« 6月1日から続けてきた地方紙と主要紙の社説&コラムの採録を毎日続けるのをやり遂げました。これからも開票日1週間後まで続けます。 | トップページ | 7月2日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。 »

2007年7月 1日 (日)

7月1日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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 (2007-07-01 01:01確認)雑談日記、予測よりやや速いペースでついに激戦政治ランキング花の1頁(1位~50位)突入。かつてネットウヨ充満がリベラル系圧倒の勢い、確認したければ、バナークリック。(ランキング参加の意義)
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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月1日朝刊)

[国会閉幕]採決強行で審議が形骸化

 年金支給の時効を廃止する年金時効撤廃特例法と、社会保険庁を解体する社保庁改革関連法、天下り規制を強化する改正国家公務員法などが参議院で可決、成立した。

 第百六十六回通常国会は事実上閉幕した。各党は二十九日投開票の参院選に向け遊説などを本格化し、年金問題を主要争点に事実上の選挙戦がスタートする。

 年金問題では、約五千万件の「宙に浮いた年金」(保険料納付記録)や、記録が残っていない「消えた年金」など、致命的なミスや不祥事が相次いで発覚したが、今国会で十分な審議が行われたとはいえない。

 参院選を目前に控え、与野党の対立が激しくなった。社保庁の不祥事をめぐるやりとりに終始し、法案をめぐる本格的な審議には入れなかった。かえって国民の不安をあおる結果になってしまったのではないか。

 今回は与党側の強引な国会運営が目立った。安倍政権の実績をアピールするため、与野党対立法案で次々と採決が強行された。安倍晋三首相が成立にこだわった改正国家公務員法も委員会採決を省く「中間報告」という異例の形で未明の本会議で可決された。

 一昨年の「郵政解散」で自民党が圧勝し、与党は衆院で三分の二以上の圧倒的な議席を確保。「数の力」を背景に、法案の問題点を修正して練り上げていく姿勢は見られなかった。国会審議が形骸化したのは否めない。

 社保庁改革関連法が年金制度の安定につながるのか、改正国家公務員法で天下りを規制できるのかどうか、疑問を抱くのは当然だ。改正政治資金規正法も実効性が疑問視されている。

 安倍首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」を強調し、就任後初の通常国会を「教育再生国会」と位置付けた。愛国心教育などを重視する昨年の教育基本法改正を受けて、教育改革関連三法を成立させた。

 憲法改正手続きを定めた国民投票法も成立した。施行は公布の三年後で、改憲が具体的な政治日程に上ってきたことを忘れてはなるまい。

 小泉政権を引き継いだ安倍政権は郵政選挙で確保した数の力を背景に保守回帰、新国家主義的な色彩を強めており、憲法、教育など戦後民主主義の根幹が大きく変化しようとしている。

 問われているのは年金問題だけではない。米議会による従軍慰安婦決議、集団的自衛権行使の問題など論議すべき問題は尽きない。

 参院選では戦後初めて改憲も問われる。参院選は大きな転換期の中で行われることになり、国民の重要な審判になるのは間違いない。

[沖縄タイムス賞]先達の志を次代へ継ごう

 沖縄の発展に貢献した個人や団体の功績を顕彰する「沖縄タイムス賞」。今年は半世紀の節目から新たな一歩を刻む。今回、四人・二団体が正賞を受賞した。

 文化賞は沖縄写真連盟相談役の山川元亮さんとフリーの放送キャスター上原直彦さんの二人。産業賞は大和コンクリート工業社長の比嘉勉さん、体育賞はプロ野球解説者の安仁屋宗八さんに輝いた。そして国際賞は沖縄・ラオス国口唇口蓋裂患者支援センター、自治賞は伊江村だ。

 高い志と強い信念を持って長年にわたって自らの道を切り開き、突き進んできた受賞者・団体にあらためて敬意を表したい。

 写真文化の発展に貢献した山川さんは、一九五九年の石川市立宮森小学校への米軍ジェット機墜落現場や六〇年のチリ津波による屋我地大橋の決壊現場など、歴史的事件や事故、災害を撮影、貴重な映像を残した。

 放送を通し沖縄伝統文化の発展に尽くした上原さんは「さんしんの日」の提唱者だ。ラジオの長寿番組「民謡で今日拝なびら」の司会、沖縄民謡の作詞や舞台の脚本執筆など幅広くこなしている。

 沖縄独自の製品開発と人材育成に尽くした比嘉さんは「一年一作」をテーマに、特許や実用新案などを数多く取得、沖縄発の技術を全国に広めた。八五年から始めた社内QCサークル発表会は四十数回を数える。

 県出身プロとして活躍したのが安仁屋さんだ。広島時代には巨人キラーと呼ばれ、現役引退後は二軍監督、コーチを務めた。一昨年から県内で「安仁屋ベースボールクラブ」を主宰する。

 国境を越えた医療支援、平和活動を行う沖縄・ラオス国口唇口蓋裂患者支援センター、積極的なイベント事業を図り魅力あふれる島づくりを展開している伊江村、共に活動は活発だ。

 積み重ねられた活動歴はいずれも素晴らしく、ぜひ、次代へ継いでいきたい。沖縄タイムス賞の贈呈式はあす。受賞を共に喜びたい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月1日 朝刊 1面)

 大事に育てた娘を嫁がせる父親は、どんな気持ちなのだろうか。不安、寂しさ、喜び…。一言では言い表せないかもしれない。

 友人の娘がこの秋、結婚する。いわゆるできちゃった婚だ。友人は父子家庭。娘を男手で育て、娘も家事をやっている。まだ若いだけに、友人は心配が尽きない。

 だが、授かった命を大切にしたいと娘の真剣なまなざしを受け止めたという。幾つかの困難はあったけれども、赤ちゃんを最優先に生きる決意を胸に将来を語る娘は、しっかりとした「母親」の顔だった。

 詩人、吉野弘の作品に長女に贈った「奈々子」がある。「赤い林檎の頬をして/眠っている/奈々子」「お父さんが/お前にあげたいものは/健康と/自分を愛する心だ」「ひとが/ひとでなくなるのは/自分を愛することをやめるときだ」「自分を愛することをやめるとき/ひとは/他人を愛することをやめ/世界を見失ってしまう」(ハルキ文庫)。

 幼い長女に、これからの人生は困難が多かろうが、自分を愛することを大切に懸命に生きてほしいという父親の願いを託している。

 児童虐待の相談が過去最多を更新したと「青少年白書」で報告された。心が重くなる虐待事件は後を絶たない。でも、世の中、ひどい親ばかりではない。未熟であっても精一杯、愛情を持って子育てする親がほとんどのはずだ。娘はどんな困難でも立ち向かうだろう。友人は、そう信じている。(銘苅達夫)


【琉球新報・社説】

国会閉幕へ 参院選で「年金」論戦を

 官僚の天下り規制を強化する改正国家公務員法が社会保険庁改革関連法、年金時効撤廃特例法に続いて30日未明の参院本会議で成立した。延長国会は会期を残して事実上閉幕、7月12日公示、29日投開票の参院選に向けて、実質的な選挙戦がスタートすることになる。
 それにしても、多数与党の強行採決が相次いだ今国会は、異常ともいえるものだった。米軍再編法をはじめ教育改革3法、国民投票法など、いずれも国民にとって重要な法案(安倍晋三首相)が、十分な審議が尽くされたとは言い難いまま、次々と数の力で押し切られた。国会運営という点からも今後に禍根を残すことにならないか。
 その1つが安易な会期延長だろう。もちろん、国民にとって早期成立が必要な法案の論議の時間が欲しい、というのなら、まだ理解できる。ただ、審議の結果、与野党の合意が得られない場合、それぞれが、さらに検討を重ねて次期国会で成立を目指すのが本来の議会の在り方だ。ところが、今国会では、参院選をにらんで延長問題が「政争の具」にされた、と指摘されても仕方ないものだった。
 言うまでもなく、選挙を目前に政府与党の頭にあったのは、年金問題の行方だった。国民の怒りをかわそうと会期を延長、投開票日を延ばすことで、問題の沈静化を図ろうとしたのか。法案を次々と成立させ、その「成果」を強調することで、選挙戦を有利に運ぶ意図があったのは、疑いのないところだろう。
 安倍首相が独自カラーを発揮しようと、教育改革3法など、重要法案をしゃにむに成立させてきたことで、首相サイドは当初「戦後レジーム(体制)からの脱却へ大きな意味があった」(塩崎恭久官房長官)と胸を張り、参院選でもその成果を訴える目算だった。ところが、年金記録不備問題の拡大により、成果もすっかり色あせてしまった、という事実が今回の延長問題の背景にあろう。
 いずれにせよ、本来であれば国民生活にとってこれほど重要な法案が、与野党の意見の一致を見ないままに見切り発車的な成立をみたのは、大きな疑問だと言わざるを得ない。審議過程を振り返っても、記録不備などの原因はいまだに判然としない。さらに、責任の所在も明らかになっていない。首相らがボーナス受領分返上を表明し、また社保庁職員に自主返納の動きもあるが、これで幕引きができる、と考えているなら認識が甘い、と言うしかない。
 参院選挙では政府与党の思惑がどうであれ、年金問題が大きな争点となるのは間違いなかろう。投票で、国民が正しく判断できるよう、選挙戦を通じて与野党のしっかりとした論戦を強く求めたい。

(7/1 10:38)

青少年白書 ニート対策を急ぎたい

 学校にも行かず仕事も職業訓練もしない、いわゆるニートが、2006年平均で62万人、フリーターが187万人に上るなど、依然高い水準にあることが、07年版「青少年の現状と施策」(青少年白書)で明らかになった。先月29日、閣議で報告した高市早苗少子化担当相は「社会的自立が困難な若者が多い状況は社会全体にとっても健全とは言えない」と問題視する。
 担当相の指摘を待つまでもなく、事態は深刻だ。日本は世界でも前例のない高齢社会を迎えつつある。少子化に加え、若い労働力の減少が社会の活力を奪うのは火を見るより明らか。それだけでなく、このことは年金の基盤を崩しかねない、という問題もはらんでいる。関係機関の抜本的な対策が急務だ。
 このほか、白書では児童相談所が受けた児童虐待の相談件数も報告されている。それによると、05年度は過去最高の3万4472件とする厚生労働省の統計に基づいて「社会全体で早急に解決すべき課題」と警告している。
 また、06年に全国の警察が摘発・補導した小中高生の事件のうち、いじめが関係していた事例が前年比で41%も増えている。さらに、いじめ関連で摘発・補導した人数も41%増えた。気になるのは、ニートの若者の約5割が学校でのいじめ被害や引きこもりの経験があり、約4割は不登校を体験しているという調査結果があることだ。厚労省の委託調査で分かったものだが、さらに、約8割が「仕事をしていく上で人間関係に不安を感じる」と回答している。
 この結果から見えるニート像は「子ども時代に虐待やいじめの被害、不登校を経験した結果、対人関係の苦手意識が増幅され、就労の困難につながっている」というものだ。もちろん、これがすべてではないだろうが、問題解決に多くの示唆を含んでいる。
 政府はニートの再チャレンジ支援策として、家庭訪問の導入などを柱とした総合対策を取りまとめている。関係機関の連携を強化し、着実な成果が求められている。

(7/1 10:37)

【琉球新報・金口木舌】

 ちょうど1年前のきょう、橋本龍太郎元首相が死去した。インタビューをした時のことが最近しきりに思い出される
▼事務所の壁には対馬丸の船体発見を詠んだ天皇陛下の歌。「(船体が)『見つかった』と電話を受けた時は、跳び上がったよ」。首相在任中の逸話を話す表情はうれしそうで、思い入れをひしひしと感じた
▼ 「復帰以来、県民の苦しみをどれだけ分かち合おうとしたか。振り返ると恥ずかしい」。首相就任会見でそう述べた。復帰25周年式典では「2つの問題を一緒にされるのはとても悲しく聞こえる」と話し、基地と振興策のリンクを否定。情緒的で繊細な言葉遣いには、沖縄に反発されまいとする懸命な姿勢を感じた
▼退任後も存在感があった。米軍ヘリ沖国大墜落事故の際は「事故発生以来、政府からぬくもりを感じることがなかった」と居並ぶ官僚を批判した
▼翻って今。防衛省は露骨にアメとムチを振りかざし、沖縄担当相ですら「(北部振興策と普天間移設が)全くリンクしないとの表現は当てはまらない」と公言する
▼繊細さと程遠い物言いで、政府の本音が分かりやすくはなった。とはいえ「出来高払い」の言葉は泉下の元首相にどう聞こえるだろう。

(7/1 11:55)


【東京新聞・社説】

週のはじめに考える 年金で増税も消える?

2007年7月1日

 国会が事実上閉幕しました。骨太の方針をみても、政策課題は山積みですが、国民の関心は年金問題に集中しています。財政再建論議にも影響は避けられません。

 「これは、国による振り込め詐欺だよ」。友人が“消えた年金”について、憤まんやるかたない表情で訴えます。なるほど、その通り。

 つい、この間まで「国民年金の保険料をきちんと納めて」と大宣伝していたのに、肝心の年金を払う段になったら「あなたの記録はありません」とか「領収書を見せてください」とか言うんですから。国民が怒るのも当たり前です。

 単に、役所の不始末と言うには、あまりにコトが重大すぎる。
表立っては言わないが

 これが、どれほど深刻か。

 政策課題が重要であればあるほど、年金記録不備問題の解決なしには、もはや議論は一歩も前に進まないのではないか、と思えるほどです。たとえば、財政再建も。

 政府も与野党も、巨額債務を抱えた財政の危機を訴え、再建論議を重ねてきました。政府・与党は昨年、二〇一一年度までの五年間に一一・四兆円から最大一四・三兆円の歳出を削減する方針を決めて、ことしの骨太方針も追認しています。

 基本的には、無駄や非効率をなくして歳出を最大限に切り詰めていく。それでも残る不足分については増税を検討する、という考え方です。政府はこの秋から、消費税の増税を視野に入れて、抜本的な税制改革論議を始める予定でした。

 国民を直撃した年金問題の衝撃は計り知れず、そんな「増税シナリオ」を吹き飛ばしてしまいそうな勢いです。財務省はもとより、永田町や霞が関のだれも表立っては言いませんが「いまや、とても増税を言い出せるような情勢ではない」というのが、政策立案者のほぼ一致した見方です。それはそうでしょう。
未払いでは納得しない

 「私が払った保険料さえ、きちんと記録をつけられないのに、なにが増税だ。とんでもない」。多くの国民が、そう感じるはずです。

 増税するには、国民が納得できる理由がなければならない。そこで「増税分は年金財源に充てる」という考えが有力視されていました。

 基礎年金の国庫負担割合は〇九年度までに、三分の一から二分の一に引き上げる方針が決まっています。その財源に消費税の増税を、という皮算用だったのです。

 自民党の津島雄二税制調査会長をはじめ有力者の多くは、消費税の使途を社会保障に限る「消費税目的税化」にも賛意を示していました。

 しかし、年金記録がいいかげんなままでは、そんな議論に説得力はありません。給付金の未払いが多数、残っているのに「年金財源に増税を」と訴えても、だれも納得するはずがないからです。

 「発覚前」と「発覚後」では、まさに議論の前提が根底から崩れてしまった。政府に対する信頼が大きく揺らいでいるのです。

 では、どうするのか。残念ながら、妙策はありません。何千万件あるのか知りませんが、不明分を調査するのはもちろん、年金加入者全員に記録を通知して照合する。社会保険庁の労働組合はボーナス返上に応じるようですが、夏休みも返上して、取り組んでもらいたい。

 さて、年金問題を一段落させたとして、ほかの課題はどうなのか。先の骨太方針をみると、成長力強化や二十一世紀型行財政システムの構築、持続的で安心できる社会の実現といった章立ての下、環境立国や教育再生、少子化対策などの項目が並んでいます。

 どれも重要には違いないのですが、総花的すぎる。あえて、課題を絞ってみます。

 まず、経済成長をしっかりと実現する。景気が上向き、企業は雇用を増やし始めました。一方で、物価はまだ下落しています。日銀は利上げを急がず、デフレ脱却に全力を挙げる必要があります。

 改革は「隗(かい)より始めよ」。政府自身が公務員の身分格差をなくし、中央省庁の局長など幹部に民間人を登用する。有能な人材を公募し、特別スタッフ職として優遇する。政治任用も大幅拡大してはどうか。

 地方自治体を含めて、行政サービスの電子化を徹底する。情報技術(IT)の利用者と最大のサービス産業は政府自身です。行政の生産性を高める工夫に取り組むべきです。

 ただし、注意点が一つ。コンピューター業界にぼろもうけさせる必要はありません。一部には年金記録の検証を「絶好の特需」とみて、うごめく向きもあるようです。効率化はカネをかければいい、というものではないはず。
役所仕事に監視の目を

 地方分権と行政のスリム化は、最重要課題です。福祉や教育、環境、農業、まちづくりなど広範な分野で、国と都道府県、市町村の二重行政が指摘されています。「お役所仕事」の無駄と非効率を改める。

 しっかり監視しないと、役人はいかにでたらめをするか。私たちも「失敗の教訓」を学ばねば…。

 

【東京新聞・筆洗】2007年7月1日

 事故現場に一番近い踏切から線路を見ると、カーブは思いのほか、急だった。事故車両と同じ快速に乗ると、五十三キロでカーブを通過した。これなら 遠心力を感じないが、運転士は当時、約百十六キロでカーブに突っ込んだ▼百七人が死亡した二〇〇五年の尼崎JR脱線事故で、国土交通省の事故調査委員会が 最終報告書を公表した。なぜブレーキが遅れたのか。運転士は直前の停車駅でオーバーランし、そのことの車掌と輸送指令の交信に気を取られていた。過失に伴 う再教育を受けずにすむ言い訳も考えていた可能性がある。報告書は疑問に答えている▼乗客の安全より保身を考えていた運転士の姿が浮かび上がるが、現場を 見るとそもそも危険なカーブだったのでは、と素朴に思う。この疑問への答えが報告書にはない。答えは同志社大大学院教授、山口栄一さん編著の『JR福知山 線事故の本質』(NTT出版)にある▼当時の制限速度は直線で百二十キロだが、現場手前で急カーブゆえに一気に七十キロに下がる。山口さんの分析では標識 の見落としや無視、突発的に意識を失うことがあれば、他の運転士でも事故を起こす可能性があった▼カーブを緩やかにしないなら、速度超過を防ぐ新型の列車 自動停止装置が整備されるべきだが、JR西日本は当時、カーブでの速度超過を「危険要素」と認識していなかった▼山口さんは科学的思考をする能力を欠いて いたと指摘している。起きることを想像し、未然に防ぐ力の欠如とも言える。事故の教訓としていま身につけているのか、気になる。


【河北新報・社説】

社保庁改革法成立/混乱を一層拡大しかねない

 年金記録不備問題で、国民の間に社会保険庁、年金制度に対する憤りや不信が渦巻く中、与党は野党の反対を押し切って社保庁改革関連法と年金時効撤廃特例法を成立させた。
 年金記録の不備があった場合、本来の受給額を全額受け取れるようにするため、会計法による5年の時効を適用しないことは当然の措置だろう。
 しかし、特例法と抱き合わせで社保庁改革法も成立させたことには異議がある。

 社保庁は廃止、解体すべきだ。だがそれは、年金をめぐるさまざまな問題の解決を図るためでなければならない。改正法の成立を急いだことは問題解決につながるどころか、混乱をさらに拡大しかねない。
 大きな懸念材料は、5000万件に上る対象者不明の年金記録の統合作業と、日本年金機構を設立して社保庁から年金業務を移行する改革作業とを、同時並行で円滑に進められるのかということだ。

 記録の統合作業だけではない。保険料を納めたはずなのに、社保庁側に記録がなく、加入者側にも「証拠」がないといったケースについて、第三者委員会で年金給付の是非を判断する新たな仕組みに対応していくことも求められている。

 法律自体の欠陥も見逃せない。改革法は記録不備問題が表面化する前に作成されたもので、この問題に対する反省点や再発防止策は何も盛り込まれていない。逆に、第三者委員会の設置など、政府の対応策と改革法との整合性が不透明な部分が広がっている。

 社保庁改革は急がなければならない。それでも、今国会でどうしても成立させる必然性は乏しい。記録不備問題で政府が設置した検証委員会の検討も踏まえて法案を練り直し、秋の臨時国会に出し直しても何の支障もないはずだった。

 それにもかかわらず政府、与党が成立を急いだのは、参院選前にけりをつけようとしたためとしか言えない。
 思惑はともかく、改正法が成立したからには、記録不備問題の解決と社保庁改革とを必ず実行することが政府、与党の責任だろう。
 機構への移行時期は2010年1月が予定されている。2年半の間にやるべきことは山積している。

 まず第三者機関が、民間に委託する業務の範囲や委託先の選定基準、機構の定員など職員採用の基本を検討し、それを踏まえて政府が基本計画を策定しなければならない。
 次に、厚労相は機構の設立委員を任命し、設立委員が職員採用をはじめ設立事務を処理する。現在の社保庁職員が機構に移るかどうかは本人の意思を確認するが、採用に当たって職員をどのようにふるいにかけるかは大きな問題となりそうだ。

 年金業務をきちんと担える組織になるかどうか、国民も監視することが必要だろう。
 年金制度への信頼を取り戻すためには、制度自体の見直しが欠かせないことも、あらためて指摘しておきたい。
2007年07月01日日曜日

【河北新報・河北春秋】

 インスタント食品に用いられるフリーズドライ製法が普及したのは宇宙食のおかげだ。初期の宇宙船は狭かった。軽くてかさばらず発電時に出る水が利用できる食べ物。技術開発が進んだ▼今や宇宙船は大型化し国際宇宙ステーション(ISS)の建設が進む。米ロの宇宙食もメニューが豊富となり各種のレトルト食品などに生鮮野菜もある。そこに「宇宙日本食」が加わる

 ▼ カレーに山菜おこわ、サバのみそ煮やサンマのかば焼きもあり全部で29点。ISSでの滞在機会が増える日本人飛行士のために宇宙航空研究開発機構が初めて認証した▼これまでの臨時の日本食とは違い、外国人飛行士でも常に日本の食卓の味を楽しめるのがミソ。宇宙で最初に口にするのは来年秋ISSに向かう若田光一さんか。「余暇には和食を味わってみたい」と話していただけに活力もわこう

 ▼「宇宙の技術」は多彩で民生用として生かされているものもある。レーザーメスは月までの距離測定技術がベース。固体補助ロケットを切り離す日本の火薬技術の応用で車のエアバッグは一瞬で膨らむ▼1年間の常温保存が可能で、無重力下の骨量減少を防ぐためカルシウムを増やしているのが宇宙日本食の特徴。うまく転用すれば災害時の非常食、骨粗しょう症予防食にもなるのでは。

2007年07月01日日曜日


【京都新聞・社説】

この月あの年  困った理不尽な保護者要求

 「仲のよい友だちと一緒のクラスになるよう頼んだのに違うクラスにした。再度、クラス替えをしてほしい」。「授業中に自分の子専属の教師をつけて。放課後も自分の子だけに補習を」
 こんな理不尽な要求を学校に突きつける保護者が全国的に増えている。断ると脅されることもあるという。
 学校運営に支障をきたすケースや、精神的に参って休職する教員も増えているというから、問題は深刻だ。
 各地の教育委員会が独自の対策を打ち出し始めたのは、担任や学校だけでは対応しきれなくなったからだろう。
 京都市教育委員会も医師や弁護士、臨床心理士、警察OBらでつくる「学校問題解決支援チーム」を早ければ今月中にも創設する。 小中学校から要請があれば、メンバーが出かけて相談に応じ、指導、助言し、問題解決にあたる。
 教員を支援するだけでなく、一番の目的は保護者と教員・学校が信頼し合い、手を結んで子どもにとってよりよい学校づくりをめざすことにある。 それを忘れないでほしい。

追いつめられる教師

 一体、いつごろから、こんなことが起こり始めたのか。
 京都市教委は、統計をとっているわけではないとしたうえで、十年ほど前あたりからとみる。
 校長から市教委に電話が入ったり、指導主事が学校を回ると「実は…」と切り出す校長や教頭が徐々に増えだした。近ごろは要求が多様化し、理不尽さの度合いが強くなっている感じという。
 類推できるデータがある。病気休職者のうち、うつなどの精神性疾患の教員が昨年度までの六年間で二十五人増え、全体に占める割合も約四割から八割近くに倍増しているのだ。
 すべてが保護者の理不尽な要求のせいというわけではないが、精神的に追いつめられたことが一因となったケースも少なからずあるようだ。
 暴力を受けた子の父親が授業中、教室に入ってきて「加害者を殴らせろ」と大声をあげる。頻繁にクレームの電話やファクスをしたり、連日、数時間も居座る保護者の場合は、深夜まで対応に追われることになる。
 これでは、担任教員もクラス運営どころではない。
 他府県も同様で、「朝、子どもが起きないので、起こしに来てほしい」と担任に電話をかけるのはまだ序の口。
 使用禁止の約束を守らなかった子どもの携帯電話を取り上げると、「日割りの基本料金を、取り上げた日数分払え」と要求したり、中には「訴えてやる」とすごむ保護者もいるという。

双方向で学校理解を

 急増の背景に何があるのだろう。
 保護者の「いちゃもん」(無理難題要求)を研究テーマとする大阪大大学院の小野田正利教授は、いちゃもんのうち九割は、教員や学校側に、かつてのような「体力」や「体温」があれば問題になる以前に解決できたとみる。
 子どもとじっくり向き合い、理不尽とみえる保護者の要求の裏側にある思いをくみとるだけの余裕が教員にも学校にもあったのが、今はない。相次ぐ教育改革がそれを奪ったため、というのだ。
 もちろんそれだけではない。
 子育ての相談相手もなく、自分の子どもしか見えない保護者が増え、その矛先が、言いやすい学校に向けられる。
 理不尽な要求とは裏腹に、保護者自身も悩んでいるケースが多いのだ。
 学校には何ができて、何ができないのか。解決のためには、双方向的な「学校理解」と、それぞれの役割確認をすることからまず始めるべきという。
 京都市教委の支援チームに求められているのも、詰まるところ保護者と学校側をつなぐ心の橋渡し役だろう。きめ細かく対応することが欠かせない。
 さらに小野田教授は底流には、バブル崩壊後の「弱い者いじめ」「言ったもん勝ち」の風潮や金を払った分、要求するのは当然という考え方の広がりがあるのではないか、とも指摘。日本人の多くが他人に無関心、不寛容で攻撃的になってはいないか、と問いかける。
 学校と保護者の問題に違いないが、そこから見えてくるのは今の社会、私たちの生き方そのものかもしれない。

[京都新聞 2007年07月01日掲載]

【京都新聞・凡語】

山岳遭難事故

 きょうから七月。富士山などで、山開きが行われる。でも、ことしは雪解けが例年より遅れ富士山では、まだかなりの積雪が残っているという▼五月の寒気や梅雨入り後の不安定な天候が影響したためらしい。事情は他の山々でも似ていよう。夏山だと軽く考えずに、登山者は防寒具や非常用の食料など、十分な準備をして出かける必要がある▼健康ブームも後押しして、野に山に中高年の姿を多く見掛ける。近年は、歩きやすい靴や、伸縮性がありむれにくい衣服、軽いストック…と、装備面もぐっと進化して、安全性や快適さも増している▼それでも油断は禁物だ。警察庁のまとめでは、昨年一年間に全国で起きた山岳遭難事故は、件数、死者数とも過去四十五年間で最悪となった。しかも遭難者千八百五十三人の八割余りを、四十歳以上の中高年が占めている▼国際山岳ガイドで日本山岳レスキュー協会代表の山本一夫さん(大津市)は「中高年といっても実際は高齢者の事故が大半」と話す。一番多いのが転・滑落だが、注意すれば防げた事故ばかりという▼「若いころに山登りしていて、年をとってから再開した人が一番危ない。体力を過信し、他人のアドバイスに耳を貸さない」とも。中には心疾患などを発症する例もあるそうだ。おのが限界をわきまえ、天候の良い午前中に登る、などの基本も大切にしたい。

[京都新聞 2007年07月01日掲載]


【朝日・社説】2007年07月01日(日曜日)付

JR西事故―懲罰的教育が誘発した

 JR西日本の日勤教育は懲罰的な色合いが濃い。暴言を浴びせたり、反省文を繰り返し書かせたりする。

 その日勤教育が2年余り前のJR宝塚線の脱線事故の誘因になっていた。国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会が最終報告書で、そう指摘した。

 JR西日本はこれまで日勤教育は事故とは関係ないと言い、事故はカーブで速度を出しすぎた運転士の非常識な運転にあるかのように主張してきた。

 JR西日本は報告書の批判を重く受け止めるべきだ。

 この事故で、運転士を含め107人が亡くなった。23歳の運転士はなぜ高速で急カーブに突っ込んだか。それが原因を探るうえで最大の焦点だった。

 調査委は「運転士は懲罰的な日勤教育を受けさせられることを懸念していた」と指摘した。

 その背景はこうだ。運転士は直前の伊丹駅で72メートルのオーバーランを起こし、距離を短めに報告するよう車掌に頼んだ。運転士は1年前にも同じようなミスをし、日勤教育を受けた。また日勤教育を受けさせられることを恐れたのだ。

 運転士は自分の頼んだ通りに車掌が輸送指令員に伝えてくれるか、無線交信に聞き耳を立てた。そのため、ブレーキ操作が遅れた。

 オーバーランというミスを不問にはできまい。だが、ミスを防ぐ教育が単に懲罰と受け取られては、問題の解決にならない。運転技術の向上に結びつく実践的な教育にすべきだ、と調査委はJR西日本に改善を求めた。当然のことだ。

 日勤教育が深刻なのは、懲罰的なことだけではない。それから逃れようと、ミス隠しを助長することだ。ミスが表面化しなければ対策も立てられない。その間に取り返しのつかない惨事に発展する。今回の事故がまさにそれに当たる。

 調査委はすべての鉄道会社に対し、「非懲罰的な報告制度の整備」を求めた。この事故の教訓を共有しようという試みを評価したい。

 調査委は事故の背景として、余裕のないダイヤのほか、自動列車停止装置がなかったことも指摘した。

 事故が起きた宝塚―尼崎間は、事故の3年前に比べ、電車が1分近く速く走るようダイヤを変えた。この結果、定刻通り運行できない電車が多くなった。

 この路線では、90年代に制限速度を100キロから120キロへ引き上げた。事故現場のカーブもきつくした。だが、自動列車停止装置は設けなかった。

 400ページを超える報告書からは、安全と効率のバランスが崩れていく実態が読み取れる。

 JR西日本の山崎正夫社長は「会社の体質や風土の改革に取り組む」と述べた。そうならば、脱線事故の背景にあった「事故の芽」を調べ、同社が考える事故原因を率直に語ってもらいたい。それが再生の始まりとなる。

香港返還10年―自由な空気を大切に

 宝石箱のような夜景。摩天楼の足元にひしめく漢字の大看板。欧州とアジアの文化が混じり合い、世界の観光客を引きつけてきたこの街に、五星紅旗がはためき、人民解放軍が駐屯するようになって10年が過ぎた。

 「一国二制度、高度自治の方針は貫徹された」。そう語る胡錦濤(フー・チンタオ)・中国国家主席を迎えての盛大な記念祝賀式典が1日開かれる。

 中国は社会主義国だが、香港の資本主義制度は50年間変えない。この一国二制度について、当初は多くの香港市民が不安がった。天安門事件の衝撃もまだ強く残っていた。だが、懸念したような事態には至らず、市民は安心し、親中派が増えた。カナダなどへ移民した人々も多くが戻ってきた。

 中国政府の慎重な対応が功を奏したのだろう。もともと、一国二制度は台湾との統一を想定したものだ。先に適用した香港で失敗できない事情もあった。

 一方で、香港社会の中国化を巧みに進めてきた。テレビのゴールデンタイムに中国国歌を流したり、英語教育を制限したりしてきた。「中国人」としての意識が着実に高まっている。

 経済の一体化も大きい。返還直後のアジア通貨危機や03年の新型肺炎SARS被害などで、香港経済は厳しい状況が続いたが、大陸の急速な経済発展に支えられて最近は好調だ。香港企業への市場開放をはかる経済貿易協力強化協定(CEPA)の実施や、大都市住民の香港への個人旅行解禁など、大陸側の措置が大きな刺激を与えている。

 大陸側にとっても、香港が培ってきた経済力や経験は大切だ。大陸の大手企業が続々と香港証券市場に上場するなど、国際金融システムを学び、試す場ともなっている。

 気になるのは、香港の自由社会の行方だ。新聞が中国政府の反発を招きそうな報道を控える傾向が見られる。大陸進出で潤う財界から敬遠されることを懸念しているらしい。大陸メディアは当局に管理されている。香港メディアが当局への監視を緩めれば、かえって中国全体の危機を深めるのではないか。

 香港メディアは、大陸の正しい情報を世界に伝えることも期待されている。新感染症の発生や環境汚染など重要情報をいち早く発信できるよう、厳しい目を向け続けてほしい。

 香港社会には、自由を守る潜在力がまだある。03年に言論の自由の制限につながる国家保安立法を制定しようとした時は50万人がデモに加わり、今年の天安門事件18周年の追悼集会にも5万人が集まった。民主派勢力は香港トップの行政長官と立法会(議会)議員の普通選挙を早期に実現させるよう訴え続けている。

 この都市の自由な空気を残し、さらに広げてほしい。国際社会との窓口である香港の機能は、大陸側にとっても重要であるはずだ。

【朝日・天声人語】2007年07月01日(日曜日)付

 熱帯魚店の水槽の底で、白黒太じま模様の生き物が漂っていた。えさを探しているのか、せわしなく脚が動く。香港から広まった観賞用ヌマエビの仲間だ。柿の種ほどしかなく、水質や水温が急変すると死ぬ。購入したら、時間をかけて水を合わせるのが長生きさせるコツという。

 香港が中国に返されて、きょうで10年になる。一国二制度という「水合わせ」は、返還から50年続く約束だ。2割の水が入れ替わった計算にしては、それ以上の中国化らしい。

 今、香港人の4割が本土の人と結婚する。香港株式市場の時価総額の半分は大陸銘柄で、観光客も半数が本土から訪れる。他方、中国政府を意識するメディアは自己規制に傾き、香港人による自治を意味する「港人治港」の展望も心細い。

 香港は「蒸し暑い真夏の夜、青緑色の南シナ海をフワフワ揺れる、宝石とガラクタと人を詰め込んだ小さな船」(上村幸治『香港を極める』朝日文庫)。であれば、もやい綱の片端を北京が握り直し、ぐいと引き込んだ図が浮かぶ。

 かの地を体感したのは返還前年の夏だった。突き出し看板の満艦飾、生ゴミと香辛料の異臭、汗も凍るかというビル冷房。それらは、資本主義の水で育った「東洋の真珠」の、虫の息にも思えた。されど真珠は呼吸を続ける。

 淡水エビは、もともと海にいた種が陸封されたものだという。鳥などから身を守るため、多くは地味な色合いになった。さて香港はどんな色で生き残るのか。さしずめ経済というえさは安泰だ。気がかりは政治の水である。


【毎日・社説】

社説:ファンド提案完敗 個人投資家がそっぽを向いた

 外資系投資ファンドなどが突きつけた株主提案は、株主総会でことごとく否決された。大半の株主は、目先の利益より長期的な視点で判断する姿勢を示した。ファンド側は完敗したと言っていいだろう。

 注目されたブルドックソースの場合、会社側が提案した買収防衛策導入への支持が80%を超え、スティール・パートナーズの提案を退けた。買収防衛策の発動停止を求めたスティールの仮処分申請についても、東京地裁は却下の判断を示した。

 TBSの株主総会でも、80%弱が会社側の提案を支持し、取締役の選任などを求めた楽天の提案は否決された。

 増配や役員選任など今年の株主総会では、多くの企業で株主提案が行われ、経営陣との対決の行方が注目されていた。

 今年2月には、中堅鉄鋼メーカーの東京鋼鉄と同業の大阪製鉄の経営統合案が、臨時株主総会で否決されている。東京鋼鉄の大株主である投資運用会社が、統合反対を呼びかけ、多くの個人株主が同調した結果だった。

 これと同じことが、自分の会社でも起こるのではないかと、動揺した経営者もいたはずだ。

 投資ファンドなどによる提案が否決となったのは、事前に委任状を獲得するなど、会社側の対策が功を奏した面もあるだろう。企業同士の株式持ち合いなど安定株主工作の効果もあるだろう。

 しかし、会社側の圧勝につながったのは、長期的な視点で保有を続ける個人株主が数多く、会社側の提案を支持したためだ。

 会社の業務について具体的なプランを示すこともなく、配当の増額を要求するファンドなどの行動に個人株主の多くが疑問を感じていた。

 増配という形で内部留保を吐き出させて、短期的に利益を得たとしても、企業経営を長期的にみた場合、マイナスに作用する。個人株主の多くはそう判断し、日本的経営を支持した。

 個人投資家は長らく物言わぬ株主として扱われていた。しかし、敵対的なM&A(企業の合併・買収)に直面した場合、個人投資家の判断がカギを握っていることを、痛感した経営者も多いだろう。

 個人投資家の支持を得られる経営が、企業防衛につながることを経営者は肝に銘じる必要がある。

 東京地裁がブルドックソースの買収防衛策を合法としたのは、株主総会の決定を尊重した結果だ。この判断を受けて、買収防衛策の導入にさらに弾みがつきそうだ。

 しかし、防衛策が導入されたからといって、企業は鉄壁の守りを整えたということにはならない。株主の大半の賛成を得て防衛策を導入したとしても、経営陣の保身が目的など合理性がない場合には、防衛策が違法となるのは自明のことだ。防衛策の導入は株価にマイナスに作用するという点も忘れてはならない。

 何よりの買収防衛策は、企業価値を高めることだ。このことを、改めて指摘しておきたい。

毎日新聞 2007年7月1日 東京朝刊

社説:国会閉幕へ 安倍政権のもろさが見えた

 通常国会が事実上、幕を閉じ、与野党対決の場は7月12日公示、同29日投票の参院選に移ることになった。

 野党が委員長席に詰め寄るなど委員会採決が混乱したのは衆院だけで14回。審議は数を頼みとする与党の強引さばかりが目立った。だが、実際には強さというより、安倍政権のもろさがあらわになった国会だったのではなかろうか。

 1月末に始まった今国会冒頭の最大テーマは、昨年末に辞任した佐田玄一郎・前行政改革担当相の不正経理問題を契機とした政治とカネだった。その後、松岡利勝前農相事務所の巨額光熱水費問題も発覚したが、真相解明は一向に進まず、政治資金規正法の改正も先送りされ続けた。

 一方で安倍晋三首相がまい進したのは、憲法改正の手続きを定める国民投票法や教育改革関連3法など「安倍カラー」をアピールする法律の成立だった。確かに一時は支持率が回復基調となり、首相は松岡前農相や、「産む機械」発言で批判を浴びた柳沢伯夫厚生労働相をかばい切ったことに自信を深めた時期もあったとされる。

 しかし、状況は一変した。もちろん年金記録漏れ問題だ。この件に関する首相の最も大きな責任は民主党が今国会冒頭から指摘していたにもかかわらず、問題の重大性に気づかなかったことだ。首相は2月には野党の追及に対し、「年金不安をあおる危険性がある」と反論していたほどだ。

 突然あわて始めたのは5月末の毎日新聞などの世論調査で支持率が急落してからだ。国民が何を望み、重視しているか。国民世論との乖離(かいり)は深刻だ。そして直後に松岡前農相が自殺。政権はダブルパンチに見舞われ、今度は焦りのみが目につくようになった。

 与党の慎重論を押し切り、参院選日程をずらしてまで会期を延長し、公務員制度改革関連法を成立させたのがいい例だ。国会での与野党協議を無視して、次々と「最重要法案」を連発する首相には、ともかく実績作りを急ぐ狙いとともに、与党内の抵抗勢力と対決して人気を得た小泉純一郎前首相のことも頭にあったのだろう。

 安倍首相も国民的人気を期待されて自民党総裁に就いた。しかし、肝心の支持率が回復しないことには、いくら強い指導力を演出しようとしても党内は離反し、空回りするだけである。終盤のどたばたぶりは、逆にこの内閣の弱さを見せつけた。与党との調整に関しては、「仲良し内閣」と言われ、閣僚に重しとなる存在がいないという当初からの不安が現実のものになった。

 そもそも今、衆院で3分の2以上の議席を与党が得ているのは前首相の遺産といっていい。安倍首相は今度の参院選で初めて国民の信を問うのだ。やはりもっと謙虚に国民の声に耳を澄ました方がいい。日米安保改定など在任当時は批判が強かった祖父の岸信介元首相を再三例に出す安倍首相は「後世に評価されればいい」と考えている節もある。だが、それもまた、独り善がりというものだ。

毎日新聞 2007年7月1日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:ジンクスは古代ギリシャで吉凶の占いに…

 ジンクスは古代ギリシャで吉凶の占いに使われた鳥の名が語源だ。とりつかれると、悪いことや良いことが重なる。事故死した米国の俳優、ジェームス・ディーンの愛車ポルシェはジンクスにとりつかれ、関係した人々は次々に不幸な目にあったという(荒俣宏著「ジンクス事典」長崎出版)▲さて、国会は混乱のうちに事実上閉幕し、与野党対決の舞台は参院選に移った。その参院選をめぐってもジンクスがある。延長国会後の選挙では自民党が大敗するというのがそのひとつだ。1989年、宇野宗佑首相は延長国会後の選挙に惨敗して退陣した▲9年後の橋本龍太郎首相も延長国会後の選挙で敗北し、政権の座を追われた。くしくも、今年はそれから9年がたつ。一方、12年ごとに統一地方選と参院選が重なる亥(い)年は投票率が低くなる、というジンクスもある▲核となる地方議員の動きが選挙疲れで鈍くなるため、といわれる。確かに、12年前の参院選は投票率が44・52%(選挙区)と過去最低を記録している。24年前、36年前、48年前の参院選も、その前後の選挙に比べると投票率は極端に低い▲今年は亥年のうえ、国会会期の延長で投票日が夏休みのまっ最中にズレ込むという悪条件が加わった。低投票率が懸念されるゆえんだ。投票率が低いと組織票の厚さで与党が有利、との見方が一般的だ。だとすると、二つのジンクスは両立しにくいことになる▲「12年ジンクス」の通りに今回も低投票率となれば、与党大敗という「9年ジンクス」が繰り返される可能性は薄まる。逆に「12年ジンクス」が破られるようだと、「9年ジンクス」が続く可能性が高まる。どちらのジンクスが生き続けることになるか。カギは有権者が握っていることだけは確かだ。

毎日新聞 2007年7月1日 東京朝刊


【読売・社説】

国会閉幕 「対決」演出の政治は不毛だ(7月1日付・読売社説)

 各政党とも「政治決戦」と位置づける参院選へ、いよいよ本格的に動き出す。

 激しい与野党攻防の末、30日未明、参院本会議で、社会保険庁改革関連法や年金時効撤廃特例法、公務員制度改革関連法などが成立した。5日までの会期を残して、国会は事実上、閉幕した。

 社会保険庁改革関連法は、社保庁の廃止・解体、非公務員化によって、ずさんな、お役所仕事を根絶し、年金の信頼回復へ抜本的な転換を図るものだ。速やかに実現しなければならない。

 ◆混乱の原因は何か◆

 今国会では、国民投票法や教育改革関連3法が成立した。いずれも国の姿の根幹にかかわる。

 国民投票法の成立で、憲法改正条項があるのに、改正のための手続きに関する法律がない、という憲法の欠陥が解消された。国民がようやく、憲法改正という最大の主権行使をできるようになったのは、画期的なことである。

 教育改革3法によって、安倍首相が掲げる「教育再生」の足掛かりができた。日本の将来を支える人材の育成に実効が上がるよう、着実に施策を講じていくことが大事だ。

 だが、全体としてみれば、今国会は、混乱の方が目立った。

 参院での与党過半数割れの実現を最大の目標とする小沢代表の下で、民主党が一貫して対決姿勢で臨んだことが一因だ。与党の強硬姿勢を引き出し、「強行採決」「数の横暴」などと批判できる状況を作り出す狙いがあったのだろう。

 国民投票法にしても、憲法調査特別委員会の与党と民主党の理事間では、共同修正を目指していたが、民主党執行部の反対で、与野党協調は崩れた。

 国、地方を合わせて長期債務残高が2007年度末で約770兆円に上る深刻な財政をどう再建するのか。年金をはじめとする社会保障制度は、安定と持続のために、どう改革すべきなのか。財源を確保するために、消費税率引き上げなどの問題に、どう取り組むのか。

 日本の平和と安全への深刻な脅威である北朝鮮の核・ミサイルをはじめ、外交・安全保障上の課題も山積している。

 今国会で論議すべきは、こうした国や国民生活の基本にかかわる重要問題だったはずだ。対決の構図を描き出すことに腐心したのでは、骨太の建設的な論戦の影が薄くなるのも当たり前だ。

 その結果、不明朗な事務所費をめぐる政治とカネの問題や、終盤の年金記録漏れ問題などをめぐる責任追及や批判の応酬ばかりが、前面に出てしまった。

 ◆競うべきは重要政策◆

 今国会では、党首討論は2回しか行われていない。5日までの残る会期を無為に終わることなく、もう1回、党首討論をしてはどうか。討論を通じて、参院選の争点を明確にすべきではないか。

 各党は、参院選に向けて公約を発表している。今後は、問題点を掘り下げる論戦を展開すべきだ。

 例えば、消費税の問題だ。

 民主党は、消費税率を引き上げず、全額を年金の基礎部分の財源に充て、現行の給付水準を維持するという。

 04年の参院選では、3%程度の消費税率引き上げを含む年金制度改革を主張していた。なぜ、主張が変わったのか。消費税率の引き上げなしで、給付水準が本当に維持できるのかどうか、より詳細な説明が必要だ。

 自民党は、07年度を目途に、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現するとしている。だが、本格的な議論は秋以降だという。

 自民、民主両党ともに、負担を求める政策を打ち出すのは、選挙で不利に働くという判断があるのだろう。責任政党として、消費税率引き上げをめぐる論戦を避けるべきではない。

 民主党は、「民主党の政策 10本柱」のトップに「年金を守る」を置いている。年金問題を争点にしたほうが有利という判断からだろう。

 だが、選挙戦が国会終盤の攻防の延長になってはなるまい。有権者が求めるのは、不安を解消する具体策や抜本的な制度改革に関する説得力のある議論だ。

 現在の憲法の下で最初の国会が召集され、参院が活動を始めて60年になる。参院選を機に、今国会を振り返りつつ、参院のあり方を考えることも大事なことではないか。

 ◆参院のあり方も争点◆

 本来、参院に期待されるのは、衆院への抑制、補完機能と言われる。

 しかし、現実には、参院は「衆院のカーボン・コピー」化し、衆院での政党間対立がそのまま持ち込まれ、政治的対立と混乱の「政局の府」となっている。

 29日から30日未明にかけて、参院本会議を舞台にした与野党の攻防も、衆院での対立劇の繰り返しだった。

 これが望ましいのかどうか。参院の役割や権限を考えることは、新しい時代の政治の構造をどう構築するか、という問題にもつながる。

 参院選に臨んで、有権者にとって、こうした視点も重要なポイントだろう。
(2007年7月1日1時42分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月1日付 編集手帳

 6月の株主総会は経営陣と外資系投資ファンドの攻防が注目されたが、終わってみれば経営陣の圧勝だった。「過剰な内部留保は株主に還元を」という投資ファンドの要求にも賛同者は少なかった◆要するに利益をもっと株主に回せという主張だった。従業員の立場はあまり考慮していないようにみえた。標的となった会社で働く人たちの中には、憤慨しながら推移を見守った人も多かったのではないか◆投資ファンドは盛んに「企業価値の向上」と言ったが、もっと具体的に説明してくれないとわからない。「株主が会社の所有者」だとも言う。経営者は株主の代理人であり、株主の財産を増やすために義務を果たさなければならない、という英米の考え方だ◆一方で社会経済学者ロナルド・ドーアさんの著書「誰のための会社にするか」によると、経営者は株主や従業員、下請け会社、債権者、顧客、地域社会の利害を勘案すべきだとする考えがある。実践している企業も少なくないだろう◆「会社の『あるべき姿』は国によって違う。時代によっても違う。国ごとの歴史・文化・一般常識の上に立ち、複雑な利害の均衡点を模索する姿勢が問題を解く鍵となる」◆第一生命相談役の櫻井孝頴さんが本紙の書評欄で以前、こうドーアさんの考えを要約していたが、その通りだと思う。
(2007年7月1日1時50分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】総会活性化 意識変化が熱気を呼んだ

 株主総会シーズンが終わった。今年は株主側と企業側が委任状争奪戦を展開するなど緊迫した総会が相次ぎ、世間の関心も高まった。不祥事を起こした企業では株主が法令順守を迫るなど、総会本来の経営監視機能が働く場面もみられた。総会の活性化は大いに歓迎したい。

 増配要求など株主、とりわけ投資ファンドからの提案は多くが否決されたものの、株主提案が4割以上の賛成を獲得した例もある。会社側も緊張感を持って株主の理解を得る経営姿勢の重要さを痛感したに違いない。

 かつて株主総会は会社側提案を淡々と可決する場でしかなかった。その総会の重みを強烈に印象づけたのが米ファンドのスティール・パートナーズとブルドックソースの攻防だ。

 スティールの買収提案に対し、ブルドックは、防衛策を総会に諮り、特別決議で可決させた。これを受けるかたちで、東京地裁は防衛策差し止めを求めたスティールの仮処分申請を却下している。スティールは東京高裁に即時抗告したが、地裁の判断の持つ意味は大きい。

 防衛策は新株予約権発行が柱だ。全株主に1株当たり3株の普通株に転換できる権利を与える。スティールには普通株転換をさせないので、権利が行使されると持ち株比率は急低下する。その代わりに、ブルドックがスティールの予約権を買い取る仕組みだ。

 新株予約権を使う防衛策は、ニッポン放送がライブドアとの攻防で導入を試みたが、司法は「ノー」と判断した。予約権引受先をフジテレビジョンに限った上、取締役会決議のみで導入を決めたため、株主平等原則に反する「経営者の保身」とみられたのだ。

 ブルドックは明らかに、この事例を教訓にしている。予約権をスティールも含めたすべての株主に与えたこともそうだが、何よりも株主総会で賛成が8割を超えたことが、地裁の決定に作用したのは間違いないだろう。

 企業買収ルールは会社法などで整備されたとはいえ、あいまいな部分も多い。司法判断の積み重ねは不可欠だ。そうした中で、株主も経営陣も、総会の重みを実感としてとらえ始めた結果が、今年の熱気につながった。この流れを止めることなく、さらに加速させたいものである。

(2007/07/01 05:02)

【主張】重要法案成立 評価したい首相の“覚悟”

 30日未明まで続いた参院本会議で、社会保険庁改革関連法と年金時効撤廃特例法、公務員制度改革関連法などが成立した。野党側の激しい抵抗に遭いながら、安倍晋三首相が重要法案を処理し、国会会期延長の目的を果たしたことは評価したい。

 公務員制度改革法については、付託された参院内閣委員会の委員長ポストを民主党が握っており、与党の採決要求に応じなかったことから、委員会採決を省略して本会議で直接採決する「中間報告」で成立が図られた。

 多数与党による一方的な議会運営にもなりかねず、好ましいやり方とはいえないが、野党の審議遅延戦術としての側面が強かった以上、やむを得ない措置だったといえる。

 「国民のためにやるべきことを、ひたすらに、愚直にやっていく」。首相は採決に先立つ28日付安倍内閣メールマガジンでこう決意を示していた。

 政府・与党が参院選日程を遅らせてまで会期延長に踏み切ったことに野党は、「選挙前の実績づくり」「年金問題の逆風が弱まるのを待つ作戦」などと批判した。国民が同様に受け止める恐れもあったが、首相は批判を覚悟の上で首尾一貫した姿勢をとった。

 これに対して野党側は内閣不信任案や閣僚の問責決議案などを乱発した。国会ルールに基づく抵抗戦術であり、少数派の野党が態度表明する権利として一概には否定できまい。だが、当事者たちが、これによって有権者の支持を得られると本気で考えていたのだとすれば情けない話である。

 政府が防戦一方となっている年金問題を数少ないテコとして、参院選に向けて「戦う野党」を印象づける狙いも野党側にはあったのだろう。

 内閣不信任決議案の趣旨説明で、民主党の菅直人代表代行は、首相に対して衆参同日選を挑発的に迫った。

 民主党側が本当にその覚悟を決めているのなら、今後は小沢一郎代表と首相が直接論戦を交わす場づくりなど、与野党が国民の前で徹底討論する場面を数多く設けるよう努めるべきだ。それが参院選の争点や有権者の選択肢を明確にすることにもなる。

 深夜の国会攻防に意義を見いだすことは難しいが、目に見える形での討論なら大歓迎である。

(2007/07/01 05:02)

【産経抄】

 「短夜(みじかよ)」とは文字通りこの時期の早々と明ける夜のことだ。だが俳句や短歌に詠まれるときには、少々艶(つや)っぽい意味も含んでいるようだ。「妻問い」の習慣がまだ残っていた時代、夜が短いと早く別れなければならない。そんな男と女の「恨み節」である。

 ▼別れの朝を後朝と書いて「きぬぎぬ」と読ませるのと似ている。蕪村には「みじか夜や枕にちかき銀屏風(びょうぶ)」という、ドキッとするような句もある。単に夜が短いという天文現象に、これほど文学的意味を持たせた昔の人々の想像力の豊かさには恐れ入る。

 ▼しかし、昨日の国会の「短夜」は、そんな潤いやロマンもない空しいだけのものだった。残った重要法案を何としても成立させようとする与党に、野党が内閣不信任案などを連発して抵抗する。すべてが終わったのは、もうすぐ短い夜が明ける午前3時前だった。

 ▼1カ月後には参院選を控えている。野党としても対決姿勢を強め、存在感を示したいところだったのだろう。だが、当然のことながら不信任案は否決され法案はそのまま成立する。とあっては、議員の皆さんの徒労感もひとしおかと、同情の一つも寄せたくなる。

 ▼ 毎年のように演じられるドタバタ劇と言ってしまえばそれまでだ。しかし、今年は特に国民に不安が広がっている年金問題があった。それを払拭(ふっしょく)するためには、対決姿勢よりも互いに譲り合って必要な対策を打ち出す。そんな新しい与野党の関係はないものかと思った。

 ▼ともかくも国会は事実上終わり、暑く長い選挙戦が始まる。年金問題が最大の争点になることは避けられないだろう。だが一方で、民主主義のあり方を考える選挙ともしたいものだ。来年も再来年も「空しい短夜」を迎えることのないように。

(2007/07/01 05:00)


【日経・社説】


社説 エコロジーとエコノミー 両立示す教育(7/1)

 2005年から「国連・持続可能な開発のための教育の10年」=ESD計画が始まっていることを知る人は、どれほどいるだろうか。この計画は小泉前首相が提唱し、日本の提案に基づいて国連総会で採択された。その事実を日本が忘れている。資源を一方的にむさぼらず、二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガスの排出を抑え、持続可能な経済社会を築くには、教育が決定的に重要だ。

 縦割り行政の弱点

 技術開発や新しい経済的なシステムの導入も大事である。だが、人の心のありよう、環境や地球に対する見方が変わらなければ、それらは持続しないし定着もしない。

 その環境教育・環境学習が、日本ではいまひとつ盛り上がりを欠いている。2003年には議員立法で「環境教育の推進に関する法律」ができ、2006年にはESDの国内実施計画もつくられた。先のハイリゲンダム・サミットの直前に安倍晋三首相が発表した「21世紀環境立国戦略」の八つの柱の中には、環境教育も盛り込まれた。

 官のしつらえた枠はいくつもあるのに、学校教育や社会教育の現場での動きが伴っていない。ESDの言い出しっぺではあるが、環境教育という意味では日本の取り組みは緒に就いたばかり。早くから取り組んでいるドイツの現状と比べると、日本社会に特有の弱点も見えてくる。

 たとえば、日本政府が推進する「学校エコ改修と環境教育」事業。外断熱、二重ガラス、省エネや新エネシステム採用など、学校改修と地域協力、環境教育を掲げている。環境、文科、経産、国交、林野の省庁がそれぞれの省益を背景に参画し、事業資金の半分を政府の補助金でまかなうというのがみそだ。

 ドイツ西部、ボンやデュッセルドルフを抱えるノルトライン・ウェストファーレン州。10年以上前から、「学校アジェンダ(行動計画)21」をつくって環境教育に取り組んでいる。かつての炭鉱住宅が廃虚のようにそびえる街、グラドベックの総合学校で聞いたのは、日本とは全く違うエコの発想だった。

 この学校は昨年、3万ユーロ(約500万円)分の省エネを達成した。壁に断熱材を入れたわけでも、ハイテクを使ったわけでもないという。1300人の生徒が全員何らかの形で環境活動に参加し、放課後に電灯を消して回るなど細かい活動の積み重ねで実績を残した。省エネ実績の半分に当たる1万5000ユーロの資金が州から付与され、それで新たな教材を買い、新たな教育プログラムを始める。

 日本式の役所の縄張りがものをいう補助金行政と違って、生徒が行動を通じて「環境の価値」を知る仕組みである。100万言のお説教よりも、1万5000 ユーロの経済的な成果が、二つのエコ、生態環境(エコロジー)と経済活動(エコノミー)が両立することを鮮明に教えてくれる。

 同じ州のエッセン市郊外にある幼稚園では、3000平方メートルの広い庭にいわゆる遊具が一つも見あたらない。サクランボがたわわに実り、カシスやクランベリー、フランボアーズなど実のなる樹木や灌木(かんぼく)が生い茂っている。園児は好きなだけ食べていい。砂場と園児らが造った小屋と、草木と池。遊具など無くても、子らは遊びの天才だという。

 伝える中身が大事

 この幼稚園の園児らは週に二度、近くの深い森に入っていく。雨が降っても森で過ごす。園長は「自然と濃密に接触して育った子は注意欠陥・多動性障害(ADHD)が出にくい」と、遊具のない庭と森の遊びをたたえる。就学年齢前後に落ち着きのない行動として表れるADHDの解決策としても、自然との共生は一つの答えなのだろう。

 日本でも学校ビオトープ(生物空間)づくりなど、自然を重視する環境教育は自律的に続いている。だが国の環境教育プログラムでは、幼児はまだ対象になっていない。大学院での環境指導者の育成にまで範囲を広げたESD計画で、幼児は今後の課題だ。エッセンの幼稚園長はいう。「幼いほど教育効果は高い」

 学校アジェンダ21に参加して、環境教育に力を入れている学校は、ドイツでもそう多くはない。中小河川の生態系を地域の学校が維持する「川の里親制度」など、様々なチャンネルを設けているが、ノルトライン・ウェストファーレン州では、参加校はまだ全体の1割に満たない。

 環境教育で彼我に差があるとすれば、数の問題ではなく、伝えるべきことの中身が、どれほど明確になっているか、という一点に尽きる。持続可能な社会の構成員として何を学ぶのか。行政や政治の「都合」で形を整えるのではなく、哲学と理念の明示がまず先にあるべきだろう。

【日経・春秋】春秋(7/1)

 1日は富士山の山開き。残雪の影響で頂上まで行けるか危ぶまれたが、富士吉田口の旅館組合関係者らの懸命の雪かきで何とか無事に道がついた。記録的暖冬で降るときに降らなかった雪が春先にドカッと降った。異常気象の表れだろう。

▼登山家の野口健さんは年末年始の1カ月間、ヒマラヤにいた。滞在中に雪は一度も降らなかった。「これじゃ、東京に雪が降るわけがない」。なのに帰国後、本来、降らないネパールの首都カトマンズに60年ぶりの雪が降った。地球は不安定になっている。ヒマラヤの異変は地球全体の異変だと野口さんは言う。

▼チベット語でエベレストはチョモランマ(万物の母)という。5月に中国のチベット側からも頂上に立った野口さんは過酷さゆえ改めて「死の山」との思いを抱いたが、山の環境は様変わり。ベースキャンプ(5200メートル)の入り口に売店やホテルが建ち、ラサからの道は完全舗装で新婚旅行のメッカになっていた。

▼来年8月の北京五輪の聖火がチョモランマ山頂を越えるため開発の流れは止まらない。昨年のきょう、青海省の西寧からラサまで開通した青蔵(せいぞう)鉄道は、中国のすさまじい西部開拓意欲の表れだろう。海抜3650メートルの天空の都・ラサは、迷宮の霊山ではなく、建設ラッシュで想像を超える都市に変貌(へんぼう)していく。


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