に背く続投表明

 さすがに自民党内にも首相の責任を問う声が出ている。すんなりと続投が受け入れられるとは思えない。首相はもっと真剣に今回の結果を受け止め、潔く首相の座を退くべきである。

 それにしても、すさまじい惨敗ぶりだ。自民党は30議席台へ激減し、ライバル民主党に大きく水をあけられた。非改選議席を加えても、民主党に第1党を奪われた。1955年の自民党結党以来、第1党の座を滑り落ちたのは初めてだ。「政権を選ぶ衆院選とは違う」というには、あまりに度を超えた敗北だ。

 公明党も後退し、与党全体で過半数を大きく割り込んだ。与党は衆院で7割の議席を押さえているものの、参院での与野党逆転はこれまでの国会の進め方を根本的に変えることになるだろう。

 全国で、安倍自民党に対する「ノー」の声が渦巻いた。

 「自民王国」のはずだった地方の1人区でばたばたと議席を失い、参院自民党の実力者、片山虎之助幹事長まで落選した。2年前の郵政総選挙で小泉自民党が席巻した大都市部でも、東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知で民主党が次々に2人当選を果たした。

 2年前、自民党を大勝させた無党派層が、今度は一気に民主党に動いたのだ。自民支持層のかなりの部分が野党に流れたのは、政権批判の強さを物語る。

 衝撃は自民党内に広がっている。中川秀直幹事長や青木幹雄参院議員会長は辞任する。それでも首相が続投するとなれば、世論の厳しい反応が予想される。

 まして、与野党が逆転した参院を抱え、これからの政局運営や国会審議は格段に難しくなるはずだ。参院で安倍首相らへの問責決議案が出されれば通るのは確実な勢力図だし、混乱と停滞は避けられないのではないか。

 ●1人区の怒り、深刻

 敗北の直接の引き金になったのは、年金記録のずさんな管理に対する国民の怒りだった。さらに、自殺した松岡前農水相や後任の赤城農水相らの「政治とカネ」の問題、久間前防衛相らの暴言、失言の連発が追い打ちをかけた。

 首相にとっては、不運の積み重なりだったと言うこともできる。だが、ひとつひとつの問題の処理を誤り、傷口を広げたのはまさに首相自身だった。

 年金では「浮いたり、消えたり」した支払い記録の不備が次々と明らかになり、後手後手の対応に追われた。政治資金の問題も、松岡氏をかばい続けて自殺という結果を招き、後任に起用した赤城氏にも同じような疑惑が発覚。総裁選での論功や自分の仲間を重視する人事の甘さが次々に浮かび上がってしまった。

 その一方で、国会では数を頼みに採決強行の連続。うんざりだ、いい加減にしろ……。広がったのは安倍氏への同情や共感より、安倍政治への基本的な不信ではなかったか。

 選挙結果で注目すべきは、とくに1人区で自民党が不振を極めたことだ。地方の経済が疲弊する一方で、高齢者ばかりの町や村が増える。人々の不安と不満が膨らんでいるのに、自公政権は本気で取り組んでくれない。そうした思いが底流にあると見るべきだ。

 都市で集めた税金を、公共事業などを通じて地方に再配分する。良くも悪くも自民党政治を支えてきたメカニズムだ。それが終わりを告げたのに、代わりの方策が見つからないのだ。

 ●優先課題を見誤った

 地方の疲弊に象徴される格差への国民の不満、将来への不安は、都市住民や若い世代にも共通するものだ。とりわけ弱者の暮らしや安心をどう支えるのか。これこそが、小泉改革を引き継いだ首相が第一に取り組むべき課題だった。

 ところが、首相が持ち出したのは「美しい国」であり、「戦後レジームからの脱却」だった。憲法改正のための国民投票法をつくり、教育基本法を改正し、防衛庁を省に昇格させた。こうした実績を見てほしい、と胸を張ってみせた。

 有権者にはそれぞれ賛否のある課題だろう。だが、それらはいまの政治が取り組むべき最優先課題なのか。そんな違和感が積もり積もっていたことは、世論調査などにも表れていた。

 自民党は成長重視の政策などを打ち出し、実際、景気は拡大基調にある。なのになぜ負けたのか、真剣に分析すべきなのに、首相が「基本路線には(国民の)ご理解をいただいている」と政策継続の構えを見せているのは解せない。

 政治はこれから激動の時代に入る。与野党に求められるのは、衆参で多数派がねじれるという状況の中で、対立だけでなく、お互いの合意をどうつくり、政治を前に進めていくかの努力だ。

 自民党は、これまでのような強引な国会運営はやりたくてもできない。だが、民主党もいたずらに与党の足を引っ張るだけなら、次は国民の失望が自分たちに向かうことを知るべきだ。

 そんな新しい緊張感にあふれる国会を実現するためにも、首相は一日も早く自らの進退にけじめをつける必要がある。

【朝日・天声人語】2007年07月30日(月曜日)付

 古代ギリシャの哲学者タレスは天文学にもたけていた。ある夜、星の観測に熱中するあまり、井戸に気づかずに落ちてしまった。使用人が冷やかした。「あなたは天上のことは知ろうとするが、足元のことはお気づきにならない」

 よく知られた逸話に、安倍自民党の大敗が重なる。首相になってからの安倍さんには、望遠鏡で遠くの空ばかり眺めていた印象が強い。いわく「美しい国」「憲法改正」「戦後レジーム(体制)からの脱却」……。大構えなテーマは、彼の思い描く夜空に、星座となってきらめいていたのだろう。

 だが足元には疎かったようだ。暮らしを脅かす格差に無頓着だった。政治とカネの醜聞につまずき、年金問題という井戸に落ちた。それからが正念場だったはずだが、腹を据えて空を仰ぎ続けるでもなく、取り繕いに追われた。

 「政治家は次の時代を考え、政治屋は次の選挙を考える」という。首相就任時には、安倍さんは政治家だったかもしれない。だが井戸に落ちてからは、動揺したのかすっかり政治屋になってしまった。脆(もろ)さに失望した人は、自民支持層にも少なくなかっただろう。

 タレスは、万物は水から生まれ、水に還(かえ)ると、宇宙の原理を説いた。その水を庶民に、為政者を舟になぞらえたのは、中国の思想家の荀子だ。「水はすなわち舟を載せ、水はすなわち舟を覆す」

 民衆は政権を支えもするが、不満ならひっくり返す。それが一票の力だろう。舟が覆ってなお、首相は泳ぎ続けるそうだ。民意の波は相当荒いのだけれど。


【毎日・社説】

社説:自民惨敗 民意は「安倍政治」を否定した 衆院の早期解散で信を問え

 参院選は自民党が歴史的敗北を喫した。与党は過半数を大幅に下回り民主党は参院で第1党となった。

 安倍晋三首相にとっては、全国の有権者に審判を仰ぐ初の国政選挙だった。私たちは今回の参院選を「安倍政治」を問う選挙であるとともに、自民、民主両党による2大政党化の進展を占う選挙と位置付けてきた。

 選挙結果について安倍首相は29日夜、「国民の声を厳粛に受け止めなければならない」としながらも、自らの進退については「改革続行、新しい国造りを約束してきた。この約束を果たしていくことが私に課せられた使命だと決意している」と続投する意向を明らかにした。

 与党内には「参院選は政権選択選挙ではなく首相の進退は問われない」という声もある。

 しかし98年の44議席を下回り、40議席を切る大敗北である。今回の結果は国民による「安倍政治」への不信任と受け止めるべきだろう。首相の政治責任はあまりにも明らかであり、続投が民意に沿った判断とは思えない。

 6年任期の参院では3年ごとに議員の半数が改選される。

 このため今後少なくとも3年間は法案成否の主導権は野党に握られる。衆院で再議決する道はあるが混乱は必至だ。

 今後の政策遂行上、まず課題となるのは11月1日で期限切れとなるテロ対策特別措置法の延長問題である。さらに来年度予算編成との関連で本格的な消費税論議も始めなくてはならない。北朝鮮の核問題に関する6カ国協議への対応など外交上の難問も山積している。

 首相は参院選敗北にもかかわらず続投を決意したからには、早期に衆院を解散し、改めて信を問うべきである。

 ◇身内の論理に不信増す

 自民党大敗の大きな理由は、国民が「安倍政治」は自分たちの方を向いていないと受け止めたからだろう。

 5000万件に及ぶ年金記録漏れに対して当初、政府・与党の反応は鈍かった。首相は追及する民主党議員に対して、年金制度に対して不安をあおると切り返した。

 対策に本腰を入れ出したのは5月下旬に毎日新聞などの世論調査で支持率が急落してからだ。

 年金記録の持ち主を捜すための名寄せ作業を急いだ。保険料支払いを証明できない人に対する給付策も打ち出した。

 しかし国民は参院選対策用のパフォーマンスという疑念を消せなかった。本社世論調査では現行対策について8割が解決策にはならないと回答した。

 「政治とカネ」の問題も首相は甘く見た。佐田玄一郎前行革担当相、松岡利勝前農相、赤城徳彦農相らの事務所経費問題が続いた。

 首相は要領を得ない説明を繰り返す閣僚をかばうばかりで、政府与党全体が不信の目で見られるようになった。

 自民、公明両党の賛成で改正政治資金規正法が成立した。これは資金管理団体だけに限定し、5万円以上の経常経費支出に領収書添付を義務付ける内容だ。

 これも赤城氏の後援会のような団体は規制外で、さっそくザル法の正体を露呈してしまった。

 本来、内閣の重しになるべきベテラン閣僚からは、柳沢伯夫厚生労働相の「産む機械」発言や久間章生前防衛相の「(原爆投下は)しょうがない」発言が飛び出した。それは内閣の緊張感の欠如とともに首相の指導力不足をあらわにする結果となった。

 事務所経費問題に加え、総裁選で支援を受けた仲間で作った「お友だち内閣」の大きなツケが回ったものだろう。このように首相は国民の視点に立つことなく、身内の論理に終始した。それが国民からの不信を決定的なものにした。

 「官から民へ」をキャッチフレーズにした「小泉改革」を継承するのかどうかも不明確だ。

 郵政造反組を復党させたが、これは05年の郵政解散の大義を無視したものだ。首相は親しい議員の復党にこだわったが、小泉純一郎前首相の構造改革路線への抵抗ともみられた。6月の「骨太の方針」も族議員や官僚に配慮し総花的になってしまった。

 一方で参院選の日程をずらしてまで会期を延長して、公務員制度改革関連法などを成立させた。前首相のような政治主導をアピールしたかったのだろう。

 しかし採決の強行を繰り返すドタバタぶりで、かえって国民の信用を失った。

 ◇重い責任を負った民主党

 首相は「戦後レジームからの脱却」を前面に掲げてきた。実際に改正教育基本法や防衛省昇格、国民投票法なども成立させた。集団的自衛権の憲法解釈の見直しについても進めている。

 国民は暮らしの実感から離れた理念先行型の安倍路線に対して明らかに「ノー」と言ったと言える。

 参院で第1党に躍り出た民主党の責任は重い。

 民主党の小沢一郎代表は憲法や安全保障政策などはあえて選挙戦では触れずに、年金や格差是正など生活に焦点を当てた。

 消費税率は据え置き方針をとり、農家に所得補償する「戸別所得補償制度」も打ち出した。

 1人区で自民党を圧倒したのは中央・都市との格差に矛盾を抱く地方の支持を得たためだろう。「市場主義」は、強い者だけが生き残るという不満も吸収した。

 政権政党を目指すならば、まず財源問題をはじめとする具体的な政策を提示し実現への努力が求められる。

 安保政策でも米国との摩擦を覚悟でインド洋やイラクから自衛隊を撤退させることができるか。党内の意見を集約し統一した方向性を打ち出せるか、政権担当能力が問われよう。

毎日新聞 2007年7月30日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:新日米安保が自然承認された1960年6月19日…

 新日米安保が自然承認された1960年6月19日、首相官邸周辺は抗議のデモで埋まった。危険だという警視総監に、岸信介首相は「おれは動かない」と退避を断る。人けのない官邸で首相は弟の佐藤栄作氏と「死ぬならここ以外にない」とブランデーをくみ交わした▲この時、岸首相はすでに退陣を決意していた。治安の悪化により予定されていた米大統領訪日を断念した時、「誰に相談することもできないのだから、自分で決断した」。辞意を表明したのは安保自然承認の4日後、批准書交換の日だった▲政治対決から経済成長へと戦後政治の歴史的場面転換を生んだ岸内閣退陣だ。だが、岸氏は後に「あの時、もう少しがんばればよかった」とも話している。「総理は……地位に恋々としてかじりつく必要があるんだ。僕はあっさりしすぎた」(原彬久編「岸信介証言録」毎日新聞社)▲ならば祖父・岸氏の言葉を思い出しての決断だろうか。過半数を大きく割り込む与党の歴史的大敗となった参院選だが、安倍晋三首相は早々と続投を表明した。ただこれほどにはっきりと示された有権者の安倍政治への拒否反応を無視して政治への信頼をつなぎとめられるのだろうか▲世論調査にも示されたのは、失言や疑惑の絶えぬ内閣を率いる首相の指導力への不信だ。「美しい国」といった言葉と、その足元の危うさのギャップが目立ったのは首相には不本意かもしれない。だが有権者の多くは、そこに政治の核心にかかわる意識のズレを感じ取ったのに違いない▲「あっさり」より「地位に恋々としてかじりつく」という祖父と異なる選択が、国民にどんな反発を呼ぶかは首相も想像がつこう。それが政界の地殻変動を招きかねないのが参院選後の日本政治だ。

毎日新聞 2007年7月30日 東京朝刊


【読売・社説】

参院与野党逆転 国政の混迷は許されない(7月30日付・読売社説)

 「歴史的」な参院選の結果である。1955年の保守合同後、参院で初めて野党が第1党となった。

 続投を表明した安倍首相の政権運営や国会のあり方などに大きな影響を及ぼすのは必至だ。日本の政治構造の変動につながる可能性もある。

 自民党が惨敗し、公明党も不振だった結果、与党は過半数を割った。民主党は大躍進し、第1党に躍り出た。

 民主党には、年金記録漏れや不明朗な事務所費処理、閣僚の軽率な問題発言など、政府・与党の“失策”に対する有権者の批判が追い風となった。

 ◆民主党の責任は重い◆

 景気拡大の実感がないとする地方や労働者などに根強い「格差」への不満も、安倍政権や与党への批判につながったようだ。建設業、農業、郵便局など、自民党の伝統的な組織基盤が揺らぐ1人区に焦点を当てた小沢代表の選挙戦術も奏功したのだろう。

 衆院で与党、参院で野党がそれぞれ過半数を占めるという衆参“ねじれ”現象にあって、参院第1党として、参院運営の主導権を握ることになる民主党の責任は、極めて重い。

 小沢代表はかねて、参院での与党過半数割れの実現を通じて政権交代を目指す、と主張している。政界再編も視野に入れて、政府・与党を衆院解散に追い込む狙いだろう。

 衆院で可決された政府・与党の法案が送付されても、参院で否決や修正が出来る。野党が参院に法案を提出、可決して衆院に送付し、政府・与党を揺さぶることも可能になる。首相や閣僚の問責決議案を可決することも難しいことではあるまい。

 こうしたことが常態化すれば、国政の混迷は避けられない。

 ◆政策の遂行が重要だ◆

 衆院で3分の2を超える勢力を確保する与党は、参院で否決された法案を再可決し、成立させることが出来るが、現実には容易なことではない。

 懸念されるのは、内外の重要政策推進への影響である。

 例えば、年金・医療・介護など社会保障制度を安定させるための財源としての消費税率引き上げを含めた税財政改革である。

 野党はいずれも消費税率引き上げに反対だが、いたずらに対立するだけでは、安定した社会保障制度構築の展望を早期に開くことが困難になる。

 米軍再編問題も、野党は、沖縄県の米海兵隊普天間飛行場の移設に、どう取り組むのか。米軍再編推進特措法に反対した民主党の対応によっては、北朝鮮の核の深刻な脅威の下にある日本の平和と安全にとって死活的に重要な日米同盟の信頼を損ないかねない。

 テロ対策特措法の延長問題も、民主党が反対して延長出来ないとなれば、日本は国際平和活動に消極的な国と見なされ、国際社会での発言権の低下を招く恐れがある。

 そうした事態が現実になれば、二院制のあり方や参院の存在意義にも、大きな疑問符を付けられるだろう。

 日本が直面する内外の重要課題を考えれば、民主党は、政略のみに走るのではなく、責任政党としての姿勢をしっかり保つことが重要である。

 自民党の惨敗は、多様な要因が複合した逆風の結果だろう。

 年金記録漏れ問題は、年金行政への不信を生んだ。

 辞任した佐田玄一郎行政改革相や、自殺した松岡利勝農相と後任の赤城農相らの不明朗な事務所費の処理は、「政治とカネ」への疑念を招いた。

 久間章生防衛相が辞任に追い込まれた原爆投下に関する「しょうがない」発言への批判も痛手となった。

 総裁選での論功行賞人事が、こうした問題閣僚の起用につながったとして、安倍首相の任命責任を厳しく問う声もあった。だが、歴代、論功行賞人事のなかった政権はない。

 ◆政権を立て直せるか◆

 最大の争点となった年金や格差の問題は、いずれも過去の政権の“負の遺産”と言うべきものだ。必ずしも、政権発足後10か月の安倍首相に全責任を負わせることは出来まい。

 年金記録漏れは、長年の社会保険庁のずさんな実務処理によって生じた。適切な対応を怠ってきた歴代の内閣の責任が大きい。

 格差の拡大は、「失われた10年」の間、経済再建に有効な手を打てなかったことや、小泉前政権で、竹中平蔵・経済財政相が主導した極端な市場原理主義にも原因がある。

 安倍首相が、小泉政治の行き過ぎた面と一線を画していれば、小泉政治のマイナス面と同罪と見られることはなかっただろう。

 厳しい選挙結果にもかかわらず、安倍首相は、「新しい国づくりに責任を果たす」と繰り返し強調した。引き続き「戦後レジームからの脱却」を掲げ、憲法改正や教育再生に取り組む決意の表明である。

 それには、選挙の審判を重く受け止め、民主党との協調も模索しつつ、態勢の立て直しを図らねばならない。
(2007年7月30日3時33分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月30日付 編集手帳

 「掃除の下手な大工は仕事もあかん」と語ったのは、大阪万博の日本庭園をはじめとして生涯に120余りの茶室を手がけた数寄屋大工の中村外二(そとじ)さんである◆駆け出しの職人は木の削り屑(くず)に肌で触れ、道具の使い方や仕事の段取りなどを先輩大工から盗む。掃除が下手であることは基本の学習を怠ってきた証しであり、いい家が造れるはずもない、と◆自民党の敗北を伝えるテレビの選挙速報を眺めつつ、中村さんの言葉を思い出している。「消えた年金」など敗因は幾つかあれど、閣僚が招いた疑惑を掃除する安倍首相の手際も響いたようである◆赤城徳彦農相の事務所費問題では、農相に経費の明細を公表させれば疑惑の塵(ちり)は一掃できたのに、しなかった。掃除下手の棟梁(とうりょう)に社会保障や外交・安保という大建築が手に負えるか、疑問に感じた有権者もいただろう◆どの木をどんな用途、場所に使うか、「大工は木を知らなあかん」とも中村さんは述べている。続出した閣僚の不始末を顧みれば、“論功行賞の木”や“お友達の木”を重用した10か月前の組閣人事の罪というほかはない◆安倍首相は引き続き政権を担う意向という。大敗を喫して続投する以上、敗因をきちんと取り除かなければ有権者は納得しない。木は組み直す。疑惑は掃除する。できなければ棟梁を名乗る資格はない。
(2007年7月30日3時49分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】自民大敗 民主党の責任は大きい

 自民、公明の与党が参院の過半数を大きく割り込む大敗を喫した一方で、安倍晋三首相は続投を表明した。

首相は反省し態勢強化図れ

 日本が取り組むべき内政・外交の課題山積を踏まえ、懸案の解決に不退転の決意を示したのであろう。

 だが、首相はこの敗北をまず真摯(しんし)に反省しなければならない。教訓をいかにくみ取り、安倍政権の態勢をどう立て直すか。内閣改造などを通じて首相の指導力が厳しく問われる。

 他方、民主党は勝利し、参院第一党に躍進した。それだけに民主党は国政上、より大きな責任を負ったことを自覚しなければなるまい。政権を担う責任政党に脱皮することなく、これまでのような対決路線を踏襲していては、いずれ国民から手痛いしっぺ返しを受けることになろう。

 与野党が対立する法案は、衆院を通っても参院で否決される公算が大きいが、国益に資する法案は党派を超えた協力こそが必要なのである。

 与党への逆風は幾つか挙げられる。やはり最後まで吹き続けた逆風は、年金記録の紛失問題だった。政府・与党は受給者らの不安を解消しようと、早急に対応策をまとめて実施したが、不信感を払拭(ふっしょく)することには至らなかった。

 ≪不信感払拭できず≫

 同じく選挙直前に表面化した赤城徳彦農水相の事務所経費問題が、「政治とカネ」をめぐる有権者の政治不信に拍車をかけた。

 さらに敗北の大きな要因は魅力ある候補者を擁立できなかったことにもある。青木幹雄参院議員会長や片山虎之助参院幹事長ら、参院側責任者の選考判断が、時代に合っていないことの表れといえる。

 首相が取り組むべきは、改革路線の担い手にふさわしい清新な候補者の擁立だ。新たな参院執行部人事により、変革を行う好機が現出したのではなかろうか。

 一方、民主党は年金記録紛失問題を追い風に、国民生活重視の立場を打ち出した。憲法、教育を通じた国の再生に力を入れる首相の姿勢から、負担増にあえぐ国民や地方格差などへの配慮が不足していると判断し、自民党との差別化を図った結果、政権への批判票の受け皿を作ることに成功したといえよう。首相は地方でこうした不満が高まっていることを直視し、有効な対策を実施しなければならない。

 「戦後レジーム(体制)」からの脱却を掲げ、憲法改正を政治日程に乗せ、教育再生の具体化を図るなど、新しい国づくりに向かおうとした安倍首相の政治路線の方向は評価できるが、それを実現させる態勢があまりに不備であったことは否定できない。

 相次ぐ閣僚の辞任などを招いたのも、首相の指導力不足に原因があるといえよう。党役員人事や内閣改造により、突破力や発信力のある人材の登用が不可欠である。

 ≪「対決」では混迷へ≫

 問題は、選挙によって生じた衆参のねじれ現象という新たな政治構造の中で、どのように改革を円滑に実現していくか。与党との対決姿勢を強めてきた民主党が、責任政党にふさわしい立ち居振る舞いをできるかどうかに、大きくかかっている。

 さっそく、秋の臨時国会では海上自衛隊がインド洋で補給活動などを行うためのテロ対策特別措置法の延長措置をとる必要がある。

 民主党は選挙公約で、イラクに派遣されている自衛隊の撤退を掲げたが、日米同盟や国際貢献に不可欠なテーマについて、現実的な対応をとれるかどうかは、テロ特措法への対応が試金石になるだろう。

 憲法改正の核心となる9条や集団的自衛権の行使容認の問題についても、民主党は明確な見解を示すべきだ。

 参院議長ポストの獲得にあたり、民主党は共産、社民両党とも共闘することになるだろう。しかし、野党連合では現実的な外交・安保政策をとることはできまい。

 小沢一郎民主党代表が提唱する政権交代可能な二大政党はよしとするが、衆院解散に追い込むため、これまでのような政局本位で対決路線を続けるのかどうか。民主党は、真に政権を担える勢力たりうるかどうかを証明することが求められている。

(2007/07/30 05:37)

【産経抄】

 「政治は力だ」。こう看破したのは、平民宰相といわれた原敬だ。日本で初めて政党内閣を誕生させながら、凶刃に倒れた原ならではの言葉だが、同じ岩手県出身の後藤新平は「奇怪なる政治的用語」と批判した。

 ▼台湾総督府民政長官や満鉄総裁として、植民地行政に腕をふるい、政界に転じてからは、外相、東京市長、内相などを歴任した。生前は「大風呂敷」ともあだ名されたが、そのスケールの大きい政策が生誕150年を迎えた今年、あらためて脚光を浴びている。

 ▼ その後藤が晩年に情熱を傾けたのが、「政治の倫理化」運動だった。大正14(1925)年に、せっかく普通選挙法が成立したというのに、政界は汚職がはびこり、政党は足の引っ張り合いを続けていた。後藤は脳溢血(いっけつ)と闘いながら、10カ月にわたって全国を遊説して、立憲政治のあるべき姿を国民に訴えた。

 ▼ちょうど、東京都墨田区の江戸東京博物館で開かれている「後藤新平展」の一角では、倫理化運動のPRのために作られたアニメ映画が上映されている。肖像写真で登場する後藤が、手段を選ばず政権を奪取しようとする政治家と目先のことしか関心がない官僚を退治する場面もある。

 ▼まるで、80年後の政治の混乱を見通しているかのようだ。きのう投開票された参院選は、小沢一郎代表が率いる民主党が圧勝した。岩手県水沢出身の小沢氏が尊敬する人物としてあげるのが原敬だ。原の宿敵だった元老山県有朋の出身地、山口から選出された安倍晋三首相から、力で政権をもぎ取る決意を固めたことだろう。

 ▼ただ、内外の情勢が政治の空白を許さないほど逼迫(ひっぱく)していることは、十分承知のはず。もう一人の郷土の偉人、後藤の言葉にも耳を傾けてほしい。

(2007/07/30 07:21)


【日経・社説】

社説 安倍首相はこの審判を厳粛に受け止めよ(7/30)

 第21回参院通常選挙は29日投開票され、自民党が大敗を喫して与党が過半数を大きく割り込む結果となった。自民党の獲得議席は40に届かず、民主党が目標の55議席を大きく上回って参院の第1党に躍り出た。年金の記録漏れ問題や閣僚の相次ぐ失態などで有権者の政府不信の声が一気に噴き出した結果と言えよう。安倍晋三首相は引き続き政権を維持する意向を表明したが、有権者の厳しい審判を厳粛に受け止め、謙虚な政権運営を心がける必要がある。

噴き出した政府不信

 与党である自民、公明両党は衆院で3分の2以上の絶対多数を維持しているが、参院で過半数を大きく割り込んだため、政局の動揺は避けられそうにない。政局不安によって改革が停滞したり、経済に悪影響が出たりするようなことがあってはならない。この際、与野党の責任ある行動を改めて強く求めたい。

 参院選での与党の敗因ははっきりしている。年金の記録漏れ問題で有権者は政府に裏切られたような感情を抱き、政府不信の声が渦巻いた。この問題が国会で表面化した際の柳沢伯夫厚労相の対応も迅速・的確だったとは言い難い。内閣支持率の急落に驚いた安倍首相が急きょ、陣頭指揮で網羅的な対策をとりまとめたが、有権者の怒り・不信を鎮めることはできなかった。

 有権者の政府不信に拍車を掛けたのが閣僚の相次ぐ失態である。「政治とカネ」をめぐる松岡利勝前農相の自殺は衝撃的であり、久間章生前防衛相の原爆発言は大きな反発を招いた。その後も赤城徳彦農相の事務所費問題や麻生太郎外相の不適切発言などが続き、安倍内閣の支持率は30%前後に低迷した。安倍首相の任命責任に厳しい目が向けられたのは当然である。

 参院選のカギを握るとみられた29の1人区で民主党は自民党を圧倒した。これら1人区では地域経済の不振や過疎化に苦しむところが少なくない。農家に対する戸別所得補償制度や月額2万6000円の子ども手当などの民主党の公約は多分にばらまき的で財源の裏付けも明確ではないが、こうした政策が政府不信の高まりと相まって、有権者の一定の支持を集めたことは否定できない。

 その点で小沢一郎民主党代表の地方重視の選挙戦術は極めて巧妙だった。従来、民主党は中国、四国、九州地方では劣勢だったが、今回の参院選ではこれらの地方でも自民党と互角以上の戦いを展開しており、2大政党化の流れは一段と定着してきたといえよう。

 参院選で有権者は安倍首相に厳しい審判を突きつけた。しかし、参院選で負けたからといって首相が辞めなければならないわけではない。参院選は政権選択の選挙ではない。安倍首相が辞めても次の首相は自民党内のたらい回しで選ばれるから基本的に何も変わらない。参院選の結果で首相が頻繁に変わることは本来、好ましいことではない。

 そうは言っても、惨敗した安倍首相の求心力低下は避けられず、続投しても政権運営はかなり苦しくなるのは間違いない。参院では野党が反対する法案は通らなくなる。野党の主張を丸のみするか、衆院の3分の2の多数で再議決するかの二者択一になるが、再議決を何度も繰り返すことは容易でない。政局は当面、衆院の多数派と参院の多数派が異なる「ねじれ」によって不安定になることは避けられそうにない。

政局不安で停滞招くな

 政局の動揺を収束させるためには早期に衆院を解散して民意を問い直すことが基本的に望ましい。そこで民主党が第1党多数派になれば政権交代となり、自民党が第1党になれば民主党との大連立か、政界再編によって新たな多数派形成をめざすことになるだろう。

 議院内閣制は衆院の多数派が内閣を組織し、議会の信任を得て安定した政治運営を行う仕組みである。日本のように解散のない参院が衆院とほぼ同じ権能を持っていると、衆院と参院の多数派が異なる場合にたちまち政権運営は行き詰まる。これは日本の政治の構造上の欠陥・矛盾である。この機会に参院のあり方を根本的に見直す議論を高めたい。

 政局不安によって改革の動きを停滞させてはならない。日本経済は回復基調にあるが、国際競争の中で安定成長を続けるには不断の構造改革が不可欠である。財政改革や行政改革の手を緩める暇はない。参院選で示された民意を踏まえて年金制度の信頼性確保も待ったなしである。

 参院で第1党に躍り出た民主党の責任は重大である。民主党は早期の衆院解散を求めてさらに攻勢を強める構えだが、国会で何でも反対の方針をとったり、いたずらに政局を混乱させるような行動はとるべきでない。そのような無責任な態度は有権者の失望を招くだけである。

【日経・春秋】春秋(7/30)

 有権者の審判が下った。安倍晋三首相にとって厳しい結果だが、戦い終えた爽快(そうかい)感もあるはずである。名前の1字を共有する同じ長州出身の幕末の志士、高杉晋作も獄に入ったり、対英交渉の藩代表になったりと起伏の多い生涯だった。

▼萩(はぎ)の市街地から松本川を渡った旧松本村の丘の上に晋作の墓がある。やはり早世した師、吉田松陰の墓に右後方から寄り添う。近くにある松陰の生誕地からは城下と日本海が見える。司馬遼太郎は「世に棲(す)む日日」で松陰を聖者、晋作を天衣無縫な天才に描いた。対照的なふたりに「狂」が共通する点も透視した。

▼大宅壮一の評論に「権勢と反逆を生む山口県」がある。司馬が書いた狂は大宅の「反逆」に通じる。山口県は松陰門下の伊藤博文ら「権勢」のひとも輩出した。岸信介もそれに連なる。同時代人の共産党指導者、野坂参三も萩出身だったから、山口県人は2頭立て馬車で権力にむかって進んでいる、と大宅は書く。

▼小泉純一郎前首相は父親が鹿児島県出身だが、反逆者の趣に加え、細面で細い目が松陰に似る。後継者の安倍首相は反逆の高杉か、権勢の伊藤なのか。岸の孫だから伊藤型とみられ、この結果につながったのか。司馬は高杉を「革命家」とし、「権力に淡泊な男」と評した。素顔の晋三氏は晋作型に近いと聞くが。


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