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2007年7月20日 (金)

7月20日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月20日朝刊)

[ゲートウェイ構想]実現への詰めが大切だ

 沖縄振興特別措置法に基づいて二〇〇二年にスタートした沖縄振興計画(一一年度までの十年計画)は、今年が中間の折り返し点に当たる。

 一人当たり県民所得は、二〇〇〇年度の二百十万円に対し、人口増などの影響もあって〇四年度は、目標に近づくどころか逆に、二百万円に減少した。失業率も改善の兆しが見られない。民間主導の自立型経済を構築するためには、まだまだ多くの高いハードルを越えなければならないのが実情だ。

 五月に政府が打ち出した「アジア・ゲートウェイ構想」は、経済振興の有効打がほしい県にとっては、まさに渡りに船だった。

 確かにこの構想は、沖縄振興計画に基づく各種施策とフィットする部分が多い。「アジア・太平洋地域における各種の結節機能を育成・強化する」との振計の文言は、ゲートウェイ構想が目指すものとぴったり重なる。

 県の施策をうまい具合にゲートウェイ構想に乗せ、実現することができれば「県の自立的発展を一層加速させるための原動力」(仲井真弘多知事)になるだろう。

 県は十八日の振興推進委員会で「『アジア・ゲートウェイ』の拠点形成に向けた取り組み方針」を決めた。

 重点分野として、物流ネットワークの機能強化や国際情報通信分野の整備、金融業務特別地区(金融特区)における金融業務の集積、沖縄科学技術大学院大学を核とする人材ネットワークの構築、などを挙げている。

 県と全日本空輸(ANA)は、アジア向け国際航空貨物輸送のハブ基地を那覇空港に設置することで合意したばかりだ。これは、国際物流拠点形成に向けた大きな一歩だといえる。ただ、次のことも忘れるべきではない。

 県は復帰後、政府が打ち出したさまざまな構想に何度も手を挙げ、国の施策に乗っかって経済振興を図ろうとしてきたが、夢が夢のままで終わった事例が少なくないのだ。

 渡りに船と飛びついたものの、実際には使い勝手の悪い制度だったり、時間の経過で構想そのものが時代に合わなくなったり、県だけが踊って肝心の民間がそっぽをむいたり、その種の線香花火的な事例には事欠かない。万事うまくいっていれば、今ごろ沖縄はもっと良くなっていたはずだ。

 大学院大学にしろ、金融特区にしろ、ものになるかならないか、これからが正念場である。

 不発のケースはなぜうまくいかなかったのか。絵を描くだけでなく、実現に向けた「詰め」が欠かせない。

[低賃金雇用]企業側も応分の負担を

 ワーキングプア(働く貧困層)解消へ向け、最低賃金引き上げ論議が活発になる中で、県内の低賃金雇用者の割合は全国平均の二倍以上となり、比率が極めて高いことが明らかになった。

 沖縄地方最低賃金審議会に示された資料「低賃金雇用者の分布状況」は、二〇〇三年の賃金構造基本統計調査を基に作成されたものだ。

 パートタイム労働者の賃金が最低賃金の115%に満たない割合は沖縄は59・2%。四十七都道府県中最も比率が高い。最低賃金違反(最低賃金未満)は9・2%。一般労働者の最低賃金115%未満の割合は9・0%で青森県に次いで高く、最低賃金違反は2・2%で全国で最も高かった。

 パートタイム労働者の六割は最低賃金水準で雇用されており、低賃金雇用の比率は二位の北海道(49・5%)に比べて約10ポイントも高くなっている。

 最低賃金違反は論外として、パートタイム労働者の賃金には問題がある。特に母子家庭の母親はどのように生計を立てているのか、考えさせられる。

 先の国会で労働関連三法案の成立が注目されたが、継続審議となった。最低賃金法改正案には賃金の最低限度額の底上げなどが盛り込まれていた。

 沖縄の最低賃金は時給六百十円で全国で最も低い。一生懸命まじめに働いても生活保護費の給付水準にすら届かないとすればやはり異常である。

 「これでは生活できない」との悲鳴に企業は「中小企業は厳しい」と反論する。県成長力底上げ戦略推進円卓会議でも労働側は「生活保護費より少ない」と最低賃金引き上げを求めたが、企業側は「生産性を見ないと雇用喪失につながる」と慎重な姿勢だ。

 県内の高失業率の陰で低賃金雇用が広がっている。パートタイム労働者を中心とする低賃金の実態は沖縄の脆弱な経済基盤を反映したものだろう。

 最低賃金制度のセーフティーネット(安全網)としての役割を見直す必要がある。格差問題にも関係するだけに企業の論理優先だけでは済まない。企業にも応分の負担を求めるべきだ。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月20日 朝刊 1面)

 夏の甲子園出場をかけた第八十九回全国高校野球選手権沖縄大会は十八日、興南の二十四年ぶり八度目の優勝で熱戦の幕を閉じた。決勝戦が沖縄大会史上初の延長引き分け再試合となるなど、今年も多くの感動のドラマを生んだ。選手や監督らに聞いた話の中から心に残った言葉を紹介したい。

 「平常心と闘争心のバランスが大事」と話したのは沖縄尚学の比嘉公也監督。スポーツに闘争心は不可欠だが、そればかりが前面に出ると、力みとなって結果を出すことができなくなる。その逆もしかり。

 「甲子園は夢ではなく、目標になった」。準々決勝で敗れた沖縄工業の三年生が後輩に託した言葉。あこがれるだけだった甲子園が、あと一歩で手の届くところまできた。自分たちがなしえなかった「夢」を実現してほしい—という熱い思いが伝わってきた。

 「学校だけだったら不登校になっていたかもしれない。野球が心の支えだった」。本格的に野球を始めたのが高校入学後という美来工科の仲村竜選手は、代打で迎えた高校最後の打席をヒットで飾った。

 「負けて得るものも多い」。決勝で興南に敗れた浦添商業の島袋克也主将は、チームメートを最後まで信じる心の大切さを挙げ「これからの人生でもいい思い出になる」と結んだ。

 高校スポーツは教育の一環として位置付けられている。選手らの言葉から今の世の中で必要な「心の教育」というフレーズが浮かんだ。(船越三樹)


【琉球新報・社説】

高校生歴史調査 意識と知識の格差を埋めよう

 沖縄戦の犠牲者の数、沖縄戦の公式終結日、「本土復帰の日」すらも、答えられない沖縄の高校生が増えている。学び、教え、伝え、記憶させ、未来に「歴史」を伝承することの大切さを、あらためて確認したい。
 沖縄歴史教育研究会が、県内の高校2年生2767人を対象にこのほど実施した「沖縄歴史に関する高校生の知識・意識調査」によると、琉球王国や沖縄戦、米軍統治、伝統文化などに関する基本的な史実、事実、数字の正答率は「かなり低い」という結果になった。
 琉球王国の最初の国王「舜天」の正答率は17%、中国皇帝が琉球国王を任命する「冊封」は20%、薩摩の琉球侵略の「1609年」は9%、「人頭税」が27%、「蔡温」が22%、沖縄学の父「伊波普猷」は13%と、軒並み3割を切る。
 近・現代史も低い。沖縄戦の公式な終結日「9月7日」は6%。多くが「慰霊の日」を終結日と誤認している。慰霊の日以後も沖縄戦の犠牲は続いている。「軍部中心の歴史」の重視と伝承に、危機感を抱く高校教師も少なくない。
 平和の礎の刻銘者数「24万人」は29%。戦争犠牲者の数を正確に記録し記憶させることは、戦争を憎み、平和を愛する「沖縄の心」の醸成に欠かせない。
 戦後27年間の米軍統治を経て、民衆の力で異民族支配から脱した「本土復帰の日」が書けたのは11%。米軍の暴政を糾弾し、日米両政府を揺さぶり、「自治と人権」「平和と民主主義」を勝ち取った誇るべき日である。
 調査では、こんな結果もある。沖縄の歴史や文化を学ぶことについて「とても重要」35%、「重要」45%。そして、沖縄の歴史や文化に誇りを「とても感じる」32%、「感じる」44%。
 沖縄の歴史や文化に誇りを持ち、学びたいと切望する高校生たちが、いかに多いことか。残念なのは、熱い思いと裏腹に、知識の習得が追いついていないことである。
 沖縄は、独自の王朝文化、大交易時代、琉球処分、沖縄戦による多大な犠牲、米軍統治、本土復帰など、他県にはない独自の歴史を持つ。沖縄戦は悲惨さだけでなく、時期など「正確な知識を伝える努力も大事」との声もある。
 調査した教師らは「意識は高いのに正答率が低いのは、学校や地域で学ぶ機会が少ないから」と指摘している。教育現場で琉球・沖縄史学習が「お国自慢レベルの郷土史と認識され、軽く扱われている」のも原因とみている。
 平和も民主主義も、自治も人権も闘い取った希有(けう)の歴史を経験した親たちである。苦難の歴史を、戦争の悲惨さを、歴史に学ぶことの大切さを、子どもたちにもっと語り継いでほしい。

(7/20 9:48)

村上ファンド 「プロ」の背信は許されない

 村上ファンドの前代表・村上世彰被告に東京地裁は19日、「インサイダー取引」と認定し、懲役2年の実刑判決を下した。村上被告は即日控訴した。「物言う株主」「株主の地位向上」を掲げながら、一般株主には不可能な不公平な取引で、巨額の利益を得る手法は「背信行為」として断罪された。
 裁判の焦点は、ライブドアによるニッポン放送株取得にからむ村上被告の株取引が、インサイダー取引に当たるか否か。
 判決は黒。ファンドマネジャーとして自らインサイダー状況を作り出すなど、「一般投資家が模倣しようとしても決してできない特別な地位を利用した犯罪」として、有罪を認定した。
 摘発を受ける直前、村上被告は記者会見で、「(株を)買い集めると聞いちゃった」と故意でなく、偶然の情報取得と強調していた。
 しかし、司法は村上被告が自らライブドアを勧誘し、その気にさせてインサイダー情報の伝達を受けたと認定。「買い集めると言わせた」とまで断罪している。
 事件にからむ株売却で村上ファンドが得た利益は全体で約30億円。村上被告個人でも少なくとも約1億5千万円を得たとされる。
 判決では、懲役2年に加え罰金は300万円。追徴金は約11億4900万円にも上る。それでも、得た利益を下回る。
 今回の判決に「市場の公正さを損なう行為には厳しく対処する司法の姿勢を示した」との評価もある。一方で、金融商品取引法などの制定もあったが、村上ファンド事件後も金融犯罪は続いている。市場からは「規制はまだ甘い」との声もある。
 株や金融取引の先進国アメリカでは証券取引委員会(SEC)が、不正取引を厳重監視し、信義則違反や権利の乱用など、日本より厳しい範囲で不正を摘発している。
 年金不安などから預貯金や年金を元手に証券・投資市場に参加する個人投資家も増えている。金融事件や犯罪の再発防止は急務だ。公正な株取引の確保のためにも、金融取引の規制強化も視野に、法・制度を見直す時期に来ている。

(7/20 9:47)

【琉球新報・金口木舌】

 台風4号の暴風域下にあった13日昼前。目に入ったのか、幾分風雨が収まったので、買い物で近くのスーパーマーケットを4カ所回ったが、すべてが臨時休業
▼もしやと思い、コンビニエンスストアまで足を延ばしたら、駐車場は満杯で、店内は客で大混雑。商品に割高感はあるが、こんな時にはありがたい。暴風時に出勤して働いている従業員のことを思うと、なおさらだ
▼県は今月10日、大手コンビニチェーンのローソンと、災害時の食料支援や児童の安全確保などで連携することで協定を結んだ。「年中無休」「24時間営業」というコンビニの特色は地域の拠点として着目されている
▼電気やガスなどの公共料金の支払いに加え、自動車税納税もコンビニで可能になり、県の税収増にも一役買っている。コンビニで選挙の投票を、との声も根強い
▼児童生徒が犯罪に巻き込まれるのを防ぐ「太陽の家」にコンビニを指定する動きも全国的に広がっている。今回の新潟県中越沖地震でも、コンビニなどが水や食料を無料提供したと聞く
▼競争、淘汰(とうた)も激しい中で、業界も地域に根差すことに意義を見いだしているのだろう。地域の防災、防犯拠点としてのコンビニの役割への期待は今後も大きくなるように思う。

(7/20 9:40)


【東京新聞・社説】

断罪された『利益至上』 村上被告実刑

2007年7月20日

 “密室取引”は一般投資家をも巻き添えにする悪質なものだ。ニッポン放送株のインサイダー取引事件で、村上世彰被告に実刑判決が出た。「カネこそすべて」という世相への強い警鐘でもある。

 「動機には強い利欲性があり、強い非難に値する」

 東京地裁はそう断罪した。事件を「砂上の楼閣だ」とする村上被告の主張を退け、実刑と過去最高額の追徴金を科したのは、“密室取引”への厳しい姿勢にほかならない。

 最大争点は、三年前にライブドアが同放送株の5%以上を買い集める決定をし、その重要事実を村上被告に伝達したかに集約されていた。

 当時から村上ファンドが約百億円で大量の同放送株を買い、高値で売り抜け、約三十億円もの利益を上げていたからだ。

 判決は検察側の描いた構図に軍配を上げた。「株のプロ」には、より厳しく公正さを求めたといえる。

 そもそも村上被告の株取得は、あまりにあざとい手法だったといわれてもやむを得ない。

 同放送株の買い付けを持ちかけたのは、村上被告自身だったからだ。公判で「夢を語る営業トークだった」とか、ライブドア側の反応を「大言壮語」と反論したのは無理があったというべきだろう。

 判決は「徹底した利益至上主義には慄然(りつぜん)とする」とまで言い切った。

 ファンドは大量の資金を市場に注ぎ込む。それが内部情報で人為的に相場をゆがめたら、一般投資家が被害を受けるのは当然だ。そこが個人の不正取引と異なる点で、それだけ罪は重く、市場の信頼も損なう。

 高利回りで運用する宿命を背負う投資ファンドとはいえ、倫理観と自覚が必要なのは、いうまでもない。利益至上主義はそれがおざなりになりがちで、その意味でも、村上被告の責任は重いというべきだ。

 法改正でファンドへの監視体制やインサイダーへの罰則強化がなされたが、市場の透明性・公平性のためにも、厳格運用してもらいたい。

 逮捕前の記者会見で「ルールを犯した」と認めながら、一転して発言を翻した。「ファンド崩壊を防ぐためだった」と弁明しても、国民を欺いたという、そしりは免れない。

 村上ファンドには政・官・財の有力者が投資していたといわれる。その一人であった福井俊彦・日銀総裁の責任は、あらためて重く問われるべきだ。他に金融・証券政策に携わる人々はいなかったのか。そんな問題点が依然、解明されていないのは不十分と、注文をつけたい。

『食文化』というのなら ウナギ規制

2007年7月20日

 かば焼きの需要がうなぎ上りになる季節。だが、激減で漁獲規制が強くなり、輸入物の安全性にも問題がある。消費量の七割を占める日本。長く味わう節度があってこそ、魚食文化の国である。

 先月、日本のウナギ需要期に合わせたように、欧州連合(EU)の農漁業相理事会は、ウナギの稚魚(シラス)の漁獲量を二〇一三年までに六割減らす規制案を承認した。

 そして、絶滅の恐れがある野生生物の取引を制限するワシントン条約締約国会議も、ヨーロッパウナギの稚魚をその対象にした。

 台湾も資源保護のため、ニホンウナギの稚魚の禁輸を検討中だ。

 日ごろ口にするウナギのほとんどは、いわば半養殖。捕獲されたシラスを養殖業者が買い取り、一年以上かけて成魚に育て、出荷する。

 国産のシラスは一九八〇年を境に激減し、台湾や中国からの輸入に頼っていたが、これもほとんど姿を消した。

 今では、国内のウナギの供給量の約六割を中国に依存しており、その四分の一をヨーロッパウナギが占めている。スペインやフランスで捕れたシラスを中国で成魚に育て、かば焼きなどに加工したものを日本に入れる仕組みだ。その結果、ヨーロッパウナギの推定資源量は八〇年代の2%にまで落ち込んだ。これでは確かに種の危機だ。

 クジラ、マグロ、そしてウナギと、国際的な漁獲規制が強まるたびに、「食文化」の危機が叫ばれる。しかし多くの消費者は、例えばウナギのことを何も知らずにただ食べてきた。ニホンウナギはその産卵地さえまだ特定されていない。

 輸入物のかば焼きが、欧州発中国経由の長旅の果てにあることも。

 フードマイレージ(食料の輸送距離)という言葉がある。これが多いほど二酸化炭素の排出量が多くなり、環境負荷も大きくなる。各国の比較では、日本は飛び抜けた世界一。二位韓国の約三倍にも上る。

 環境負荷だけではない。中国産ウナギのかば焼きから基準値を超す抗菌剤が検出されるなど日本向けの輸出禁止が相次いでいる。他国への依存度が高いほど、食の安全も脅かされることになる。

 土用丑(うし)のウナギは江戸時代、夏ばて防止の栄養補給という目的で意図的に広められたものだという。

 これ以上規制が強くなる前に、また汚染が拡大する前に、「食習慣」の背景にある事実や意味に時に思いをはせながら、賢く選んで、長く楽しく味わい続ける工夫を凝らしたい。それが「食文化」ではあるまいか。

【東京新聞・筆洗】007年7月20日

 「言葉を失う」とはこんなときに使う。中国の北京テレビが報じた「段ボール入り肉まん」事件は、局員による“やらせ”の捏造(ねつぞう)ニュースだった▼折から日本で挽(ひ)き肉偽装事件があり、中国産野菜の農薬汚染や輸出用医薬品への毒物混入もあったから、後発資本主義国・中国の遅れた食品衛生管理を揶揄(やゆ)する格好のネタとなって世界を駆けめぐる▼新聞、テレビも悪のりして、さまざまに報じたが、元が捏造では、便乗したこれら凡百(ぼんぴゃく)の言説は無効化され、笑いものになる。『アサッテの人』(群像六月号)で第百三十七回芥川賞を受賞した諏訪哲史さんなら、さしずめ「ポンパ」と言ってのけるところか。あるいは「チリパッハ」▼奇妙な言葉を発する叔父の失踪(しっそう)を、叔母や本人の日記、筆者自身の多様な文体でつづる知的な実験小説。今回から選考委員に加わった小川洋子さんは「言葉を主題にしながら、人とのコミュニケーションや社会とのかかわりを排除」する手際を評価した▼意味不明の驚きの言葉といえば、一世を風靡(ふうび)した赤塚不二夫さんの漫画『おそ松くん』で、イヤミが、両手を“こ”の字にして発した「シェー」があるが、なぜかこの言葉を聞くと、人間国宝だった故六代目中村歌右衛門の所作が浮かぶ▼ところで直木賞は、歌舞伎脚本や、評論で知られた松井今朝子さんの『吉原手引草』(幻冬舎)が受賞した。全文が「ありんす」「申しんす」の郭(くるわ)言葉や江戸弁で構成される。映画、コミックにも歌舞伎や吉原ものが人気の時代の、これも“当世書生気質(かたぎ)”か。


【河北新報・社説】

村上被告に実刑/問われるファンドの在り方

 ニッポン放送株をめぐるインサイダー取引事件で証券取引法違反の罪に問われた村上ファンド前代表の村上世彰被告に、懲役2年の実刑という厳しい判決が言い渡された。

 今回の事件は、ファンドの株売買がインサイダー取引として立件された初のケースとして注目された。東京地裁の判決は、ファンドの在り方にも強く警告したものと言える。

 インサイダー取引とは、上場企業の株価に影響を与えるような「重要事実」を知った者が、その情報が公表される前に株などを売買する違法行為だ。

 特別の地位や職務にある者が未公表の重要事実を利用して株の売買で利益を得るのでは、一般投資家と不公平が生じ、市場の信頼が損なわれる。厳格に処罰されなければならない。

 今回の事件の背景となったのは、株式の時価総額の小さいニッポン放送がフジテレビの筆頭株主となっていた資本関係のねじれだった。村上被告はそこに着目してニッポン放送株を買い集め、ライブドア前社長の堀江貴文被告(別の証取法違反罪で一審実刑、控訴)にも株取得を持ちかけたとされる。

 公判で争点となったのは、村上被告側がニッポン放送株を買い集めて高値で売り抜けた行為が、ライブドア側の大量取得決定というインサイダー情報を得た上で行われたのかどうか、ということだった。

 判決は、ライブドア側には資金調達の具体性も実現の可能性もなかったとする弁護側の主張を全面的に退け、インサイダー情報を得た上での不正取引だったと認定。「買い集めることを偶然『聞いちゃった』のではなく『言わせた』といえる」と事件の構図を指摘した。

 巨額の資金を集める投資ファンドのマネジャーという「一般投資家が模倣できない特別な地位」にあるからこそ、法の規定を一層守る責任があるとするものだ。市場ルール違反に厳格に対処する最近の司法判断の流れにも沿っている。

 ただ、株式売買をめぐって「プロ」と「プロ」の間で虚々実々の激しい駆け引きが繰り広げられているのも現実だ。どのような行為がインサイダー取引に当たるのか、今回の判決で必ずしも判断基準が明確になったとまでは言えない。

 「安ければ買うし、高ければ売る」という姿勢が、判決で言うように「利益至上主義」として非難されるべきものかどうかも、意見が分かれるところだろう。

 村上被告は判決を不服として即日控訴した。インサイダー取引について、またファンドの在り方について、さらに深い審理を期待したい。

 企業の粉飾決算や今回の事件なども踏まえて、証取法を抜本改正した金融商品取引法が昨年成立し、9月に全面施行が予定されている。実態が分かりにくかったファンドに関して、運営主体を登録させるなどの規制強化も図られる。

 新たな法律によって、市場の透明性向上や投資家保護を一層進めることも必要だ。
2007年07月20日金曜日

【河北新報・河北春秋】

 ヤンキースの試合終了後、フランク・シナトラの『ニューヨーク・ニューヨーク』が流れる。先日、球宴が行われたサンフランシスコでは、トニー・ベネットの『想い出のサンフランシスコ』が、試合の余韻を溶かし込むように、スタジアムを包んだ▼いわばご当地ソングなんだけれど、どちらも世界的に知られたスタンダード。試合中に米国国歌からヒップホップに至るまでさまざまな音楽が流れる大リーグの締めくくりに、落ち着いたメロディーは不思議と似つかわしい

 ▼ わが東北楽天がフルキャストスタジアムに流すなら、何の曲がいいか。球宴ファン投票の楽天勢にちなんで、ナット・キング・コールの『スターダスト』はどうだろう▼「オールスターダストやな」という野村克也監督一流の自虐のニオイは若干あるが、星くずだって「少しだけ光ります」(7月5日、高須洋介選手)。ひょんなことから全国的注目を集めたのだから、軽く右方向にウィンクして返さない手はない

 ▼さすがにご当地ソングとは言い難い。でも、仙台七夕という日本最大級の星祭りが行われる街だ。超有名曲の品格に気後れする必要はあるまい▼ただし『スターダスト』は失恋ソング。これだって気にすることはない。仙台は、傾城(けいせい)高尾に大失恋した殿様がいた街だ。

2007年07月20日金曜日


【京都新聞・社説】

村上被告実刑  虚像だった物言う株主

 自らインサイダー状況を作り出し、徹底した利益至上主義にはりつぜんとする−。
 投資ファンドの寵児(ちょうじ)としてもてはやされた「物言う株主」を、裁判長は異例の言葉で断罪した。
 ニッポン放送株のインサイダー取引事件で、証券取引法違反の罪に問われた村上ファンド前代表の村上世彰被告に、東京地裁は懲役二年の実刑判決を言い渡した。
 「証券市場のプロ中のプロ」を自認する一方、その裏でインサイダー取引という株式市場の最も基本的なルールを無視した行為は、市場や投資家に対する背信だ。判決は当然である。
 判決では村上被告は、ライブドアの堀江貴文前社長らからニッポン放送株の大量取得決定の内部情報を聞き出し、株を買い増した後、高値で売り抜けファンド全体で約三十億円、被告個人も約一億五千万円の利益を得たとした。
 被告は昨年、逮捕直前の記者会見でインサイダー情報について偶然「聞いちゃった」と強調、公判では一転否認した。しかし判決は、被告自らがライブドアを勧誘してその気にさせ、インサイダー情報の伝達を受けたと違法行為を明確に認定した。
 さらに、被告は巨額の資金を集めるファンド運営者という特別な立場を利用し高値売り抜けを企てたと指弾し、その動機には「強い利欲性が認められる」と厳しく指摘した。市場の公平性や信頼を裏切るインサイダー取引の悪質さに、司法が強い警鐘を鳴らしたといえよう。
 通産省(現経済産業省)OBの村上被告は企業の株式を大量取得し、「企業価値の向上」を掲げ、利益還元を経営陣に迫る「物言う株主」としての役割を果たした側面も確かにある。
 だが、一連のライブ事件で一審で実刑判決を受けた堀江前社長と同様、法の盲点や不備をたくみに突き、巨利のためには手段を選ばない「拝金主義」の手法は、うり二つといえよう。
 今年の株主総会は、外資系投資ファンドを中心に買収提案や増配要求など企業経営者に厳しい注文を突きつけるケースが目立った。物言う株主が増えることは決して悪いことではない。株主と経営者側に緊張感が高まり、企業の活性化にもつながる。
 しかし、株を買い占め高値で売り抜けるグリーンメーラーはもちろん、目先の利益を優先するファンド提案は株主から支持されなかった。
 一方、今回の事件やライブドア事件を機に、買収防衛策を導入する企業が年々増えているが、経営者側の保身だとして批判を強める株主も少なくない。
 大事なのは、買収する側も防衛する側も企業の明確な長期戦略を示し、株主への情報開示を徹底することだ。経済のグローバル化が進む中、だれのための「企業価値の向上」かを問い直したい。

[京都新聞 2007年07月20日掲載]

被災者の健康  高齢者や子どもを守れ

 大きな被害を受けた新潟県中越沖地震から四日。電気や水道などのライフラインは回復し始め、復旧作業も全力で続けられている。
 心配なのは、被災者の健康だ。とりわけ、災害弱者である高齢者や子どもたちへの手厚いケアが欠かせない。腰を据えた長期的な支援態勢づくりも必要だ。
 柏崎市や刈羽村などの約七十カ所の避難所では、今も約四千人の住民が過ごしている。
 だが時間が経過するにつれ、室内のむし暑さも手伝って眠れず、体の不調を訴える人が増えている。避難生活が長引けば、さらに影響が出るだろう。
 避難所内では体を動かす機会が減り、座ったままで過ごすことが多い。被災前には健康だった高齢者でも、歩くのが難しくなったり、認知症が進む例もあるというから、周囲が体調管理に細心の注意を払うことが必要だ。
 阪神大震災や中越地震のときに指摘されたのは、避難所や仮設住宅で、高齢者がストレスで体調を崩したり、持病を悪化させ、死亡するケースも相次いだことだった。
 今年三月の能登半島地震の際に、石川県が避難所で暮らす約千二百人の被災住民に行った健康状況調査でも、約15%にあたる百八十七人が高血圧や不眠、余震への不安などを訴えている。
 こうした過去の震災の苦い教訓を生かして、柏崎市はきのう、避難所での生活に支援が必要な被災者を対象にした「福祉避難所」二カ所を開設した。介護福祉士の資格を持つ職員らが二十四時間態勢で介護にあたる。
 スタッフを充実させ、他の市町村でも増設を図ってほしい。そのためには、全国各地からの人的応援も必要だ。
 高齢者は体の状態について自分から進んで話したがらない傾向が強いだけに、表面的な診察では本当の症状は見つけにくいだろう。一人一人に丁寧に接し、じっくり耳を傾けることだ。
 自宅で一人住まいの高齢者にも医療支援の輪を広げてほしい。とりわけ、心のケアには万全を期してもらいたい。
 忘れてならないのは、子どもたちへのケアだ。震災による恐怖心や、悩みを抱える幼児や小中学生は多いはずだ。
 中越地震の半年後に新潟県が実施した調査では、兄弟をいじめるようになったり、風が吹いて戸が鳴ると泣き叫ぶといった深刻な症状を見せる小中学生のケースも報告されたという。
 柏崎市と刈羽村がきのう、子どもたちの不安や悩みのケアにあたる「緊急心の相談室」を計二カ所に設置したのは朗報だ。
 先生や家族らとともに温かく見守り、話し相手になることが大切だろう。
 心のケアは、復旧、復興が進んだ後も手を緩められない。関係機関が連携し、息の長い取り組みが欠かせない。

[京都新聞 2007年07月20日掲載]

【京都新聞・凡語】

河合隼雄さん死去

 愛用の「きゅうす」に名前がついている。愛着があるから、きゅうすの口が取れても修理する。だめになっても失望しない。きゅうすの名前は最初から「万事きゅうす」だから▼臨床心理学者で、元文化庁長官の河合隼雄さんはダジャレの名人だった。「五十八歳でフルートも吹くようになったが、ほら吹きは年季が違う」。「日本ウソツキクラブ会長」の肩書きを持つ▼「ウソは泥棒のはじまりというが、最近の心理学の研究ではウソは高く評価されている。某教育委員会が生徒たちにウソをつくように指導したところ、生徒たちの精神衛生がよくなり、いじめも不登校も消滅した」。河合さんの作り話だが、どこかうなずいてしまう。これが河合話術▼「お医者さんは人の話を聞かないが僕は人の話を聞くのが商売」。話し上手に聞き上手。京都大の学生部長のころ、難題の吉田寮問題もいつのまにか解決。「優秀なカウンセラーには人をけむに巻く才能がいる」と耳打ちされた▼とにかく面白いことをやるのが大好き。不況の時こそ文化の振興と、京都に長官室分室をつくったのもその表れ。「文化まで東京集中は、あかん」。愛する関西の元気を鼓舞した▼脳梗塞で倒れ一年近く。意識は戻らなかったというが、あこがれの明恵上人と夢問答を続けたのだろうか。最期の最期まで夢解きに夢中だった河合さんが逝った。

[京都新聞 2007年07月20日掲載]


【朝日・社説】2007年07月20日(金曜日)付

村上被告有罪—断罪されたウソ言う株主

 逮捕直前の記者会見では、内部情報を「聞いちゃった」と罪を認めながら、公判になると一転「会見ではウソをいった」と全面否認する。こうした主張は弁解に終始しており、反省は皆無だ。

 東京地裁はそう述べ、村上ファンド前代表の村上世彰(よしあき)被告に対し懲役2年の実刑を言い渡した。追徴額はインサイダー取引で最高の約11億5000万円になった。村上被告の完敗である。

 ライブドアがニッポン放送株を大量取得して経営権を得ようとしている傍らで、村上ファンドもニッポン放送株を売買し、約30億円の利益を得た。それがインサイダー取引に当たるかどうかが争われた。とくにライブドアの株取得に先立つ会議で、ライブドア首脳から村上被告へ、大量取得を決めたという内部情報が伝えられたかどうかが焦点だった。

 公判で村上被告はライブドア側の話を「大言壮語と思った」と主張した。

 しかし、判決はこれを退けた。そもそもニッポン放送株の大量取得は村上被告がライブドアへ持ちかけたもので、ライブドアは村上被告の思惑の下で動いていた。株取得の決定は、村上被告が「聞いちゃった」のではなく「言わせた」というのが実態だと判断した。

 そして、ライブドアが実際に株の取得に乗り出すや、村上被告は早々にこの株を売り抜けたとし、徹底した利益至上主義に「慄然(りつぜん)とする」と批判した。

 このように判決は、村上被告の投資行動を厳しく断罪している。

 村上被告は通産官僚をやめて8年前にファンドを立ち上げ、「もの言う株主」の代表格となった。豊かな資産に安住した会社の株を買い、経営者に株主価値の向上を迫った。日本的な古い経営風土の転換を促す役割を一時は期待され、その役を果たした面も否定できない。

 だが、ライブドアや村上被告が摘発されたのを境に流れが変わった。「もの言う株主」への社会の評価が厳しくなり、先月相次いだ株主総会では投資ファンドの主張が次々と退けられた。

 今回の判決は、こうした潮流を強めることになるだろう。

 ただし同時に、利益追求の否定が行き過ぎないようにも注意しなければいけない。証券市場は投資によって利益を上げようという行動で成り立っている。公正なルールのもとで投資がおこなわれる市場をつくっていくことが大切だ。

 判決を聞いて戸惑っている投資ファンドもあるだろう。さまざまな関係者と水面下で情報交換し、ときには手練手管も駆使して投資しているからだ。企業の合併・買収は、日本経済の生産性を高めるうえで重要な手段になっている。

 それがどこまでは許され、どこからはインサイダー取引になるのか。今回の事件は、いわば村上被告による自作自演の特殊なケースだが、控訴審ではさらに踏み込んで、一般的なルールの線引きを示してもらいたい。

中越沖地震—お年寄りを支えていこう

 日常の暮らしを押しつぶすように、重い瓦屋根が崩れた壁の上にのしかかっている。アスファルトの道路はめくれ、一部はせり上がったままだ。

 新潟県や長野県を襲った中越沖地震の被災地を歩いた。

 隣の家に寄りかかるようにして傾いていた建物が、みしみしときしんだかと思うと、どーんと音を立てて崩れ落ちた。発生から3日目のことだ。今もあちらこちらに危険がのぞく。

 水やガスは、まだ広い範囲で途絶えている。

 避難所の体育館は、身を寄せる人たちでぎっしりだ。毛布を敷いただけの硬い床で、夜は手足も十分に伸ばせないまま眠る。

 家が壊れなかった人たちも、給水車の前に列をつくった。年配の人もポリ容器に入れた重い水を運んでいる。

 この地域は3年前にも、中越地震に見舞われた。その時に被害を受け、仮設住宅で暮らした人も少なくない。

 「あのときに壊れた家を、ようやく建て替えたばかりなのに」。そう嘆く声に、悔しさとあきらめがにじむ。

 被害の大きかった新潟県柏崎市の市役所には、市民が次々とやって来る。「傾いた家を、どうすればいいか」「被害の判定を早くして」。だが、市内は約3万4000世帯。なかなか手が回らない。

 今回の地震でも、お年寄りの被害が一番大きかった。命を落とした10人は、すべて70歳を超す人たちだ。倒れた家の下敷きになった人が多い。

 年配の人たちは、すばやく逃げることが難しい。加えて木造の古い家に住むことが多い。揺れに弱いとわかっていても、建て替えや補修に金をかけることは、お年寄りにとっては大変だ。危なくても住み慣れた家への愛着もある。

 揺れがおさまったあとの支援も必要になる。ホームヘルパーが被害に遭い、日ごろ支えてきた在宅のお年寄りの世話ができなくなった例もある。

 「家の片づけをする間、老いた親を一時的に預かってほしい」。市には、そんな相談も増えてきた。近隣の自治体と連携し、十分な対応をしてもらいたい。

 被災地では、近所の人たちが駐車場や広場に集まり、炊き出しをしていた。揺れの直後にも「大丈夫か」と声をかけ、壊れた家からお年寄りを救い出したという。地域のつながりが被害を抑えた。

 だが、隣に住む人の顔も知らない都会で同じような地震が起きれば、けがをしたまま取り残される人が続出するだろう。プライバシーを優先して個人情報を伏せる時代に、どうやって安全を守るのか。改めて考える必要がある。

 発生から日がたつにつれ、避難所で過ごす人の顔には、疲れがにじんできた。仮設住宅の建設を急いでもらいたい。

 壊れた家を直すのにも費用がかかる。資金の手当てを含め、必要な支援を考えていきたい。

【朝日・天声人語】2007年07月20日(金曜日)付

 中世の瀬戸内海を支配した村上水軍は、陸の権力に従わない海賊衆だった。平時は船荷の警固や水路案内、戦時には大名と結び、小船と火薬でひと暴れした。秩序に服さず、神出鬼没、正邪を併せ持つその姿は、経済の大海原に出没する投資ファンドに通じる。

 東京地裁はきのう、解散した村上ファンドの村上世彰被告に懲役2年の実刑判決を下した。ライブドア幹部にニッポン放送株の取得を持ちかけ、買う気を確認したところで同じ株を購入、高値で売り抜けたという。

 村上被告は逮捕前に「聞いちゃった」と語った。判決は「その気にさせ」「言わせた」くせにと厳しい。9歳から株を始め、長じて数千億円と情報を操る地位をつかんだ被告。特別な立場を悪用した金もうけは「プロによる犯罪」と糾弾された。

 世界につながる経済の海には、巨万の情報が浮遊する。判決に従えば、少しでも実現の可能性があればインサイダー情報だ。ほとんど夢物語でも「聞いちゃった」ら身動きとれない、日本での情報収集が窮屈になると案じる向きもある。

 モノ言う株主は改革者にもなる。株式の持ち合い、同族経営、休眠不動産などを突けば、市場のよどみが晴れることもあるからだ。そんな期待まで裏切ったのが村上被告の罪深さである。

 身勝手な錬金術を戒めるルールを待ちたい。判決が投資の動きを萎縮(いしゅく)させることになれば、村上流は二重の迷惑として記憶されよう。秀吉による海賊禁止令、徳川幕府の鎖国で水軍が絶え、海洋国家が長い沈滞に入った史実もある。


【毎日・社説】

社説:’07参院選 労働者格差 非正規の待遇改善策を競え

 景気の回復が進むにつれ、にぎやかだった格差論争も下火になったように映る。確かに4、5月の完全失業率は98年3月以来の3%台に回復し、新卒学生の就職戦線も売り手市場に転じた。しかし、働く人々の実態を見れば、格差はなくなるどころか、むしろ広がっている感がある。参院選でこそ各党は、是正策を競い合うべきだ。

 格差の拡大を象徴しているのがパートや派遣、契約社員など非正規雇用が今も増え続けていることだ。総務省の労働力調査によると、今年1〜3月期平均で非正社員は過去最多の1726万人に達し、労働者全体に占める割合も33・7%と過去最高だ。10年前より非正社員はざっと570万人も増え、逆に正社員は420万人減った。

 これほど非正社員が増えたのも長引く不況下に賃金を低く抑え、コスト削減を図ってきた企業の都合による。しかも、大半が期限付きの雇用契約のため、企業は必要がなくなれば切ることができる。働く側を不安に追い込んでも、企業にとってはその使い勝手の良さが、今なお増加する理由だ。

 その仕組みを後押ししてきたのが政府の規制緩和策である。99年の労働者派遣法改正で派遣を原則自由化し、04年には製造業にも派遣を解禁するなど、経済界の要望を受ける形で政府は一貫して非正社員を増やす方向を進めてきた。

 問題は、正社員と非正社員の格差が一向に縮まらず、非正社員が低賃金にあえいでいる現実だ。非正社員の平均年収は正社員の約5割にとどまっている。06年の労働力調査では、年収200万円未満の非正社員は1260万人に上り、非正社員全体の77%も占める。

 とりわけ「就職氷河期」といわれた90年代〜00年代前半に正社員になれなかった40歳未満の非正社員から、ワーキングプア(働く貧困層)と呼ばれる人々が生まれている。その日ごとに作業現場に派遣される「日雇い派遣」など不安定な雇用を余儀なくされ、インターネットカフェなどで寝泊まりを続ける「ネットカフェ難民」も増えている。待遇改善と貧困層を減らすことが待ったなしの課題だ。

 参院選で、自民党は非正社員の正社員化を図るための職業訓練や就職活動支援を掲げる。民主党は就職支援とともに、パートらの正社員との均等待遇実現を訴える。共産党や社民党は「同一労働・同一賃金」による均等化や派遣の制限を主張する。しかし、それらは言いっぱなしで、議論が十分にかみ合っている印象は薄い。

 正社員と非正社員の格差をなくすには、同じ労働内容なら時間当たりの賃金を同じにする均等待遇の実現が必要だろう。さらに、労働者を守るためには、期間を定めた雇用契約や派遣のあり方も見直すべきだ。しかし、経済界は逆に、規制緩和をさらに進めるべきだと求めている。格差是正のために政治は具体的に何をすべきなのか、各党はもっと争点にして、よりわかりやすい提言を示してほしい。

毎日新聞 2007年7月20日 東京朝刊

社説:村上被告実刑判決 監視を強化し不正の根絶を

 ニッポン放送株をめぐるインサイダー取引事件で、東京地裁は村上ファンドを率いた村上世彰被告に懲役2年、追徴金11億4900万円余の実刑判決を言い渡した。

 ライブドアによるニッポン放送株の買い集めについて村上被告は、「聞いちゃった」と述べ、偶然の出来事であると強調していた。しかし、判決では、利益をあげる目的で自らライブドアを勧誘した結果であり、「買い集めると言わせたもの」と指摘。「単なる情報の被伝達者というよりも当事者性が強い」と結論づけた。

 フジテレビとニッポン放送の資本関係のねじれを突き、資本再編を促して高値での売り抜けを企てたものの、うまくいかなかった。そこで、ライブドアに「経営権を取れる」と持ちかけて始まったのが、ライブドアによるニッポン放送・フジテレビの買収劇だったというわけだ。

 投資収益を拡大するため、自らの“演出”も加えてライブドアをそそのかし、インサイダー情報で利益をあげていたという。判決が描く姿は、高値での株の買い取りを求めるかつての乗っ取り屋よりもはるかに悪質で、村上被告が断罪されるのは当然だろう。

 村上被告は通産省(現経済産業省)のキャリア官僚出身で、もともとはM&A(企業の合併・買収)についてルールづくりを行う側にいた。

 ところが、投資ファンドの代表としてM&Aを実践する側に回り、制度の穴を突く手法で株式を大量取得していった。物言う株主としてその功罪は論議を呼んだ。「プロ中のプロ」を自任し、違法な行為はないことを強調してきたものの、制度の欠陥を突く投資手法には、疑問を持つ人も多かった。

 市場からの企業改革を唱えて登場したものの、ファンドの規模が膨らみ、そうした“演出”がないと、十分な投資収益を得られなくなったのかもしれない。しかし、市場をゆがめる行為が許されるわけはない。

 外資の対日投資促進も含め「貯蓄から投資へ」が、国策として進められ、大幅な規制緩和が行われた。その過程で、IT(情報技術)系の新興起業家が次々に登場し、ヒルズ族と呼ばれた。そして、高株価を背景に巨額の資金をM&Aに投ずるようになった。

 ヒルズ族と呼ばれた起業家たちの間で行われていた情報交換の一端が、今回のインサイダー取引事件で示されたわけだが、他に違法行為はなかったのか、監視・捜査当局は明らかにすべきだろう。

 村上ファンドが火付け役になった形で日本でもM&Aをめぐり派手な攻防が展開されるようになった。しかし、その一方でルールの整備が遅れていることが明らかになり、当局は手当てに追われた。

 投資の拡大は経済の活性化につながる。しかし、取引がゆがんでいては、健全な市場は育たない。行き過ぎた規制緩和は見直すべきだし、不正行為を厳しくチェックして根絶するため、監視と取り締まりの強化も必要だ。

毎日新聞 2007年7月20日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:カリスマ美容師、カリスマモデル、カリスマ店員と…

 カリスマ美容師、カリスマモデル、カリスマ店員と、あらゆる業種にカリスマが生まれる現代だ。この「カリスマ」、もとをたどると古代ギリシャ語で神が与える「賜物(たまもの)」のことだ。新約聖書の「コリントの信徒への手紙」は、さまざまなカリスマを列挙している▲ある人には知恵の言葉、ある人には病を癒やす力、ある人には奇跡を起こす力、ある人には預言の力、ある人には霊を見分ける力……。これら超人的な力は霊によって一人一人に分け与えられ、それによって全体の益がもたらされるというのである▲カリスマが人それぞれへの贈り物ならば、いろんな職業にカリスマと呼ばれる人が生まれるのも分かる。だが、そのなかで“脱カリスマ”が進み、もう超人的オーラを帯びた人物など生まれる余地のなくなりつつあるのが、政治の世界のようである▲日本共産党の宮本顕治元議長が亡くなり、「最後のカリスマ政治家」との評伝を紙面で見かけた。敗戦までの12年間の獄中生活を経て、戦後の共産党の分裂を乗り切り、およそ40年にわたりその指導者としてかじ取りをしてきた宮本氏だ。政治のカリスマとは法や伝統を超える指導者個人の圧倒的影響力を意味している▲だから戦後世界の変化に対応して自主独立路線を打ち出し、複数政党制を認める党の変身をリードできたのは、そのカリスマのおかげといえるかもしれない。だが政治家個人が何十年も圧倒的影響力を持つ政治がとても現代世界に通用しないのが明らかになったのも同じ20世紀後半だ▲カリスマ的政治指導の最大の難所はそこからの脱却である。それは今の共産党指導部も感じてきたかもしれない。カリスマは政治家が独占するより、聖書のいう通りみんなで分かち合うのがいい。

毎日新聞 2007年7月20日 東京朝刊


【読売・社説】

憲法 なぜ国の将来像を論じないのか(7月20日付・読売社説)

 どの政党にも、参院選の公約で掲げた広範な政策の実現を通じて目指す国家像、社会像があるはずだ。

 それを体現するのが憲法であれば、憲法論戦は、最もスケールの大きな政策論争とも言える。

 それなのに、憲法をめぐる論戦が、あまり聞こえてこない。各政党、候補者が目指す国の「かたち」を明示し、競うことは、有権者に対する責任でもある。

 「戦後レジームからの脱却」を掲げる安倍首相は、かねて「憲法改正を参院選の争点にする」と明言していた。公約の冒頭には、2010年の国会での憲法改正案の発議を目指すと明記している。

 だが、選挙戦では腰砕けの観がある。厳しい逆風の下で、年金記録漏れ対策の訴えなどに力を注がざるを得ない事情もあるだろう。これでは、安倍首相が目指す国の姿、形が明確に見えてこない。安倍首相も不本意ではないか。

 民主党の小沢代表の姿勢も疑問だ。

 先の日本記者クラブ主催の党首討論会では、「60年間、憲法はこのまま来たし、今まで来ている」とし、「この参院選で憲法問題を掲げて議論する緊急の必要性を認識していない」と言明した。

 小沢代表はかつて、自由党党首時代の1999年、憲法改正試案を公表し、こう書いている。

 「化石同然の代物(現行憲法)を後生大事に抱えている」「『護憲』の実態は思考停止の馴(な)れ合い感覚だ」「大きな転換期にあって……憲法が様々な不備を抱えたまま放置されていることを改める必要がある」「憲法改正論議こそ時代の閉塞(へいそく)状況を打破する可能性がある」

 時代の変化が一層激しさを増している今日、憲法改正の必要性はさらに高まっている。にもかかわらず、憲法論戦を避けるのは、参院での与野党逆転を最優先するという政略的な判断からだろう。

 憲法論戦に臨めば、安倍首相と同じ土俵に上ることになり、与党との全面対決の構図がぼやけかねない。選挙後の国会運営で野党が共同行動を取る上で、護憲の立場の社民、共産両党に配慮する必要もある……そんな事情がうかがえる。

 だが、憲法論戦とは、変化の時代の指針となる日本の将来像をめぐる論戦だ。政治的な思惑を優先して、脇に置くことがあってはなるまい。

 先の国民投票法成立により、秋の臨時国会には憲法審査会が設置される。国民投票法は2010年5月に施行され、憲法改正案の発議が可能となる。

 この重要な局面にあって、とりわけ政権政党や、政権を目指す責任政党は、正面から憲法論戦を展開すべきである。
(2007年7月20日1時23分  読売新聞)

村上ファンド 断罪された「利益至上主義」(7月20日付・読売社説)

 「モノ言う株主」の“象徴”に対する厳しい断罪である。

 ニッポン放送株を巡るインサイダー取引事件で、東京地裁は村上ファンド元代表の村上世彰被告に懲役2年の実刑判決を言い渡した。追徴金も証券取引法違反では過去最高の11億4900万円とした。村上被告側は直ちに控訴した。

 村上ファンドが、ニッポン放送株を売却して得た利益は、約30億円に上る。判決は、「不公正な方法で一般投資家を欺き、不特定多数の損失の上に得られたもの」と断定した。

 実刑判決は証券市場の信頼と公平を損なった重大性を考えてのことだろう。

 村上ファンドは、大量保有していたニッポン放送株を高値で売り抜けるためライブドアに大量買い付けを持ちかけ、確かな感触を得て、さらに買い増した。

 公判で争点となったのは、2004年11月、ライブドア側から、村上被告に伝えられた「ニッポン放送株を3分の1買い占める」という話が、インサイダー情報に当たるかどうかだった。

 村上被告側は「実現可能性のない大言壮語だった」と主張したが、判決は「ライブドアは株の大量取得を意図し、資金調達のメドもついていた」として、インサイダー情報だと認めた。検察側が描いた構図通りの認定だ。

 村上被告とライブドア前社長の堀江貴文被告は、日本経済がバブル崩壊後の長期不況から抜け出す時期に脚光を浴び、「時代の寵児(ちょうじ)」ともてはやされた。

 堀江被告は、ライブドアの粉飾決算などで懲役2年6月の実刑判決を受け、村上被告も実刑となった。

 堀江被告の判決は「利益のみを追求した犯罪」、村上被告の判決も「徹底した利益至上主義には、慄然(りつぜん)とせざるを得ない」としている。ともに「カネがすべて」と、違法な錬金術に走った2人を、司法は容認しなかった。

 旧通産省の官僚だった村上被告は、「株主重視の経営を日本に根付かせる」として、ファンドを創設した。しかし、ファンドの規模が膨らむにつれ、初心を忘れて、専ら利益を追求した。

 ブルドックソースなど、投資ファンドに大量の株式を取得され、経営を揺さぶられている企業は少なくない。東京高裁は株価引き上げを最優先する一部のファンドを「乱用的買収者」と断定した。

 金融商品取引法に基づくファンドの登録・届け出制が近く導入される。透明性向上が狙いだ。金融当局による検査も可能になる。ファンドの行き過ぎた行動を抑止するため、証券取引等監視委員会の機能強化も必要だろう。
(2007年7月20日1時23分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月20日付 編集手帳

 若い門下生の芥川龍之介と久米正雄に、夏目漱石が手紙を書いたのは1916年(大正5年)の8月である。あせって一瞬の火花になるな。根気よく牛になって押しなさい、と説いている◆「人間を押すのです。文士を押すのではありません」。文壇のつき合いに煩わされることなく、ただ一心に人間を見つめなさい、という教えだろう。4か月後に亡くなる漱石の遺言のようにも聞こえる◆師の遺言は守られなかった。作家の半藤一利さんは「手紙のなかの日本人」(文春新書)に書いている。久米はのちに文壇の世話役として重きをなし、人間を押さずに文士を押した。芥川は牛にならず、火花になることを望んだと◆「鼻」「河童(かっぱ)」など数々の名作で知られる芥川が「唯(ただ)ぼんやりした不安」と書き残し、35歳で自殺したのは1927年(昭和2年)の7月24日、まもなく没後80年を迎える◆文業をたたえ、友人の菊池寛が「芥川賞」を創設したのは衝撃の死から8年後である。一昨日の朝刊が、第137回の受賞者、諏訪哲史さん(37)(受賞作「アサッテの人」)の喜びの表情を伝えていた◆あせってはいけません。牛になって、根気よく人間を押すのです。火花ではなく…。またひとり文壇の登竜門をくぐり抜けた若い才能に、泉下の鬼才は師直伝の言葉を語りかけているだろう。
(2007年7月20日1時32分  読売新聞)


【産経・社説】

主張】07参院選 外交・安保 国益と安全を託せるのは

 今回の参院選では、外交・安全保障は年金、消費税などに隠れてほとんど争点になっていない。しかし外交・安保は国・国民の利益や安全を左右する長期の重要課題だ。おろそかにせず、よく吟味して投票の判断材料としたい。

 外交・安保は国家の基本任務であるため、実績を誇るうえでは政権与党に有利なテーマだ。しかし同時に、失敗や誤りがあれば厳しく責任が問われる問題でもある。

 昨秋の安倍晋三政権発足時に指摘された最大の外交課題は、対アジア外交の「立て直し」だった。

 これには、安倍首相が就任直後に中国、韓国を訪問し、一気に関係改善へと流れを変えた。以後、安倍内閣へのアジア外交批判は減った。

 安倍内閣はまた、「主張する外交」を掲げた。北朝鮮の核実験には国連を主導して制裁決議を実現した。「顔の見えない日本」の返上だった。民主党の公約にある「明確な外交意思をもつ国に変える」も同じ発想だろう。

 安倍首相が麻生太郎外相と進めてきた「価値の外交」にも注目したい。イデオロギー過剰との批判もあるが、価値観の異なる中国などを意識した戦略的取り組みといえる。

 安全保障政策では、内閣府の外局にすぎなかった防衛庁を防衛省に昇格させた。当然の措置だった。民主党も賛成し、責任政党の姿勢を見せた。

 安倍政権は日米同盟だけでなく、北大西洋条約機構(NATO)や豪州との安保協力強化も進めた。役割分担の覚悟も必要となろうが、安全保障戦略上、重要な布石となる。

 日米安保について、民主党は「相互信頼に基づく強固で対等な日米関係を築く」という。一方で共産党、社民党と同様、イラクからの航空自衛隊の即時撤退を主張する。即時撤退が招くだろう混乱への言及はない。

 野党の外交・安保政策は、総じて曖昧(あいまい)で観念的過ぎる。実務を担っていない点を割り引いても、北朝鮮、中国などで厳しさを増す東アジアの安全保障環境の中ではあまりに心もとない。

 安倍政権が進める集団的自衛権の行使の可否に関する見直しは、日米同盟の正常化のために不可欠だ。外交・安保政策への評価は、現実的かつ長期的な視点が必要である。

(2007/07/20 05:56)

【主張】村上被告実刑 暴走許さぬ市場への一歩

 市場をゆがめる行為にまた一つ厳しい審判が下った。

 ライブドアのニッポン放送株買い占めにからむインサイダー取引事件で、証券取引法違反に問われた村上ファンド元代表、村上世彰被告に東京地裁が懲役2年、追徴金約11億4900万円の実刑判決を言い渡した。

 村上被告は、逮捕直前に記者会見を開き、ライブドア旧経営陣から同放送株買い増しを「聞いちゃった」と述べ、逮捕後も容疑を認めた。ところが裁判では、会見はうそだった、逮捕を自分1人にとどめるため虚偽の自白をした、と全面否認に転じた。

 判決はそんな主張を退けただけでなく、被告のこれまでの行動、考え方をも厳しく批判している。

 まず、ライブドアの行動は、村上被告がその気にさせた結果で、インサイダー情報は「聞いちゃった」のではなく「言わせた」と断じた。

 さらに、ファンドマネジャーの活動と「モノを言う株主」の活動を1人で行う村上ファンドの構造的欠陥に由来する犯罪とし、「安ければ買う、高ければ売るのは当然」という発言は徹底した利益至上主義で、「慄然(りつぜん)とせざるを得ない」と糾弾している。

 逮捕される前から、村上被告の主張が広く共感を得られなかったのは、経営改革を迫る「モノを言う株主」と利益を追求するファンドマネジャーの顔を都合よく使い分けていたからにほかならない。この点を判決が明確に指摘したのは大きい。

 加えて、逮捕前の記者会見を問題にしたい。あの会見はメディアを通した国民、投資家へのメッセージであり、極めて重いものだったはずだ。それを簡単に「うそだった」とする軽さは何なのか。フェアであるべき市場参加者として許されるものではない。

 証取法違反で逮捕され、1審で実刑判決を受けたライブドア前社長の堀江貴文被告(控訴中)は法のすき間を突いて利益を上げたことを吹聴した。堀江、村上両被告の言動は、世間に「市場主義とはそういうもの」という誤解まで生んだ。

 堀江被告に続く村上被告への実刑判決は、市場主義をはき違えた暴走行為への断罪である。こうした司法判断の積み重ねが、不公正や行き過ぎを許さぬ日本市場の健全化を促す。

(2007/07/20 05:43)

【産経抄】

 「これが法というものですか?」。懲役2年、罰金300万円、追徴金約11億円の実刑判決が言い渡された瞬間、村上世彰被告がこうつぶやいたかどうか。東京地裁は、元祖「ものいう株主」によるインサイダー取引事件を厳しく断罪した。

 ▼冒頭のせりふは、「ヴェニスの商人」のなかで、ユダヤ人の高利貸シャイロックが想定外の判決に対して吐いたもの。親友の恋を助けるために、自らの肉1ポンドを担保にシャイロックから借金した貿易商のアントニオを訴えていた。

 ▼持ち船が難破して全財産を失ったアントニオに、証文どおりの決着をせまる。その瞬間、裁判官から「血を一滴たりとも流してはならぬ」と切り返されて立ち往生する、有名な場面だ。もちろん、シェークスピアの傑作が単なる勧善懲悪劇であるはずがない。

 ▼経済学者の岩井克人東大教授の手にかかれば、経済学の教科書にもなる。たとえば、裁判は「話し合い」による和解を求めるアントニオと「証文どおり」の交換を主張するシャイロックの争いだった。

 ▼アントニオは裁判には勝ったものの、決め手となったのは、シャイロックの論理である「等価交換の原則」だ。つまりアントニオこそ、資本主義によって没落させられる、古い価値体系の象徴だという(『ヴェニスの商人の資本論』ちくま学芸文庫)。

 ▼ 「聞いちゃったといわれれば、聞いちゃったんですよね」。1年前の会見で、大きな目を見開いて熱弁をふるう姿は、すご腕ファンドマネジャーというより、シェークスピア劇に欠かせない道化役者を彷彿(ほうふつ)とさせた。村上被告の控訴により、裁判劇は第二幕に入った。願わくばその“名演技”によって、資本市場のあるべき姿を問うような場面があらんことを。

(2007/07/20 06:16)


【日経・社説】

社説1 「モノ言う株主」の仮面外された村上被告(7/20)

 「モノ言う株主」の仮面の下で「りつ然とせざるを得ない徹底した利益至上主義」から犯罪に走った——村上ファンド前代表、村上世彰被告を東京地裁は強く非難し実刑とした。

 判決で注目されるのは、村上ファンドに「組織上の構造的欠陥」があり、断罪されたニッポン放送株のインサイダー取引が「その欠陥に由来する必然的なもの」とした点だ。ファンドの監査役の助言を無視して、村上被告がファンドマネジャーの活動と「モノ言う株主」としての活動を1人で行っていた実態を判決は「構造的欠陥」と断じている。

 企業経営に規律を求める「モノ言う株主」や株式投資で利益を追求するファンドの存在意義は当然ある。だが「モノ言う株主」を隠れみのにし、裏で違法な取引によってファンドの利益のみを求めた村上被告の行為は公共性のある市場をゆがめた。

 証券取引法違反事件に臨む裁判所の姿勢は厳格になっている。ライブドア事件で前社長の堀江貴文被告ら3人が一審で実刑を言い渡されたのは記憶に新しい。先週末には大阪証券取引所元副理事長の証取法違反事件で最高裁が相場操縦罪の成立する範囲を広げる初判断を示した。

 村上被告の判決でも「市場の適正化とその重要性の高まりからして、本罪の処罰も厳重に行う必要性が高まっている」と明言した。

 個人の金融資産が貯蓄から証券投資に向かいつつある日本の証券市場でいったん不正があれば、多数の一般投資家に被害が生じる事情を裁判所は重視している。堀江被告の一審判決は、証取法の定めを「(企業の)内部情報にアクセスする手段を持たない一般投資者を保護するための重要な制度」と位置づけたし、村上被告は「一般投資家を欺き、不特定多数の損失の上に利益を得た」と指弾された。

 今回の事件は証取法が想定するインサイダー取引の類型にあてはまらない部分があった。村上被告は株価に影響を及ぼす内部情報をたまたま入手したのではなく、自らニッポン放送株の大量取得をライブドアに働き掛けて株価が上がる状況を作りだした。判決も「被告人は自らインサイダー状況を作出した。(内部)情報の被伝達者というよりも当事者性が強く、悪質」と述べている。

 証取法には「不正の手段、計画、技巧」を禁じる157条の、いわゆる包括規定がある。同条の法定刑はインサイダー取引罪より重い。村上被告が行ったことと、罪状の重さを考えれば、検察当局は157条を適用する余地があったのではないか。

社説2 さらなる人民元改革が必要だ(7/20)

 中国の景気過熱が止まらない。中国国家統計局によると、4—6月期の国内総生産(GDP)は実質ベースで前年同期比11.9%増え、1—6月期では 11.5%成長になった。輸出と投資がけん引し、通年で5年連続の2ケタ成長となる公算が大きくなったが、インフレ懸念も浮上しており、警戒が必要だ。

 高成長を引っ張る輸出は1—6月で5000億ドルを超え、貿易黒字は前年同期比84.3%増の1125億ドルに達した。通年で過去最高だった昨年の1774億ドルを大幅に上回る勢いだ。このままでは米欧との通商摩擦がさらに激化しかねない。

 建設投資も依然として高水準だ。都市部の固定資産投資(設備投資や建設投資の合計)は1—6月で同26.7%も増えた。住宅価格などが上昇、豚肉の高騰などの特殊要因もあって、昨年ほぼ1%台で推移していた消費者物価上昇率(前年同月比)は、6月に4.4%に達した。

 中国政府は引き締め策として預金準備率の引き上げなどをほぼ毎月実施してきた。インフレ懸念台頭を受け、金利引き上げなど追加策を検討するもようだ。株価の急落などにつながるとしてこれまで利上げには慎重な姿勢をとってきたが、今後はより有効なインフレ対策を迫られる。

 中国人民銀行が人民元を対ドルレートで2%切り上げてから21日で2年になる。今年5月には対ドル変動幅を1日当たり0.3%から0.5%に広げた。しかし、人民元の上昇は年率5%程度にとどまっており、輸出に歯止めはかからない。

 一方で昨年2月に日本を抜いて世界一になった中国の外貨準備高は6月末、前年同期比41.6%増の1兆3326億ドルに膨らんだ。輸出産業に配慮して人民元の急上昇を避けようと、当局が貿易黒字などで流入する外貨をドル買い介入で吸収している結果でもある。

 ドル買い介入で大量の人民元が市中に流れ込む。上海の株式市場は最近、調整色が出てきたとはいえ、過剰なマネーが株価過熱や不動産バブルにつながっている構図だ。

 カネ余りと景気過熱の沈静化にはやはり、人民元の弾力化が欠かせない。中国政府は市場を通じた為替レート形成への移行を急ぐべきだ。

【日経・春秋】(7/20)

 「月夜の晩にボタンが一つ、波打際(なみうちぎわ)に落ちてゐた」。中原中也はその時、月の光に優しい引力を感じたに違いない。「それを拾つて、役立てようと僕は思つたわけでもないが、なぜだかそれを捨てるに忍びず、僕はそれを、袂(たもと)に入れた」

▼人には普段気づかないでいた価値にふと目覚める瞬間がある。月光にはそんな人間の眠った感性を揺り起こす働きがあるのかもしれない。アポロ11号が月に着いたのは38年前のきょう。アームストロング船長はその強い光をじかに全身で浴びた最初の人類だった。拾った月の石を宝物のように握って帰還した。

▼インサイダー取引で実刑判決が下った村上世彰被告には、山林に分け入りタケノコや山菜を見つける趣味がある。市場が見過ごす企業価値にいち早く気づき、投資家の先頭に立つファンド本来の役割にも通じる。だが自分の手で宝を埋め込んでいたのでは、価値を掘り出す自称「プロ」の名が泣こう。ボタンや石を大事に思う心とは程遠い。

▼「月の石」は今は博物館の土産物屋でも売っている。アームストロング氏は政界や商売を避け、農園で静かに暮らしている。おそらく自分だけの本物を家に大切に置いているのではないか。中原中也は詩をこう結んでいる。「月夜の晩に拾つたボタンは、どうしてそれが捨てられようか?」


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