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2007年7月18日 (水)

7月18日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月18日朝刊)

[沖縄観光]きめ細かな台風対策を

 台風4号が沖縄本島を直撃し、那覇空港は足止めされた観光客らで混雑した。台風襲来の度に空港での寝泊まりを強いられる人が出てくる。何とか空席待ちの負担を軽くできないものかと考えさせられる。

 旅行日程が狂い、疲労もピークを迎えているはずだ。空席待ち整理券を手にしてもいつ出発できるか見通しがたたない。幼児らを抱える家族連れは大変だ。

 県観光商工部、沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)を中心に台風時の観光客対策、航空輸送対策など新たな取り組みが始まっている。だが、対策は緒に就いたばかりで、受け入れ態勢は十分とは言えない。

 台風時の対応が沖縄観光の印象を決定付けることもある。業界にとっては正念場であり、台風の襲来を沖縄観光のプラスイメージに変えていく逆転の発想が必要になるではないか。

 台風時に観光客を民泊させるため、個人や企業などでつくる「台風時観光客支援ボランティアヒューマンネットワーク」が三年前に結成された。

 ボランティア活動を資金面で支援するため、ベンチャー企業を中心にボランティア基金を創設。民間で観光客の宿泊を受け入れるホームステイ事業や空港内でのライブなどの活動を続けてきた。同ネットワークの会員は約八十人で受け入れ世帯は約六十世帯。

 大型の強い台風が吹き荒れた中で今回は会員五家族が十二人の宿泊を受け入れた。地道なボランティア活動には頭が下がる。こうした民間レベルのもてなしが、沖縄観光をさらに成長させるキーポイントになるはずだ。

 県観光商工部はこれまで、観光客の航空輸送対策について検討する委員会などを設置。この中で、空港施設外でも特別空席待ち整理券の発行ができるシステムや、台風時の総合情報発信システムの構築の可能性などについて議論を重ねてきた。

 OCVBは台風時に欠航情報やホテルの延泊手続きについての情報、空き室のある宿泊施設の情報などを提供している。だがまだまだ課題は多い。

 二〇〇六年に沖縄を訪れた観光客は五百六十三万六千九百人で、五年連続で過去最高を更新。観光収入は四千百四億八百万円で四千億円を突破した。

 県観光商工部は第三次県観光振興計画(〇八―一一年)の策定に着手し、十年後の観光客一千万人、観光収入一兆円達成へ向けた課題を探る。

 夏場の台風襲来は沖縄観光の宿命である。マクロの構想に安住することなく、非常時のきめ細かな台風対策にもさらに目を配り、リーディング産業を足元から育てたい。

[公益法人白書]「天下り天国」いつまで

 官僚の世界というのは、世の批判にも動じない、まるで難攻不落の砦のようだ。

 十七日、総務省が発表した本年度「公益法人に関する年次報告」(公益法人白書)で、依然見直しが進まない官僚の天下りの実態が浮き彫りになった。

 今回の白書によると、昨年十月現在の集計で、国所管の公益法人(社団・財団法人)の45%に当たる三千四十九法人に、関係する中央省庁から八千五十四人もの官僚が理事として再就職していることが分かった。

 天下り理事を省庁別でみると、最も多いのが、国土交通省の六百九十七法人(二千二百三十二人)。次いで厚生労働省の六百五法人(千二百四人)、経済産業省四百二十二法人(九百七十人)など。

 この傾向が談合など過去の行政と業者の癒着のケースと符合するのは、偶然だろうか。

 天下りは日本独特のものだという。その功罪はこれまで長年論議されてきた。官僚は再就職先で厚遇され、受け入れ側は官僚の口利きによって中央省庁との太いパイプを築く。

 だが、その結果、行政と業者のなれあい、もたれあいが生じ、企業間の自由な競争が阻害されて国民の税金、利益が損なわれてきた。

 国民の批判に国は、課長級以上の国家公務員が在籍した省庁と密接な企業へ再就職する場合、人事院の承諾などの対策をとった。さらに一九九六年には、公益法人は所管官庁の出身者が三分の一を超えないことを閣議で決定している。

 それでも後を絶たない官製談合などの不祥事に、先の国会では省庁ごとの再就職あっせんを廃止する改正国家公務員法が成立した。

 ただ同法は安倍政権の実績アピールの色合いが濃く、委員会採決を省く異例の形で決着。十分な国会審議のないまま成立した。同法が「天下り天国」にどれだけ有効か、国会での議論を今後とも継続してもらいたい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月18日 朝刊 1面)

 野村流といえば本島で普及している琉球古典音楽の流派だが、それが八重山にもあるということに気付いたのは、大学でサークル活動をしていたころだった。

 八重山には八重山民謡しかないと思っていただけに驚いた。でも遠い記憶を呼び起こせば島の地謡として知られる人たちが「柳」や「天川」といった純然たる琉球古典音楽をいかにも誇らしげに歌い上げていた姿が鮮やかに思い出される。

 その野村流を八重山に初めて伝えたのが屋嘉宗業(一八六六―一九五八)という人。その一生をお孫さんが書いたのが十四日付読書面に載った『屋嘉宗業・三絃を響かせ』(屋嘉和子著、大山了己編集)だ。

 開拓者の苦労がにじむ一冊であることはもちろんだが、書物というものは本題とは別の興味がわくものでもある。その一つが織物の話。大正五、六年ごろ石垣市では産業としての織物が盛んだったことが生き生きと語られているのである。

 記述に触れながら一つの疑問が解けた。幼いころ過ごした石垣島には那覇などに比べて桑の木が多かった。戦前、島の織物産業を原料面から支えたのは養蚕業であり戦後の桑の木はその名残だったのである。

 宮良長包の名曲に『桑の実』がある。それを聞くと小学生のころ、木に登ってイチゴのような食感を味わった記憶がよみがえる。あのころ、そんな島の産業の歴史を知っていれば、あるいはもっと別の味がしたのかもしれない。(真久田巧)


【琉球新報・社説】

公益法人天下り 役人天国では活性化阻む

 国が所管する公益法人の45%に当たる3049法人に合わせて8054人の所管官庁出身者が理事として天下りしていることが総務省の「2007年度公益法人に関する年次報告」(公益法人白書)で明らかになった。
 国民の根強い批判にもかかわらず、官僚の既得権益と化している天下りの実態は、ほとんど改善されていない。労せずして第二、第三の就職先が用意されているのだから、まるで「役人天国」だ。この状態を放置していいわけはない。
 06年の防衛施設庁談合事件では、同庁発注の空調設備、土木、建築工事を天下り受け入れ実績に応じて空調メーカーやゼネコンに配分、受注させていた。
 国土交通省などが発注した河川、ダム用の水門建設・改修工事でメーカーが談合を繰り返していた水門工事談合では、公益法人に天下りした元官僚らが関与していた。
 官僚の天下りが、出身省庁との癒着を助長し、不正を生む温床になったことは明らかである。
 「親方日の丸」の体質にどっぷりと漬かってきた元官僚よりも、民間の有能な人材を数多く登用するように改めるべきだ。それによって法人運営の透明化を図り、組織の活性化につなげる必要がある。
 6月末に成立した改正国家公務員法は、中央省庁による天下りあっせんを全面禁止し、08年中に内閣府に設置する「官民人材交流センター」に再就職のあっせんを一元化することを盛り込んだ。
 一方で、関係企業への天下りを退職後2年間禁止する事前規制は、センターへの一元化後、撤廃することになっている。
 天下りの規制を強化することで官民の癒着を防ぐのが狙いだが、センターが各省の人事当局と必要に応じて協力することは容認されるため、省庁が影響力を行使する余地は残された。
 いずれにしても、センターを窓口とした天下りが続くわけで、抜本的な解決策とは言い難い。
 公益法人白書によると、所管法人の天下り理事は国交省2232人、厚生労働省1204人、経済産業省970人、農林水産省964人の順に多い。
 予想以上の数だ。特定の社団法人や財団法人の理事になぜ所管官庁の元官僚が就かなければならないのか。国民に対する十分な説明もないままに、既得権益的な慣行が続いているのは由々しき事態だ。
 天下りがあるのは中央官庁だけではない。6月までに行われた県出資の第三セクターなどの首脳人事では、元副知事、元出納長がトップに納まった。天下り批判を強める国民世論に逆行していないか。
 国にしろ県にしろ、天下りの人材がどうして必要なのか、納得できる説明が不可欠だ。

(7/18 9:43)

学力テスト不正 点数が良ければいいのか

 昨年4月に実施された東京都足立区の学力テストで、公立小学校の校長や教員が試験中に児童の答案を指さして間違いを気付かせていた問題は、学校ぐるみの不正行為だったことが同区教育委員会の調査で明らかになった。
 足立区は2004年度から学校予算の一部を傾斜配分する施策を講じており、学力テストの伸び率も予算査定の判断材料になっているという。点数至上主義のひずみが学校ぐるみの不正となって表れた。
 何よりも懸念されるのは児童への悪影響だ。試験中に解答の誤りを教えられた児童はどう受け止めたのだろうか。教師による不正を目の当たりにし、いい点数を取るためならどんなことをしてもいい―と考えたとすれば不幸なことだ。
 学力テストの成績を引き上げるために、未来を担う子供たちの健全な成長を阻んでしまっては、それこそ本末転倒である。
 同小学校は、通常学級に在籍しながら必要に応じて特別支援学級にも通う「通級」の児童3人の答案用紙を保護者の了解がないまま無断で抜き取り、採点対象から除外していた。足立区内の別の小学校一校も保護者に無断で特定の児童を採点対象から外していた。
 そもそも、児童生徒の学力の実態を正しく把握し、指導方法などの改善につなげるのが学力テストの本来の目的であるはずだ。
 平均点の良しあしが、校長や学校を評価する判断基準になっているとすれば、学力テストの趣旨を逸脱している。
 区教委の調べでは、校長と5人の教員が、数人の児童の問題文を指さすなどして誤答に気付かせていた。教員は、校長、副校長、主幹の指示があったと説明していた。
 このような不正を指示した学校幹部を「教育者」と呼べるのか。不見識極まりない。疑問に思いながら指示に従った教員も、主体性がなさすぎる。
 政府の教育再生会議は公教育への競争原理導入を打ち出しているが、足立区の小学校のようなひずみを生まないか。点数さえ良ければいいというのでは教育の荒廃を招くだけだ。

(7/18 9:42)

【琉球新報・金口木舌】

 「沖縄のロゼッタ・ストーン」と呼ばれる石をご存じだろうか。北谷から読谷にかけての一帯で見つかった年代不明の「線刻石版」のことだ。船などをかたどったようなものが刻まれているが、いまだに解読されていない
▼嘉手納町中央公民館の民俗資料室で実物を見たことがある。どんな人がいつ、この線を刻んだのだろうか。古代琉球固有の文字との説もあるだけに、想像をかき立てられた
▼先ごろ3万7千年前の人骨・山下町洞人が国内最古の「新人」と発表された。人骨は1万年もたつと酸化して溶けてしまうが、隆起石灰岩で覆われた沖縄は、人骨が化石化するため、古い時代の人骨を発見できる貴重な環境にある
▼19日付で琉球・沖縄史に関する県内高校生の知識不足が報道された。一部の教師が熱心に取り組んでいるが、県全体として体系的に教育していない以上、子供たちだけを責めるわけにはいかない
▼例えば港川人と現代人はつながっているのか。沖縄には未解明のことが多い。裏を返せば足元に「宝」が数多く眠っていることになる
▼地元の歴史をきちんと教えることは、宝を発掘する人材を育てることにもなる。かの石版の謎も、いつの日か解明できるかもしれない。

(7/22 10:40)


【東京新聞・社説】

原発の耐震 より厳しい基準を示せ

2007年7月18日

 新潟県中越沖地震は、日本の原子力行政を大きく揺さぶった。火災の被害は軽かった。だが、原発の耐震性については、常に「想定外」を想定した厳しい基準で臨むよう、警鐘を鳴らしている。

 思わず息をのむ光景だった。

 東京電力柏崎刈羽原発内からもくもくと立ち上る黒煙の映像は、ニュースを見守る視聴者にも「恐怖」の意識を強く刷り込んだ。

 原発本体には影響なく、原子炉などと比べて耐震上の重要度が低い変圧器の火災であっても、軽視すべきではない。

 史上初の地震による原発施設内での火災、そして微量とはいえ放射能を含む水が漏れた事故への恐怖と疑念は簡単に消えない。関係者はまずこのことを胸に強く刻んでほしい。

 国の原子力安全委員会は昨年九月、電力会社が原発を造る際に想定すべき、原発の耐震設計審査指針を二十五年ぶりに見直した。

 直下型ではマグニチュード(M)6・5の地震が起きた場合を想定した旧指針を、未知の断層による最大の地震に対応できるよう改めた。

 活断層が近くに見つからない場合でも、最新の技術を駆使し、全国の記録を精査して、最善を尽くすことになっている。

 電力各社はこれを受け、一斉に原発周辺の地質調査を始め、新指針に沿った安全性の再評価に乗り出してはいる。しかし、見直し作業は遅れており、中部電力の浜岡原発3、4号機(静岡県)以外には、新指針が反映されていないのが現状で、ほとんどがM6・5対応のままになっている。

 近年全国でM6級の地震が頻発するのを見れば、それでは到底安心できないと思うのが、普通の住民感覚だ。電力各社は、国の新指針を反映させるというよりは、新指針を超える厳しい安全基準と、それに基づく現有施設の評価結果を速やかに示すべきである。

 今度の地震は、設計時の想定を上回る揺れの強さだったと、東電も認めている。科学は日進月歩であり、地震学では新たな発見や見解が次々提示されている。

 衛星探査などにより、未知の断層も明らかになってきた。日本は地震の巣窟(そうくつ)だ。原発の安全に絶対はない。浜岡のように、東海地震の震源域の真ん中に建ててしまったことが、後から分かった例もある。

 大切なのは、新しい科学的知識が得られるたびに、それを反映した、より高度な安全性の確保に努めることだ。同時に現状を一般に説明し、理解を得る努力をし続ける電力側の基本姿勢だ。

暴力団対策 資金源と銃を根絶せよ

2007年7月18日

 今年の警察白書は「暴力団の資金獲得活動との対決」を特集した。組員や元組員による発砲事件が相次ぐ。資金源を封じるとともに、銃器を徹底的に取り締まり、暴力団のない社会を実現したい。

 暴力団といえば、覚せい剤密売やとばく行為、飲食業者などから巻き上げる「みかじめ料(用心棒代)」を伝統的に資金源としているが、白書は「近年、資金獲得活動が多様化、巧妙化している」と指摘する。

 バブル経済期に暴力団は、元組員などに暴力団組織とは無関係を装った不動産関係会社を経営させ、その会社が「地上げ」や「土地転がし」によって得た金を組織に提供させていたが、最近は証券取引にも食い込んでいる。

 大阪では暴力団関係者らが業績の悪化したIC機器製造会社を利用して仮装増資を企て、新株売却代金約六億五千万円を証券市場から調達、その一部が暴力団関係企業に流れるという事件が摘発された。

 暴力団による不法な株取引が横行すれば証券市場の信頼が失われてしまう。東京証券取引所は昨年十二月、暴力団などへの排除対策連絡協議会を設立した。警察当局とは積極的に情報交換を続けてほしい。

 不法収益の出所や所有者を隠そうとするマネーロンダリング(資金洗浄)行為も巧妙化している。犯罪組織へ流れる資金を遮断するための犯罪収益移転防止法がことし四月から施行されたが、この法律が効力を発揮するには、金融機関や宝石・貴金属業、不動産業など関係者がどれだけ情報を提供できるかにかかっている。社会を挙げて暴力団の資金源を封じ込めていきたい。

 資金面と併せて、暴力団対策で重要なのは銃器の取り締まりだ。長崎市では市長が射殺され、東京都町田市や愛知県長久手町では銃を使った立てこもり事件が起きた。いずれも暴力団員や元組員の犯行だった。

 だが、拳銃の押収件数は減少傾向にある。白書は「隠匿や密売の方法が巧妙化した」と捜査の難しさを認めている。市民は潜在化した銃社会を意識し、情報があれば警察当局に提供することも必要な時代になったようだ。

 残された手だてとして、銃の所持について罰則を強化する立法措置がある。銃を持っていただけで実刑という重罰になれば、銃犯罪の予防効果が期待できるかもしれない。

 長久手町の事件では、防弾衣を着ていたにもかかわらず、特殊部隊隊員が撃たれて殉職した。防弾衣は改良が必要だろう。警官配備や指揮など事件捜査の問題点も検証し、教訓を銃対策に生かしてほしい。

【東京新聞・筆洗】2007年7月18日

 フィンランドの学校では日本人からすると、のんびりに見える授業が行われている。義務教育にあたる十六歳まで、他人と比較するような学力テストがないからだ▼それでも経済協力開発機構が実施した二度の国際学力調査でトップクラスの成績を上げ、「学力世界一」とも称されている。フィンランドの教育に詳しい都留文科大学の福田誠治教授が自著でその謎解きをしている▼学力テストで点数競争をすると、テストに出そうなところしか学ばなくなる。つまり能力の伸びを制限する。フィンランドでは「勉強するのは自分のため」との意識が子どもに行き渡っており、能力の伸びに制限がないという▼東京都足立区が昨年四月に実施した学力テストをめぐる不祥事は、テストとは何かを考えさせられる。ある小学校では校長と教諭五人が問題文を指さすなどして、児童に誤答を気付かせていた。本来なら正答できる力があったので、学力を正確に測ろうとしたと校長は説明している▼その学校では同じ傾向の問題が出ることを承知で、前年度の問題を解く練習もさせていた。頻度が多いため、答えを暗記した児童もいたという。この練習は他の小中学校四校でも行われていた▼足立区はテスト結果の学校別順位の公表や学校選択制、予算の傾斜配分を導入することで学校を競わせている。学力の向上が目的だが、点数競争の落とし穴にいつの間にか嵌(はま)っていたのだろう。不正をしても勝つことが大事だと教えているようでもある。子どもの心にどんな影響が出ているのか、心配である。


【河北新報・社説】

07参院選を問う 経済と格差/成長の果実はどこに行った

 過去最高の33兆円を記録した東証一部上場企業3月期決算の経常利益、1万8000円台と高値水準を保つ株価、9年ぶりに4%を下回った完全失業率―。

 数字を見れば、好景気が続き、経済は確かに上向きなのだろう。だが、果たして、その果実は働く者に届き、生活実感として根付いているか。参院選では、経済成長と、暮らしや格差の問題が問われることになろう。

 2002年2月に始まった景気拡大局面は6年目に入っている。昨年11月、期間としては、戦後最長の「いざなぎ景気」(1965年11月―70年7月、57カ月)を更新した。

 とは言っても、高度経済成長期とは明らかに異なる特徴がある。賃金が上昇し、生活も見違えるように豊かになった「いざなぎ景気」の経済成長率は実質で年平均11.5%あり、今回は2%台半ばだ。

 しかも、企業が生み出す付加価値のうち、人件費として従業員に支払われる割合を示す労働分配率は下がり続け、国税庁の05年度の給与所得調査では、平均年収は約438万円と8年連続でダウンした。

 これでは、いくら「いざなぎ景気」を超える好景気だと喧(けん)伝(でん)されても、納得する人は少ないだろう。

 平均年収が下がったのは、パート、派遣労働者など非正社員が大幅に増えたことが要因だ。

 経済がグローバル化し、企業は国際競争で生き残るため、まず人件費を切り込んだ。特にバブル経済崩壊後、正社員に比べて賃金が2分の1から3分の2と低い非正社員の雇用を常態化した。今、3人に1人は非正社員だという。

 「ヒルズ族」に象徴される超富裕層が出現する一方で、1日ごと、派遣会社から派遣先を命じられる日雇い派遣社員はじめ、いくら働いても、暮らすだけの収入がなかなか得られない「ワーキングプア」(働く貧困層)は数百万人に上るといわれている。

 働き方の多様性は重んじられるにしても、安定した収入や職場がないということは、社会不安にもつながりかねない。

 安倍晋三政権は、規制緩和、構造改革をてこに、市場競争を強めた小泉純一郎政権の負の遺産である「格差社会」を背負い誕生した。

 政権は、失敗した人に何度でもチャンスを与える「再チャレンジ支援」を掲げる。しかし、政策を見ると、各省庁が寄せ集めた小粒なものばかりが目立ち、抜本的対策が打ち出されているとは言い難い。

 安倍政権は企業を成長のエンジンと位置づけ、経済のパイを大きくし、じわじわ底辺部分に浸透させていく戦略を取る。

 経済成長か、セーフティーネットの構築か。格差是正の方策をめぐる与野党の論戦は熱い。

 東京、愛知など都市部と地方の格差も深刻だ。税収、産業経済、雇用など、どれを取っても地方に明るい兆しは見られない。早急に対策が打ち出されないと、「負け組」の常連として地方が固定化されかねない。
2007年07月18日水曜日

【河北新報・河北春秋】

 地震を古くは「ない(なゐ)」と言ったそうだ。もとは大地を表す「ない」と、振動するという意の「ふる」を合わせた「ないふる」。それが「ない」だけで地震を意味するようになった▼「ない」とは、家財も住宅も時には命をも奪う震災の状況そのもの。大地の振動はふだんあって当たり前の水や電気、ガスも遮断する。新潟県中越沖地震の被災地に日常の暮らしはない

 ▼ ライフラインのうち水道の被害が最もひどい。柏崎市内では全域で断水が続く。しかも復旧に最も時間がかかるのが水道だ。命の糧といわれる水がない暮らしには耐え難いものがあろう▼成人で1日2―2.5リットルの水分が必要。避難所で赤ちゃんのミルクを作るのにもお湯が要る。自衛隊の給水車に並ぶ被災者を見るにつけ心が痛む。病院では人工透析もままならない。水洗トイレが使えないことでもストレスはたまる

 ▼「避難所は嫌だ」と窮屈な車内で過ごす老夫婦の姿をテレビが映し出していた。3年前の中越地震で犠牲者が出たエコノミークラス症候群のことが頭をかすめる。避難所にいる被災者の体と心も心配だ▼自衛隊や自治体などから水や食料の配給を受けながら不自由な生活を強いられる被災者。その「2次被害」だけは防ぎたい。過去の震災から学んだことを生かさなければ。

2007年07月18日水曜日


【京都新聞・社説】

原発事故対策  耐震基準の見直し急げ

 新潟県中越沖地震の震源に近い東京電力柏崎刈羽原発で火災や放射性物質漏れが起きた。炉心本体の事故ではなかったが、安全性の面で重大な問題を提起している。
 どの原発でも起きる可能性が考えられるだけに、国が進める安全基準の見直し作業を、より厳しい想定の下で急ぐべきだ。
 今回、同原発は七基のうち停止中の炉を除く四基が緊急停止した。うち一基では、タービン建屋外にある変圧器で火災が発生した。微量の放射性物質を含んだ水漏れが起きた建屋もあり、一部が海に放出された。低レベル放射性廃棄物の入ったドラム缶約百本も倒れ、一部のふたがはずれているのも見つかった。
 中でも変圧器火災は鎮火までに二時間近くかかった点が大きな問題だ。火災発生後、一一九番がすぐにつながらなかった上、消防車の到着まで約一時間もかかった。施設内の社員たちで火事を消し止めることもできなかった。
 もし火災が、より危険な個所で起きていたら、との不安を抱かずにはいられない。国の原子力安全・保安院によれば、地震による原発火災は国内で初めてというが、自主防火態勢も地元消防との連携もお寒い限りだ。
 原発の安全というと、炉心保護や放射能漏れに注意が傾くが、施設全体の安全確保の面で、事故はまだ盲点が多いことを物語っていよう。
 原発の耐震基準についても今回地震は警鐘を鳴らす。柏崎刈羽原発は、未知の活断層による直下型地震対策として、地震の最大想定規模(限界地震)を従来基準通りマグニチュード(M)6・5として設計された。だが今回はM6・8の地震が原発から約九キロの地点で起きた。
 その結果、設計値の二倍を超える揺れが同原発を襲ったのだ。限界地震の設定が甘かったことを裏付けている。
 国は昨年秋、原子力安全委員会が二十五年ぶりに耐震指針を改定したのに基づいて、各電力会社に安全基準の見直しを指示した。過去にさかのぼった周辺活断層の有無や立地条件を十分に調査し、各原発ごとに最大の地震を想定して対応策を出すよう求めている。 安倍晋三首相は、全国の原発施設の災害対応の点検などを指示した。東電に対しては、担当大臣が柏崎刈羽原発の耐震安全性が確認されるまで運転再開を認めない方針を伝えた。塩崎恭久官房長官は耐震指針の見直しに言及している。
 昨年秋の耐震指針改定で、原子力安全委は限界地震を一応M6・8と想定して対応を指示した。だが今回の例を考慮すれば、阪神大震災のM7・3など、より厳しい条件とするべきだろう。
 新潟県は、柏崎刈羽原発を立ち入り調査した。国の調査も進む。事故の全容解明を急ぎ、公開してもらいたい。他の原発とも共通する課題を探り、一日も早く問題点と対応策をまとめる必要がある。

[京都新聞 2007年07月18日掲載]

個人情報保護法  改正で弊害なくしたい

 個人情報保護法の見直しを検討していた有識者でつくる内閣府の国民生活審議会が報告書をまとめた。
 二〇〇五年の同法の全面施行後、個人情報保護の側面が強調されすぎ、「過剰反応」の弊害などが指摘されている。
 報告書では「ガイドラインで適切な考え方を浸透させることができれば、かなりの部分は改善される」とし、法改正は先送りの形となった。
 だが、運用の見直しだけで「過剰反応」問題が解消されるかどうか、はなはだ疑問だ。
 本来、同法では、人の生命などの保護や公益性がある場合は、本人の同意なしに情報提供できるとしている。
 しかし、現場では「個人情報の秘匿」にとらわれ、公益性の法解釈まで思いが至らないのが現実だ。
 JR尼崎脱線事故で、病院側が個人情報保護を理由に、被害者の名前や安否確認について、家族の求めにも応じなかったのは象徴的な出来事といえる。
 新潟県中越沖地震では、多くの被災者が出ている。「過剰反応」で、高齢者らの救援に支障が出るようなことがあってはなるまい。
 審議会の報告では「全体的に見れば、『過剰反応』は落ち着いてきている」としている。果たしてそうだろうか。
 自治体では、民生委員にさえ高齢者らの情報を出し渋る傾向がある。学校の同窓会名簿や父母連絡網も作成しにくくなっているという。
 むしろ影響は広範囲にわたり、地域の結びつきを弱める方向に働いているように思える。
 官公庁が、不祥事を起こした職員の名前を伏せるなど、法を盾に身内の情報を隠すケースも目立つ。幹部が退官後に複数の法人を渡り歩く「渡り」の実態調査も後退を余儀なくされている。
 行政機関が持つ個人情報の扱いは、市民よりも行政に都合のよい仕組みになっていないか。
 日本新聞協会は先ごろ、報告書に対し、「法の名を借りた情報隠しや目的を曲解した過剰反応を止める措置が必要」とする意見書を内閣府に提出した。国民の「知る権利」を侵害しかねないだけに、当然だ。
 そもそも同法は、IT社会を迎え、大量の個人情報が本人に無断で利用されるのを防ぐのも重要な目的だった。だが、依然として、パソコンを介した個人情報流出が後を絶たない。執拗な電話勧誘やダイレクトメールが減る兆しはない。
 法は、こうした個人情報の流失防止に有効な手だてを打てているとは、とても思えない。
 報告書は、過剰反応について「さらなる措置の検討が必要」としている。情報流出の歯止め策も含めて議論をいっそう深め、全面施行から二年たった同法の改正に踏み切るべきだ。

[京都新聞 2007年07月18日掲載]

【京都新聞・凡語】

高齢世帯・耐震対策

 ベッドの夫をかばうように倒れていた妻。明るくカラオケが大好きだったおばあちゃん…。新潟県中越沖地震で亡くなった九人は、いずれも七、八十代のお年寄りだった▼三百棟を超す全壊建物の多くは古い木造住宅で、その下敷きになった。「頑張れ」。懸命の救出作業もかなわなかった。胸を痛めつつ、我が身を重ね、不安に思ったお年寄りも多かったのではないか▼なかでも現行の建築基準法に改められた一九八一年以前の木造住宅が十四万戸もある京都市では人ごとではない。戦前の建物の比率も全国平均の二倍、四万五千戸にのぼり、高齢世帯が多いとされる▼市は、古い木造住宅の耐震改修への補助制度(上限六十万円)を設けてはいる。だが、耐震診断が年間百五十件以上あるのに対し、改修の利用は制度創設から三年間でわずか、八件にとどまっている▼適用条件が厳しく改修に数百万円かかるため、なかなか手が出せないのだ。夫婦だけや一人暮らしのお年寄りなら、なおさらだろう。制度見直しを検討中というが、地震はいつ起きるか分からない。待ったなしで願いたい▼これは、何も京都市だけの話ではない。多くの自治体は補助制度すらない。それどころか肝心の国の対策が不十分だ。安心・安全は、暮らしの基本なのに心もとないかぎりだ。お年寄りの命を大切にしないで、美しい国もあるまい。

[京都新聞 2007年07月18日掲載]


【朝日・社説】2007年07月18日(水曜日)付

原発と地震―「想定外」では済まない

 新潟県中越沖地震をきっかけに、原子力発電所の耐震性が深刻な問題として浮かび上がってきた。

 震源に近かった東京電力柏崎刈羽原発の揺れが、想定をはるかに超えていたからだ。放射能を含む水が原子炉の建屋から漏れて、海に流れ込んだ。変圧器で火災も発生した。

 今回の地震は日本の原発がかつて経験したことのない大きな揺れだった。震源地からの距離も約9キロと近かった。

 しかし、だからといって、放射能が外部に漏れ出たり、火災が発生したりするのでは困る。十分な備えがあるというのが、原発建設の大前提だったはずだ。

 この地震列島には、全部で55基の原発が並んでいる。05年の宮城県沖地震での東北電力女川原発、今年の能登半島地震での北陸電力志賀原発も、想定を超える揺れだった。

 全国の原発の耐震性を再点検し、対策を急がなければならない。

 今回の地震は、あまり重視されていなかった海底の活断層が起こしたらしい。日本列島には、未知の活断層があちこちに潜んでいる可能性がある。活断層をもっと丁寧に調べなければならない。それが今回の大きな教訓だろう。

 耐震指針は昨年、約30年ぶりに強化された。阪神大震災などの経験から、マグニチュード(M)6.5の直下地震を想定するだけでは、不十分なことが明らかになったからだ。想定する直下地震の大きさを数字では示していないが、目安としては、M6.8程度という。

 だが、今回の地震の規模はM6.8だった。その地震で放射能が漏れ、火災が起きたのだ。新しい指針で果たして十分なのか。改めて考える必要がある。

 それにしても、柏崎刈羽原発の備えや対応にはお粗末さが目立った。

 地震が起きれば、使用済みの燃料を保管するプールも揺れ、放射能を帯びた水が飛び出すこともあるだろう。それが放射能の管理区域内にとどまらなければならないのに、外に出てしまった。

 どこに手落ちがあったのかを突きつめなければならない。ほかの原発でも同じような問題を抱えているはずだ。

 原子炉本体とは離れているとはいえ、敷地内の変圧器で火災が起きたのも深刻な問題だ。地震が起きたときにどのような負荷がかかるのか、目配りが足りなかったのではないか。

 変圧器の絶縁用の油が燃えたとみられているが、そんなにたやすく火事になるものなのか。

 もっと疑問なのは、消火するまでに約2時間もかかったことだ。地元の消防隊の到着も遅かったようだが、原発が自力で素早く消し止められないようでは、なんとも心もとない。

 今回は、比較的新しい原発だったが、老朽化した原発だったらどうだっただろう。今回の事例を徹底的に究明して、教訓として生かす必要がある。

政府の役割―年金解決に市場の知恵を

 年金記録が5千万件も宙に浮いている問題や、コムスンによる介護保険の不正請求など、社会保障の根幹にかかわる不祥事が相次いでいる。当事者の役所や事業者の責任が厳しく問われ、参院選の争点にもなっている。だが、それだけではすまないだろう。

 社会の中で政府が果たす役割を、根本的に考え直す必要があるのではないか。

 19世紀から20世紀にかけてできた社会保障制度の発想は「市場の失敗を政府が是正する」というものだ。資本主義経済は暴力的で、競争に負けた人々の生活を破壊する。政府は市場経済の外側にあって市場経済という巨象が暴れないよう外からオリをつくる、という発想だ。

 しかし、今回あらためて明らかになったことは、市場の失敗を正すはずの政府もまた大失敗をする、ということだ。

 年金記録は言うまでもなく、コムスンの不正でも、制度設計をした政府に大きな責任がある。民間はもうかるからこそ努力する。民間の活力を福祉事業に導入するなら、優れた福祉サービスを提供する事業者が利益を十分に上げられる仕組みを用意すべきだった。

 国民全体が参加する社会保障という制度を、国民や企業の意思と離れたところで官僚や専門家が設計することの欠点が顕在化したのが今回の問題だ。「政府は市場よりもすぐれた能力や善い意図を持っている、あるいは持つべきだ」という20世紀の発想から抜け出さなければならないのではないか。

 一方、市場経済のあり方はインターネットとともに大きく変わった。20世紀は大企業が上から市場を支配していたが、ネットの発展で、個人がだれとでも自由に取引できる領域が爆発的に拡大した。市場経済は自由な個人や中小企業がグローバルに活躍できる場となりつつある。

 それは「市場の失敗」が起きやすい大企業中心の経済とは異質なものだ。市場経済の民主化が起きているのだ。

 政府は民主化された市場の一参加者でもある。巨象にオリをかぶせるのではなく、巨象の背中に乗ってどこに行きたいのか聞いてみる。そんなかかわり方ができないか。押し付け型の管理でなく、市場に参加する人々によって自然と秩序がつくられ得ることを信頼する。その発展をどう手助けするか考え、必要に応じて制度化するのが政府の仕事になる。

 宙に浮いた年金記録の解決策も、役所が抱え込まず、ためしにネットでみんなに聞いてみたらどうだろう。ネット上には技術的な問題と解答を交換するサイトがあり、予想外に良い答えが得られることもある。ネットを通じて世界中の人々の様々な知恵を自由に結びつけることができるようになった。

 官僚や「有識者」に丸投げせず、オープンな市場の知恵をもっと信頼する。それが21世紀に市場と国家の役割を仕切り直すうえで必要ではないか。市場とは結局、私たち自身のことなのだから。

【朝日・天声人語】2007年07月18日(水曜日)付

 脚本家の三谷幸喜さんが「理数コースの高校時代、数学のテストは毎回零点だった」と書いている。恩師の「無理せず文系に進め」で救われた。三谷さんを点数で縛り続けていたら「ラヂオの時間」も「古畑任三郎」もなかった。

 東京都足立区の小学校で、区の学力テストをめぐる不正があった。校長と5人の教師が、誤答している子の問題文を指さして回った。同校ではまた、保護者の了解なく障害児3人の答案を採点から外していた。

 足立区は学力調査の成績を学校一覧で公表してきた。この小学校は05年が72校中の44位。不正の06年には1位になった。禁を破って前年の問題をコピーし、学校ぐるみで練習を重ねた成果らしい。テスト業者と設問が一新された今年は59位だった。

 区教委は学校を競わせ、区の学力を底上げしようとした。校長は点取り競争に走った。指導力を採点されると考えたのか。トントンと児童に合図を送る姿は、粉飾決算に精を出す社長のようで物悲しい。残ったのは基礎学力ではなく、教育不信の赤字である。

 お茶の水女子大の耳塚寛明教授は「学力調査は利点が副作用を上回ることが条件だが、こうなると毒薬だ」と語る。弱い分野を見極めるという薬効は、正しく服用してのことだろう。

 今春、43年ぶりの全国学力調査が行われた。統計上は、日本の公立小中学校を縦一列に並べるだけのデータがそろうことになる。だが、個性は一列に並ばない。「横」に出るべきあまたの才能が、点数に縛られ、列の中で立ち枯れることを恐れる。


【毎日・社説】

社説:学力テスト不正 「子供本位」を見失っている

 「あきれた」と失笑するだけではすまない話である。

 東京都足立区独自の小中学校学力テストで明るみに出た不正操作は、学校ぐるみで行われていた。政府の教育再生会議などでは競争原理導入による改革論が盛んだが、まさに足立の不正はその「競争」の産物例といえる。そして気にかかるのは、今春復活した全国学力テストに、同じ影が差さないかということだ。

 問題は、ある小学校が昨年のテストで情緒障害児らを採点から外したことで発覚した。この学校はテスト結果の順位で前年の44位から昨年一気に首位に躍り出ていた。成績向上の操作をしていたのではという疑惑が浮上したのだ。

 区教育委員会が調査した結果、校長と5教員がテスト中の教室を回り、児童が誤った解答をしているとそれを指さし、誤答と気づかせていたと判明した。教員は管理職の指示があったという。また禁じられているのに前年のテスト問題を複写し、児童に事前に解かせて練習した。問題は前年とほぼ同じだ。ほかに4小中学校で同様に前年の問題で準備学習していた。

 足立区は学校選択制で、各校は入学希望者を引きつけるため競い合う実情がある。学力テストの学校別結果は公表され、区は成績上昇を予算の傾斜配分に一部反映させている。今回の不正はこれらのことが圧力になった結果ともいえる。ある教員はテストを「指導資料のはずが、競争をあおる道具になっている」と語っている。

 区教委は第三者を入れた委員会で改善策を検討するが、「競争道具」から真に「学力向上の指導資料」に変じさせるには一片の通知や監視では足りない。テスト(点数)を物差しに評価や予算付けをするような仕組みと発想を転換しないと、もっと巧妙に同じことが繰り返されるに違いない。

 現に1960年代までの文部省(現文部科学省)の全国学力テスト(学テ)は「学力日本一」の旗印を県を挙げて争い、好結果を得るため成績不振の子は休ませたり、足立区と同じ「指さし是正指導」をする学校まで現れ、批判と混乱のうちに打ち切られた。

 だが、ここ10年ほどの学力低下論議を背景に独自のテストをする自治体が増え、文科省も4月、240万人に及ぶ小学6年、中学3年生を対象に全国学力テストを復活実施した。成績は集計中だが、文科省の公表は都道府県レベルにとどめ、その先の扱いは市町村や学校の判断次第という。

 足立区の例を見れば誰しも懸念するだろう。このテスト成績を評価基準にしたり、学校や教委のアピール材料とするような事態だ。

 テストはあくまで子供本位に指導資料を得るため行うものだ。予算を反映させるとしても、むしろ成績が悪く、充実した指導を要する学校が対象になるべきで、「高得点の褒賞」ではないはずだ。

 公表のあり方も含め、新学力テストの結果活用についてきちんとした認識の共有をしておかないと必ず悔いを残す。足立区の問題は、その警鐘と受け止めるべきだ。

毎日新聞 2007年7月18日 東京朝刊

社説:地震と原発 安全・安心に労を惜しむな

 日本列島の付近ではプレートが衝突し合い、ひずみがたまっている。将来ずれを起こす可能性のある活断層もいたるところにある。いつ、どこで、大きな地震が起きても不思議はない。

 その国土に全部で55基の原発がある。耐震安全は十分に確保されているのか。16日に起きた新潟県中越沖地震では、国民が心配に思う事態が複数起きた。それぞれ早急に検証し、安全・安心に結びつける必要がある。

 人々がまず不安に思ったのは火災だろう。東京電力の柏崎刈羽原発の施設内にある変圧器から出火、黒い煙が上がった。消火活動は進まず、鎮火まで約2時間もかかった。東電は原発で火災が生じた場合、自主的に消火することにしているが、消火用水の水圧が低下していたこともあり、機能しなかった。別の場所で消火用の水を送る配管も損傷し、消火体制が不十分だった。

 放射能漏れに直接結びつく場所でないとしても、延焼する恐れがある。しかも、黒煙を上げ続ける原発施設をそのままにしておけば、人々の不信感が増す。地震の際に消防車が出払う可能性は十分にあり、日ごろから自主的な消火体制を整えておくべきだ。地震による火災については国の指針にも明示的な規定がなく、これも明確にする必要がある。

 さらに本質的な問題は、原発の耐震性が十分に確保されているかどうかだ。今回は耐震設計の想定の2・5倍の揺れが観測された。排気筒のダクトのずれや廃棄物のドラム缶の転倒など50件ものトラブルが起きた。政府は安全が確認できるまで運転再開しないよう指示したが、当然だ。

 日本の原発耐震指針は昨年9月に改定されるまで、30年近く抜本的な見直しがなされていなかった。柏崎刈羽原発は旧指針に基づいて建設されており、揺れを過小評価している恐れがある。各電力会社は既存の原発についても新指針による評価を実施している最中だが、東電は柏崎刈羽原発の周辺の断層や原発施設の耐震性を早急に見直し、必要なら耐震補強をする必要がある。他の原発でも見直しを急ぐべきだろう。

 今回の地震は、新指針自体の妥当性を検証する上でも重要だ。新指針にあてはめると、今回動いた断層は発見できるのか。発見できない場合でも、新指針によって想定される揺れの範囲内に収まるのか。今回の地震を詳しく分析し、指針の想定が不十分であるとわかった場合には、再改定をためらうべきでない。

 放射能を含む水や放射性ヨウ素などが周辺環境に漏れたことも軽視できない。人体に影響はないというが、通常は想定されていない事態であり、漏れた経路などを突き止めておく必要がある。

 地球温暖化を背景に、二酸化炭素をほとんど出さない原発には世界的な追い風が吹いている。しかし、日本では地震によるリスクと隣り合わせである。安全・安心の確保にかける労力や費用を惜しむべきではない。

毎日新聞 2007年7月18日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:越後魚沼地方の名産、越後縮の商人だった鈴木牧之の…

 越後魚沼地方の名産、越後縮(ちぢみ)の商人だった鈴木牧之の「北越雪譜」は、江戸時代の縮作りをこう記す。「雪中に糸となし、雪中に織り、雪水に洒(そそ)ぎ、雪上に晒(さら)す、雪ありて縮あり、されば越後縮は雪と人と気力相半(あいなか)ばして名産の名あり」▲とくに縮布の「雪晒し」は、太陽の紫外線が作り出すオゾンによる漂白作業で、縮に独特の風合いを与えた。越後縮は、豪雪地帯という宿命を背負いながら、それを他国の追随を許さぬ名品作りに生かした人々の「気力」の産物であった▲なかでも陸海双方の交通の要衝・柏崎は、小千谷などの縮布を全国に売り歩くかつての越後商人の拠点だった。その柏崎市などで震度6強を記録した新潟県中越沖地震である。3年前の震災の傷跡もいえないのに、人々の暮らしを襲った烈震にはまたまた「中越」の名が冠された▲亡くなった方は、大半が倒壊した木造家屋の下敷きになったお年寄りだった。柏崎市では65歳以上の高齢者が人口の25%を占めるという。災害はいつも社会の最も弱い人々にことさら厳しい被害をもたらす。1人暮らしの高齢者の古い家での被災は、その悲しい現実をまた浮き彫りにした▲水や電気などライフラインが寸断された町で、避難所暮らしをする1万以上の人々の健康も心配だ。避難所を出ての車内生活で、エコノミークラス症候群による犠牲を出した3年前が頭をよぎる。気詰まりな避難所暮らしを少しでも改善する工夫や精神的ケアでかつての教訓を生かせればと思う▲なぜまた中越か、と地震の理不尽を恨みたい住民もいよう。だが、自然の逆境と渡り合い、独自の暮らしと文化を培った土地柄である。地域持ち前の「気力」をもり立てられるような支援を住民の心の奥まで届けたい。

毎日新聞 2007年7月18日 東京朝刊


【読売・社説】

教育改革 「国家百年の計」の議論がない(7月18日付・読売社説)

 「国家百年の計」と言われる教育である。衆院と違い、大所高所からの議論が期待されている参院議員の選挙でこそ、争点にするにふさわしいテーマではないか。教育改革の論戦が、あまり聞こえてこないのはなぜだろう。

 自民党は昨年暮れ、「結党以来の悲願」だった教育基本法改正を実現させた。通常国会では、教員免許更新制の導入など教育改革関連3法を成立させた。

 これらの“実績”を背景に自民党は参院選に臨んでいる。「戦後レジームからの脱却」の一環として「教育再生」を掲げてきた安倍首相も、もっと国民にアピールしたいのではないか。

 「教員免許更新制や、不適格教員を教壇に立たせないシステムを円滑に実施する」。自民党は教育の公約の第一に、教員の資質・能力の向上を掲げた。更新制など新しい制度が、今後どう具体化されて教育現場に定着していくか。国民はそこに注目している。

 「確かな学力」と「規範意識」の育成も公約にある。そのための学習指導要領全体の見直しや、全国学力テストの活用などが、すでに始まっている。

 各政党や候補者は、これらの具体的取り組みに関する教育論戦を、活発化させてほしい。

 「幼児教育の無償化」など一部を除き、自民党の教育をめぐる公約の多くは、大幅な予算増に直結しないようなものになっている。国の台所事情に配慮したのだろう。公明党も同様だ。

 一方、民主党は「先進国で最低水準」にある教育への財政支出について「現行の5割増を目指す」と謳(うた)った。社民党も教育への公費支出を対国内総生産(GDP)比6%に引き上げるとしている。

 民主党は、公立高校の授業料を無償にするほか、1人月2万6000円の「子ども手当」を新設し、中学卒業まで支給する、とも述べている。

 子育て・教育の責任を親だけに負わせるのではなく、社会全体で支え、併せて「教育格差」も解消していくという。

 先進諸国に比べ、日本の教育への公費支出の割合が低いことは確かだ。高等教育分野では半分程度にとどまる。

 国際競争力のある研究拠点や人材育成の必要性が叫ばれたり、国際学力比較で子どもたちの「学力低下」が明らかになったりするたびに、教育財政論は話題に上る。だが、根本議論には至らず、改善の機運も起きずじまいだ。

 国は教育にどれだけカネをかけるべきか。これは国民の関心も高いテーマだ。国家戦略的視点に立った各党、候補者の主張を選挙戦でも聞いてみたい。
(2007年7月18日1時48分  読売新聞)

警察白書 暴力団の資金源をどう封じるか(7月18日付・読売社説)

 暴力団の勢力は一向に衰えない。社会の隅々に根を張り、暴利をむさぼっている。

 今年の警察白書は、「暴力団の資金獲得活動との対決」と題し、現状をどう克服していくかについて特集した。

 今年4月、指定暴力団山口組系の幹部が長崎市長を射殺した事件は、背景の一つに公共工事などの利権を巡る市側とのトラブルがあった。2月には、山口組系の元組長がコンピューター関連上場企業の経営権を握り、会社資産を不正流用した事件が警視庁に摘発されている。

 行政や企業が暴力団関係者の標的になっていたことを示す事件だ。こうした動きが、どれほど社会や経済活動の健全さを損ねているかわからない。

 組織を維持・拡大するために、金になることなら何にでも手を出す。その手口が最近、「多様化・巧妙化している」と白書は指摘する。

 民事介入暴力では「法律や各種手続きの専門知識が必要なため、周辺に(弁護士などの)協力者層を形成していった」という。これは、企業や行政を対象にした暴力についても言えることだ。

 組員だけをマークしていては、本質はつかめない。社会運動や政治活動を装うのが当たり前になっている。組織との無関係を装う偽装破門もある。周辺の「協力者層」も無視できない。こうした存在の解明と取り締まりも必要だ。

 資金源対策の一つとして、警察は、民法の使用者責任の規定に基づく暴力団組長への損害賠償請求訴訟を、積極的に支援することにしている。

 暴力団同士の抗争で下部組織の組員が警察官を誤って射殺した事件で、上部団体のトップにも責任があるとして損害賠償を命じた最高裁判例がある。民事介入暴力などの被害にも、使用者責任を問えるようになれば、組織の中枢に打撃を与えることができる。

 犯罪収益について、国税当局と連携して課税措置をとったり、資金洗浄罪などで摘発したりすることも大事だ。

 違法性が見いだしにくい暴力団ビジネスも多く、「暴力団対策法による中止命令などでは阻止することが難しくなりつつある」という現実もある。しかし、手をこまぬいていては、そんな巧妙さを認めることになってしまう。

 政府は先月、企業が暴力団などからの被害を防ぐための指針をまとめた。警察や関係省庁が後押しして、証券や建設など業界ごとに対策を進める動きも活発になってきた。必要な法整備を進めるとともに、社会全体の暴力団排除の機運も高めていかなければならない。
(2007年7月18日1時49分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月18日付 編集手帳

 江戸中期の狂歌師、唐衣橘洲(からごろも・きっしゅう)に夏の涼を詠んだ一首がある。「涼しさはあたらし畳 青簾(あおすだれ) 妻子の留守にひとり見る月」という◆これからの季節、家族を田舎に送り出したお父さんがひそかに味わう愉(たの)しみでもあろう。この歌には涼しさの“成分”がいくつか含まれている。「ひとり」。誰に気兼ねも要らない、それだけで涼しい◆「簾」。ある物は通し、ある物は通さない。作家の塩野米松さんは著書「最後の職人伝」(平凡社)のなかで「不思議な遮蔽(しゃへい)物である」と書いている。風を通し、ひとの視線は遮断してくれる簾も、涼味には欠かせない成分である◆ ひとりになれる場所はない。風は通らない。ひとの視線は容赦なく通る。涼の対極にある生活を余儀なくされた人たちもいる。新潟県中越沖地震の被災者、約1万2000人が避難所で一夜を明かした◆停電で空調設備が使えず、人いきれで蒸し風呂のようになった避難所もあったといい、ぐったり疲れた人々の表情を記事が伝えていた。うちわで子供に風を送る母親も、自身は眠れなかったに違いない◆男は、月を愛(め)でた。「ひとり」や「簾」よりも貴重な涼味の成分は、無心に月を眺めることができる心の平安かも知れない。余震におびえ、復旧作業を妨げる雨を憂えて夜空を仰ぐ人の目には、満月も三日月もないだろう。
(2007年7月18日1時48分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】暴力団の資金 証券市場への介入許すな

 暴力団の資金獲得活動が近年、ますます多様化・巧妙化している。

 今年の「警察白書」は、暴力団の実態を特集で取り上げている。取り締まる警察だけでなく、社会全体で暴力団排除に向けて協力体制を築いていくことが肝要である。

 白書でとくに注視したいのは、最近、暴力団などの反社会的勢力が、新たな資金源として、証券市場に積極的に介入していることだ。警察当局は、暴力団が上場企業の経営に介在し、増資に乗じて不正な資金を獲得するケースが目立っていると分析する。

 白書によると、証券取引はその犯行態様によっては億単位の多額の資金が短期間で入手できることから、暴力団にとっては魅力的な資金源の一つになっている。

 暴力団は闇の金融ブローカーらと手を組んで、業績が悪化した企業を利用した仮装増資やインサイダー取引、相場操縦などの不正な手口を駆使して利益を得、その一部を組の有力な資金源にしているようだ。

 わが国の証券市場はここ数年、ベンチャー企業の育成を目的に、規制緩和の流れが加速したこともあり、東京や大阪に相次いで新興企業向けの証券市場が開設された。これに目をつけたのが、金融ブローカーとその背後にいる暴力団だとされる。

 昨年2月、大阪府警が摘発した事件は、その典型であろう。大阪証券取引所2部に上場するIC機器会社の役員が仕手筋や金融ブローカー、指定暴力団山口組傘下組織の関係企業と共謀し、仮装増資で多額の資金を得ていたとして、逮捕された。

 警察当局は、このように闇の組織が証券市場に巧妙に入り込み、新たな資金源獲得の場にしていると警鐘を鳴らし、警戒を強めている。

 東京証券取引所では昨年12月、警察庁、警視庁と合同で、「反社会的勢力排除連絡協議会」を結成、暴力団などの情報について、連携強化に乗り出した。これらの動きは、暴力団の資金源を絶つ有効な手段となろう。

 また、白書は長崎市長射殺事件で問題となった「行政対象暴力」が増加していることも明らかにしている。官民一体で暴力団を追放、排除していくことを再確認したい。

(2007/07/18 05:02)

【主張】中越沖地震 災害弱者に十分な配慮を

 新潟県中越沖地震は、震源地に近かった同県柏崎市や刈羽村などの住民に深刻な打撃を与えている。

 負傷者は1000人を超え、1万人超の人が不自由な避難所生活を強いられている。被災地には無情な雨が追い打ちをかけるなど、復旧が急がれる。とくにお年寄りの救援・支援活動は、急務であろう。

 今回の地震は、67人の犠牲者を出した平成16年10月の新潟県中越地震の教訓から、政府や各自治体の地震発生直後の対応は、比較的スムーズに行われた。また、自衛隊の災害派遣や各県警で構成する「広域緊急援助隊」の救援態勢も早く、評価できよう。

 先の中越地震の際には初の脱線事故が起きた新幹線も、今回の大地震では沿線に設置した地震計が素早く感知して、送電の停止システムが働くなど大事には至らなかった。

 しかし、柏崎市などでは建物の倒壊が目立った。すべて、古い木造建築で、中越地震でも指摘された木造建築の耐震化が急務である。

 地震の発生は地域を問わない。被害にあった住民が、最も願うのが電気、ガス、水道のライフラインの全面復旧であろう。ライフラインが復旧しなければ、窮屈な避難所生活が長引くことになる。電力会社などライフラインを運用する企業、関係機関は復旧に全精力を傾けてもらいたい。

 さらに、水は飲料用ばかりではない。とくに深刻なのは、人工透析患者である。人工透析装置を動かすには、水が必要だ。

 しかし、水道のストップで透析を受けられない患者も出ている。これらの人は、遠くの病院に通院、転院しなければならない。地震に備えて、医療用水をどのように確保するかも、地震国・日本の今後の重要な課題だ。

 また、避難所生活で体調不良を訴える高齢者が多い。大地震が起きると、近くの体育館や公民館などが避難所にあてられる。お年寄りにとって不自由な集団生活は期間に限度がある。弱者対策も喫緊の課題である。

 気象庁は今後も震度6弱程度の強い余震があると警戒を呼びかけている。余震の恐怖から車中で避難生活する人も多い。適度な運動と水分補給で「エコノミー症候群」を防ぎたい。

(2007/07/18 05:01)

【産経抄】

 泉下の角さんもさぞびっくりしたことだろう。田中角栄元首相の生家がある旧西山町は、中越沖地震の震源地にほど近く、元首相の墓石がごろりと転がるほど激しく揺れた。「災害に予告なし」とはいうが、思わぬ被害にあわれた方々に心からお見舞い申し上げる。

 ▼地震で亡くなられた方の最年少が71歳というのも驚きだ。近所の人に助け出された直後に亡くなった1人暮らしの老女が遺(のこ)した「ありがとう、ありがとう」という感謝の言葉に胸がふさがれる。

 ▼ それにしても昔から新潟には大きな被害をもたらした地震が多い。文政11(1828)年というから幕末手前の江戸時代、現在の三条市を中心に死者千数百人が出た三条地震が起きた。この直後、今の長岡市内に住んでいた良寛は、地震で子供を亡くした知人にかの有名な手紙を書いている。

 ▼「災難に逢(あう)時節には災難に逢がよく候。死ぬ時節には死ぬがよく候。是(これ)はこれ災難を逃るる妙法にて候」と。大ざっぱにいえば、災難を逃れる唯一の方法は、災いや死さえも自然の流れに任せて受け入れることだと良寛はいう。

 ▼まあ、高僧ならぬ凡夫の身である小欄は、とてもそんな境地にはなれない。体育館や公民館で窮屈な避難生活を余儀なくされている1万人を超す人々の大半もそうだろう。いま被災者には、水と温かい食べ物、きれいなトイレ、それに風呂が必要だ。

 ▼ 阪神大震災では、電気に比べ、水道とガスの復旧に時間がかかった。家屋に被害がなくても長く風呂に入れなかった被災者も多く、自衛隊が設営したテント風呂が大いに喜ばれた。まして今は梅雨時である。こまやかな生活支援から将来の復興対策まで安倍晋三首相は、ちゃんとこなせるか。有権者はじっと見つめている。

(2007/07/18 05:00)


【日経・社説】

社説1 原発の耐震度、基準は甘く備えは薄い(7/18)

 地震国日本の原子力発電所には、地震への厳密な備えが要求される。その耐震設計基準は、どんな大地震がきても、放射性物質を外部には一切出さないことを旨として設定されている、はずだった。

 今回の新潟中越沖地震では、それがあっけなく覆された。東京電力柏崎刈羽原発の6号機から、微量だが放射能を含む水が海に放出された。地震で原発から放射能が外部環境に漏れた日本初のケースである。

 原子炉本体、炉心などが構造的に壊れて放射能が漏出したわけではない。使用済み燃料を保管するプールの水が漏れ出たもので、環境にはほとんど影響は無いという。しかし、これは軽微な事故ではない。むしろ、日本の原子力発電の今後を左右する、相当に深刻な事態である。

 原発の耐震設計の基準となる地震は基本的に2つある。立地点付近の活断層などを配慮して、起こりうる最大級の地震動(S1)をもたらす最強地震、実際には起きないかもしれないが考えられる最大限の地震動(S2)をもたらす限界地震だ。

 S1レベルでは、原発施設に全く損傷が無いことを安全指針は求めており、S2に対しては、少し損傷はあっても、最低限放射能は閉じ込めることを要求する。これを根拠に、電力会社は胸を張って「日本の原発は地震がきても安全」と、いってきた。その根拠が今回崩れたことを、原子力安全委員会も、電気事業者も、経済産業省も、原子力安全・保安院も、しっかりと胸に刻んでほしい。

 既知の活断層ではなく、未知の断層が動いて大地震を起こすケースが相次いでいる。3年前の新潟中越地震も今年3月の能登半島地震も、全く知られていない断層が動いて、予想外の大きな揺れを起こした。揺れが限界地震を超える場合も多く、S2より大きな震動を耐震設計の基準に採用せざるをえなくなっている。

 問題はこのS2―Nと呼ぶ新しい基準震動の値を、できるだけ小さく、低く抑えようという勢力があることだ。今回の地震では、揺れの強さを表す加速度が最大680ガルと、想定していた限界地震動の2倍以上の強烈な揺れが原発を襲った。

 備えを薄く、基準を緩くする動きは、決して原発の将来を明るくしない。国民の安心と、原発の安全を確実にするには、合理的な耐震基準の採用と、耐震補強は欠かせない。ただ、原発の運転が長期間止まり、二酸化炭素(CO2)を大量に排出する火力発電所がフル稼働するのを、歓迎するわけにはいかない。京都議定書の目標達成も先進国の責務だ。

社説2 新冷戦の様相示す英ロ関係(7/18)

 米ロ関係がぎくしゃくする中、今度は英ロ関係が一気に冷却化し始めた。根は深そうで、容易に妥協しがたい雰囲気が漂うが、関係悪化に歯止めをかけなければロシアと米欧は冷戦時代に後戻りしかねない。

 英ロ関係はロンドンで昨年11月に起きたリトビネンコ氏殺害事件以来悪化の一途にあった。同氏は英国に亡命し英国籍を持つ元ロシア特殊情報機関員で、放射性物質ポロニウム210を盛られ死亡した。

 事件発生直後からロシア人の関与が疑われたが、英当局は半年あまりの捜査を経てルゴボイ容疑者の犯行と判断、ロシア政府に引き渡しを求めてきた。

 ところがロシア政府は憲法の規定でロシア市民を引き渡すことはできないと拒否、これに怒った英政府が16日、ついにロシア外交官4人の追放に踏み切った。

 ブラウン首相は英国内で英国市民が殺され、多数の人が放射性物質に汚染される危険にさらされた事件を放置するわけにはいかないと今回の措置の理由を説明した。多くの英国市民は納得しているようである。

 ロシア政府が英国の捜査にほとんど協力してこなかったことも英政府が強い措置に出た背景の一つとして指摘できるだろう。

 ロシアの名誉にもかかわる重大事件だから一緒に捜査しようといった協力的な姿勢を示していたなら、違った展開があったかもしれない。ロシアにはそうはできなかった理由があるのだろうか。

 ラブロフ・ロシア外相は英側の措置によって両国関係に「重大な影響がでる」と強く反発している。報復合戦は必至だろう。

 英ロ経済関係はエネルギー分野を含め緊密だ。BPはロシアへ最も多く投資している西側企業の一つだ。底なし沼のように関係が悪化すると双方が打撃を受ける。しかし、両国の外交当局の非難の応酬を聞くと、少なくとも当面は様々な分野で摩擦が起きるだろうと予想される。

 プーチン大統領はエリツィン氏から政権を引き継いで間もない2000年3月、ブレア首相(当時)夫妻をサンクトペテルブルクに招き、英ロ蜜月時代を演出したことがある。今や昔の物語となったようである。

【日経・春秋】(7/18)

 「神戸―新潟ひずみ集中帯」というそうだ。日本列島の下でプレート(地殻を構成する岩板)が押し合いへし合いして、そのひずみが神戸から福井や石川を経て新潟にいたる帯状の地域に集中してたまっているという。人工衛星からの観測でみつかった。

▼12年前の阪神大震災の時には、そんな話は聞かなかった。3年前の新潟県中越地震の時も、ほとんど話題にはならず、ことし3月の能登半島地震の時も集中帯という言葉はそう使われなかったと記憶している。今回の中越沖地震で、帯の両端がぴたりとそろったので、学界から世間にお披露目されたのだろうか。

▼少々ご都合主義のような気もするが、地道な研究が社会に認知されるのを否定するつもりはない。ただし、集中帯は直下型に要注意なんていう指摘は、地球儀の日本列島を指して、地震列島などというのと、さして違わない。ひずみの解放、地震発生の仕組みに踏み込んだ研究に期待したい。

▼12年前の神戸と一昨日の柏崎を結ぶ痛切な帯は、瓦屋根のつぶれた家である。台風や季節風で飛ばない土と瓦の重い屋根。地面を強く揺すれば、屋根の重みで家は壊れやすい。犠牲者の8割が圧死だった神戸と柏崎は、被災構造が全く同じだ。12年の間に、地震科学も防災政策も、どれほど進歩したのだろう。


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