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2015年5月16日 (土)

辺見庸 (日録1―3)私事片々 2015/01/13~と、(日録1―4) 雑談日記Archive

 私事片々を今までと同様、アーカイブ保存しておきます。

 なお、辺見庸さんの(日録)私事片々の雑談日記Archiveを始めようと思ったメモなどはこちらで。辺見さんがよく言う「エベレスト」についてはこちらで

 以下、辺見庸ブログの(日録)私事片々をすべてアーカイブ保存しておきます。写真が多いので、2エントリーずつアップします(表示順は元ブログと同じく上から降順です)。

 

2015年01月20日
日録1―4

私事片々

2015/01/20~
http://yo-hemmi.net/article/412665135.html

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オレンジ色のユリ.jpg 2015年01月20日

・ザ・マンモス・ホスピタル(MH)にいった。ごくたんじゅんに眠剤と精神安定剤をもらいに。ただそれだけでよかったのだ。MSつきそい。けふ6歳誕生日の犬は留守番。ザ・マンモス・ホスピタルは全フロア戦場だった。どうしてこうなってしまうのか。ここはいったいなにがしたいのか。MHの最終目的はなんなのだ。ここでかつて下痢のAをみたことがある。ここはAたちの城なのだ。ホスピタルといふのに、どこにもすこしの安らぎもない。腹から自転車のチューブみたいなはらわたをもりもりとはみだした患者が担架ではこばれてゆく。どいて、どいてえ!廊下にずるずるとはらわたをひきずっている。タイヤ痕がつく。ひとのはらわたくらいお腹にかくしてやれないものか。手でもってあげたらどうなのだ。みな目が血走っている。顔がひきつっている。車椅子がぶつかってくる。ガッチャーン!医者がどなりちらしている。看護師が金切り声をあげている。「2時間待ちよーっ!もうパンクなのよーっ!戦争なのよ!」。MSがしきりにグチる。ここはなどてこげんに大便くさいとですか。そんなこと知らない。むかしからだ。むかしからクソくさいのだ、ここは。前立腺肥大の元プロレスラー(恐怖党員)が採尿紙コップからオシッコをぼとぼと床にこぼしている。機械がしゃべっている。「ではじめのおしょうすいではなく、チュウカンニョウをてきせつにごサイニョウくださいませ」。おれはたんじゅんに眠剤と精神安定剤をもらいにきただけなのに、2時間半待たされ、あげくに採血、採尿を命じられる。つかれて抵抗できず。めんどうくさいので、MSのチュウカンニョウを採尿カウンターにおいてくる。クワガタムシみたいな医者(恐怖党員)にさんざいばられ、いやみを言われ、やっと眠剤と精神安定剤をもらえることになるが、自動ゼニ支払機がえらいこんでいて、300人も列をつくっている。暴動おきない。ぜったいにおきなひ。みんなザ・マンモス・ホスピタルで死にたいのであらう。それが本望なのであらう。MSに車椅子をもってきてもらう。待っていたら、場内アナウンスあり、25番窓口へ。3階の産科のドクターがあなたを待っている。と、言われたって困る。産科?わたすぃはだれもふぁらませてはいなひ。それに、感覚障害とマヒがこうじてもう歩行不能だ。産科8番の前で1時間待たされる。呼ばれる。入る。ラクダ顔の医者(恐怖党員)。「あなたさまは7年前に精子バンクにあなたさまのご精子保存をご依頼なせれまひたね?」。わたすぃ「……!?」。おぼえがなひ。そう言ふと、看護師(恐怖党員)がむかしの「依頼状」というのをもってくる。MSがのぞきこむ。わたすぃのサインかわからない。脳出血で大腸がんその他をわずらったずぃぶんが、精子バンクに精子をあずけるわけがないではないか。そのむね、言ふ。それどころではなひ、と。いや、あなたさまのサインがあります、とラクダ。うわたすぃ「で、その精子は元気なのですか?」。ラクダ「わかりかねます。生きているとしても、1個か2個……。元気がなひですから……」。ああ、ヤバい。7年間の精子保管名目で恐怖党に数十万イエン、いや100万イエンもふんだくられるのじゃなかろうか。おれはたんに眠剤と精神安定剤がほしいだけなのに。もふ、いいです。その精子を破棄、いや、廃棄します、と言う。ならば、お金いらない、とラクダ。にやにや笑っている。保存依頼ご精子廃棄合意書2通にサインさせられる。結局、なんだかわけがわからない。精子がかわいそふな気もする。いまわかるのは、イスラム国つぶし名目で、Aがジャパン国防軍ジブチ基地を拡大・恒久化し、海外派兵どころか海外基地増強をはかっていることだ。年内にジャパン軍部隊は海外で戦闘参加するかもしれない。やる気だ。やりたひのだ。とっくに目にみえていたことではないか。イスラム国に動機と口実をあたえたのはA。わざと挑発したのだ。イスラム国の蛮行実力阻止を理由に、9条がつぶされる。ザ・マンモス・ホスピタルはなんの目的もなく狂いつづける。ああ、ウンコくさい。エベレストにのぼらなかった。(2015/01/20)

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ビルディング.jpg 2015年01月21日

・「9・11は想像力を乗り越えていたのである」。あの有名なコメントをいまおもいだしているひとがいるとしたら、少なくともテレビのコメンテーターよりずっとましである。「――テロリズムは全能性を獲得したパワーの内部分裂の表現として解釈できる(世界システムそのものに内在するグローバルな暴力)」「だから、ブレヒトがファシズムについて語ったのとまったくおなじように(ファシズムはファシズムと反ファシズムによって構成される)、テロリズムの全体は、テロリズムと反テロリズムによって構成されているのだ」「テロリズムが狂信主義と暴力を体現しているとしても、テロリズムは、それを非難する者の暴力と彼らの無力さの具現化である」(ボードリヤール『悪の知性』塚本史+久保昭博訳)。世界はテロリズムを憎むと言いながら、みずからの腹にテロリズムをつねに胚胎している。テロリストの胎児をそだてておきながら、その撲滅(子殺し)を語っている。なによりも、フィクション以上のスペクタクルとホラーを、世界はブルブル震えながらエンジョイし、消費しつつある。エベレストにのぼった。第5回目のゲラをもどした。(2015/01/21)

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ザマンモスホスピタル.jpg 2015年01月22日

・第6回確定稿送る。けふも連載「1★9★3★7」を書いていて、ふとおもふ。ジュネーヴ条約もハーグ陸戦条約もあったものではない。そんなものいっさい無視。国際的準則ゼロ。ノーヒューマンライツ。武力をもって平気で他国におしいる。よくもまあ、あんなにもひとの首を刎ねるものだ。逆らう者は容赦しない。もっぱら首をねらう。悪夢が現実を食いやぶる。あれれ!?どこかのクニのむかしに似ていないか。いにしえの「祖型」というのでしょうか。Aはなぜ、なにをしに、なにを予測して、イスラエルにいったのか。無知と傲慢とひとりよがり。エベレストにのぼらなかった。コビト虐待されているらしい。(2015/01/22)

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紫色の枯れたような花.jpg 2015年01月23日

・強風をついて右尾根からエベレスト頂上アタック。少々冒険だったがなんとか成功。うれしくはない。ここが、世界のどことも地つづきではないことをねがう。もう害されていない時間はどこにもない。知ってはならないこと、見てはならないことどもを、たっぷりと見知ってしまった者は、ヒイラギとともに凍え死ぬよりほかはない。葉腋によくにほふ白い小花をポツリとつけ、核果はいずれ紫黒色に熟するとしても、時間はもう毒されてしまったのだ。とっくの昔に。(2015/01/23)

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ミモザの空.jpg 2015年01月24日

・おぼつかないのだ。黒い穴だらけだ。よるべないのだ。うそだらけ。あやういのだ。情けないのだ。いぶかしいのだ。いかがわしいのだ。ふいに攣るのだ。なにものもないのだ。あるかにみえて、ただ、ひたすらないのだ。ただ、ひたすらあるようにみえるのだ。罠だらけ。かれとかれらは、あらかじめ、それを知っていた。知らされていた。なのに、あの日はじめて知ったふりをしてみせた。かれとかれらは、いったいどこにいて、だれのために、なにをしていたというのだ。かれとかれらは、あらかじめ、それを知っていた。たすける気など、はなからなかった。しかし、たすける気があるふりをしてみせた。どうふるまえばヒーローになれるか、話しあわれた。かれとかれらは、あらかじめ、それを知っていた。知らなかったふりをしつづけた。その時点で、あのできごとは、すでに終わっていたのかもしれない。それでもいいと、かれとかれらは判じた。問題は、できごととわたしが、なぜ、どこで、いかにかかわるか、または、なぜ、すこしもかかわりあいがないか、だ。午前、循環器内科。MS 。あるいてダフネ。ミモザをみる。エベレスト左尾根から登攀。散髪。「あ」がいた。マスクをしていたが、すぐに「あ」とわかった。ていねいにやわらかくゆっくりと洗頭。第7回なおし。明日送稿予定。「非道徳的道徳国家」(藤田省三)のタームをなぞる。夜『瀆神』めくる。文言のかくにん。「資本主義はおそらく、罪を浄化するのではなく罪を着せる信仰の唯一の事例である」(ベンヤミン)が引用されている。「宗教としての資本主義」は、「これまで存在した宗教のなかでおそらく最も極端で絶対的なものである」し、それには「休止も仮借もない」。つまり「宗教としての資本主義」こそが、諸宗教のなかで、もっとも残忍なものだということ。内閣府の世論調査で「死刑はやむをえない」と容認するひとのわりあいが80.3%だったことが公表される。このタイミングで。だから、ちかく執行するということか。(2015/01/24)

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夜の街.jpg 2015年01月25日

・たんじゅんなことだ。かれは、人命よりも「国家」がだいじであると、ほとんど躊躇もせずに、宣言したのだ。戦いたいのだ。有志連合軍とそのボスにたたえられたかったのだ。結果はみえていた。歴史が逆巻いている。憲法が停止されている。かれは戦争の世界化傾向を抑止・回避する方途をさぐるのでなく、戦争の世界化に拍車をかけている。憲法はかれにより停止され、「例外状態」が恒常化している。事態はもっと腐爛するだろう。Aの面相が変わった。なんという凶相!エベレストにのぼった。連載第7回目送稿。(2015/01/25)

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ミモザ.jpg 2015年01月26日

・安倍政権はますます本性(地金)をさらしはじめている。Aは「イスラム国」の毒を浴びて、ますます猛っている。奇貨おくべし。内心そうおもっている。世論はいともかんたんに操作されている。安倍政権はただひどいだけでなく、怖い。肉体的な恐怖をかんじさせる。零時からBSのアイヒマン裁判みる。なんどみても発見あり。連載8回目着手。MSのおかげで川西政明さんのコラム(2006年)すぐに入手。たすかる。エベレストにのぼった。(2015/01/26)

 

2015年01月13日
日録1―3

私事片々

2015/01/13~
http://yo-hemmi.net/article/412279001.html

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車中からの眺め 共同のかえり… 2015年01月13日

・昨晩は95枚以上送った。疲れぬけず。今後どうするか。向井君からは、やる気のわくよい感想をもらった。お父さんが胃瘻をするかどうか、これから主治医と話すらしい。そういうことが、いまの原稿と精神の深みでかんけいしているとおもう。向井君の父上が胃瘻をするかどうかと、わたしが南京の大虐殺の原稿を書く構えには、たぶん、なんらかのかかわりがある。身体的な実感。母もいずれその課題にぶつかる。正午、イタメシ屋でナイロビの中野君、舟越と会う。またナミブ砂漠の話。あざやかな煉瓦色とシャレイ・ブルーの空を脳裡にみる。中野君がエベレストをみたいというのでつれてゆく。「意外に低い」といわれる。いっしょにのぼる。中野君は明日東京を発つ。(2015/01/13)

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かわたれどき.jpg 2015年01月14日

・終日『忠誠と反逆――転形期日本の精神史的位相』。昂奮した。むかし『現代政治の思想と行動』を読んだころ、これほどのおもしろみをかんじなかった。吉本がバカにしたものを尻馬にのってバカにするだけではだめだったのだ。一知半解で、謙虚さに欠けた。まずしっかり読みこんで、学ぶ姿勢がなかった。あらさがしばかりしていた。批判は、まず読みこまないとだめだ。昨夜、父の書きのこしたものを多数発見。鉛の棒でぶんなぐられるほどの衝撃だった。父は出征後まちがいなく南京の「金陵部隊」にいた。士官を志願し、合格し、少尉になり、戦闘に参加し、ポツダム中尉になった。敗戦後、戦友会にもでていたかもしれない。大虐殺時と年代がずいぶんちがうけれども、父と南京をむすびつけたくなかった。無意識に記憶に蓋をしていた。知りたくなかったのだろう。だが、そうもいかなくなってきた。私記「1★9★3★7――『時間』はなぜ消されたのか」は、今月末から、週刊金曜日に連載されることになった。最終的に350~400枚くらいか。媒体として適切かどうかわからない。すきではない。すきな媒体などない。媒体がどうのこうのと言っている余裕はない。犬とともに、引っ越しをかんがえざるをえなくなった。面倒くさいがやむをえない。まだまったくあてはない。決心だけ。だが、遠からずかならず引っ越す。きのう、あなたは若いとき学生運動をやっていたのに、就職して公安担当記者になってがんばったのはなぜか、と聞かれた。そのことも「1★9★3★7」に書く。Tさんには、読んで、きびしくご批判いただきたい。予定どおりなら今春就職するK君にも。K君にいちど会いたいものだ。かれのほうが世界を知っているはずだ。話を聞きたい。エベレストにのぼらなかった。中野君が発った。搭乗1時間前にメールをくれた。(2015/01/14)

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雨のデッキ.jpg 2015年01月15日

・第1回のゲラ戻す。すでに3月分くらいまではあるらしい。この間にできるだけ多くストックをためて、居場所をみつけ、引っ越さないといけない。どこまでも逃げることだ。昨夜「丸山真男とアソシエーショニズム」(2006年、柄谷行人)をぼんやりと読む。読んでいると、こちらの思考の穴にいやおうなく気づかされる。かえって丸山のこれまでみえなかった文のちからを知る。「執拗な持続低音」(basso ostinato)に、ニッポン・ファッショの通奏低音を聞く。そういうことだ。なにひとつ、どれひとつ、新しくはない。現政権はただひたすらに危険である。「なりゆく」「なりまかる」ものを、たたきこわさないといけない。こちらがこわされるにしても。エベレストにのぼらなかった。(2015/01/15)

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雨の階段.jpg 2015年01月16日

・第2回最終稿もどす。「『万世一系』のイデオロギー的な強みは、『一君万民』という単独者の支配(モノ・アルキア、中華帝国の場合)にあるよりは……皇室が、『貴種』のなかの最高貴種(primus inter pares)という性格によって、社会的に支えられていた、という点にあった」。なるほど、強権支配は不要でもある。その点、中国よりもつよい。なぜなら社会が皇室を綿のようにつつみ、支えているのだから。社会が、国家権力になりかわり、反皇室をそれとなく弾圧(成敗)してくれるのだから。このばあいの社会とはマスメディアを筆頭にふくむ。「『永遠者』の観念に代位する役割」か。ヌッポン帝国のマスメディアとマスは、おそろしいいきおい=いきほひ=で劣化している。「フルビネクは1945年3月初旬に死んだ。彼は解放されたが、救済はされなかった。彼に関しては何も残っていない」の文章がすきだ。いつ読んでも、とてもすきだ。静まる。アパートさがし進展なし。エベレストにのぼらなかった。(2015/01/16)

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辺野古のゲート前.jpg 2015年01月17日

・第4回までゲラ送稿。きのう、カフェの帰りに汚いトラ猫をみた。ノラだ。植えこみの陰。お腹がぼわーんと大きくなっていた。地面につきそうなほどたれさがっている。ぎっしりと仔猫をはらんでいる。とても重そう。仔猫たちが腹のなかでもぞもぞとうごいていた。そうみえた。写真を撮ろうとおもったが、なんとなく撮るのをやめた。M君のお父上、胃瘻は危険なのでやめて、経鼻になるらしい。父が生きていれば、M君のお父上と同い年であることに気づく。1922年生まれの、うすれゆく記憶。こうやって歴史が激変している。時間が目下こわれている。こわされている。昨夜、B君から久しぶりにメール。とてもうれしかった。どこからかとおもえば、辺野古基地ゲート前。写真。米兵があるいている。沖縄2紙の記者はいたけれど、「本土」の記者はいなかったらしい。そういうことだろう。けふ、Dさんから手紙。年末に送った本が検閲のためにやっと着いたらしい。気合いでエベレストにのぼった。ダフネで、あれはたぶん、英国人がはなしていた。気味悪いほど甘い声で「コックローチ……」と言うのが聞こえた。日野啓三さんの『時間』評(1955年)を、苦労のすえみつけてもらった。さすがによいものだった。感謝。(2015/01/17)

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トウキョウ.jpg 2015年01月18日

・昨日、ナイロビの中野君からメール。ATMにカードを入れたまま忘れてきたが、盗まれることなく、カードが銀行にとどけられていてびっくりしたという。来週アスマラにいくらしい。たしか紅海にちかい2000メートル以上の高地だ。あの街をあるきたい。丈の高いビルはなかったはずだ。けふダフネ休みのため、額縁屋のある路地のずっと奥の「kikiya」にはじめてはいる。大きく深いカウチにすわる。客はいないようだ。ホリイジュウコウさんが店番をしていて、ベトナムコーヒーを供される。ぼくはおどろかない。ホリイジュウコウさんは、とっくに亡くなったぼくの伯父である。アラン・ラッドにどことなくにていて、ときどきうすく恥ずかしそうに笑いはするが、ほとんどしゃべらないひとだ。だから、声がどんなだったか憶えていない。全人生で500語も声にして話したかどうか。それでいて陰にこもるということもなく、いつも静かにたちはたらいていた。kikiyaでもそうだ。かれはだまって拭き掃除をしている。ホリイジュウコウさんほど無口で誠実で勤勉で温厚で目だたないひとをみたことがない。戦争にいっていたと聞いたことがある。ホリイジュウコウさんがどうやって戦争をしていたのか、さっぱりイメージがわかない。「犬をあずけてアスマラにいきたいのです」。ティグリニャ語で言ってみた。ホリイジュウコウさんがふりむき、笑ってうなずいてくれた。どこにもたくらみはない。エベレストにいったが、親子連れがいたので、のぼらなかった。アパートさがし進展なし。犬とアスマラに住んだっていいのだ。星がきれいそうだし。(2015/01/18)

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炎FullSizeRender.jpg 2015年01月19日

・『もの食う人びと』や『水の透視画法』を編集した木村剛久さんが、じしんのブログで拙著『霧の犬 a dog in the fog』を論じているのにけふ気づく。
http://kimugoq.blog.so-net.ne.jp/2014-12-11
木村さんはたいへんな読書家で、本を軽々にほめたりけなしたりしないひとなので、すこしおどろく。霧の犬はわたしからはなれて、勝手にあるきまわり、友人たちに〈あの薬〉をくばっているらしい。1月10日の宮崎悠氏による図書新聞書評を読んでもそれ(服薬ぶり)がわかる。1月11日づけ中国新聞の『霧の犬』書評も、宮崎氏のとはもちろん味がことなるけれども、ずいぶんまっとうだった。犬とコビトのおかげだ。あすは犬の誕生日。エベレストにのぼった。対談本、ちょっぴり重版がきまったらしい。『霧の犬』は重版していない。しなくていい。犬誕生日前夜祭。コビトが犬用バースデーケーキをもってくる。(2015/01/19)

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完全版 1★9★3★7 イクミナ (上) (角川文庫)
完全版 1★9★3★7 イクミナ (下) (角川文庫)です。


  

辺見庸さんの『増補版1★9★3★7』と、
堀田善衛さんの『時間』(岩波現代文庫)です。 


  

辺見さんの『1★9★3★7』(イクミナ)です。 


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