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2007年8月 1日 (水)

8月1日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 喜ばしいことに傲慢自公お灸記念日にすることができました。6月はじめから続けてきたこの地方紙・主要紙の社説とコラムの資料としての採録活動もやり抜くことができました。

 当初始めた時には投票日までのつもりでしたが、結果が分かった後の政局とそれに対するマスコミ論調も興味深いので、投開票日3日後の8月1日まで記録することにします。

 どのようなマスコミをわれわれは目撃したのかここに資料として保存します。

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【沖縄タイムス・社説】(2007年8月1日朝刊)

[慰安婦問題決議]よそ事とは思えない

 米下院は第二次大戦中の従軍慰安婦問題で、日本政府の謝罪を求める決議案を本会議で可決した。

 なぜ今ごろアメリカで、と疑問を持つ人も多いに違いない。

 決議は日本政府に対して「歴史的責任を認め、公式声明で首相が謝罪すれば、今後この問題が再燃するのを防げるだろう」と公式謝罪を求めている。

 この件ではすでに政府が謝罪している。それなのになぜ再び謝罪を求めるのか、と疑問を抱く人もいるに違いない。

 確かに政府は一九九三年の河野洋平官房長官談話で、旧日本軍の「直接あるいは間接」の関与を認め、「おわびと反省」という言葉を使って公式に謝罪した。

 河野談話に基づいて「女性のためのアジア平和国民基金」が設立され、被害者に対する償い事業が行われたのも事実である。

 だが、そうした過去の謝罪に対して疑問を呈したのは、ほかならぬ安倍晋三首相である。

 国会答弁や記者会見などで安倍首相は「当初、定義されていた強制性を裏付けるものはなかった」と語ったり、言葉を言い換えて「狭義の強制性はなかった」と否定するなど、談話見直しとも受け取れる発言を繰り返した。

 安倍首相はその後、米紙を含む海外からの反発を受けて河野談話を継承することを明らかにした。だが、その一方で、六月には首相に近い国会議員らが強制性を否定した広告を米紙に掲載した。

 一連のちぐはぐな対応が国際社会の疑念を増幅させ、下院本会議での決議採択を招いたのである。

 実際のところ安倍首相は慰安婦問題をどう考えているのか。もう一度、国際社会と国民に向けて意を尽くして説明する責任がある。

 沖縄戦のさなか、県内にも旧日本軍用の慰安所が設けられ、朝鮮半島出身の女性たちが兵隊の相手をさせられた。戦後、身寄りもなく県内各地を転々としながら、異郷の地で生涯を終えた女性もいる。

 軍の「関与」や「強制」の事実を否定することは、尊厳の回復を求めてきた被害者にとっては、耐え難い苦痛であり、屈辱であるだろう。

 この問題は、「集団自決(強制集団死)」をめぐる日本軍関与の記述が教科書検定で削除された問題とよく似ている。

 従軍慰安婦にせよ「集団自決」にせよ、その態様は多様である。証言者の声に耳を傾け、歴史の事実に向き合うことが求められているのだと思う。

[北部振興凍結]地元の反発招くだけだ

 北部振興事業の第一次配分について防衛省が難色を示している。県や名護市が普天間飛行場の移設に伴う環境影響評価(アセスメント)を受け入れていないことを問題視しているためだ。

 なぜ今、強硬姿勢をあえて示す必要があるのか。参院選では野党が圧勝、安倍政権への不信任を突きつけた。沖縄の民意に冷や水を浴びせるものだ。

 海上自衛隊の掃海母艦派遣といい、今回の北部振興事業の凍結といい、防衛省の強圧的な対応は目に余る。これでは地元の反発に油を注ぐだけだ。

 普天間移設問題ではV字形滑走路の沖合移動、普天間の「三年以内の閉鎖状態」実現をめぐり、政府と県、名護市の間でこう着状態が続いている。

 防衛省は「政府案を変えることはまったくない」と、修正をかたくなに拒否。参院選後も基地政策に影響はないとの見方を重ねて強調している。

 北部振興事業は昨年五月、防衛省の意向でいったん廃止された。同八月の普天間移設に関する協議会で「普天間飛行場の移設に係る協議が進む状況の下、着実に実行する」(小池百合子沖縄相)との発言が政府の統一見解として承認され、同事業が復活した。

 防衛省幹部は今回、配分の条件が崩れたとの見解を示し「(予算は)出さない」と当面凍結する考えを示した。内閣府は条件は崩れていないとし、本年度の配分を進める意向だ。

 先の国会で米軍再編推進法が成立したが、名護市への再編交付金の給付見通しは立っていない。政府案をのまなければ、北部振興事業と再編交付金の支出を止めると言わんばかりである。

 一昨年来、防衛省の強権的な対応が際立ってきた。「沖縄の食い逃げは許さない」(同省幹部)という不信の表れなのだろう。時間ばかりが刻々過ぎあせり、いら立ちも透けて見える。

 しかし、地元の意向を無視し、頭越しの日米合意を押し付けるだけで話し合いの姿勢すら感じられない。その上札びらをちらつかせて、のむかのまないかを迫る。これほど露骨な恫喝は過去にもみられなかったのではないか。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年8月1日 朝刊 1面)

 浦添市にある国立劇場おきなわは毎月、主催公演と銘打ち組踊や琉舞、民謡など多彩な舞台を展開している。七月最初の企画「創作遺作」を見る機会を得た。

 戦後の芸能復興に尽力した師匠らの残した創作舞踊を集めた舞台。先人の営為に思いを致し現代に生かそうとの趣旨だ。初めて見る作品もあり、新鮮な感動を覚える時間だった。思わず刮目して見たのが島袋光裕師匠の「あらの一粒」だ。

 幕が開くと舞台にはガラスケースに入った琉球人形。そのわきに子守をする少女。わが身を米の粗と恨む少女は人形にあこがれ、その美しさに見とれる。と突然、人形が四つ竹を鳴らしながら踊り出すのだ。

 踊り手自身が歌う点では舞踊劇風な小品だが、その幻想性に近代演劇の要素を感じるのだ。光裕翁はいかにして創作したのだろうか。そこで先日、島袋光裕芸術文化賞表彰式の折、ご子息で島袋本流紫の会宗家島袋光晴さんにお聞きした。

 結論から言うと分からない。「父は創作に入ると寡黙になり、家族さえ寄せ付けなかった」と光晴さん。「タイトルのつけ方のうまさに感心する」とも。深く思索にふける様子が想像できる証言だと思った。

 人形が動き出す話で連想するのはバレエの名作「コッペリア」である。早稲田に学んだインテリ役者だった光裕翁がそれに想を得たことは十分考えられる。幻想という概念に非日常性と希望を託した先人の思いが伝わってくる。(真久田巧)


【琉球新報・社説】

米下院慰安婦決議 やはり首相は説明不足だ

 年金記録不備問題や「政治とカネ」の問題で国民の批判を浴び、参院選で惨敗した安倍晋三首相にとって、泣き面にハチの状況だろう。
 第2次大戦中の従軍慰安婦問題をめぐって日本政府に公式謝罪を求める決議が、米国下院の本会議で初めて可決されたからだ。
 国内で求心力が急激に低下している中で、同盟国として頼みにしている米国の議会から、首相声明の形で謝罪するよう要求された。法的拘束力がないとはいえ、日米関係の悪化を招きかねない決議だ。
 同様の決議案は2001年以来、米下院で4度提出されている。昨年9月には外交委員会で可決されたが、共和党指導部が本会議の採決を見送ったため廃案になった。
 5度目の今回は共同提案者が160人を超え、6月の外交委でも39対2の圧倒的大差で可決。初めて本会議での採決となった。
 参院選の歴史的大敗もそうだが、今回の米下院決議も、本はといえば安倍首相がまいた種である。
 ことし3月1日、首相が「(旧日本軍による従軍慰安婦動員の)強制性について、それを証明する証言や裏付けるものはなかった」などと記者団に発言したことが大きく影響した。韓国をはじめ米国、中国などでも反発が広がり、米議会の決議推進派を勢いづかせた。
 首相は4月に訪米した際、民主、共和両党の上下両院幹部に対し「真意や発言が正しく伝わっていない」と釈明。「おわびと反省」を表明した1993年の河野洋平官房長官談話を継承する立場を伝えたが、後の祭りだった。
 日本で言ったことと米国で話す内容が違っているのだから、二枚舌を疑われ、理解されなかったとしても無理はない。
 下院の決議は「従軍慰安婦制度は日本政府が第2次大戦中にアジア太平洋地域を支配した時代に行った軍用の強制的な売春」「日本にはこの問題を軽視しようとする教科書もある」などと非難した。
 文部科学省の教科書検定で沖縄戦の「集団自決」に関し日本軍の強制の記述が修正・削除された問題と本質的に共通している。
 どちらも、旧日本軍による非道な行為を可能な限り覆い隠し、都合の悪い歴史的事実を薄めたいとの意図が感じられる。
 日本政府に求められるのは過去の間違った行為を正当化することではない。歴史を直視し反省を踏まえ、過ちを繰り返さないことが何よりも大切だ。
 1993年の河野官房長官談話は「軍の要請を受けた業者が、甘言、強圧により、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くある。官憲などが直接、加担したこともあった」と日本軍の関与を認定し、謝罪した。政府は、この姿勢を堅持すべきだ。

(8/1 9:54)

スポーツ合宿 県民ぐるみで誘致したい

 2006年度に県内で開催されたスポーツ合宿や各種競技大会などの「スポーツコンベンション」は279件で、1997年に沖縄観光コンベンションビューローが統計を取り始めて以降、最も多かった。
 歓迎すべき傾向である。キャンプや自主トレなどで一流の運動選手が数多く沖縄に集まり、県民と触れ合う機会が増えれば、青少年の競技力向上も期待できる。
 選手の沖縄入りに伴い、応援団や関係者が来県すれば、沖縄の良さが全国に発信され、観光振興に大きく結び付く。
 亜熱帯という温暖な気候は、冬・春季のスポーツ選手のトレーニングや合宿などに最適だ。
 その優位性をあらゆる機会を通じて内外にアピールし、沖縄をスポーツ・トレーニングのメッカにしたい。
 そのためには、県民を挙げて県外のスポーツ選手団を快く迎え入れる機運を盛り上げることが何よりも大切だ。日ごろからホスピタリティー(もてなしの心)を大事にしたい。
 06年度のキャンプや大会などによる県外からの参加者は、観戦の観光客を除いて4万4988人に達している。
 宿泊込みの練習で来県したキャンプ・合宿・自主トレだけでも4765人(131件)もいるのは驚きだ。時期的には、大学などが春休みに入る2―3月に集中している。
 団体別では、大学が58件で最も多く、社会人30件、プロ25件―と続く。だがアマ合同(大学・高校等)は6件、高校は4件と少ない。
 県内では2010年に全国高校総体が開催される。国内最大級のスポーツ大会だけに、受け入れ態勢を強化し選手団が競技に専念できるように細心の心配りをしたい。
 それによって、インターハイで来県した選手団がリピーター(再訪問者)として、沖縄合宿を繰り返すようになればしめたものだ。
 プロ野球にしろサッカーにしろ、オフ・シーズンには沖縄に一流選手が結集するという環境づくりを推し進めたい。

(8/1 9:53)

【琉球新報・金口木舌】

 「居酒屋独立論」という言葉がある。酒に酔った勢いにまかせて、沖縄の独立を主張するという意味で使われる
▼その是非をめぐって以前、文化人らが論争したこともあった。ただ、勢いづいた議論も、翌朝目が覚めると、内容も忘れてしまっていることが多く「議論に値しない」「どうせ酒の席の話」と揶揄(やゆ)されることもある
▼かつて県内一の繁華街ともいわれたことがある沖縄市の中の町社交街。現在は往時ほどのにぎわいはなく、ここ数年はどうやって再生しようかと関係者は思案中だ。そんな中、若手経営者たちが「中の町応援隊」を立ち上げた
▼メンバーは飲食店経営の30、40代が中心。機関紙も発行している。聞けば、酒の席で街の活性化について多くのアイデアが出て、議論を重ねたのが、隊結成につながったとのことだ
▼メンバーは翌朝になっても内容を忘れず「どうせ酒の席の話」に終わらせなかった。「できることを積み重ねていけば、きっと人と人が結び付くいい街になる。待ってるだけじゃ始まらない」と、隊長の喜屋武正さん(48)は語る
▼モットーの「有言実行」通り、結成後は清掃活動やイベント開催に走り回っている。思わず応援したくなる熱意と行動力だ。

(8/1 9:44)


【東京新聞・社説】

従軍慰安婦決議 歴史は学べ何度でも

2007年8月1日

 後世に裁かれる歴史というものがある。米下院が日本政府に公式謝罪などを求めた第二次大戦中の従軍慰安婦問題は、日本と日本人にとっても不幸な歴史だったともいえる。直視していくべきだ。

 米下院本会議で採択された従軍慰安婦決議は「従軍慰安婦制度は二十世紀最大の人身売買制度の一つ」「日本政府は歴史的な責任を認め、公式に謝罪すべきだ」「日本政府は現在および将来の世代にこの恐ろしい犯罪を伝え、元慰安婦に対する国際社会の声に耳を傾けるべきだ」などの内容である。

 六月、下院外交委員会で対日謝罪要求決議案が採択されて以来、日本政府と日本に理解を示す共和党関係者を中心に本会議での採択回避の働きかけが行われてきた。

 しかし、下院の主導権を握る民主党は議長をはじめ採択に積極的だったとされ、ラントス下院外交委員長は日本の取り組みに非難の言葉を浴びせている。

 決議には「日米同盟はアジア太平洋地域の平和と安定の要」との文言が添えられ、採択は日本の政治事情から参院選後に先送りされる配慮はあったものの、決議そのものが極めて残念だ。

 決議に法的拘束力はなく、米議会でよくある採択の一つとの見方がある。背景には韓国、中国系有権者を意識しての選挙絡みの思惑や決議に歴史事実の誤解があることも伝えられるが、決議は米国民を代表する議員の意思表示で、重い。重要な同盟国からの忠言のニュアンスもあり、真剣に受けとめるべきだ。

 従軍慰安婦問題で、日本政府は一九九三年の河野談話で「心からおわびと反省の気持ちを申し上げる」と謝罪し、民間によるアジア女性基金を設け、歴代首相がおわびの手紙を出すなど可能な限りの活動と誠意を示してきた。

 河野談話をめぐって一部の反発はあるが、軍による強制の有無以前にその意思に反して強いられた大量の従軍慰安婦が存在し、慰安婦システムそのものを黙認したこと自体が人道に反し、後世に裁かれるべき歴史の暗部であったことに異論はないはずだ。時代のせいにはできない。

 就任前の安倍晋三首相の河野談話への批判や就任後の「狭義の強制性」否定が反省なき日本という誤解を与えたといわれる。日本の反省が受けとめられず、対日非難が蒸し返されることに真の問題がある。

 日中戦争の盧溝橋事件から七十年、加害の歴史は忘れがちだ。歴史は何度でも学ぶ必要がある。建設的未来のために。

大勝の民主 どう生かす多数の民意

2007年8月1日

 民主党は参院選で大勝し、目標の与野党逆転を果たした。二千三百二十五万票に託された民意を政治にどう具体化していくか。政権交代につなげられるかどうかは、そこにかかっている。

 参院選での過労を理由に静養していた小沢一郎代表が選挙後、初めて公の場に姿を現した。

 三十一日の党常任幹事会に出席して「第一段階の目標は達成できたが、本当の勝負はこれからだ」とあいさつした。

 民主党が参院で第一党となり、与野党が逆転したとはいえ、衆院は与党が三分の二を占める。参院で政府提出の法案を否決しても、衆院の再可決で成立する。参院での優位をどう生かし、国民の声を国政に反映していくか。最大の課題となる。

 参院選で示された最大の民意は安倍政治への「ノー」だ。しかし、安倍晋三首相は早々に続投を表明し、今月下旬以降の内閣改造まで今の顔ぶれでやっていく。国民の多くは「あれだけ惨敗したのに、なぜ辞めないのか」と疑問を感じている。

 小沢氏は「国政選挙で過半数を失っても内閣がとどまるのは常識では考えられない」と述べた。七日召集の臨時国会で参院に問題閣僚の問責決議案を提出し可決するのも、民意を形にする第一歩となろう。

 選挙戦では年金不信が民主党への「追い風」となった。国民は消えた記録はもっとあるのではないかなどと疑っている。参院の多数派を握った野党は与党の抵抗を排し、国政調査権を発揮してほしい。

 菅直人氏は参院へ年金保険料流用禁止法案を出し可決すれば、衆院で与党は反対しにくいだろうと述べている。参院での優位を生かす一つの方法だろう。

 「政治とカネ」問題で、首相は選挙後、政治資金規正法の再改正に取り組む意向を表明した。民主党が先に参院へ抜け道を封じた法案を出したらどうか。必要なら与党と協議して「ザル法」でない改正案をまとめることも考えるべきだ。

 秋の臨時国会では、海上自衛隊がインド洋で米艦船などに給油活動を続けるテロ対策特別措置法が焦点となる。小沢氏は「以前も延長に反対したのに、賛成するはずはない」と述べた。党内に意見の違いもあり、与党は民主党の政権担当能力を攻めてくる。一枚岩を貫き、国民に安心感を示せるか。一つの見せどころになる。

 小沢氏は政権交代の「最後のチャンス」という。その通りだろう。半世紀ぶりに自民党以外に参院議長を与えるまで勝たせた有権者の意図を忘れないことが何よりの近道だ。

【東京新聞・筆洗】2007年8月1日

 衆議院のカーボンコピーなどと揶揄(やゆ)される参議院の「魅力」に、最初に着目したのは田中角栄元首相だったと聞いたことがある。当時は自民党一党支配の時代で、派閥の合従連衡で政権の帰すうが決した。どの派閥も勢力の拡張を目指し、衆院は議員争奪戦の場と化したが、田中氏は参院対策にも力を入れた▼参院議員は解散がなくて任期が六年と長い。そこが魅力だったという。「数の力」を安定的に維持できるからだ。民主党の小沢一郎代表は田中氏の秘蔵っ子だった。その目には今回、参院選の勝利こそが政権への道と映っていたに違いない▼仮に次の衆院選で勝っても、事前に参院で多数を制していなければ政権運営は難しい。しかも任期は長いので直ちに劣勢を解消できない。今なら衆院選に勝てば、安定した政権を築くことができる。このシナリオが現実になるかどうかは、参院第一党の力をどう使うかがポイントになるのだろう▼参院選で民主党が圧勝したことは間違いない。でも投票率は58%台。前回に続いて二回連続で上昇しているものの、六回連続で60%を割った事実は重い。今回と同様、自民党が惨敗した宇野政権下での参院選の投票率は65%だった▼思い起こせば昨年春、民主党は「偽メール事件」で迷走を続け、前原誠司代表以下の執行部が総退陣した。そこで小沢氏が復権したわけだが、投票率がいまひとつだった理由に、民主党に対する信頼感の問題があったような気がする▼第二院で、政権担当能力を試してみよう。こんな声なき声が聞こえてくる。


【河北新報・社説】

「慰安婦決議」可決/政府は未来に向けた対応を

 悲しいことだが、第二次大戦中、朝鮮半島はじめ、フィリピン、インドネシアなどで「性的奉仕」を強いられた「慰安婦」といわれる女性たちがいた。その数は、研究者によって異なるが、2万人から20万人ともいわれる。
 先の大戦が引きずる重い歴史はまだ続いている。
 米下院はきのう、本会議で従軍慰安婦に関する対日謝罪要求決議案を可決した。

 決議は「従軍慰安婦制度は、日本が第二次大戦中にアジア太平洋地域を支配した時代に行った軍用の強制的な売春」などと非難した上で、日本政府に公式かつ明確な謝罪や教育の徹底などを要求。謝罪方法として、首相声明の形を取るよう強く促した。

 今回の決議案は、多くのアジア系市民を抱えるカリフォルニア州選出の日系のマイク・ホンダ議員(民主)が今年1月に提出、6月の外交委で39対2の大差で可決した。本会議での可決は予想されていたと言ってよい。

 従軍慰安婦の問題は、米社会が最も重視する人権問題の象徴の一つとしてとらえられ、日本との同盟関係を考慮してもなお、多数の議員が決議案に賛成した流れがあるのだろう。
 決議の中にある文言は「性的奴隷」「20世紀最大の人身売買」などと強烈だ。米国は事実をきちんと調査したのか、なぜ今、この問題を米国から指摘されるのかと、国民の間には違和感を持つ向きもあるだろう。

 確かに、「狭義の強制性」という意味では国内に論争がある。慰安婦動員に関し、日本側の当時の文書や担当者の証言には、軍の強制連行を裏づけるものはないとの歴史家の研究もある。
 だが、反対に、元従軍慰安婦の女性が、官憲の立ち会いの下に連れて行かれたことを証言している。

 忘れてならないのは、1993年8月に、従軍慰安婦問題について、政府の公式見解として出された当時の河野洋平官房長官談話だ。
 談話は、政府調査で慰安婦や慰安所に、旧日本軍が直接あるいは間接に関与したことを確認。募集は軍の要請を受けた業者が当たったが、「甘言、強圧など、本人の意思に反して集められた事例が数多く、官憲が加担したことが明らかになった」とし、女性の名誉と尊厳を傷つけたおわびと反省を述べた。

 河野談話は以来、政府見解として14年間守られており、日本が国際社会の一員である以上、この談話を継続していくことが大切だ。どこの国でも、どの民族でも過去の歴史に恥部を持たないケースは、極めてまれだろう。その反省を、言葉で、態度で、丁寧に繰り返し、現在と未来に生かすことが必要だ。

 今年はちょうど日中戦争が始まって70年に当たる。拘束力のない米下院の決議への対応は慎重に検討するとして、安倍晋三首相はこの際、世界に、そして国民に向けて、従軍慰安婦問題をはじめ、先の大戦への歴史認識を語ったらどうか。もちろん、その基本は河野談話だ。
2007年08月01日水曜日

【河北新報・河北春秋】

 男が女を口説くとき鈍感であることは有力な武器になる、と渡辺淳一さんは『鈍感力』で語る。男女の間に横たわる機微の世界のこと。生き馬の目を抜く政治の世界とは無縁の話のはずだが…▼「目先のことには鈍感になればいい。鈍感力が大事だ」。小泉純一郎前首相の助言を、参院選で有権者から強烈なひじ鉄をくらった安倍晋三首相が思い出したのかどうか。大惨敗を受けた会見でも対応の鈍さにいら立ちを覚えた

 ▼ 「人心を一新せよというのが国民の声だ」と言いながら、内閣改造は約1カ月後。鮮度はどれほど落ちていようか。農相の事務所費問題での領収書公表でも、新しい党の内規ができてからでいいと、これまた後手だ▼もっとも前首相の政治手法を「副作用も伴う劇薬」とし、自らを「漢方薬」に例える方だ。そのこころは「じわじわと効いて気がついたらかなり効果が出ている」(3月の参院予算委員会)

 ▼劇薬のせいで、自民党の派閥には首相を引きずり降ろす力はない。さっと身を引き後日を期すという選択肢もあった。火中のクリを拾う者もない中で「すべて泥をかぶる」と“いばらの道”を歩む覚悟をしたのだろう▼が、それでも「漢方薬路線」から抜け出せないらしい。今は政権に対する信頼回復に向け即効薬も必要な時であろうに。

2007年08月01日水曜日


【京都新聞・社説】

枚方市長逮捕  官製談合根絶に全力を

 枚方市の中司宏市長が官製談合にかかわったとして逮捕された。清掃工場建設をめぐる談合汚職事件は市のトップにまで司直の手が及んだ。
 市長は四月の統一地方選で得票率70%にあたる約十万票を獲得し、四選を果たしたばかりだ。入札制度改革にも熱心とされ、清潔さのイメージも強かっただけに、市民は裏切られた思いだろう。
 地方自治に寄せる有権者の信頼を揺るがせた市長の責任の大きさは計り知れないといえる。
 この事件では、副市長や大阪府警警部補、府議(元枚方市議)ら十一人が談合や贈収賄で逮捕、起訴されている。
 市長は二〇〇五年十一月の清掃工場建設工事の一般競争入札で、大手ゼネコン業者が落札しやすいように、警部補や府議、副市長らと共謀したとされる。
 事件は府議に加え、本来、談合を取り締まるべき立場の警察官までもが、大手ゼネコン業者と自治体の橋渡し役を務めるという特異な構図を呈している。
 中司市長は、警部補とも親交があり、府議との結びつきも強い。談合事件への関与は、繰り返し否定しているが、建設工事の入札発注方式などが話し合われた会合にも複数回、同席したとされる。
 自治体トップがどのように談合にかかわったのか、同種の事件の再発を防ぐ意味からも全容を解明してもらいたい。
 それにしても、なぜこうも官製談合事件が多発するのか。昨年は福島、宮崎、和歌山の三県の知事の逮捕が相次いだ。
 これらの裁判では、工事入札で「天の声」を発する首長の影響力の強さが浮き彫りになっている。
 福島県前知事は五選、今回逮捕された枚方市長も四選目だった。多選の弊害も解明し、有効な手だてを講じる必要があろう。
 裁判では業者からの選挙への支援や協力、資金提供の見返りとして官製談合がまかり通る構図も明らかになっている。
 自治体をむしばむ官製談合の土壌が各地にまん延しているのかどうか。もし、そうであるならば、地方自治のあり方にもかかわる問題だ。十分に検証し、抜本的な解決策を早急に見いださなくてはならない。
 ようやく一般競争入札が定着し始めたものの、自治体内部から入札情報が漏れてしまっては効力も発揮しようがない。
 官製談合防止法は二〇〇六年の改正で罰則も盛り込まれた。談合によって事業費が引き上げられたツケは住民に跳ね返ることになる。厳しい視線が向けられるゆえんだ。
 京滋の自治体も無関心ではおれまい。業者など外部からの働きかけがあれば文書化し、報告を義務づける「口利き」防止策や内部通報制度、外部機関による監視システムの強化も欠かせない。
 議会も力を合わせ、官製談合の根絶にもっと本気で取り組んでもらいたい。

[京都新聞 2007年08月01日掲載]

米の慰安婦決議  相互不信を募らせるな

 米下院は本会議で、第二次大戦中の従軍慰安婦問題をめぐって日本政府に公式謝罪を求める決議案を可決した。
 法的拘束力はないが、日本にとって重要な同盟国である米の議会が日本政府を直接非難する決議であるだけに、両国関係に悪影響が出ないか懸念される。
 相互不信を増幅させないことが、肝要だ。摩擦を拡大させぬよう、冷静に理解を求める努力が両国政府に要る。
 同時に、安倍晋三首相は米国や国際社会、日本の国民に対して、慰安婦問題をどう考えるのか、丁寧に説明する責任があろう。
 安倍首相は、四月の訪米時にブッシュ大統領や議会幹部らに元慰安婦への「謝罪」の意を明らかにし、「おわびと反省」を表明した一九九三年の河野洋平官房長官(当時)談話を継承する立場をとっているが、意を尽くして説明したとは言いがたい。
 同様の決議案は過去四回、下院に提出され、外交委員会で可決されたこともあったが、本会議での可決は初めてだ。
 アジア系住民を地元に抱える議員の選挙対策や、人権派の多い民主党が米議会の主導権を握ったことなどが背景にあろう。日本から見れば、なぜこの問題を米国に指摘されなければならないのか、といった感情を持つ人もいるだろう。
 安倍首相が慰安婦徴用について「強制性を裏づける証拠はなかった」という趣旨の発言をしたことや、日本の国会議員らによる米紙への意見広告掲載などが、米国の決議推進派を勢いづかせたのは間違いない。
 米社会が慰安婦問題をより強く女性の人権問題としてとらえている側面を、軽視してはなるまい。この点で日本政府の感度が鈍かった印象をぬぐえない。
 米国だけでなくアジアをはじめとする国際社会に対し、人権問題に積極的に取り組む姿勢を示すことが大切だ。北朝鮮による日本人拉致問題解決への支援を得るためにも、なおさらそうだ。
 その意味でも日本政府が慰安婦問題に誠実に向き合うことが求められよう。
 河野官房長官談話を受けて九五年、民間の募金と政府資金によって元慰安婦に償い金の支給などを行う「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)が設立された。だが、日本政府の謝罪と補償を求めて償い金の受け取りを拒否した元慰安婦もいた。
 同基金は今年三月末に「一応の締めくくりができた」(理事長の村山富市元首相)として解散したが、高齢化が進む元慰安婦への支援継続も課題として残っている。
 政府は慰安婦問題も含め、各国が抱えるさまざまな女性問題に、積極的に取り組む必要がある。国内外に誠意ある姿勢を示してこそ、日本が人権問題に誠実な国であるとの信頼を得ることにつながろう。

[京都新聞 2007年08月01日掲載]

【京都新聞・凡語】

地震発生前のナマズ

 阪神大震災から数日たって聞いた話だ。大津市内の公共施設の水槽で飼われていたビワコオオナマズが、地震の発生前に激しく暴れ回ったという▼半信半疑だったが、大地震の際に動物がみせる異常行動を科学的に解明しようとの試みは古くからあるようだ。東海大学地震予知研究センターの「ナマズの行動と刺激要素に関する研究」は最先端で、一昨年度に始まった▼千葉大学との共同研究で、狙いは地震の発生時にナマズが何を感じているのかを検証し、明らかにしたうえで計測機器への代用を図る。もう一つは最近の学生に目立つ理科離れを防止するためという▼実際、テーマの面白さに誘われ、学生の関心は高いらしい。研究の方は、ナマズが感じるのは電磁気とみて、行動との対比を始めた段階だ。解明は、まだ先になりそうだが、長尾年恭センター長が興味深い話をしてくれた▼関東のワニ園のワニが近くを走る電車に反応したのは最初だけ。ところが新しい電車や地震には反応する。機器にこれが可能かどうか。麻薬犬のようにどこへでも動けて瞬時に見つけ出すセンサーを備えた機器もない、と▼動物の能力の一部、自然から学ぶのだという。十月から気象庁の「緊急地震速報」の一般提供が始まるが、ナマズの研究も負けないでほしい。もっと事前予知が可能になれば悲しい思いをする人はなくなるから。

[京都新聞 2007年08月01日掲載]


【朝日・社説】2007年08月01日(水曜日)付

慰安婦決議―首相談話でけじめを

 米下院本会議が、旧日本軍の慰安婦問題で日本政府に謝罪を求める決議を採択した。決議は「残虐性と規模は前例がない。20世紀最悪の人身売買事件の一つ」とまで述べている。

 日本政府は93年の河野洋平官房長官談話で、旧日本軍の関与を認め、謝罪した。それを受けて官民合同のアジア女性基金を設立し、元慰安婦に償い金と一緒に、首相名のおわびの手紙も渡している。米側がこうした取り組みを十分に評価していないのは、残念なことだ。

 しかし、過去の日本をこれほど糾弾する決議が採択されたのは、日本の側にも原因がある。そのことを厳しく見つめなければならない。

 河野談話は、様々な証言や証拠を吟味した結果、軍の関与を認めたうえで、慰安婦の募集や移送、管理などで全体として強制性があったと述べた。日本政府としての公式見解である。

 ところがその後、一部の政治家やメディア、学者らから、河野談話を否定したり攻撃したりする発言が相次いだ。そうした勢力の中心メンバーの1人が、首相になる前の安倍氏だった。

 米国内には、日本が戦前の価値観を引きずっているのではないか、という不安がある。小泉前首相の靖国参拝に対し、有力議員が日本の駐米大使に懸念を伝える書簡を送ったのは、その表れだ。安倍首相の登場は米国の警戒心を高めた。

 首相になった安倍氏は「河野談話の継承」を表明した。ところが、当局が人さらいのように連行する「狭義の強制性」はなかった、などと言うものだから、決議の動きに弾みをつけてしまった。木を見て森を見ない抗弁だった。

 さらに決定的だったのは、国会議員や首相の外交ブレーンらが反論広告をワシントン・ポスト紙に掲載したことだ。

 今回の決議を採択した本会議で、民主党のラントス下院外交委員長は、こうした反論広告などについて、「歴史をゆがめ否定する日本の一部の試みには吐き気をもよおす」と述べた。

 「価値観外交」を掲げる安倍首相は「日米は価値観を共有する同盟だ」というのが持論だ。自由や民主主義といった理念で共通していると強調する。

 だが、こうした価値観を共有するためには、自由や人権を抑圧していた戦前の軍国主義を総括し、きっぱりと別れを告げる必要がある。

 慰安婦問題で旧日本軍をことさらに弁護することは、自由や人権の抑圧を肯定するかのように受け取られてしまう。それはいま日米が共有するはずの価値観に反するということを、安倍首相らは知るべきだ。

 決議は首相に謝罪を求めている。首相の沈黙は逆効果になるだけだ。河野談話の継承を疑われているのならば、同じような内容を安倍首相の談話として内外に表明してはどうか。それがいま取りうる最善の道だろう。

民主党の責任―「政局より政策」が王道だ

 「本当の勝負はこれからだ」。参院選挙で民主党が大勝した後、体調不良で静養していた小沢代表が仕事に復帰し、そう党内にげきをとばした。

 「秋以降の国会で参院を大きな戦いの場にしながらも、みんなで最終の目標に向けて頑張っていきたい」

 今回の大勝は、地方の疲弊に照準を合わせた小沢氏の戦略が功を奏したのは確かだが、やはり自民党の「敵失」に負うところが大きかったと見るべきだ。

 マニフェストで打ち出した最低保障年金や、農家への戸別所得補償制度などのアイデアにしても、財源などにあいまいな点が少なくない。政権をまかせてくれというには、まだまだ力不足だ。

 小沢氏が言うように、今回の勝利を政権交代という目標につなげられるかどうかは、今後、どれだけの実績を積めるかにかかっている。

 その意味で、初めて第1党の座についた参院での戦いぶりは極めて重要だ。与えられた多数を生かし、共産党や社民党などと連携して、これまで実現できなかった主張、政策を通していくことだ。

 抜け穴だらけの政治資金規正法に、参院から改正案を出すべきだ。ほかにも、年金保険料を保養施設の建設などに流用するのを禁止する法案や、最低賃金を引き上げる法案、イラクから自衛隊を撤退させる法案なども考えられる。

 「政治とカネ」の疑惑などで、証人喚問や参考人招致を参院で積極的に実現させる。これまでうやむやにされてきたスキャンダルの真相解明を進めることも、不可能ではない。

 もちろん、衆院は与党が圧倒的な多数を持つから、参院で法案を可決しても成立はしないかもしれない。だが与党も、参院で民主党の協力がなければ政策を実現できない点では変わらない。

 どちらの主張が説得力を持つか、世論の支持を得られるか。その勝負になる。反対を連発して政治を停滞させれば、その責めを負わねばならない。それが参院第1党としての、国民への責任である。

 民主党の独自色を保ちつつ、政治を前に進める。そんな難しいかじ取りが待ち受けていることを覚悟すべきだ。

 2大政党のぎりぎりの議論の末に、どうしても互いに歩み寄れない対立点が明確になってくるだろう。その対立軸を旗印に、両党が政権をかけて次の総選挙を戦う。そんな展開が望ましい。

 与党は、安保政策や憲法絡みの問題など、民主党内が割れているテーマで揺さぶりをかけてくることも予想される。

 だが、政権を目指すという以上、そうした点も含めて党内の論争をまとめ、政権構想や政策をきちんと打ち出さねばならない。財源や実現へのスケジュール、優先順位を示すことも欠かせない。

 「政策より政局」と見られがちな小沢氏だが、いまこそ「政局より政策」を肝に銘じるべきだ。それが政権交代への近道であり、王道である。

【朝日・天声人語】2007年08月01日(水曜日)付

 どうっと吹いた風が、自民党という森の木々をなぎ倒していった。累々たる倒木。聞こえてくるのは、首相や閣僚たちへの恨み節だ。「一票」が猛威をふるった7月の言葉から。

 東京で3選をめざした自民の保坂三蔵氏は、あえなく6位に沈んだ。「年金問題、政治とカネ、閣僚の失言など暴風雨のなか、演説の大半をおわびや経過報告に割かれた」。本論で勝負できなかった、と悔しさをにじませる。

 農村でも逆風が吹いた。新顔が大敗した山形で、運動中に応援に歩いた衆院議員は、支持者の突き上げを食った。「大臣の失言、なんだべ」「松岡(農水相)の後は、ばんそうこう張った男か。安倍さんには学習してもらわねえと」

 落選したほかの陣営も悲鳴を上げた。「年金だけならいいが、余計なものがどんどん出てくる」(青森)。「オウンゴールが4点ぐらいだ」(千葉)。足を引っ張った代表格の赤城農水相は選挙翌日、「…………」。終始無言で登庁した。

 惨敗を尻目に、首相は続投を表明した。派閥のボスらが即刻承知したのを、作家の辻井喬さんは嘆く。「子分を一人でも多く閣僚にしようという計算で、自民党全体のことなんて考えていない。まして国家の将来なんて頭の片隅にもない」

 追い風は民主党に吹いた。比例区の最後に滑り込んだ山本孝史氏は、進行がんと闘う。「天から『あなたの出番を作りましたよ』と言われた気がする。6年は無理かもしれないが、命ある限り仕事をしたい」。弱い人たちへの優しさを、自らに課す。


【毎日・社説】

社説:参院選ショック 民主党 与党と正面からぶつかれ

 民主党の小沢一郎代表は31日、安倍晋三首相の続投決定について厳しく批判し、与党との対決姿勢を鮮明にした。小沢氏は常任幹事会で「過半数を失っても内閣が存続するという手前勝手な非常識が、国民の理解を得られるとは到底思えない」と語った。

 自民党は改選64議席を37議席まで減らす歴史的惨敗を喫したが、首相は続投を表明した。その理由について「政権の基本路線は多くの国民に理解されており間違っていない」と説明している。

 だが続投理由は理解しにくい。就任後初めて受けた全国レベルでの国民の審判で与党議席を激減させたのに、どうして「基本路線は多くの国民に理解されている」と明言できるのだろう。「非常識」との指摘の方が的を射ている。

 小沢氏は記者団に、民主党主導の法案を出すことによって国民への約束を果たしたい、との考えも示した。

 参院で第1党となった民主党は他の野党と協力して与党と対抗する方針だ。法案を先に参院に議員提案して可決させ、衆院で与党に判断を迫ろうという戦術だ。そのひとつとして政治資金規正法の再改正を念頭に置いているようだ。

 先の通常国会で自民、公明両党の賛成で成立した同法は、5万円以上の経常経費(人件費を除く)の領収書添付を義務付けたが対象は政治資金管理団体に限られた。そのために後援会などの行為が問題になった赤城徳彦農相の事務所経費問題には対応できず、「ザル法」との批判が噴出している。

 これに対して、廃案になった民主党案はすべての団体を規制対象にするなど、より厳格なルールを規定する内容だ。

 自民党の選挙敗北は「政治とカネ」の問題に対する消極性も大きな要因だろう。衆院に民主党案を軸にした案が回ってくれば、与党議員も反対しにくいはずだ。

 政府・与党内では、民主党案に乗るわけにはいかないと独自に改正政治資金規正法を見直す動きも出ている。与野党逆転の効果がすでに出ていると言えるだろう。

 臨時国会では11月1日で期限が切れるテロ対策特別措置法の延長が焦点になる。同法に基づき海上自衛隊がインド洋で米軍艦船などに燃料の補給活動を行っている。

 小沢氏は31日、特措法延長に反対する意向を明言した。同法への対応は外交政策上も民主党の姿勢が問われる試金石になる。

 参院の自民、民主両党は55年体制のなごりで「仲良しクラブ」との指摘がある。党内にも対決姿勢ばかりを強調すべきではないとの声もある。しかし選挙で国民が求めたものは両党の堂々とした政策論争だろう。小沢氏が格差是正で自民党との違いをはっきりさせたのも支持を得た要因と言える。

 小沢氏は「本当の勝負はこれからだ」と語っている。ならば「民主党政治」がどのようなものかを具体的に示して、「安倍政治」と向き合わなければならない。

毎日新聞 2007年8月1日 東京朝刊

社説:慰安婦決議 歴史認識の溝を埋める努力を

 米下院本会議はいわゆる従軍慰安婦問題について「日本政府は歴史的な責任を公式に認め、謝罪すべきだ」という謝罪要求決議を採択した。日米関係に悪影響を及ぼさないよう両国政府の外交努力を促したい。

 決議案はこれまでに4回提案され、本会議採択は初めてだ。日本政府は採択しないよう米議会に働きかけたが成功しなかった。決議の重要性が高まったのは、安倍晋三首相が3月、国会で「狭義の強制性」を否定した答弁により、日米双方の関心が一挙に強まったためだ。決議に拘束力はなく、日本を一方的に批判するような内容には疑問もあるが、米議会の人権問題に対する懸念の深さと日米の歴史認識のずれを示す形になった。

 ブッシュ大統領が4月の日米首脳会談で「安倍首相の謝罪を受け入れる」と述べたのにもかかわらず、下院が同盟国日本へあえて要求をつきつけたのはなぜだろう。

 最大の理由は、理念の国米国にとって価値観や人権は譲れない原則であり、慰安婦問題を過去の話とみていないという点だ。

 決議を提案したホンダ下院議員は3月の演説で「慰安婦の経験は棚上げされてすむ歴史のエピソードではない。世界ではいまも女性の人権は守られていない。日本政府は戦時下の女性への暴力を排除する目標に踏み出すべきだ」と呼びかけた。スーダン・ダルフールの女性被害を引用しながら、現在の人権問題として解決を迫る論理だ。いまの日米は価値観を共有するはずなのに、という問題設定でもある。民主主義や自由を世界に広める使命を重視する米国で決議案阻止の動きは少なかった。

 さらに、日本の反応が公式と非公式の姿勢、あるいは建前と本音の間で食い違っているように受け止められた。安倍首相は強制性発言と4月訪米時の「おわびの気持ち」発言の間で大きな揺れをみせた。本心がどちらなのか釈然としない米国人は多いだろう。

 旧日本軍の関与を認め謝罪した93年の河野洋平官房長官談話をよりどころに「謝罪してきた」と説明するのが日本の立場だ。だが、軍の強制の証拠はないとして河野談話の見直しを主張する一部の政治家の発言は米国にも伝わっている。歴史修正主義と米国がみなす動きに対する警戒も出ている。

 ラントス下院外交委員長が本会議で「ドイツは歴史の罪について正しい選択をした。一方、日本は歴史の記憶喪失を促進してきた。日本の一部にある歴史をゆがめ否定し、被害者を非難する動きには吐き気を催す」ときわめて強く批判したのもその表れだろう。

 米国が主張する原爆投下正当化論への批判は日本に根強い。対テロ戦争やイラク戦争での人権侵害には国際法違反の指摘もある。「正しい歴史」を振りかざすだけでなく、みずからの過ちを振り返る謙虚さを米国には求めたい。

 歴史認識のずれを埋める対話は米国ともアジア各国とも続ける必要がある。河野談話で示した謝罪と反省を、繰り返し丁寧に説明する努力を怠ってはならない。

毎日新聞 2007年8月1日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:首相もつとめた戦前の財政家、高橋是清は…

 首相もつとめた戦前の財政家、高橋是清は、米国で奴隷にされたことがある。仙台藩から留学生として渡米した際に、英語が分からないのにつけ込んだ仲介人にだまされて身売り契約にサインしたのだ。働き先では、奴隷扱いに抗議して主人に殴られたりもした▲当時は南北戦争後で奴隷制は廃止されていたが、実際は有色人種の人身売買が残っていた。結局高橋は、留学生仲間とともに仲介人と対決し、身売り契約を破棄させるのに成功する。理不尽な拘束を自らふりほどいた高橋は、何とか無事に帰国した▲その4年後、横浜に寄港したペルー船で虐待を受けていた200人以上の清国人を日本政府が助けたマリア・ルーズ号事件が起こる。清国人は労働契約で乗船したが、奴隷として送られるところで、事件は日本の新政府による奴隷解放として名高い▲だが裁判で奴隷船の船長は日本の娼妓(しょうぎ)制度も人身売買ではないかと年季証文を示し反論した。あわてた日本政府は娼妓解放令を出すが、前借金による人身売買の実態は戦後までさして変わらなかった。日本の娼妓制には奴隷商人もあきれたらしい▲鶴見俊輔編著「御一新の嵐」(ちくま学芸文庫)が紹介する維新史の二つの事件を振り返りたくなったのは、米国下院本会議で第二次大戦当時の従軍慰安婦問題をめぐる対日謝罪要求決議が採択されたと聞いたからだ。歴史から何をくみ取るかは、今をどう生きるかと表裏一体である▲決議の掲げる歴史認識は確かに一方的だ。ただ米議会が問う事柄の核心は、今の日本政府が人権をめぐる価値観を米国と共有できているかどうかだ。問題への外交的対処には、現代世界の心ある人々の人権侵害への嫌悪の激しさをふまえた冷静な賢慮が求められよう。

毎日新聞 2007年8月1日 東京朝刊


【読売・社説】

慰安婦決議 誤った歴史の独り歩きが心配だ(8月1日付・読売社説)

 明らかな事実誤認に基づく決議である。決議に法的拘束力はないが、そのまま見過ごすことは出来ない。

 米下院本会議は、いわゆる従軍慰安婦問題について、日本政府に対して公式な謝罪を求める決議を採択した。

 決議は、旧日本軍が、アジア各地の若い女性たちを慰安婦として「強制的に性的奴隷化」したと非難している。

 当然のことながら、日米同盟は、日本の国益上、きわめて重要な意味を持つ。日米両国は、軍事的、経済的に緊密な関係にあるだけでなく、民主主義、人権といった価値観も共有している。

 しかし、事実誤認には、はっきりと反論しなければならない。誤った「歴史」が独り歩きを始めれば、日米関係の将来に禍根を残しかねない。

 慰安婦問題では、1990年代初め、戦時勤労動員だった「女子挺身(ていしん)隊」が日本政府による“慰安婦狩り”制度だったとして、一部の新聞が全く事実に反する情報を振りまいた経緯がある。

 さらに93年に発表された河野官房長官談話には、官憲によって慰安婦が「強制連行」されたかのような記述があり、国内外に誤解を広めた。

 だが、慰安婦の強制連行を裏付ける資料は、存在しなかった。日本政府も、そのことは繰り返し明言している。

 他方で日本国内にも、全体として「強制性」があったとする主張もある。しかも、「強制性」の具体的内容の説明をしないまま、米議会の決議を当然視するような論調を展開している。

 決議は、「慰安婦制度は20世紀最大の人身売買の一つ」としている。

 そうした“慰安”施設は、旧日本軍に特有のものではなかった。戦後、米占領軍は、日本の“慰安”施設を利用した。朝鮮戦争当時、韓国軍もその種の施設を持っていたことが、今日では明らかにされている。

 第2次大戦中、ドイツ軍にも“慰安”施設があり、占領された地域の女性が組織的・強制的に徴集された。

 なぜ、日本だけが非難決議の対象とされるのだろうか。

 決議の背景には、提案者のマイケル・ホンダ民主党議員を全面的に支援する中国系の反日団体の活発な動きがあった。ドイツについては同様の運動団体がないせいだろう。もちろん、米軍の“道義的”責任を追及する団体はない。

 民主党優位の米議会では、今回のような決議が今後再び採択されかねない。日本の外交当局は、米側の誤解を解く努力が、まだまだ足りない。
(2007年8月1日1時23分  読売新聞)

コムスン譲渡 利用者に不安を生じさせるな(8月1日付・読売社説)

 介護サービスの利用者に不安を生じさせることがあってはならない。

 グッドウィル・グループの子会社で訪問介護大手「コムスン」が、事業の譲渡計画を厚生労働省に提出した。

 問題はこれからだ。グッドウィルとコムスンは、介護サービスを優良事業者に円滑に引き渡す責任がある。

 訪問介護など在宅系サービスの約1200事業所とスタッフは、都道府県ごとに分割して他の事業者に譲渡する。具体的な譲渡先は、社外の専門家で作る第三者委員会の意見を聞き、9月上旬までに決定する。

 グッドウィルは当初、コムスンを一括譲渡する方針を示していた。その結果、同じ業界大手のニチイ学館やワタミが名乗りを上げ、商社も関心を示すなど、一時は買収合戦の様相を呈した。

 だが介護保険制度には、悪質な不正があった法人の事業所はすべて指定更新しない、という連座規定がある。コムスンは、この規定が適用され、全面撤退となった。一括譲渡では同様のリスクがあり、再び混乱が繰り返されかねない。

 また、全国展開する大手の介護会社に人材が集中してしまっては、地域の事情で異なる介護ニーズに応えにくい。

 こうした点を考慮すれば、都道府県単位で譲渡する、という今回の方針は妥当であろう。

 ただ、地域によっては引き受け手が見つからないこともあり得る。その場合は地元の社会福祉協議会が受け皿になるなど、介護サービスが途切れぬように手立てを講じる必要がある。

 地域の事業者が一体となった協力体制作りも大事だ。厚労省と都道府県は適切な指導をすべきだろう。

 コムスンは、24時間いつでも応じる介護サービスが売り物で、多くの利用者が頼りにしている。他に同様のサービスをする事業者がほとんどないためだ。

 譲渡にあたっては、「24時間介護」にきちんと取り組むことが求められる。コムスンの“長所”を継承し、発展させられる事業者でなければならない。

 コムスンの不正は、勤務実態のないヘルパーを登録して事業所を開設するなど悪質だった。今回の“廃業”は当然と言えよう。

 だが、背景にある問題として、現行の介護報酬の仕組みでは職員の待遇を改善できず、業界全体が深刻な人手不足に陥っていることが指摘されている。

 介護にたずさわる人材の確保策を、長期的な視野に立って検討することも急ぐべき課題である。
(2007年8月1日1時23分  読売新聞)

【読売・編集手帳】8月1日付 編集手帳

 1歳になるやならずの赤ちゃんがベビーカーに眠っている。お母さんが手にしたハンカチを揺らし、小さな風を送っていた。その額にもうっすらと汗が光っている◆通勤の駅のホームで見かけた光景である。古川柳に「寝ていても団扇(うちわ)の動く親ごころ」とあるが、自分の汗はぬぐわずともハンカチの動く親ごころ、だろう。暑苦しくはないかと、わが子の身を気づかう心は今も昔も変わりあるまい◆日本で観測された最高気温は1933年(昭和8年)7月、山形市の40・8度という。数字を見ただけでげんなりするが、それより10度も高い密室に何時間も放置された子は、どれほど苦しかっただろう◆福岡県北九州市で保育園の送迎車に3時間以上も置き去りにされた浜崎暖人(はると)ちゃん(2)が熱射病とみられる症状で死亡した。車内温度は50度近くになっていたことが警察の再現実験で確認されている◆遠足に出かけた公園から園児を連れ帰ったとき、暖人ちゃんがまだ車にいるのを園側が気づかず、ドアを施錠したらしい。ポケットの10円玉なら、「おや、どこに消えたか」で済む。人間の命である◆告別式で出棺の前、ご両親は暖人ちゃんの口もとにヨーグルトを運んだという。のどが渇いたろう、と。毎夜、胸のなかでハンカチを揺らし、わが子の寝顔に風を送りつづけるのだろう。
(2007年8月1日1時34分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】枚方市長逮捕 市町村でも入札透明化を

 大阪府枚方市発注の清掃工場建設をめぐる談合・汚職事件で、大阪地検特捜部は中司宏市長を競売入札妨害(談合)容疑で逮捕した。捜査着手から2カ月を経て、事件は最悪の結果となった。

 中司容疑者は、清掃工場の建設をめぐって、副市長や大阪府議、元大阪府警捜査2課警部補、大林組元顧問=いずれも談合罪などで起訴済み=と共謀のうえ、平成17年11月の入札の際、大林組の共同企業体(JV)が落札できるよう談合をした疑いに問われた。清掃工場は予定価格の98・4%にあたる55億6000万円という異常な高値で落札された。

 地方自治体の首長が「天の声」を発する官製談合事件は、全国で相次いでいる。昨年だけでも福島、和歌山、宮崎の各県知事が逮捕された。いずれも談合だけでなく、企業側から金銭を受け取り、贈収賄事件に発展した。背景には、自らの選挙を有利に運ぶ狙いがあった。

 中司容疑者の場合、現段階では金銭の授受などはなく、選挙目当てでもないとされる。談合があった席では黙って聞いていただけといわれ、検察内部でも選挙で選ばれた自治体首長の身柄を談合容疑だけで拘束することについては慎重な意見もあったという。

 しかし中央官庁も含め、官製談合については近年、国民から厳しい批判がある。異例の身柄拘束に踏み切った検察当局の決断を評価したい。

 地方自治体では、知事や市長といった首長が、もっとも大きな権限を持っている。このため全国知事会では官製談合の温床といわれる指名競争入札を原則禁止にし、1000万円以上の公共工事はだれでも参加できる一般競争入札とする指針をまとめた。市町村レベルでも、こうした改革を進めていくべきであろう。

 談合罪は被害者のいない犯罪といわれる。しかし異常な高値での落札は、税金のムダ遣いであり、最終的には納税者が被害者である。談合根絶に向けて、自治体だけでなく、企業側も自浄能力を発揮しなければならない。

 中司容疑者は「市民派」の旗手といわれ、市議会などでは談合への関与を一貫して否定し続けた。それが身柄拘束に至ったことは市民への重大な背信だ。市長辞職は当然である。

(2007/08/01 05:18)

【主張】慰安婦決議 官民で事実誤認を正そう

 慰安婦問題で日本政府に公式謝罪を求める決議が米下院本会議で可決された。拘束力はないが、日本の重要な同盟国である米国の議会で、日本非難の決議が出されたことは憂慮すべきである。

 今回、安倍内閣はこの問題で相応の対応をとってきた。

 安倍晋三首相は4月末の日米首脳会談で、慰安婦に対する深い同情の念を示し、ブッシュ大統領はこれを評価した。加藤良三駐米日本大使は下院の枢要メンバーに対し、慰安婦問題で日本を非難する決議が採択されれば、日米関係に長期の有害な影響を与えるだろうという趣旨の書簡を送った。

 下院の民主党指導部は日本の政局への影響を考慮し、本会議での採決を参院選後に延ばしたと伝えられている。また、慰安婦決議とは別に、日本の対テロ戦への貢献を評価する決議が下院外交委員会で採択された。これらは日本の外交努力の一定の成果といえる。だが、それでも、本会議での採択は止められなかった。

 決議は下院外交委員会での採択の段階で、「日米同盟はアジア地域の要」とする文言が加えられ、民主党のマイク・ホンダ議員が提出した当初の決議案より表現が緩やかになっていた。しかし、「慰安婦制度は日本政府が第二次大戦中に行った軍用の強制的な売春」と決めつけるなど、基本的な誤りは全く訂正されていない。

 慰安婦が第二次大戦中に辛酸をなめたことは同情に値する事実だが、彼女らは主として民間業者によって集められ、日本政府が強制的に集めて売春を行わせたのではない。それは、日本政府が2年がかりで集めた200点を超える公的文書などが証明している。

 慰安婦決議をめぐり、櫻井よしこ氏ら日本側識者が慰安婦問題に関する事実関係を論証した意見広告を米紙に掲載した。「かえって米議会の反発を招いた」という批判もあるが、国際社会で何も反論しないことは、誤った史実を認めたことになりかねない。

 慰安婦決議の背後で、在米中国系団体が下院の外交委員長に圧力をかけていた事実も明らかになった。この団体は中国政府と密接なきずなを持ち、歴史問題で日本を非難している。

 事実誤認を正すための官民の一層の努力が必要である。

(2007/08/01 05:16)

【産経抄】

 くだらない人間が根も葉もないことをあれこれ騒ぎ立てても放っておくのが大人の対応というものである。ムキになって青筋立てて反論しては相手の思うツボだ。というのは百も承知の上でだが、米議会はなぜかくも愚かな選択をしたのだろう。

 ▼ 日本時間のきのう、米下院本会議で採択された慰安婦決議は、「性的奴隷」といったまがまがしい単語がちりばめられ、理性のかけらもない。第一、何を証拠に「20世紀最大の人身売買」と断定しているのかさっぱりわからない。北朝鮮お得意の反日プロパガンダ(宣伝)とうり二つだ。

 ▼その一方で、下院外交委員会は、アジア太平洋地域の安定や、テロとの戦いでの日本の役割に謝意を示す決議案を採択したそうだが、御為(おため)ごかしとはまさにこのことだ。同盟国の先祖の顔に泥を塗ったうえで、握手しようというのだから、厚顔ぶりにあきれてしまう。

 ▼ これまで小欄は、読者のみなさんから「対米追従が過ぎるのではないか」といったおしかりの手紙やメールを多数いただきながらも、国益のためには、イラクなどで米国が展開しているテロとの戦いに日本も全面協力しなければならない、と繰り返してきた。だが、それも日米の信頼関係あってのことである。

 ▼折しもテロ対策特別措置法の期限切れが迫っている。参院選で大勝利した民主党の小沢一郎代表は、延長に反対の方針を明確にした。臨時国会の状況次第では、インド洋で米英艦艇を支援してきた自衛艦は撤収に追い込まれかねない。

 ▼慰安婦決議をきっかけに日本でも反米感情が高まれば、アジアの平和と安定を支えてきた日米同盟は、風前のともしびとなる。それを喜ぶのはいったい誰か。米議会人は胸に手をあてて反省すべきだろう。

(2007/08/01 05:13)


【日経・社説】

社説1 年金不信解消へ与野党とも胸襟を開け(8/1)

 年金問題が最大の争点となった参院選で与党の自民、公明両党が惨敗し民主党が躍進したのは、年金記録問題への有権者の怒りが噴き出たためだ。これまで政府・与党が進めてきた年金改革で制度の持続性が保てるのかという不信感もあろう。

 与党はこうした声を真剣に受け止める必要がある。一方、民主党が提案した年金改革案にも改善すべき点が多い。与野党は互いに胸襟を開き国民本位の年金協議に臨むべきだ。

 記録問題解決の具体策は、すべての加入者・受給者への分かりやすい加入履歴の郵送など、与野党間に大差はない。早急に実施すべきだ。しかし制度問題は年金の全体の仕組みや財源について両者に大きな隔たりがあり、歩み寄りの気配はない。

 参院選に勝利した民主党の改革案の柱は厚生年金、共済年金など被用者年金と国民年金との一元化だ。すべての国民が現役時代の収入に応じて引退後に年金を受け取る仕組みに変える。5%分の消費税を財源とする最低保障年金の創設も唱えた。

 この案には未納問題が解決できる、職業の違いによる給付格差がない、などの利点がある。だが消費税を増税せずに補助金削減などで最低保障年金を賄うとの財源論は説得力を欠く。2004年時点では3%の税率上げが必要になると説明していた。高齢化が進むなかで本当に増税なしで年金給付できるのか、疑問だ。報酬比例年金の保険料率など基本の数字も明らかにしていない。

 与党の主張は厚生年金と公務員などの共済年金を一元化する、基礎年金の財源について国庫負担を2分の1に上げる、などだ。しかし厚生、共済年金の一元化は年金改革というより公務員改革の問題だろう。国庫負担の引き上げに必要になる約2兆5000億円の出所もぼかしたままだ。

 将来の出生率が想定より下がった場合、給付水準が現役世代の手取り収入の5割を下回るのを容認するかどうかも言葉を濁している。経済成長を維持すれば給付を守れるというだけでは国民の納得は得られまい。

 年金改革はどうしても国民にある程度の痛みが伴わざるを得ない。選挙で年金が争点になり、その結果、各党が甘い公約で人気取りに走れば制度の持続性が危うくなる。与野党が一致点を見いだせないままに政権交代のたびに制度が大きく変わる事態も避けなければならない。

 与野党は05年に両院協議会をつくり年金改革を議論したが、このときは入り口論に終始した。速やかにこの協議を再開させ、今度こそ中身の濃い議論を深めるべきだ。

社説2 日米関係損ねる慰安婦決議(8/1)

 米下院本会議による従軍慰安婦決議の採択は、日米関係を損ねる結果になるだろう。心配な事態だ。

 一方、下院外交委員会は31日に日米同盟に対する日本の貢献に感謝する内容の決議を採択するとされる。慰安婦決議とのバランスを考えたとすれば、慰安婦決議を扱った同委員会自身が決議の日米関係への否定的影響を認めたようにみえる。

 決議は、年間約1000本も採択されるとされる文書のひとつであり、法的拘束力もない。過剰反応は無用だが、日米関係への悪影響に目をつぶれない。

 決議は日本政府、首相の公式謝罪を求めている。政府は1993年の河野洋平官房長官談話で慰安婦だった方々に公式に謝罪し、アジア女性基金を通じた償いをしてきた。

 安倍晋三首相は4月訪米時のブッシュ大統領、議会指導者との会談で「辛酸をなめられた元慰安婦の方々に、個人として、また総理として心から同情するとともに、そうした極めて苦しい状況におかれたことについて申し訳ないという気持ちでいっぱいだ」と発言した。これも決議が求める公式謝罪に近い。

 安倍訪米前、米側がこの問題で対日批判を強めていたころ、私たちは「韓国、中国よりも米国で声高に批判されるのを日本で聞く違和感は、米先住民の過去の待遇を日本の国会が批判するのを米国人が聞く時の感覚に近いだろう」と書いた。さらなる謝罪を求める決議の採択を聞いて同様の感覚を禁じ得ない。

 米側での対日イメージの低下や日本国内での反米感情の高まりにつながりかねない動きは、双方にとって有害である。それ以外にも日米間には否定的要因が増えている。

 日本ではブッシュ政権の融和主義的な北朝鮮政策に不満が強い。参院での多数を得た民主党の小沢一郎代表は、テロ対策特別措置法の延長に反対を表明した。インド洋での海上自衛隊の給油活動が打ち切られれば、米側に失望感を与えるだろう。

 ともに求心力を失いつつある安倍、ブッシュ両政権には、問題解決が難しい。慰安婦決議は日米関係に対する逆風であり、これに乗った安倍政権批判は、結果的に日米間の遠心力になる可能性が高い。

【日経・春秋】春秋(8/1)

 ゴダールやフェリーニに感心しているのは並の映画ファン。しかしイングマル・ベルイマンに夢中といえば一目置かれる――。かつて映画青年の間にはそんな雰囲気があった。このスウェーデンの監督の作品はそれくらい難解とされた。

▼どこか暗鬱(あんうつ)な映像、哲学的な会話、息づまるような性描写。『沈黙』や『第七の封印』を見終わって、いささか疲れを覚えたものだ。しかし不思議なことに、そうした作品の断片が不意に脳裏によみがえることがある。「あれは何を物語っていたのだろう」。後々まで反芻(はんすう)させるのが作家の力量なのかもしれない。

▼舞台やテレビドラマにも挑んだエネルギッシュな人だった。イングリッド・バーグマンを起用した『秋のソナタ』では、この大女優と衝突して平手打ちを食らいながら演出を続けたと自伝に書いている。やがて、「その顔からはこわばった仮面が取れ、悩める人間の顔がフィルムにおさめられた」(木原武一訳)。

▼立て続けに、イタリアのミケランジェロ・アントニオーニ監督の訃報(ふほう)も届いた。やはり20世紀を代表する巨匠のひとりだ。映画というメディアを通して人間の内面に深く迫り、国境を超える感銘を届けてくれた作家たちの偉業を思う。「不可能なことこそ魅惑的である」。ベルイマン氏は自伝にこう記している。


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