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2007年7月 3日 (火)

7月3日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月3日朝刊)

[参院沖縄選挙区]論争で争点掘り下げよ

 参院選は二十九日の投開票日まで一カ月を切った。沖縄選挙区は自民党公認で現職の西銘順志郎氏(57)=公明推薦=と元参院議員糸数慶子氏(59)=社民、社大、共産、民主、国民新党推薦=が既に政策を発表、前哨戦を繰り広げている。

 これまでのところ選挙区で名乗りを上げているのは西銘、糸数両氏だけである。文字通り与野党が激突する総力戦になりそうだ。

 政策の柱は「自立発展」(西銘氏)、「平和・基地問題」(糸数氏)だが、ほかにも年金問題をはじめ雇用・失業対策、環境や教育問題など掲げているテーマは多い。

 普天間飛行場を軸にした在日米軍再編でも、県民は双方の政策を注視しているといっていいはずだ。

 喫緊の課題である「普天間」の危険性をどう除去していくか。名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部に建設予定のV字形滑走路については、基本的な姿勢をもう一度鮮明にしてもいいのではないか。

 中央で注目を集めている年金記録不備問題や憲法改正についても、両氏の考え方には違いがあるはずだ。

 掲げた政策を浸透させ具体化を図るのは当然として、政策の一つ一つについて討論を通して論点を堀り下げるよう望みたい。

 中央と連動した各党独自の公約もある。老後の暮らしに直結する年金改革にどう取り組んでいくのか。税率を含む消費税問題はどうなのか。

 県民にとってはいずれも欠かせぬ課題であり、しっかり論議することが大切だろう。

 明らかになった年金記録不備問題でも、両氏の考えを聞きたいところだ。

 安倍晋三首相は、約五千万件の年金記録の受給者との照合作業を一年程度で終えると述べている。

 だが、県内でも記録が漏れているという人は多い。年金時効撤廃特例法案が採択されたとはいえ、具体的にどのような対応を取ればいいのか分からず、困っているのが実情だ。

 この問題では、与党側にいる西銘氏、野党側の糸数氏とも「受給漏れがないよう万全を尽くす」点では一致している。にもかかわらず、不信感が払できないのは国会で論議を深めなかったからだ。拭 西銘、糸数両氏はこの問題をどう受け止め、当選後に対応していくのか。自らの姿勢をしっかり訴えていく必要がある。

 今選挙は「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げる安倍首相の信任投票にもなる。有権者の判断を仰ぐ上からも活発な論争を期待したい。

[国民生活白書]仕事と生活の調和が大事

 内閣府は「つながりが築く豊かな国民生活」と題した二〇〇七年版「国民生活白書」を公表した。家族、地域、職場の「つながり」に焦点を当て、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)を推進する環境整備の必要性などを強調している。

 白書は、近年の家族、地域、職場のつながりの姿は(1)経済・社会環境の変化(2)生活の質や利便性の向上(3)人々の意識の変化―などを背景に、それぞれ大きく変化していると指摘する。

 〇七年の内閣府の国民生活選好度調査によれば、家族と過ごす時間については82・4%が取れていると感じているが、三十―四十代の男性の約三割は取れていない。長時間労働や、子供の塾通いなどが背景にある。

 家族のつながりの変化は、家庭の教育力低下、やすらぎ不足、子育て機能に影響している可能性があるという。

 一方、地域活動への積極的な参加など、つながりのある人は16%しかなく約二割は地域から孤立している。30・9%は地域のつながりは十年前と比べて弱くなっていると考えている。

 地域のつながりの希薄化によって、子育て支援機能が十分果たされず、地域の教育力の低下、治安の悪化につながっていると考える人は多い。

 また、四人に一人は職場の人と「仕事以外でもつながりたい」と考えつつ実際には付き合いができていない。

 企業の雇用方針の変化、働き方に対する意識の変化などが職場のつながりにも影響している。

 こうした変化が身体の疲れやストレス、コミュニケーション不足、人材育成機能の弱まりにつながっていると受け止められている。

 白書はワークライフバランスを一層推進するための環境整備、つながりの場などについての情報提供、国民の意識啓発を対応策として挙げる。

 つながりが豊かな生活の原動力になるのは確かだが、問題はどう実現していくかだ。仕事と生活の調和、働き方が前提となる問題であり、企業の協力がなければ絵に描いたもちになる。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月3日 朝刊 1面)

 なぜ「現場力」は低下してしまったのか。そう嘆きたくなる出来事が続く。

 牛ミンチに豚肉を混ぜ、賞味期限をいとも簡単に改ざんしてしまう「ミートホープ」のあきれた手口。「エキスポランド」のジェットコースター事故では、十五年間一度も車軸を交換していなかった事実に寒気がした。

 事務作業上の不手際などが原因とされる社会保険庁の年金記録不備問題。「消えた国保交付金」は厚生労働省の算定ミスによるものだった。職業倫理の欠如、認識の甘さ、問題を内々に済ませようとする体質は、日本社会に巣くう構造なのか。

 戦後日本の経済成長を支えたのは、勤勉で技術力を持った、質の高い労働者たちだった。まじめに働く一人一人の現場力が、会社を強くし、社会に活力を与えた。その力に陰りが見えている。

 二日、沖縄タイムス賞の贈呈式があった。放送を通して沖縄の伝統文化の継承に尽くした上原直彦さんは「ナースクブン(自分の職分)、スクブンと教えられ、できることを全うしたおかげ」と喜びを語った。仕事を通してやるべきことをやったまで、とさりげなく。

 現場力の低下は、リストラや採用抑制で人材の空洞化が進んだためといわれる。組織としての問題はもちろんあるだろうが、それだけではないはずだ。プロ意識を持ち、与えられた仕事や役割を全うする。現場力回復の一番の近道は、それぞれが「スクブン」を果たすこと。(森田美奈子)


【琉球新報・社説】

ヘリパッド移設・性急では混乱するだけだ

 東村高江区への米軍ヘリパッド移設工事の着手が目前に迫っている。建設に反対する同区の住民有志や市民団体メンバーらが2日朝から抗議の座り込みを開始した。
 建設予定地入り口では抗議集会が開かれ、静かな住環境や区民生活の安全確保などを訴える切実な声が上がった。
 人口約150人。パインを中心に農業で生計を立てる住民が多いのどかな小さな集落周辺は、ただならぬ雰囲気に包み込まれた。シュプレヒコールがこだまし、胸のボードには不信や不安のたけが書かれている。覚悟の表れなのだろう、道路に座り込む顔はいずれも思い詰めた重い表情だ。
 どう考えても、東海岸を望む小さな里にはおよそ不釣り合いな光景である。違和感を禁じ得ない。
 「一度完成してしまうと高江の被害はずっと続く」「子どもや孫など、次の世代のためにも着工させてはいけない」といった区民の声を国はどう受け止めるのか。
 ヘリパッドの同区移設は、米軍北部訓練場の一部返還に伴い10年前の日米特別行動委員会(SACO)の合意に盛り込まれた。移設計画に対し、区は二度にわたって反対決議をした。
 今年4月に行われた村長選挙では移設反対の姿勢を掲げて伊集盛久村長が無投票当選した。民間地にあまりにも近く、危険であるとして「住民の意思の先頭に立つことが村長の務め」との姿勢を表明していた。
 5月中旬、伊集村長から方針転換が告げられた。当初から変更の可能性の難しさに触れてはいたものの、村長は「これまでの手続きの経緯を踏まえると、移設場所の変更は難しい」との理由で容認姿勢に転じた。
 その上で今後は、自然・生活環境の保全、住宅や学校上空の飛行回避を求めていく方針を明らかにした。
 思い起こすのは、基地問題を抱える首長たちが過去、口にした「苦渋の決断」という言葉だ。安全保障問題で首長の裁量、努力には限界があり、現実的な政策を選択せざるを得ないということを表した言葉である。
 根本問題は「苦渋の決断」を強いる国の施策にある。国はいったい何度同じ事態を繰り返せば気が済むのだろうか。
 米軍再編推進法が今国会で成立した。在日米軍再編への協力度合いに応じて地方自治体に交付金を支給する、いわゆる「アメとムチ」の政策を進めるための法律だ。今後、地域が分断され、混乱に陥る事態が一層懸念される。
 地域住民の理解の得られぬままに強行される政策は、早晩つまずく。性急に事を運べば、混乱するだけである。

(7/3 9:37)

北朝鮮「核」査察・核放棄へ加速させたい

 北朝鮮の核問題は、2月の6カ国協議の合意に基づき、核施設の稼働停止や封印など「初期段階措置」の履行に向け大きく動きだした。
 北朝鮮を訪れた国際原子力機関(IAEA)の実務代表団は、初期段階措置の履行手続きなどをめぐる北朝鮮側との協議を終了。代表団を率いたハイノネン事務次長は北朝鮮と「実りある協議」が行われたことを強調。さらに「われわれは寧辺の核施設の停止、封印に関する検証方法について共通の認識を持った」と述べ、滞在中の協議の成果を誇った。
 北朝鮮が国際社会との約束を着実に実行していく意志を見せ、寧辺などの核施設で実際に監視・検証に当たるIAEAとしても、北朝鮮側の姿勢を実感できたということなのだろう。
 この流れを停滞させてはならない。北朝鮮とIAEAは、実務協議を加速させ、監視方法など手続きの細部を詰め、次の段階である「全核施設の無能力化」への足掛かりを築いてほしい。
 IAEA当局者によると、監視・検証作業の対象施設は、寧辺の核施設の実験用黒鉛減速炉(5千キロワット)や建設中の黒鉛減速炉(5万キロワット)など5カ所とすることで一致した。
 6カ国協議の合意文書にはこれらの施設名は明記されていない。北朝鮮がどの核施設を対象として示してくるかが、北朝鮮の初期段階への取り組みの真剣さを示すバロメーターとみられていた。
 当面の懸念は解消されたことになる。北朝鮮は、ウィーンのIAEA本部と結んで映像を送信する監視カメラの設置に同意し、停止した核施設の機器へのキャップ取り付けも認めている。
 北朝鮮が合意履行に踏み出す契機となったのは、ヒル米国務次官補の電撃訪朝だった。政府内には米朝接近で拉致問題の解決が遠のくとの声もあるようだが、それは当たらないのではないか。北朝鮮の非核化を確実に実現し、並行して拉致問題の解決に粘り強く当たる戦略が求められる。そのためには日米の緊密な協調態勢がこれまで以上に重要になってくる。

(7/3 9:36)

【琉球新報・金口木舌】

 1980年代、今帰仁村のある海岸は知る人ぞ知る穴場だった。岸壁に設けられたつづら折りの階段を下りると豊富なわき水があり、砂浜が左右に広がっていた
▼当時、大学生で毎年キャンプに出掛けた。さんご礁では色とりどりの熱帯魚が泳ぎ、ウニも多かった。眼前に浮かぶのは県内有数のウニ産地、古宇利島だ
▼そのシラヒゲウニ漁が1日、解禁された。ホンダワラなどの海藻を食べ、甘いがくどくないのが特徴。今帰仁村漁協は資源保護のため捕獲量を自主規制し、今年は漁船一隻当たり1日20キロと制限。2年前には初の禁漁もあった
▼ 先週末、穴場の海で十数年ぶりに泳ぎ、変容ぶりに驚いた。見た目の美しさは変わらないが、サンゴが死滅し生き物の姿が見えない。漁協関係者によると、約10年前から赤土がひどく、魚の産卵場にもなる海藻も打撃を受けている。約2キロ離れた古宇利島にも影響が及んでいるのだろうか
▼資源減少に追い打ちをかけるのが密漁だ。そもそもウニに限らず、伊勢エビやシャコ貝などの水産資源を漁業者以外が捕ることは禁じられている
▼一般市場に出回るウニで感じる苦みは、形崩れを防ぐためのミョウバンのせいだが、どうやらそれだけではなさそうだ。

(7/3 9:34)


【東京新聞・社説】

参院選へ 悪循環に陥る安倍政治

2007年7月3日

 評判の良くない法を数で通すだけだった延長国会が自然閉会のようになって参院選へなだれ込む。苦境に防衛相発言が拍車をかけたのは、安倍政治が悪循環に陥っていることを物語っていまいか。

 安倍晋三首相の言動に一貫性がない。言い換えれば、ぶれている。

 週末の原爆投下「しょうがない」発言で物議を醸した久間章生防衛相を呼んで厳重注意した。問題発言直後には「米国の考え方を紹介したと承知している」と、かばったばかりの首相がである。

 同じパターンは今年になってだけでも再三繰り返されてきた。「産む機械」発言の柳沢伯夫厚生労働相しかり、自殺に追いやられた「ナントカ還元水」の松岡利勝農相しかり。世間の反発にも首相は「私の内閣」の閣僚をかばい続け、ついには年金記録漏れの追い打ちで、急落する支持率に浮足立った。

 その結果が強行一辺倒となったこの国会の運営である。与党の慎重論も退けて会期を延長し、社会保険庁改革関連法、改正国家公務員法などを与党の数を頼んで成立させた。疑念の残る法を押し通したのは、焦りの表れと世間に映った。

 久間問題でもそうであるように、なにかにつけ後手に回る印象が否めない点で、政権発足当座に宣伝された側近たちによる「チーム安倍」は悪循環の窮地に、はたして機能しているのかと疑わざるを得ない。

 政権の維持に不可欠な、国民の信頼が損なわれている。遅ればせながら首相が打ち出した年金問題の処方箋(せん)が、内閣支持率で見るかぎり、けっして失地回復につながっていないのは、恐らくはそこに起因する。

 首相は一日の小沢一郎民主党代表との党首討論で、年金問題での国の責任を認めつつ、基礎年金財源をどう捻出(ねんしゅつ)するか、民主の算定のあいまいさを突く挑発で反転を試みた。

 政治の責任者として、野党に代案を迫るのはごく当然なことである。しかしそれも、成すべきことを成しての上だろう。問題の全容が丁寧に説明されないままであることは、多くの論者が指摘しているところだ。ここを抜きに前へは進みにくい。

 首相は参院選へ実績評価を問うという。新教育基本法、改憲手続きの国民投票法などを「戦後レジーム(体制)脱却」の象徴にする。が、観念先行では評価に困る。教育も憲法も具体ビジョンをまず語ることだ。

 「できないことは言わないのが責任政党」と首相は語った。信頼を失っては在任中の改憲など無理だろうとみんなが思い始めている。虚勢を張らず地道な再出発をと促したい。

尼崎事故報告 運転士がおびえた理由

2007年7月3日

 死者百七人もの大惨事となった一昨年四月の尼崎JR脱線事故。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は原因はブレーキの遅れと断定した。JR西日本は企業体質の改善を急がねばならない。

 最終報告書を読むと乗客の無念さが伝わってくる。伊丹駅を遅れて出発した快速列車は尼崎駅近くの現場カーブに制限速度を四十キロ以上も上回る高速で進入した。列車は脱線し乗客百六人が死亡、五百六十二人が負傷した。

 「反対側の扉付近にいた女性が宙を飛んできた」「電車が止まるまでの車内はまるで洗濯機のような状態」などの乗客の証言が追加された。二十三歳の運転士も死亡した。

 運転士のブレーキ操作が遅れたのは、伊丹駅で運転ミスがあったことが一因だ。彼は車内電話をかけて車掌に「(オーバーランした距離を)まけてくれへんか」と頼んだ。だが車掌との会話は中断した。報告書は「日勤教育を受けさせられることを懸念するなど言い訳を考えていた」と注意が運転からそれていたことを指摘した。そして事故が起きた。

 彼はすでに三回、日勤教育を受けていた。「一日中文書を書いていなければならず、トイレに行くにも上の人に断らなければならないので嫌だ」と知人の女性に語っている。

 JR西日本には虚偽報告を行った運転士には「より厳しい日勤教育や懲戒処分などを行う運転士管理方法」がある。これが事故につながった可能性があると指摘した。運転士を辞めさせられるかもしれない、と動揺した姿が浮かび上がる。

 事故やミスなどをした運転士に対する再教育は、JR西日本だけでなく他社でも行われている。一定期間、運転業務からはずして反省文を書かせたり原因分析などを行わせるものだ。再発防止の面からこうした再教育は必要だ。だが運転技術向上と関係のない精神論や懲罰的な内容となると、逆効果になろう。

 事故調の役割は事故原因を調べ再発防止に寄与することだ。今回、事故の背景にある企業体質にまで踏み込んだのは、それだけ同社の責任は重大だと判断したためである。

 事故調は国土交通相に対する「建議」で、列車無線について運転士の走行中の交信の「メモ取り禁止」を求めた。当然である。全鉄道事業者は早急に実行してもらいたい。

 同社は「安全性向上計画」を作成し、新型の列車自動停止装置(ATS-P)の増設や社員教育改善などに取り組んでいる。しっかりと推進すべきだ。そして遺族への補償には誠意をもって取り組んでほしい。

【東京新聞・筆洗】2007年7月3日

 葬儀で故人をしのぶあいさつを聞いて、意外な一面を知ることがある。元首相、宮沢喜一さんの通夜での長女、啓子さんのあいさつを聞くと、私人としての宮沢さんはだじゃれが好きだったという。知性派で近寄りがたい雰囲気のあった公人の顔とは対照的だ▼それでも人の「根っこ」は、公私で変わるものではないようだ。啓子さんは自由放任で育てられたことを感謝して、「リベラルな父だった」と振り返った。自由放任を貫くことがいかに難しいかを実感したのは、自分が母親になってからだった▼宮沢さんに限らず人の良い面が分かるのは、その時々ではなく後になってからのことがある。宮沢さんの首相としての評価も同じ気がする。「生活大国」の旗印を掲げて七十代で首相になったものの、政治改革をめぐる対立から自民党の分裂を招き、衆院選の敗北で退陣に追い込まれた▼ 当時、宮沢さんの指導者としての資質に問題があったとの指摘があった。確かに先頭に立って指揮するような強さは見せなかった。宮沢さんが理想とする指導者像が、大型タンカーの船長だったからだ▼意味することは、舵(かじ)を急に切るような指導力を発揮してはいけないという自戒だった。ゆっくりに見えても日本丸が転覆せず、安定的に進んでいくことが大事だと考えていた▼安倍晋三首相や小泉純一郎前首相とは対極の指導者像になるのだろう。平穏な時なのか激動期なのか。時代を抜きに指導者のありようを評価できないが、急な舵取りが続けば転覆しなくても乗客は振り落とされてしまう。


【河北新報・社説】


東北大創立100年/重要度増す地域戦略

 国内で3番目の帝国大学として1907年に開学した東北大が6月、100周年を迎えた。研究第一主義を標榜(ひょうぼう)し、世に送り出してきた人材と研究業績は枚挙にいとまがない。時代を背負い、世界を視野に、学び究めてきた知の蓄積。今後、大学を取り巻く環境は厳しさを増すだろうが、地域ニーズにも応え、拠点性を高めていってもらいたい。

 2世紀目に入り、難題は数多い。まず、少子高齢化に伴う18歳人口の減少の下で、いかに将来性のある学生を確保し、質の高い研究教育環境を提供していくかは大学経営の根幹にかかわる最重要課題だろう。

 とりわけ東北地方は、若年層の大都市圏への流出が予想され、「大学のM&A(合併・買収)」や「大学の倒産」が現実味を増している。数年前まで大学案内すら作っていなかった東大でさえ、地方の進学校を回り、PRに力を入れている。東北大も各地で大学説明会を開き、対抗姿勢を強めているが、並行して、東北の人材を流失させないという域内戦略も重要だろう。

 東北大の求心力が低下すれば、東北の他大学への影響も深刻化する。これまで以上に学術研究機能を高めるとともに、東北での足場固めの観点から、域内大学との連携強化なども促したい。

 産業経済のグロバール化に伴う課題も山積している。日本は資源が乏しいゆえに、技術力によって世界の先端を走り続けてきた。技術開発のテンポが狂えば、すぐに他国に追いつかれ、海外への技術移転、すなわち空洞化が進んでしまう。そうした意味で、国内企業の競争力を下支えする大学の技術開発力が生命線だ。

 古くは「KS磁石鋼」という鉄鋼材料を発明し、「世界の金研」の礎を築いた本多光太郎に始まり、「八木・宇田アンテナ」によって電気通信分野に革命をもたらした八木秀次、電子レンジなどで実用化されたマグネトロンを開発した岡部金治郎も東北大にいた。

 その独創の系譜は、光通信生みの親で首都大学学長の西澤潤一元総長や、タンパク質の質量分析でノーベル化学賞を受賞した島津製作所の田中耕一・質量分析研究所長らに引き継がれている。現在も、材料科学、電気通信などの分野で先頭に立っているのは世界が認めている。過去と現在に甘んじることなく、次世代を見据えた東北大発の技術開発に挑み続けてほしい。

 「世界リーディング・ユニバーシティー」。井上明久総長は今年4月、東北大の将来像をこう表現し、進むべき針路を具体化させた「井上プラン2007」を発表した。この中で特に、地域への貢献という要素から(1)グローバルネットワークの構築による国際共同研究の推進(2)産学官連携の共同研究開発の拠点となるサイエンスパークの整備(3)東北の高等教育研究機関のコンソーシアム化―などに注目したい。

 独立した法人になっても国立大の使命は不変。一層の門戸開放を進め、地域社会に対する還元力を強めてもらいたい。
2007年07月03日火曜日

【河北新報・河北春秋】

 明治の始まりから今日までの140年を1本の物差しに例えたならば、俳人の中村草田男が「明治は遠くなりにけり」と嘆じたのは、ほぼ真ん中の出来事。句は、日中戦争さなかの1936年に刊行した第一句集『長子』に収められた▼明治初年から草田男の慨嘆までの中間点が日露戦争。日本全体が「普請中」で、若々しく、いきが良く、気概に満ちていた。司馬遼太郎さん『坂の上の雲』の世界である

 ▼ 作家の中村彰彦さんは、明治の人と時代に対する司馬さんの愛惜が「軍部の暴走した次なる時代への嫌悪感につながった」とみる(「日清・日露戦争寸感」)。草田男の慨嘆も、後の司馬さんの嫌悪感と相通ずるか▼旧日本軍の行動を批判的に見ることを「自虐的」とする考え方がある。皇国史観が大正デモクラシーへのアンチテーゼだったように、「自虐史観批判」は戦後民主主義に声高に異議を申し立てる

 ▼仙台市の男女共同参画推進審議会に、自虐史観批判派の委員を起用することが検討されているという。安倍晋三首相のいう「戦後レジームの脱却」に同調した人事案だろうか▼日本の婦人参政権は、戦後になって実現した。これさえも「アメリカの押し付け」と批判することはあるまいが、明治ばかりではない。戦後民主主義も遠くにかすむ。


【京都新聞・社説】

世界遺産登録  石見銀山を教訓にせよ 

 地道な努力が国際的に認められたことを共に祝いたい。だが同時に苦い教訓もかみしめねばならない。
 石見銀山遺跡(島根県大田市)が国内十四番目の世界遺産に登録された。文化遺産としては十一番目で、産業遺産では初めてだ。
 地元では観光の予約も増え出し、早くも世界遺産効果が表れている。地域起こしも今後、一層拍車がかかるだろう。
 しかし政府は今回の登録で、国際記念物遺跡会議(イコモス)から初めて「登録延期」を勧告されたことを忘れてはならない。
 登録が絶望視された状況は外交努力で覆せたが、そんな非常手段が今後も通用する見込みはない。
 世界遺産の文化遺産登録は数が増えすぎて新登録を抑制している。今後も登録を求める政府は、国際理解を得るため細心の注意と細やかな配慮が必要だ。
 石見銀山遺跡は十六世紀から二十世紀までの約四百年、採掘された銀鉱山跡や鉱山町、積み出し港、港町、輸送道路などからなり、約四百四十ヘクタールと広大だ。
 十七世紀に世界の銀の三分の一を占めたとされる日本の銀の大半を生産、「灰吹(はいふき)法」の精錬技術でも知られている。
 政府は昨年、世界遺産登録を求めて国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦した。
 しかし今年五月、昨秋に現地調査を行ったユネスコ機関のイコモスは「登録延期」を勧告したのだ。
 「より綿密な調査研究が必要」というのが理由で、石見銀山の銀が、東アジアや東西世界の文化交流に与えた「詳細な物証が示されていない」などとした。
 「登録延期」が勧告され、その後、登録されたケースは極めて少ない。
 推薦した国内遺産はすべて登録されてきた政府に、イコモスの対応は寝耳に水の驚きだったようだ。
 「言いがかりだ」との批判もあるが、世界遺産登録へのハードルは年々高くなっている。
 ユネスコはすでに六百四十件を超えた文化遺産へ監視の目を届かせるために、新しい登録は抑制している。
 二〇〇四年に八割を超えていた“合格率”は、〇六年には六割強へと下がった。地域的偏りを是正するため、登録数の少ない国への配慮も強まっている。
 政府はこうした状況を知りながら、過去の実績によりかかってユネスコの対応を甘く見ていたのではないか。
 今後は専門家の知見をもっと活用し、海外研究者を招待した地元シンポジウムの開催など、海外へ積極的に情報を発信するべきだし、登録された世界遺産の管理、運営なども充実させることだ。
 来年は平泉(岩手県)の調査が予定され、彦根城(滋賀県)も控えリストで順番待ちだ。登録へ手をあげる自治体も増えている。手は早く打った方がよい。

[京都新聞 2007年07月03日掲載]

独禁法見直し  厳格化は避けられない

 官房長官付属の「独占禁止法基本問題懇談会」が、違反行為の課徴金を引き上げるなど、法の厳格化を求める報告書を提出した。
 安値攻勢で競争相手を閉め出したりする「排除型私的独占」行為を、新たに課徴金の対象とすることも盛り込んだ。
 課徴金は本来、不正利得を没収する制度だ。引き上げには、日本経団連など産業界からの抵抗が根強い。とはいえ、緑資源機構や、名古屋地下鉄工事の談合をみるまでもなく、官製談合や悪質なカルテルは後を絶たない。
 製造業の大企業に対する課徴金を6%から10%に引き上げるなどした改正独禁法が昨年一月に施行されながら、抑止効果は必ずしも高まっていないということだろう。
 報告書が指摘するように、悪質事件の再発防止や官製談合撲滅へ、法の厳格化を避けて通ることはできまい。
 政府、与党は、現行独禁法の改正案を来年の通常国会に提出する予定だ。報告書をたたき台に論議が始まる。手つかずの分野まで切り込み、談合を排して、いっそう公正な競争を促す改正法づくりに期待したい。
 議論の中心になる課徴金のあり方について、基本問題懇談会の報告書は「違反行為をする動機を失わせるに十分な水準に設定すべき」と指摘している。
 課徴金の国内最高額は、ごみ焼却炉建設談合でことし、公取委が五社に命じた計二百七十億円。欧州連合(EU)ではことし一月の変電所装置国際カルテル事件だけ見ても、日欧十社に千二百億円を命じている。
 国際水準に近づけるのなら、思い切った引き上げ率を検討すべきだ。「課徴金や罰金を支払っても違反企業にまだ利益が残る」というケースが、決して起こらない仕組み作りが求められる。
 違反には時効(除斥)の問題もある。現行の三年は、米国の五年、EUの最高十年に比べて開きが大きい。一-二年の引き上げは必要かもしれない。
 違反内容によって課徴金と刑事罰が並行して課される「二重罰」には、経団連が「課徴金に一本化すべき」と主張してきた。報告書は抑止効果を重視して「存続が適当」とした。
 刑事罰をなくして、いまの業界に秩序が保たれるだろうか。国民の理解が得られるとも思えない。
 法や罰則の厳格適用が企業活動を制約し、経済を縮小させるように論じるのは大きな間違いだ。経団連は目先の利益にとらわれるべきではない。
 公正な競争こそが国民の利益につながり、ひいては業界の発展に資する道であることはわかっていよう。
 政官業癒着のトライアングルを打ち壊さない限り、構造改革は前に進まない。独禁法の厳格化も、その一歩であることを忘れてはなるまい。

[京都新聞 2007年07月03日掲載]

【京都新聞・凡語】

鳥類保護

 コウノトリに続けと、トキの野生復帰作戦が始まった。新潟県佐渡市で人工飼育した七羽のトキが自然環境に近い順化ケージで生活訓練に挑んでいる▼四十三年ぶりに自然界で誕生した兵庫県豊岡市のコウノトリのひなは順調に育っている。親鳥のほぼ半分まで成長、巣立ちに備えて羽ばたきの練習も始めたとか。先例として貴重な経験だ▼英国の鳥類保護団体は世界で千二百二十一種の鳥類が絶滅の恐れがあるという。環境省はトキを野生絶滅、コウノトリや沖縄のヤンバルクイナ、北海道のシマフクロウなどをごく近い将来に絶滅の危険性が極めて高い種と位置づけている▼国の特別天然記念物、ヤンバルクイナは人工飼育に取り組む。国内唯一の飛べない鳥だが、人間が放ったマングースなどに襲われ約七百羽に激減している。来年春の繁殖期までに十つがいを確保して十年後に飼育数を約二百羽に増やす計画だ▼鳥類保護の成功例もある。米国の国鳥ハクトウワシが絶滅の危機を脱した。約四十年前は四百十七つがいに減少していたが、狩猟や農薬の禁止、生息地の保護などで約二万羽に回復した▼トキは十九世紀前半までごくありふれた鳥だったという。鳥類の絶滅に共通するのは人間の乱獲や環境破壊などでエサや生息地を奪われたことだ。自然環境を守り健全な生態系を維持する大切さを人間に教えてくれる。

[京都新聞 2007年07月03日掲載]


【朝日・社説】2007年07月03日(火曜日)付

支持率28%―選挙に緊張感が出てきた

 低迷している安倍内閣の支持率が、朝日新聞の世論調査でついに2割台に落ち込んだ。3割を切ったのは小泉内閣時代にはなく、調査方法は違うが森内閣までさかのぼる。6年ぶりのことだ。

 参院選挙の投票が4週間後に迫っている。この時期に「危険水域」とも言われる支持率2割台まで下がったのは、安倍首相には大きな衝撃だろう。

 今回の調査で内閣を支持すると答えたのは28%。「宙に浮いたり、消えたり」の年金問題が噴き出し、松岡前農水相の自殺も重なった5月下旬から支持率は下がりだしたが、それでも3割を切ることはなかった。他のメディアの世論調査でも同様に不評が広がっている。

 原因は想像に難くない。

 先週末、政府・与党は野党の反対を押し切り、徹夜国会で社会保険庁の分割法や年金時効をなくす特例法などを成立させた。国家公務員の再就職をあっせんする新人材バンク法や政治資金規正法の改正も通した。

 首相にしてみれば、こうした実績を評価してもらいたいと、胸を張りたいところだろう。だが、世論の見方は正反対だった。朝日新聞の世論調査では、政府の年金問題への対応を「評価しない」という人が59%に達し、「不安は解消していない」という人は49%もいた。

 年金問題への不信、不満は増すばかりなのに、数の力を振り回す乱暴な国会運営を見せつけられ、あきれたということではないか。

 もうひとつ、今回の調査で特徴的なのは、無党派層が53%にも膨れ上がったことだ。内閣が発足したころは4割程度だったが、じわじわと増え続け、半数を超えてしまった。郵政解散でこの層をぐっとひきつけた小泉時代とは様変わりである。昔の自民党に戻ったかのようだ。

 安倍政治の9カ月に対する、有権者の厳しい視線ははっきりしてきた。

 情けないのは民主党である。党の支持率が16%と伸び悩んでいる。

 「消えた年金」の問題を発掘したのは民主党なのに、一連の年金記録問題への取り組みを「評価しない」という人は45%にも達した。内閣への不満を支持に結びつけられない現状を、もっと深刻に受け止める必要がある。

 内閣支持率の低迷を意識してか、自民党幹部らから「参院選は政権に対する中間評価だ」との発言が聞かれる。選挙結果は首相の進退に直結しないと、予防線を張っているのだろう。

 だが、果たしてそうか。厳しさを増す世論は、この選挙が単なる「中間評価」にとどまらず、安倍内閣そのものへの審判となる可能性も示している。

 首相もボルテージを上げてきた。「私と小沢さん、どちらが首相にふさわしいか」。対する小沢民主党代表は「政治生命をかける」と背水の陣の構えだ。

 結果として政治に緊張感が出てきたとすれば、結構なことだ。

株主総会―攻守ともビジョンを競え

 外資系ファンドなど「モノ言う株主」、株を買い集めて提携を求める「押しかけ株主」。これら「外様」の株主が経営陣に突きつけた配当増額や取締役選任の提案が、相次いで退けられた。

 株主総会の季節が終わったが、注目の攻防は経営側が軒並み圧勝した。

 米ファンドのスティール・パートナーズが株式の公開買い付け(TOB)を進めているブルドックソースでは、買収防衛策が9割近い賛成で支持された。全株主に新株予約権を割り当てる一方、スティールには予約権の行使を認めない代わりに、予約権の市場価格にほぼ相当する23億円を渡す。その結果、スティールの持ち株比率が大幅に下がる。

 スティールは防衛策の発動差し止めを求める仮処分を東京地裁に申請していたが、総会4日後に地裁は申請を退けた。総会の圧倒的多数で可決され、予約権の対価を払うので特定の株主を不利に扱うとはいえない、と判断したのだ。

 この決定と同じ日、TBSの総会では、経営側が提案する買収防衛策と、20%弱の筆頭株主である楽天の株主提案とが真っ向から対立した。ここでも経営側が8割近い多数を得て勝利した。

 外様株主が敗北したのは、株を買い増して経営へ関与することが会社の発展に役立つ点について、説得力あるビジョンを示せなかったからだ。

 スティールはTOB後の経営方針を一切語らなかった。楽天も「ネットとメディアの融合」を唱えるだけで具体論に乏しく、他の株主を説得できなかった。

 経営側が支持されたのは、取引関係などを通じた日本的な安定株主が基盤になっているが、そのうえで、一般の個人株主の票が結論を左右した。

 会社提案が通っても、経営陣が100点満点をもらったわけではない。ファンドの主張に説得力がないからという消極的な支持も少なくなかろう。次は逆の結論になるかもしれない。

 じっさい経営側が負けた例もある。富士フイルムホールディングスでは、買収に備え発行可能株数をふやす案が否決された。2月には、東京鋼鉄が大阪製鉄の子会社になる案を、ファンド主導の反対に個人株主が同調し否決している。

 国際競争や技術革新の波が次々と押し寄せるなかで、会社をどうやって発展させていくのか。経営のビジョンや方策を明示し、日ごろから一般株主へ語りかけるのは経営陣の責任だ。

 これまでは株式の持ち合いに遮られ株主の経営監視が働きにくかったが、変化が出てきた。こんどの総会を機会に、株主によって経営が民主的にチェックされる状態になるよう期待したい。

 その点で気になるのは、買収防衛のため、株式持ち合いへ回帰する動きが目立つことだ。これでは本末転倒だ。

 閉鎖的な持ち合いに安住するようになれば、厳しい目を向け始めた株主から「ノー」を突きつけられるだろう。

【朝日・天声人語】2007年07月03日(火曜日)付

 「しょうがない」とは、手の打ちようがないということだ。例えば天変地異である。軽いところでは「しょうがない/雨の日はしょうがない」(『雨が空から降れば』別役実作詞、小室等作曲)のように使うのが正しい。

 久間防衛相が、出身地でもある長崎への原爆投下について「あれで戦争が終わったんだという頭の整理で今、しょうがないなという風に思っている」と語った。「選択肢としてはあり得るのかな」と。

 本人は「説明の仕方がまずかった」と謝り、安倍首相は「国民に誤解を与える」と注意した。問題はしかし、言い回しではなかろう。人類史に残る無差別大量殺害を、物わかりよろしく「整理」できる神経が問われている。

 米国は、2発の原爆が日本の降伏を早め、多数の命を救ったと正当化した。久間氏も、だから「北海道はソ連に占領されずにすんだ」とみる。もっともらしい解説には用心したい。乾いた戦略論にとらわれすぎると、きのこ雲の下に思いが至らないからだ。

 自らも被爆しながら長崎で救護を続けた永井隆医師は、自宅の焼け跡で、溶けたロザリオが絡まる緑(みどり)夫人の骨を見つける。享年37。まだ温(ぬく)いのをバケツに拾い、歩いた。「私の腕の中で妻がかさかさと燐酸(りんさん)石灰の音を立てていた。私はそれを『御免(ごめん)ネ、御免ネ』と言ってるのだと聞いた」(『ロザリオの鎖』)。

 核兵器は、勝手に天空から降っては来ない。造る者と使う者と、それを命じる者が必ずいる。ならば止める者になろうではないか。「しょうがない」わけがない。


【毎日・社説】

社説:個人情報保護法 やはり法改正が不可欠だ

 個人情報保護法を見直すかどうか検討してきた内閣府の国民生活審議会個人情報保護部会が、意見書を取りまとめた。この法律の影響で必要な情報が社会に出回りにくくなった現状に対して、運用の見直しや法の周知徹底で対処し、法改正による抜本的見直しは当面必要ないという結論である。もともと法改正に消極的な政府の方針が追認された形だ。

 個人情報保護法が全面施行された05年4月以降、情報を出し渋る「過剰反応」が社会全体に広がり、身内の不祥事などを明らかにしない「情報隠し」も官公庁や企業で相次いだ。私たちはこれまで、こうした問題を解決するには、運用面の改善だけでは限界があり、法律そのものを改正することが欠かせないと主張してきた。意見書がそうした判断に至らなかったことは極めて残念で、納得できない。

 意見書は「おわりに」の項で、審議会として法の施行状況をフォローアップし、「法改正の必要性も含め、更なる措置を検討していく必要がある」とも述べている。しかし、これは当初の意見書素案に法改正への言及が全くなかったことへの疑問や批判をかわすための小細工としか受け取れない。

 部会の審議は、法成立時に国会が「全面施行後3年をめどに必要な措置を講じる」と付帯決議したのを受けてのものだ。その3年を迎える来年は、法改正ではなく運用改善で乗り切ろうというのが意見書の趣旨だ。部会の現委員は今年9月に交代予定で、法改正の議論は次期メンバーに先送りしたに過ぎないと言わざるを得ない。

 学校や町内会で緊急連絡網が作れない。自治体が災害時に高齢者や障害者らの居場所を把握するための要援護者リストの作成も進まない。病院に運び込まれた児童の容体を教師が尋ねても病院側に拒まれる。こうした過剰反応がはびこるのも、個人情報保護法が大原則として本人の同意なしに個人データを第三者に提供することを禁止しているからだ。第三者提供できる例外は、生命・財産の保護に必要で本人の同意を得るのが困難な場合など、極めて限られる。

 意見書は▽第三者提供できる例外規定の周知を図る▽各省庁策定のガイドラインを必要に応じて見直す--などと提言している。しかし、そんな小手先の対応策で過剰反応がなくなるとはとても思えない。個人情報の有用性を重視し、第三者提供できる例外規定をもっと広げるなどして、必要な情報は社会で共有することを可能にするような条文に改めるべきだ。

 不祥事を隠ぺいしたり、懲戒処分にした職員の名前を匿名にしたりする役所や企業が増えている。しかし、意見書は情報隠しへの対策は何も述べていないに等しい。官庁を対象にする行政機関個人情報保護法について、意見書は「必要性が認められる場合は個人情報の公表は可能で、引き続き現行法の枠組みの下、改善に取り組んでいくべきだ」と指摘するだけだ。これでは不祥事隠しは増加する一方だ。情報隠しを許さないための法改正を工夫する必要がある。

毎日新聞 2007年7月3日 東京朝刊

社説:大気訴訟和解 企業も国も重い責任負った

 東京大気汚染訴訟の原告団が2日、国や東京都に続いて、和解案受け入れを東京高裁に回答した。自動車メーカー7社も受け入れを回答した。

 今後は、国や都が大気汚染対策を誠実に実施することや、自動車メーカーがディーゼル車の低公害化を早急に進めることが求められる。都の提案で作られる医療費助成制度は5年間の時限措置であり、その後を含めた恒久的な制度作りも必要である。国は現在、大気汚染と健康被害の因果関係を探る「そらプロジェクト」を進めている。その調査結果などを踏まえて、公害健康被害補償法の新規認定などを考えるべきだ。

 昨年9月の結審以来、続けられてきた和解協議で、原告団は都が11月に示した医療費助成制度や、最近になり国や都が示した道路公害対策や微小粒子状物質(PM2・5)対策を評価した。残されていたのはメーカーの支払う解決金額だった。原告団は川崎や西淀川(大阪市)などこれまでの道路公害訴訟なども参考にしつつ、数十億円を想定していた。メーカー7社は合計5億円程度が限度との意向を高裁に伝えていた。

 和解案は1審の東京地裁が気管支ぜんそくと自動車排出ガスの因果関係を認めたことを前提に、原告が相当額の解決金の支払いを求めていることに理解を示した。ただ、これまでの道路公害訴訟では比較的近接した地域に居住、あるいは勤務する患者が原告だった。それに対して、今回は原告の住居が広範囲に及んでいる上、気管支ぜんそくは大気汚染以外の原因で発症・悪化する可能性もあるとして、メーカーに12億円の解決金支払いを勧告した。

 今回の和解には高く評価できる点が二つある。

 第一は、今回の提訴が、自動車の使用でもたらされる大気汚染やそれによる健康、生活への被害などの解決を迫ったことだ。このことは、すでに、対策に反映している。都はディーゼル車対策を進めてきた。その結果、都内の浮遊粒子状物質の濃度は全観測地点で環境基準内におさまっている。国が今回表明した、主にディーゼル車から排出されるPM2・5の健康影響評価の専門的検討や、モニタリング体制拡充も、自動車公害対策として一歩前進である。

 都や国は交通渋滞の解消対策や道路の緑化、植樹帯整備などにも着手することも約束した。

 第二は、自動車メーカーも道路管理者である国や都と並んで、大気汚染に責任を有していることを明快に示したことだ。ディーゼル車の公害対策の遅れが大気汚染を悪化させたことは疑いない。自動車メーカーが解決金や医療費助成の負担金を支払うのは、社会的責任からではない。汚染者負担の原則からなのだ。

 ただ、これで、自動車に起因する大気汚染が全面解決するわけではない。医療費助成や生活支援の恒久的な制度とともに、自動車に依存しないまちづくりも課題だ。国は財源がないというだろうが、道路特定財源があるではないか。

毎日新聞 2007年7月3日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:緑の練り切りを葉の形にのばして…

 緑の練り切りを葉の形にのばして粒餡(あん)を包んだ「落とし文」は初夏の和菓子だ。小さく丸めた白い練り切りを葉にちょこっとのせたのは、白露をかたどったという。この季節、地面に落ちているクヌギやナラ、サクラなどの筒状に丸まった葉を模した菓子である▲「落し文卵一粒封じあり」は堀口星眠さんの句だ。地面の葉の中には長さ1センチ足らずの甲虫オトシブミが卵を産みつけている。「ゆりかご」と呼ばれるこの葉の中で卵からかえった幼虫は、葉を食べながら成長し、約1カ月後には外に姿を現すという▲ヨーロッパでは葉を巻く虫とか、パイプといった、形そのままの名で呼ばれるが、これを巻紙に書かれた「落とし文」に見立てたのが日本人だ。「時鳥(ほととぎす)の落とし文」「鶯(うぐいす)の落とし文」などというように、昔の人は鳥が落としたものと思ったらしい▲落とし文はその昔、あからさまに言えない批判や風刺、秘密の情報や告発などを書いて人目につきやすいところに落としておいた手紙をいう。平安時代からあったことだが、江戸時代も後半には代官や商人らの不正を暴露する庶民の訴願が多かった▲介護事業や英会話学校、食肉卸業などで相次いだ企業不祥事でも、従業員や顧客の“落とし文”ともいえる告発で明らかにされた内情が多い。ワンマン経営などで組織の暴走に内側から歯止めが利かなくなった企業では、関係者が行政や社会に直接訴える落とし文型告発がつきものだ▲創業者が圧倒的なカリスマとなっている企業こそ、つまずきの石は大きかろう。まず社内にきちんと社会の風を通し、自らの不正は自らでチェックできる「落とし文無用」の組織風土と社内システムを作ることだ。落とし文の中身は夏便りか、甘い餡だけなのがいい。

毎日新聞 2007年7月3日 東京朝刊


【読売・社説】

大気汚染訴訟 和解を環境改善につなげたい(7月3日付・読売社説)

 和解は最良の決着だったといえるだろう。裁判の長期化を避け、ぜんそく患者の救済策を早期に実施することができる。

 東京大気汚染訴訟で、原告と被告の国、東京都、首都高速道路会社、自動車メーカー7社が、東京高裁の和解案を受け入れた。提訴から11年を経ての全面和解である。

 和解案の柱は、各被告の出資による医療費助成制度の創設だ。約20万人とされる東京都内のすべてのぜんそく患者を対象に、治療費の自己負担分を全額補助する。国はぜんそくの予防事業の基金を取り崩し、60億円を拠出する。拠出は、安倍首相の政治判断だった。

 乳幼児の健康診断など、全国的な予防事業に充ててきた資金を、東京の患者の治療費として使うことに、疑問の声もある。環境省は、予防事業の実施にしわ寄せが及ばないようにする必要がある。

 都内のぜんそく患者約520人が自動車の排ガス、特にディーゼル車から出る汚染物質が健康被害の原因だとして、損害賠償を求めていた。大気汚染訴訟で自動車メーカーが被告になったのは、初めてだった。川崎公害訴訟など、これまでの訴訟では、工場の煙突から汚染物質を排出した企業が被告だった。

 解決金の額が、和解の最大の焦点となった。過去の訴訟では、1人当たり約450万~770万円が、被告となった企業から支払われた。原告は、それらと同等の総額30億円以上の解決金を、自動車メーカー7社に求めた。だが、東京高裁が和解案で示したのは、12億円だった。1人当たり約230万円になる。

 高裁は、「ぜんそくは大気汚染以外の原因でも発症する可能性もあり、他の大気汚染訴訟と同列には論じられない」とした。原告の居住地が、都心の幹線道路沿いだけでなく、郊外にも分散している点などを重視した結果だった。現実的な判断である。

 1審判決は、一部の原告について、排ガスとぜんそくの因果関係を認めた。道路の管理などに落ち度があったとして、国と都、首都高会社に賠償を命じた。一方、メーカーの責任は問わなかった。

 自動車メーカーは「社会的責任を果たす」として、高裁の和解案を受け入れ、解決金の支払いに応じた。これが、全面和解実現の大きな要因となった。環境対策は、企業イメージに直結する重要課題となっているからだ。

 和解案には、幹線道路の交差点の立体化促進や、沿道の緑化なども盛り込まれた。国や都は着実に進めてほしい。全面和解を、都心の交通渋滞緩和と環境改善につなげたい。
(2007年7月3日1時23分  読売新聞)

6月短観 日銀は市場との対話に努めよ(7月3日付・読売社説)

 堅調な景気の先行きに落とし穴はないか、しっかりと目を凝らすべき時だろう。

 日銀の6月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業の製造業、非製造業とも業況判断指数が前回3月短観から横ばいだった。製造業の業況判断指数は、前回、1年ぶりに悪化したが、さらに低下することなくバブル期以来の高い水準を保った。

 対米輸出の鈍化や、原油をはじめとした原材料価格の上昇など悪条件もある中で、景気は粘り強く推移している。

 市場では、今回の短観も材料に、日銀が今夏にも、今年2月以来の利上げに動くとの見方が強まっている。

 日本の超低金利は、円で調達した資金を高金利の外貨で運用する「円キャリー取引」を増やし、円安の要因になっている。何かのきっかけで円キャリー取引の解消が急激に進めば、世界経済に混乱を招きかねないとの指摘は多い。

 国際決済銀行(BIS)は、年次報告書で「最近の円安は明らかに異常」と指摘し、日銀の利上げが望ましいとの認識を示唆した。

 円安は、輸出比率の高い大企業の収益にはプラスに働く一方、輸入原材料の値上がりを製品価格に転嫁しにくい中小企業には、マイナスになる面もある。今回の短観では中小企業の景況感が悪化したが、円安も響いての結果だろう。

 金利が低いので、大都市圏の地価も上昇している。低金利の副作用が行き過ぎぬよう、緩やかに金利を引き上げていくことは、日本経済の安定につながる。

 だが、利上げに際しては、景気の先行きを念入りに点検する必要がある。

 企業の設備投資計画は、なお高水準だが、米景気の減速を受けて、ピークは過ぎたと指摘される。足元は底堅い個人消費も、国から地方への税源移譲などで6月から住民税負担が重くなった影響が懸念される。景気腰折れの恐れがないか、日銀はしっかり見極める必要がある。

 全国の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は、5月まで4か月連続で前年比マイナスを続けている。完全にデフレから脱却したとは、まだ言えない。

 その中での利上げの必要性や、物価見通しと金融政策の関係についても、日銀は十分に説明しなければならない。

 利上げ観測の強まりとともに、先月、市場では長期金利が一時、年2%直前まで急上昇した。長期金利の急騰は、貸出金利の上昇を通じて企業活動を冷やし、国債の利払い負担拡大で国の財政を悪化させる恐れがある。

 そうした混乱を防ぐための市場との対話も、日銀の責務だ。
(2007年7月3日1時23分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月3日付 編集手帳

 「人生劇場」の作家尾崎士郎が東京の自宅に土俵をつくったのは戦前のことという。作家仲間と相撲をとって遊んだ◆尾崎は出身地から「吉良港(きらみなと)」、サトウ・ハチローは名前をとって「八郎山」、山本周五郎はどういういわれか「馬錦(うまにしき)」…等々、それぞれに四股名(しこな)をつけて力を競ったと、回想の談話にある◆生活のすぐ隣に相撲があった昔を顧みれば、ちょっとさみしいニュースだろう。今月8日に初日を迎える大相撲名古屋場所の新弟子検査は、受検志望者がいないため中止と決まった。新弟子検査の制度ができた1936年(昭和11年)以降では初めてとなる◆規定の身長に足りず、頭にシリコンを埋めた受検者まで現れるほどに、かつては夢の関門であった新弟子検査だが、最近は受検者の減少が続いていた。競技人口の低迷や少子化が響いているともいわれる◆「時世時節(ときよじせつ)は変(かわ)ろとままよ…」とは「人生劇場」(作詞・佐藤惣之助、作曲・古賀政男)の一節だが、大相撲を取り巻く時世時節がいかに変わろうとも、若い才能を呼び込むには熱のこもった取組を一番一番、積み重ねていく以外に方策はない◆江戸期の俳人、炭太祇(たんたいぎ)に心の広々とする相撲の句があった。「脱ぎすてて角力(すまふ)になりぬ草の上」。かつては身の回りにあった原っぱも、草の上も、気がつけば今は昔である。
(2007年7月3日1時41分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】党首対決 外交・安保でも討論せよ

 皮肉なことだが、深夜の国会攻防のドタバタが終わったとたんに、本格的な議論が始まった感がある。

 「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)の主催で1日に開かれた安倍晋三首相(自民党総裁)と小沢一郎民主党代表の党首討論会は、参院選に取り組む両氏の意気込みや、最大の争点である年金問題への姿勢が鮮明になり、有意義なものとなった。

 今国会で2回だけ開かれた党首討論に比べても、時間、内容ともに充実していた。両党関係者は、参院選に向けてこの2人が真剣勝負で討論しあう機会を、さらに設けるべきである。

 首相は「信頼できる年金制度の構築」を第一に掲げ、小沢氏も「年金信任選挙」と参院選を位置づけた。

 小沢氏は年金の記録漏れを回復する責任は政府にあり、原則として受給者の申し出はすべて認めるべきだと強調した。首相は加入履歴に整合性があるかどうか、第三者委員会の作業で何らかの確認が必要だと反論した。

 一方、首相は「消費税を上げずに基礎年金を消費税でまかなう」といった民主党の年金政策や、子供手当拡充、高校無料化などについて、財源面で無理があると厳しく指摘した。

 小沢氏は、補助金の全廃や地方分権の完全な実現を通じて行政経費を削減し、財源を生み出せると主張したが、具体的なデータ不足で、十分反論できていなかった。事前に民主党の政策をよく調べていた首相の方が、鋭く攻め込んだように思われる。

 内政問題で激しい応酬があったのに比べて、外交・安全保障分野の議論は乏しかった。久間章生防衛相による米国の原爆投下をめぐる発言に関連して、対米関係のあり方が若干、話題になった程度だ。

 首相が本来、掲げるべき憲法問題についても、ほとんど触れられることはなかった。

 全体としては、年金問題で防戦に回ると思われた首相が、うまく切り返した格好だが、本来の安倍カラーをもっと前面に打ち出すべきではないか。

 第2、第3ラウンドを実現し、国のあり方をめぐる両党首の骨太な議論を聞かせてほしい。その際、NHKには深夜の録画放送ではなく、生中継もお願いしたい。

(2007/07/03 05:08)

【主張】大気汚染訴訟 評価したい和解での解決

 「東京大気汚染訴訟」が提訴から11年を経て、事実上、全面的に解決した。ぜんそく患者への医療費助成制度の創設など、画期的な対策が含まれているだけに、今回の和解成立を歓迎したい。

 先に東京高裁が示した和解案について原告の患者らが2日、同高裁に和解案受諾を伝えた。被告側の国、東京都、首都高速道路会社は、すでに和解案を受け入れると回答、また自動車メーカーもこの日、東京高裁に和解案受諾を伝えた。これで訴訟当事者すべてが和解案を受け入れたことになり、訴訟は決着した。

 大阪の西淀川、川崎、尼崎など過去の大気汚染公害訴訟は、和解で解決しており、大気汚染訴訟で残っていたのは東京大気汚染訴訟だけだった。今回、和解が成立した意味は大きく国、各自治体、自動車メーカーなどは、国民の健康を守るため、道路公害対策に全力を傾注する必要がある。

 東京大気汚染訴訟は、平成8年5月の提訴を皮切りに、第6次まで行われており、原告数は約630人を数える。都内のぜんそく患者らが国、東京都、首都高速道路公団(当時)、トヨタや日産など大手自動車メーカー7社を相手に、損害賠償と汚染物質排出差し止めを求めた。

 1審・東京地裁は、判決で自動車の排ガスと健康被害の因果関係を認め、国や都に損害賠償を求めたが、ディーゼル車のメーカーの責任については認めなかった。

 東京高裁は昨年9月に和解協議を促し、先月22日に和解案を提示した。その内容は、18歳以上のぜんそく患者を対象とした新たな医療費助成制度の創設や、メーカーは社会的責任として解決金12億円を支払うなど、これまでの大気汚染訴訟にはなかった歴史的な和解案を示したことが、全面解決への道を開いたといえよう。

 とくに医療費助成制度の創設は、石原慎太郎都知事が、国に強力に要請したもので国、都など当事者がそれぞれ資金負担することになっている。原告側は、解決金の額には不満を示したものの、同助成制度を高く評価、これが和解案受諾の要因となった。

 国や都は、和解を機に道路の緑化や大気汚染監視体制の強化など、環境対策を早急に実行に移す時だ。

(2007/07/03 05:07)

【産経抄】

 英国政府はテロの危険性を示す5段階の警戒レベルを、これまでの「severe(厳しい)」から、最高の「critical(危機的)」へ引き上げた。グラスゴー空港で起きた自爆テロやロンドンの車爆弾テロ未遂事件が、イスラム過激派グループによる大規模な連続テロであるとの見方が強まったからだ。

 ▼もっとも発足したばかりのブラウン政権は浮足だっているようには見えない。なにせこの国は、テロとの戦いには年季が入っている。自慢の情報機関の仕事は、ナチス・ドイツやソ連とのスパイ合戦だけではない。

 ▼ 北アイルランド紛争が激しくなる1970年代からは、カトリック系民兵組織、アイルランド共和軍(IRA)の爆弾テロにも立ち向かってきた。52人が死亡した2005年7月7日のロンドン同時爆破テロを未然に防ぐことができず、その威信は大きく傷つけられたが、すぐに逆襲に出る。

 ▼1年後には、旅客機テロ事件を計画した容疑者を一斉に逮捕する快挙を成し遂げた。英国内のイスラム・コミュニティーを徹底的に監視下に置き、電話やメールの傍受はもちろん、二重スパイまで送り込んだ成果ではないか。情報戦にくわしい手嶋龍一さんと佐藤優さんはそうにらむ(『インテリジェンス 武器なき戦争』幻冬舎)。

 ▼今回の事件でも、すでに7人を逮捕する手際のよさを見せている。両氏によれば、情報活動を意味するインテリジェンスに関して、日本の立ち遅れが目立つ。省壁に阻まれて、英国のようにすべての情報機関を一元化するシステムが機能していない。

 ▼そもそも人材がいない。さらには情報機関の元トップが詐欺事件で逮捕されるていたらく。日本の方がずっとcriticalではないか。

(2007/07/03 05:04)


【日経・社説】

社説1 緩やかな景気拡大と利上げの環境(7/3)

 2日発表された日銀企業短期経済観測調査(短観)は、注目点となる大企業・製造業の景況感が3カ月前に比べて横ばいだった。経済の足取りの確かさが裏付けられたことで、日銀は参院選が済んだ8月以降、追加利上げに踏み切る公算が大きくなっている。消費者物価指数が依然としてわずかながらも下がり続けるなかでの利上げとなると、その分だけ日銀の説明の責任は重くなる。

 米国経済の減速基調に加えて、世界的な長期金利の上昇など、ちょっと心配になる雰囲気も出ていた。そんななかで、6月調査分の大企業・製造業の業況判断指数がプラス23と高めで横ばいだったのは、企業の足腰の強さを裏付けるものだ。

 景気拡大が長期化すれば、設備投資に伴い減価償却費が増え、採用拡大で人件費も増加するので、コスト面から収益が圧迫され始める。2007年度の大企業はその局面に入りつつある。それでも売上高経常利益率は5%台を維持する見通しだ。

 消費も派手さはないが上向きであり、景気は息の長い拡大局面にある。その延長線上に日銀は現在0.5%の無担保コール翌日物金利を引き上げようとしている。時期について市場では「8月にも」との見方が広がっているが、日銀は利上げ観測が過熱するのを避けようと、あえて慎重な言い回しに努めている。2月の前回利上げのときのように、市場が一方的に利上げを織り込むと、金融政策の手足が縛られるからだ。

 今回は7月に参院選を控えている。年金記録漏れ問題で逆風に直面する政府・与党にとって、景気と株価の回復は貴重な好材料。長期金利の上昇を通じて株価の下落を招く可能性のある利上げを、それとなくけん制することは十分に考えられる。日銀としては政治との摩擦を避けるためにも、口を滑らせないようにしているのだろう。

 問題は足元の物価。5月の消費者物価は前年比0.1%のマイナスと、小幅ながら4カ月連続で水面下となっている。企業間の競争が厳しく原材料などの上昇分を販売価格に転嫁しにくいうえ、消費者の間にも「物価はなかなか上がらないもの」という合意ができつつあるようだ。

 日銀は「経済全体で需要が供給を上回る需要超過の幅が広がれば、いずれ物価も上がる」との説明を繰り返す。だが実際の物価が上昇するまでどれくらいの時間を要するか、いまひとつはっきりしない。この点で納得できる説明がないと、追加利上げに踏み切る際にもモヤモヤが残る。日銀にとって沈黙は金ではない。

社説2 完全な核放棄へ検証徹底を(7/3)

 北朝鮮と国際原子力機関(IAEA)は、寧辺の核関連施設の停止・封印を監視・検証する手順で合意した。対外約束を何度も破ってきた北朝鮮が合意を順守するか楽観はできないが、国際社会の疑問が残らぬような監視・検証がなされなければ、IAEA自身の信頼性に疑問符がつく結果にもなる。

 1980年代末期、米ソ中距離核戦力(INF)削減交渉をめぐり当時のレーガン米大統領は「信頼せよ、検証せよ」と語った。「信頼せよ」と述べたのは、実はソ連を信頼できなかったからだろう。

 既に米ソ間では多くの軍備管理交渉・条約の積み重ねがあった。ソ連は現在の北朝鮮に比べれば信頼できる相手だった。それでも信頼せずに「検証」を強調した。

 2月13日の6カ国協議の合意にあった初期段階措置の履行期限からすでに2カ月半も遅れているが、マカオのバンコ・デルタ・アジア(BDA)の資金問題の解決を受け、北朝鮮が協力的姿勢を示すのは予想通りの展開である。IAEAとの間で比較的簡単に合意ができたのも予想通りだ。韓国からの重油5万トンを受け入れるためである。

 合意を素直には受け止められない面がある。IAEAは5年前に北朝鮮から追放されるまで北朝鮮に職員を配置しており、その間に厳格な査察がなされていれば、これほどの問題の長期化はなかっただろう。必ずしもIAEAの責任ではない。北朝鮮のあの体制下で効果的な査察をするのは不可能に近いのだろう。

 北朝鮮とIAEAとの合意の詳細は明らかではないが、7月中旬にも査察官を派遣するとされる。

 これによってとりあえず、寧辺の核施設の停止・封印が確認されても、それが直ちに最終放棄につながるわけではない。2月合意は「すべての核計画(使用済み燃料棒から抽出されたプルトニウムを含む)の一覧表について、5者と協議する」ともしているが、ウラン濃縮を含むかどうかが次の問題になる。

 北朝鮮の完全な核放棄を6カ国協議によって目指すのが現在の国際合意であり、それは望ましい。同時に北朝鮮のたなごころで国際社会が踊らされているようにも見える。

【日経・春秋】(7/3)

 「綸言(りんげん)汗のごとし」の「綸」とは組み糸のことだという。だから「綸言」といえば、口から出たときには細くても、下々に届くときは綸のように太くなる天子の言葉を指す。それだけに、いったん口にしたら汗と同じで元には戻らない。

▼防衛大臣という職にある人の発言も、天子ほどではないにしても大変な重みがあるはずだ。ところが、米国による原爆投下を「しょうがない」と言ってのけた久間章生防衛相は、「表現の仕方がまずかった」などと釈明し、発言を撤回してみせた。太くなった言葉の糸を手繰り寄せ、のみ込もうというのだろうか。

▼参院選を目前に控えた安倍晋三首相もげんなりしたに違いない。「誤解を招く発言は厳に慎むように」と注意したそうだが、かねて失言を繰り返しているこの大臣に効き目があるのかどうか。野党からの罷免要求を「そんなのはよくある話だから」と気にも留めぬ様子をみても、久間氏の「軽さ」は際立っている。

▼何を口走ろうと取り消せばいいのなら、言説が命のはずの政治家への信頼は地に墜(お)ちる。今回の「しょうがない」に限らず、この内閣では問題発言がどれほど飛び出してきたことか。綸言などという古めかしいことはさておき、最近の若者言葉にならい、せめて政治家は「空気を読む」ようにしたらいかがだろう。


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