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2012年12月28日 (金)

こんな時だからまた読みたい、UEKUSA レポート Plus 「失われた5年-小泉政権・負の総決算」(4)~(6)

 BBS投稿を採録。

「失われた5年-小泉政権・負の総決算」(1)~(3)はhttp://6719.teacup.com/syukensya/bbs/680

↓「直言」のリンクは既に切れています。

UEKUSA レポート Plus
2006.06.06
第9回「村上ファンド代表逮捕についての論考」
http://web.chokugen.jp/uekusa/2006/06/post_e81f.html

 村上ファンド代表の村上世彰氏が証券取引法違反(インサイダー取引)容疑で逮捕された。ライブドアがニッポン放送の株式を5%以上取得する意思を持ったことを知った後に、ニッポン放送株を購入したことが容疑事実である。
 私は村上氏の東大教養課程時代のクラスメートである。同じクラスメートである元警察官僚の滝沢建也氏が村上ファンド設立時からの同社ナンバーツーであった。村上氏、滝沢氏はいずれもすこぶる頭脳明晰である。とりわけ滝沢氏は人格的にも非の打ちどころのない人物で、多くの級友の尊敬を集める存在であった。
 村上氏は最近多くのジャーナリズムで紹介されているように、幼少のころから株式市場に対する強い関心を払い続けてきた人物である。株式投資は村上家にとっての重要な事業のひとつにもなっていたと、学生のころ私も直接聞いている。彼は企業の財務内容を徹底的に調べたうえで、株価が一株あたり純資産を大幅に下回っている企業を数多く発掘していた。
 通産官僚を辞してM&Aコンサルティング(MAC)を立ち上げたとき、多くの級友は、ついに彼が元来もっとも強い分野に進出したと得心したものである。新事業を創設するにあたって、学生時代から村上氏がもっとも敬意を払っていた滝沢氏が招かれたのだと考えられる。
 滝沢氏は法律の専門家でもあり、冷静沈着な行動様式を備え、MACの事業の法令遵守面を統括してきたのではないかと考えられる。インサイダー取引規制などには、文字通り「水も漏らさぬ対応」で細心の注意を払い続けてきたと考えられるが、そのなかで今回の事件が発生してしまった。
「上手の手から水が漏れる」、「弘法にも筆の誤り」が事態を表現する比喩としては妥当ではないかと思う。社交家である村上氏は親しい友人を招いて自宅でよくパーティーを開いていた。ライブドアの堀江前社長とは住居が近接していることもあって頻繁に接触を持っていたと思われる。
 ニッポン放送とフジテレビとのいびつな資本関係に着目し、ニッポン放送株に目をつけたのは、村上氏の類まれなる感性と調査能力によるものだったと思われる。村上氏はニッポン放送を支配すればフジテレビの支配も不可能ではないとの構想を堀江氏にも語り聞かせたのだと思われる。その影響を受けてライブドアはニッポン放送株式の大量取得方針を決定した。この情報の流れのなかで村上ファンドはニッポン放送株式を大量に取得したと考えられる。
 村上氏が説明するように、これらの経緯は、結果的に証券取引法の規定に抵触する。コンプライアンス(法令遵守)に細心の注意を払っていたはずの村上ファンドが、なぜこの部分を自制できなかったのかには疑問が残る。
 村上氏は日本の株式市場に広範に観察される「ゆがみ」の是正を強く訴えてきた。その訴えには正当なものが数多く含まれていた。企業と企業が大量に株式を保有し合い、馴れ合いの関係に陥れば、持ち合い株式以外の株式を保有する本来の企業株主の意向は無視される傾向が強まる。村上ファンドは問題が多いと考える企業の株式を大量に取得し、株主総会等を通じて企業経営者に経営方針の変更を強く求める行動を繰り返した。
 こうした行動が、企業経営者に対して警鐘として鳴り響いた効果は極めて大きかったと考えられる。この意味で、村上ファンドの功績に非常に大きいものがあったのは確かである。だが、ファンド組成の最大の目的は投資パフォーマンスの追求にあった。これはファンドとしては当然のことである。株価が各種指標から見て割安と判断した場合に当該株式を大量に取得する。村上氏の選別眼が非常に優れていることから、やがて村上ファンドが大量所有したとの情報そのものが、株価上昇の直接の要因になっていった。
 こうなればファンドとしては連戦連勝となる。こうしたファンドとして異例の急成長を遂げた最大の原因が村上氏の能力にあったと見るのは正当な評価であろう。だが、投資パフォーマンスの「過度の」追求に落とし穴があったのではないだろうか。ライブドアが本格的にニッポン放送株式取得に向かう動きを取れば、フジテレビサイドの対抗措置ともあいまって株価が急騰する蓋然性が高いと判断するのは当然である。
 だが、ライブドアによるニッポン放送株式大量取得意向の情報を村上ファンドが事前に把握していれば、当然インサイダー取引規制との絡みが問題となるはずである。この部分のチェック体制に緩みが生じたとすれば、それは投資パフォーマンス追求にバランスがかかりすぎた結果であったと判断されるのである。
 この意味で、村上氏の説明は概ね妥当であると感じられる。違法性の認識があったのかどうかの点についての村上氏の釈明には釈然としない部分が残るものの、事後的に一連の経緯について法令違反を認定し、記者会見を開いて説明したことは身の処し方としては適正であったと思う。
 事実を認定し、謝罪し、証券市場から身を引くとの意思表示は逮捕直前の身の処し方としては評価されるものである。ライブドア前社長の堀江氏は無実潔白を主張している。真に無実である者が無実を主張するのは当然であるから、現時点で堀江氏の発言の是非を断じることはできないが、ライブドアの宮内前取締役などの証言が仮に真実だとすれば、堀江氏は自己の保身に走っているということになってしまうだろう。堀江氏の評価はともかく、村上氏の行動は最終局面で巧妙であったと言える。
 私はライブドアに強制捜査が入った1月16日の翌日に、自分のホームページコラム(http://uekusa-tri.co.jp/column/2006/0117c.html)『今週の金融市場の展望(2006年1月17日)』に次のように記述した。
「(前略)ライブドアへの強制捜査の影響は決して小さくないと考えられる。二つの重要事項を指摘できる。第一は、ライブドアが昨年2月8日にニッポン放送株を立会外取引を利用して瞬時に30%取得したことについての事実関係の確認だ。ライブドアの株式取得については、実質的に市場外取引であり、届出のない取得は違法ではないかとの指摘があった。
 当時の伊藤金融担当相は国会答弁で「違法でない」と発言した。しかし、立会外取引の当事者同士が事前に株式売買について了解していたとなると違法取引の疑いが浮上する。今回の家宅捜査によってニッポン放送株取得の経緯も明らかになる可能性があり、株式市場での他の大手参加者にまで捜査が発展してゆく可能性がある。(後略)」
 ここで私が表現した「株式市場での他の大手参加者」とは、村上ファンドのことを意味していた。ライブドアの問題が表面化した瞬間に、私は村上ファンドのニッポン放送株式売買が問題になると判断したのである。
 こうして考えたときに、当時の伊藤金融担当相の国会答弁が問題になる。立会外取引でニッポン放送株式を大量取得したことについてのコンプライアンス上の問題が瞬時に判定できるとは到底考えられないのである。さらに問題は、「本当に違法取引ではなかったのか」との点にも波及する。
 今通常国会は依然として会期を残しており、伊藤前金融相の国会答弁の背景が明らかにされなければならないはずである。国会議員のなかに堀江氏や村上氏と接触のあった議員は数多く存在するはずである。ニッポン放送株式の売買手口については、他にもインサイダー取引が存在しなかったかどうか、徹底した再調査が求められる。
 インサイダー取引は重大な犯罪である。しかし、これまで日本ではその運用が極めて甘かった。2003年5月17日に小泉政権は「退出すべき企業は市場から退出させる」との方針を全面放棄して、りそな銀行を公的資金により救済することを発表した。この政策方針変更についての正確な情報を事前に入手していれば、莫大な利益をほとんどリスク無く獲得することができたはずである。
 りそな銀行、株価指数取引、株価指数投信などについて、証券取引等監視委員会は徹底的な手口調査を実施しなければならなかったはずだ。私は当時のテレビ番組で何度もこのことを訴えたが、証券取引等監視委員会が動いた形跡は皆無である。
 こうした状況まで含めて考えると、今回の摘発には「国策捜査」としての性格が色濃く影を落としているように感じられる。私が巻き込まれた事件の場合には、完全なる「でっちあげ」によって事件が仕立て上げられた。このことの詳細をここで述べることはしないが、近年の警察、検察の動きにはあまりにも強く政治が関わりすぎている側面が強いように見える。「国策捜査」と称せられる最近の司法当局の活動全体についての真相解明をわれわれはもっと真剣に追求するべきである。

今回は予定を変更して「村上ファンド代表逮捕について」の「直言」といたしました。あしからずご了承ください。

2006.06.06 記事 | 個別ページ

 

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http://6719.teacup.com/syukensya/bbs/680

2006.06.25
第10回「失われた5年-小泉政権・負の総決算(4)」
http://web.chokugen.jp/uekusa/2006/06/10_47b9_1.html

 2003年5月17日、りそな銀行実質国有化方針決定の記事が新聞に掲載された。りそな銀行が公的資金により「救済」される方針が示されたのだ。
 小泉「改革」の経済政策における柱は次の2つだった。「国債は絶対に30兆円以上発行しない」の言葉に代表される超緊縮財政政策運営と、「退出すべき企業は市場から退出させる」の言葉に代表される「企業の破綻処理推進」である。経済悪化を促進して、他方で企業はどんどんつぶしていくのだから、行く末は自明だった。
 私は小泉政権の発足時点から、「小泉政権の政策が実行されてゆけば、日本経済が最悪の状況に向かうことは間違いない。金融恐慌も現実の問題になるだろう」と発言し続けた。権力迎合の殆どの付和雷同エコノミストは、「改革推進で株価は上昇するし、経済も明るい方向に向かう」と大合唱していた。
 結果は、私の懸念通りだった。日経平均株価は小泉首相が所信表明演説で政策方針を発表した2001年5月7日を起点に、順当に暴落していった。2003年4月28日には7607円に達した。わずか2年で株価は半値に暴落した。1989年12月29日の史上最高値のわずか5分の1以下に暴落したのである。
 2002年9月30日、内閣改造が行なわれ竹中経財相が金融担当相を兼務することになった。竹中氏は金融再生プロジェクトチーム(PT)なるものを組織し、金融行政のルール変更を画策した。竹中氏に接近していた元日銀の木村剛氏もこのPTに加わった。
 金融機関の自己資本算定にかかわる、資産査定の厳格化や、繰延税金資産の計上ルール変更などが論議された。PTはルール変更を主張したが、銀行界からの猛烈な抵抗にあった。それは当然だ。銀行は存在しているルールに基づいて経営している。期の途中で突然ルール変更されて対応できるはずがない。ゴルフでティーショットを打ってから、OBラインが変更されるのでは、とてもゴルフはやれないのだ。
 資産査定の厳格化の方針そのものは、私もそれ以前から主張し続けていたことである。しかし、ルールを変更する際にも一定のルールは存在する。十分な論議と適正な準備期間は不可欠である。
 結局、ルール変更は見送られた。ただ、このPTは、中小企業専門の新しい金融機関の設立の必要性を報告書に記述した。そののち、木村氏は自らが中心人物となり、新銀行設立の申請を金融庁に提出し、金融庁は異例のスピードで新銀行設立を認可した。新銀行では、木村氏自らが関係する企業に、多額の資金を好条件で融資していることがその後に発覚した。この銀行の設立、運営についても徹底的な調査が求められている。
 竹中氏としては、金融機関の自己資本算定のルール変更について、上げたこぶしを下ろす先がなくなった格好になった。その延長線上にりそな問題が浮上したと考えられる。2003年のりそな処理=株価底入れの過程については、3つの重要な論点があると述べた。①金融行政と外国資本との連携の疑い、②りそな銀行がなぜ標的とされたか、③りそな銀行処理における繰延税金資産計上の不自然さ、の3点だ。
 小泉政権は大銀行についても、「退出すべきは退出させる」方針を貫くことを再三にわたり表明していた。日経平均株価が7607円まで暴落した最大の理由がこの点にあった。大銀行が倒産させられるなら、企業の破綻は一気に拡大する。そして連鎖的に第二、第三の銀行破綻が引き起こされるだろう。いわゆる「金融恐慌」の懸念である。
「金融恐慌」が発生しさえしなければ破綻することのない企業も、「金融恐慌」が現実になれば、連鎖的に破綻してしまうリスクを十分に有する。こうした懸念が強まるにつれて、株式の「投げ売り」が広がる。株価はすでに大幅に値下がりしていたが、破綻になれば「紙くず」になる。「紙くず」になる前に株式を処分せざるを得ない。
 小泉政権の「大銀行破綻も辞さず」の政策方針が株価を暴落させた最大の背景である。ところが、最後の最後で、小泉政権はりそな銀行を「破綻処理」せずに、「救済」したのである。「救済」の根拠法規は預金保険法102条である。預金保険法102条は「抜け穴規定」を有する条項である。第1項に第1号措置と第3号措置が規定されている。
 当該金融機関の自己資本がマイナスに転じた場合、すなわち債務超過の場合は「破綻処理」になる。これが第3号措置である。これに対して、自己資本が規定を下回っても、プラスを維持する場合は「破綻前資本注入」が実施され「救済」される。これが第1号措置である。りそな銀行には、第1号措置が適用されたのである。
 この措置が人為的に選択されたことは間違いない。「破綻処理も辞さぬ」と言いながら、結局は「破綻処理ではない救済」が選択されたのだ。この時点でりそな銀行を破たん処理していたなら、日本は間違いなく「金融恐慌」に突入したはずである。この懸念があったからこそ、株価は暴落していたのだった。
 逆に、最後の最後で政府が銀行破綻を回避するために「銀行救済」を選択するのなら、株価は当然猛反発する。「金融恐慌のリスク」が株価を下落させていたわけで、その「リスクプレミアム」が消失する分だけ株価は上昇するはずである。政府が「銀行救済」の方針を貫くことがはっきりするにつれて、株価は大幅反発した。日経平均株価は2003年8月18日に10,000円の大台を回復した。
 小泉政権が5月17日のりそな銀行処理に際して「破綻処理」ではなく、「救済」を選択した背景とし2つの推論が成り立つ。ひとつは、「破綻処理」選択が小泉政権崩壊を意味したことだ。日本経済が金融恐慌に突入したなら、政権は持ちこたえるはずがない。引責総辞職は必至である。いまひとつの推論は、小泉政権がどこからかの指揮、指導を受けて、当初より暴落後の銀行救済を目論んでいたとの見方である。
 おそらくこの両者のいずれもが真実であると思われる。小泉政権は2003年前半に米国政府と頻繁に連絡を取り合っている。米国の指揮、指導を受けて、大銀行の破綻危機が演出され、最後の最後で銀行救済がシナリオどおりに実施されたのだと考える。
 2003年5月17日以降の株価猛反発でもっとも大きな利益を獲得したのは外資系ファンドであったと伝えられている。政府が「銀行破綻処理」でなく「銀行救済」の措置をとることがはっきりしていれば、株価が猛烈に反発することはまず間違いのないことと事前に予測することが可能になる。この政府方針を事前に入手し、株式投資を実行したのなら、これは明白に「インサイダー取引」となる。
 外資系ファンド、国会議員、政権関係者がインサイダー取引を実行した疑いは濃厚に存在するのである。私はこの問題について、テレビ番組などで再三、調査を要請した。証券取引等監視委員会はこのような局面でこそ、本格的に行動すべきである。だが、調査に動いた形跡はまったく存在しない。「村上ファンド」を摘発するなら、その前に2003年の「インサイダー疑惑」を徹底調査すべきであるし、今回の問題でも「政界ルート」に踏み込むことが不可欠である。
 りそな銀行が俎上に乗せられた背景も極めて不自然である。当時の銀行の財務状況は五十歩百歩だった。もとより、政府が発表してきた銀行の財務状況はまったく信用できないものだった。日本長期信用銀行も日本債券信用銀行も破綻する直前まで「健全銀行」に分類されていたが、破たん後の処理を経て公表された結果は、いずれも兆円単位の債務超過だった。
 りそな銀行と同程度の財務状況の銀行は複数存在していた。りそながあのような対応を受けるなら同じ対応を受けるべき銀行はいくつも存在していた。ところが現実には、不自然にもりそな銀行のみが俎上に乗せられたのである。その最大の理由は、りそな銀行の当時の頭取が、かなり明確に小泉政権の経済政策を批判していたことにあったと考えられる。りそな銀行では頭取が交代し、新頭取が手腕を発揮し、経営に活力が広がり始めていた局面だった。決して状況は悪くなかったはずである。政治的にりそな銀行は狙い撃ちされたのだと私は確信している。
 監査法人がりそな銀行の経営幹部に自己資本不足の可能性を指摘したのは、2003年3月末を過ぎた後だった。この段階で自己資本不足の指摘がなされても、対応の方法は存在しない。3月末以前であれば、各種自己資本増強の施策をとることができる。この点も、一連の動きが策謀であったとの仮説を裏付ける大きな根拠である。
 先述の木村剛氏は、5月14日付のインターネットコラムに、「破綻する監査法人はどこだ?」との文章を発表している。明白にりそな銀行の問題を取り扱っているとわかる文章だった。このなかで木村氏は、(りそな銀行の)繰延税金資産計上は0年か1年しかありえないことを力説している。もし監査法人が2年以上の繰延税金資産計上を認めるなら、それを認めた監査法人を破綻させるべきだとの趣旨の考え方が強く主張された。
 ところが、5月17日のりそな処理では、繰延税金資産の3年計上が認められたのである。そのからくりはこうだ。0年または1年計上の場合、りそな銀行の自己資本はマイナスに転落し、預金保険法102条では第3号措置しか適用できない。りそなは「破綻処理」になる。3年計上にすると自己資本比率がプラスになり、預金保険法の「抜け穴規定」を活用できる。
 小泉政権は、最終局面で「破綻処理」でない「銀行救済」を選択したのである。最終局面で預金保険法の「抜け穴規定」を活用して「銀行救済」が選択されるなら、もとより株価が7607円まで暴落する必然性は存在しなかった。小泉政権は最終局面で「抜け穴規定」を活用することを、かなり早い段階から検討していたのだと考えられる。その意思決定には米国が深く関与したと見られる。
 小泉政権は「金融危機」なる「風説」を流布し、株式を「売りあおり」、最終局面で預金保険法102条の「抜け穴規定」を活用して「銀行救済」を実行し、株価の猛烈な上昇を誘導したと言っても過言ではないような行動をとったと判断することができる。国家ぐるみの「株価操縦」、「風説の流布」的行為の疑いは濃厚である。そしてこの方針を事前に入手した投資家が株式売買に動いたのなら、実質的な「インサイダー取引」が行われたことになるのだ。
 第8回で記述したが、不良債権処理問題で最重視される二つの政策課題は「金融システムの安定性確保」と「自己責任原則の貫徹」である。何が難しいのかと言えば、この二つを両立させることである。目標がひとつであれば、対応は容易極まりない。「金融システム」を守るには、銀行は破綻させずに政府が救済するとの方針を明示すればそれで大混乱は排除できる。逆に「自己責任原則」を貫くことだけを目標にするなら、金融恐慌突入もやむなしと「破綻すべきは破綻」で進めばよいのだ。だが、両者を両立させるとなると難しい。しかし、2つの課題はいずれも極めて重要であり、いずれも放棄してはならない政策課題なのである。
 結局、小泉政権は「銀行救済」を選択したのだ。「自己責任原則貫徹」を放棄し、「金融システムの安定性確保」だけを求めることになった。このような「安易な道」を選択するのなら、それまでの大混乱は不必要だった。株価の暴落誘導の巻き添えを食らって塗炭の苦しみに直面した国民をどれほど生み出したことか。年間3万人を超える自殺者のかなりの部分がその犠牲者でもある。逆に外資系ファンドなどは、人為的な資産価格暴落による資産の底値買いにより巨大利得を獲得したと考えられる。小泉政権は資産価格暴落誘導と並行して、「対日直接投資倍増計画」を実行し、外国資本による日本資産取得に注力してきた。
 また、三角合併容認など、米国企業が日本企業を容易に買収できるための条件整備にも積極的に取り組んできた。一連の政策全体が外国資本に対する「利益供与」政策になってきたとの評価は、決してうがった見方ではない。
 不良債権問題処理に際しては、責任ある当事者に相応の責任処理を求めることが不可欠である。責任処理を甘くすれば、同じような失敗が繰り返されることが助長される。「モラル・ハザード」の問題が発生してしまう。仮にりそな銀行が経営に失敗して責任処理が必要であるとしたとき、責任処理の第一の当事者は銀行そのものである。銀行の所有者は株主であり、株主は出資した資金を奪われる形で責任を負わされる。
 ところが、政府がりそな銀行を救済した結果、当然のことながらりそな銀行の株価は大幅上昇した。責任を負わなければならない株主は、逆に利益を得ることになった。このような措置が取られるなら、各銀行の株主は、株主総会などを通じて銀行経営者に「できるだけ銀行経営を悪化させて、政府から実質国有化の措置がとられるように努力してほしい」などの要望を伝えるようになってしまう。りそな処理では、第一に責任を負うべき存在である株主に政府から利益が供与されたのである。
 銀行が実質国有化された後、銀行の経営陣には小泉政権と親交の深い人々が配置された。この人事も利益供与の一変形である。結局、民間会社はこのような措置を通じて、乗っ取られたのだ。企業の破綻処理の経過を細かく観察すると、すばらしい経営資源を保有する企業が数多く、政府により乗っ取られ、政権と親交の深い企業や人物に提供されていることがわかる。これらの巨大な「利権政治」について、深い検証が必要である。
 りそな処理で見落とせないのは、木村剛氏が、5月17日のりそな銀行実質国有化案が提示されて以降、一度も政府決定を批判していないことである。私は木村氏とテレビで何度も、りそな処理をめぐって論争した。私は、「自己責任原則貫徹の大原則」が完全に踏みにじられたことを訴え続けたが、木村氏は全面にわたって政府決定の擁護に回ったのである。5月14日に記述した内容とは正反対の主張を繰り返したのである。
 りそなの繰延税金資産計上が3年となったことについて、竹中金融相(当時)は、監査法人は独立機関で、政府といえども監査法人の決定には逆らえないと繰り返したが、りそな処理に際して監査法人が金融庁当局と完全に独立に意思決定したなどということはありえない。3年計上は政府の意向であったと考えるべきである。
 当時の公認会計士協会会長は奥山章雄氏(中央青山監査法人)だが、奥山氏は竹中金融相の下に置かれた「金融問題タスクフォース」のメンバーも務めた人物で竹中氏との関係は非常に深い。公認会計士協会と金融庁当局が連携してりそな銀行処理が決められたと考えるのが妥当である。当時の関係者からの取材をもとにして、りそな処理がどのような経緯を経て決定されたのかを再検証する必要がある。
 小泉政権の経済政策は2003年春に事実上、完全破綻した。緊縮財政政策と企業の破綻処理推進の組み合わせは、日本経済を金融恐慌の入り口まで誘導し、多くの罪無き国民に悲痛な苦しみを与えた。結局、「自己責任原則」を代償として完全放棄することにより、金融恐慌を回避したのである。一連の経過のなかで、外資系ファンドを中心に巨大利益を供与された人々が存在することを忘れてはならない。
 小泉政権の政策評価に際してもっとも重要であるのが、2003年のりそな処理なのである。このりそな処理についての厳密かつ客観的評価なくして、小泉政権の政策評価は不可能である。2003年から2006年までの株価反発、経済改善をもって小泉政権の「改革」政策を高く評価するような軽薄な論評には、まったく存在価値が無いことをしっかりと見抜かなければならない。そのような評価に共通する背景は、「権力迎合」の精神構造である。

2006.06.25 記事 | 個別ページ

 

2006.07.21
第11回「失われた5年-小泉政権・負の総決算(5)」
http://web.chokugen.jp/uekusa/2006/07/11_4e5b_1.html

 2003年5月17日にりそな銀行実質国有化方針が示された。小泉政権の政策方針が180度切り替わった瞬間である。「大銀行といえども破綻させないというわけではない」との米国ニューヨークタイムズ誌への竹中平蔵金融相のコメントが株価暴落を推進していた。小泉政権は「退出すべき企業を市場から退出させる」ことを経済政策運営の基礎にすえた。同時に「絶対に国債は30兆円以上発行しない」の言葉の下に超緊縮の財政政策運営を推進した。
 私は小泉政権がこの方針で政策を運営していくならば、日本経済は最悪の状況に陥ると確信していた。小泉政権が発足した時点からこの見解を示し続けた。小泉純一郎首相も竹中氏も私の存在と発言を非常にうとましく思っていたようである。私が所属する会社や私が出演していたテレビ局にさまざまな圧力がかけられた。それでも私は信念を曲げるわけにはいかないと考えて発言を続けた。
 2003年の春、来るべきものが到来した。大銀行破綻が現実の問題として浮上したのだ。大銀行破綻を容認するなら、日本経済は間違いなく金融恐慌に突入したはずだ。企業は連鎖倒産の嵐に巻き込まれただろう。金融恐慌が発生しなければ生き残れても、金融恐慌が発生するなら破たんしてしまうと考えられる企業が多数存在した。こうした企業の株主は、株価が売り込まれすぎていることを百も承知の上で、その企業の株式を投げ売りせざるを得なかった。その結果として日経平均株価7607円が記録されたのである。
ところが、金融法制には巧妙な抜け穴が用意されていた。預金保険法102条第1項第1号措置である。金融危機を宣言しながら、金融機関を破綻させずに金融機関に破綻前資本注入を実施できる規定である。最終的に鍵を握ったのが「繰り延べ税金資産」と呼ばれる会計費目であった。
 竹中氏と近く、この問題に造詣が深いといわれた木村剛氏は、5月14日付のインターネット上のコラムで、明らかにりそな銀行と読み取れる銀行の繰り延べ税金資産計上問題について、「1年を上回る計上は絶対に認められない。1年以上の計上を認める監査法人があるとすれば、その監査法人を破綻させるべきだ」と述べていた。ちなみにこのコラムのタイトルは「破たんする監査法人はどこか」であった。
 5月17日の政府案では、繰り延べ税金資産の計上が3年認められた。5年計上であれば、りそな銀行は自己資本比率規制をクリアしていた。1年計上の場合は自己資本比率がマイナスとなり、りそな銀行は破綻処理されなければならなかった。3年計上となると、ちょうど中間値で金融危機認定されるが、破綻とならない。
 法の抜け穴を活用するために人為的に決定された数値である可能性が濃厚である。木村氏が主張していた0年または1年計上では、りそな銀行は破綻だった。日本経済は間違いなく金融恐慌に突入したと考えられる。そうなれば、小泉政権は完全に消滅していたはずだ。
 りそな銀行の繰り延べ税金資産計上が3年認められたことについて、竹中金融相は「決定は監査法人の判断によるもので、政府といえども介入できない」ことを繰り返し訴えていたが、このような局面で監査法人が政府、当局とまったく連絡を取らずに独断で決定を下すことは考えられない。当時の監査法人関係者から細かな経緯を聞きだす必要もあるだろう。
 当時の公認会計士協会会長は奥山章雄氏だった。彼は竹中金融相と密に連絡を取っていたと考えられる。日本公認会計士協会、新日本監査法人、朝日監査法人、繰り延べ税金資産、りそな銀行、金融庁、竹中金融相、木村剛氏を結びつける「点と線」を綿密に洗い直して、真相を明らかにする必要がある。前回も指摘したが、木村剛氏は最終処理が繰り延べ税金資産3年計上であったにもかかわらず、最終処理案をまったく批判しなかった。その真意も明らかにされるべきだろう。
 政策責任者が「大銀行も破綻させるかもしれない」と発言すれば、株価は暴落する。だが、最終決定権を有する責任者が、銀行救済を決定すれば当然のことながら株価は猛反発する。大銀行破綻をちらつかせて株価を暴落させて、最後の局面で法の抜け穴を活用して銀行救済を実行する。銀行救済後には株価が猛反発する。このようなシナリオが練られていたとしても不思議ではない。
 2002年9月30日の内閣改造で竹中経財相が金融相を兼務することになった。この人事を強く要請したのは米国であるとの見解をとる政治専門家が多い。真偽は確認できないが、この竹中氏が10月初旬に米国ニューヨークタイムズ誌のインタビューで先述したように「大銀行が大きすぎてつぶせないとは考えない」とコメントしたのである。
 竹中氏は米国政策当局と密にコンタクトをとりつつ、日本の金融問題処理に対応していったと考えられるが、そのなかで先述したようなシナリオが描かれた可能性が高い。「大銀行も破綻」と言っておきながら最後は大銀行を税金で救済する。株価は猛反発に転じる。この経緯は容易に想定できる。
 この政策の最大の問題は、金融処理における「モラルハザード」を引き起こすことである。小泉政権は現実に最悪の不良債権問題処理の歴史を作ってしまった。
 前回述べたように、上述したストーリーが現実に展開されたとなると、国家ぐるみの「風説の流布」、「株価操縦」、「インサイダー取引」の疑いが生じてくるのだ。徹底的な再検証が必要である。
 もうひとつ忘れてならないエピソードがある。それは、竹中氏が2003年2月7日の閣議後の閣僚懇談会、および記者会見で株価指数連動型投信について、「絶対儲かる」、「私も買う」と発言したことだ。この発言の裏側で、りそな処理が動いてゆく。日本公認会計士協会は繰り延べ税金資産計上に関するガイドラインを定めていった。そして5月にりそな銀行「実質国有化」案が報じられ、結局、法の抜け穴規定を活用した銀行救済が実行され、株価が反発していったのだ。竹中氏の「絶対儲かる」発言とその後の金融処理策との関係も解明される必要があるだろう。
 小泉政権の経済政策は完全失敗に終わった。2003年5月、日本経済は危うく金融恐慌に突入するところだった。最悪の事態を回避できたのは、不良債権問題処理における第一の鉄則である「自己責任原則の貫徹」を放棄し、税金による銀行救済を実行したからにほかならない。
 そして、「国債を絶対に30兆円以上出さない」公約は、2001年度、2002年度のいずれも、実質5兆円補正予算編成というかたちで挫折した。2001年度は国債発行30兆円の公約を見かけの上だけ守った形にするために、国債整理基金からの繰り入れという一種の粉飾処理が施されたが、実質的には国債が5兆円増発されたことと同じ補正予算が編成された。最近話題になる「粉飾」の元祖がここにあったと言っても過言ではない。小泉政権が当初示した経済政策運営の路線は完全に失敗に終わったのである。
 それでは、他の改革はどうだったか。「道路公団」、「国と地方の関係にかかわる三位一体の改革」、「郵政民営化」の3つが小泉政権の目玉商品だろう。道路公団の形は変わるが、実態はほとんど変わらない。民営化されれば、国民の監視の目は著しく届きにくくなる。国と地方のお金のやり取りは少し変わるが、中央がすべてにおいて決定権を有し、地方が中央の下請けである現在の関係はまったく変わっていない。
 郵政民営化は米国の要求どおりに新しい仕組みが決められた。改悪になる可能性が大きい。中山間地の特定郵便局はいずれ消滅することになるだろう。銀行界にとっては邪魔者が消えたわけで歓迎であろうが、国民に利益と幸福をもたらす保証はどこにもない。
 小泉政権の時代に着実に進展したことがひとつある。それが「弱者切り捨て」だ。障害者自立支援法は、聞こえはよいが内容は障害者支援削減法である。高齢者の医療費自己負担額が激増している。今後、生活保護も圧縮される方針が伝えられている。義務教育の経費削減も強行されようとしている。
 一方で、小泉政権はとうとう最後まで「天下り」を死守した。私は小泉政権が発足した時点から、この問題を最重要問題だと位置づけてきた。「改革」は必要だし「痛み」も必要ならば耐えなければならないだろう。だが、小泉政権が本当に改革を進めようというなら、「隗より始めよ」ならぬ「官より始めよ」で、「天下り廃止」を示すべきである。小泉政権が「天下り廃止」を本格的に推進するなら、私は小泉改革を全面的に支援すると言い続けてきた。
 だが、結局小泉政権は最後の最後まで「天下り」を死守した。ここに、小泉改革の本質が示されている。官僚利権は温存し、経済的、政治的弱者を情け容赦なく切り捨てるのが「小泉改革」なのである。国民は目を覚ましてこの本質を見つめるべきだ。
 外交は「対米隷属」に終始した。アジア諸国との関係悪化などお構いなしである。イラク戦争もその正当性に重大な疑問が投げかけられているが、世界一の強国米国に隷属しておけば安心との、自国の尊厳も独立も重視しない姿勢が貫かれた。
 そして、政治手法は民主主義と相容れない独裁的手法が際立った。司法への介入、メディアのコントロールも露骨に展開されたように思う。経済政策の失敗、改革の目玉商品の内容の貧困さ、容赦ない弱者切り捨て、対米隷属の外交、独裁的傾向が顕著な政治手法。この5つが小泉政権5年間の総括である。
 小泉政権が終焉するこの機会に、広く一般に小泉政権5年間を総括する論議を広げていく必要がある。だが、それを権力迎合の大手メディアに委ねることはできない。彼らは政権にコントロールされ、政権に迎合する存在だからだ。草の根から、筋の通った芯のある論議を深めてゆく必要がある。

2006.07.21 記事 | 個別ページ

 

2006.09.06
第12回「失われた5年-小泉政権・負の総決算(6)」
http://web.chokugen.jp/uekusa/2006/09/12_c33d_1.html

 本コラムの執筆に大きなブランクが生じてしまいお詫び申し上げます。執筆を再開し、従来よりも高頻度で執筆してまいりますのでなにとぞご高覧賜りますようお願い申し上げます。
 小泉政権の5年半の期間に日本経済は最悪の状況に陥った。日経平均株価は7600円に暴落し、金融恐慌が目前にまで迫った。その後、日経平均株価は17000円台まで上昇し、日本経済も緩やかな改善を続けているから、小泉政権に対する国民の評価はさほど悪くない。
「改革」で膿を出し尽くし、日本経済を再浮上させたなどという、見当違いの説明を聞いて思わず納得してしまう国民も多数存在しているようだ。だが、事実はまるで違う。小泉政権が提示した経済政策は文字通り日本経済を破綻寸前に追い込んだのだ。2003年5月に日本経済が破綻せず再浮上したのは、小泉政権が当初示していた政策を全面撤回して、正反対の政策を実行したからにほかならない。
 この点については、本コラムで詳細に論じてきた。小泉政権は日本経済を破綻寸前にまで追い込んだのだが、そのことによって二つの副産物が生まれた。ひとつは多くの国民が本来直面せずに済んだはずの苦しみに巻き込まれたことだ。失業、倒産、自殺の悲劇がどれほどの国民に襲いかかったことか。彼らの苦しみは小泉政権の政策失敗によってもたらされたものである。「人災」と言って差し支えない。
 もうひとつは、外国資本が日本の優良資産を破格の安値で大量取得できたことだ。バブル崩壊の後遺症により、本邦企業、銀行は資本力を失い、安値の実物資産を取得することは不可能な状況に追い込まれた。その状況下で、豊富な資本力を備えた外国資本が日本買占めに向かった。小泉政権は「対日直接投資倍増計画」などに鮮明に示されるように、外国資本による日本買占めを全面支援してきた。
 小泉政権が2003年に金融処理における「自己責任原則」を放棄して税金による銀行救済に踏み切ったのは、米国の指導によった可能性が高い。米国の政権につながる金融勢力は、日本政府が金融恐慌をあおり、株価暴落を誘導しながら最終局面で銀行救済に踏み切ることを指導し、日本の優良資産を破格の値段で大量取得することに成功したものと思われる。
 この9月に小泉政権は終焉し、安倍政権が発足する見込みである。安倍政権は小泉政権を継承するとしているが、小泉政権とは明確に一線を画し、是々非々の姿勢で政策を運営してもらいたい。
 経済政策運営で小泉政権は「緊縮財政運営」を基本に置いた。財政赤字の拡大を回避するために、緊縮財政の路線を鮮明に提示した。小泉首相は「いまの痛みに耐えてより良い明日を」と絶叫した。緊縮財政で経済は悪化する。しかし、財政再建のためにはそれもやむなし。これが小泉政権の基本スタンスだった。
 公約どおり日本経済は激しく悪化した。しかし、それで財政赤字は縮小しただろうか。2001年度当初予算で28.3兆円だった財政赤字は2003年度に35.3兆円に急増した。国税収入は2000年度の50.7兆円から2003年度には43.3兆円に激減した。
 私は財政健全化のためには経済の回復が不可欠と主張し続けた。経済が回復すれば税収が増加する。経済成長による税収確保が財政健全化の王道であると主張し続けた。これに対して小泉政権は「経済が回復しても税収は増加しない。財政健全化には緊縮財政しかない」と真っ向から反論した。
 2003年夏以降、株価反発を背景に日本経済の改善が始動した。果たして経済回復に連動して税収が増加し始めた。2005年度決算での国税収入は49兆円を突破した。景気回復により国税収入はわずか2年間に約6兆円も急増したのだ。財政健全化には経済の回復こそ特効薬であることが事実によって立証されつつある。
 最近になって筆者の主張を小泉政権幹部が使用するようになった。竹中氏も従来の同氏の主張とは正反対であるにもかかわらず、「経済成長による税収増加により消費税増税を圧縮できる」と主張し始めている。正論への転向は歓迎するが、過去の不明についてはひと言添えるべきだろう。
 安倍晋三氏はもとより「経済成長の重要性」についてのしっかりとした認識を有していた。私は安倍氏との私的な勉強会を重ねていたが、小泉首相と異なり、経済政策運営については柔軟な発想を保持していた。
 2006年度の国税収入は50兆円を突破すると思われる。そうなると2006年度の財政赤字は25兆円に急減する。増税をしないのに、景気回復だけで財政収支は大幅に改善し始めているのだ。このことにより、大型増税の必要性が大幅に後退している。
 日本経済はバブル崩壊後、1996年と2000年の二度、本格浮上しかけた。浮上しかかった日本経済が撃沈された理由は政策逆噴射にあった。’97、’98年の橋本政権の政策逆噴射、2000、2001年度の森、小泉政権の政策逆噴射が日本経済を撃墜した。いま日本経済はバブル崩壊後、三度目の浮上のチャンスに直面している。三度目の逆噴射があるとすれば、過去二回同様の近視眼的な緊縮財政の発想に基づく消費税大増税の決定と考えられた。
 そうしたリスクは存在したが、折りしも景気回復による税収の増加という現実が経済成長による財政健全化誘導の考え方の正しさを誰の目にも明らかにし始めた。このことが、経済成長重視の経済政策の主張が広がりを持ち始めた背景でもある。安倍氏が政権発足のスタート台に立つタイミングでこの考え方をベースに置くことができたのは幸いであるし、望ましいことである。
 安倍政権発足に際してもっとも注目されることは、経済政策運営の要のポジションにどのような人物を配置するかである。小渕政権は堺屋太一氏を起用して成功を収めた。小泉政権は竹中氏を起用し、日本経済は最悪の状況に陥った。その後に巧妙に政策の大転換を実行して小泉政権は危機を回避したが、人材起用の巧拙が政権の命運を左右する。安倍政権がどのような布陣を敷くのかに強い関心が注がれる。

 なお、小泉政権の総決算については、日本ビデオニュース株式会社(代表取締役神保哲生氏)が主宰しているインターネット・ニュースサイト『ビデオニュースドットコムマル激トーク・オン・ディマンド第283回(2006年09月01日)』(9月1日収録)のトーク番組に筆者が出演し、現在、動画配信されているのでぜひご高覧賜りたい。

2006.09.06 記事 | 個別ページ

 

ビデオニュースドットコムマル激トーク・オン・ディマンド第283回(2006年09月01日)
http://www.videonews.com/on-demand/281290/000859.php
↑まだリンクは生きてます。
740←リンク先で紹介されている、プレビュー(約10分)で出て来る表です。


↑が不鮮明なので、↓植草さんの2008年5月31日 (土)2003年株価暴落の深層(1)-危機対応の日米較差-からもっと詳しい表を採録。
日経平均株価の推移ー2003年株価大暴落の深層ー

2008_05_31_img_0002_2

ビデオニュースドットコムマル激トーク・オン・ディマンド第283回(2006年09月01日)
http://www.videonews.com/on-demand/281290/000859.php
↑↓ まだリンクは生きてます。
PREVIEW
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki283_pre.asx
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マル激トーク・オン・ディマンド 第283回(2006年09月01日)
シリーズ『小泉政治の総決算』その5
小泉内閣は改革政権にあらず
ゲスト:植草一秀氏(名古屋商大大学院教授)
http://www.videonews.com/on-demand/281290/000859.php

 小泉政治を検証するシリーズ企画の第5弾は、小泉政権の経済改革に一貫して異論を唱えているエコノミストで名古屋商科大学大学院の植草一秀教授をゲストに迎え、小泉政権の5年間の経済政策とその影響を議論した。
 まず植草氏は小泉政権が、構造改革によって日本経済を復活させた政権であるとの一般的な評価に対して「笑止千万」であると、この見方を全面的に否定。「通信簿で言うなら、一旦「オール1」までさがった後に、ちょっと成績が上がった」ため、大多数の国民があたかも改革が成功したかの錯覚に陥っていると酷評する。
 そもそも小泉政権は改革の2本柱として国債発行を30兆円以下に抑える緊縮財政と不良債権処理を推進することで退出すべき企業は退出させる方針を明確に打ち出していた。しかし、この政策によって日本経済は金融恐慌寸前の状態に陥り、政権発足2年後の03年の4月末には株価が政権発足時の約半分の7000円台にまで暴落した。
 そこで小泉政権は、自ら掲げた改革路線を180度転換させ、退出すべき企業も救済すると同時に、緊縮財政廬論もかなぐり捨て、国債発行30兆円枠も自ら放棄した。
 その政策転換が顕著に出たのが、03年5月のりそな銀行の救済だったと植草氏は言う。本来破綻処理されるべきりそなを、監査法人による不透明な自己資本比率の査定によって救済対象とした上で2兆円の公的資金を注入して、りそな銀行を存続させた。この時「退出すべき企業は退出させる」改革路線の放棄が明確になり、株式市場はその安堵感から上昇に転じた。これが小泉改革が終わった瞬間だった。この夏を機に日本経済は回復に向かったが、それは小泉政権が「改革」を放棄したからであって、それを改革の成果と主張するのはまったくのナンセンスであると植草氏は主張する。
 また、「とは言え、結果的に景気が回復したのだからいいのではないか」との指摘に対しては、退場させるべきプレーヤーを退場させずに救済したことで、重大なモラルハザードを招いたことを忘れてはならないと植草氏は警告する。不透明で中途半端な政策転換により、日本経済は再びバブルを起こしやすい体質を抱え込むことになってしまったというのだ。
 他方、小泉改革が残した負の遺産は非常に深刻だ。植草氏によると、小泉政権前期の「改革」により、日本経済は極度の劣化を起こし、失業や倒産が増加、多くの中小企業経営が路頭に迷ったり、自殺に追い込まれたりした。しかもその間、生活保護や老人医療費、健康保険の給付、身体障害者の支援などは一貫して減額されており、小泉政権の5年間で低所得者や過疎地域の「少数弱者」の切り捨てが徹底して進んだと指摘する。
 しかし、植草氏は小泉政治にはより大きな罪があると言う。それは、「構造改革」の名のもとに行った様々な制度改革はその内実をよく見てみると、実際はこれまで日本の政治を支配してきた旧田中派の建設・運輸関連と郵政関連の利権を破壊し、それを小泉氏自身の出身母体となっている財務・金融利権へと塗り替えただけでのものに過ぎないというのだ。そこには国民の生活をよりよくするなどの「国民の側に立った視点」はまったく欠如している。しかも、その「利権の移動」を、アメリカの後ろ盾で行いながら、アメリカのファンドなどにはしっかりと稼がせているという。これが、植草氏が、小泉改革を「売国奴的」とまで呼んで酷評する最大の理由だ。
 小泉政権の経済政策は何を壊し何を救ったのか。小泉政権の経済改革で、われわれ国民はより幸せになったのか。安倍政権が小泉改革路線を継続した場合、今後日本経済にはどのような影響が出るのか。植草氏と共に考えた。

植草一秀氏の当社番組への出演について
http://www.videonews.com/HTML/about_uekusa.html
↑↓

植草一秀氏の当社番組への出演について
http://www.videonews.com/HTML/about_uekusa.html

このたびビデオニュース・ドットコムでは、マル激トーク・オン・ディマンド第283回のゲストにエコノミストで名古屋商科大学大学院教授の植草一秀氏をお招きしました。

植草一秀氏は04年4月8日、品川駅高輪口のエスカレーターで女子高生のスカートの中を手鏡で覗こうとしたとして東京都迷惑防止条例違反容疑で逮捕され、その後の裁判で有罪判決(罰金50万円と手鏡一枚没収)を受けました。植草氏が控訴を断念したために、既に刑が確定しています。

マスコミではこのような犯罪で起訴され有罪判決を受けた植草氏の起用を敬遠する空気が依然として根強いようですし、すでにビデオニュースにも植草氏の出演に対する抗議のメールも届いていますので、ここで弊社としての考え方を明らかにしておきたいと思います。

まず、植草氏については、05年4月9日のマル激トーク・オン・ディマンドに出演し、当該事件における植草氏側の言い分を語っています。番組の中でも、また裁判でも植草氏は一貫して無実を主張してきましたが、裁判では氏の主張は全面的に退けられています。また捜査過程では、迷惑防止条例違反の捜査としては異常とも思われる家宅捜査までが行われ、植草氏のプライバシーが次々とマスコミに流れるということも起きています。

前回番組に出演した際に植草氏は、裁判そのものの不当性や控訴を断念した理由なども詳しく説明しています。

植草氏が主張するように、この事件は品川駅でのできごとに対して、神奈川県内からずっと植草氏を尾行してきた神奈川県警の鉄道警察隊の隊員が、しかも非番の時に逮捕している点など、始めから植草氏を狙い打ちしたとしか思えないような不可解な点が多いことも事実です。また植草氏が一貫して小泉政権の経済政策批判の急先鋒であったことや、氏が小泉首相と自民党総裁の座を争った政敵亀井静香氏の経済政策ブレーンであったことなどから、政治的陰謀の 可能性も排除できないとの意見も根強くあります。しかし、とは言え、弊社は捜査機関ではありませんで、事の真偽については判断できる立場にはありません。また、警察を疑ってかかるべきであるのと同様に、植草氏の言い分をそのまま鵜呑みにすることも、報道機関としては慎むべき姿勢だと考えます。

しかし、仮に事件の全容が全て警察・検察の言い分通りのもので、裁判も公正に行われていたとしても、植草氏はこの事件の結果、早稲田大学教授の地位も追われ、テレビ東京のワールドビジネス・サテライトのレギュラーコメンテーターを始めとするあらゆる対外的なポジションを全て失うなど、既に重い社会的制裁を受けています。また、控訴断念の結果、刑も確定していますので、既に法的な制裁も受けてます。

もちろん、社会的な制裁を受け、法的な責任を果たしたからといって、すぐにメディアに登場させていいのかとのご批判にも、真摯に耳を傾けなければならないと思います。

しかしその一方で、エコノミストとしては非常に高い能力を持つ植草氏には、まだ演ずるべき重要な役割が多くあると私たちは考えています。特に、小泉政権の高い支持率の前で、政権の政策を真っ向から批判する論者が一人また一人と減っていく中、植草氏の小泉政権の経済政策に対する一貫した厳しい異議申し立ては、非常に社会的価値の高いものと私たちは考えます。

上記のような総合的な判断に基づき、このたび植草氏には小泉政権総決算シリーズの中の経済政策編への出演をビデオニュース側から依頼し、植草氏が快諾してくださったために出演が実現したという次第です。

「一度でもこのような事件を起こした人間を人前に出すべきではない」とのご意見も何人かの方から届いているようですが、私たちはそのような立場をとりません。次期首相の呼び声が高い安倍晋三氏が、「再チャレンジ」を新政権のスローガンに掲げているようですが、まさに植草氏には不幸な事件を乗り越え、再チャレンジして欲しいと思います。ビデオニュース・ドットコムは報道機関ですので、植草氏を直接応援することはできませんが、今後も植草さんが有益な情報をお持ちであれば、他の方と同様 、ぜひそれを積極的に活用させていただき、視聴者の皆様のもとにお届けしたいと考えています。

ビデオニュース・ドットコムはこれまでも、社会から批判を招く恐れがあるが故に主要メディアが避けてきたテーマや人物を、真正面から取り上げることを身上としてきました。私たちのこうした姿勢を快く思われない方がおられることも承知しておりますが、そのような姿勢を高く評価して下さる方々が少なからずおられるのも事実ではないかと思います。今後も報道機関としてこの姿勢は貫いてきたいと考えております。ご批判はご批判として甘受し、今後の 番組作りに活かしていく所存でおります。

尚、前回植草氏が出演した05年4月の第210回マル激トーク・オン・ディマンドは、既にビデオニュース・ドットコムのウエッブサイト上ではバックナンバー扱いとなっており、オンディマンド放送は終了していますが、説明責任の一環として、当分の間無料で公開することに致しました。(第287回のオンディマンド放送の終了をもちまして、第210回の無料放送も終了とさせていただきました。)ご利用いただければ幸いです。

今後ともビデオニュース・ドットコム、ならびにマル激トーク・オン・ディマンドをよろしくお願い申し上げます。

2006年9月2日
ビデオニュース・ドットコム
代表・編集主幹
神保哲生

「失われた5年-小泉政権・負の総決算」(1)~(3)はhttp://6719.teacup.com/syukensya/bbs/680

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