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2007年7月26日 (木)

7月26日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月26日朝刊)

[魚市場の統合]経営改善は待ったなし

 那覇市の泊漁港構内に、隣接して二つの卸売市場がある。一つは県漁業協同組合連合会、もう一つは那覇地区漁業協同組合が開設したもので、それぞれ別個に運営している。この二つの卸売市場を統合し、経営の基盤強化を図っていくことになった。

 地区漁協と連合会の事業効率化は大きな課題である。コスト削減によって経営の健全化を図り、その果実を「水産物の安定供給」「漁業者へのサービス向上」につなげてほしい。

 漁業を取り巻く環境は厳しい。県内の漁業就業者は、一九九〇年の五千五百三十人に対し、二〇〇五年は四千三百人に減少した。六十五歳以上の男性就業者は千三百四十人で、全体の三割余り。高齢化が進み、後継者不足が目立つ。

 開発で漁場が失われたり、赤土流出によって漁場が汚染されるなどの環境悪化も進んだ。「捕る漁業」から「つくり育てる漁業」「資源管理型漁業」への転換は、持続可能な漁業のために避けて通れない。

 漁獲量が減少し、魚価は低迷続き。それに追い打ちをかけるように燃料費が高騰している。水産業の健全な発展のために取り組まなければならない課題は多い。

 地区漁協や連合会の事業の在り方、組織の在り方を見直し、効率性、健全性を確保することもその一つだ。

 生鮮魚介類の卸売市場は県漁連、那覇地区漁協が開設する規模の大きな「地方卸売市場」と、各地域の漁協が運営する小規模な「その他卸売市場」に分かれている。

 県水産公社が運営していた「地方卸売市場」は、取扱高の減少で現在閉鎖状態にある。県漁連、那覇地区漁協の「地方卸売市場」もやはり取扱高の減少傾向が続いており、市場統合による経営改善が求められていた。

 県漁連、那覇地区漁協によると、九月に両者が共同出資(出資比率は県漁連70%、那覇地区漁協30%)して有限責任事業組合を設立し、十月にも同組合が運営する新市場をスタートさせるという。

 人件費や維持管理費の削減など業務効率化によるコスト削減や価格の安定が期待されている。

 昨年六月の役員改選で会長に選任された県漁連の下地敏彦会長は、県農林水産部次長を務めるなど行政経験が長い。

 今回の市場統合が、漁協の合併を含む組織再編を加速させることになるのかどうか。一筋縄ではいかない問題に下地会長がどう対処するか、手腕が試されてもいる。

[肥満対策]注目したい県警の試み

 「県警ダイエット作戦」。二十四日付の本紙朝刊一面をみてびっくりした読者も多かったのではないだろうか。

 県警が全職員の約三割に相当する肥満の警察官ら約八百五十人に一日の摂取カロリーや運動量などの記入を義務付け、所属長に報告させる試みを始めた。

 事件の容疑者を追い、事故の処理に当たる。警察官といえばそんなイメージが強いだけに、約三割が肥満という数字にもちょっとびっくりする。

 事件・事故はいつ発生するか分からない。警察官の生活は早朝や深夜の交代勤務で不規則になりがちだ。沖縄は男女とも肥満率が全国一を記録し続けた「肥満県」であり、県警だけの問題ではないはずだ。指導する県栄養士会は県警をテストケースに、ほかの職場や団体にも広げたい考えだ。

 背景には二〇〇八年四月から始まる生活習慣病予防のための国の特定健康診査制度があるようだ。国民健康保険、被用者保険など保険者ごとに受診目標値を設定し、達成できなければ補助金が大幅にカットされる。

 健康、健康と強迫観念にとらわれたような言い方には異論もあろうが、長寿の島・沖縄が危機に瀕している。食をはじめ豊かに見える私たちの生活が実際はいかに健康から懸け離れたものになっているか。皮肉としかいいようがない。

 市を挙げて肥満率低下を目標に掲げる「健康なは21」推進市民大会で、市医師会生活習慣病検診センターの崎原永辰副所長が披露した「働く人の健康点検十カ条」が面白い。

 俳句形式でこんな風だ。(1)早起きで余裕をもって朝ごはん(2)ウオーキング目標一日一万歩―。食生活と運動の重要性を強調したものだろう。ただ、それには生活習慣を改善しなければならず、実行はなかなか簡単ではない。

 肥満は生活習慣病のもとである。県警で終業後にウオーキングしたり、早朝に体操したりする部署が出てきたという。九月には効果を検証する。県警の取り組みに注目したい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月26日 朝刊 1面)

 選挙で金もうけができる―。当世の政治家とカネの関係を揶揄しているわけではない。公選法に触れず、警察の厄介にならない商売が広がっている。

 「選挙セール」。投票した人が選管から「投票済証」を受け、賛同する商店街が割引サービスを提供する。四年前の衆院選。愛知県内で初めて実施され、市民運動的に全国に浸透してきた。

 低下傾向が続く投票率の回復を狙ったもので、特定の政党や候補者とは一切かかわらないことが前提だ。投票者が増えればおのずと商店街も利用される。「金もうけ」の表現は不適切だったが、あるNPO法人が新宿区の商店街を調査したアンケート結果に「経済効果」も裏打ちされる。

 セール告知で「投票意欲を高めた」が四割、商店街を利用していない人の七割が「購買意欲が高まった」と回答している。東京に隣接する埼玉県戸田市は商店街の空き店舗が目立つ。二年前の総選挙で同セールを取り入れ、七百人近い人が利用した。

 投票率は県全体より三ポイント高かった。二十九日の参院選には前回を上回る店が賛同する。市商工会の園田耕三さんは「選挙への参加は『地元』を意識し、見つめ直す機会になる。それが故郷の街づくりにつながる」と言う。

 恒常的な「棄権組」が、損得勘定で投票するケースもあろうが、自身の投じた一票の行方は誰でも無関心ではいられないはず。歩みは小さいが、可能性も含んでいる。(石川達也)


【琉球新報・社説】

枯れ葉剤調査 政府の拒否姿勢は住民軽視

 うやむやにして幕を引きたい。米軍北部訓練場での枯れ葉剤散布問題に対する政府の対応を見ていると、そのようにしか見えない。那覇防衛施設局は、平和運動センターなど3団体の実態調査要請に対して24日、これを拒否した。枯れ葉剤に含まれるダイオキシンは発がん性のある猛毒だからこそ、県民は不安を持ち、調査を求めているのだ。政府の拒否姿勢は、住民軽視と言われても仕方ない。
 政府に調査を求める理由はいくつかある。
 まず、前立腺がんの後遺症を認定された元米兵が枯れ葉剤散布を証言した米退役軍人省の公式文書と、米政府回答の矛盾である。米側は事実関係を照会した防衛施設庁と外務省に対して「(枯れ葉剤が)使用、貯蔵されていたということを示す資料、証言や記録はない」と回答した。米退役軍人省の公式文書と明らかに矛盾する。
 なぜ政府は米側にその点を追及しないのか。元米兵の関係者に対して、確認を求めることを検討してもよいのではないか。このような矛盾を見せつけられては、県民は不安だけでなく、日米両政府に対して不信感を抱く。
 もう一点は、国指定天然記念物のリュウキュウヤマガメや県指定天然記念物のナミエガエルなど一部のは虫類や両生類に、ただれなど異変が観察されていることである。枯れ葉剤散布との関係は断定できないが、ベトナムでの枯れ葉剤の住民への深刻な影響を考えれば、疑いを持たざるを得ない。
 政府が調査を拒否する理由の1つとして挙げているのは県が実施した水質検査のデータである。2004年、05年度に北部訓練場周辺の新川川を調べた結果、環境基準値を超えるダイオキシン類は検出されなかった。しかしこれで不安が一掃されたわけではない。防衛施設庁環境対策室によると、基地内土壌や水質については調査されていないからである。
 動物の異変について、環境学の専門家は、影響がある場所とそうでない場所とを比較するため汚染の実態を調べることが重要だと強調している。指摘の通りである。
 環境省は来年度から約10万人の子供を対象に、ダイオキシンなど環境中の有害物質が発育に及ぼす影響について疫学調査に乗り出す。
 これほど有害物質対策を重要視しているのに、なぜ枯れ葉剤散布問題の実態調査を拒否するのか。深刻な影響が疑われる事例が目の前にある。まず、そこに手を付けることが先決であろう。
 北部訓練場の土壌にダイオキシンが残留しているのではないか。米軍は今も、枯れ葉剤を保管しているのではないか、動物の異変は関係ないのか。政府は徹底的に調査し、明らかにするべきだ。

(7/26 9:54)

京都議定書 計画先送りは事態悪化招く

 地球温暖化に伴う深刻な影響はこれまで何度も指摘されている。「15億人もの人に水不足や水害の恐れがある」(国連環境計画=UNEP)、「北極海の海氷が今世紀後半までに消滅する」(気候変動に関する政府間パネル=IPCC)などである。しかも、温暖化のスピードは想像を超えるものだ。
 これらの予測を考えれば、悠長に構えてはいられないはずだ。しかし日本政府の対応は心もとない。
 先進国に温室効果ガスの排出削減を義務付けた京都議定書は2008年から約束期間が始まる。本来なら、日本が率先して目標達成の実現性を高めなければならないはずなのに、環境、経済産業両省の審議会の合同会合は25日、「対策の進ちょくは極めて厳しい状況にある」とする中間報告素案を公表した。審議会は、議定書目標達成計画の見直し作業を行っているが、素案では、温暖化対策上で重要な化石エネルギー依存から脱却するための施策について踏み込んだ記述を避けた。
 議定書で日本は、08年から12年までの平均で、1990年レベルから温室効果ガス排出を6%削減することになっている。だが、05年度の排出量は逆に悪化し7・8%も増えた。
 現状を踏まえれば、新エネルギーへの転換は急務であるが、素案ではその方策が示されていない。そこからうかがえるのは目標達成への意欲の弱さである。環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は素案について「業界の反発が強い電力などエネルギー部門の対策や排出量取引に踏み込むことを避け、当たり障りはないが効果もあまり期待できないものを羅列しているにすぎない」と指摘している。
 国民へのアピールもさらに強化するべきだろう。07年版環境・循環型社会白書は、省エネルギー技術の開発、普及を強調している。例えば省エネ型の家電製品に切り替えることで一世帯当たりの二酸化炭素排出量を最大4割以上削減できるという試算を示した。
 先送りすれば事態は悪化するばかりだ。政府、国民挙げて目標達成へ突き進むしかない。

(7/26 9:53)

【琉球新報・金口木舌】

 彼を見てジャズの歴史に名を残すチャーリー・パーカーとマイルス・デイヴィスの出会いを思い浮かべた。彼とは日野皓正クインテットで活躍する阿嘉島出身のドラマー、和丸(本名・川井和丸)さん
▼「和丸、上がってこい」。2005年8月、那覇市民会館大ホール。熱い演奏を繰り広げていた日野さんが突然、和丸さんを舞台に呼び、初共演した。和丸さんは14歳
▼パーカーとマイルスの初共演は1944年の夏。その時、マイルスは18歳。翌年秋にはパーカーのクインテットに参加する
▼今年春。日野さんは中学卒業を控え、東京での活動を望む和丸さんをクインテットに招いた。そして16歳の誕生日の4月5日、横浜で初ステージを踏んだ
▼和丸さんは今、演奏ツアーで全国を駆け巡る。東京では一人暮らし。仕事のない日は部屋にこもって音楽を聴いているという。6月には久しぶりに帰郷。「やっぱり島はいいな」と感じた。8月5日に那覇、7日には石垣でライブを予定している
▼パーカーは天才的なアドリブで名演奏を遺(のこ)し、マイルスは「帝王」として90年代までジャズを牽(けん)引(いん)した。パーカーの愛称は「バード」(鳥)。和丸さんはジャズの荒波へと飛び立った。

(7/26 9:44)


【東京新聞・社説】

三越と伊勢丹 『退潮』を止められるか

2007年7月26日

 百貨店業界四位の三越と五位の伊勢丹との提携交渉は、同業界の深刻さを物語る。消費不振の長期化と今後の経営の難しさは誰の目にも明らかだ。消費者の支持をどう取り戻すかが再生の鍵だ。

 東京・日本橋の三越本店。提携ニュースが流れても店内の落ち着いた雰囲気は変わらない。仕立ての良い紳士服姿や涼しげな和服の女性客が目立つ。今回の報道について同社は「記事は憶測に基づくもの」と否定する。

 一方、新宿の伊勢丹本店。建物は古く三越本店と同様、改修工事が行われている。客層は若い女性が目立つ。夏休みに入ったこともあり地階の食品売り場は子ども連れでにぎわっていた。同社でも「そうした事実はない」と全面否定である。

 まだ流動的な面があるとはいえ、両社の提携は自然な流れだ。

 百貨店業界の低迷は一過性のものではない。売上高はこの十年間、ずっと減り続けてきた。消費不振に加え少子化の進行、家電や衣服など専門店の台頭などが背景にある。二〇〇三年にそごうと西武百貨店が、今年九月に大丸と松坂屋ホールディングス、同十月に阪急百貨店と阪神百貨店がそれぞれ経営統合するのも、厳しい情勢に対処するためだ。

 今回の提携を「強者連合」と評する声がある。長い歴史を誇る三越は名古屋など全国に店舗をもつ老舗で、富裕層や中高年層に強い。伊勢丹は首都圏を中心に展開し、とくに若者たちの支持を得て業績は好調だ。補完関係が成り立つため提携メリットは大きい。経営統合となれば売上高一兆五千八百億円もの国内最大の百貨店グループが誕生する。

 だが実情は「生き残り」のための唯一の道と言える。三越の〇七年二月期の連結決算は減収減益であり、現在経営立て直しに懸命だ。伊勢丹にしても今年三月期の連結決算は増収増益だったが、〇八年三月期は減益予想となっている。ずっと勝ち組でいられる保証はない。

 今後は提携や統合に向けた細部の詰めが重要だ。持ち株会社方式が有力視されているが人事などをしっかりと詰めてほしい。過去には社長人事でたすき掛けを続けたり、合併後に不祥事が発覚して社内が混乱したなど不評を買ったケースもある。

 小売業界は競争が激しい。JR東日本は駅構内で「エキュート」事業を展開し、東京メトロも「エチカ」を始めるなど他業界からの参入が目立つ。そうしたところに負けない斬新なサービスを開発し、消費者が「買う楽しさ」をしっかりと体験できる百貨店を目指してもらいたい。

教育問題 実情踏まえた論議を

2007年7月26日

 参院選で各党とも教育問題を重要課題に掲げているが、論争は高まっていない。各党、各候補者の取り組み方は投票の際の重要な基準だ。教育に対するそれぞれの主張にじっくり耳を傾けたい。

 安倍晋三首相は政権の主要課題に憲法改正と並んで教育改革を挙げ、教育基本法や教育関連三法の改正を成し遂げた。自民党は参院選での公約に「教員免許更新制や不適格教員を教壇に立たせないシステムの円滑実施」などを掲げている。

 民主党もマニフェストで「教育への財政支出五割増を目指す」とし「公立学校は保護者、地域住民、学校関係者などが参画する『学校理事会』が運営」とうたう。

 教育関連三法改正では教員免許の更新制が導入され、教育委員会への国の関与を可能にすることが盛り込まれた。ことしは全国学力テストも復活した。教育を取り巻く環境は大きく変化している。

 自民党は「幼児教育の無償化を目指す」とし、民主党は「公立高校の授業料などを無料」といい、社民党も「高等教育の無償化を目指す」とする。子育てまで広げると、児童手当を公明党は「対象を中学三年まで引き上げる」、共産党は「小学六年まで月一万円に倍増し、十八歳まで支給を目指す」と訴えている。

 無償化や手当拡充は聞こえがいいが、財政的裏付けが必要となる。費用がどれだけで、どうやって工面するのか、各党の公約やマニフェストからは読み取りにくい。

 有権者が聞きたいのは現場の実情を踏まえた議論だ。いじめはなくならず、学校に理不尽な要求や抗議をする親「モンスターペアレント」が増えている。学校や先生任せにしておいていい問題ではない。

 学力問題の関心も高い。自民党は「『確かな学力』を約束」といい、教育再生会議は「授業時間の10%増と土曜授業の復活」を提言した。ゆとり教育の転換を明確に打ち出している。時間増で学力向上となるのか、もっと議論が必要だ。公明党は「小学校で英語教育を必修化。中学卒業段階で日常英会話ができるようにする」という。期待させる公約だが、可能か。

 安倍政権の進める教育政策の特徴は競争原理の導入と言える。東京都足立区独自の学力テストでは学校側の不正行為が発覚した。教育への競争原理導入の是非は候補者が大いに語らなければならないテーマだ。

 有権者は各党、各候補者の主張をじっくり聞き分け、投票に行きたい。そして、選挙後の取り組み方も見守っていかなくてはならない。

【東京新聞・筆洗】2007年7月26日

 すぐれた書評家でもある歴史学者加藤陽子さんは近著『戦争を読む』(勁草(けいそう)書房)で「まずは小説家が気づき、つぎに学者が名を与えた」という名言を発してうならせる▼加藤さんは、作家村上龍さんが『希望の国のエクソダス』(文春文庫)で「この国には何でもあるが、希望だけがない」と語り、社会学者山田昌弘さんが『希望格差社会』(ちくま文庫)で、“負け組”による反社会的犯罪やひきこもりの多発を予見した例をひく▼歴史家の役割は「なぜ我々の父祖が、歴史と国家と自己を一体のものとする感覚を身にまとい戦争を支持していったのか、そのプロセスをグロテスクなまでに正確に描きだすことだ」という。とすれば、従軍慰安婦問題で「広義」「狭義」の別を持ち出し、米議会の反発を買った日本政府の及び腰はいただけない▼一九五四年に「驟雨(しゅうう)」で芥川賞を受けた吉行淳之介さんが亡くなって、二十六日で十三年になる。晩年をともに暮らした宮城まり子さんが、入手困難な吉行作品十二編をまとめて『宮城まり子が選ぶ吉行淳之介短編集』(ポプラ社)を出した▼収録された「驟雨」は、娼婦(しょうふ)と青年の性愛を描いて戦後すぐの若者の存在不安を描く。吉行さんが描いた女性の性労働のありようは、明治の“からゆきさん”に始まる性の商品化、国際化の流れにつらなる▼民俗学者谷川健一さんは近著『明治三文オペラ』(現代書館)で、性愛の自由なき戦場の非日常の中で、兵隊と慰安婦が示した連帯と憎悪に、古来の“巫娼(ふしょう)”の姿を重ね、庶民の哀れを見る。


【河北新報・社説】


07参院選を問う 地方再生/スケール大きな公約を示せ

 国の官僚が支えてきた明治以来の中央集権体制は制度疲労を起こしていると、各方面で言われて久しい。しかし、脱中央集権にふさわしい地方の姿というものが一向に見えてこない。

 参院選では各党が「活性化」や「分権」をキーワードに、地方に熱い視線を投げかける。

 「ふるさと支援税制の検討」(自民)「個別補助金廃止と財源保証」(民主)「地域間財政格差の是正」(公明)「地域社会の崩壊に歯止め」(共産)「地域再投資法の制定」(社民)「地方に2兆円の新税源確保」(国民新)―といった具合だ。

 しかし、公約の列挙や個別的な政策展開では明日を切り開けないほど地方は病んでいる、というのが私たちの現状認識だ。

 東京・六本木のにぎわいと地方小都市のシャッター通りの明暗は、格差の重みに沈む地方の現実を端的に表している。

 地方の現状をどうしたらいいのか。それを考える上で、昨年末の地方分権改革推進法成立が分権改革のターニングポイントになり得ることに注目したい。

 法成立前の国と地方財政の三位一体改革では、一定の補助金削減と地方への税源移譲はあったが、地方交付税が大幅に削られて地方に強い不満を残した。

 法成立後はこうした反省を踏まえて国から地方に抜本的な権限と税財源を移譲することを柱に据え、本格的な分権時代に道を開くことが求められる。

 こうした流れの変わり目でまさに参院選が戦われている。

 各党はこの本格的な分権時代への道しるべとして、「地方の将来をこう描く」「地方と国の関係をこう変える」といったスケールの大きい分権構想と体系的で立体的なマニフェストを有権者に示すことが大事である。

 国と地方の仕事量はおおざっぱに言って4対6なのに、税源の配分比率は6対4とされる。この税源配分比率を少なくとも5対5に変えるための税制改革が必要だ。地方への十分な税財源移譲を前提とした補助金政策の見直しも避けて通れない。

 道州制導入の是非は別として、基礎自治体や広域自治体の枠組みの再考を迫られてくるかもしれない。地方分権に対応した中央省庁の権限や仕事の見直しは、国と地方の統治システムの大幅な組み替えを意味する。

 示すべき分権構想・政策はこれらの課題を織り込んだ総合性がなければ地方の共感を呼ばないし、霞が関へのインパクトを欠いたものになるだろう。

 05年の郵政解散・総選挙で小泉自民党は郵政民営化の背景に「スリムな国家」という目指すべき国家像を据え、少子化対策などのマニフェストを並列的に示すにとどまった民主党をのみこんで大勝したと言われる。

 目下の参院選で各党は、具体的な地域活性化対策に知恵を使いながらも、骨の太い「目指すべき地方像」を示すべきだ。

 29日の投票日まで選挙期間は残り少ないが、各党は目指すべき地方像に基づく「地方再生・分権ビジョン」を掲げ、その優劣を競えばいい。そして、その論戦にぜひ、多くの有権者を巻き込んでもらいたい。
2007年07月26日木曜日

【河北新報・河北春秋】

 外来植物はなぜ日本固有種を駆逐するのか。繁殖力や成長速度が勝るだけではなかった。「アレロパシー(他感作用)」という強力な“武器”を駆使しているらしい▼化学物質を放出し、周囲の植物の生育を抑制する作用。昆虫や微生物を寄せ付けない効果もある。農業環境技術研究所などが小笠原諸島の父島で行った調査で、外来種がはびこる大きな原因はこの作用の強さだと分かった

 ▼ 島の中心的外来種であるギンネムは他の植物の成長を92%も阻害した。島だけの現象ではない。「全国各地の外来種の分布拡大にアレロパシーが関与している可能性は高い」と同研究所上席研究員の藤井義晴さん▼ミズヒマワリやボタンウキクサ、オオブタクサなど特定外来生物に指定された12種はいずれもこの作用が強力。河川敷でよく見かけるセイタカアワダチソウも同じだ

 ▼この作用が強い外来種の特定が進めば、移入防止や早期防除などの対策が効率よく進む。藤井さんによると、同様の力を持つ在来種を探し、外来種を封じ込める方法もある。ソバやシソなどが有望だという▼アレロパシーには利点もある。夢が膨らむのは農業への活用。安全性が高い「天然の農薬」として、除草や防虫などに生かせる。植物の不思議な力は、環境や健康を守る強力な武器にもなる。

2007年07月26日木曜日


【京都新聞・社説】

自動車生産再開  死角を突かれた世界一

 世界一の生産台数を誇るわが国の自動車産業界が地震で死角を突かれた。
 新潟県中越沖地震で被災した部品メーカーの生産ストップで国内自動車メーカー十二社すべてが生産休止に追い込まれたが、二十五日から本格的な生産を再開した。約十二万台の減産で過去最大の影響が及んだ。他産業にも大きな教訓を残したといえよう。
 十六日の地震でリケン柏崎事業所が被害を受け、自動車エンジン用ピストンリングの生産ができなくなった。
 国内シェア約50%で全メーカーに供給していただけに各社は部品不足で次々に操業停止に陥った。各社ごとに共同開発した仕様部品で代替生産ができない。自動車各社はリケンの復旧に”呉越同舟“で応援要員を派遣、ようやく生産再開にこぎつけたが、この地震の影響は阪神大震災のケースを上回る。
 トヨタ自動車が考案して世界に広がった生産システム「カンバン方式」の弱点を露呈した形だ。自動車部品は二万点から三万点に達するが、メーカー在庫を極力減らしてコストダウンするメリットが今回は裏目に出てしまった。
 小さな部品があっという間に巨大な自動車産業をマヒさせたが、こうした圧倒的に高いシェアをもつ部品メーカーは電機業界はじめ他産業でも多い。
 コスト削減と開発競争の激化で調達先の集中傾向は加速する一方で「リケンショック」は人ごとではない。海外拠点を含めリスク分散の見直しがいる。
 今回は生産方式の死角がクローズアップされて自動車業界の意外なもろさをさらしたが、このほかにも業界全体として懸念すべき課題が多い。
 二〇〇六年の国内生産台数は千百四十八万台で十三年ぶりに米国から世界一の座を取り戻した。これは輸出の好調によるもので、軽自動車を除く国内販売台数は三年連続で減少、二十九年ぶりの低水準に落ち込む不振が続いている。
 今年も上半期(一-六月)は前年同期比10%以上の落ち込みで、軽自動車も四年ぶりに前年同期を下回った。上半期に初めて世界一を達成したトヨタ自動車も国内は苦戦しているのが実態だ。
 国内不振の原因は景気動向やガソリン高騰などの影響もあるが、最近では車社会の成熟化や若年人口の減少など構造的な要因が指摘されている。
 車を単なる足として長期間乗り続けるようになり、なかなか新車に飛びつかない。薄型テレビや携帯電話などIT(情報技術)関連の支出はじめ消費構造の変化も影響していそうだ。「車離れ」の実態を正確に把握する必要があろう。
 生産拡大とコスト削減のあまり品質管理がおろそかになってきたとの指摘は見過ごせない。韓国や中国の追い上げもある。日本経済を支える基幹産業だけに世界一に慢心することなく足元を見つめ直して競争力を維持してほしい。

[京都新聞 2007年07月26日掲載]

警察白書  暴力団の資金絶つには

 警察庁が二〇〇七年版警察白書を公表した。
 「暴力団の資金獲得活動との対決」と題した特集で、経済回復が進む中、暴力団が企業活動を装って証券取引の分野にまで進出している状況を分析した。
 また一部暴力団が経済的基盤を強固にする一方、上部団体への上納金に困り、過激行動に走る動きに警鐘を鳴らした。
 暴力団の“持てる者”“持たざる者”への二極分化は、暴力団対策法の効果でもある半面、市民社会の安心・安全を大きく揺るがすものだ。
 暴力団の資金獲得活動は海外へも広がりを見せるが、まずは警察、関係機関、一般企業などが連携強化し、足元の資金源を枯渇させることが第一だ。
 白書の暴力団特集は五回目で、資金獲得活動について「日本経済の健全性を損ない、いずれは国全体の利益が侵奪されかねない」と懸念した。
 少々、オーバーな表現のように受け取れるが、白書の内容は極めて深刻な事態であることを示している。
 暴力団はバブル期に元構成員に建設業や不動産業を行わせる傾向を強めたが、近年でも一定の関係を持っている建設業者があることを指摘した。
 土木・建設業者へのアンケート結果では、三割以上が過去一年以内に暴力団とみられる部外者から不当要求を受けたと答えた。
 中身は機関誌購読が四割で最多、次いで下請けへの参入、資材・プレハブの納入、自販機設置・弁当販売強要と続く。あの手この手で執拗(しつよう)に資金を得ようとする様子が目に浮かぶ。
 また三割以上が「暴力団と関係ある建設業者がいると聞いた」とした。バブル期の影響はいまだに解消されていない。
 白書は近年、暴力団から資金提供を受けて活動する「仕手筋」や「事件屋」などが存在することも示した。
 業績が悪化した企業に乗り込み、仮装増資や株インサイダー取引で“稼ぎ”、一部を暴力団に還元しているのだ。
 こんなグループにはびこられると、国内はもとより海外からの信用まで失ってしまう。手をこまねいていられない。
 今後の課題として「刑事責任の追及以外に組織中枢に経済的打撃を与え、組織維持を無意味とする制度について検討が必要」と分析した。
 警察の肝いりで土木・建設業者も、証券業界も、「行政対象暴力」に悩む自治体も立ち上がってはいる。
 だが長崎市長射殺事件や、愛知県の立てこもり事件をみても、銃摘発に効果をあげているとは思えない。寡占化した暴力団組織は抗争をさけ、こうかつに資金を獲得しようと狙い続けている。
 暴力団追放は市民の願いだ。ともに立ち上がるには、警察が、一人一人の市民をしっかり守る気概を見せてこそだ。それでこそ白書の指摘は生きてくる。

[京都新聞 2007年07月26日掲載]

【京都新聞・凡語】

参議院選挙投票日近づく

 参議院選挙の投票日が近づいて「選挙のジンクス」とやらがかまびすしい。今年は、十二年に一度、統一地方選と夏の参院選が重なり合う「亥年(いどし)選挙」にあたる。この年の参院選は投票率が下がるそうだ▼京都選挙区を見ると過去最低の一九九五年(40・71%)が亥年だった。地方議員が自らの選挙で疲れ、その手足となる後援会員の動きも鈍るというわけか▼投票日が晴れれば投票率は低くなるというのも選挙通の常識らしい。確かに過去二十回の参院選では「雨のち曇り」「曇り」の投票日が平均して高めだった。今回も「夏休みで行楽日和」なら投票率は下がると見る向きもある。有権者は侮られてはなるまい▼株価はどうか。自民党が惨敗した九八年は一カ月後に下落。ただし、同党が大勝した二〇〇一年も下落した。選挙結果がそのまま反映するほど市場は単純ではないということか▼選挙前の国会会期延長は、八九年と九八年に与党に不利な結果が出た。今度は「吉」と出るか、「凶」と出るか。消費税に触れるのも鬼門とされる。が、こちらは重要政策テーマだ。与党も野党も、税制論議を避けてもらっては困る▼かつて、候補者が選挙カーの道順でも縁起を担ぐと聞いたことがある。選挙にまつわるジンクスや縁起は数々あろうが、審判を下すのは有権者。これまでの傾向と異なる選挙となるのか、どうか。

[京都新聞 2007年07月26日掲載]


【朝日・社説】2007年07月26日(木曜日)付

年金の制度―今のままか、抜本改革か

 「今の仕組みで本当に百年安心といえるのか」と民主党が攻めれば、与党は「民主党案は絵に描いた餅で、無責任だ」と切り返す。

 参院選で最大の争点である年金問題では、宙に浮いたり消えたりした年金記録の問題と並び、年金制度のあり方をめぐっても激しい論戦が続いている。

 年金の記録漏れは、政府の責任で解決するのは当然のことだ。だが、それだけで年金への信頼が得られるわけではない。本当に安心して暮らせる年金にするためにはどうしたらいいのか。そのための制度設計も問われているのだ。

 与党が勝てば、いまの制度を後押しすることになり、逆に民主党が勝てば、見直しを迫ることになるだろう。勝敗の分かれ目が、制度論議に大きな影響を与えることは間違いない。

 一口でいえば、与党はいまの制度の枠組みを維持したまま、保険料を固定し、年金水準を削減しようとしている。自ら「百年安心プラン」と名づける。

 民主党は年金を一元化し、所得比例年金と最低保障年金の2階建てにする。いわば「最低保障プラン」だ。

 だが、それぞれ一長一短がある。

 与党の基本的な考え方は、3年前の政府の改革で乗り切れるということだ。

 厚生年金の保険料は18%余りまで引き上げて固定する。少子高齢化が進むにつれ、給付を削る。これで現役世代の平均収入の50%余りの年金水準を維持する。

 しかし、少子化は早くも政府の予想を超え、制度の前提が崩れつつある。

 給料から天引きされる厚生年金と違い、国民年金(基礎年金)の保険料は徴収率が低迷している。社会保険庁を解体して非公務員型の公法人にしても、徴収率が劇的に向上するとは思えない。

 3年前の改革で、09年度に基礎年金の国庫負担を3分の1から2分の1へ引き上げることになった。消費税の引き上げが想定されたが、安倍首相は明言を避けている。実現できるか心配だ。

 民主党案はスウェーデンを手本にしたもので、4年前の総選挙から掲げている。厚生と共済だけでなく国民年金も統合する。1階部分の最低保障年金は税で賄うため、保険料の未納はなくなる。

 問題はその財源だ。消費税を全額充てる。消費税のうち地方へ回していた分は補助金を削って賄う。だが、補助金の多くは医療や介護などが占めており、他の福祉がしわ寄せを受けかねない。

 3年前の参院選では、財源として、新たに年金目的消費税を掲げた。これに比べ、説得力に乏しい。

 2階部分の所得比例年金では、自営業者らの所得もつかむ必要がある。それには納税者番号制が欠かせないが、今回のマニフェストでは消えてしまった。

 年金制度は政権が交代するたびに変えるわけにいかない。しかし、将来をにらんで、どちらの制度設計がいいのか。有権者が見定めるには、絶好の機会だ。

原発の損傷―調査に時間を惜しむな

 傷は、そこまで及んでいたのか。

 新潟県中越沖地震の直撃を受けた東京電力柏崎刈羽原子力発電所で、6号機の原子炉建屋の天井クレーンに破損が見つかった。

 6号機は定期点検中だったが、運転中なら核反応が進む炉の真上でトラブルが起こったことになる。そう考えると、改めてぞっとした。

 東京電力によると、壊れたのはクレーンを移動させる部分に限られ、この破損によって300トンを超えるクレーンそのものが下に落ちることはないという。

 だが、たとえそうであっても、軽く見てはいけない。

 この破損は、建屋の天井付近の揺れの激しさを物語っている。一見しただけではわからない傷やひずみが、クレーンの本体や周りに発生しているかもしれない。6号機だけでなく、別の原子炉のクレーンで似たようなことが起こっている恐れもある。

 原発にある構造物は耐震設計上、重要度ごとにA~Cクラスに区分されている。天井クレーンはBだった。

 しかし、原発のような巨大システムでは、周辺機器の損傷が回りまわって心臓部のトラブルにつながりかねない。

 重要度がそれほど高くないとされる個所の異状も、つぶさに調べ上げる必要がある。そのうえで、最悪の場合には、どんな連鎖的な被害が起こりえたかまで考えなければならない。

 今回、地震の発生直後にわかったのは、変圧器の火事だった。その後、放射能を含む水が外部に漏れるなど、60件を超える被害が次々に明らかになった。さみだれ式に見つかるには理由がある。

 原発は火力発電所や工場とは異なり、危険な放射性物質を扱っているので点検に手間がかかる。クレーンの破損も、周りの放射能汚染を除去した後に専門家らが近寄って気づいたという。

 今後、東電は原子炉の釜ともいえる圧力容器のふたを開けて、中の様子を調べる方針だ。圧力容器内の点検は、被曝(ひばく)の危険がきわめて高いので、カメラを遠隔操作するなどして進めることになる。

 だが、圧力容器の点検作業のためにも、まずはクレーンをきちんと調べ、破損個所を修理しなければならない。

 この原発の7基すべての点検と安全確認を終えるまでには、少なくとも数カ月はかかりそうだ。

 運転再開には、地元の了解も欠かせない。会田洋・柏崎市長は消防法に基づき、所内の燃料タンクなど危険物施設の緊急使用停止命令を出している。

 今回の地震被害は、たとえ原子炉本体の異常による大事故が起こらなくても、原発には長期に止まる危うさがあることを浮き彫りにした。

 だが、時間をかけて小さな傷を拾い上げることは、破局的な災害を防ぐことにつながる。そのための稼働停止は、安全の費用と考えるべきだ。

【朝日・天声人語】2007年07月26日(木曜日)付

 明治30年代、東京の呉服業界は模様合戦にわいた。老舗(しにせ)の三井呉服店(後の三越)は京都に染め工場を構え、復古調の元禄模様に力を入れる。これに対し、より古く平安時代に想を得た御守殿(ごしゅでん)模様で押したのが、創業間もない伊勢屋丹治呉服店だった。

 伊勢屋は、この模様を柳橋芸者の総踊りで着せたほか、両国の花火大会でも宣伝した。「御守殿模様の成功により、天下の三井呉服店と張り合って高級呉服店を目指す伊勢丹の姿勢に、衆目が注がれるようになった」(伊勢丹百年史)。

 三つの世紀にわたり競ってきた三越と伊勢丹が、経営統合を視野に提携交渉に入った。実現すれば国内最大の百貨店グループになる。三越のブランドと優良顧客、伊勢丹のセンスと収益力を「袷(あわせ)の衣(きぬ)」に仕立てる策らしい。

 三越は明治38年、主要紙に「デパートメントストア宣言」を出し、日本初の百貨店になった。元禄模様の芸者ポスターに列記した取扱商品の中、「欧米流行洋服類」は世紀を経て、今や伊勢丹の得意分野である。世事は有為転変だ。

 総売上高を減らし続けるこの業界は、呉服系も電鉄系も再編の渦中にある。そごうと西武に続いて、今秋には大丸と松坂屋、阪急と阪神が統合する。昨日の敵は今日の友。勢力地図がどんどん塗り替わる、いわば「百貨領乱」の相である。

 本来の百花繚乱(ひゃっかりょうらん)は多くの才能や美が集い、競い合う様をいう。流行を争い、時代を導いた往年の百貨店がそうだった。のれん2枚を重ねて、巻き返しの模様が浮かび出るか。衆目が注がれよう。


【毎日・社説】

社説:’07参院選 公務員改革 「公」とは何かの議論がない

 安倍晋三首相が参院選の当初予定日程をずらしてまで先の通常国会で会期を延長したのは、国家公務員の天下り規制を中心とする公務員制度改革関連法を成立させるためだった。しかし、首相がそこまでこだわり、公務員改革も「戦後レジームからの脱却」の柱と力説しているにもかかわらず、世論調査を見ても有権者の関心は高いとはいえない。

 理由は年金問題ばかりに注目が集まっているからだけではないと思われる。

 成立した関連法は各省庁がそれぞれ行ってきた国家公務員の天下りあっせんを禁止し、内閣府に設置する「官民人材交流センター」に一元化することなどが内容だ。だが、具体的な制度設計は今後に委ねられ、省庁の関与をどこまで排除できるのか、骨抜きになる懸念は残ったままだ。

 参院選公示後には、センターの制度設計を検討する有識者会議が省庁の事務次官OBからヒアリング調査しようとしたところ、省庁側がOBにきちんと出席要請をしていないことが判明、25日に仕切り直しとなった。元々、今回の改革に抵抗していた省庁側がサボタージュしたと見られても仕方があるまい。

 選挙で自民党苦戦が伝えられ、省庁側には安倍内閣の行方を様子見している空気もあるのだろう。かえって安倍内閣の求心力低下を示す結果ともなっている。これではいくら首相が力説しても有権者にはアピールしない。

 もっと重要なのは、今回の関連法は一連の官製談合事件への対応策との側面が強く、硬直的な年功序列制度の見直しなど公務員制度全体をどう改革していくのか、肝心な全体像の検討を先送りしていることだ。

 安倍首相は来年の通常国会に「国家公務員制度改革基本法案」(仮称)を提出する方針で、「官僚機構を見直し、国民の信頼を取り戻す必要がある」と話す。これに異論をはさむ人はあまりいないだろう。だが、大事なのはどう見直すのかである。「全体像はこれから有識者会議で」では、やはり有権者は何も判断できない。

 小泉政権時代は「官から民へ」がキャッチフレーズだった。確かに、社会保険庁など官のモラル欠如はあきれるばかりだ。ただ、最近の介護事業の不正行為も思い起こしたい。耐震データ偽造事件の際には建築確認業務を民間に開放した是非も論議になった。私たちは、ただ単に公務員の数を減らし、官の仕事を民に移せば済むわけではないことを学んだのではなかったろうか。

 深刻なのは官であれ、民であれ、著しく公共心が低下している点にある。この「公の再構築」こそ、小泉政権後の日本の指針を考える今回の参院選の大きなテーマの一つだったのではなかろうか。

 自民党だけでない。民主党など野党も、そんな課題にほとんど触れることがないのが実に残念だ。

毎日新聞 2007年7月26日 東京朝刊

社説:原発震災 リスク判定に情報徹底公開を

 新潟県中越沖地震による破損やトラブルはどこまで及んでいるのか。東京電力柏崎刈羽原発の点検結果が明らかになるにつれ、心配が増す。

 24日には6号機の原子炉の真上にある天井クレーンの損傷がわかった。原子炉を納めた圧力容器のふたの開閉や、核燃料の搬入に使われる重要装置だ。

 クレーン本体が落下したわけではないが、原子炉建屋内は原発施設の中でもっとも揺れに強く設計されているはずの場所である。そこで損傷が起きたことは見逃せない。万が一、クレーンが落下していたら、大事故につながった恐れもある。

 どういう揺れによってクレーンの破損が起きたのか、耐震設計に問題がなかったかなど、詳しい調査が欠かせない。

 こうした重要機器の破損が、地震発生から1週間以上たたないと明らかにならないことにも、住民は不安を抱くはずだ。これまで、電力会社のトラブル隠しが問題になってきただけに、揺れの詳細なデータなど、わかっている情報は迅速に公開すべきだ。

 それにしても、東電の地震に対する備えの甘さには驚く。変圧器で起きた火災を自力で消火する体制が整っていなかっただけではない。柏崎刈羽原発に備えられた地震計97台のうち63台のデータを消失した。データ容量が小さく、本震のデータの上に余震のデータが上書きされてしまったというからおそまつだ。

 これでは、地震の影響の解析にさしつかえる。同様のデータ消失は3月に起きた能登半島地震の際にも、北陸電力志賀原発で起きている。なぜ、その教訓に学んで直ちに対応しなかったのか。油断があるとしか思えない。

 さらに、根本的な問題として、地震を起こす活断層の過小評価がある。東電は原発建設前の調査で今回の地震を起こしたとみられる断層の一部を見つけていながら、耐震評価の対象からはずしていた。国は東電のこの判断を認め、原発の建設を許可していた。

 東電と国の両方に、地震に対する評価の甘さがあった。これでは他の原発の信頼性も揺らぐ。国は昨年、原発の耐震指針を改正しているが、過小評価が見逃されるようなシステムも見直さなければならない。

 消火体制の不備にしても、地震計の不備にしても、柏崎刈羽原発だけの問題ではない。活断層の過小評価も同様であり、全国の原発の点検を急いでほしい。

 国民の間には、地震のリスクの高い場所に原発を建設すること自体への疑問もある。中部電力浜岡原発のように、想定される東海地震の震源域の真上に造られた原発もあり、不安に思うのは当然だ。

 原発に「絶対安全」はなく、新しい耐震指針も想定外の地震による重大事故の可能性を認めている。そうしたリスクがどの程度なら許容できるかを最終的に決めるのは国民だ。そのためにも、電力会社や国は原発の耐震性について徹底した情報公開を行うべきだ。

毎日新聞 2007年7月26日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:日本人の服装の洋風化はすんなり…

 日本人の服装の洋風化はすんなり一直線に進んだわけでもない。明治30年代の東京には1400以上の呉服店があり、20年前に比べ7倍近く増えている。一方で舶来織物商の方は、同じ間に190軒から120軒に減った。和装への復古ムードがあったようだ▲呉服の老舗、三越呉服店は当時、あでやかな「元禄模様」を大々的に売り出す。一方、新興の伊勢屋丹治呉服店は、柳や桜をあしらった王朝風の「御守殿模様」を宣伝した。復古ムードのなか「元禄」「御守殿」のデザイン戦略はみごとに成功した▲「三越は営利だけの観念で経営すべきでない。国家社会に貢献すべきだ」は三越呉服店の専務で、三越デパートの創始者となった日比翁助の言葉だ。福沢諭吉の教えを受けた日比は、アイデアに富んだ経営とともに、利より義を重んずる「士魂商才」の人として経済史に名を残した▲かたや「およそ本店員たるものは、居常必ず正義の観念に住すべし」と家憲の冒頭にうたったのは伊勢屋丹治呉服店の創業者、小菅丹治だ。こちらも客の心をつかむ新商法で非凡な商才をみせながら、道義や公益を重んじた経済人として知られている▲そんな百貨店草創期のユニークな2人の先人の流れをくむ三越と伊勢丹が、経営統合もにらんだ提携交渉に入るという。市場の縮小を背景に、百貨店業界の生き残りをかけた再編が進むなかでの新たな組み合わせだ。もしも統合が実現すれば、売上高で業界トップの百貨店が誕生する▲流通業の環境変化は激しく、どの百貨店も明日への道をすんなりと描けない。しかし、100年前に学ぶべきこともある。時代を読んで商機をつかむ才覚と、ブランドや信用を裏打ちする経営哲学がともに生き残りに不可欠なことだ。

毎日新聞 2007年7月26日 東京朝刊


【読売・社説】

原発と地震 原子炉の安全は確保されている(7月26日付・読売社説)

 大々的に「放射能漏れ」と煽(あお)り立てるほど、ひどい漏れが起きているのだろうか。

 東京電力の柏崎刈羽原子力発電所が新潟県中越沖地震で被災した。その状況が連日、メディアを通じて伝えられる。

 ニュースを知ったイタリアの人気サッカーチームが、予定していた来日を直前になって中止した、という。

 夏のかき入れ時を期待していた新潟県内の旅館やホテルも、キャンセルが相次いでいる。県の試算によると、風評被害による損害額は1000~2000億円にのぼる見通しだ。

 もう少し冷静になってはどうか。

 「漏れた」とされる放射性物質はごく微量だ。政府と発電所が定めた排出基準の10億分の1から1000万分の1程度でしかない。経路や物質の種類から見て、原子炉本体からの漏れの可能性は極めて低い。無論、環境への影響はない。

 大気への放出は排気スイッチの切り忘れが原因で、今は止まっている。地震による機械的な損傷と言うより、人為的ミスだった。

 原子力安全委員会は19日に、鈴木篤之委員長の所感を公表している。

 最大のポイントは、緊急時に原子炉で最も重要とされる「止める」「閉じこめる」「冷やす」、という三つの機能が正常に働いて、今も安全性は確保されている、ということだ。

 原子力施設の耐震設計と建設、さらにその考え方を定めている政府の指針は基本的に有効だった、と言える。

 ただ、特別な耐震強化をしていない排気ダクトや消火栓などの付帯設備は、大きく損傷している。原子炉の建屋内にある、耐震性をある程度強化したクレーンも破損した。こうしたトラブルは60件以上にのぼる。

 しかし、いずれも原子炉の安全性とは峻別(しゅんべつ)して考えるべき問題だろう。

 重要なことは、今回の揺れがどんなものだったかを分析したうえで、炉にどう影響したか、詳しく調べることだ。付帯設備の耐震性をどこまで確保すべきかも課題となる。

 原子炉が襲われた史上最大の揺れかもしれない、と言われる。ならば貴重な知見が得られるはずだ。それを導き出し、すべての原子炉の安全性の向上に確実に反映させてゆかねばならない。

 国際原子力機関(IAEA)も調査に来る。日本は耐震設計などの技術で世界最高水準にある。それを生かした安全性確保の努力について、しっかりと見てもらい、海外での風評被害を、ぜひ解消してもらおう。
(2007年7月26日2時1分  読売新聞)

年金業務監視委 職員の意識改革に踏み込め(7月26日付・読売社説)

 年金記録問題を解決する態勢は整った。問題は、これをどう年金制度自体の信頼回復につなげるかだろう。

 記録統合の進捗(しんちょく)状況を監視する総務省の第三者機関「年金業務・社会保険庁監視等委員会」が始動した。

 監視委は、社保庁の組織と職員の意識改革にまで踏み込むことになるだろう。それによって、社保庁の体質転換を図りつつ、新たな組織へ脱皮させることに、真の任務がある。

 拠点となる事務局は、厚生労働省・社保庁の庁舎内に置かれた。総務省が他省庁の庁舎に乗り込んで業務を監視するというのは前例がない。

 政府が今月初めに示した年金記録問題解決の「行程表」では、社保庁を解体して日本年金機構が発足する2010年1月までに記録の不備をほぼ解消する、としている。監視委は、行程表通りに国民の年金受給権が保障されるよう、社保庁の作業を厳しく監督してもらいたい。

 監視委の委員長には、葛西敬之・JR東海会長が就いた。

 年金記録問題を深刻化させた背景には社保庁の「親方・日の丸体質」がある。旧国鉄と同根だ。葛西氏は国鉄の分割・民営化で主導的な役割を果たした。その経験を生かしてほしい。

 社保庁の仕事ぶりをただ監視するだけの委員会で終わってはならない。監視委は総務相を通じ、厚労相や社保庁長官に業務改善を勧告することも可能だ。

 記録統合を行程表通りに遂行するためには、外部に任せ得る仕事は積極的に委託しなければならない。新機構が目指す業務の大胆な外部委託路線のレールを前倒しで敷く必要がある。責任感を持って年金業務に取り組む人物を見極め、抜擢(ばってき)することも重要だ。

 年金問題の第三者機関は、「年金記録問題検証委員会」「年金記録確認第三者委員会」と合わせ、三つになった。

 行政の失敗を検証し、事態を収拾し、改善策を講じる、という作業に一体的に取り組む初の試みである。その意味でも成果が問われよう。

 年金記録の不備を改善する策は打たれた。だが、これで年金に対する信頼を根本から取り戻せるわけではない。持続可能な年金制度は、どうあるべきか。財源の議論を抜きにして、説得力のある展望を示すことはできまい。

 ところが、与野党とも消費税率引き上げの議論に踏み込もうとしない。こうした政治の現状が、年金に対する不安に拍車をかけている。超党派で真剣に、年金制度の再構築に取り組む時であろう。
(2007年7月26日2時8分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月26日付 編集手帳

 江戸市中でよく目につくものを三つ並べて昔、「伊勢屋、稲荷に犬の糞(くそ)」といった。伊勢屋は伊勢出身の商人がつけた屋号である◆伊勢商人が商売上手で羽振りのよかったことが分かる。その筆頭に伊勢松坂(三重県松阪市)の人、三井高利(たかとし)がいる。1673年(延宝元年)、江戸で伊勢屋ならぬ越後屋呉服店をひらいた。三越の前身になる◆屋号の名門ともいえる伊勢屋の名は明治の世に移ってからも商人に好まれたようで、小菅丹治(たんじ)は1886年(明治19年)、東京・神田に伊勢屋丹治呉服店を創業している。いまの伊勢丹である◆遠く伊勢につながる三越と伊勢丹が、経営統合の交渉に入ったという。実現すれば、売上高で現在首位の高島屋を上回り、今年9月に経営統合する大丸・松坂屋をも抜いて国内最大の百貨店グループが生まれる◆伊勢参りの旅人が持ち寄った諸国ばなし(情報)に触れることで、伊勢商人の商売感覚は磨かれたという。時は移り、情報は洪水となって縦横に走る世を迎えた。伊勢商人の末裔(まつえい)も、老舗だからと安閑としてはいられない◆街でいま目につくものを三つ挙げるならば何だろう。犬の糞もお稲荷さんの祠(ほこら)もあまり見かけない。コンビニ、家電量販店、携帯電話ショップ…あたりか。消費の風景が様変わりしたなかで、百貨店の手探りがつづく。
(2007年7月26日1時43分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】原発損傷 対応は本質を見失わずに

 新潟県中越沖地震の強い揺れに遭遇した東京電力柏崎刈羽原子力発電所の6号機原子炉建屋で、天井近くにある車輪形の走行クレーンの自在継ぎ手の破断が確認された。直径5センチの炭素鋼製の頑丈な部品が真っ二つに折れていたのだ。

 原子炉がある原子炉建屋は岩盤上に建設されているので最も堅固なAクラスの耐震力を備えている。地震後からの被害調査で、原子炉建屋内の重要機器の損傷が初めて発見されたわけである。近くに震源を持つ地震動の激しさが改めて確認された。

 同発電所には7基の原子炉がある。地震時に運転していた4基は、安全に自動停止している。東京電力は今後、原子炉圧力容器のふたを開けて、内部の燃料の状態などを調べるが、これまでのところ、全炉で内部の損傷を示唆するような異常値は出ていない。

 破損した6号機のクレーンは、重い圧力容器のふたを外して持ち上げる作業に必要なので、6号機の炉心検査は遅れる。残り6基の原子炉については、クレーンを確かめたうえで、炉心の確認に進んでもらいたい。

 炉心の無傷が確かめられると、柏崎刈羽原発は、設計上の想定を超えた地震動に耐え抜いて、安全上重要な基本機能を維持したことが証明される。

 今回の地震で、同原発は60件を上回る被害を受けた。しかし、大部分は原発の安全性を左右しにくい耐震重要度Cクラスの施設での出来事だ。

 原発にとって、何が重要で危険な損傷なのか。一般人も、その本質を冷静に見極めることが必要だ。今回、判明したクレーンも、つり下げたものを落下させないことが安全上、求められている。クレーンは壊れたが、レールから脱輪もしていない。いたずらに人々の不安感をあおりたてる反応は、やめにしたい。

 調査が進むにつれて、思いがけない損傷が発見されるかもしれない。東京電力は情報の透明性と発表の即時性を維持していかなければならない。

 調査には十分な時間をかけたい。しかし、補修完了後には速やかな発電再開が必要だ。日本の温暖化防止対策には原子力発電の貢献が期待されている。安全上、意味を持たない長期停止は、世界に対しても誤解を与えることになりかねない。

(2007/07/26 05:04)

【主張】NHK受信料 値下げの前になすべき事

 NHKが受信料制度の創設以来初めて独自の値下げ案を打ち出した。具体的内容は明らかにされていないが、月額で最大100円の引き下げが検討されているもようだ。

 制作費の着服や乱脈経理など相次ぐ職員の不祥事で、NHKに対する世論の風当たりは依然厳しいものがある。値下げも結構だが、NHK自身が誓った肝心の内部改革は果たして着実に進んでいるのか。視聴者から問われているのはまさにその点だ。

 NHKの最高意思決定機関である経営委員会の古森重隆委員長は、値下げ案への感想を問われ、「まず公共放送としてNHKが今後何をなすべきかをはっきりさせ、その上で料金も考えていく姿勢が重要」と述べた。当然の見方であろう。

 NHKは昨年1月、経営のスリム化と企業統治の強化を主な柱とした経営計画を発表した。しかし、職員の不祥事はそれ以降も後を絶たないのが実情である。

 確かに受信料の不払いは減少の方向にある。平成17年度に6024億円まで落ち込んだ受信料収入は、昨年度に6138億円まで回復した。昨年から始めた不払い者への民事訴訟手続きも効果を発揮しているようだ。

 しかし、それでも不払い率は依然として対象世帯の3割に近い。NHKは、5年後には支払い率が70%台後半まで回復するとみているものの、これで改革は視聴者の理解を得ていると胸を張れるのだろうか。

 NHKが値下げ方針を固めた背景には、菅義偉総務相の強い意向がある。総務相はこれまで、受信料の支払い義務化を放送法改正に盛り込む見返りとして、「2割程度の値下げ」をNHKに求めてきたからだ。だが、その総務相自身が今回の値下げ幅に不満を隠していない。

 NHKは今後、経営委員会の承認を得た上で一般の意見を募り、9月にまとめる新たな中期経営計画に値下げ案を盛り込みたいとしているが、先行きはなお不透明だ。

 「100円や200円の値下げが視聴者の切実な要求になっているとは思えない」。古森委員長が指摘するように、NHKに望むのはまず「良い番組や信頼性のある経営」だ。NHKは何か大きな勘違いをしていないか。

(2007/07/26 05:02)

【産経抄】

 浅草の「三社祭」で、またも御輿(みこし)の上に乗って騒ぐ不逞(ふてい)の輩(やから)がいた。怒った浅草神社は、来年から最終日に本社御輿を出す渡御をやめにしたという。御輿は「神輿」とも書く。神体が乗る輿なのに、その上に乗るなどご神体を踏みつける行為に等しい。

 ▼祭礼が本来の意味を放棄すれば「祭りの自殺」である。選挙も祭りと同じで、候補者という御輿とその担ぎ手がいる。いまの参院選が衆院の争いに乗っ取られて、本来の「高い立場で国政を論ずる」ことを放棄してしまえば、それもまた「参院の自殺」だ。

 ▼参院は「衆院のカーボンコピー」といわれて久しい。参院の審議は、衆院の“後追い”ばかりだからどうしてもコピー化する。でも、参院の議員候補は気をつけた方がいい。参院選を衆院側の醜聞を借りて戦えば、コピーどころか衆院に活躍の場を収奪される。

 ▼ 争点は政治とカネなのだという。「なんとか還元水」で自殺した前農水相も、事務所費問題の新農水相もみんな衆院の方々だ。年金の記録漏れとても、こちらは官僚のズサンな管理問題であり、職員組合の過剰な権利意識の問題だ。それなのに、参院候補から財源も含めた年金改革の全体像が聞けない。

 ▼ 参院は解散がなくて任期は6年もある。欧米なら2~4年で改選される下院に対して、天下国家を論じる上院にあたる。本来の役割を忘れれば、参院軽視から参院無用論まで、幅広くその存在意義が問われることになる。過去に、民間団体が「参院廃止」を打ち出したことをお忘れか。

 ▼そうはいっても、衆参を問わず政治家は有権者のコピーにちがいない。幸か不幸か、彼らは私たちの中から選ばれた。だが、三社祭の渡御はやめられても投票をやめるわけにいかない。

(2007/07/26 05:01)


【日経・社説】

社説1 夏休みもいいが若者よ投票に行こう(7/26)

 参院選の投票日の29日が迫ってきた。年金記録漏れ問題などの逆風を受けて、各種世論調査で与党の苦戦が伝えられている。野党の民主党が参院で第一党をうかがう勢いだ。ただ先週末の段階では選挙区で3割、比例代表で2割の有権者が投票先を決めておらず、流動的な要素が残っている。他の年代に比べると著しく投票率が低い若い世代に、強く投票を呼びかけたい。

 参院選の投票率は衆院選よりも低くなりがちだ。1992年以降、6割を切る状態が続いており。前回の2004年は56%台だった。とりわけ若い世代の「選挙離れ」は深刻だ。総務省が実施しているサンプル調査によると、20―24歳の投票率は31.5%、25―29歳は36.8%、30―34歳でも 44.0%にすぎない。

 郵政解散による05年の衆院選では、この若い世代の投票率がはね上がり、全体でも前回より7.7ポイント上昇して67.5%となった。このいい流れを継続させたいところだ。

 期日前投票が大幅に増えているのは明るい兆しである。22日までに投票を済ませた有権者は全国で約400万人に達し、前回参院選の同時期に比べ54%も増加した。これまでは労働組合や宗教団体などが期日前投票に積極的だった。今回は無党派層の利用者も増えているとみられる。選挙への高い関心を示すものとして注目される現象だ。

 夏休みに入り、29日に予定がある人も多いことだろう。期日前投票の手続きは簡単で、便利な場所に投票所を設けている選挙管理委員会も多い。日曜日に投票に行けない人々にはぜひ利用してもらいたい。

 今回の参院選の最大の争点は年金問題だ。マニフェスト(政権公約)などで各党は記録漏れ問題の対応だけではなく、年金制度の将来像についてもそれぞれの政策を訴えている。論議が深まっているとはいえないが、選挙結果は今後の制度改正論議に影響を与える。じっくりと公約を読み比べて、投票先を考えたい。

 この選挙で選ばれた議員は6年間の任期中に、憲法改正の発議にかかわる可能性もある。それにふさわしい見識を持った候補者かどうか。そんな問題意識で、各候補者の政見放送や演説を聞くのもいい。

 年金問題や憲法に限らず、選挙戦で問われている農業、地域再生、教育などのあらゆる政策は、あすの私たちの生活に直結する。選挙に行かずに、白紙委任してしまうのではあまりにもったいない。主権者の自覚を持って必ず投票に行こう。

社説2 改革が決めた百貨店逆転劇(7/26)

 百貨店で売上高4位の三越と5位の伊勢丹が経営統合に向けた交渉に入った。業績不振が続く三越に対し、高収益が続く伊勢丹が経営上のノウハウを提供し、支える色合いが強い。長い歴史を持つ老舗の三越が後発の伊勢丹に頼る逆転劇。古い体質が目立つ百貨店業界にあって、どれだけ中身のある革新に取り組めたかどうかが両社の明暗を分けた。

 伊勢丹の収益源は店舗別売上高で全国首位に立つ東京・新宿の本店にある。各階の面積が広く、正方形に近い理想的な売り場に加え、JR中央線沿線に住む、比較的高収入で、流行に敏感な消費者に対応した品ぞろえにも定評がある。

 これは偶然ではない。昭和初期、創業地の秋葉原から、当時としては繁華街とはほど遠かった新宿へ、将来性を見込み移転した。新店舗は将来の吸収合併をにらみ隣の百貨店「ほていや」と各階の高さを合わせて建設。合併後は壁を取り払い、今にみる「広い正方形」を実現した。

 三越と違い昔からの金持ちや法人を顧客に持たなかったので、新興中流層の主婦や若者に焦点を合わせた。これが一般消費者の好みに敏感な品ぞろえを生んだ。売り切れを防ぐための情報システムもスーパーやコンビニにならって充実させた。

 1990年代前半、不動産会社の秀和による株の買い集めに対処する過程で、創業家社長が退陣し、初めて現場出身の社長が就任した。自由な社風も強まった。10代女性向けコーナーや新進デザイナーの売り場を設け、近年は別館を「男の館」にするなど本店の魅力に磨きをかけた。

 一方、三越は本店依存からの脱皮を目指し、90年代前半まで地方都市の2番店を買収し、新規出店による多店舗化を進めた。ゴルフ場経営などの多角化にも走ったが、経営の相乗効果を発揮できず負の遺産を抱えた。「三越ブランド」への過信があったと言わざるをえない。

 現経営陣は改革に取り組んでいるが、実を結んでいないのは、社員の名門意識やぬるま湯体質が一因との指摘も聞かれる。ブランドに慢心せず、時代のニーズに目を向け改革に取り組まなければ、消費者の心はつかめない。今回の提携交渉の背景から、そんな教訓がくみとれる。

【日経・春秋】(7/26)

 ハイファイはhigh fidelityの略で高忠実度と訳す。イヌのニッパーが蓄音機に耳を傾ける、日本ビクターのマークは「録音なのに、亡きマスター(飼い主)が話していると忠犬が思いこむほどの高忠実度を実現した『最高の技術と品質』」を象徴するそうだ。

▼そのニッパーが、気のせいか寂しげに見える。3期連続で最終赤字になり「経営改革が急務」と認める日本ビクターが、だいぶ規模が小さくやはり再建途上にあるケンウッドと経営統合して生き残りを目指す道を選んだ。半世紀前からの親会社松下電器産業に“見放された”格好である。

▼昨日の本紙朝刊最終版の1面は業界再編の報道が集まった。ビクターとケンウッドの話、東芝など3社によるシステムLSIの開発統合、伊勢丹と三越の資本提携に向けた動き――3本並んだニュースは、相手にする市場が国内であれ世界であれ、単独で競争に立ち向かえる企業が少ない日本の現実を示している。

▼ニッパーが聴く「マスターの声」のマスターには飼い主のほか支配者や師匠の意味もある。電機でも小売りでも、闘いに勝ち抜くには、市場のマスターの消費者が何を求めるかをつかみ、製品やサービスに実現させる能力が要る。マスターの声を聴きそれへの忠実度を高めること。ビクターのマークは示唆に富む。


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